説明

感水性の活性成分を含む、局所用医薬組成物

本発明は、医薬活性薬剤として感水性の化合物を、生理学的に許容可能な媒体中に溶解された形態で含む局所用医薬組成物、それを調製するための方法、およびその皮膚への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬活性薬剤として感水性の化合物を、生理学的に許容可能な媒体中に溶解された形態で含む局所用医薬組成物、それを調製するための方法、およびその皮膚への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚科学および医薬組成物の処方の分野において、当業者は物理的および化学的に安定である組成物の使用を導かれる。それらは活性薬剤を放出できなければならず、その皮膚層への浸透を促進してその有効性を改善しなければならない。
【0003】
多くの活性薬剤は、一般的に使用される化粧用または医薬用の溶媒、特に水に非常に難溶性であり、および/または水性の酸化環境に敏感であるという困難性を有する。この感水性は、活性薬剤の化学的な不安定性および/または最初に溶解された活性薬剤の結晶化を導く可能性がある。したがって、この感水性は、局所的に適用される化粧用または皮膚用組成物におけるその処方を制限する。
【0004】
感水性の活性薬剤を含む組成物の物理的および化学的安定性を得るために、当業者は、無水の組成物または非常に高い脂肪相の含有量を有する組成物を使用したがる。それゆえ、これは組成物に脂っぽい、時として粘着性のある外観を与え、悪い化粧用の受容性をもたらす。当業者は、前に挙げた理由のために処方された治療を順守する失敗は、特に、乾癬の治療のための失敗の主な原因の1つであることを知っており、記事「Patients with psoriasis and their compliance with medication」(Richardsら、J. Am. Acad. Dermatol. Oct. 99、pp. 581-583)には、乾癬などの慢性の病気を有する40%近くの患者が、それらの治療を続けないことを示している。患者の治療の順守は、適用される組成物の媒体の特徴に直接的に結び付けられることが実証されている。記事「Patients with psoriasis prefer solution and foam vehicles: a quantitative assessment of vehicle preference」(Housmanら、CUTIS、Dec. 2002 vol. 70、pp. 327から332)には、乾癬の患者は、軟膏、または粘度の高い脂っぽいクリームよりも、溶液、泡または薄いエマルションを好むことが示されている。
【0005】
特に、先行技術を読むと、感水性の活性薬剤を溶解された形態で処方できる既存の組成物は、たいてい高い割合の油およびたいていワセリンを含んで、活性薬剤の閉塞性および浸透性を促進する。それゆえ、それらは非常の脂っぽく粘着性であり、したがって適用の快適さおよび容易さを促進しないという欠点を有する。先行技術において一般的に見つけられる他の種類の組成物は、活性薬剤の浸透を促進するために高い割合の浸透促進グリコールを含むが、たいてい粘着性であり、不耐性の問題を引き起こし得る(「The critical role of the vehicle to therapeutic efficacy and patient compliance」、Piacquadioら、Journal of American Academy of Dermatology、August 1998)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Patients with psoriasis and their compliance with medication」、Richardsら、J. Am. Acad. Dermatol. Oct. 99、pp. 581-583
【非特許文献2】「Patients with psoriasis prefer solution and foam vehicles: a quantitative assessment of vehicle preference」、Housmanら、CUTIS、Dec. 2002 vol. 70、pp. 327から332
【非特許文献3】「The critical role of the vehicle to therapeutic efficacy and patient compliance」、Piacquadioら、Journal of American Academy of Dermatology、August 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、適用の不快感および容易さの問題を克服するため、当業者は、化粧用に許容され、同様に医薬的に有効な媒体中に活性薬剤を処方することを求めている。これは、一般的には、水性相を含むエマルションの事例である。したがって、解決するための主な問題は、組成物中の水の存在にも関わらず、感水性の活性薬剤および組成物を安定化させることである。
【0008】
水の存在下における化学的な分解および/または活性薬剤の結晶化の現象は、有効性を低下または失い、かつその使用の間に実行される活性薬剤の用量について不確実であるという、所望の目的に反する結果を有する。さらに、活性薬剤の分解および/またはその結晶化は、組成物の全体的な安定性およびその外観を変更し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、用語「水の存在下において敏感な活性薬剤」は、化学的および/または物理的に不安定な活性薬剤を意味する。用語「化学的に不安定」は、活性成分の分解を特に意味する。用語「物理的に不安定」は、活性薬剤の結晶化または沈殿、あるいは組成物中のその色の変化を意味する。
【0010】
それゆえ、本発明による物理的に安定な組成物は、25℃、4℃および40℃の温度で、2、4、8または12週間の貯蔵後、外観の巨視的な変化(相分離、外見の色の変化など)、または外観の微視的な変化(活性薬剤の再結晶)がいずれも存在しない組成物である。
【0011】
