説明

感光性樹脂組成物およびソルダーレジスト

【課題】樹脂層を形成した際に、耐熱性を有し、写真法によりパターン形成精度が良好で、しかも、アルカリによる現像が可能な感光性樹脂組成物およびそれを用いたソルダーレジストを提供する。
【解決手段】(a)少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物と、(b)少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物と、(c)ジカルボン酸もしくは無水カルボン酸化合物と、を反応させて得られる光重合性不飽和化合物(A)、および多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。前記感光性樹脂組成物を含んでなる感光性ソルダーレジスト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物およびそれを用いたソルダーレジストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の軽薄短小化や高機能化が急速度に進展しており、これら機器内に使用される半導体集積回路においても、小型化、高集積化が進行している。そのため、従来のパッケージに比べて、集積回路の配線ピン数が増大するのに対し、実装面積やパッケージ面積は逆に小さくなるといったジレンマがあるため、従来のパッケージ方式とは異なる、BGA(BallGridArray)方式,さらにはCSP(Chip Scale Package)方式などの密度の高いパッケージ方式が提案されている。これらの半導体パッケージ方式では、従来型半導体パッケージのリードフレームの代わりに、サブストレートあるいはインターポーザーなどの、プラスチックやセラミックス等各種材料を使って構成される半導体チップ搭載用プリント配線板を使用して、半導体チップの電極とプリント配線板の電気的接続を行っている。この半導体チップ搭載用プリント配線板上に構成される回路は、小型化・高密度化した電子機器内に導入されるものであり、一般的なプリント配線板に比べて、配線が非常に細線化・高密度化が進んだものとなる。そこで、このようなパッケージの形式では、半導体チップとプリント配線板の電極との電気的接続を行う際に、半田リフロー等により、高温雰囲気で微細配線が接続されることより、この微細配線を保護する必要が生じる。その保護層として、種々の樹脂組成のソルダーレジストが開発されている。
【0003】
上記ソルダーレジストとしては、写真法により形成され、近年主流となっている炭酸ナトリウムなどの弱アルカリ水溶液による現像により、微小な開孔部を形成することが可能なものが求められているが、従来のアルカリ現像型のもの(例えば、特許文献2参照。)では、微小の開孔部形成が可能でパターン精度の良いレジスト形成ができないため、今後の更なる配線の微細化に対応できない。また耐熱性(ガラス転移温度)が低い。
【特許文献1】特開2002−293882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、樹脂層を形成した際に、耐熱性を有し、写真法によりパターン形成精度が良好で、しかも、アルカリによる現像が可能な感光性樹脂組成物およびそれを用いたソルダーレジストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特定の光重合性不飽和化合物(A)、および多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、アルカリ現像性が向上し、更には耐熱性をも有することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明は下記第(1)項から第(3)項により達成される。
(1) (a)少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物と、
(b)少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物と、
(c)ジカルボン酸もしくは無水カルボン酸化合物と、
を反応させて得られる光重合性不飽和化合物(A)、および多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
(2) 前記感光性樹脂組成物は、少なくともカルボキシル基を1つ以上含むエポキシ樹脂(C)を含むものである第(1)項に記載の感光性樹脂組成物。
(3) 第(1)項または第(2)項に記載の感光性樹脂組成物を含んでなる感光性ソルダーレジスト。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、樹脂層を形成した際に、耐熱性を有し、写真法によりパターン形成精度が良好で、しかも、アルカリによる現像が可能な感光性樹脂組成物およびそれを用いたソルダーレジストを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、(a)少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物と、(b)少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物と、(c)ジカルボン酸もしくは無水カルボン酸化合物と、を反応させて得られる光重合性不飽和化合物(A)、および多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。これにより、アルカリ現像性が向上し、更には耐熱性をも有することができ、さらには、前記特性を有するソルダーレジストを提供できるものである。
