説明

感光性樹脂積層体

【課題】支持層から基材への転写性に優れ、適切な現像時間を有し、感度、遮光性、細線形成性に優れる感光性樹脂積層体を提供する。さらに、遮光性が十分であり、且つ膜厚が薄く微細な、ブラックマトリックス付き基板の製造方法を提供する。さらに、該ブラックマトリックス付き基板を用いたカラーフィルタを提供する
【解決手段】少なくとも支持層と、酸素遮断層と、感光性樹脂層とを順に積層してなる感光性樹脂積層体であって、該支持層は、その積層しない面とは反対側の面の剥離力が100〜4000mN/25mmであって、該酸素遮断層は水溶性樹脂組成物を含み、該感光性樹脂層は感光性樹脂組成物を含み、該感光性樹脂組成物は、該感光性樹脂組成物100質量%に対して、特定のアルカリ可溶性高分子3〜40質量%、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物3〜50質量%、光重合開始剤0.1〜20質量%を含むことを特徴とする感光性樹脂積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ、ブラックマトリックス、感光性レジストなどに関する。本発明はまた、それらの形成方法及びそれらの形成のための感光性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなど近年フラットパネルディスプレイの多くには、カラー化の手段として、カラーフィルタと呼ばれる部材が利用されている。カラーフィルタは、赤、緑、青のカラー画素とそれらを仕切るブラックマトリックスから構成される。カラー画素はカラー化のために必要であるが、ブラックマトリックスは、液晶ディスプレイの場合にはTFTの誤作動防止、その他、コントラストの向上、混色を防ぐなど画質向上の目的でカラー画素間に格子状に配される。
【0003】
最近のブラックマトリックスの材質は、環境への悪影響を考慮してクロムから樹脂に切り替えられる割合が高くなっている。材質が樹脂であるブラックマトリックス(以下、単にブラックマトリックスと呼ぶ)を作成する手段の1つが、感光性樹脂組成物によるフォトリソグラフィーである。ブラックマトリックスは遮光性が高いので、感光性樹脂組成物をより効率良く感光させるためには、感光性樹脂組成物に特に高感度化を施す工夫が求められている。特許文献1には特殊な樹脂を用いた感光性ブラックマトリックスの開示がある。
【0004】
一方、液状の感光性樹脂組成物を用いてブラックマトリックスを作成する場合、塗布工程はウエット工程で、排気乾燥設備や、基板面積に応じた塗布幅の異なるスリットコーターを準備する必要がある。スリットコーターは塗膜の平坦性を確保するため精密に設計される必要があり大変高価である。液状の場合はポットライフも一般に短いと言われ、露光時には酸素に暴露されているので感度の向上も難しいとされる。これに対し、予め感光性樹脂積層体を準備しこれを基材にラミネートする方式では、積層はドライ工程で完了し、基板の大きさに応じて複数枚の感光性樹脂積層体を貼り付けることで基板面積の大小にも対応しやすい。例えば、一枚の感光性樹脂積層体で貼り付け幅が足りない場合は、2枚乃至3枚以上の感光性樹脂積層体を貼り付けることにより基板全体に貼り付けることが可能になる。また、ポットライフや、支持フィルムを介して露光するので感度向上の点でも有利であると考えられている(特許文献2)。
【0005】
従って、感度や細線形成性に優れる特許文献1記載の感光性樹組成物を用いて感光性樹脂積層体を作成すれば、感度や細線形成性に優れ、且つ生産性にも有利なブラックマトリックス形成材料が得られると考えられるが、特許文献1記載の感光性樹脂組成物をそのまま支持層に塗布して感光性樹脂積層体としても、感光性樹脂組成物層の支持層への粘着性が強く結果転写不良となって、基材上にブラックマトリックスを形成するのは困難であった(後述の本明細書比較例参照)。
【0006】
さらに、感光性樹脂積層体を基板に貼り付ける方法としては、仮支持体に熱可塑性樹脂層、中間層、着色感光性樹脂層を積層した感光性転写材料を利用する方法も開示されている(特許文献3)。しかし、このような転写材料では、比較的Tgの低い熱可塑性樹脂層をラミネートするためラミネート時にシワが発生しやすい。また、数十μmの熱可塑性樹脂層を通して露光する必要があるため細線形成が難しい。また、感光性樹脂層を現像する前に又は同時に、数十μmの厚みの熱可塑性樹脂層を現像する必要がある。熱可塑性樹脂層に膜厚ムラがある場合、現像液が感光性樹脂層に到達するまでの現像時間にバラツキが発生し、線幅の均一性を確保することが難しい。一般に、光架橋に寄与しない着色材料、遮光材料を多く含めば含むほど現像速度は速くなり、現像時間に対する線幅や密着性の変
化が大きくなる。上記転写材料のような構成で遮光性と細線形成性を同時に高度に両立することは難しい。また、たとえ熱可塑性樹脂層を省略したとしても容易にパターン形成ができないことは本明細書に後述する比較例の示す通りである。
【0007】
【特許文献1】特開2004−69754号公報
【特許文献2】特開2005−208480号公報
【特許文献3】特開平08−44050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、支持層から基材への転写性に優れ、適切な現像時間を有し、感度、遮光性、細線形成性に優れる感光性樹脂積層体を提供することを目的とする。さらに、遮光性が十分であり、且つ膜厚が薄く微細な、本発明の感光性樹脂積層体を用いたブラックマトリックス付き基板の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は該ブラックマトリックス付き基板を用いたカラーフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、以下の通りである。
(1) 少なくとも支持層と、酸素遮断層と、感光性樹脂層とを順に積層してなる感光性樹脂積層体であって、該支持層は、その積層しない面とは反対側の面の剥離力が100〜4000mN/25mmであって、該酸素遮断層は水溶性樹脂組成物を含み、該水溶性樹脂組成物は少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子と、重量平均分子量5,000以上2,000,000以下の水溶性可塑剤、とを含み、該感光性樹脂層は感光性樹脂組成物を含み、該感光性樹脂組成物は、該感光性樹脂組成物100質量%に対して、(a)下記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子3〜40質量%、(b)下記式(I)以外のエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物3〜50質量%、及び(c)光重合開始剤0.1〜20質量%を含むことを特徴とする感光性樹脂積層体。
【化1】


(上記式(I)中、Xは下記式(II)で表される基、Yはジカルボン酸無水物の酸無水物基を除いた残基、Zはテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた残基、nは1〜20の整数である。下記式(II)中のR及びRはそれぞれ独立に、H又はCHを表す。)
【化2】


(2) 前記水溶性樹脂組成物中の水溶性可塑剤がポリビニルピロリドンである(1)記載の感光性樹脂積層体。
(3) 前記支持層が、その積層しない面とは反対側の面の剥離力が100〜1500mN/25mmである(1)又は(2)記載の感光性樹脂積層体。
(4) 前記酸素遮断層の膜厚が2〜3μmである(1)〜(3)のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体。
(5) 前記感光性樹脂組成物が、下記式(III)で表されるエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物を含む(1)〜(4)のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体。
【化3】


(上記式(III)中、R、R及びRは、それぞれ互いに独立なH又はCH基を表す。Rは2価の連結基で、炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、及び炭素数6〜10のフェニレン基からなる群から選ばれる一種の基を表す。)
(6) 前記感光性樹脂組成物が、該感光性樹脂組成物100質量%に対して、(d)着色顔料40〜70質量%を含む(1)〜(5)のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体。
(7) (1)〜(6)のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体を、基板にラミネートする工程、支持層を剥離する工程、露光する工程、及び現像する工程を順に行うブラックマトリックス付き基板の製造方法。
(8) (1)〜(6)のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体を、基板にラミネートする工程、露光する工程、支持層を剥離する工程、及び現像する工程を順に行うブラックマトリックス付き基板の製造方法。
(9) (7)又は(8)記載の方法で基板上にブラックマトリックスを形成する工程と、前記基板がガラス基板であり、該ガラス基板上のブラックマトリックスで覆われていない部分の少なくとも一部に感熱性又は感光性のカラーインクをインクジェット方式により印刷する印刷工程とを含むカラーフィルタの製造方法。
(10) (9)記載の方法により製造されるカラーフィルタ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持層から基材への転写性に優れ、適切な現像時間を有し、感度、遮光性、細線形成性に優れる感光性樹脂積層体を提供することができる。また、本発明の感光性樹脂積層体を用いれば、高い生産性をもって遮光性が十分であり膜厚が薄く微細なブラックマトリックス付き基板及びそれを用いたカラーフィルタを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の感光性樹脂積層体は、少なくとも支持層と、酸素遮断層と、感光性樹脂層とを順に積層してなる。
支持層には、平滑な紙や合成樹脂フィルムを用いることができる。防塵性の観点から合成樹脂フィルムが好ましい。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合体フィルム、ポリアクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられ、さらに、必要に応じこれらの延伸されたものも使用可能である。耐熱性、可とう性、強度の観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。本発明において、支持層に透明性は特段必要ではないが、平滑性を考慮して光学用途のフィルムを用いることが好ましい。平滑性は、支持層と隣接して酸素遮断層を配置する場合、酸素遮断層の均一塗布性や感光性樹脂層の欠点(ピンホール)、膜厚均一性などに影響することがあり、平滑であるほど好ましい。
【0012】
一般にヘーズ(Haze)が低い方が表面平滑性も高い傾向があり、有用な指標となり得る。支持層のヘーズは5.0以下であるものが好ましい。より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下である。ここでいうヘーズ(Haze)とは濁度を表す値であり、ランプにより照射され試料中を透過した全透過率Tと、試料中で拡散され散乱した光の透過率Dにより、ヘーズ値H=D/T×100として求められる。これらはJIS−K−7105により規定されており、市販の濁度計によって容易に測定可能である。
