説明

感光性組成物

【課題】基板上にソルダーレジスト膜を形成したりる用途に好適に用いられ、光反射性に優れ、かつ放熱性に優れたレジスト膜を形成できる感光性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、
(B)465nmにおける屈折率が1.8以上である無機フィラーと、
(C)熱伝導率10W/m・K以上である無機フィラーとを含有する、感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にソルダーレジスト膜を形成したり、または発光ダイシング(LEDと略す)チップなどが搭載された基板上に、光反射性レジスト膜を形成したりするのに好適に用いられる感光性組成物及びソルダーレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板を高温のはんだから保護するための保護膜として、ソルダーレジスト膜が広く用いられている。
【0003】
また、発光ダイオード(以下、発光ダイオードをLEDと略す。)チップが搭載されたプリント配線基板の表面には、LEDから生じた光を効率よく取り出すために、光線反射率の高い白色ソルダーレジスト膜が形成されている。
【0004】
上記白色ソルダーレジスト膜は、基板の表面を照らすLEDの光を効率よく反射する。このため、LEDから生じた光の利用率を高めることができる。
【0005】
上記白色ソルダーレジスト膜を形成するための材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂及び加水分解性アルコキシシランの脱アルコール反応により得られたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂と、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂と、希釈剤と、光重合開始剤と、硬化密着性付与剤とを含有するレジスト材料が開示されている。
【0006】
また、下記の特許文献2には、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ化合物と、ルチル型酸化チタンと、希釈剤とを含有する白色ソルダーレジスト材料が開示されている。
【0007】
また、LEDなどの各種半導体チップが搭載されたプリント配線基板は、半導体チップの発熱により高温になりがちであった。そのため、放熱性に優れていることが求められていた。
【0008】
上記材料の一例として、下記の特許文献3には、カルボキシル基含有共重合樹脂、活性エネルギー線により硬化する反応基を2個以上有する化合物、光重合開始剤、及び熱伝導率が15W/m・K以上の無機充填材を含有する放熱性レジスト材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−249148号公報
【特許文献2】特開2007−322546号公報
【特許文献3】特開2006−337481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1や特許文献2に記載のレジスト材料は白色であり、光反射性を有するが、放熱性は十分ではなかった。他方、上記特許文献3に記載の放熱性レジスト材料は、放熱性に優れているものの、光反射性は十分ではなかった。
【0011】
本発明の目的は、高い効率で光を反射させることができ、かつ放熱性に優れているレジスト膜を得ることができる感光性組成物及びソルダーレジスト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、(B)465nmにおける屈折率が1.8以上である無機フィラーと、(C)熱伝導率10W/m・K以上である無機フィラーとを含有する、感光性組成物が提供される。
【0013】
好ましくは、上記465nmの屈折率が1.8以上である無機フィラー(B)として、465nmにおける屈折率が1.8以上である無機フィラー(B)が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム及びチタン酸鉛からなる群から選択された少なくとも1種の無機フィラーが用いられ、より好ましくは、高温下におけるレジスト膜の黄変をより一層効果的に抑制し得るため、ルチル型酸化チタンが用いられる。
【0014】
本発明において好ましくは、上記熱伝導率が10W/m・K以上の無機フィラー(C)として、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群から選択された1種の無機フィラーが用いられ、より好ましくは、放熱性をより一層高めるため、球状のアルミナまたは球状の窒化アルミニウムが用いられる。
【0015】
本発明に係る感光性組成物では、好ましくは、光重合開始剤が含有され、それによって、感光性を高めることができる。
【0016】
本発明に係るソルダーレジスト組成物は、本発明の感光性組成物からなり、該ソルダーレジスト組成物からなるレジスト膜は、高い効率で光を反射させることができ、さらに高い放熱性を発現する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る感光性組成物は、上記重合性炭化水素化合物(A)と、上記特定の無機フィラー(B)及び(C)とを含有するため、該感光性組成物を光の照射により硬化し、現像して得られた組成物は、優れた放熱性と、優れた光反射性とを有する。
【0018】
よって、例えば、基板上にLEDチップが搭載される部分において、反射性レジスト膜の形成に本発明の感光性組成物を用いた場合、LEDチップからの光を効率良く利用することができ、かつLEDチップ等の発熱性部品で生じた熱を速やかに放散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスの一例を示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の詳細を説明する。
【0021】
