説明

感光性積層体及び感光性フィルム、並びに、プリント基板の製造方法

【課題】光の利用効率が高く、露光感度(感度、細線密着性、解像度)を向上させ、生産性に優れた感光性積層体及び感光性フィルム、並びに、プリント基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の感光性積層体は、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−1成分)、バインダー(B−1成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−1成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる第1の感光層と、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−2成分)、バインダー(B−2成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−2成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる第2の感光層と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の感光層と、第2の感光層とを有し、それぞれの感光層において、感光性のピークが異なる重合開始成分を用いる感光性積層体及び感光性フィルム、並びに、プリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソルダーレジストの多くには、1種の光重合開始剤が用いられている。露光に通常用いられる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプは、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に輝線を有する(例えば、高圧水銀灯について図2参照)。したがって1種の光重合開始剤のみを用いると、光の利用効率が低いため、露光感度が低く、DI露光機で露光すると基板製造の生産性が低い等の問題がある。
【0003】
これらの問題を改善するための一つの方策として、i線(365nm)用に感光性のピークを有する光重合開始剤と、h線(405nm)用に感光性のピークを有する光重合開始剤とを併用することが好ましい。
しかしながら、i線(365nm)に感光性のピークを有する光重合開始剤と、h線(405nm)に感光性のピークを有する光重合開始剤とは、光の吸収波長が重なり合うことが多く、この場合、光の利用効率を著しく低下させるとともに、感度を著しく低下させ、基板製造の生産性を著しく低下させるという問題がある。我々は前記2つの感光性のピークを有する感光層を順々に積層することでこれら生産性の低下を食い止める技術を見出した。
【0004】
なお、感光層を積層させる提案としては、特許文献1、2に開示されているが、特許文献1の提案は、それぞれガラス転移温度が異なるバインダーを用いて形成される第1の感光層と第2の感光層とを有することにより、ラミネート時の変形を抑制すること等を目的とするものであり、また、特許文献2の提案は、(a)トリブロモフェニル(メタ)アクリレートを共重合成分とするバインダーポリマー、(b)ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、(c)光重合開始剤、(d)アミノ樹脂及び(e)芳香族リン酸エステル化合物を含有してなる感光性樹脂組成物の層を有する感光性積層体を有することにより、可とう性に優れ、可とう性耐熱保護被膜の微細パターンを形成するものであり、感光性のピークが異なる第1の感光層と、第2の感光層とを有することで、生産性を向上させることについて開示も、検討もされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−221857号公報
【特許文献2】特開2001−42526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、光の利用効率が高く、露光感度(感度、細線密着性、解像度)を向上させ、生産性に優れた感光性積層体及び感光性フィルム、並びに、プリント基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者は、i線(365nm)に感光性のピークを有する光重合開始剤と、h線(405nm)に感光性のピークを有する光重合開始剤との、光の吸収波長が重なり合う場合でも、高い光の利用効率、感度、及び生産性が得られる感光性積層体及び感光性フィルム、並びに、プリント基板の製造方法を提供することについて、鋭意検討を行った。
その結果、i線付近に感光性のピークを有する重合開始成分を含む感光層(i線感光層)と、h線付近に感光性のピークを有する重合開始成分を含む感光層(h線感光層)と、を形成する組成物を別々に調製し、前記2つの感光層を順々に積層した後、一の感光層側から露光することにより、前記課題を解決することができることを知見した。
また、h線感光層側から露光を行うと、重合開始成分の材料特性上、i線付近の波長の光も吸収してしまい、続くi線感光層において、i線感光層の重合開始に必要な波長の光が十分に得られないという新たな課題を見出し、i線側から露光を行うこととする知見を得た。
即ち、i線感光層側から露光を行うと、i線感光層において、該i線感光層の重合開始に必要な波長の光が吸収されるとともに、h線感光層の重合開始に必要な光が透過され、続くh線感光層において、h線感光層の重合開始に必要な波長の光が得られることを知見し、さらに該知見に基づく具体的な解決手段について、鋭意検討を行った。
【0008】
本発明は、本発明者による前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−1成分)、バインダー(B−1成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−1成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる第1の感光層と、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−2成分)、バインダー(B−2成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−2成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる第2の感光層と、を有することを特徴とする感光性積層体である。
<2> 基体上に、第2の感光層、第1の感光層の順で積層された層構造を有する前記<1>に記載の感光性積層体である。
<3>
重合開始成分(A−1成分)及び重合開始成分(A−2成分)における、波長365nmの光の吸光度が、0.2以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の感光性積層体である。
<4> 光重合開始剤にオキシムエステルを含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の感光性積層体である。
<5>
バインダー(B−1成分、B−2成分)が、下記構造式(I)で示される化合物を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の感光性積層体である。
【化1】