【0008】
以下本発明について詳細に説明する。
まず本発明の感光性樹脂組成物を構成する各成分について述べる。
【0009】
本発明に用いる光重合性不飽和化合物(A)は、(a)少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物と、(b)少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物と、(c)ジカルボン酸もしくは無水カルボン酸化合物と、を反応させることにより得られるものである。
【0010】
本発明に用いる光重合性不飽和化合物(A)を構成する少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物(a)としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
これらの中でも、フェノールアラルキル樹脂およびビフェニルアラルキル樹脂が好ましく、特に、下記一般式(1)で表されるフェノールアラルキル樹脂および下記一般式(2)で表されるビフェニルアラルキル樹脂のいずれか一方または双方を主成分とするものを用いるのが好ましい。これにより、得られたソルダーレジストは耐熱性により優れる。
【0012】
【化1】

式(1)中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびフェニル基の中から選択される1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、aは、1以上の整数であり、1〜10であることが好ましい。
【0013】
【化2】

式(2)中、R〜R12は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびフェニル基の中から選択される1種を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。ただし、bは、1以上の整数であり、1〜10であることが好ましい。
【0014】
本発明に用いる光重合性不飽和化合物(A)を構成する少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物(b)としては、特に限定はないが、光反応性、入手の容易さ等から、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
【0015】
本発明に用いる光重合性不飽和化合物(A)を構成するジカルボン酸または無水カルボン酸化合物(c)としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等が挙げられる。
【0016】
本発明に用いる光重合性不飽和化合物(A)の合成方法としては、例えば、まず、少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物(a)を、メチルエチルケトン、カルビトールアセテートおよびセロソルブアセテート等の有機溶剤に溶解させ、次いで、これに、少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基もしくはメタクリロイル基とを有する化合物(b)を、少なくとも2つのフェノール性水基を有する化合物(a)の水酸基1モルに対し、グリシジルエーテル基が0.2〜1.0モルとなるように加え、さらに、メトキシフェノール等の不飽和基重合禁止剤、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基とグリシジル基の反応を促進するベンジルジメチルアミン等の反応促進剤を添加して、80℃〜120℃で2〜8時間加熱しながら混合する。次いで、ジカルボン酸または無水カルボン酸(c)を、前記フェノール性水酸基を有する化合物(a)の水酸基1モルに対し、0.1〜0.5モル添加して、80℃〜120℃で2〜12時間加熱しながら混合する。得られた反応生成物の一部を、フェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で酸価測定し、酸価が50〜180のものを光重合性不飽和化合物(A)として用いることが好ましい。酸価が50未満の場合、炭酸ナトリウムなどのアルカリ現像液で現像することが難しくなることがあり、180を超える場合、現像時に樹脂層表面が荒れることがある。
【0017】
本発明に用いる多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)としては、1分子内に少なくとも2つのオキサジン環を有し、開環重合により硬化する樹脂であれば、特に限定されるものではない。多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物は、フェノール性水酸基を二つ以上有し、炭素環上の水酸基の隣接する位置に、少なくとも1つが水素を有するフェノール性水酸基を有する化合物と、1級アミンと、ホルマリン等のホルムアルデヒド類とより合成することができる。
【0018】