支持層の膜厚は、特に制限されるものではないが、後の離型処理、酸素遮断層の塗布、感光性樹脂層の塗布、基板への積層などの工程におけるシワ、変形の観点から10μm以上が好ましい。より好ましくは15μm以上である。ラミネート時の感光性樹脂層の転写性の観点から100μm以下が好ましい。
【0013】
支持層は、積層しない面とは反対側の面(即ち、積層する面、以下同じ)の剥離力が、100〜4000mN/25mmである。剥離力は、日東電工製31Bテープをゴムローラーにて貼り合わせた際の剥離力を測定することで得られる。
剥離力の測定条件は次の通りである。まず、日東電工製31Bテープを剥離力の測定面に、ゴムローラーを用いて5Kgf(49N)の荷重で、長さ方向に往復しないよう5回繰り返し圧着する。これを23℃、50%RHの環境下で24時間保存し、剥離速度0.1m/min、剥離角度90°で剥離試験する。測定装置は、オリエンテック社製テンシロンRTM−500(ロードセル定格1Kgf)を用いる。剥離試験距離は60mm、伸びに対して加重をプロットしたときの積分平均加重を剥離力とする。
離型性の観点から、剥離力は100mN/25mm以上である。より好ましくは200mN/25mm以上である。さらに好ましくは250mN/25mm以上である。離型処理面への塗布性(ハジキ、均一塗布性)の観点から、4000mN/25mm以下である。より好ましくは3000mN/25mm以下、さらに好ましくは2000mN/25mm以下、最も好ましくは1500mN/25mm以下である。
【0014】
支持層の積層しない面とは反対側の面は目的の剥離力を得るため離型処理を施すことができる。離型処理とは、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂(又はアルキッド樹脂)、長鎖アルキル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を含有する剥離剤で表面を薄くコートし離型性を上げる化学処理や、コロナ処理などの物理処理を指す。
【0015】
シリコーン樹脂を含有する剥離剤としては、両末端シラノールポリジメチルシロキサンとポリメチル水素シロキサン又はポリメチルメトキシシロキサンとを反応させた縮合反応型シリコーンや、
ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体又はジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体とポリメチル水素シロキサンとを反応させた付加反応型シリコーンや、
アクリルシリコーンやエポキシ基含有シリコーンなどを紫外線や電子線で硬化させた紫外線硬化型又は電子線硬化型シリコーンや、
エポキシ変性シリコーン(シリコーンエポキシ)、ポリエステル変性シリコーン(シリコーンポリエステル)、アクリル変性シリコーン(シリコーンアクリル)、フェノール変性シリコーン(シリコーンフェノール)、アルキッド変性シリコーン(シリコーンアルキッド)、メラミン変性シリコーン(シリコーンメラミン)等の変性シリコーンが挙げられる。
【0016】
アルキド樹脂は、アルキッド樹脂とも呼ばれ、多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を脂肪油や脂肪酸で変性したものである。離型処理面のシリコーンの転写を嫌う場合などに好ましい。また、酸素遮断層やその他の層の塗布性と剥離性のバランスの観点から好ましい。多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和多塩基酸や、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物などのその他多塩基酸が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトールなどの四価以上のアルコールが挙げられる。変性剤としては、大豆油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、及びこれらの脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸などの油脂及び油脂脂肪酸、ロジン、コバール、コハク、セラックなどの天然樹脂、エステルガム、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、ステアリン酸変性アルキド樹脂及び/又はステアリン酸変性アクリル樹脂とアミノ樹脂との硬化樹脂も塗布性と剥離性のバランスの観点から好ましい。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン系の熱可塑性エラストマー、例えばエチレンプロピレン共重合体、エチレンオクテン共重合体が挙げられる。ポリエチレン樹脂などと混合して用いてもよい。
剥離剤をコートする場合は、離型の効果が得られる限度でできるだけ薄くコートすることが好ましい。コート後は、熱やUV処理により剥離剤を支持フィルムに定着させることもできる。支持フィルム上に施される離型処理について特に剥離剤を用いる場合、処理剤の成分、例えばオルガノシランの置換基をより大きい分子量のものにする(例えばメチル基からフェニル基等へ変更する)ことで剥離力が高くなることが知られている。一方、離型処理によって支持フィルム上に形成される離型層の厚みについて、薄膜の離型層を形成する場合は剥離力が大きくなり、また離型層を十分厚く形成する場合には剥離力は低下することも知られている。本発明における支持層の剥離力を目的の範囲内にするには、これらの知見を用いればよい。つまり、本発明における支持層の剥離力を目的の範囲にするには、支持フィルムの少なくとも片面に離型層を形成し、支持フィルム上の離型層の成分や、離型層の厚みを適宜選択することによって剥離力の調節が可能である。
【0018】
支持層のその積層しない面とは反対側の面には、酸素遮断層を積層することができる。酸素遮断層以外にも目的に応じてその他の層を設けることができる。例えば、感光性樹脂積層体をラミネートする際、基板の凹凸に追従しやすいようにする観点から、クッション層を設けることができる。クッション層は、熱可塑性樹脂を含み粘度が感光性樹脂層より低いことが好ましい。また、水溶性もしくはアルカリ可溶性であることが好ましい。
【0019】
酸素遮断層は、水溶性樹脂組成物を、水その他の溶媒により、塗布膜厚、粘度に応じて希釈し、塗布乾燥することにより、支持層のその積層しない面とは反対側の面上に積層することができる。塗布は、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーターなど、水溶性樹脂組成物の粘度、塗布膜厚、膜厚精度に応じて適宜選定した装置、方式を用いることができる。さらに、予め仮の支持体に酸素遮断層を形成しておき、これを支持層のその積層しない面とは反対側の面にラミネートすることで酸素遮断層を積層することもできる。このようにして、支持層、酸素遮断層、感光性樹脂層、仮の支持体の4層が積層された場合は、積層後に仮の支持体と感光性樹脂層との剥離力が、支持層と酸素遮断層との剥離力より小さいことが好ましい。
酸素遮断層の膜厚は、感度、基材に転写された感光性樹脂層に発生するピンホールの抑制の観点から0.05μm以上が好ましい。より好ましくは0.1μm以上、もっと好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、最も好ましくは2μm以上である。また、ラミネート時の転写性及び現像時間、現像液の疲労、カットチップ性の観点から30μm以下が好ましい。より好ましくは10μm以下、もっと好ましくは6μm以下、さらに好ましくは4μm以下、最も好ましくは3μm以下である。
【0020】
上記の通り酸素遮断層は、水溶性樹脂組成物を、水その他の溶媒により塗布膜厚、粘度に応じて希釈し塗布乾燥することにより、支持層のその積層しない面とは反対側の面上に積層することができる。その他の溶媒は、水溶性樹脂組成物の成分が析出しないものであれば使用できる。塗布性、乾燥性の観点から沸点が水より低いものが好ましく、水とこれらその他の溶媒を混合して用いることがより好ましい。具体的には、水とエタノール又はメタノールなどとの混合溶媒が挙げられ、水とメタノールの混合溶媒が好ましい。また、少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子は、冷水に溶解し難い場合が多いので、予め冷水に分散し次いで昇温して溶解しておくと、水溶性可塑剤との配合が容易である場合が多い。
【0021】
水溶性樹脂組成物は、少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子と重量平均分子量5,000以上2,000,000以下の水溶性可塑剤とを含む。
少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール及びその誘導体、並びにオレフィンを1〜20モル%共重合したポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0022】
ポリビニルアルコールとしては、ポリ酢酸ビニルをアルカリけん化して製造されるものが一般的である。ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましい。酸素遮断性、現像性の観点から、より好ましくは5,000〜50,000である。けん化度は、現像性の観点から50モル%以上が好ましく、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上である。このようなポリビニルアルコールとしては、例えば、(株)クラレ製PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−124、PVA−203、PVA−205、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−226、PVA−235、PVA−403、PVA−405、PVA−420が挙げられる。
ポリビニルアルコールの誘導体としては例えば、特開昭63−197942号公報に記載のカルボキシル化ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0023】
オレフィンを1〜20モル%共重合したポリビニルアルコールは、オレフィンと酢酸ビニルを共重合しこれをけん化して製造されるのが一般的である。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセンなどが挙げられる。共重合性、アルカリ可溶性の観点からエチレンが好ましい。アルカリ可溶性の観点からオレフィンの共重合比率は20モル%以下である。このような、オレフィンを1〜20モル%共重合したポリビニルアルコールとしては、(株)クラレ製エバール(商品名)が挙げられる。
【0024】
少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子は、水溶性樹脂組成物中に、現像性及びコストの観点から50質量%以上95質量%以下配合することが好ましい。より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。
水溶性樹脂組成物は、重量平均分子量5,000以上2,000,000以下の水溶性可塑剤を含む。感光性樹脂層の細線形成性の観点から重量平均分子量は5,000以上である。現像性及び水溶性樹脂組成物の水その他溶媒への溶解性の観点から2,000,000以下が好ましい。より好ましくは500,000以下でありさらに好ましくは200,000以下である。
【0025】