ただし、前記構造式(I)中、R、R、及びRは、水素原子又は1価の有機基を表す。Lは、有機基を表し、なくてもよい。Arは、ヘテロ環を含んでもよい芳香族基を表す。
<6>
感光性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂(D成分)を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の感光性積層体である。
<7>
感光性樹脂組成物が、無機フィラー(E成分)を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の感光性積層体である。
<8>
前記<1>から<7>のいずれかに記載の感光性積層体を第1の感光層側から露光することにより製造されることを特徴とする感光性フィルムである。
<9>
前記<1>から<7>のいずれかに記載の感光性積層体からプリント基板を製造する方法であって、被加工基板上に、重合開始成分(A−2成分)を含有する第2の感光層と、重合開始成分(A−1成分)を含有する第1の感光層とを、この順で積層した後、前記第1の感光層側から露光することを特徴とするプリント基板の製造方法である。
<10>
積層する方法が、塗布法、及びラミネート法のいずれかである前記<9>に記載のプリント基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、本発明は、光の利用効率が高く、露光感度(感度、細線密着性、解像度)を向上させ、生産性に優れた感光性積層体及び感光性フィルム、並びに、プリント基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の感光性積層体の概略を示す図である。
【図2】図2は、露光光源として用いる高圧水銀ランプの発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(感光性積層体)
本発明の感光性積層体は、第1の感光層と、第2の感光層とを有してなる。
また、前記第1の感光層と、前記第2の感光層とは、露光装置の光源側から、前記第1の感光層と、第2の感光層とが、この順で積層される。
なお、本明細書において、積層とは、第1の感光層と、第2の感光層とが、別体として層分離されている場合のほか、各層の界面において、各層が融合されている場合も含む。
【0012】
<第1の感光層>
前記第1の感光層は、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−1成分)、バインダー(B−1成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−1成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる。
【0013】
前記第1の感光層の厚みとしては、特に制限はないが、5μm〜20μmが好ましく、10μm〜17.5μmがより好ましく、12μm〜16μmが特に好ましい。
5μm未満であると、充分な感光性が得られず、20μmを超えると、充分な解像性が得られない。
【0014】
<第2の感光層>
前記第2の感光層は、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−2成分)、バインダー(B−2成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−2成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる。
【0015】
前記第1の感光層の厚みとしては、特に制限はないが、5μm〜20μmが好ましく、10μm〜17.5μmがより好ましく、12μm〜16μmが特に好ましい。
5μm未満であると、充分な感光性が得られず、20μmを超えると、充分な解像性が得られない。
【0016】
<積層体>
前記感光性積層体においては、前記第1の感光層と、前記第2の感光層とが積層された状態で、前記第1の感光層側から露光されてなる。
前記第1の感光層と、前記第2の感光層との積層順を逆にし、前記第2の感光層側から露光を行うと、前記第2の感光層の重合開始成分が、前記第1の感光層に含まれる重合開始成分の感光性のピーク波長を含む光を吸収し、第1の感光層における感度が低下するという問題がある。そのため、本発明では、このような積層順としている。
【0017】
−積層−
前記積層体としては、特に制限はないが、基体上に、第2の感光層、第1の感光層の順で積層された層構造を有することが好ましい。
【0018】
前記積層の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塗布法、ラミネート法等が挙げられるが、中でも、第1の感光層と第2の感光層との層分離の観点から、ラミネート法が好ましい。
【0019】
−−塗布法−−
前記塗布法としては、第1層目、及び第2層目の感光性塗布層を積層した積層物をあらかじめ作成して、それを基板にラミネートする方法である。
塗布の方式には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、支持体上に、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法、スリットコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ナイフコート法等により各種塗布を行う方法が挙げられる。
【0020】
前記基体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、支持体、被加工基板等が挙げられる。
【0021】
−−支持体−−
前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記感光層を剥離可能であり、かつ光の透過性が良好であるものが好ましく、更に表面の平滑性が良好であることがより好ましい。
【0022】
前記支持体は、合成樹脂製で、かつ透明であるものが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフロロエチレン、ポリトリフロロエチレン、セルロース系フィルム、ナイロンフィルム等の各種のプラスチックフィルムが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2〜150μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、8〜50μmが特に好ましい。
また、感材層の上に保護フィルムを配することもできる。前記保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが好ましい。
【0024】
前記支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、長尺状が好ましい。前記長尺状の支持体の長さは、特に制限はなく、例えば、10〜20,000mの長さのものが挙げられる。
【0025】
乾燥の条件としては、各成分、溶媒の種類、使用割合等によっても異なるが、通常60〜110℃の温度で30秒間〜15分間程度である。
【0026】
−−被加工基板−−
前記被加工基板は、感光層が形成される被処理基板、又は本発明の感光性樹脂組成物層が転写される被転写体となるもので、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を持つものまで任意に選択できる。板状の基体が好ましく、いわゆる基板が使用される。具体的には、公知のプリント配線板製造用の基板(プリント用基板)、ガラス板(ソーダガラス板など)、合成樹脂性のフィルム、紙、金属板などが挙げられる。
【0027】
−−ラミネート法−−
前記ラミネート法は、第一の感光層、第二の感光層を別々に作成しておき、ラミネート時に積層する方式である。
本発明の前記感光性積層体を被加工基板上に配するに際し、一旦、感光性樹脂組成物を前記支持体上に塗布した後、前記支持体を剥離したものを被加工基板にラミネートすることができる。
具体的には、前記支持体上に感光性樹脂組成物を塗布して、前記第1の感光層を作成するとともに、別途、同様にして前記第2の感光層を作成する。なお、これらは、それ自体、巻ロール部材に巻取り可能に収容することができる。
前記被加工基板上に配するにあたっては、前記被加工基板上に、前記第1の感光層を配し、前記支持体を剥離した後、この支持体が剥離された第1の感光層の面上に、第2の感光層を配し、ラミネートを行う。
【0028】
前記ラミネート法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ラミネートにおける加熱温度条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、15℃〜180℃が好ましく、60℃〜140℃がより好ましい。
前記ラミネートにおける加圧の圧力条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1MPa〜1.0MPaが好ましく、0.2MPa〜0.8MPaがより好ましい。
前記ラミネートを行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネーター(例えば、大成ラミネータ社製 VP−II、ニチゴーモートン(株)製 VP130)などが好適に挙げられる。
【0029】
−露光−
前記露光を行うための露光装置における光源としては、i線(365nm)、h線(405nm)に輝線を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
前記露光における露光量としては、特に制限はなく、1mJ/cm〜100mJcmが好ましい。
【0030】
このようにして構成される本発明の感光性積層体の概略構成を図1を用いて説明する。
図1において、感光性積層体100は、基板3上に、重合開始成分(A−2成分)を含む第2の感光層2と、重合開始成分(A−1成分)を含む第1の感光層1とを有し、該重合開始成分(A−1成分)を含む第1の感光層1側から露光(L)される。
このように構成されることにより、露光(L)に含まれるi線(365nm)、h線(405nm)の波長の光により、345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−1成分)と、386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−2成分)とが励起され、重合性化合物(C−1成分、C−2成分)の重合が可能とされる。
重合開始成分(A−2成分)を含む第2の感光層2と、重合開始成分(A−1成分)を含む第1の感光層1との層構成を逆に構成すると、光源側に位置する重合開始成分(A−2成分)を含む第2の感光層において、i線を吸収することがあり、感度が低くなるという問題がある。
【0031】
<感光性樹脂組成物>
次に、前記第1の感光層を形成する感光性樹脂組成物と、前記第2の感光層を形成する感光性樹脂組成物とについて説明を行う。
前記第1の感光層を形成する感光性樹脂組成物は、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−1成分)、バインダー(B−1成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−1成分)を含有してなり、必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
また、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−2成分)、バインダー(B−2成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−2成分)を含有してなり、必要に応じて、その他の成分を含んでなる。
以下では、前記各感光性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
なお、これらの成分のうち、バインダー(B−1成分)及びバインダー(B−2成分)、重合性化合物(C−1成分)及び重合性化合物(C−2成分)、並びに、各感光性樹脂組成物に含有されるその他の成分については、まとめて説明を行うが、同一の成分から構成される必要はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
−重合開始成分(A−1成分、A−2成分)−
前記重合開始成分(A−1成分)及び前記重合開始成分(A−2成分)は、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなる。
【0033】
前記重合開始成分(A−1成分)は、345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有し、350nm〜380nmが好ましく、355nm〜375nmがより好ましい。
345nm未満であると、他の感光性樹脂組成物成分との吸収の重なりによる非効率が生じ、385nmを超えると、Di露光機の輝線と合わない。
【0034】
また、前記重合開始成分(A−2成分)は、386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有し、390nm〜430nmが好ましく、400nm〜410nmがより好ましい。
386nm未満、又は435nmを超えると、Di露光機の輝線と合わない。
【0035】
前記重合開始成分(A−1成分)及び前記重合開始成分(A−2成分)における、波長365nm(i線)の光の吸光度としては、0.2以上であることが好ましく、0.3〜1.2であることがより好ましく、0.3〜0.9であることが特に好ましい。
0.2未満であると、感光性が充分でなく、1.2を超えると、底部まで光が届かず細線密着が不十分となる。
【0036】
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、波長約300〜800nmの範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。前記波長は330〜500nmがより好ましい。
【0037】
前記重合開始成分(A−1成分)に用いられる光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の構造式(A−1−1)〜(A−1−4)に示すオキシムエステル化合物等が好ましい。
【0038】
【化2】