本発明に係る感光性組成物は、上記重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方を含む。すなわち、本発明に係る感光性組成物は、上記重合性炭化水素化合物(A)として、重合性炭化水素モノマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素ポリマーのみを含んでいてもよく、重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの双方を含んでいてもよい。また、上記重合性炭化水素モノマーとしては、1種の重合性炭化水素モノマーのみが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素モノマーが用いられてもよい。同様に、上記重合性炭化水素ポリマーとしても、1種の重合性炭化水素ポリマーなどが用いられてもよく、2種以上の重合性炭化水素ポリマーが用いられてもよい。
【0022】
上記重合性炭化水素モノマーとしては、重合性不飽和基を有するモノマー、または重合性環状エーテル基を有するモノマーが挙げられる。上記重合性炭化水素ポリマーとしては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはオレフィン樹脂などが挙げられる。なお、本明細書における「樹脂」なる用語は、固形の樹脂だけでなく、液状樹脂及びオリゴマーをも含む。
【0023】
重合性不飽和基を有するモノマーは、(メタ)アクリル基を有する化合物であることが好ましい。(メタ)アクリル基を有する化合物としては、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールもしくはプロピレングリコールなどのグリコールのジ(メタ)アクリレートや、多価アルコール、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物もしくは多価アルコールのプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレートや、フェノール、フェノールのエチレンオキサイド付加物もしくはフェノールのプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレートや、グルセリンジグリシジルエーテルもしくはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレートや、メラミン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
多価アルコールとしては、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール又はトリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートが挙げられる。フェノールの(メタ)アクリレートとしては、フェノキシ(メタ)アクリレート又はビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0026】
上記重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含むことが好ましく、より好ましくは、重合性不飽和基を有するモノマーは、少なくとも2個の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーである。重合性不飽和基を有するモノマーが、2個以上の不飽和二重結合基を有するアクリルモノマーを含む場合には、最終的に得られたレジスト膜の架橋密度を高めることができ、従って、高温に晒されたとしてもレジスト膜が変色し難い。
【0027】
上記重合性炭化水素ポリマーは、下記の(i)〜(iv)で挙げられるカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0028】
(i)不飽和カルボン酸と不飽和二重結合とを有する化合物を共重合させた樹脂
(ii)カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基とを有する化合物(b2)を反応させた樹脂
(iii)1分子中に1個のエポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物と不飽和二重
結合を有する化合物との共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させた後、反応により生成した第2級の水酸基に飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた樹脂
(iv)水酸基を有するポリマーに、飽和又は不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、反応により生成したカルボン酸基に、1分子中に1個のエポキシ基及び不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる、水酸基とカルボキシル基とを有する樹脂
【0029】
なお、レジスト膜の高温下における黄変性をより一層高めることができるので、上記重合性炭化水素ポリマーは、上記(ii)カルボキシル基含有樹脂であることが好ましい。
【0030】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル共重合樹脂(b1)は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル(b11)と、1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)とを共重合させることにより得られる。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。さらに、(メタ)アクリル酸エステル(b11)としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルやグリコール変性(メタ)アクリレートが挙げられる。1種の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が用いられてもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル(b11)が併用されてもよい。
