説明

成型品の製造方法および記録媒体の製造方法

【課題】所望とおりに突起の配列を形成することができる成型品の製造方法を提供する。
【解決手段】基板の表面に球状微粒子36は配列される。基板の表面で球状微粒子36を覆い隠す被覆膜37は成膜される。被覆膜37の裏面から被覆膜37および球状微粒子36にエッチング処理が施される。被覆膜37の裏面は徐々に削られていく。このとき、被覆膜37の裏面には球状微粒子36の働きで窪みが形成される。窪みは球状微粒子36の外形で象られる。こういった窪みが半球体よりも縮小すると、エッチング処理は終了される。エッチング処理の終了まで窪み内に球状微粒子36は残存する。窪みの内壁面は浸食から保護される。半球面よりも縮小された部分球面で窪みが区画されれば、成型品の成膜時に確実に窪み内に成型品の材料は入り込む。被覆膜37の裏面から成型品が剥離される際に成型品の突起は確実に被覆膜37の窪みから抜け出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型品の製造方法に関し、特に、表面に微小突起を配列する成型品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献6に記載されるように、磁気ディスクの製造に用いられる金型の製造方法は広く知られる。この製造方法では基板上にナノ粒子が配列される。基板上には液状の光硬化ポリマー層が形成される。光硬化ポリマー層はナノ粒子同士の間を埋め尽くす。光硬化ポリマー層の硬化後、光硬化ポリマー層から基板が剥離される。こうして光硬化ポリマー層の表面にはナノ粒子で象られた窪みの配列が形成される。光硬化ポリマー層の表面でニッケルのめっき膜が成膜される。ニッケル製の金型が成型される。
【特許文献1】特開2006−156977号公報
【特許文献2】特開2007−193249号公報
【特許文献3】特開2005−347041号公報
【特許文献4】米国特許第5772905号明細書
【特許文献5】特許第2828386号公報
【特許文献6】特開2006−346820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のような製造方法では、液状の光硬化ポリマー層が完全にナノ粒子を包み込む。したがって、転写された窪みでは開口が狭められる。その結果、窪み内でめっき膜の成長は阻害されてしまう。めっき膜が十分に形成されない。たとえ窪み内でニッケルのめっき膜が形成されたとしても、離型にあたってめっき膜は窪み内に残存してしまう。光硬化ポリマー層の表面形状は十分な精度でめっき膜の表面に転写されることができない。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、所望とおりに突起の配列を形成することができる成型品の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、そういった製造方法で製造される成型品を利用する記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、成型品の製造方法は、基板の表面に球状微粒子を配列する工程と、前記球状微粒子同士の間を埋めつつ前記基板の表面で球状微粒子を覆い隠す被覆膜を成膜する工程と、前記基板から前記球状微粒子を裏面に保持する前記被覆膜を分離する工程と、分離された前記被覆膜の前記裏面から前記被覆膜および球状微粒子にエッチング処理を施す工程と、前記被覆膜から前記球状微粒子を除去し、球状微粒子で象られた窪みの配列を被覆膜の前記裏面に形成する工程と、前記被覆膜の前記裏面に成膜を実施し、表面に突起の配列を有する成型品を形成する工程とを備える。
【0006】
こういった製造方法ではエッチング処理に基づき被覆膜の裏面は徐々に削られていく。このとき、被覆膜の裏面には球状微粒子の働きで窪みが形成される。窪みは球状微粒子の外形で象られる。こういった窪みが半球体よりも縮小すると、エッチング処理は終了される。エッチング処理の終了まで窪み内に球状微粒子は残存する。窪みの内壁面は球状微粒子で覆われ続ける。したがって、窪みの内壁面は浸食から保護される。窪みは、球状微粒子で象られた形状を維持する。窪みは半球面よりも縮小された部分球面で区画されることから、成型品の成膜時に確実に窪み内に成型品の材料は入り込むことができる。成型品の表面は確実に被覆膜の裏面の形状を反映する。しかも、被覆膜の裏面から成型品が剥離される際に成型品の突起は確実に被覆膜の窪みから抜け出る。所望とおりに突起の配列は形成されることができる。