【0039】
前記重合開始成分(A−2成分)に用いられる光重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、以下の構造式(A−2−1)〜(A−2−6)に示す化合物等が好ましい。
【化3】

【0040】
前記重合開始成分(A−1成分)としては、前記の通り、345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有するものであれば、特に制限はなく、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素を適宜選択することができる。
また、前記重合開始成分(A−2成分)としては、前記の通り、386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有するものであれば、特に制限はなく、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素を適宜選択することができる。
このような、前記重合開始成分(A−1成分)又は前記重合開始成分(A−2成分)において、適宜選択して用いることのできるその他の光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの等)、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、メタロセン類などが挙げられる。これらの中でも、感光層の感度、保存性、及び感光層とプリント配線板形成用基板との密着性等の観点から、トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素、オキシムエステル化合物、ケトン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が好ましい。
【0041】
前記オキシムエステル化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0042】
【化4】

【0043】
ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基のいずれかを表し、Rは、それぞれ独立に置換基を表す。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、互いに連結し環を形成してもよい。Aは、4、5、6、及び7員環のいずれかを表す。また、Aは、5及び6員環のいずれかであるのが好ましい。
【0044】
また、前記オキシムオキシムエステル化合物としては、下記一般式(2)で表されるものがより好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
ただし、上記一般式(2)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基のいずれかを表し、Rは、それぞれ独立に置換基を表す。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、互いに連結し環を形成してもよい。Xは、CH、O、及びSのいずれかを表す。Aは、5及び6員環のいずれかを表す。
【0047】
前記一般式(1)及び(2)中、Rで表されるアシル基としては、脂肪族、芳香族、及び複素環のいずれでもよく、更に置換基を有してもよい。
脂肪族基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、デカノイル基、フェノキシアセチル基、クロロアセチル基、などが挙げられる。芳香族基としては、ベンゾイル基、ナフトイル基、メトキシベンゾイル基、ニトロベンゾイル基、などが挙げられる。複素環基としては、フラノイル基、チオフェノイル基、などが挙げられる。
置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びハロゲン原子のいずれかが好ましい。アシル基としては、総炭素数2〜30のものが好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。このようなアシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、メチルプロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ベンジルカルボニル基、フェノキシアセチル基、2−エチルヘキサノイル基、クロロアセチル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、2,5−ジブトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、ピリジルカルボニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、などが挙げられる。
【0048】
前記一般式(1)及び(2)中、Rで示される置換基としては、脂肪族、芳香族、複素芳香族、ハロゲン原子、−OR、−SR、−NR、が挙げられる。R、及びRは、互いに連結して環を形成してもよい。また、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子若しくは脂肪族基、芳香族基、複素芳香族基のいずれかを表す。mが2以上であり、互いに連結して環を形成する場合は、それぞれ独立したRどうしで環を形成してもよく、R及びRの少なくともいずれかを介して環を形成してもよい。
【0049】
前記置換基Rを介して環を形成する場合は下記構造が挙げられる。
【0050】
【化6】

【0051】
前記構造式中、Y及びZは、CH、−O−、−S−、及び−NR−のいずれかを表す。
【0052】
、R、及びRの脂肪族基、芳香族基、及び複素芳香族基の具体例としては、前記Rと同様のものが挙げられる。
【0053】
前記一般式(1)で表される前記オキシムエステル化合物の具体例としては、下記構造式(1)〜(22)、(29)〜(51)で表される化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
なお、本発明で用いられるオキシムエステル化合物は、H−NMRスペクトル、UV−vis吸収スペクトルを測定して同定することができる。
【0057】
−−−オキシムエステル化合物の製造方法−−−
前記オキシムエステル化合物の製造方法としては、対応するオキシム化合物とアシル塩化物又は無水物との、塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)存在下で、THF、DMF、アセトニトリル等の不活性溶媒中か、ピリジンのような塩基性溶媒中で反応させることにより容易に合成できる。前記反応温度としては、−10〜60℃が好ましい。
また、前記アシル塩化物として、クロロ蟻酸エステル、アルキルスルホニルクロライド、アリールスルホニルクロライドを用いることにより、対応する種々のオキシムエステル化合物が合成可能である。
【0058】
前記オキシム化合物製造時の出発材料として用いられるオキシム化合物の合成方法としては、標準的な化学の教科書(例えばJ.March,Advanced Organic Chemistry,4th Edition,Wiley Interscience,1992)、又は専門的なモノグラフ、例えば、S.R. Sandler & W. Karo, Organic functional group preparations,Vol.3,Academic Pressに記載された、様々な方法によって得ることができる。
【0059】
前記オキシム化合物の特に好ましい合成方法としては、例えば、アルデヒド又はケトンと、ヒドロキシルアミン、又はその塩とを、エタノール若しくはエタノール水のような極性溶媒中で反応させる方法が挙げられる。この場合、酢酸ナトリウム又はピリジンのような塩基を加えて、反応混合物のpHを制御する。反応速度がpH依存性であり、塩基は、開始時にか、又は反応の間連続的に加え得ることは周知である。ピリジンのような塩基性溶媒を、塩基及び/又は溶媒若しくは助溶剤として用いることもできる。前記反応温度としては、一般的には、混合物の還流温度、即ち、約60〜120℃が好ましい。
【0060】
前記オキシム化合物の他の異なる好ましい合成方法としては、亜硝酸又は亜硝酸アルキルによる「活性」メチレン基のニトロソ化による方法が挙げられる。例えば、Organic Syntheses coll.Vol.VI(J.Wiley&Sons,New York,1988),pp.199 and 840に記載されたような、アルカリ性条件と、例えば、Organic Synthesis coll.Vol.V,pp.32 and 373,coll.Vol.III,pp.191 and 513,coll.Vol.II,pp.202,204 and 363に記載されたような、酸性条件との双方が、本発明における出発材料として用いられるオキシム化合物の合成に好適である。
前記亜硝酸としては、通常、亜硝酸ナトリウムから生成される。
前記亜硝酸アルキルとしては、例えば、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸ブチル又は亜硝酸イソアミル、が挙げられる。
【0061】
前記オキシムエステルの基としては、2種類の立体配置(Z)又は(E)で存在するものであってもよい。慣用の方法によって、異性体を分離してもよいし、異性体混合物を光開始用の種として、そのままで用いてもよい。従って、本発明のオキシム化合物は、前記構造式(1)〜(51)の化合物の立体配置上の異性体の混合物であってもよい。
【0062】
オキシム化合物は、保存安定性に優れ、高感度であることにより、重合性組成物に添加することで、保存時は重合を生じることなく保存安定性に優れ、エネルギー線、特に光の照射により活性ラジカルを発生して効率的に重合を開始し、該重合性化合物が短時間で効率的に重合し得る高感度な重合性組成物を得ることができる。
【0063】
また、上記以外の光重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタン等)、N−フェニルグリシン等、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5-19475号、特開平7-271028号、特開2002-363206号、特開2002-363207号、特開2002-363208号、特開2002-363209号公報等に記載のクマリン化合物など)、アミン類(例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸フェネチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−フタルイミドエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−メタクリロイルオキシエチル、ペンタメチレンビス(4−ジメチルアミノベンゾエート)、3−ジメチルアミノ安息香酸のフェネチル、ペンタメチレンエステル、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、2−クロル−4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンジルアルコール、エチル(4−ジメチルアミノベンゾイル)アセテート、4−ピペリジノアセトフェノン、4−ジメチルアミノベンゾイン、N,N−ジメチル−4−トルイジン、N,N−ジエチル−3−フェネチジン、トリベンジルアミン、ジベンジルフェニルアミン、N−メチル−N−フェニルベンジルアミン、4−ブロム−N,N−ジメチルアニリン、トリドデシルアミン、アミノフルオラン類(ODB,ODBII等)、クリスタルバイオレットラクトン、ロイコクリスタルバイオレット等)、アシルホスフィンオキシド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキシド、LucirinTPOなど)などが挙げられる。
【0064】
更に、米国特許第2367660号明細書に記載されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載されているα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、特開2002−229194号公報に記載の有機ホウ素化合物、ラジカル発生剤、トリアリールスルホニウム塩(例えば、ヘキサフロロアンチモンやヘキサフロロホスフェートとの塩)、ホスホニウム塩化合物(例えば、(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム塩等)(カチオン重合開始剤として有効)、WO01/71428号公報記載のオニウム塩化合物などが挙げられる。
【0065】
−−増感色素−−
前記増感色素は、光を吸収し、光重合開始剤にエネルギー移動又は電子移動することで光重合開始剤を活性化させ、光重合開始剤からラジカルを発生させる機能を有するものである。
【0066】
前記重合開始成分(A−1成分)において前記光重合開始剤と組み合わせて用いることのできる増感色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、必要に応じて、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物、等が挙げられる。
【0067】
前記重合開始成分(A−2成分)において前記光重合開始剤と組み合わせて用いることのできる増感色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、必要に応じて、下記化合物、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物、等が挙げられる。
【0068】
【化9】