【0032】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリコール変性(メタ)アクリレートとして、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソオクチルオキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
1分子中に1個の不飽和基及び少なくとも1個のカルボキシル基を有する化合物(b12)としては、(メタ)アクリル酸、不飽和基とカルボン酸との間が鎖延長された変性不飽和モノカルボン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ラクトン変性などによりエステル結合を有する不飽和モノカルボン酸、エーテル結合を有する変性不飽和モノカルボン酸、マレイン酸などのカルボキシル基を1分子中に2個以上有する化合物が挙げられる。1種の上記化合物(b12)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b12)が用いられてもよい。
【0034】
1分子中にオキシラン環及びエチレン性不飽和基を有する化合物(b2)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアミノアクリレートが挙げられる。なかでも、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが好ましい。1種の化合物(b2)が用いられてもよく、2種以上の化合物(b2)が用いられてもよい。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂(i)〜(iv)の酸価は50〜150mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。酸価が50〜150mgKOH/gの範囲内にあると、現像の際の解像度を高めることができる。
【0036】
なお、化合物(i)は、1個以上の不飽和二重結合基および2個以上のカルボキシル基または酸無水物基を有する重合性炭化水素ポリマーを含有し、酸価が50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。現像の際の解像度を高めることができる。
【0037】
なお、ここでいう「酸価」は、具体的には、化合物を溶剤(トルエン/2−プロパノール/水(体積比で5/5/0.05))に溶かして水酸化カリウムを用いて中和滴定することにより算出できる。中和滴定法としては、P−ナフトールベンゼイン指示薬法や電位差滴定法が挙げられる。
【0038】
また、重合性炭化水素ポリマーは、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。例えば、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。1種のエポキシ樹脂が用いられてもよく、2種以上のエポキシ樹脂が組み合わせて用いられてもよい。
【0039】
〔無機フィラー(B)〕
本発明の感光性組成物は、465nmにおける屈折率が1.8以上である無機フィラー(B)を含有する。465nmにおける屈折率が1.8以上の無機フィラー(B)は、通常、白色のフィラーである。従って、無機フィラー(B)の含有により、本発明の感光性組成物に露光及び現像処理を行うことにより得られたソルダーレジスト膜は、白色を呈する。よって、例えばLEDデバイス用の白色ソルダーレジスト膜の形成に本発明の感光性組成物を好適に用いることができる。上記屈折率が1.8以上であるため、上記レジスト膜が高い光反射性を有し、それによって、LEDチップが基板上に搭載されているLEDデバイスにおいて、光の利用効率を高めることができる。
【0040】
上記無機フィラー(B)としては、特に限定されないが、好ましくは、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム及びチタン酸鉛からなる群から選択された少なくとも1種の無機フィラーが用いられる。中でも、高温下において、レジスト膜の黄変をより一層抑制することができるため、無機フィラー(B)として、ルチル型酸化チタンが好ましい。
【0041】
〔熱伝導率が10W/m・K以上である無機フィラー(C)〕
本発明に係る感光性組成物は、熱伝導率が10W/m・K以上である無機フィラー(C)を含有する。無機フィラー(C)が含有されているので、本発明の感光性組成物を用いて形成された白色のソルダーレジスト膜の放熱性が高められている。従って、例えばLEDチップが基板に搭載されたLEDデバイスのソルダーレジスト膜の形成に本発明の感光性組成物を用いた場合、LEDチップで生じた熱を効率良く放散させることができる。
【0042】
上記無機フィラー(C)としては、好ましくは、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群から選択された1種の無機フィラーが用いられ、特に、放熱性能に優れている球状アルミナまたは球状窒化アルミニウムがより好ましく用いられる。
【0043】
上記無機フィラー(C)の数平均粒子径は、0.01〜5.0μmの範囲内にあることが好ましく、0.1〜2.0μmの範囲内にあることがより好ましい。平均粒子径が好ましい範囲内にある場合には、放熱性をより一層高めることができる。
【0044】
無機フィラー(B)と無機フィラー(C)の配合割合については、特に限定されるわけではないが、好ましくは、光反射性と放熱性の双方を高めるには、屈折率が1.8以上の無機フィラー(B)の含有割合が無機フィラー(B)及び無機フィラー(C)の合計100重量%中、3〜50重量%であること望ましく、かつ10W/m・K以上の熱伝導率を有する無機フィラー(C)の含有割合が、無機フィラー(B)及び無機フィラー(C)の合計100重量%中、3〜50重量%であることが好ましい。
【0045】
〔他の無機フィラー〕
本発明においては、無機フィラー(B)や無機フィラー(C)の他に、他の無機フィラーが含有されていてもよい。このような他の無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、マイカ、雲母粉又はフッ化セリウムなどを挙げることができる。
【0046】
〔光重合開始剤〕