【0007】
成型品の製造方法では、前記球状微粒子は酸化珪素または金属酸化物から構成され、前記被覆膜は金属から構成されればよい。このとき、前記球状微粒子は酸化珪素から構成され、前記被覆膜はニッケルから構成されればよい。こういった場合には、前記エッチング処理にあたってイオンミリングが用いられればよい。前記被覆膜の成膜や前記成型品の成膜にあたってめっき法が用いられればよい。その他、前記球状微粒子は樹脂から構成され、前記被覆膜は金属から構成されてもよい。
【0008】
以上のような成型品の製造方法で製造された成型品は記録媒体の製造方法で利用されることができる。この場合、記録媒体の製造方法は、記録媒体用基板の表面に樹脂層を形成する工程と、前記成型品の突起の配列を前記樹脂層に押し当てて、突起の配列を反映する表面形状を樹脂層に形成する工程と、前記表面形状に基づき記録媒体用基板の表面に所定のパターンに則った形状を形成する工程とを備えればよい。前述の成型品では突起の頂点は高い精度で1仮想平面内に配列されることができる。押し当てにあたって突起の頂点は確実に記録媒体用基板の表面に接触することができる。突起の配列は確実に樹脂層の表面形状に反映されることができる。その結果、記録媒体用基板の表面には所望とおりのパターンで形状が形成されることができる。この場合、前述の成型品の製造方法では、前記球状微粒子は円弧に沿って配列されることが望まれる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、所望とおりに突起の配列を形成することができる成型品の製造方法は提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1は磁気記録媒体としての磁気ディスク11を概略的に示す。磁気ディスク11は円盤形に形成される。円盤の中央には円形の貫通孔12が区画される。磁気ディスク11が例えばハードディスク駆動装置に組み込まれる際に、磁気ディスク11は貫通孔12でスピンドル軸を受け入れられる。磁気ディスク11の表裏面にはその中心軸周りで同心円状に複数本の記録トラックが確立される。記録トラックは所定の間隔で磁気ディスク11の半径方向に配列される。記録トラックではその線方向にビットごとに磁区が配列される。後述されるように、磁区は柱状磁性体に基づき確立される。1つの柱状磁性体で1つの磁区が確立されてもよく、複数の柱状磁性体で1つの磁区が確立されてもよい。
【0012】
図2は磁気ディスク11の断面構造を詳細に示す。磁気ディスク11はいわゆる垂直磁気記録媒体として構成される。磁気ディスク11は、支持体としての基板13と、この基板13の表裏面に広がる多層構造膜14とを備える(裏面は図示されず)。基板13は、例えば、円盤形のシリコン(Si)本体13aと、シリコン本体13aの表裏面に広がる非晶質の酸化珪素(SiO)膜13bとで構成される。ただし、基板13にはガラス基板やアルミニウム基板、セラミック基板が用いられてもよい。多層構造膜14に磁気情報は記録される。多層構造膜14の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜15や、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜16で被覆される。
【0013】
多層構造膜14は、酸化珪素膜13bの表面に広がる裏打ち層17を備える。裏打ち層17は例えば鉄炭化タンタル合金(FeTaC)膜やニッケル鉄(NiFe)膜といった軟磁性体から構成されればよい。ここでは、裏打ち層17に例えば膜厚200nm程度のFeTaC膜が用いられる。裏打ち層17では基板13の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。
【0014】