【化10】

ただし、前記構造式中、t−Buは、tert−ブチル基を表す。Meは、メチル基を表す。Etは、エチル基を表す。
【0069】
前記重合開始成分(A−1成分)としては、前記の通り、345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有するものであれば、特に制限はなく、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素を適宜選択することができる。
また、前記重合開始成分(A−2成分)としては、前記の通り、386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有するものであれば、特に制限はなく、光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素を適宜選択することができる。
このような、前記重合開始成分(A−1成分)又は前記重合開始成分(A−2成分)において、適宜選択して用いることのできるその他の増感色素としては、特に制限はなく、公知の増感色素の中から適宜選択することができるが、例えば、公知の多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、インドカルボシアニン、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリドン類(例えば、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドン、2−クロロ−10−ブチルアクリドン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン等)、及びチオキサントン化合物(チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルオキシチオキサントン、QuantacureQTX等)などがあげられ、他に特開平5-19475号、特開平7-271028号、特開2002-363206号、特開2002-363207号、特開2002-363208号、特開2002-363209号等の各公報に記載のクマリン化合物など)が挙げられる。
【0070】
また、前記増感剤としては、下記一般式(E)で表される化合物が好ましい。
【化11】

ただし、前記一般式(E)中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、及びアルケニル基のいずれかを表す。
【0071】
また、前記Rと前記Rとは、それぞれが結合している硫黄原子と共に非金属元素からなる環を形成していてもよい。該環としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5員環、6員環、芳香族環が縮環した5員環、芳香族環が縮環した6員環、などが挙げられる。
前記環は、置換基で更に置換されていてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、置換アルキル基、置換アリール基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボアルキルオキシ基、スルホニル基、などが挙げられる。
【0072】
前記一般式(E)中、pは、0又は1を表す。
【0073】
前記一般式(E)中、G及びGは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、カルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びフルロオアルキルスルホニル基のいずれかを表す。ただし、該G及び該Gのいずれかは、カルボニル基、シアノ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びフルオロアルキルスルホニル基のいずれかを表す。
【0074】
また、前記Gと前記Gとは、それぞれが結合している炭素原子と共に、非金属原子からなるメロシアニン色素で酸性核として用いられる環を形成していてもよい。該メロシアニン色素で酸性核として用いられる環としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下の(a)〜(t)などが挙げられる。
(a)1,3−ジカルボニル核(例えば1,3−インダンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、など)
(b)ピラゾリノン核[例えば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾリル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン、など]
(c)イソオキサゾリノン核(例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン、など)
(d)オキシインドール核(例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール)
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核[例えば、バルビツル酸、2−チオバルビツル酸、及びその誘導体、など。該誘導体としては、例えば、1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体;1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体;1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体;1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−3−アリール体、などが挙げられる]
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、ローダニン及びその誘導体など。該誘導体としては、例えば、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン;3−フェニルスーダニン等の3−アリールローダニン、などが挙げられる)
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン)核(例えば、2−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等)
(h)チアナフテノン核[例えば、3(2H)−チアナフテノン、3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等]
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核(例えば、3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等)
(j)2,4−チアゾリジンジオン核(例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等)
(k)チアゾリジノン核(例えば、4−チアゾリジノン、3−エチル−4−チアゾリジノン等)
(l)4−チアゾリノン核(例えば、2−エチルメルカプト−5−チアゾリン−4−オン、2−アルキルフェニルアミノ−5−チアゾリン−4−オン等)
(m)2−イミノ−2−オキソゾリン−4−オン(凝ヒダントイン)核
(n)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核(例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等)
(o)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核(例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等)
(p)2−イミダゾリン−5−オン核(例えば、2−n−プロピル−メルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等)
(q)フラン−5−オン核
(r)4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン核又は4−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン核[例えばN−メチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン、N−n−ブチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン、N−メチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン等]
(s)置換基で置換されていてもよい4−ヒドロキシ−2H−ピラン−2−オン核又は4−ヒドロキシクマリン核
(t)置換基で置換されていてもよいチオインドキシル核(例えば、5−メチルチオインドキシル等)
【0075】
前記一般式(E)で表される増感剤の中でも、硬化感度の点で、下記一般式(E’)で表される化合物が好ましい。
【化12】