それゆえ、本発明による化学的に安定な組成物は、活性成分の含有量が、室温および40℃で3ヶ月後に安定なままである組成物である。活性成分の安定な含有量は、本発明によると、初期の含有量と比べて非常にわずかな変化を示す含有量、つまり時間Tにおける活性成分の含有量の変化が、T0における初期の含有量の90%を下回らない、特に95%を超えることを意味する。
【0012】
したがって、以下の態様のうちの1つまたは複数を満たすことができる組成物への要求が存在する: 特に小球サイズの維持および相分離の不存在に関して、冷たいおよび温かい条件下での処方の優れた安定性を提供すること、酸化現象に対する活性薬剤の優れた耐性を示すこと、活性薬剤の優れた化学安定性およびその皮膚への優れた利用可能性を有すること。大きな分散した体積割合を可能にする組成物を提供することができることも有用である。さらに、容易かつ有利であるこのような組成物の調製の方法も有用である。
【0013】
したがって、当業者は、本発明によってこれらのパラメータを改善することを求めている。
【0014】
他のパラメータも、医薬組成物の成分の選択のために、当業者によって考慮されるべきである。特に、薬物として本発明によって使用されてもよい医薬組成物は、治療される病状によって処方される必要もあるだろう。
【0015】
例として、これに限定されないが、座瘡を治療するための組成物は、脂っぽくない化粧用の外観である必要があり、一方、アトピー性皮膚炎を治療するための組成物は、軟化性および保湿性である必要があり、脂肪物質が豊富であってもよいが、同時に化粧用ではない脂っぽい外観を避ける必要がある。
【0016】
したがって、本明細書において本発明が提案して解決する問題は、溶解された形態における、少なくとも1つの感水性の活性成分を含む、物理的および化学的に安定な、水中油エマルションタイプの水性医薬組成物を設計することである。前記組成物は軟膏以外でなければならない。したがって、本発明による組成物は、様々なエマルションの形態であってもよい: 治療される病状によって多かれ少なかれ変化可能な豊富な質感の、噴霧可能なエマルション、ローション、乳液、粘度が高いクリーム。それは、病状によって影響を受ける身体の任意の領域への適用のために、使用しやすく、許容可能な化粧性でなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、出願人は、驚くべきことに、内部の脂肪相に溶解された、感水性の活性薬剤を含む、水中油エマルションタイプの組成物を得ることができることを示し、これは物理的および化学的に安定であり、前記組成物は、
- 少なくとも1つの感水性の活性成分、
- 活性薬剤のための溶媒である、少なくとも1つの親油性相を含む脂肪相、
- 少なくとも1つのポリオール、
- 少なくとも5%の水
を含み、局所用であり、スクロエステル(sucroester)またはポリグリセロールエステルのファミリーの少なくとも1つの界面活性剤を含むことを特徴とする。
【0018】
用語「活性薬剤の溶解された形態」は、液体中の分子の形態での活性薬剤の分散を意味し、活性薬剤の結晶化が裸眼または交差偏光顕微鏡下でさえも可視できないことを意味する。
【0019】
本発明による好ましい一実施形態において、組成物は、ビタミンA(レチノール)、EまたはC、より詳しくはビタミンDなどの脂溶性のビタミン誘導体、大環状ラクトン、あるいはフェノール誘導体から選択される、少なくとも1つの感水性の活性薬剤を含む。
【0020】
ビタミンD誘導体は、水を含む媒体中、より詳しくは酸性のpH値における不安定性が知られている。これらの誘導体は、通常、無水の脂肪製剤で処方される。
【0021】
同様に、フェノール誘導体は、水性媒体中で、抗酸化剤の存在下でさえも、非常に迅速な酸化を示す。したがって、それらを水の存在下で処方することは困難である。
【0022】
大環状ラクトンも、水性媒体中における不安定性が知られており、これが水中油エマルション中へそれらを処方することを困難にしている。
【0023】
これらの活性成分の全ては、水性媒体中で不安定であり、および/または酸性のpHに対して敏感であるという欠点を有し、したがって水を含む組成物中に処方することが困難である。標準的な水中油エマルションの油相中に溶解される場合でさえ、これらの活性成分は水性相に移動し、したがって化学的および/または物理的に組成物を不安定化する。
【0024】
したがって、本発明による組成物は、ビタミンD誘導体、大環状ラクトンおよびフェノール誘導体から選択される、少なくとも1つの感水性の活性成分を含む。
【0025】
本発明によって使用されてもよいビタミンD誘導体として、カルシトリオール、カルシポトリオール、および4-[6-エチル-4’-(1-エチル-1-ヒドロキシプロピル)-2’-プロピルビフェニル-3-イルオキシメチル]-2-ヒドロキシメチルフェニルメタノールから選択される化合物が挙げられる。カルシトリオールが好ましくは使用される。
【0026】
本発明による組成物は、組成物の全質量と比較して、0.00001質量%から0.1質量%の間の少なくとも1つのビタミンD誘導体を含み、好ましくは0.0001質量%から0.1質量%である。優先的には、本発明による組成物は、0.0001質量%から0.05質量%、好ましくは0.003質量%から0.06質量%のカルシトリオールを含む。
【0027】
本発明によって使用されてもよい大環状ラクトンとして、イベルメクチン、インベルメクチン、アベルメクチン、アバメクチン、ドラメクチン、エプリノメクチンおよびセラメクチンなどのアベルメクチン類、アベルセクチンB、ABもしくはC、エマメクチンB1a、エマメクチンB1bおよびその誘導体、またはラチデクチンが挙げられる。アベルメクチンのファミリーの化合物は、好ましくはイベルメクチンである。
【0028】
本発明による組成物において、アベルメクチンのファミリーの化合物は、それを含む組成物の全質量と比較して、0.001質量%から10質量%の間、好ましくは0.01質量%から5質量%の間の濃度で存在する。特に、組成物は、0.75質量%、1質量%、1.5質量%または2質量%のイベルメクチンを含む。
【0029】
これに限定されないが、挙げられるフェノール誘導体には、ヒドロキノン、4-ヒドロキシアニソール、ルシノール、ヒドロキノンモノエチルエーテルおよびヒドロキノンモノベンジルエーテルが含まれる。好ましくは、ヒドロキノンまたはルシノールが使用される。