前記多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を構成するフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、多官能フェノール化合物、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、トリスフェノール化合物、フェノール樹脂等が挙げられる。前記多官能フェノール化合物としては、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノールなどが挙げられる。前記ビフェノール化合物としては、4,4−ビフェノール、2,2−ビフェノール、3,3,5,5−テトラメチルビフェノールなどが挙げられる。前記ビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールF(4,4−メチレンビスフェノール、2,4−メチレンビスフェノール、2,2−メチレンビスフェノール)及びその位置異性体、ビスフェノールS(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン)等が挙げられる。前記フェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノール樹脂、トリスフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、キシリレン変性ノボラック樹脂、テルペン変性ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等が挙げられるが、特に限定されるもののではない。
【0019】
前記多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を構成する1級アミンとしては、具体的にはメチルアミン、アニリン、トルイジン、アニシジン等の置換アニリン等が挙げられる。
【0020】
前記多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を構成するホルムアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド水溶液であるホルマリン、あるいは重合物であるパラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いる多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)は、前記フェノール性水酸基を二つ以上有し、炭素環上の水酸基の隣接する位置に、少なくとも1つが水素を有するフェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基1モルに対して、前記一級アミン化合物1モル、前記ホルムアルデヒド類2モルを、無溶媒または溶媒中で、反応させて得ることができる。反応における反応温度としては、一般的に70〜110℃で、好ましくは、90〜100℃で、反応時間としては20分〜10時間反応させる。反応終了後は、溶媒を用いた場合、溶媒を留去し、必要に応じてアルカリ洗浄操作を行ない、未反応の前記成分を除去し、その後、120℃以下の温度で減圧乾燥することにより、多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)が得られる。
前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられ、単独もしくは混合溶媒にして使用することができる。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物において、多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)の含有量としては、光重合性不飽和化合物(A)100重量部に対し、5〜100重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましい。前記含有量とすることにより、硬化物の熱時特性、特にガラス転移温度が良好であり、また、光照射により硬化させてパターニングする際に未露光部の溶解性に富み、パターニング精度が良好なものとなる。
【0023】
本発明において、任意に用いる少なくともカルボキシル基を1つ以上含むエポキシ樹脂(C)としては、例えば、エポキシ樹脂とジカルボン酸化合物またはその無水物とを反応させたものを用いることができる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等を挙げることができ、前記ジカルボン酸化合物またはその無水物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタミン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等を挙げることができる。前記エポキシ樹脂と前記ジカルボン酸化合物またはその無水物とは、メチルエチルケトン、カルビトールアセテート、セロソルブアセテート等の有機溶剤に溶解させ、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、ジカルボン酸又は酸無水物0.1〜0.4モルを、グリシジル基の反応を促進するベンジルジメチルアミン等の反応促進剤を添加して、80℃〜120℃で2〜8時間加熱しながら反応させることにより得られる。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物において、少なくともカルボキシル基を1つ以上含むエポキシ樹脂(C)の含有量としては、光重合性不飽和化合物(A)100重量部に対し、5〜40重量部が好ましく、10〜20重量部がより好ましい。前記少なくともカルボキシル基を1つ以上含むエポキシ樹脂(C)を含有することにより、硬化物の熱時特性、特にガラス転移温度がより良好なものとなり、また、光照射により硬化させてパターンニングする際に未露光部の溶解性に富み、パターニング精度がより良好となる。