水溶性可塑剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドのエステル化合物、ポリエチレンオキシドのエーテル化合物などのポリエチレンオキシド及びその誘導体、ビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体及びその水溶性塩類、カルボキシアルキル澱粉水溶性塩類、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアクリル酸水溶性塩類、ゼラチン、ポリプロピレングリコールが挙げられる。支持層に直接酸素遮断層を積層する場合は、支持層への塗布性、支持層との剥離性の観点から、ポリビニルピロリドン及びその誘導体が好ましい。支持層に直接酸素遮断層を積層しない場合も、感度、細線形成性の観点からポリビニルピロリドンが好ましい。具体例としては、株式会社日本触媒製K−15(重量平均分子量4万)、K−30(重量平均分子量10万)、K−85(重量平均分子量90万)、K−90(重量平均分子量100万)が挙げられる。
【0026】
少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子及び重量平均分子量5000以上2000000以下の水溶性可塑剤の重量平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(HFIP−805、HFIP−803)2本直列、移動層溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105による検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
【0027】
感光性樹脂層は感光性樹脂組成物を含み、該感光性樹脂組成物は、該感光性樹脂組成物100質量%に対し、(a)下記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子3〜40質量%、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物3〜50質量%、及び(c)光重合開始剤0.1〜20質量%を含む。
下記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子の含有量は、感度、密着性、細線形成性の観点から3質量%以上であり、現像性、細線形成性の観点から40質量%以下である。下記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子が極端に多くなると現像時間が遅くなり見かけの線幅が太くなり細線形成が難しい。含有量は5〜30質量%が好ましく、8〜25質量%がより好ましく、8〜25質量%がさらに好ましい。
【0028】
【化4】


(上記式(I)中、Xは下記式(II)で表される基、Yはジカルボン酸無水物の酸無水物基を除いた残基、Zはテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた残基、nは1〜20の整数である。下記式(II)中のR及びRはそれぞれ互いに独立なH又はCH基を表す。)
【0029】
【化5】

【0030】
ここで、「酸無水物基」とは、「−CO−O−CO−基」を言う。
また、ジカルボン酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸などが挙げられる。
また、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられる上記式(I)で表される化合物は、例えば、特開2001−354735号公報に記載の方法により得ることができる。上記式(I)で表される化合物は重合鎖内にジカルボン酸無水物残基を実質上有しておらず、その末端に有している。そのため、重合鎖内にジカルボン酸無水物残基を有する化合物とは異なり、同じ固形分濃度でも、溶液粘度を制御し易く、塗布時の作業性の改善、コーティング特性の向上、膜厚の均一化を図ることができる。
【0032】
本発明に用いられる上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子は、付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を化合物中に少なくとも二つ有する。該高分子を含む感光性樹脂組成物は、光重合開始剤を活性化させる所定波長の光線の照射を受けたとき、光学濃度が高くても、光重合開始剤の作用により付加重合して硬化することができる。このため、表示コントラストが高く、R、G、Bの発色の美しいカラーフィルタを製造することができる。特にこの効果は、ブラックマトリックス形成に上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子を用いた場合、遮光性と感度の関係において顕著となる。黒色顔料の添加量を増やして遮光性を上げた場合、通常、遮光性が上がるとともに感度が低下するが、上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子を用いた場合は感度の低下が抑えられる。
【0033】
一般に、黒色顔料として広く用いられるカーボンブラックは表面積が大きく、顔料分散した感光性樹脂組成物に用いると、チキソトロピー性に富んだ流動性の悪い液体になりやすい。遮光性を向上させるにはこのような黒色顔料を多く配合させる必要があるが、基板に直接塗布する製法では塗布均一性を確保するのが難しい(谷口彰敏、「カラーフィルタ最新技術動向〜構成材料・製造・評価・海外動向〜」、第1刷、株式会社 情報機構、2005年5月31日、p81−101)。一方、本発明においては、パターニング特性に優れる上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子を多く配合し、予め均一なフィルム状態として転写することで、基材上に簡単に感光性樹脂層を積層することができる。そして、単に支持層に予め上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子を多く配合した感光性樹脂組成物を塗布するだけでは、本願比較例の様に基材に均一に転写することができない。支持層の、積層しない面とは反対側の面の剥離力が100〜4000mN/25mmであって、特定の水溶性樹脂組成物を含む酸素遮断層、特定の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を積層して始めて、均一な感光性樹脂積層体を作製することが可能となり、さらにそれを用いて感度、遮光性、細線形成性に優れたブラックマトリックスを基材上に形成することができる。
【0034】
感光性樹脂組成物には、上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子以外にも感度、遮光性、細線形成性、耐熱性、耐薬品性、断面形状、転写性、保存安定性などを考慮して適宜その他のアルカリ可溶性高分子を配合することができる。配合量は、感光性樹脂組成物全体(100質量%)の1〜10質量%が好ましい。より好ましくは、1〜5質量%である。
その他のアルカリ可溶性高分子は、酸当量が200〜2,000であることが好ましい。酸当量とは、1当量のカルボキシル基を有する線状重合体の質量を示す。現像性の観点から酸当量は2,000以下が好ましく、現像後に黒色顔料が基板へ付着するのを抑制する観点から、酸当量は200以上が好ましい。その酸当量は400〜900がより好ましく、500〜800がさらに好ましい。なお、酸当量の測定は、平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムを用いて電位差滴定法により測定される。
【0035】
その他アルカリ可溶性高分子としては、例えば、アクリル系のアルカリ可溶性高分子、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシル基に多塩基酸無水物を反応させたセルロース樹脂、ノボラック樹脂を用いることができる。上記性能に加え、上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子や着色顔料との相溶性の観点からアクリル系のアルカリ可溶性高分子が好ましい。
アクリル系のアルカリ可溶性高分子としては、側鎖にカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する単量体とその他単量体とを共重合したアルカリ可溶性高分子が挙げられる。
【0036】
側鎖にカルボキシル基又はカルボン酸無水物基を有する単量体とは、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸半エステル等が挙げられる。アルカリ可溶性高分子を合成するのが容易であると言う観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。側鎖にカルボキシル基を有する単量体を共重合する割合は、現像性の観点から5質量%以上が好ましく、黒色顔料の分散性、現像後に黒色顔料が基板へ付着するのを抑制する観点から、30質量%以下が好ましい。それを5〜20質量%共重合することがより好ましい。
【0037】
その他単量体とは、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、芳香族を有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、トリフェニルメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、シクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、その他、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、スチレンが挙げられる。特に、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0038】
その他単量体は、本発明の効果及び、現像性や相溶性を考慮して1種又は2種以上を適宜選ぶことができる。中でも、ベンジル(メタ)アクリレート及び/又は2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。ベンジル(メタ)アクリレートの共重合の割合は、上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子、着色顔料との相溶性、現像残渣、ラミネート性の観点から、50〜95質量%が好ましい。より好ましくは70〜90質量%である。2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの共重合の割合は、黒色顔料の分散性、ラミネート性の観点から5質量%以上が好ましく、耐熱性、耐薬品性の観点から30質量%以下が好ましい。5〜15質量%がより好ましい。
【0039】
アクリル系のアルカリ可溶性高分子の重量平均分子量は、3,000〜100,000であることが好ましい。現像性の観点から分子量は100,000以下が好ましく、密着性の観点から3,000以上が好ましい。その重量平均分子量が10,000〜40,000であることがより好ましい。
分子量の測定は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用)により重量平均分子量(ポリスチレン換算)として求められる。
【0040】
アクリル系のアルカリ可溶性高分子は、上記種々単量体の混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、イソプロパノ−ル等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより合成を行うことが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶媒を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合を用いていもよい。
【0041】