【0030】
有利には、フェノール誘導体の量は、組成物の全質量と比較して、0.00001質量%から10質量%、好ましくは0.0001質量%から6質量%、より詳しくは0.01質量%から5質量%である。
【0031】
本発明による組成物は、活性薬剤の組合せを含んでもよい。第二の活性薬剤は、感水性または酸性のpHに対して敏感のどちらかであってもよく、この場合において、脂肪相中で安定化される。第二の活性薬剤は、水とおよび/または酸性のpHで相溶性があり、水性相に導入される活性薬剤であってもよい。
【0032】
活性薬剤の組合せを含む本発明による組成物の例として、これに限定されないが、脂肪相中で安定化されたビタミンD誘導体と水性相中で安定化されたコルチコイドとの組合せが挙げられる。本発明による好ましい一実施形態において、ビタミンD誘導体は、前に定義したカルシトリオールである。優先的に使用されるコルチコイドは、組成物の全質量と比較して、0.001質量%から0.1質量%の間、好ましくは0.01質量%から0.05質量%の間で使用される、クロベタゾールプロピオネートである。
【0033】
脂肪相中で安定化されたフェノール誘導体と、脂肪相中で安定化されるか、水性相中で分散されるかのどちらかであるレチノイドとの組合せも挙げられる。水性相中で分散されたレチノイドはアダパレンであってもよく、水性相中で分散されたフェノール誘導体はヒドロキノンまたはルシノールであってもよい。
【0034】
本発明による脂肪相は、活性薬剤のための少なくとも1つの溶媒相または溶媒油を含むように選択されるべきである。
【0035】
用語「活性薬剤のための溶媒油」は、活性薬剤が溶解され、化学的に安定である油を意味する。
【0036】
本発明による組成物の活性薬剤がカルシトリオールである場合、溶媒油は、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、オクチルドデカノール、鉱油またはPPG-15ステアリルエーテルであってもよい。
【0037】
本発明による組成物の活性薬剤がイベルメクチンである場合、溶媒油は、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、PPG-15ステアリルエーテル、オクチドデカノール、オレイルアルコール、トリアセチン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、フェノキシエタノールまたはベンジルアルコールであってもよい。
【0038】
本発明による組成物の活性薬剤がヒドロキノンまたはルシノールである場合、溶媒油は、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、アジピン酸ジイソプロピル、ラウログリコール、PPG-15ステアリルエーテルまたはヒマシ油であってもよい。
【0039】
他の油または脂肪物質を、当業者によって多様な方法で組成物の溶媒脂肪相に加えて、例えば稠度または質感の点で所望の特性を有する組成物を調製してもよい。
【0040】
これらの油または脂肪物質の中で、これで網羅されてはいないが、以下のものが挙げられる:
- 植物油、例えばSictiaによって販売されている甘扁桃油、もしくはCPFによって販売されているセサミ油、パーム油、大豆油、セサミシード油、ヒマワリ油またはオリーブ油、
- 鉱油、例えば様々な粘度の液体パラフィン、例えばEssoによって販売されているMarcol 152(登録商標)、Marcol 52(登録商標)またはPrimol 352(登録商標)、
- トリグリセリド、例えばSasolによってMiglyol 812(登録商標)の名称で販売されているカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、
- エステル、例えばGattefosseによってMODの名称で販売されているミリスチン酸オクチルドデシル、GoldschmidtによってTegosoft TNの名称で販売されているC12〜C15アルキルベンゾエートまたはStearinerie DuboisによってDUB ININの名称で販売されているイソノナン酸イソノニル、Cognis社によってCetiol SNの名称で販売されているイソノナン酸セテアリル、Croda社によって販売されているアジピン酸ジイソプロピルまたはCrodamol DA、Croda社によって販売されているパルミチン酸イソプロピル(Crodamol IPP)またはミリスチン酸イソプロピル(Crodamol IPM)、
- アルコキシル化アルコール、例えばPOE(15)ステアリルエーテル(Steareth-15)、PPG-15ステアリルエーテルベンゾエート、PPG-5 Ceteth-20またはPOE (20)イソヘキサデシルエーテル(Isoceteth-20)、
- エーテルおよび誘導体、例えばCrodaによってArlamol E(登録商標)の名称で販売されているPPG-15ステアリルエーテル、
- ゲルベアルコール(Guerbet alcohol)、例えばCognisによってEutanol G(登録商標)の名称で販売されているオクチルドデカノール、
- 動物油またはそれが存在する場合には植物由来のその物質; 例として、ラノリン、スクアレン、魚油、ミンク油、また誘導体として、Sophim社によってSophiderm(登録商標)の名称で、またはLaserson社によってCosbiol(登録商標)の名称で販売されているペルヒドロスクアレン、
- 水素化ポリイソブテン、例えばRossow社によって販売されているParleam(登録商標)、
- シリコーン油、例えばDow CorningによってST-Cyclomethicone 5NF(登録商標)の名称で販売されているシクロメチコーン、またはDow Corningによって販売されている20cStから12500cStの粘度のQ7 9120 Silicone Fluid(登録商標)の名称のジメチコーン、あるいは親油性シリコーン化合物、例えばポリオルガノシロキサンエラストマー、例えばDow Corningによって販売されているElastomer 10、
- ならびにそれらの混合物。