裏打ち層17の表面には中間層18が広がる。中間層18は例えばアルミニウム(Al)膜といった非磁性体から構成されればよい。中間層18の表面には複合材すなわち記録磁性層19が広がる。記録磁性層19は、中間層18の表面に広がる基体すなわち基質層21を備える。基質層21には例えばアルミナ(Al)といった非磁性体が用いられればよい。
【0015】
基質層21の表面には微小ホールすなわちナノホール22が穿たれる。ナノホール22は円柱空間を区画する。円柱空間の中心軸は基質層21の表面すなわち平坦面に直交する。ナノホール22の直径は4nm〜150nm程度に設定されればよい。ナノホール22の深さは2〜10のアスペクト比に基づき設定されればよい。アスペクト比はナノホール22の直径に対する深さの比を示す。ナノホール22内には前述の柱状磁性体23が配置される。ここでは、ナノホール22は柱状磁性体23で充填される。柱状磁性体23は例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)といった磁性体の少なくともいずれかを含めばよい。柱状磁性体23には例えばクロム(Cr)や白金(Pt)、パラジウム(Pd)といった材料がさらに含まれてもよい。ここでは、柱状磁性体23には例えばコバルトが用いられればよい。柱状磁性体23同士の間隔すなわちナノホール22同士の間隔は例えば4nm〜150nm程度に設定されればよい。個々の柱状磁性体23では基質層21の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸が確立される。
【0016】
次に、磁気ディスク11の製造方法を詳述する。まず、円盤形の基板13が用意される。図3から明らかなように、基板13の表面には裏打ち層17およびアルミニウム層25が順番に形成される。裏打ち層17およびアルミニウム層25の形成にあたって例えばスパッタリング法や真空蒸着法が用いられればよい。
【0017】
続いてアルミニウム層25の表面からナノホール22が穿たれる。ナノホール22の形成にあたって、最初に、アルミニウム層25の表面にレジスト膜26すなわち樹脂層が形成される。レジスト膜26の形成にあたって例えばメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)といった熱可塑性のアクリル樹脂が用いられる。アルミニウム層25の表面にメタクリル酸メチル樹脂が塗布される。メタクリル酸メチル樹脂の膜厚は例えば100nm程度に設定される。基板13の加熱と同時にアルミニウム層25の表面には金型27が押し付けられる。押し付け圧は例えば10[MPa]程度に設定される。
【0018】
このとき、金型27には板材28の表面で突起29の配列が形成される。個々の突起29は例えばドーム形に整形される。突起29の頂点はナノホール22の中心軸の配列に倣って配列される。この金型27では、後述されるように、突起29の頂点は高い精度で1仮想平面内に配列されることができる。金型27の押し付けにあたって個々の突起29の頂点はアルミニウム層25の表面に押し当てられる。
【0019】
その後、基板13は冷却される。メタクリル酸メチル樹脂は固化する。固化後、基板13から金型27は剥がされる。図4に示されるように、レジスト膜26には突起29の配列に倣って窪み31が形成される。すなわち、レジスト膜26の表面には突起29の配列を反映する表面形状が形成される。
【0020】
こうして形成されるレジスト膜26の表面形状に基づき、図5に示されるように、アルミニウム層25の表面に所定のパターンに則って微細な穴32が形成される。穴32の形成にあたってアルミニウム層25の表面に対してイオンミリングが実施される。イオン粒子がアルミニウム層25の表面およびレジスト膜26に叩きつけられる。高周波パワーは例えば500[W]程度に設定されればよい。チャンバー内には例えば30[sccm]の流量でアルゴンガスが導入されればよい。レジスト膜26の働きで穴32の配列は高い精度で突起29の配列を反映することができる。穴32の形成後、レジスト膜26は除去される。
【0021】