【0025】
さらに本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分以外に、必要に応じて、公知の感光性樹脂やソルダーレジストなどの組成物に、従来より、広く使用されている種々の添加剤を加えることができ、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、4−フェニルベンゾフェノンおよびヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類などの光硬化触媒;、光増感剤;、2−メチルイミダゾールおよび1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール系触媒、アミン系触媒およびリン系触媒などのエポキシ化合物用硬化触媒;、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するアクリレート又はメタクリレート化合物や、トリエチレングリコールジメタクレレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレートおよびグリセロールメタクリレートなどのメタクリル酸のエステル等の不飽和カルボン酸と脂肪族ポリオール化合物とのエステル類やエチルセルロソルブ等の希釈剤;、硫酸バリウム、酸化ケイ素、タルクおよび炭酸カルシウムなどの無機充填剤;、フタロシアニンブルー、チタン酸バリウム、カーボンブラック、ベンゾイミダゾロンおよびベンズイミダゾロンなどの着色剤;、消泡剤等、密着付与剤、レベリング剤;、ハイドロキノンモノメチルエーテルおよびピロガロールなどの重合禁止剤等が挙げられる
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、光重合性不飽和化合物(A)および多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)、任意に、カルボキシル基を1つ以上含むエポキシ樹脂(C)を、メチルエチルケトン、カルビトールアセテートおよびセロソルブアセテート等の有機溶剤に溶解させ、必要に応じて、上記記載の添加剤を添加後、室温で2〜5時間攪拌することで、感光性樹脂組成物を得ることができる。この樹脂組成物は、ソルダーレジスト、感光性接着剤、印刷用製版材料、成形材料、コーティング材料、情報記録材料、インキ材料に用いることができる。
【0027】
本発明のソルダーレジストは、例えば、上記感光性樹脂組成物を、PETフィルムやガラス板などの基材上に、通常1〜60μm程度の厚みで塗布して、樹脂層を形成し、60〜100℃程度の温度で、5〜10分間程度の熱処理を行うことにより、樹脂層中の溶剤を除去して、固形化またはプレポリマー化した基材付きフィルムとして、これを、プリント配線板等の所定の位置に積層し成形して使用することができる。また、上記感光性樹脂組成物を、プリント配線板などの所定の位置に直接塗布して、上記同様にして固形化またはプレポリマー化して、ソルダーレジストを形成しても良い。
さらに、前記プリント配線板に積層したソルダーレジストは、開孔したい部分に、光を遮断するフォトマスクをあて、紫外線、レーザー光等の光エネルギーを照射してパターニングを行うことができるが、このとき、照射光源としては、低圧水銀灯、キセノンランプまたはメタルハライドランプが適当であり、照射条件は常法に従えばよい。
上記のようにして紫外線照射をした後、炭酸ナトリウム(1重量%)溶液により現像を行い、未硬化部分である紫外線未露光部のソルダーレジストを溶解除去する。その後、必要に応じ加熱により、ソルダーレジストを完全に硬化させて、レジストパターンを形成することができる。かかる加熱硬化温度の好ましい条件としては100℃ないし200℃、更に好ましくは120℃ないし180℃、加熱時間は10分ないし2時間が好ましいが、必ずしも限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものでない。
[(A)光重合性不飽和化合物の合成]
合成例1
3Lのフラスコ中に、フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)製XL−225、上記一般式(1)における繰返し単位数aが3で表されるフェノールアラルキル樹脂。 軟化点:77℃、水酸基当量:172、150℃のICI溶融粘度:3.6poise)688g(4当量)をメチルエチルケトン700gに溶かし、重合禁止剤としてハイドロキノン0.2gを加えた後、グリシジルメタクリレート213g(3モル)、トリブチルアミン1g添加して100℃で6時間攪拌反応させた。その後、無水コハク酸160g(1.6モル)を加え、110℃で5時間攪拌反応させ、光重合性不飽和化合物(A−1)962g得た。尚、光重合性不飽和化合物A−1の酸価は75であった。
【0029】
合成例2
3Lのフラスコ中に、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(明和化成(株)製、MEH−7851ss、上記一般式(2)における繰返し単位数bが3で表されるビフェニルアラルキル樹脂。軟化点:68℃、水酸基当量:199、150℃のICI溶融粘度:0.9poise)796g(4当量)をメチルエチルケトン700gに溶かし、重合禁止剤としてメトキシフェノール0.5gを加えた後、グリシジルアクリレート258g(3モル)、ベンジルジメチルアミン1gを添加して、100℃で6時間攪拌反応させた。その後、無水コハク酸200g(2.0モル)を加え、80℃で3時間攪拌反応させ光重合性不飽和化合物(A−2)を1037g得た。尚、光重合性不飽和化合物A−2の酸価は95であった。