【0041】
本発明による組成物は、室温で固体である高い融点を有する脂肪物質、または親油性増粘剤としても知られている親油性ゲル化剤を含んでもよい。
【0042】
用語「高い融点を有する脂肪物質」は、ワックス、脂肪アルコール、水素化油および脂肪酸エステルから選択される化合物を意味する。
【0043】
用語「ワックス」は、一般的に親油性化合物を意味し、これは室温(25℃)で固体であり、可逆的な固体/液体の状態変化を有し、30℃以上、最大で200℃まで、特には最大で120℃までの融点を有する。使用されてもよいワックスとして、カルナバワックス、微結晶ワックス、BarlocherによってCerabeil blancheの名称で販売されている蜜ろう、またはキャンデリラワックスが挙げられる。
【0044】
使用されてもよい脂肪アルコールとして、オレイルアルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコールまたはステアリルアルコールが挙げられる。
【0045】
用語「水素化油」は、直鎖または分枝状のC8〜C32脂肪鎖を含む動物油または植物油の接触水素化によって得られる油を意味する。これらの中で、例として、特に水素化ホホバ油、異性化ホホバ油、例えばIso-Jojoba-50(登録商標)の商標名でDesert Whale社によって製造されまたは販売されているトランス異性化された、部分的に水素化されたホホバ油、水素化ヒマワリ油、CognisによってCutina HR(登録商標)の名称で特に販売されている水素化ヒマシ油、水素化ココナッツ油、および水素化ラノリン油が挙げられる。
【0046】
使用されてもよい脂肪酸エステルとして、CrodaによってMedilan(登録商標)の名称で特に販売されているラノリン、KarlshamnsによってAkosoft 36(登録商標)の名称で販売されている水素化ココナッツグリセリド、またはそれぞれGattefosseによってHydrineもしくはMonosterolの名称で販売されているジエチレングリコールモノステアレートもしくはプロピレングリコールモノステアレート、またはGattefosseによってCompritol 888(登録商標)の名称で販売されているベヘン酸グリセリルが挙げられる。
【0047】
好ましくは、脂肪相は、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、鉱油または植物油、およびエステルから選択される、活性薬剤のための少なくとも1つの溶媒油を含む。優先的には、本発明による油は、Miglyol 812(カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)、ジメチコーンまたは脂肪アルコールなどのシリコーン油を伴うCrodamol DAおよび液体パラフィンである。
【0048】
したがって、本発明によるエマルションの脂肪相は、組成物の全質量と比較して、1質量%から95質量%の間、好ましくは5質量%から85質量%の間、より優先的には15質量%から50質量%の間の含有量で存在してもよい。
【0049】
本発明による組成物の化学的および物理的安定性は、特に界面活性剤の選択を介して得られる。したがって、本発明による組成物は、スクロースエステルまたはポリグリセロールエステルの分類から選択される、少なくとも1つの主な界面活性剤も含む。
【0050】
スクロースエステルは、スクロース部分によって形成される親水性基と脂肪酸によって形成される親油性基とを含む、非イオン性界面活性剤である。スクロースとして、一般的に、合計で8つのヒドロキシル基を有し、したがってスクロース「モノエステル」からスクロース「オクタエステル」までの範囲のスクロースエステルを得ることが可能である。
【0051】
これに限定されないが、挙げられるスクロースエステルの例には、Mitsubishi-Kagaku社によってSurfhopeの商標名で販売されている、ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロースまたはパルミチン酸スクロースが含まれ、これらは本発明による組成物において使用される好ましいスクロースエステルである。
【0052】
本発明による別の実施形態において、使用されてもよい界面活性剤は、ポリグリセロールエステルである。これらはグリセロールの縮合によって得られるポリグリセロール化脂肪酸エステルである。挙げられる例には、Sakamoto社によってS-Face L1001(登録商標)およびS-Face M1001(登録商標)の名称で販売されているデカグリセリルモノミリステートおよびデカグリセリルモノラウレートが含まれる。
【0053】
本発明による界面活性剤は、組成物の全質量と比較して、0.01質量%から30質量%の間、優先的には0.1質量パーセントから15質量%の間、より優先的には0.5質量%から7質量%の間で使用される。
【0054】
本発明による組成物として、水中油エマルションがあり、それは、組成物の全質量と比較して、少なくとも5質量%、好ましくは5質量%から90質量%の水を含む水性相を含む。
【0055】
本発明による好ましい一実施形態において、水性相は、トリ水素アルコール(例えばグリセロール)、テトラ水素アルコール(例えばジグリセロール)およびヘキサ水素アルコール(例えばソルビトール)の群から好ましくは選択される、ポリオール(少なくともトリオール)を含む。
【0056】
したがって、本発明によるポリオールの量は、組成物の全質量と比較して、1質量%から40質量%の間である。
【0057】
好ましい一態様において、本発明による組成物は、1%から20%の間の含有量のグリセロール、および5%から90%の間の水の割合を含む。
【0058】