感光性樹脂組成物中には、(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物を含有する。含有量は、該感光性樹脂組成物100質量%に対して3〜50質量%である。現像性の観点から3質量%以上であり、密着性の観点から50質量%以下である。50質量%以下とすることで、適切な現像時間を確保し、十分に安定した密着性を確保することができる。その含有量は5〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。
(b)エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物としては、下記式(III)で表される化合物を含むことが好ましい。その配合量は密着性の観点から感光性樹脂組成物の2質量%以上が好ましく、転写性の観点から20質量%以下が好ましい。
【0042】
【化6】


(上記式(III)中、R、R及びRは、それぞれ互いに独立なH又はCH基を表す。Rは2価の連結基で、炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、及び炭素数6〜10のフェニレン基からなる群から選ばれる一種の基を表す。)
【0043】
上記式(III)で示される化合物としては、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、フタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソフタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テレフタル酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。密着性の観点から、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレートが好ましい。
【0044】
上記式(III)で示される化合物以外のエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物としては、たとえば、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均2モルのプロピレンオキシドと平均6モルのエチレンオキシドを付加したポリアルキレングリコールのジメタクリレートや、ビスフェノールAの両端にそれぞれ平均5モルのエチレンオキシドを付加したポリエチレングリコールのジメタクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステルBPE−500)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート及び、β−ヒドロキシプロピル−β’−(アクリロイルオキシ)プロピルフタレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。密着性の観点から、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましく、上記式(III)の化合物と組み合わせて用いることがさらに好ましい。
【0045】
さらに、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにエチレンオキシドを1〜3モル付加した化合物とヘキサヒドロフタル酸とのハーフエステル化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにエチレンオシドを1〜3モル付加した化合物とコハク酸とのハーフエステル化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにエチレンオキシドを1〜3モル付加した化合物とイソフタル酸とのハーフエステル化合物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートにエチレンオキシドを1〜3モル付加した化合物とテレフタル酸とのハーフエステル化合物が挙げられる。
【0046】
さらに、例えば、ジイソシアネート化合物、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと、一分子中にヒドロキシル基と(メタ)アクリル基を有する化合物、例えば、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、オリゴプロピレングリコールモノメタクリレートとを、反応させて得られるウレタン化合物等が挙げられる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネートとオリゴプロピレングリコールモノメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマ−PP1000)とを反応させて得られる化合部を挙げることができる。
【0047】
感光性樹脂組成物中には、該感光性樹脂組成物100質量%に対し、(c)光重合開始剤を0.1〜20質量%含む。感度、密着性の観点から0.1質量%以上であり、線幅再現性の観点から20質量%以下である。その含有量は1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
光重合開始剤としては、オキシムエステル化合物であることが好ましい。具体的には、オキシムエステル類、例えば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、及び1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシムや、特表2004−534797号公報に記載の化合物を上げることができる。なかでも、下記式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0048】
【化7】


上記式(IV)で表される化合物の具体例は、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アセテート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製 IRGACURE OXE−02)である。
【0049】
本発明の感光性樹脂積層体は、感光性樹脂組成物中に、上記式(IV)以外の光重合開始剤を含むことができる。例えば、以下のものが挙げられる。チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体類、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス−(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(p−メトシキフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体。また、p−アミノフェニルケトン類、例えば、p−アミノベンゾフェノン、p−ブチルアミノフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−ビス(エチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、p,p’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、p,p’−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノ
ンが挙げられる。また、キノン類、例えば、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、芳香族ケトン類、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインエーテル類。アクリジン化合物、例えば、9−フェニルアクリジン。トリアジン系化合物、例えば、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン。その他、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、2−ベンジル−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−2−モルフォリノ−1−(4−(メチルチオフェニル)−プロパン−1−オン等公知の種々の化合物が挙げられる。
【0050】
さらに感光性樹脂組成物中には、増感剤、連鎖移動剤を含むことができる。たとえば、N−アリールグリシン、メルカプトトリアゾール誘導体、メルカプトテトラゾール誘導体、メルカプトチアジアゾール誘導体、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等の多官能チオールなど公知の種々の化合物が挙げられる。
【0051】
(d)着色顔料を、該感光性樹脂組成物100質量%に対し、40〜70質量%含むことが好ましい。遮光性の観点から40質量%以上であり、転写性、ブラックマトリックスの密着性、線幅安定性、形状の観点から70質量%以下である。その含有量は45〜65質量%が好ましく、50〜65質量%がさらに好ましい。
上記着色顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、インジゴ系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、メチン・アゾメチン系、イソインドリノン系などの有機顔料や、カーボンブラック類、チタンブラック、チタン酸窒化物、黒色低次酸化チタン、グラファイト粉末、鉄黒、酸化銅などの無機顔料があり、複数の顔料を含んでも構わない。これらの顔料には、感光性樹脂組成物での分散性を高めるため、あるいは電気抵抗値を高めるための表面処理がなされていてもよい。
【0052】
有機顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)において、ピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。以下に、列記する。
C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド176、C.
I. ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメンレッド264、C.I.ピグメントレッド265。
【0053】
更に、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ42、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ65、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73。
【0054】
更に、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー173。
【0055】
更に、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7。
【0056】
本発明の感光性樹脂積層体は、感光性樹脂組成物中に、必要に応じて染料を含むこともできる。染料としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS,パラマジエンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) MALACHITE GREEN)、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン(保土ヶ谷化学(株)製 アイゼン(登録商標) DIAMOND GREEN GH)等が挙げられる。
【0057】