ただし、前記一般式(E’)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、及びハロゲン原子のいずれかを表す。該R及び該Rは、互いに連結し芳香族環を形成していてもよく、更に該芳香族環上にアルキル基、アルキルオキシ基、及びハロゲン原子の少なくともいずれかを有していてもよい。
【0076】
前記一般式(E’)中、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、及びアリール基のいずれかを表す。Yは、酸素原子、硫黄原子を表す。
前記アルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エチル基、ブチル基、などが好ましい。
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、フェニル基、などが好ましい。
【0077】
前記一般式(E)、及び(E’)の少なくともいずれかで表される増感剤の具体例としては、下記例示化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

ただし、前記構造式中、t−Buは、tert−ブチル基を表す。Phは、フェニル基を表す。Etは、エチル基を表す。Meは、メチル基を表す。
【0078】
−バインダー(B−1成分、B−2成分)−
前記バインダーとしては、感光性基およびアルカリ現像性を付与するための酸基を導入した化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と不飽和(メタ)アクリル酸とを反応させた後、さらに多塩基酸無水物を反応させて得られる重合体;(メタ)アクリル酸エステルと不飽和基を含有し且つ少なくとも1個の酸基を有する化合物とから得られた共重合体の一部の酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた変性共重合体;カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により得られる重合体などが挙げられる。
【0079】
これらの中でも、感光性樹脂組成物をドライフィルム化して感光層とした際に、タック性が低いことから、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和基を含有し且つ少なくとも1個の酸基を有する化合物とから得られた共重合体の一部の酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた変性共重合体が好ましい。
【0080】
前記バインダーの前記感光性樹脂組成物固形分中の固形分含有量は、5〜80質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。該固形分含有量が5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、80質量%以下であれば、感光層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0081】
前記バインダーの具体的な材料としては、側鎖に、ヘテロ環を含んでもよい芳香族基及び側鎖にエチレン性不飽和結合を有する高分子化合物を含み、前記高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基を有することが好ましい。
前記バインダーは、水に不溶で、かつ、アルカリ性水溶液により膨潤乃至は溶解する化合物が好ましい。
【0082】
−−ヘテロ環を含んでもよい芳香族基−−
前記ヘテロ環を含んでもよい芳香族基(以下、単に「芳香族基」と称することもある。)としては、例えば、ベンゼン環、2個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したものなどが挙げられる。
前記芳香族基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、ベンゾピロール環基、ベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ピラゾール環基、イソキサゾール環基、イソチアゾール環基、インダゾール環基、ベンゾイソキサゾール環基、ベンゾイソチアゾール環基、イミダゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ベンズイミダゾール環基、ベンズオキサゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ピリジン環基、キノリン環基、イソキノリン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、フタラジン環基、キナゾリン環基、キノキサリン環基、アシリジン環基、フェナントリジン環基、カルバゾール環基、プリン環基、ピラン環基、ピペリジン環基、ピペラジン環基、インドール環基、インドリジン環基、クロメン環基、シンノリン環基、アクリジン環基、フェノチアジン環基、テトラゾール環基、トリアジン環基などが挙げられる。これらの中では、炭化水素芳香族基が好ましく、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
【0083】
前記芳香族基は、置換基を有していてもよく、前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアミノ基、アルコキシカルボニル基、水酸基、エーテル基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、それぞれ置換基を有してもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、などが挙げられる。
【0084】
前記芳香族基は、芳香族基を含有するラジカル重合性化合物1種以上と、必要に応じて共重合成分として他のラジカル重合性化合物1種以上とを通常のラジカル重合法によって製造することできる。
前記ラジカル重合法としては、例えば、一般的に懸濁重合法あるいは溶液重合法などが挙げられる。
【0085】
前記芳香族基を含有するラジカル重合性化合物としては、例えば、下記構造式(A)で表される化合物、下記構造式(B)で表される化合物が好ましい。
【化43】

ただし、前記構造式(A)中、R、R、及びRは水素原子又は1価の有機基を表す。Lは有機基を表し、なくてもよい。Arはヘテロ環を含んでもよい芳香族基を表す。
【化44】

ただし、前記構造式(B)中、R、R、及びR3、並びに、Arは前記構造式(A)と同じ意を表す。
【0086】
前記Lの有機基としては、例えば、非金属原子からなる多価の有機基であり、1から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものが挙げられる。
より具体的には、前記Lの有機基としては、下記の構造単位が組み合わさって構成されるもの、多価ナフタレン、多価アントラセンなどを挙げることができる。
【0087】
【化45】

【0088】
前記Lの連結基は置換基を有してもよく、前記置換基としては、前述のハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホナト基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換オキシ基、置換スルホニル基、置換カルボニル基、置換スルフィニル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスホナト基、シリル基、ヘテロ環基が挙げられる。
【0089】
前記構造式(A)で表される化合物、及び構造式(B)で表される化合物においては、構造式(A)の方が感度の点で好ましい。また、前記構造式(A)のうち、連結基を有しているものが安定性の点で好ましく、前記Lの有機基としては、炭素数1〜4のアルキレン基が非画像部の除去性(現像性)の点で好ましい。
前記構造式(A)で表される化合物は、下記構造式(I)の構造単位を含む化合物となる。また、前記構造式(B)で表される化合物は、下記構造式(II)の構造単位を含む化合物となる。この内、構造式(I)の構造単位の方が、保存安定性の点で好ましい。
【0090】
【化46】