特に好ましい一実施形態において、本発明による組成物は、1つまたは複数の親水性相ゲル化剤を含む。本発明による組成物中に含まれてもよいゲル化剤の例には、これに限定されないが、Noveon社によってPemulen TR1(登録商標)またはPemulen TR2(登録商標)の名称で販売されているアクリレート/C10〜30のアルキルアクリレート架橋ポリマー、Noveon社によってUltrez 20(登録商標)、Ultrez 10(登録商標)、Carbopol 1382(登録商標)またはCarbopol ETD2020NF(登録商標)、Carbopol 981またはCarbopol 980の名称で販売されているカルボマー、多糖類、これに限定されないが、例として、Kelco社によって販売されているXantural 180(登録商標)などのキサンタンガム、Kelco社によってKelcogel(登録商標)の名称で販売されているジェランガム、グアーガム、微結晶セルロースおよびFMC Biopolymer社によってAvicel CL-611(登録商標)の名称で販売されているカルボキシメチルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特にDow Chemical社によってMethocel E4M premiumの名称で販売されている製品、またはヒドロキシエチルセルロース、特にAqualon社によってNatrosol HHX 250(登録商標)の名称で販売されている製品、Vanderbilt社によって販売されているVeegum Kなどのケイ酸アルミニウムマグネシウムのファミリー、Aculyn 44(登録商標)の名称で販売されているPEG-150/デシル/SMDIコポリマー(プロピレングリコール(39%)と水(26%)との混合物中の35質量%において、少なくとも、成分として、150または180モルのエチレンオキシド、デシルアルコールおよびメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)(SMDI)を含むポリエチレングリコールを含む重縮合物)などの疎水性鎖に結合したアクリルポリマーのファミリー、Structure Solanaceの名称で販売されている変性ジャガイモデンプンなどの変性デンプンのファミリー、またはそれらの混合物、およびSEPPIC社によってSepineo P 600(登録商標)(またはSimulgel 600 PHA(登録商標))の名称で販売されているアクリロイルジメチルタウレートナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80の混合物などのポリアクリルアミドのファミリーのゲル化剤、ポリアクリルアミド/イソパラフィン C13-14/ラウレス-7の混合物、例えばSEPPIC社によってSepigel 305の名称で販売されている製品、IMCD社によって販売されているViscarin(登録商標)の製品およびGelcarin(登録商標)の製品などのカラギーナンのファミリー、特に以下の4つの主なファミリーに分けられる: κ、λ、β、ωが挙げられる。
【0059】
挙げられる好ましいゲル化剤には、カルボマー、例えばCarbopol 980(登録商標)または981(登録商標)、ポリアクリルアミド、例えばSepineo P 600(登録商標)またはSimulgel 600 PHA(登録商標)、および多糖類、例えばキサンタンガムが含まれる。
【0060】
上記のゲル化剤は、0.001%から15%の範囲、より優先的には0.01%から5%の範囲の優先的な濃度で使用されてもよい。
【0061】
本発明による組成物は、前記製剤の特定の特性を与えるための医薬および化粧品において一般的に使用される添加剤を含んでもよい。当業者は、期待される効果に応じてこれらの添加剤の選択を適用するだろう。
【0062】
添加剤の中で、例として、単独または組合せで、以下が挙げられる:
- 抗酸化剤、例えばビタミンEおよびその誘導体(例えばRocheからのDL-α-トコフェノールまたは酢酸トコフェロール); ビタミンCおよびその誘導体(例えばRocheからのパルミチン酸アスコルビル、ClariantによってNipanox BHTの名称で販売されているブチルヒドロキシトルエン、およびメタ重亜硫酸ナトリウム)、
- ビタミンPPまたはナイアシンアミドなどのビタミン、
- 鎮静剤および/または抗刺激剤、例えばBertek Pharmaceuticals社によってPolyolprepolymer-2の商標名で販売されているPPG-12/SMDIコポリマー、グリシルレチン酸またはその誘導体、例えばCognis社によって販売されているEnoxolone、あるいはヒアルロン酸、
- レクチン、コレステロール、
- 保存料: 挙げられる保存料の例には、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、クロルヘキシジン、クロロクレゾールおよびその誘導体、エチルアルコール、フェノキシエタノール、ソルビン酸カリウム、ジアゾリジニルウレア、ベンジルアルコール、パラベン、またはそれらの混合物、ClariantによってNipagin Mの名称で販売されているメチルパラベン、ならびにClariantによってNipasolの名称で販売されているプロピルパラベンが含まれる、
- 酸または塩基、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、水酸化ナトリウムおよびジイソプロパノールアミン、
- キレート剤。
【0063】
添加剤は、組成物の全質量の0から20質量%の範囲の割合で、本発明による組成物中に存在する。
【0064】
したがって、本発明による組成物は、以下:
- 少なくとも1つの感水性の活性成分、
- 活性薬剤のための溶媒である、少なくとも1つの親油性相を含む脂肪相、
- スクロエステルまたはポリグリセロールエステルのファミリーの少なくとも1つの界面活性剤、
- 少なくとも1つのポリオール、
- 少なくとも5%の水
を含む、水中油エマルションタイプの局所用組成物に関する。
【0065】
したがって、本発明による組成物は、以下:
- ビタミン、大環状ラクトンおよびフェノール誘導体から選択される、少なくとも1つの感水性の活性成分、
- 活性薬剤のための溶媒である、少なくとも1つの親油性相を含む脂肪相、
- スクロエステルまたはポリグリセロールエステルのファミリーの少なくとも1つの界面活性剤、
- 少なくとも1つのポリオール、
- 少なくとも5%の水
を含む、水中油エマルションタイプの局所用組成物に関する。
【0066】
好ましい一実施形態によると、本発明による組成物は、以下:
- ビタミンD誘導体、大環状ラクトンおよびフェノール誘導体から選択される、少なくとも1つの感水性の活性成分、