続いてアルミニウム層25には陽極酸化処理が施される。アルミニウム層25はシュウ酸浴に浸される。アルミニウム層25に電圧が印加される。印加電圧は例えば40[V]に設定されればよい。図6に示されるように、陽極酸化に伴ってナノホール22が穴32から成長する。穴32はナノホール22の起点として機能する。こうしてナノホール22の配列は突起29の配列を反映する。ナノホール22の深さは100nm程度に達する。ナノホール22の形成過程でアルミニウム層25の表面は酸化していく。こうしてアルミニウム層25から基質層21が形成される。基質層21以外は中間層18としてアルミニウム層25が残存する。
【0022】
その後、基質層21の表面でコバルト膜の成膜が実施される。成膜にあたってめっき法が用いられる。基板13は硫酸コバルト浴に浸される。図7に示されるように、ナノホール22内にコバルトは充填される。こうして個々のナノホール22内には柱状磁性体23が形成される。コバルト膜には化学的機械研磨処理(CMP)が施される。その結果、図8に示されるように、ナノホール22から溢れるコバルト膜は除去される。個々の孤立した柱状磁性体23が確立される。基質層21の表面には保護膜15や潤滑膜16が形成される。保護膜15の形成には例えばスパッタリング法が用いられればよい。潤滑膜16は例えばディップ法に基づき塗布されればよい。柱状磁性体23には基板13の表面に直交する磁化容易軸が確立される。磁化容易軸の確立にあたって柱状磁性体23には加熱中に磁場が印加される。なお、裏打ち層17やアルミニウム層25の形成、ナノホール22および柱状磁性体23の形成、および、保護膜15や潤滑膜16の形成は磁気ディスク11の表裏面に同時に実施されてもよい。
【0023】
次に本発明の第1実施形態に基づき金型27の製造方法を詳述する。まず、円盤形のシリコンウェハーが用意される。シリコンウェハーの表面には酸化膜層すなわち酸化珪素(SiO)層が形成される。酸化珪素層の形成にあたって例えばシリコンウェハーに対して熱酸化処理が実施されればよい。図9に示されるように、シリコンウェハー35の表面には酸化珪素の球状微粒子36が塗布される。塗布にあたってシリコンウェハー35は球状微粒子36の懸濁液に浸漬される。球状微粒子36の平均粒径は例えば100nmに設定される。球状微粒子36の濃度は懸濁液100重量%に対して例えば1重量%に設定される。例えばシリコンウェハー35が1[μm/sec]の速度で懸濁液から引き上げられると、図9に示されるように、シリコンウェハー35の表面には球状微粒子36の単層が形成される。シリコンウェハー35の表面には自己組織化に基づき所定の規則に従って球状微粒子36が配列される。
【0024】
シリコンウェハー35の表面には、図10に示されるように、シリコンウェハー35の表面を覆うニッケル被覆膜37が成膜される。成膜にあたってシリコンウェハー35の表面にはニッケル(Ni)の電極膜が形成される。電極膜の膜厚は例えば20nm程度に設定される。成膜にあたって例えば真空蒸着法が用いられる。電極膜は球状微粒子36の上側半球面を覆う。同時に、球状微粒子36同士の合間でシリコンウェハー35の表面を覆う。こうして形成された電極膜に基づき電鋳が実施される。シリコンウェハーは例えばスルファミン酸ニッケル浴に浸漬される。電極膜には例えば50[A]の電流が2時間にわたって流される。こうして膜厚0.2mmのニッケル被覆膜37が形成される。ニッケル被覆膜37は球状微粒子36同士の間を埋めつつシリコンウェハー35の表面で球状微粒子36を覆い隠す。ニッケル被覆膜37は十分な膜厚を有することから、ニッケル被覆膜37は板材として機能する。このとき、真空蒸着法では球状微粒子36の上側半球面にはニッケル原子は十分に堆積する。その一方で、球状微粒子36の陰や球状微粒子36の下側半球面にはニッケル原子は堆積しにくい。したがって、球状微粒子36の陰ではニッケル被覆膜37は形成されにくい。下側半球面は部分的に被覆される。球状微粒子36とシリコンウェハー35の表面との間には多少の空隙が形成されやすい。
【0025】