本発明に係る感光性組成物では、光重合開始剤が含有されていることが好ましく、その場合には、感光性をより一層高めることができる。
【0047】
上記光重合開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド、ハロメチル化トリアジン、ハロメチル化オキサジアゾール、イミダゾール、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、アントラキノン、ベンズアンスロン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、チオキサントン、安息香酸エステル、アクリジン、フェナジン、チタノセン、α−アミノアルキルフェノン、オキシム、またはこれらの誘導体が挙げられる。1種の上記光重合開始剤が用いられてもよく、2種以上の上記光重合開始剤か用いられてもよい。
【0048】
上記光重合開始剤が含有される場合、上記重合性炭化水素化合物100重量部に対して、上記光重合開始剤は0.1〜30重量部の範囲内で含有されることが好ましく、1〜15重量部の範囲内で含有されることがより好ましい。光重合開始剤が上記好ましい範囲内で含有されている場合には、感光性組成物の感光性をより一層高めることができる。
【0049】
〔他の成分〕
また、本発明に係る感光性組成物は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0050】
本発明に係る感光性組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤が含有されている場合、感光性組成物の塗工性を高めることができる。
【0051】
〔感光性組成物の調製方法〕
本発明に係る感光性組成物は、例えば、各配合成分を撹拌混合した後、3本ロールにて均一に混合することにより調製することができる。
【0052】
感光性組成物を硬化させるために使用される光源として、紫外線又は可視光線等の活性エネルギー線を照射する装置が挙げられる。上記光源としては、例えば、超高圧水銀灯、Deep UV ランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ又はエキシマレーザーが挙げられる。これらの光源は、感光性組成物の感光性成分の感光波長に応じて適宜選択されるが、光の照射エネルギーは、所望とする膜厚又は感光性組成物の構成成分により適宜選択されるか、一般に、10〜3000mJ/cmの範囲内である。
【0053】
〔LEDデバイス〕
本発明に係る感光性組成物は、LEDチップが基板に実装されているLEDデバイス中のソルダーレジスト膜の形成に好適に用いられる。図1は、本発明に係る感光性組成物を用いて形成されたソルダーレジスト膜を有するLEDデバイスを模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【0054】
図1に示すLEDデバイス1では、基板2の上面2a上に、ソルダーレジスト膜3が形成されている。ソルダーレジスト膜3上に、LEDチップ7が搭載されている。
【0055】
基板2は、ガラス層5と樹脂層6とを有する積層基板からなる。もっとも、基板2は特に限定されず、樹脂と他の材料からなる積層基板に限らず、セラミック多層基板などの他の積層基板により形成されていてもよい。さらに、基板2は、単一の樹脂材料からなる樹脂基板であってもよい。基板2の上面2a上には、電極4a,4bが形成されている。電極4a,4bは、適宜の金属もしくは合金からなる。
【0056】
ソルダーレジスト膜3は、本発明の感光性組成物を基板2の上面2a上に塗工し、露光・現像することにより形成されている。より具体的には、電極4a,4bを形成した後に、基板2の上面2a上の全面に感光性組成物を塗工する。次に、下方に電極4a,4bが位置する部分が遮光部とされているマスクを用いて感光性組成物を上方から選択的に露光する。露光により、光が照射された領域では、感光性組成物が硬化する。遮光部で覆われた領域では感光性組成物の硬化は進行しない。従って、硬化していない感光性組成物を溶解する溶剤を用いて、露光されていない感光性組成物部分を除去する。このようにして、図1に示す開口部3a,3bを有するソルダーレジスト膜3を得ることができる。開口部3a,3bには、上記電極4a,4bがそれぞれ露出している。
【0057】
次に、下面7aに端子8a,8bを有するLEDチップ7をソルダーレジスト膜3上に搭載し、半田9a,9bにより端子8a,8bと電極4a,4bとをそれぞれ接合する。このようにして、LEDデバイス1が得られる。
【0058】
LEDデバイス1では、LEDチップ7を駆動すると、破線で示すように光が発せられる。この場合、LEDチップ7から基板2の上面2aとは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ソルダーレジスト膜3に到達した光が矢印Aで示すように反射される。ソルダーレジスト膜3は、白色であり、上記光を高い効率で反射させる。従って、矢印Aで示す反射光も利用されるので、LEDチップ7の光の利用効率を高めることができる。
【0059】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
まず、実施例及び比較例の評価方法を説明する。
【0061】
(評価方法)
(1)測定サンプルの調製
80mm×90mm×厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板、品番:FR−4からなる基板上に、スクリーン印刷法により、100メッシュのポリエステルバイアス製スクリーン印刷版を用いて、感光性組成物を全面に印刷した。印刷後、80℃のオーブン内で20分間印刷された感光性組成物層を乾燥させた。次に、紫外線照射装置を用い、未露光領域が遮光部とされているパターンを有するフォトマスクを介し、感光性組成物層に、波長365nmの紫外線を照射エネルギーが400mJ/cmとなるように、100mW/cmの紫外線照度で4秒間照射した。紫外線による硬化が進行し、白色のレジスト膜が形成された。照射後、炭酸ナトリウムの1重量%水溶液にレジスト膜を浸漬して現像し、未露光部の感光性組成物層部分を除去した。このようにして、遮光部が開口部とされているパターンを有するレジスト膜を得た。しかる後、150℃のオーブン内でレジスト膜を1時間加熱し硬化させ、レジスト膜が形成されているサンプルを得た。なお、得られたサンプルにおけるレジスト膜の厚みは30μmであった。