【化47】

ただし、前記構造式(I)及び(II)中、R、R、及びR、並びに、Arは、前記構造式(A)及び(B)と同じ意を表す。
前記構造式(I)及び(II)において、R及びRは水素原子、Rはメチル基である事が、非画像部の除去性(現像性)の点で好ましい。
また、前記構造式(I)のLは、炭素数1〜4のアルキレン基が非画像部の除去性(現像性)の点で好ましい。
【0091】
−重合性化合物(C−1成分、C−2成分)−
前記重合性化合物(C−1成分、C−2成分)は、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有してなる。
【0092】
前記エチレン性不飽和結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニルエステルやビニルエーテル等のビニル基、アリルエーテルやアリルエステル等のアリル基、などが挙げられる。
【0093】
前記エチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(メタ)アクリル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0094】
前記(メタ)アクリル基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0095】
前記重合性化合物の重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物又は重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物における固形分中の固形分含有量は、それぞれ5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。該固形分含有量が5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、50質量%以下であれば、感光層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0096】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂(D成分)、無機フィラー(E成分)、熱硬化促進剤等が挙げられる。
【0097】
−−熱硬化性樹脂(D成分)−−
前記熱硬化性樹脂(D成分)は、前記感光層の硬化後の膜強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、選択することができる。
前記熱硬化性樹脂(D成分)としては、熱架橋性の化合物を含み、例えば、エポキシ化合物を含む化合物、(例えば、1分子内に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物)、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物を用いることができ、特開2007−47729号公報に記載されているようなオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ化合物、オキセタニル基を有するオキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート及びその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物などが挙げられる。
【0098】
また、前記熱硬化性樹脂(D成分)として、メラミン誘導体を用いることができる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチル等でエーテル化した化合物)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、感光層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0099】
前記熱硬化性樹脂(D成分)の重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物又は重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物における固形分中の固形分含有量は、それぞれ1質量%〜70質量%が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。該固形分含有量が1質量%以上であれば、硬化膜の膜強度が向上され、50質量%以下であれば、現像性、露光感度が良好となる。
【0100】
−−無機フィラー(E成分)−−
前記感光性樹脂組成物には、永久パターンの表面硬度の向上、あるいは線膨張係数を低く抑えること、あるいは、硬化膜自体の誘電率や誘電正接を低く抑えることを目的として、無機フィラー(E成分)を添加することができる。
前記無機フィラー(E成分)としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、カオリン、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、気相法シリカ、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。これらの中でも、冷熱衝撃試験耐性の観点から、シリカが好ましい。前記無機フィラーの平均粒径は、10μm未満が好ましく、3μm以下がより好ましい。該平均粒径が10μm未満であれば、光散乱により解像度が劣化することを防止できる。
【0101】
前記無機フィラー(E成分)の重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物又は重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物における添加量は、それぞれ5〜60質量%が好ましい。該添加量が5質量%以上であれば、十分に線膨張係数を低下させることができ、60質量%以下であれば、感光層表面に硬化膜を形成した場合に、該硬化膜の膜質が脆くなることを防ぎ、永久パターンを用いて配線を形成する場合において、配線の保護膜としての機能が損なわれることを回避できる。
【0102】
−−熱硬化促進剤−−
前記エポキシ化合物や前記オキセタン化合物の熱硬化を促進するため、熱硬化促進剤として、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S−トリアジン誘導体(例えば、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記エポキシ樹脂化合物や前記オキセタン化合物の硬化触媒、あるいは、これらとカルボキシル基の反応を促進することができるものであれば、特に制限はなく、上記以外の熱硬化を促進可能な化合物を用いてもよい。
前記熱硬化促進剤の重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物又は重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物における固形分中の固形分含有量は、それぞれ通常0.01〜15質量%である。
【0103】
また、前記熱架橋剤としてのエポキシ化合物や前記オキセタン化合物以外の熱架橋剤の熱硬化を促進するため、熱硬化促進剤として、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、グアナミン化合物(例えば、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等)、S−トリアジン誘導体(例えば、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)などを用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、前記熱架橋剤の硬化触媒、あるいは、これらとカルボキシル基の反応を促進することができるものであれば、特に制限はなく、上記以外の熱硬化を促進可能な化合物を用いてもよい。
前記熱硬化促進剤の重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物又は重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物における固形分中の固形分含有量は、それぞれ0.01〜15質量%が好ましい。
【0104】
前記感光性樹脂組成物を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記感光性樹脂組成物を水又は有機溶剤などの溶媒に溶解、乳化又は分散させる方法が挙げられる。また、公知の界面活性剤を添加してもよい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油サフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤を挙げることができるが、これに限定されない。
前記感光性樹脂組成物の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5mPa・sから100mPa・sが好ましく、10mPa・sから50mPa・sがより好ましい。
【0105】
(感光性フィルム)
本発明の感光性フィルムは、本発明の前記感光性積層体を露光することにより製造されることとしてなる。
前記感光性積層体及び露光については、前記感光性積層体において説明した事項のすべてを適用することができる。
【0106】
(プリント基板の製造方法)
本発明プリント基板の製造方法は、本発明の前記感光性積層体からプリント基板を製造する方法であって、被加工基板上に、重合開始成分(A−2成分)を含有する第2の感光層と、重合開始成分(A−1成分)を含有する第1の感光層とを、この順で積層した後、前記第1の感光層側から露光することとしてなる。
【0107】
前記積層する方法としては、特に制限はなく、塗布法、ラミネート法などが挙げられるが、前記第1の感光層と、前記第2の感光層との層分離の観点から、ラミネート法が好ましい。
【0108】
前記被加工基板としては、公知のプリント配線板製造用の基板(プリント用基板)を適用することができる。
【0109】
これら第1の感光層、第2の感光層、及び露光の方法、積層の方法、被加工基板の詳細については、本発明の前記感光性積層体について説明した事項のすべてを適用することができる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
<重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物の調製>
−バインダー(B−1成分)の合成−
1,000mL三口フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール159gを入れ、窒素気流下、85℃まで加熱した。これに、ベンジルメタクリレート63.4g、メタクリル酸72.3g、V−601(和光純薬製)4.15gの1−メトキシ−2−プロパノール159g溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間加熱して反応させた。次いで、加熱を止め、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(30/70mol%比)の共重合体を得た。
次に、前記共重合体溶液の内、120.0gを300mL三口フラスコに移し、グリシジルメタクリレート16.6g、p−メトキシフェノール0.16gを加え、撹拌し溶解させた。溶解後、トリフェニルホスフィン3.0gを加え、100℃に加熱し、付加反応を行った。グリシジルメタクリレートが消失したことを、ガスクロマトグラフィーで確認し、加熱を止めた。質量平均分子量30,000、固形分45質量%のバインダー(B−1成分)溶液を調製した。
なお、調製されたバインダー(B−1成分)溶液における、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸のGMA付加物のモル比は、30:33:37 でI/O値は0.88であった。
【0112】
―バインダー溶液分散物の調製―
下記表1に示す組成で、シリカ(E成分)、上記バインダー(B−1成分)溶液、ジシアンジアミド、着色顔料、及び酢酸n−プロピルを予め混合した後、モーターミルM−250(アイガー社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sにて3時間分散して、バインダー溶液分散物を調製した。
【0113】
【表1】

【0114】
―感光性樹脂組成物の調製―
以下のようにして、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物を調製した。
【0115】
前記バインダー溶液375.8質量部、前記バインダー分散物355.8質量部、重合性モノマー(C−1成分;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;DPHA、日本化薬製)90.6質量部、エポキシ化合物(D−1成分;ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂;YDF−170、東都化成製)45.3質量部、メチルエチルケトン118.9質量部、及び、下記構造式(a−1)0.11質量部からなる重合開始成分(A−1成分)を添加し、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物を調製した。これをPET上にグラビアコーターで塗布を行い、その上からポリエチレンフィルムでラミネートを行い感光性材料(厚み15μm)を得た。
【0116】
【化48】