- 活性薬剤のための溶媒である、少なくとも1つの親油性相を含む脂肪相、
- スクロエステルまたはポリグリセロールエステルのファミリーの少なくとも1つの界面活性剤、
- 少なくとも1つのポリオール、
- 少なくとも1つのゲル化剤、
- 少なくとも5%の水
を含む、水中油エマルションタイプの局所用組成物に関する。
【0067】
特に好ましい一実施形態において、組成物はエマルションの形態であり、以下:
- 0.00001%から0.1%の間の少なくとも1つのビタミンD誘導体、
- 10%から95%の脂肪相、
- 0.1%から6%のスクロエステル、
- 1%から30%のポリオール、
- 0.05%から3%の親水性ゲル化剤、
- 少なくとも5%の水、
- 0から20%の1つまたは複数の添加剤
を含む。
【0068】
より優先的には、組成物は水中油エマルションの形態であり、以下:
- カルシトリオール、カルシポトリオールおよび4-[6-エチル-4’-(1-エチル-1-ヒドロキシプロピル)-2’-プロピル-ビフェニル-3-イルオキシメチル]-2-ヒドロキシメチルフェニルメタノールから選択される、0.003%から0.06%の少なくとも1つのビタミンD誘導体、
- カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよび鉱油から、単独または混合物として選択される、10%から80%の脂肪相、
- ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロースおよびパルミチン酸スクロースから選択される、0.1%から6%の少なくとも1つのスクロエステル、
- 1%から30%のグリセロール、
- カルボマーおよび多糖類から選択される、0.05%から3%の親水性ゲル化剤、
- 少なくとも5%の水、
- 0から20%の1つまたは複数の添加剤
を含む。
【0069】
好ましい第二の実施形態によると、組成物は水中油エマルションの形態であり、以下:
- ヒドロキノンおよびルシノールから選択される、0.5%から10%の少なくとも1つのフェノール誘導体、
- カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよびPPG-15ステアリルエーテルから、単独または混合物として選択される、10%から95%の脂肪相、
- ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロースおよびパルミチン酸スクロースから選択される、0.1%から6%の少なくとも1つのスクロエステル、
- 1%から30%のグリセロール、
- カルボマーおよび多糖類から選択される、0.05%から3%の親水性ゲル化剤、
- 少なくとも5%の水、
- 0から20%の1つまたは複数の添加剤
を含む。
【0070】
本発明の主題は、以下:
- 細胞の分化および増殖に関するケラチン化疾患に関連する皮膚の病状、特に尋常性座瘡、面皰、多形、酒さ性座瘡、嚢胞性座瘡、集簇性座瘡、老人性座瘡、ならびに日射座瘡(solar acne)、薬物関連座瘡、または職業性座瘡などの二次座瘡、
- 魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエ病(Darier’s disease)、掌蹠角皮症、白板症および白板症様状態、ならびに皮膚または粘膜(口腔)苔癬、
- 細胞増殖異常を有する、または有さない、炎症性免疫アレルギー要素を有する皮膚の病状、特に皮膚、粘膜または爪の乾癬、乾癬リウマチ、皮膚のアトピー、例えば湿疹、またはアトピー性皮膚炎、呼吸性アトピーまたは歯肉肥厚、
- ニキビダニ(Demodex folliculorum)によって引き起こされる病状、より詳しくは皮膚または眼の酒さ、
- 良性または悪性の、ウイルス起源または他のもの起源の、真皮または表皮増殖、特に尋常性疣贅、扁平疣贅および疣贅状表皮発育異常症、口腔または血液性乳頭腫症、Tリンパ腫、
- 紫外線照射によって誘導される増殖、特に基底細胞および脊髄細胞の上皮腫、
- 前癌状態の皮膚の病変、特に角化棘細胞腫、
- 免疫性皮膚病、特に紅斑性狼瘡、
- 水疱性免疫疾患、
- コラーゲン疾患、特に強皮症、
- 免疫学的要素を有する皮膚のまたは一般的な病状、
- UV照射によって引き起こされる皮膚異常、皮膚の、光で誘導されるもしくは時間的老化、照射性色素沈着および角化症、あるいは時間的または照射性老化に関するいずれかの病変、特に乾燥症、
- 脂腺機能異常、特に座瘡の高脂漏症、単純脂漏症、または脂漏性皮膚炎、
- 瘢痕性疾患または妊娠線、
- 高色素沈着、肝斑、低色素沈着または白斑などの色素沈着疾患
- 肥満、脂質異常症、インスリン非依存性糖尿病またはX症候群などの脂肪代謝の病状、
- 関節炎などの炎症の病状、
- 癌または前癌状態、
- 様々な起源の脱毛症、特に化学療法または放射線によって引き起こされる脱毛症、
- ぜんそく、I型糖尿病、多発性硬化症、または他の免疫系の選択的機能障害などの免疫系疾患、あるいは、
- 動脈硬化または高血圧などの心臓血管系の病状
を治療するための薬物の製造のための、本発明による組成物の使用である。
【0071】
優先的には、イベルメクチンを含む本発明による組成物は、酒さを治療するために使用され、ヒドロキノンを含む本発明による組成物は、色素沈着疾患を治療するために使用される。
【0072】
本組成物の使用の好ましい一態様において、それはビタミンD誘導体、より詳しくはカルシトリオールを含み、乾癬またはアトピー性皮膚炎を治療するための薬物の製造のために使用される。
【0073】
本組成物の使用の好ましい第二の実施形態において、それはルシノールを含み、色素沈着疾患を治療するための薬物の製造のために使用される。
【0074】
以下の実施例は、これで網羅されてはいないが、本発明による組成物の処方の例、および化学的および物理的安定性の結果を示す。
【実施例】
【0075】
(実施例1 - 様々な溶媒油中のカルシトリオールの安定性)
本発明による組成物に組み込まれる活性薬剤の溶解性を最適化するために、安定性の試験を、様々な溶媒油で行った。
【0076】
製剤を、以下の割合によって調製する: 0.00666%のカルシトリオール/0.29629%のBHT、100%を得るために十分な量の溶媒油。
【0077】
【表1】