続いて図11に示されるように、ニッケル被覆膜37はシリコンウェハー35の表面から分離される。ニッケル被覆膜37の裏面には球状微粒子36が保持される。こうしたニッケル被覆膜37の裏面にエッチング処理が施される。エッチング処理にはドライエッチングが用いられる。ここでは、イオンミリングが実施される。イオン粒子がニッケル被覆膜37の裏面および球状微粒子36に叩きつけられる。高周波パワーは例えば700[W]程度に設定されればよい。チャンバー内には例えば30[sccm]の流量でアルゴンガスが導入されればよい。その結果、図12に示されるように、ニッケル被覆膜37の裏面は徐々に削られていく。同時に、球状微粒子36は削られていく。球状微粒子36で象られる窪み38が半球体よりも縮小すると、イオンミリングは終了される。このとき、球状微粒子36のエッチングレートは調整される。こういった調整に基づきイオンミリングの終了まで窪み38内に球状微粒子36は残存する。窪み38の内壁面は球状微粒子36で覆われ続ける。したがって、窪み38はイオン粒子の衝突から保護される。窪み38は、球状微粒子36で象られた形状を維持する。
【0026】
その後、図13に示されるように、残存する球状微粒子36は除去される。ニッケル被覆膜37は例えば濃度5重量%のフッ化水素水溶液に浸漬される。フッ化水素水溶液では水溶液全体に対して5重量%のフッ化水素が含まれる。球状微粒子36は水溶液中に溶解する。同時に、イオンミリング時に発生するニッケル残渣も水溶液中に溶解する。その結果、ニッケル被覆膜37の裏面には窪み38の配列が形成される。個々の窪み38は球状微粒子36で象られる。個々の窪み38は、半球面よりも縮小された部分球面、すなわち、ニッケル被覆膜37の裏面から表面に向かうにつれて先細る部分球面で区画される。しかも、球状微粒子36の粒径精度が高ければ、個々の窪み38の頂点すなわち最深点は複数の窪み38に共通の1仮想平面内に揃えられることができる。
【0027】
続いて図14に示されるように、ニッケル被覆膜37の裏面で成型品すなわち金型27が成膜される。成膜にあたってめっき法が用いられる。めっき法の実施に先立ってニッケル被覆膜37の表面にはニッケルの電極膜が成膜される。電極膜の膜厚は例えば20nm程度に設定される。成膜にあたって例えば真空蒸着法が用いられる。窪み38は開口から最深点に向かって先細ることから、窪み38の内壁面に満遍なく電極膜は形成される。同時に、ニッケル被覆膜37の裏面に満遍なく電極膜は形成される。こうして形成された電極膜に基づき電鋳が実施される。ニッケル被覆膜37は例えばスルファミン酸ニッケル浴に浸漬される。電極膜には例えば50[A]の電流が5時間にわたって流される。こうして膜厚0.5mmの金型27が成膜される。金型27の表面には突起29の配列が形成される。突起29の配列は窪み38の配列を反映する。
【0028】
以上の製造方法に基づき本発明者は実際に金型27を製造した。本発明者は、図15に示されるように、原子間力顕微鏡(AFM)で金型27の微細構造を観察した。その結果、図16から明らかなように、高さ50nm程度の突起29の配列が確認された。個々の列ごとに突起29は105nmの繰り返し周期で形成された。
【0029】
次に本発明の第2実施形態に基づき金型27の製造方法を詳述する。この金型27では突起29は等間隔で配置される複数個の同心円に沿って配列される。こういった配列の実現にあたってシリコンウェハーの表面にはレジスト膜が形成される。レジスト膜はシリコンウェハーの表面に等間隔で配置される複数本の溝を区画する。
【0030】
具体的には、まず、前述と同様にシリコンウェハー35が用意される。シリコンウェハー35の表面には酸化膜層すなわち酸化珪素層が形成される。酸素プラズマアッシング処理が実施される。高周波パワーは例えば50[W]程度に設定されればよい。チャンバー内には例えば100[sccm]の流量で酸素ガスが導入されればよい。続いてシリコンウェハー35の表面にはメタクリル酸メチル樹脂が塗布される。塗布にあたって例えばスピンコート法が用いられる。スピンコート法の実施にあたってメタクリル酸メチル樹脂は2.5重量%の濃度で酢酸エチルに溶解される。メタクリル酸メチル樹脂は溶液全体に2.5重量%で含まれる。酢酸エチルはシリコンウェハー35の表面に滴下される。こうして塗布されたメタクリル酸メチル樹脂は摂氏100度の高温で焼き固められる。こうしてシリコンウェハー35の表面にはメタクリル酸メチル樹脂膜が形成される。例えばメタクリル酸メチル樹脂膜の膜厚は例えば80nm程度に設定されればよい。