本発明の感光性樹脂積層体は、着色顔料が黒色顔料である場合ブラックマトリックス形成材料として有用である。黒色顔料としては、上記に列挙した着色物質の内で黒色であるものを挙げることができる。即ち、有機顔料としては、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック7などを、無機顔料としては、カーボンブラック類、チタンブラック、チタン酸窒化物、黒色低次酸化チタン、グラファイト粉末、鉄黒、酸化銅、などを挙げることができる。この他、Cu、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、V、Zn、S
e、Mg、Ca、Sr、Ba、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Pb、Bi、Si及びAl等の各種金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸鉛又は金属炭酸塩等の無機顔料も用いることができる。遮光性及びブラックマトリックスとしての感度、解像度、密着性への影響の観点から、カーボンブラックが好ましい。ブラックマトリックスの絶縁性の観点からチタンブラックが好ましい。
【0058】
好ましいカーボンブラックとしては、以下に例示するカーボンブラックの少なくとも1種を使用することができる。
例えば、三菱化学社製のカーボンブラックとしては、カーボンブラック#2400、#2350、#2300、#2200、#1000、#980、#970、#960、#950、#900、#850、MCF88、#650、MA600、MA7、MA8、MA11、MA100、MA220、IL30B、IL31B、IL7B、IL11B、IL52B、#4000、#4010、#55、#52、#50、#47、#45、#44、#40、#33、#32、#30、#20、#10、#5、CF9、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、ダイヤブラックA、ダイヤブラックN220M、ダイヤブラックN234、ダイヤブラックI、ダイヤブラックLI、ダイヤブラックII、ダイヤブラックN339、ダイヤブラックSH、ダイヤブラックSHA、ダイヤブラックLH、ダイヤブラックH、ダイヤブラックHA、ダイヤブラックSF、ダイヤブラックN550M、ダイヤブラックE、ダイヤブラックG、ダイヤブラックR、ダイヤブラックN760M、ダイヤブラックLPを挙げることができる。
【0059】
キャンカーブ社製のカーボンブラックとしては、サーマックスN990、N991、N907、N908を挙げることができる。
旭カーボン社製のカーボンブラックとしては、旭#80、旭#70、旭#70L、旭F−200、旭#66、旭#66HN、旭#60H、旭#60U、旭#60、旭#55、旭#50H、旭#51、旭#50U、旭#50、旭#35、旭#15を挙げることができる。
【0060】
デグサ社製のカーボンブラックとしては、ColorBlack Fw200、ColorBlack Fw2、ColorBlack Fw2V、ColorBlackFw1、ColorBlack Fw18、ColorBlack S170、ColorBlack S160、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、SpecialBlack4A、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140Vを挙げることができる。
【0061】
キャボット社(Cabot Corporation)製のカーボンブラックとしては、リーガル(Regal;登録商標)、ブラックパールズ(Black Pearls;登録商標)、エルフテックス(Elftex;登録商標)、モナーク(Monarch;登録商標)、モーグル(Mogul;登録商標)、及びバルカン(Vulcan;登録商標)の商標名で販売されているカーボンブラックを含む{例えばブラックパールズ(登録商標)2000、ブラックパールズ(登録商標)1400、ブラックパールズ(登録商標)1300、ブラックパールズ(登録商標)1100、ブラックパールズ(登録商標)1000、ブラックパールズ(登録商標)900、ブラックパールズ(登録商標)880、ブラックパールズ(登録商標)800、ブラックパールズ(登録商標)700、ブラックパールズ(登録商標)L、エルフテックス(登録商標)8、モナーク(登録商標)1400、モナーク(登録商標)1300、モナーク(登録商標)1100、モナーク(登録商標)1000、モナーク(登録商標)900、モナーク(登録商標)880、モナーク(登録商標)800、モナーク(登録商標)700、モーグル(登録商標)L、リーガル(登録商標)330、リーガル(登録商標)400、バルカン(登録商標)P}を挙げることができる。
コロンビア ケミカル社(Colombian Chemical Corporation)製カーボンブラックとしては、レイブン(Raven)780、レイブン 890、レイブン 1020、レイブン 1040、レイブン 1255、レイブン 1500、レイブン 5000、レイブン 5250を挙げることができる。
【0062】
感光性樹脂組成物中には、分散剤を含有させることができる。後述の通り感光性樹脂積層体は、感光性樹脂組成物を支持層に塗工することによって製造することができるが、黒色顔料を予め分散剤で溶剤に分散させてこれを加えて感光性樹脂組成物とし、支持層に塗工して感光性樹脂層とすることもできる。
分散剤としては、例えば、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボン酸基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩が挙げられる。また、特開2005−25169号公報に記載の塩基性官能基を有する高分子分散剤を利用することができる。
また、具体的には、ビックケミー社製のDisperbyk160、Disperbyk161、Disperbyk162、Disperbyk163、Disperbyk164、Disperbyk166、ゼネカ社製のSOLSPERSE20000、SOLSPERSE24000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE28000、SOLSPERSE32500を利用することができる。分散剤を含有する場合の含有量は0.1〜15質量%が好ましい。顔料の分散安定性の観点から0.1%以上が好ましく、密着性の観点から15質量%以下が好ましい。より好ましくは1〜10質量%である。
【0063】
さらに、ポリカルボン酸型高分子活性剤、ポリスルホン酸型高分子活性剤等のアニオン性の活性剤、ポリオキシエチレン、ポリオキシレンブロックポリマー等のノニオン系の活性剤などは、前述の分散剤とともに分散助剤として用いることができる。
また、黒色顔料とりわけカーボンブラックは、分散性、絶縁性等を考慮して、表面を樹脂で被覆したり、樹脂や低分子化合物で修飾したりできる。表面修飾に用いられる樹脂としては、ポリカルボジイミド、エポキシ樹脂などカーボンブラック表面のカルボキシル基と反応できる官能基を有する高分子が挙げられる。同様に低分子化合物としては、置換ベンゼンジアゾニウム化合物や置換アリルジアゾニウム化合物などが挙げられる。また、樹脂による被覆、修飾の方法としては、特開2004−219978号公報、特開2004−217885号公報、特開2004−360723号公報、特開2003−201381号公報、特開2004−292672号公報、特開2004−29745号公報、特開2005−93965号公報、特開2004−4762号公報、米国特許5,554,739号、米国特許5,922,118号に記載の分散剤、方法等を用いることができる。
【0064】
感光性樹脂組成物中には、光照射により発色する発色系染料を含有させることもできる。用いられる発色系染料としては、例えば、ロイコ染料又はフルオラン染料と、ハロゲン化合物の組み合わせがある。発色系染料は所望の光学濃度やカラー画素の色純度に応じて適宜の量配合することができる。
上記ロイコ染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン(別名:ロイコクリスタルバイオレット)等が挙げられる。
上記フルオラン染料としては、2−N,N−ジベンジルアミノ−6−ジエチルアミノフルオランや3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0065】
上記ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルフォン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェ−ト、トリ
クロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンが挙げられる。
【0066】
感光性樹脂組成物中には、熱安定性や保存安定性を向上させるために、ラジカル重合禁止剤を含有させることができる。このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノ−ル)、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−ターシャリブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 IRGANOX245)、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感度低下が少ないことと保存安定性が良好であることとの両立からIRGANOX245が好ましい。
【0067】
感光性樹脂組成物中には、必要に応じて可塑剤を含有させることもできる。そのような可塑剤としては、フタル酸エステル類、例えば、ジエチルフタレートや、p−トルエンスルホンアミド、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリアルキレンオキシド変性ビスフェノールA誘導体、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物やプロピレンオキシド付加物が挙げられる。可塑剤を含有する場合の好ましい量は、該感光性樹脂組成物に対し、0.1〜5質量%である。感光性樹脂層の可とう性及びラミネート後の切断時にチップ飛びや割れなどを抑制する観点から0.1質量%以上が好ましく、密着性の観点から5質量%以下が好ましい。
【0068】
感光性樹脂組成物中には、シランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基、イミダゾリル基などの極性基と、アルコキシシリル基とを分子内に有する化合物などを挙げることができる。具体的には、信越シリコーン(株)製、KBM−1003、KBE−1003、KBM−403、KBE−403、KBM−502、KBE−502、KBM−503、KBE−503、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−903、KBE−585、KBM−802、KBE−846、KBE−9007などや、特開2004−280057号公報に記載のイミダゾールシラン化合物などを挙げることができる。配合量は、密着性の効果と現像後の基板への残渣の付着などを考慮して適宜選択できるが、該感光性樹脂組成物に対し、0.01〜1質量%の範囲であることが好ましい。また、これらシランカップリング剤を水やアルコール等の有機溶剤で希釈した後、スピンコート法等の塗布法を用いてガラス基板上に均一塗布し、必要に応じて加熱処理等を行うことでガラス基板と感光性樹脂層との密着力の向上を図ることもできる。
【0069】