【0117】
<重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物の調製>
次いで、前記重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物の調製において、前記重合開始成分(A−1成分)に代えて、下記構造式(a−2−1)の光重合開始剤1.3質量部と下記構造式(a−2−2)の増感色素0.09質量部とからなる重合開始成分(A−2成分)を添加したこと以外は、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物と同様にして、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物を調製した。これをPET上にグラビアコーターで塗布を行い、その上からポリエチレンフィルムでラミネートを行い感光性材料(厚み15μm)を得た。
【0118】
【化49】

【0119】
<感光性積層体の製造>
銅配線されたプリント配線板(FR-4、日立化成製)上に、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性材料を、ポリエチレンフィルムを剥離した後、真空ラミネーターVP130(ニチゴーモートン社製)によりラミネートして、第2の感光層を製造した。
次いで、第2の感光層上に、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性材料を、同様の方法により、ラミネートして、第1の感光層を製造し、第2の感光層と、第1の感光層との積層体からなる実施例1における感光性樹脂組成物を製造した。
【0120】
<感光フィルム及びプリント基板の製造>
露光装置(ORC HMW−532、オーク製作所社製)を用い、第1の感光層(A−1成分)側から露光して、20mJ/cmの露光量で露光して該感光フィルムを含む実施例1におけるプリント基板を製造した。
ここで、用いた露光装置における光源は、高圧水銀ランプであり、発光スペクトルは、図2に示す通り、365nmの波長(i線)付近と、405nmの波長(h線)付近とにおいて、強い相対強度を有する発光スペクトルを有している。
また、第1の感光層における波長365nmの光の吸光度は、1.25であり、第2の感光層における波長365nmの光の吸光度は、0.5であった。
また、第1の感光層における厚みは、15μmとし、第2の感光層における厚みは、15μmとした。
【0121】
(実施例2)
実施例1において、重合開始成分(A−1成分)における、上記構造式(a−1)の光重合開始剤0.11質量部に代えて、下記構造式(a’−1)の光重合開始剤0.15質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における感光性積層体、感光性フィルム、及びプリント基板を製造した。
なお、第1の感光層における波長365nmの光の吸光度は、1.25であり、第2の感光層における波長365nmの光の吸光度は、0.6であった。
また、第1の感光層における厚みは、15μmとし、第2の感光層における厚みは、15μmとした。
【0122】
【化50】