【0031】
その後、図17に示されるように、メタクリル酸メチル樹脂膜には等間隔で配置される複数本の同心円に沿って突起41が形成される。突起41の形成にあたってナノインプリント法が利用される。突起41のピッチは例えば250nmに設定される。ここでは、突起41の幅は70nmに設定される。突起41同士の間隔は180nmに設定される。こうして同心円状に突起41が確立されると、シリコンウェハー35の表面で樹脂残渣が除去される。樹脂残渣の除去にあたってシリコンウェハー35の表面には酸素プラズマアッシング処理が実施される。高周波パワーは例えば50[W]程度に設定されればよい。チャンバー内には例えば100[sccm]の流量で酸素ガスが導入されればよい。樹脂残渣が除去されると、突起41同士の間で酸化珪素層の表面は露出する。こうしてレジスト膜は形成される。
【0032】
こうしてシリコンウェハー35の表面に同心円状の突起41が確立されると、前述と同様に、シリコンウェハー35の表面には酸化珪素の球状微粒子36が塗布される。塗布にあたってシリコンウェハー35は球状微粒子36の懸濁液に浸漬される。球状微粒子36の平均粒径は100nmに設定される。球状微粒子36の濃度は例えば1重量%に設定される。例えばシリコンウェハー35が1[μm/sec]の速度で懸濁液から引き上げられると、図9に示されるように、シリコンウェハー35の表面には球状微粒子36の単層が形成される。シリコンウェハー35の表面には自己組織化に基づき所定の規則に従って球状微粒子36が配列される。しかも、球状微粒子36の配列は同心円に沿って確立される。その後、前述と同様に、シリコンウェハー35の表面にはニッケル被覆膜37が形成される。
【0033】
ニッケル被覆膜37がシリコンウェハー35から分離された後、ニッケル被覆膜37には前述と同様にイオンミリングが実施される。ここでは、イオンミリングに先立ってニッケル被覆膜37の表面からメタクリル酸メチル樹脂は除去される。除去にあたってニッケル被覆膜37はキシレンに30分間にわたって浸漬される。その後、ニッケル被覆膜には酸素プラズマアッシング処理が実施される。
【0034】
以上のような金型27に基づき前述の磁気ディスク11は製造される。その結果、柱状磁性体23は等間隔で配置される複数本の同心円に沿って配列されることができる。その結果、ビットごとに磁区の大きさは均一化されることができる。磁区は記録トラックの輪郭に沿って並べられることができる。個々の記録トラックでは一層の狭幅化は実現されることができる。
【0035】
次に本発明の第3実施形態に基づき金型27の製造方法を詳述する。この製造方法では前述の酸化珪素の球状微粒子36に代えてポリスチレンの球状微粒子36が用いられる。ポリスチレンの球状微粒子36の平均粒径は例えば105nmに設定されればよい。こういった球状微粒子36の塗布にあたって前述と同様に懸濁液は用意される。この懸濁液では球状微粒子36の濃度は例えば0.5重量%に設定される。例えばシリコンウェハー35が1[μm/sec]の速度で懸濁液から引き上げられると、図9に示されるように、シリコンウェハー35の表面には球状微粒子36の単層が形成される。シリコンウェハー35の表面には自己組織化に基づき所定の規則に従って球状微粒子36が配列される。その後、前述と同様に、シリコンウェハー35の表面にはニッケル被覆膜37が形成される。このとき、前述のように、シリコンウェハー35の表面にはレジスト膜に基づき等間隔で配置される複数本の溝が形成されてもよい。
【0036】
ニッケル被覆膜37がシリコンウェハー35から分離された後、ニッケル被覆膜37の裏面にエッチング処理が実施される。ここでは、ウェットエッチングが用いられる。ニッケル被覆膜37は硝酸水溶液に浸漬される。硝酸水溶液の濃度は例えば1重量%に設定されればよい。ニッケル被覆膜37の裏面は徐々に溶かされる。球状微粒子36で象られる窪み38が半球体よりも縮小すると、ニッケル被覆膜37は硝酸水溶液から引き上げられる。このとき、ニッケル被覆膜37の裏面は選択的に浸食される。すなわち、硝酸水溶液中で球状微粒子は維持される。窪み38の内壁面は球状微粒子36で覆われ続ける。したがって、窪み38は硝酸水溶液から保護される。窪み38は、球状微粒子36で象られた形状を維持する。