本発明では感光性樹脂層を形成する際に、必要に応じてレベリング剤を添加することもできる。レベリング剤を添加することで、感光性樹脂組成物を基材に塗布する時により平滑な塗布面にすることが出来る。レベリング剤としては、例えばシリコン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤などであり、特にフッ素系レベリング剤が少量の添加で有効な効果が現れるので特に好ましい。フッ素系レベリング剤の具体例としてはF−474、F−479(以上、大日本インキ工業社製)、FC−4430、FC−4432(以上、住友スリーエム社製)、KP323、KP341(以上、信越化学工業社製)、PAINTAD32、PAINTAD54、DK8−8011(以上、東レダウコーニング社製)、サーフロンS−111N、サーフロンS−113、サーフロンS−121、サーフロンS−131、サーフロンS−132、サーフロンS−141、サーフロンS−381、サーフロンS−383、(以上、AGCセイケミカル社製)を挙げることができる。
【0070】
本発明において添加できる界面活性剤の量は、該感光性樹脂組成物100重量%に対して、好ましくは0〜15%、さらに好ましくは0〜10重量%であり、特に好ましくは0〜5重量%である。界面活性剤の添加量を15重量%以下とすることで、基板に対する感光性樹脂組成物の密着力を高く保つことができる。
【0071】
本発明の感光性樹脂層にはエポキシ樹脂を添加して用いることもできる。従来からエポキシ樹脂は、種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されてきた樹脂である。感光性樹脂層にエポキシ樹脂を添加して用いることで、上記した特性を感光性樹脂に持たせることができる。
【0072】
本発明に用いることのできるエポキシ樹脂の例としては、多価アルコール、多価フェノールなどと過剰のエピクロルヒドリン又はアルキレンオキシドとを反応させて得られるエポキシ樹脂を挙げることができる。多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトール等があり、多価フェノールの例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、ハロゲン化ビスフェノールA、4,4−ジヒドロキシフェニルメタン(別名:ビスフェノールF)、トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、テトラヒドロキシフェニルエタン、ノボラック型多価フェノール、クレゾール型多価フェノールなどが挙げられる。
【0073】
これらエポキシ樹脂の具体例としては、たとえばDER431、DER438、DER439など(以上、ダウケミカル社製)jER-1001、jER−1004、jER−1007H、jER−404P、jER−1256、jER−154、jER−872など(以上、ジャパンエポキシレジン社製)、AER−6003、AER−6071、AER−6072、AER−6097、AER−ECN1273など(以上、旭化成ケミカルズ社製)、EPICLON−N−740−80M、EPICLON−FQ−065−Pなど(以上、大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0074】
本発明において、添加できるエポキシ樹脂の量は該感光性樹脂組成物100重量%に対して0.1〜20重量%が好ましい。さらに好ましくは0.1〜10重量%であり、特に好ましくは0.1〜5重量%である。20重量%以下の添加量とすることで感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する現像性の低下がなく、現像残渣やギザつきのないパターンが得られる。また、0.1重量%以上を添加することで硬化物に十分な硬化特性を付与することができる。
【0075】
本発明においてエポキシ樹脂を用いる場合においては、さらに硬化剤を添加してもよい。硬化剤としては例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、フェノールノボラック、多価フェノール類及びこれらの変性物、イミダゾール、BF3−アミン錯体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0076】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、硬化剤の量を0.5当量から1.5当量の範囲で添加することで良好な硬化物性を有する硬化物が得られる。
【0077】
また上記硬化剤を用いる際には、必要に応じて硬化促進剤を併用してもよい。硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量%に対して0.1〜5.0重量%が好ましい。
【0078】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物を適宜溶媒で希釈し、酸素遮断層上に塗布乾燥することにより得ることができる。溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、2−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルシソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンが挙げられる。毒性、支持層に塗工した際の乾燥性の観点からメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンが好ましく、着色顔料とくに黒色顔料の分散安定性や本発明に用いられる上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子の溶解性の観点からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が好ましい。前記の性能を両立するためにメチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどとPGMEAとを適当な割合で混合して用いてもよい。例えば、黒色顔料を予め分散させたPGMEA、上記式(I)のアルカリ可溶性高分子を予め溶解させたPGMEA、アルカリ可溶性高分子、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物、光重合開始剤、その他の種々の添加物を混合してメチルエチルケトンやPGMEAなどの溶媒で適宜希釈し、酸素遮断層への塗布性乾燥性の良好な感光性樹脂組成物溶液として調合することができる。
【0079】
本発明の感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層の支持層が積層されている側とは反対側の表面に、必要に応じて保護層を積層することもできる。各層の密着力と比較して保護層と感光性樹脂層との密着力が充分小さく、容易に剥離できることが好ましい。このような保護層としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム(例えば、王子製紙(株)製E−200C、E−200Aなど)、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。保護層の好ましい厚みは、15〜50μmである。表面平滑製の観点から15μm以上が好ましく、感光性樹脂層との積層性、巻き取り性の観点から50μm以下が好ましい。
【0080】
本発明の感光性樹脂積層体は、おおよそ次のような手法で作製することができる。
まず、離型処理された支持層の積層しない面とは反対側の面に、溶媒で希釈された水溶性樹脂組成物を塗布乾燥し、支持層に酸素遮断層を積層する。支持層と酸素遮断層の間にその他の層を設ける場合は、まず、支持層の積層しない面とは反対側の面にその他の層を構成する樹脂組成物を塗布乾燥し、さらに、その他の層に溶媒で希釈された水溶性樹脂組成物を塗布乾燥し、支持層に酸素遮断層を積層する。
水溶性樹脂組成物は、例えば、ポリビニルアルコールを水に分散し、昇温して溶解、放冷後、水溶性可塑剤を添加し、撹拌溶解し、メタノールを適宜加えて調製することができる。水溶性樹脂組成物は、塗工前に10μm以下のフィルターでろ過することが好ましい。
【0081】
塗布装置としては、小面積に有用なものとして、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーターを挙げることができる。密封式ダイ方式であれば、キャピラリーコーター、レイジングアンドライジングコーター、スロットダイコーター、リップコーター、開放式であれば、コンマコーター、グラビアコーターを挙げることができる。乾燥温度は、溶
剤に応じて適宜選定することができる。溶剤を十分に乾燥させる温度以上が好ましく、支持層の寸法安定性が確保できる温度以下で乾燥することが好ましい。60〜120℃が好ましい。乾燥時間は、溶剤が十分に乾燥できる程度以上に長く、また溶剤を塗布面から均質に蒸発させることができる程度の速度で乾燥させることが好ましい。支持層の寸法安定性が確保でき無くならない程度、さらに作業性が著しく損なわれない程度以下であることが好ましい。乾燥手段は、小面積であればキャスト法や熱風循環式乾燥炉を用いることができる。数メートル以上の乾燥チャンバーを通過して乾燥させるには、熱風を塗布面や支持層に吹き付けたり、加熱されたロールの上支持層を通過させることにより乾燥させることができる。熱風ノズルには、ジェット型、正圧エアーフローティング型、負圧エアーフローティング型、負圧ノズル+ロール型、パンチング穴型、平行流型などがある。
酸素遮断層が積層された支持層は、塗工後巻き取られて適宜保護フィルムを挟んで巻き取り保存されてもよいし、乾燥後、そのまま感光性樹脂層を塗工してもよい。
【0082】
次に、感光性樹脂組成物として、例えば、上記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物、光重合開始剤、着色顔料を、粘度が1〜数十cpsになるように適量の溶媒と共に混合して、感光性樹脂組成物溶液を作製する。離型処理された支持層に積層された酸素遮断層の上に、感光性樹脂組成物溶液を塗布して乾燥し、感光性樹脂層を形成する。塗布は、塗布面積や塗布速度などに応じた装置を用いて塗布する。塗布装置としては、上記水溶性樹脂組成物の塗工に用いたものと同様のものを挙げることができる。ブラックマトリックスの遮光性と塗布時の膜厚精度から、感光性樹脂層の乾燥後の厚みは0.3μm以上であることが好ましい。また、カラーフィルタに用いたときの平坦性から、4.5μm以下であることが好ましい。
【0083】
樹脂ブラックマトリックスを用いてカラーフィルタを作成する場合、ブラックマトリックスの高さが高いとカラーフィルタの表面の凹凸が液晶の配向を乱すので、オーバーコート層とよばれる平坦化膜を設けたり、表面を平らにするために研磨したりする場合がある。液晶の配向への影響を小さくしたり、オーバーコート層を薄くしたり、カラーフィルタ全体の厚みを薄くしたりできるので、ブラックマトリックスの高さは4.5μm以下であることが好ましい。遮光性の観点から0.3μm以上が好ましい。より好ましくは0.3〜2μm、更に好ましくは0.3〜0.9μmである。
【0084】
本発明に記載のブラックマトリックスは上記の感光性樹脂積層体を用いておおよそ次のような手法で形成することができる。まず保護層を剥離した後、ガラス基板に上記感光性樹脂積層体をラミネート(熱圧着)する。例えば、ラミネート温度120℃、シリンダ圧力0.4MPa、2m/min(大成ラミネーター社製VA−400III)でラミネートする。このとき、ガラス基板は予熱されることが好ましい。ガラス基板の予熱温度は、ラミネート性及びラミネート時に巻き込む空気を抑制し十分な密着性を確保する観点から100℃以上が好ましく、支持層の耐熱性の観点から150℃以下が好ましい。より好ましくは110℃以上140℃以下である。
【0085】
次に、支持層を剥離しマスクフィルムを通して活性光により画像露光する。支持フィルムは必要に応じ露光後に剥離してもよい。