【0062】
(2)反射率
色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、評価サンプルのYを測定した。そのYを反射率とした。反射率Yが、70以上の場合を「○」、70より小さい場合を「×」として、結果を下記の表1に示した。
【0063】
(3)熱伝導率
80mm×90mm、厚さ0.8mmのアルミニウムからなる基板上に、(1)測定サンプルの調製と同様の方法でサンプルを作成した。本サンプルの熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。熱伝導率が、0.5W/m・K以上の場合を「○」、0.5W/m・Kより小さい場合を「×」として、結果を下記の表1に示した。
【0064】
(合成例1)(アクリルポリマー1)
温度計、攪拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてエチルカルビトールアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃に加熱し、メタクリル酸とメチルメタクリレートを30:70のモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下した。さらに1時間攪拌した後、温度を120℃にまで上げた。
【0065】
この溶液を室温まで冷却した後、触媒として臭化テトラブチルアンモニウム1gを投入し、グリシジルアクリレートをメタクリル酸及びメチルアクリレートの合計100に対し10のモル比となるように投入し、100℃で30分間得られた樹脂のカルボキシル基の等量と付加反応させ、しかる後室温まで冷却した。冷却後フラスコから溶液を取り出した。この溶液を分析したところ、固形分の酸価は60mgKOH/gであり、重量平均分子量が15,000のカルボキシル基含有樹脂を50質量%(不揮発分)を含む溶液であることが確かめられた。この溶液を、以下、アクリルポリマー1と呼ぶ。
【0066】
(実施例1)
アクリルポリマー1を15重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)5重量部と、ルチル型酸化チタン(「CR−97」、石原産業社製)30重量部と、球状アルミナ(「AA−07」、住友化学社製、平均粒径0.7μm、アスペクト比1.1〜2.0、熱伝導率36W/m・K)20重量部と、光重合開始剤(「ダロキュアTPO」、光ラジカル発生剤、チバジャパン社製)2重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「828」、ジャパンエポキシレジン社製)8重量部と、エチルカルビトールアセテート20重量部とを配合し、混合機(「練太郎SP−500」、シンキー社製)にて3分間混合した後、3本ロールにて混合し、混合物を得た。その後、混合機(「SP−500」、シンキー社製)を用いて、得られた混合物を3分間脱泡することにより、感光性組成物としてのレジスト材料を得た。
【0067】
(比較例1〜2)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、レジスト材料を得た。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から明らかなように、無機フィラーとして酸化チタン及び酸化アルミニウムの双方を含む実施例1では、得られたソルダーレジスト膜は反射率が高く、かつ高い熱伝導率すなわち高い放熱性を有することがわかる。これに対して、比較例1では、球状アルミナが含有されていないため、熱伝導率が低く、比較例2では、酸化チタンが含有されていないため、反射率が低いことがわかる。
【符号の説明】
【0070】
1…LEDデバイス
2…基板
2a…上面
3…ソルダーレジスト膜
3a,3b…開口部
4a,4b…電極
5…ガラス層
6…樹脂層
7…LEDチップ
7a…下面
8a,8b…端子
9a,9b…半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性炭化水素モノマー及び重合性炭化水素ポリマーの内の少なくとも一方の重合性炭化水素化合物と、
(B)465nmにおける屈折率が1.8以上である無機フィラーと、
(C)熱伝導率10W/m・K以上である無機フィラーとを含有する、感光性組成物。
【請求項2】
465nmにおける屈折率が1.8以上である無機フィラー(B)が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、鉛白、硫化亜鉛、チタン酸カリウム及びチタン酸鉛からなる群から選択された少なくとも1種の無機フィラーである、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記465nmの屈折率が1.8以上である無機フィラー(B)が、ルチル型酸化チタンである、請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
熱伝導率が10W/m・K以上の無機フィラー(C)が、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化マグネシウムからなる群から選択された1種の無機フィラーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記無機フィラー(C)が、球状アルミナまたは球状窒化アルミニウムである、請求項4に記載の感光性組成物。
【請求項6】
光重合開始剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の感光性組成物からなるソルダーレジスト組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2010−181825(P2010−181825A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27630(P2009−27630)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】