【0030】
合成例3
5Lのフラスコ中に、4,4’−イソプロピリデンジフェノール2280g(10モル)、ホルマリン(37%)1220g(15モル)およびシュウ酸10gを仕込み、120℃(圧力0.25MPa)で4時間反応させ、反応終了後減圧下で、脱水し、樹脂温度が140℃になるまで加熱した。得られた反応物を取り出し冷却後粉砕し、メチルエチルケトン溶媒にて樹脂分が60%に調整して、フェノールノボラックとした。
上記フェノールノボラック800g(OH約4当量)を、3Lのフラスコ中に投入し、ハイドロキノン0.2gとグリシジルメタクリレート284g(2モル)を加え、110℃に加温した。その中へ、トリブチルアミン1gを添加した後、110℃で5時間攪拌反応させた。
その後、無水フタル酸222g(1.5モル)を加え、80℃で3時間攪拌して反応させ、光重合性不飽和化合物(A−3)を1123g得た。尚、光重合性不飽和化合物A−3の酸価は80であった。
【0031】
比較合成例1
特開2002−293882号公報に従い、エポキシ当量が217で、かつ1分子中に平均して7個のフェノール核残基と、さらにエポキシ基とを併せて有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂1当量とアクリル酸1.05当量とを反応させて得られる反応生成物に、無水テトラヒドロフタル酸0.67当量を常法により反応させ、化合物A−4を得た900g得た。
【0032】
比較合成例2
特開平8−245601号公報に従い、5Lのフラスコに中に、4,4’−イソプロピリデンジフェノール2280g(10モル)、ホルマリン(37%)1220g(15モル)およびシュウ酸10gを仕込み120℃(圧力0.25MPa)で4時間反応させ、反応終了後、減圧下で脱水し、樹脂温度が140℃になるまで加熱した。得られた反応物を取り出し冷却後粉砕し、メチルエチルケトン溶媒にて樹脂分が60%に調整して、フェノールノボラックとした。
上記フェノールノボラック800g(OH約4当量)を、3Lのフラスコ中に投入し、ハイドロキノン0.2gとグリシジルメタクリレート284g(2モル)を加え、110℃に加温した。その中へ、トリブチルアミン1gを添加した後、110℃で5時間攪拌反応させ、光重合性不飽和化合物(A−5)を1023g得た。
【0033】
[(B)多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物の合成]
多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)の合成は、polymer40(1999)pp.1815-1822に順じ合成した。以下に合成例を示すが、必ずしも文献の方法、反応温度、反応時間に限定されるものではない。
【0034】
合成例4
容量0.5Lのフラスコに、p−エチニルアニリン30g(0.23モル)とジオキサン150mlを入れ攪拌して溶解させた。次に、ホルムアルデヒド液(36〜38%水溶液)37.3gを滴下し、室温下で2時間反応させた。その後、1,4−ジヒドロキシベンゼン15.41g(0.14モル)を加え、撹拌下、100〜110℃で、6時間反応させた。反応終了後、析出物をろ過し、真空乾燥機にて、95℃で8時間真空乾燥し、多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B−1)を48g得た。得られた化合物をガスクロマトグラフィー法により重量平均分子量を測定したところ、392であった。
【0035】
合成例5
化合物B−1の合成において、p−エチニルアニリン30g(0.23モル)に代えてp−エチニルアニリン0.77モル(80g)に、ホルムアルデヒド液(36〜38%水溶液)37.3gに代えて124.7gに、1,4−ジヒドロキシベンゼン15.41g(0.14モル)に代えて4,4’−ジヒドロキシビフェニル71.5g(0.38モル)を用いた以外は、化合物B−1の合成と同様にして多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B−2)を153g得た。
【0036】
合成例6
化合物B−1の合成において、p−エチニルアニリン30g(0.23モル)に代えてアニリン71.7g(0.77モル)を、1,4−ジヒドロキシベンゼン15.41g(0.14モル)に代えて4,4’−ジヒドロキシビフェニル71.5g(0.38モル)を用いた以外は、化合物B−1の合成と同様にして、多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B−3)を146g得た。
【0037】
[カルボキシル基を有するエポキシ樹脂(C)の合成]
合成例7
3lのフラスコ中に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製エピコート828:エポキシ当量190)760g(4当量)をメチルエチルケトン700gに溶かし、無水コハク酸160g(1.6モル)、ベンジルジメチルアミン1g添加して100℃で6時間攪拌反応させた後、メチルエチルケトンを減圧蒸留にて除去して、カルボキシル基を有するエポキシ樹脂(C−1)を900g得た。尚NMR測定によりエポキシ基が2.4当量残存することを確認した。