続いてアルカリ水溶液を用いて未露光部の感光性樹脂層を現像し、除去する。アルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの混合水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アミン水溶液等を用いる。これらのアルカリ水溶液は感光性樹脂層の特性に合わせて選択される。一般的に0.1〜3質量%の炭酸ナトリウム水溶液、0.03〜0.1質量%の水酸化カリウム水溶液が用いられる。必要に応じて、現像しきれずに残っている光重合性樹脂層を取り除くために、別の現像液において更に現像を行ってもよい。
別の現像液とは、初めに感光性樹脂層を現像する際に用いる現像液とはアルカリ性の異なるアルカリ水溶液であったり、酸性現像液であったり、有機溶剤を含有する現像液であったりしてもよく、現像液に合わせて感光性樹脂層の組成を適宜選ぶことができる。また、現像しきれずに残っている未露光部の感光性樹脂層や、着色顔料、黒色顔料は、高圧水洗などの方法により物理的に除去することもできる。0.2MPa以上の水洗圧が効果的である。
【0086】
本発明のカラーフィルタは、ブラックマトリックスを形成後、該ブラックマトリックス付きガラス基板の少なくともブラックマトリックスで覆われていない部分の一部に、本発明の感光性樹脂積層体や感熱性又は感光性のカラーインクによって、赤・青・緑のカラー画素を形成することによって作製できる。
ブラックマトリックスの形状はカラー画素を囲む格子状のものが一般的である。また、格子の各辺のパターン幅は5〜50μm、格子点間隔は30〜500μmが一般的である。
【0087】
赤・青・緑のカラー画素は、本発明の感光性樹脂積層体や液状レジストなどのカラーレジストを用いたフォトリソグラフィーによって作製したり、カラーインクを用いたインクジェット法、印刷法などによって作製したり、種々の方法を用いることができる。インクジェット法とは、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックスを堰として、インクジェット方式でカラーインクを注入する方法である。インクジェット法は、高価なマスクを必要とする露光工程を必要としない、現像工程を必要としない、凹凸にかかわらず画素パターンを形成できる、歩留まりが向上する、などの面から、低コストで簡便に画素パターンを形成できるので好ましい。フォトリソグラフィーによらずに硬化できるので感熱性でもよいし、全面露光によって硬化させることもできるので感光性であってもよい。感熱性又は感光性のカラーインクとしては公知のものも用いることができる。また、本発明において、着色物質として例示した顔料及び染料、エチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物、熱又は光重合性開始剤とを有し、溶剤により粘度を適宜調整した組成物を用いることができる。例えば特開2004−213033号公報の実施例1に記載の着色インクなどを用いることができる。また、ブラックマトリックスは撥カラーインク性であることが好ましい。この性質によりインクの着弾精度の問題からブラックマトリックス上に乗ったカラーインクも堰を滑り落ちてカラー画素用の空間を満たすことができる。
【0088】
本発明のブラックマトリックスの製造方法においては、感光性樹脂積層体を使用する。該製造方法は、感光性樹脂組成物をガラス基板に直接塗布して乾燥し、後にフォトマスクを通して露光し現像する製造方法と比較して、乾燥工程を使用しない、ガラスに塗布する際の膜厚ムラが生じない、透明な支持層が光重合性樹脂組成物とフォトマスクとの接触を防いでいるのでフォトマスクが汚れにくい、などの面で好ましい手法である。
さらに、酸素遮断層を介して露光することにより、感光性樹脂層が直接酸素と接触することを防ぐため非常に高い感度が得られる。これは、特許文献1などに開示されているようなガラス基板に感光性樹脂組成物を直接塗布乾燥する方法と比較して、感度の点で有用であることを示している。感度が高いため、開始剤量を低く抑えることが可能で保存安定性が向上する。
【実施例】
【0089】
本発明を実施例に基づいて説明する。
<支持層の準備>
支持層には、表1に示すフィルム(但し、A−3以外は離型処理あり)を用いた。
<酸素遮断層用の樹脂組成物溶液の作製>
それぞれ固形分が表2に示す割合になるよう酸素遮断層用の樹脂組成物溶液を作製した。溶媒は、水/メタノールが質量比で8/2、全体の固形分濃度が20質量%となるよう
に調整した。このとき、樹脂B−1を予め適当量の水に混合、加熱の上溶解し、その他成分を加えた。なお、表2において、略号(B−1)〜(C−3)で表した成分は次に示すとおりである。
B−1:ポリビニルアルコール、(株)クラレ製PVA−205、重合度500、けん化価87〜89
B−2:ポリビニルアルコール、(株)クラレ製PVA−220、重合度2000、けん化価87〜89
C−1:重量平均分子量10万のポリビニルピロリドン((株)日本触媒製K−30)
C−2:重量平均分子量4万のポリビニルピロリドン((株)日本触媒製K−15)
C−3:数平均分子量550であるポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本油脂(株)製ユニオックスM−550)
【0090】
<酸素遮断層の作製>
酸素遮断層用の樹脂組成物溶液を、支持層上にバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が4μmとなる様に均一に塗布した。支持層に離型処理が施してある場合は、その離型処理面上に塗布した。
<式(I)の化合物の合成>
まず、特開2001−354735号公報に記載の方法に従って上記式(I)で表される化合物1を合成した。
すなわち、500ml四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂235g(エポキシ当量235)とテトラメチルアンモニウムクロリド110mg、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール100mg及びアクリル酸72.0gを仕込んだ。これに25ml/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、溶液が白濁した状態のまま徐々に昇温し、120℃に加熱して完全溶解させた。ここで溶液は次第に透明粘稠になったがそのまま撹拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱撹拌を続けた。酸価が目標に達するまで12時間を要した。そして室温まで冷却し、無色透明で固体状の下記式(V)で表されるビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレートを得た。
【0091】
【化8】

【0092】
次いで、このようにして得られた上記のビスフェノールフルオレン型エポキシアクリレート307.0gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)600gを加えて溶解した。その後、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物80.5g及び臭化テトラエチルアンモニウム1gを混合し、徐々に昇温して110〜115℃で4時間反応させた。酸無水物基の消失を確認した後、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸38.0gを混合し、90℃で6時間反応させ、上記式(I)に相当する化合物1を得た。酸無水物基の消失はIRスペクトルにより確認した。
【0093】
ここで化合物1は、上記式(I)に示す化合物において、Xは、上記式(II)で示される基であり、Yは1、2、3、6−テトラヒドロ無水フタル酸から酸無水物基(−CO−O−CO−)を除いた残基、Zは3、3’、4、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物から酸無水物を除いた残基であるとともに、Y/Zモル比は50.0/50.0である化合物に相当する。
この化合物1をアルカリ可溶性高分子とし、PGMEA中固形分濃度が40質量%になるように調整し、以下の感光性樹脂組成物溶液の作成に用いた。
【0094】
<感光性樹脂組成物溶液の作製>
表3に示す割合(表に記載の数値は、固形分換算の質量部)で感光性樹脂組成物の各成分を混合し、メチルエチルケトンを溶媒として固形分量が10質量%の感光性樹脂組成物溶液を得た。なお、表3において、略号(D−1)〜(H−1)で表した感光性樹脂組成物を構成する成分は次に示すとおりである。
D−1:上記で合成した化合物1のPGMEA溶液(固形分濃度40質量%)
D−2:メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸の共重合体のメチルエチルケトン溶液(質量比85/15、重量平均分子量30,000、固形分濃度40質量%)
E−1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
E−2:コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート (東亜合成社製 アロニックス TO−756)
F−1:1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アセテート (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 IRGACURE OXE−02)
G−1:カーボンブラックと分散剤とを18:3の割合で分散したカーボンブラック分散体のPGMEA溶液(固形分濃度22質量%)
H−1:ヒンダードフェノール型禁止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 IRGANOX 245)
【0095】
(実施例1〜7)
<感光性樹脂積層体の作製>
表4に示すように、前記感光性樹脂組成物の溶液を、上記において作製した支持層上に形成した酸素遮断層上に、乾燥後の光学濃度の値が4.2になるようにバーコーターを用いて均一に塗布した。次いで、感光性樹脂層に厚さ20μmの延伸ポリプロピレン製保護層(王子製紙(株)製アルファンE−200A)を張り合わせ、感光性樹脂積層体を得た。結果を表4に示す。
【0096】
<ブラックマトリックスの形成>
上記感光性樹脂積層体の保護層を剥がして、ガラス基板にラミネートした。ラミネーターは、大成ラミネーター(株)製VA−400IIIを用いた。ガラス基板は120℃で予熱し、ラミネートロールは120℃に加熱し、ラミネート速度は2m/min、シリンダー圧力0.4MPaでラミネートした。10cm角基板に感光性樹脂積層体をラミネートするのに約5秒を要した。その後、支持層を剥離し、ライン幅:スペース幅が1:9のマトリックスパターンのガラスマスクを通して、超高圧水銀ランプ((株)オ−ク製作所製高精度基板用自動露光装置EXM−1066−H−01)により40mJ/cmで露光した。このとき支持層を剥離した後の積層基材表面とガラスマスクとの距離を100μmに設定した。支持層を剥離した後、0.2質量%の炭酸ナトリウム水溶液を26℃でスプレーし、未露光部分の光重合性樹脂層を溶解除去して現像した。このときのスプレー時間は、未露光部分の光重合性樹脂層がガラス基板からちょうど除去されたときの時間(最小現像時間)の2.5倍とした。現像後は、0.3MPaの水洗圧で基板をスプレー水洗し、風乾した。その後、コンベア式遠赤外乾燥炉((株)ファーネス製、ファーネスインフラスタインヒーター0.9kWx4本x3セット、炉長1500mm)により240℃5分ポストベークし、ブラックマトリックスを形成した。
【0097】
<評価>
1)酸素遮断層の塗布性
上記酸素遮断層を支持層上に塗布する際に、以下の様に塗布性を評価した。
○(良):酸素遮断層が均一に塗布されている。
×(不可):ハジキが発生し、均一に塗布されていない。