【0078】
(実施例2 - 様々な溶媒油中のヒドロキノンの安定性)
製剤を、以下の割合によって調製する: 4%のヒドロキノン、100%を得るために十分な量の溶媒油。
【0079】
【表2】

【0080】
(実施例3 - 様々な溶媒油中のイベルメクチンの安定性)
製剤を、以下の割合によって調製する: 1%のイベルメクチン、100%を得るために十分な量の溶媒油。
【0081】
【表3】

【0082】
(実施例4 - 様々な溶媒油中のルシノールの安定性)
製剤を、以下の割合によって調製する: 5%のルシノール、100%を得るために十分な量の溶媒油。
【0083】
【表4】

【0084】
参照物質に対するHPLCによる分析技術。
【0085】
(実施例5 - ビタミンD誘導体を有する本発明による組成物)
【表5】

t0における特性: pH = 6.24
巨視的外観: 流動性のある白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0086】
(物理的安定性)
【表6】

【0087】
(化学的安定性)
初期時間(T0)を100%として考える。
【0088】
【表7】

【0089】
(実施例6 - ビタミンD誘導体を有する本発明による組成物)
【表8】

t0における特性: pH = 5.85
巨視的外観: 粘度の高い白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0090】
(物理的安定性)
【表9】

【0091】
(化学的安定性)
初期時間(T0)を100%として考える。
【0092】
【表10】

【0093】
(実施例7: イベルメクチンを有する組成物)
【表11】

巨視的外観: 粘度の高い白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0094】
(実施例8: ヒドロキノンを有する組成物)
【表12】

【0095】
(実施例9: カルシトリオールを有するローションの形態の組成物)
【表13】

【0096】
(実施例10: カルシトリオールを有する組成物)
【表14】

【0097】
(実施例11: カルシトリオールを有する組成物)
【表15】

【0098】
(実施例12 - カルシトリオールを有する組成物)
【表16】

t0における特性: pH = 5.43
巨視的外観: 流動性のある白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0099】
(物理的安定性)
【表17】

【0100】
(化学的安定性)
初期時間(T0)を100%として考える。
【0101】
【表18】

【0102】
(実施例13: カルシトリオールを有するリッチクリームの組成物)
【表19】

t0における特性: pH = 6.08
巨視的外観: 粘度の高い白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0103】
(物理的安定性)
【表20】

【0104】
(化学的安定性)
初期時間(T0)を100%として考える。
【0105】
【表21】

【0106】
(実施例14: カルシトリオールとプロピオン酸クロベタゾールとの組合せを有する組成物)
【表22】

【0107】
(実施例15: ルシノールを含む組成物)
【表23】

t0における特性: pH = 5.46
巨視的外観: 白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0108】
(実施例16: ルシノールを含む組成物)
【表24】

【0109】
(実施例17: イベルメクチンを有する組成物)
【表25】

巨視的外観: 粘度の高い白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0110】
(実施例18: ルシノールを含む組成物)
【表26】

t0における特性: pH = 6.15
巨視的外観: 白色のクリーム
微視的外観: 非常に微細なエマルション
【0111】
(実施例19: ルシノールとレチノイドとを含む組成物)
【表27】

【0112】
(実施例20: 組成物を調製するための手順)
- 主なタンク中で、界面活性剤、および適切な場合、全てまたはいくらかのポリオールを含む水性相Aを、75℃で攪拌しながら、界面活性剤の溶解が完了するまで加熱する;
- 別の容器中で、脂肪相Bを75℃まで加熱する。加熱の最後に、溶解された活性薬剤を加え、必要な場合にいくらかの溶媒油中で50℃まで加熱する;
- 2相が75℃の温度である場合、高せん断下で徐々に相Bを相Aに組み込むことによって乳化を行う;
- 次いで、エマルションを放置してゆっくりと攪拌しながら冷却する;
- 40℃から、ゆっくりと攪拌しながら徐々に水性相Cの残りを加える;
- 次いで、適切な場合、ゆっくりと攪拌しながら相Dの成分を加える;
- 場合によって、相Dの前に、他の活性薬剤の分散化(相C’)。
【0113】
(実施例21: 本発明による組成物中に処方された活性薬剤の放出/浸透の研究)
研究を、活性薬剤としてカルシトリオールを含む、本発明による組成物で行った。
【0114】
この研究の目的は、本発明による組成物中に処方された活性薬剤のカルシトリオールの放出および浸透を評価し、結果をポマードのSilkis(登録商標)などの標準的な軟膏中に処方された活性薬剤のものと比較することである。
【0115】
本発明による組成物中の所望の活性薬剤の優れた安定性に加えて、活性薬剤の優れた放出/浸透も、活性薬剤をその対象(本事例においては皮膚)に対して分布することができるために、達成されるべきである。この目的は、所望の治療効果を得ることができるものである。
【0116】
したがって、カルシトリオールの放出/浸透を、カルシトリオールの単独の適用後に、ミクロピッグ(micropig)のin vivoにおける、皮膚中および皮膚を越えて測定し、皮膚中のカルシトリオールの濃度/量を、薬力学反応と相互の関係を比較する。
【0117】
特に、本目的は、本発明による組成物によって放出されたままの皮膚中に存在する活性薬剤の量が、治療効果のための所望の薬力学的作用を発生するのに十分かどうかを評価することである。これを行うために、9μg/gの濃度でカルシトリオールを含む本発明による組成物を、参照組成物、9μg/gのカルシトリオールを処方したポマードのSilkisと比較する。
【0118】
治療された皮膚のそれぞれの表面のために、以下の個別のデータを計算し、μgまたは適用した用量の割合で表した。
【0119】
測定したパラメータは、以下におけるカルシトリオールの濃度である:
・角質層
・全皮膚
・薬力学反応の測定(24-ヒドロキシラーゼのmRNAの発現)
・皮膚中のカルシトリオールの濃度と薬力学反応の強度との相互関係。
【0120】
【表28】