【0038】
[感光性樹脂組成物の調製並びに評価結果]
実施例1
まず、無機充填材として、予め、球状シリカ(平均粒径0.53μm)150重量部を、メチルエチルケトン96重量部に添加して、真空脱法混練撹拌装置により分散させて、シリカスラリーを準備した。
上記合成例1で得られた光重合性不飽和化合物(A−1)310重量部、合成例4で得られた多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン(B−1)80重量部および合成例7で得たカルボキシル基を有するエポキシ樹脂(C−1)50重量部を用い、その他の成分として、無機充填材として、シリカスラリー415.8重量部、光硬化触媒として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバガイギー社製イルガキュア651)12.4重量部、イミダゾール触媒系触媒として、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成社製キュアゾール2E4MZ−CN)1.5重量部を用い、希釈剤として、トリエチレングリコールジメタクレレート32.5重量部、ペンタエリストールテトラアクリレート45.5重量部およびエチルセルロソルブ52重量部を用い、これらを混合して、樹脂組成物を得た。また、得られた樹脂組成物を用いて、下記評価を行った結果を表1に示す。
【0039】
実施例2〜3および比較例1〜2
実施例1と同様にして、表1に示す成分を配合し、混合して、それぞれ樹脂組成物を得た。また、得られた樹脂組成物を用いて、下記評価を行った結果を表1に示す。
【0040】
[評価方法]
前記感光性樹脂組成物を、PET基材フィルム上に、30μmの厚みで塗布し、80℃で10分熱処理し、溶剤を除去して固形化し、PET基材付き樹脂フィルムを作製し、さらに、必要に応じて、樹脂フィルム上に、PPカバーフィルムを積層してフィルムを作製し、各種評価を行った。
[ブレークポイント測定]
炭酸ナトリウムで現像可否の判断ため、1cm×1cmのPET基材付きフィルムをピンセットでつかみ、1%炭酸ナトリウム溶液300ccを満たしたビーカーに浸漬し、1秒間に2回の速さでフィルムを炭酸ナトリウム溶液中でスイングし、溶けるまでの時間を計測した。
[解像度評価]
銅箔光沢面を、過硫酸ナトリウム溶液でソフトエッチング処理し、その上に、前記PPカバーフィルムが積層されたPET基材付き樹脂フィルムのPPカバーフィルムを剥がし、樹脂フィルム面を貼り合わせて、常圧ラミネータ(旭化成 DFR AL−500FR)を用い、80℃で圧着し、60℃で10分間熱処理した後に、PET基材を剥離した。
樹脂フィルム面の上に、25個の100μm径の黒く塗られた円形パターンがあるフォトマスクフィルムを載置して、高圧水銀灯露光装置を用い照射量200mJ/cmで露光した。次いで、1%炭酸ナトリウム水溶液により、0.2MPaのスプレー圧で現像した。その後、未露光部(黒く塗られた円形パターン)の開孔径を測定し、25個の平均が直径85〜110μmであれば合格とした。
[ガラス転移温度測定]
常圧ラミネータを用い、上記で作製した樹脂フィルムを3枚積層して、90μm厚のフィルムを作製し、試験片(幅5mm×長さ30mm×厚さ90μm)を成形し、700mJ/cm露光、150℃、1時間で硬化したものを用いた。
測定には、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメント社製 DMS6100)を用い3℃/分の割合で昇温しながら、周波数10Hzの歪みを与えて動的粘弾性の測定を行い、tanδのピーク値からガラス転移温度(Tg)を判定した。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1〜3と比較例1〜2の評価結果から、実施例1〜3は良好な現像性を有し、高Tgを示すことから耐熱性に優れていたが、比較例1は現像性が悪く、比較例2は、1wt%炭酸ナトリウム溶液には溶解しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、汎用の現像液である炭酸ナトリウム現像が可能で、解像性に優れ、かつ耐熱性に優れることから、感光性接着剤、印刷用製版材料、成形材料、コーティング材料、情報記録材料、インキ材料にも用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも2つのフェノール性水酸基を有する化合物と、
(b)少なくとも1つのグリシジルエーテル基と、少なくとも1つのアクリロイル基またはメタクリロイル基とを有する化合物と、
(c)ジカルボン酸もしくは無水カルボン酸化合物と、
を反応させて得られる光重合性不飽和化合物(A)、および多官能ジヒドロキシベンゾオキサジン化合物(B)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物は、少なくともカルボキシル基を1つ以上含むエポキシ樹脂(C)を含むものである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物を含んでなる感光性ソルダーレジスト。

【公開番号】特開2006−343384(P2006−343384A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166568(P2005−166568)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】