2)感光性樹脂層の塗布性
感光性樹脂層を支持層上に塗布する際に、以下の様に塗布性を評価した。
○(良):感光性樹脂層が均一に塗布されている。
×(不可):ハジキが発生し、均一に塗布されていない。
【0098】
3)支持層から基材への転写性
上記ラミネートの後支持層を剥離した際に、酸素遮断層と感光性樹脂層がともにガラス基板へ転写されるか否かを以下の様に評価した。
○(良):酸素遮断層と感光性樹脂層が、一体となって支持層より完全に剥離し、ガラス基板に転写される。
×(不可):感光性樹脂層はガラス基板に転写されるが、酸素遮断層の一部乃至全部が支持層から剥離せず感光性樹脂層と分離し、ガラス基板に転写しない。又は、感光性樹脂層も酸素遮断層もそれらの一部乃至全部が支持層から剥離せずガラス基板に転写しない。又は、酸素遮断層が無い場合は、感光性樹脂層の一部又は全部が支持層から剥離せずガラス基板に転写しない。
【0099】
4)最小現像時間
上記ラミネート後支持層を剥離し、露光せずに現像した。感光性樹脂層が現像されてガラス基板が現れ始めるまでの時間を最小現像時間とし、以下のように評価した。
○(良):最小現像時間が30秒以下
△(可):最小現像時間が30秒を超え、60秒以下
×(不可):最小現像時間が60秒を超える
【0100】
5)感度
上記ブラックマトリックスの形成に基づき、ライン幅:スペース幅=1:9のマトリックスパターンマスクを通して50mJ/cmで露光し、最小現像時間の2.5倍の時間現像してマトリックスパターンを形成した。マスク幅10μmのパターンに対応するブラックマトリックスの線幅を光学顕微鏡にて測長し、線幅に基づき以下の様に評価した。
○(良):線幅10μm以上
△(可):線幅8μm以上10μm未満
×(不可):線幅8μm未満
【0101】
6)遮光性
まず、上記ブラックマトリックスの形成に基づき、パターンを作製した。テンコール・インスツルメンツ社製アルファステップ(AS200)を用いてガラス基板に形成されたパターンの高さを測定し、これを膜厚(μm)とした。同時に、同様の方法でベタパターンを作成し、グレタグマクベス社製光学濃度計D200−IIを用いて光学濃度を測定した。光学濃度とは、ある光源の光に対して入射光強度をI0、透過光強度をIとした場合に、光学濃度=log10(I0/I)の関係で表される。光学濃度を膜厚で除した値をもとめ、これを遮光性とした。遮光性の評価は以下のランクに従った。
○(良):4.5以上
△(可):3.0以上4.5未満
×(不可):3.0未満
【0102】
7)細線形成性
上記ブラックマトリックスの形成に基づき、ライン幅:スペース幅=1:9のマトリックスパターンマスクを通して50mJ/cmで露光し、最小現像時間の2.5倍の時間現像してマトリックスパターンを形成した。マトリックスパターンが形成できているかどうかを光学顕微鏡で目視にて観察し、形成可能であった最小のマトリックスパターンの線幅を測長した。測長結果に基づき以下のように細線形成性を評価した。
○(良):8μm未満
△(可):8μm以上12μm未満
×(不可):12μm以上
(実施例8〜12)
<感光性樹脂積層体の作製>
上記実施例1において作成したフィルムを用い、下記8)及び下記9)に示すような評価をしてこれを実施例8とした。さらに酸素遮断層の膜厚を表5に記載のように変更する以外は実施例8と同じようにフィルムを作成、評価し、実施例9及び10とした。さらに酸素遮断層の膜厚を表5に記載のように変更する以外は実施例6と同じようにフィルムを作成し、下記8)及び下記9)に示すような評価をしてこれを実施例11とした。さらに酸素遮断層の膜厚を表5に記載のように変更する以外は実施例7と同じようにフィルムを作成し、下記8)及び下記9)に示すような評価をしてこれを実施例12とした。
8)ピンホール観察
表5に示す実施例において、以下のようにフィルムを観察しピンホールの個数を計算した。まず、周囲を完全に遮光し暗室を作成した。暗室内に、下面から透明ガラス板越しに40WのUVカット蛍光灯(ナショナル製FLR40S−Y−F/Mカラード純黄色)6本により投光できる投光器を設置した。投光器のガラス板上に、表5に示す実施例のフィルムを隙間無く設置し、目視でフィルムを観察した。40cmx50cmの範囲でピンホール個数をカウントし、以下の通りランク分けした。
◎(優):300個未満
○(良):300個以上500個未満
△(可):500個以上
9)カットチップ評価
表5に示す実施例において、以下のようにしてカットチップ性を評価した。感光性樹脂積層体から保護層を剥離し、感光性樹脂層が上面になるようにカッティングマットにフィルムを設置した。カッティングマットに対してカッター刃が45°になるように角度を固定し、フィルムを5cmの長さ分一気に切断した。切断部分を顕微鏡で観察した。酸素遮断層及び感光性樹脂層が切断部分で支持体より剥離している状態を以下の通りランク分けした。
◎(優):ほとんど剥離していない
○(良):切断部分から、切断の方向に沿ってほぼ均一な幅で剥離が発生している。
△(可):切断部分から、切断の方向に対して垂直な方向に向かって大きな剥離や割れが発生している。
【0103】
(比較例1〜8)
<感光性樹脂積層体の作製>
表4に示す構成で実施例と同様の方法にて比較例1〜8の感光性樹脂積層体を作製した。これらの比較例1〜8の感光性樹脂積層体を用いて、実施例と同じようにして、ガラス基板上にブラックマトリックスを形成した。評価についても、実施例と同じ項目を評価し、結果を表4に示した。以下、それぞれの比較例の意味するところを説明する。
【0104】
比較例1は、支持層の剥離力が100mN/25mm未満の支持層を用いた例である。酸素遮断層を塗布したところ塗布面にハジキが生じて均一に塗工できなかった。均一な塗工ができなかったためそれ以外の評価もできなかった。
比較例2は、支持層の剥離力が4000mN/25mmを超える支持層を用いた例である。感光性樹脂積層体の作製は可能であったが、ラミネート後支持層を剥離すると、感光性樹脂層がガラス基板に転写するのみで、酸素遮断層は支持層から剥離しなかった。そのため感度が得られずパターンが形成できなかった。
【0105】
比較例3は、酸素遮断層中の可塑剤の重量平均分子量が5000未満の例である。現像中にパターンが流れてしまい画像形成ができなかった。
比較例4は、酸素遮断層中に可塑剤を含まない例である。ラミネート後支持層を剥離すると、一部の酸素遮断層は感光性樹脂層とともにガラス基板に転写されたが、一部の酸素遮断層は支持層から剥離せず、感光性樹脂層と分離した。酸素遮断層が感光性樹脂層とともに一体となって転写しなかった部分は、感度が得られずパターン形成ができなかった。
【0106】
比較例5は、酸素遮断層を含まない感光性樹脂積層体の例である。支持層の離型処理面に感光性樹脂組成物を塗布しようとしたが、ハジキが生じて均一に塗布できなかった。
比較例6は、離型処理がなく、さらに酸素遮断層を含まない感光性樹脂積層体の例である。ラミネート後、支持層を剥離すると、支持層側に感光性樹脂が一部付着し、一方ガラス基板に転写された感光性樹脂層には支持層を剥離する際の剥離線が発生し、均一に転写することができなかった。さらに、露光後、現像前に支持層を剥離した場合は、露光した部分で支持層と感光性樹脂層とガラス基板が接着されて一体となり、支持層を剥離しようとすると露光された部分から支持層が破れて剥離できなかった。
【0107】
比較例7は、式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子の感光性樹脂組成物中の配合量が3質量%未満の例である。感度や細線の形成性が十分ではなかった。
比較例8は、式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子の感光性樹脂組成物中の配合量が40質量%を超える例である。現像時間が大幅に遅延した。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
【表5】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持層と、酸素遮断層と、感光性樹脂層とを順に積層してなる感光性樹脂積層体であって、該支持層は、その積層しない面とは反対側の面の剥離力が100〜4000mN/25mmであって、該酸素遮断層は水溶性樹脂組成物を含み、該水溶性樹脂組成物は少なくともビニルアルコールを共重合単位として有する水溶性高分子と、重量平均分子量5,000以上2,000,000以下の水溶性可塑剤、とを含み、該感光性樹脂層は感光性樹脂組成物を含み、該感光性樹脂組成物は、該感光性樹脂組成物100質量%に対して、(a)下記式(I)で表されるアルカリ可溶性高分子3〜40質量%、(b)下記式(I)以外のエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物3〜50質量%、及び(c)光重合開始剤0.1〜20質量%を含むことを特徴とする感光性樹脂積層体。
【化1】


(上記式(I)中、Xは下記式(II)で表される基、Yはジカルボン酸無水物の酸無水物基を除いた残基、Zはテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を除いた残基、nは1〜20の整数である。下記式(II)中のR1及びR2はそれぞれ独立に、H又はCH3を表す。)
【化2】

【請求項2】
前記水溶性樹脂組成物中の水溶性可塑剤がポリビニルピロリドンである請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項3】
前記支持層が、その積層しない面とは反対側の面の剥離力が100〜1500mN/25mmである請求項1又は2記載の感光性樹脂積層体。
【請求項4】
前記酸素遮断層の膜厚が2〜3μmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項5】
前記感光性樹脂組成物が、下記式(III)で表されるエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体。
【化3】


(上記式(III)中、R3、R4及びR5は、それぞれ互いに独立なH又はCH3基を表す。R6は2価の連結基で、炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数3〜10のシクロアルキレン基、及び炭素数6〜10のフェニレン基からなる群から選ばれる一種の基を表す。)
【請求項6】
前記感光性樹脂組成物が、該感光性樹脂組成物100質量%に対して、(d)着色顔料40〜70質量%を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体を、基板にラミネートする工程、支持層を剥離する工程、露光する工程、及び現像する工程を順に行うブラックマトリックス付き基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂積層体を、基板にラミネートする工程、露光する工程、支持層を剥離する工程、及び現像する工程を順に行うブラックマトリックス付き基板の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の方法で基板上にブラックマトリックスを形成する工程と、前記基板がガラス基板であり、該ガラス基板上のブラックマトリックスで覆われていない部分の少なくとも一部に感熱性又は感光性のカラーインクをインクジェット方式により印刷する印刷工程とを含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により製造されるカラーフィルタ。

【公開番号】特開2009−83482(P2009−83482A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234533(P2008−234533)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】