【0121】
結果は、本発明による組成物によって放出されたカルシトリオールの量は、軟膏によって放出されたものと、十分に同じ程度であることを示す。さらに、2つの組成物のビタミンDの活性を考慮すると、24-ヒドロキシラーゼのmRNAの発現における十分な増加が実証された。これは、本発明による組成物によって運ばれた活性薬剤の量が、治療活性を与えるために十分であることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 溶解された形態であり、油相中で化学的に安定である、少なくとも1つの感水性の活性薬剤、
- 活性薬剤のための親油性溶媒相、
- 少なくとも1つのポリオール、
- 少なくとも5%の水、
を含む水中油エマルションタイプの医薬組成物であって、局所用であり、スクロエステルまたは誘導体、およびポリグリセロールエステルから選択される少なくとも1つの界面活性剤を含むことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記感水性の活性薬剤が、ビタミンD誘導体、大環状ラクトンおよびフェノール誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記感水性の活性薬剤が、前記油相中に溶解されることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビタミンD誘導体が、カルシトリオール、カルシポトリオールおよび4-[6-エチル-4’-(1-エチル-1-ヒドロキシプロピル)-2’-プロピルビフェニル-3-イルオキシメチル]-2-ヒドロキシメチルフェニルメタノールから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ビタミンD誘導体がカルシトリオールであることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記大環状ラクトンがイベルメクチンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記フェノール誘導体が、ルシノールまたはヒドロキノンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのゲル化剤を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ゲル化剤が、アクリルアミド類、カルボマーおよび多糖類から選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記活性成分のための前記親油性溶媒相が、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリドおよび鉱油から選択される少なくとも1つの脂肪物質を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記スクロエステルが、ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロースおよびパルミチン酸スクロースから、単独または混合物として選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリオールがグリセロールであることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
- 0.00001%から0.1%の間の少なくとも1つのビタミンD誘導体、
- 10%から95%の脂肪相、
- 0.1%から6%のスクロエステル、
- 1%から30%のポリオール、
- 0.05%から3%の親水性ゲル化剤、
- 少なくとも5%の水、
- 0から20%の1つまたは複数の添加剤
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
- 0.003%から0.015%のカルシトリオール、
- カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよび鉱油から、単独または混合物として選択される、10%から80%の脂肪相、
- ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロースおよびパルミチン酸スクロースから選択される、0.1%から6%の少なくとも1つのスクロエステル、
- 1%から30%のグリセロール、
- カルボマーおよび多糖類から選択される、0.05%から3%の親水性ゲル化剤、
- 少なくとも5%の水、
- 0から20%の1つまたは複数の添加剤
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
- ヒドロキノンおよびルシノールから選択される、0.5%から10%の少なくとも1つのフェノール誘導体、
- カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよびPPG-15ステアリルエーテルから、単独または混合物として選択される、10%から95%の脂肪相、
- ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロースおよびパルミチン酸スクロースから選択される、0.1%から6%の少なくとも1つのスクロエステル、
- 1%から30%のグリセロール、
- カルボマーおよび多糖類から選択される、0.05%から3%の親水性ゲル化剤、
- 少なくとも5%の水、
- 0から20%の1つまたは複数の添加剤
を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
- 分化および増殖に関するケラチン化疾患に関連する皮膚の病状、特に尋常性座瘡、面皰、多形、酒さ性座瘡、嚢胞性座瘡、集簇性座瘡、老人性座瘡、ならびに日射座瘡、薬物関連座瘡、または職業性座瘡などの二次座瘡、
- 魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエ病、掌蹠角皮症、白板症および白板症様状態、ならびに皮膚または粘膜(口腔)苔癬、
- 細胞増殖異常を有する、または有さない、炎症性免疫アレルギー要素を有する皮膚の病状、特に皮膚、粘膜または爪の乾癬、乾癬リウマチ、皮膚のアトピー、例えば湿疹、またはアトピー性皮膚炎、呼吸性アトピーまたは歯肉肥厚、
- ウイルス起源または非ウイルス起源の、良性または悪性の真皮または表皮増殖、特に尋常性疣贅、扁平疣贅、疣贅状表皮発育異常症、口腔または血液性乳頭腫症、およびTリンパ腫、
- 紫外線照射によって誘導される増殖、特に基底細胞および脊髄細胞の上皮腫、
- 前癌状態の皮膚の病変、特に角化棘細胞腫、
- 免疫性皮膚病、特に紅斑性狼瘡、
- 水疱性免疫疾患、
- コラーゲン疾患、特に強皮症、
- 免疫学的要素を有する皮膚のまたは一般的な病状、
- UV照射によって引き起こされる皮膚異常、皮膚の、光で誘導されるもしくは時間的老化、または照射性色素沈着および角化症、あるいは時間的または照射性老化に関するいずれかの病変、特に乾燥症、
- 脂腺機能異常、特に座瘡に関連した高脂漏症、単純脂漏症、または脂漏性皮膚炎、
- 瘢痕性疾患または妊娠線、
- 高色素沈着、肝斑、低色素沈着または白斑などの色素沈着疾患
- 肥満、脂質異常症、インスリン非依存性糖尿病またはX症候群などの脂肪代謝の病状、
- 関節炎などの炎症の病状、
- 癌または前癌状態、
- 様々な起源の脱毛症、特に化学療法または放射線によって引き起こされる脱毛症、
- ぜんそく、I型糖尿病、多発性硬化症、または他の免疫系の選択的機能障害などの免疫系疾患、あるいは、
- 動脈硬化または高血圧などの心臓血管系の病状
を治療するための、薬物の製造のための請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項17】
乾癬およびアトピー性皮膚炎を治療するための薬物を調製するための組成物の、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
色素沈着疾患を治療するための薬物の調製のための組成物の、請求項16に記載の使用。

【公表番号】特表2012−513387(P2012−513387A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541575(P2011−541575)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052634
【国際公開番号】WO2010/072958
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500247183)ガルデルマ・ソシエテ・アノニム (29)
【Fターム(参考)】