【0123】
(実施例3)
実施例1における感光性積層体の製造方法に代えて、以下の製造方法により、感光性積層体を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における感光性積層体を製造した。
即ち、支持体(16FB50、東レ製)上に、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物をグラビアコーターにより塗布して、第1の感光層(厚み15μm)を作製したこと、及び、第1の感光層上に、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物を、同様の方法により塗布して(厚み15μm)、その上からポリエチレンフィルムでラミネートを行い、支持体上に、第2の感光層と、第1の感光層とが積層された感光性材料(厚み30μm)を得た。
次いで、ポリエチレンフィルムを剥離した後、第2の感光層側から銅配線プリント基板に載置し、ラミネートして、実施例3における感光性積層体とした。
なお、第1の感光層と第2の感光層との積層体における波長365nmの光の吸光度は、1.7であった。
また、第1の感光層と第2の感光層との積層体における厚みは、それぞれの層を15μmに調製し、合計30μmとした。
【0124】
実施例1における感光性積層体に代えて、実施例3における感光性積層体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における感光性フィルム及びプリント基板を製造した。
【0125】
(比較例1)
実施例3における感光性樹脂組成物の調製に代え、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物と、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物と、を別々に調製せず、以下のように、重合開始成分(A−1成分)及び重合開始成分(A−2成分)の添加量を半減して、一つの感光性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例3と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
即ち前記バインダー溶液375.8質量部、前記バインダー分散物355.8質量部、モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート;DPHA、日本化薬製)90.6質量部、エポキシ化合物(ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂;YDF−170、東都化成製)45.3質量部、メチルエチルケトン118.9質量部、及び、上記構造式(a−1)の光重合開始剤0.055質量部と、上記構造式(a−2−1)の光重合開始剤0.65質量部及び上記構造式(a−2−2)の増感色素0.045質量部とを添加し、重合開始成分(A−1成分)及び重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物を調製した。
【0126】
得られた感光性樹脂組成物を実施例3と同様に、支持体上に塗布して、感光層を作製し、保護フィルム(ポリエチレン)をラミネートした。支持体と、感光層と、保護フィルムとの積層体を得た後、該積層体から保護フィルムを剥離し、感光層を銅配線プリント基板に載置し、ラミネートして、比較例1における感光性積層体を製造した。
なお、感光層における波長365nmの光の吸光度は、1.7であった。
また、感光層における厚みは、30μmとした。
【0127】
実施例3における感光性積層体に代えて、比較例1における感光性積層体を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例1における感光性フィルム及びプリント基板を製造した。
【0128】
(比較例2)
実施例3における感光性樹脂組成物の調製に代え、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物と、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物と、を別々に調製せず、また、重合開始成分(A−2成分)を添加せず、以下のように、重合開始成分(A−1成分)の添加量を半減して、一つの感光性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例3と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
即ち、前記バインダー溶液375.8質量部、前記バインダー分散物355.8質量部、モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート;DPHA、日本化薬製)90.6質量部、エポキシ化合物(ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂;YDF−170、東都化成製)45.3質量部、メチルエチルケトン118.9質量部、及び、上記構造式(a−1)の光重合開始剤0.055質量部を添加し、重合開始成分(A−1成分)のみを含む感光性樹脂組成物を調製した。
【0129】
得られた感光性樹脂組成物を実施例3と同様に、支持体上に塗布して、30μmの感光層を作製し、保護フィルムをラミネートした。支持体と、感光層と、保護フィルムとの積層体を得た後、該積層体から保護フィルムを剥離し、感光層を銅配線プリント基板に載置し、ラミネートして、比較例1における感光性積層体を製造した。
なお、感光層における波長365nmの光の吸光度は、1.25であった。
また、感光層における厚みは、30μmとした。
【0130】
実施例3における感光性積層体に代えて、比較例2における感光性積層体を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例2における感光性フィルム及びプリント基板を製造した。
【0131】
(比較例3)
実施例3における感光性樹脂組成物の調製に代え、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物と、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物と、を別々に調製せず、また、重合開始剤(A−1成分)を添加せず、以下のように、重合開始成分(A−2成分)の添加量を半減して、一つの感光性樹脂組成物を調製したこと以外は、実施例3と同様にして、感光性樹脂組成物を調製した。
即ち、前記バインダー溶液375.8質量部、前記バインダー分散物355.8質量部、モノマー(ペンタエリスリトールテトラアクリレート;DPHA、日本化薬製)90.6質量部、エポキシ化合物(ビスフェノールFタイプのエポキシ樹脂;YDF−170、東都化成製)45.3質量部、メチルエチルケトン118.9質量部、及び、上記構造式(a−2−1)の光重合開始剤0.65質量部及び上記構造式(a−2−2)の増感色素0.045質量部を添加し、重合開始成分(A−2成分)のみを含む感光性樹脂組成物を調製した。
【0132】
得られた感光性樹脂組成物を実施例3と同様に、支持体上に塗布して、感光層を作製し、保護フィルムをラミネートした。支持体と、感光層と、保護フィルムとの積層体を得た後、該積層体から保護フィルムを剥離し、感光層を銅配線プリント基板に載置し、ラミネートして、比較例1における感光性積層体を製造した。
なお、感光層における波長365nmの光の吸光度は、0.5であった。
また、感光層における厚みは、30μmとした。
【0133】
実施例3における感光性積層体に代え、比較例3における感光性積層体を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、比較例3における感光性フィルム及びプリント基板を製造した。
【0134】
(比較例4)
実施例1における感光性積層体の製造方法に代え、第1の感光層と、第2の感光層とのラミネート順を逆にして、以下のように、感光性積層体を製造したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における感光性積層体を製造した。
即ち、銅配線されたプリント基板上に、重合開始成分(A−1成分)を含む感光性樹脂組成物をポリエチレンフィルムを剥離した後、真空ラミネーターVP130(ニチゴーモートン(株)製)によりラミネートして、第1の感光層を製造した。
次いで、第1の感光層上に、重合開始成分(A−2成分)を含む感光性樹脂組成物を、同様の方法により、ラミネートして、第2の感光層を製造し、プリント基板上に、第1の感光層と、第2の感光層とが、この順で積層された比較例4における感光性積層体を製造した。
【0135】
比較例4の感光性積層体において、第2の感光層側から露光したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4における感光性フィルム及びプリント基板を製造した。
なお、第1の感光層における波長365nmの光の吸光度は、1.25であり、第2の感光層における波長365nmの光の吸光度は、0.5であった。
また、第1の感光層における厚みは、15μmとし、第2の感光層における厚みは、15μmとした。
【0136】
(測定方法)
以下のようにして、重合開始成分(A−1成分)及び重合開始成分(A−2成分)の感光性ピーク、感光フィルム(プリント基板)の感度(クリア段)、細線密着性、並びに、丸穴解像性を測定した。
なお、感度(クリア段)の測定結果は、大きい値ほど感度が良好である。また、細線密着性の測定結果は、小さい値ほど細線密着性が良好である。また丸穴解像性の測定結果は、小さい値ほど丸穴解像性が良好である。
【0137】
−重合開始成分(A−1成分)及び重合開始成分(A−2成分)の感光性ピークの測定−
プリント配線板(FR-4、日立化成製)上に、A-1成分を含んだ感光性材料を、ラミネートして感光層を作製した後、キセノンランプから分光した300nmから700nmの範囲内で、一定の波長の光を0.1mJ/cmから100mJ/cmまで光エネルギー量を変化させて照射し、感光層の一部の領域を硬化させた。炭酸ナトリウム水溶液で現像し、未硬化の部分を溶解除去し、照射した光の波長ごとに光エネルギーにおける硬化領域の高さを測定した。最も低い光エネルギーで硬化している波長を感光性ピークの波長とした。A-2成分に関しても同様な測定を行った。
【0138】
−感度(クリア段)の測定−
ステップタブレット(ΔO.D=0.15)をおいてベタ露光したとき、現像残渣が残らない最小の段数をクリア段と規程した。
測定結果を下記表1に示す。
【0139】
−細線密着性−
ライン/スペース=1/5で、ラインが10μmから80μmまで5μm刻みのパターンを露光・現像した時に密着する最小線幅を細線密着性とした。
測定結果を下記表1に示す。
【0140】
−丸穴解像性−
直径40μmから直径200μmまで10μm刻みの丸穴パターンを露光したときの最小開口径を丸穴解像性とした。
測定結果を下記表1に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
実施例1と、実施例1における感光層の層構成を逆にした比較例4とを比較すると、表2から明らかなように、実施例1の方が、細線密着性と丸穴解像度を低くすることができている。
また、実施例3と、感光性樹脂組成物層を1層とする比較例1とを比較すると、表2から明らかなように、実施例3の方が、細線密着性と、丸穴解像度を低くすることができている。
また、実施例3と、重合開始成分を1成分しか用いない比較例2、3とを比較すると、表2から明らかなように、実施例3の方が、感度(クリア段)が高く、細線密着性と、丸穴解像度を低くすることができている。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の感光性積層体は、感度、解像度等が良好であるため、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターン等の永久パターン、等の各種パターン形成用、カラーフィルタ、柱材、リブ材、スペーサー、隔壁等の液晶構造部材の製造、ホログラム、マイクロマシン、プルーフなどの製造に好適に使用することができ、特に、プリント基板の永久パターン形成に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0144】
1 第1の感光層
2 第2の感光層
3 被加工基板
100 感光性積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり345nm〜385nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−1成分)、バインダー(B−1成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−1成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる第1の感光層と、
光重合開始剤又は該光重合開始剤及び増感色素からなり386nm〜435nmの波長に感光性のピークを有する重合開始成分(A−2成分)、バインダー(B−2成分)、及び、1分子中に少なくとも一つの不飽和基を含有する重合性化合物(C−2成分)を含有する感光性樹脂組成物からなる第2の感光層と、を有することを特徴とする感光性積層体。
【請求項2】
基体上に、第2の感光層、第1の感光層の順で積層された層構造を有する請求項1に記載の感光性積層体。
【請求項3】
重合開始成分(A−1成分)及び重合開始成分(A−2成分)における、波長365nmの光の吸光度が、0.2以上である請求項1から2のいずれかに記載の感光性積層体。
【請求項4】
光重合開始剤にオキシムエステルを含む請求項1から3のいずれかに記載の感光性積層体。
【請求項5】
バインダー(B−1成分、B−2成分)が、下記構造式(I)で示される化合物を含む請求項1から4のいずれかに記載の感光性積層体。
【化51】

ただし、前記構造式(I)中、R、R、及びRは、水素原子又は1価の有機基を表す。Lは、有機基を表し、なくてもよい。Arは、ヘテロ環を含んでもよい芳香族基を表す。
【請求項6】
感光性樹脂組成物が、熱硬化性樹脂(D成分)を含有する請求項1から5のいずれかに記載の感光性積層体。
【請求項7】
感光性樹脂組成物が、無機フィラー(E成分)を含有する請求項1から6のいずれかに記載の感光性積層体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の感光性積層体を第1の感光層側から露光することにより製造されることを特徴とする感光性フィルム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の感光性積層体からプリント基板を製造する方法であって、
被加工基板上に、重合開始成分(A−2成分)を含有する第2の感光層と、重合開始成分(A−1成分)を含有する第1の感光層とを、この順で積層した後、前記第1の感光層側から露光することを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項10】
積層する方法が、塗布法、及びラミネート法のいずれかである請求項9に記載のプリント基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−204174(P2010−204174A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46748(P2009−46748)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】