【0037】
続いてニッケル被覆膜37から球状微粒子36は除去される。ニッケル被覆膜37はキシレンに浸漬される。その後、ニッケル被覆膜37には酸素プラズマアッシング処理が実施される。高周波パワーは例えば100[W]程度に設定されればよい。チャンバー内には例えば100[sccm]の流量で酸素ガスが導入されればよい。こうしてニッケル被覆膜37の裏面には窪み38の配列が形成される。個々の窪み38は球状微粒子36で象られる。個々の窪み38は、半球面よりも縮小された部分球面、すなわち、ニッケル被覆膜37の裏面から表面に向かうにつれて先細る部分球面で区画される。しかも、球状微粒子36の粒径精度が高ければ、個々の窪み38の頂点すなわち最深点は複数の窪み38に共通の1仮想平面内に揃えられることができる。その後、ニッケル被覆膜37の裏面で前述と同様に成型品すなわち金型27が成膜される。
【0038】
なお、酸化珪素の球状微粒子36の平均粒径やポリスチレンの球状微粒子36の平均粒径は金型27に形成される突起29の大きさに応じて適宜に設定されればよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】磁気ディスクを概略的に示す斜視図である。
【図2】磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図3】図2に対応する拡大部分断面図であって、基板の表面に押し当てられる金型を概略的に示す図である。
【図4】図2に対応する拡大部分断面図であって、基板の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す図である。
【図5】図2に対応する拡大部分断面図であって、基板の表面に施されるイオンミリングを概略的に示す図である。
【図6】図2に対応する拡大部分断面図であって、基板の表面に形成されたナノホールを概略的に示す図である。
【図7】図2に対応する拡大部分断面図であって、基板の表面に形成されたコバルト膜を概略的に示す図である。
【図8】図2に対応する拡大部分断面図であって、基板の表面で形成された柱状磁性体を概略的に示す図である。
【図9】シリコンウェハーの表面に配列された球状微粒子を概略的に示す拡大部分断面図である。
【図10】シリコンウェハーの表面に成膜されたニッケル被覆膜を概略的に示す拡大部分断面図である。
【図11】ニッケル被覆膜の裏面および球状微粒子に施されるイオンミリングを概略的に示す拡大部分断面図である。
【図12】イオンミリング後のニッケル被覆膜および球状微粒子を概略的に示す拡大部分断面図である。
【図13】ニッケル被覆膜の裏面に形成された窪みの配列を概略的に示す拡大部分断面図である。
【図14】ニッケル被覆膜の裏面で成膜された成型品すなわち金型を概略的に示す拡大部分断面図である。
【図15】原子間力顕微鏡で観察される金型の表面を示す平面図に対応する原子間力顕微鏡写真である。
【図16】図15の16−16線に沿って再現された金型の部分断面を概略的に示す図である。
【図17】球状微粒子の配列に先立ってシリコンウェハーの表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0040】
11 記録媒体(磁気ディスク)13 記録媒体用基板、26 樹脂層(レジスト膜)、27 成型品(金型)、29 突起、35 基板としてのシリコンウェハー、36 球状微粒子、37 被覆膜(ニッケル被覆膜)、38 窪み。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に球状微粒子を配列する工程と、前記球状微粒子同士の間を埋めつつ前記基板の表面で前記球状微粒子を覆い隠す被覆膜を成膜する工程と、前記基板から前記球状微粒子を裏面に保持する前記被覆膜を分離する工程と、分離された前記被覆膜の前記裏面から前記被覆膜および前記球状微粒子にエッチング処理を施す工程と、前記被覆膜から前記球状微粒子を除去し、前記球状微粒子で象られた窪みの配列を前記被覆膜の前記裏面に形成する工程と、前記被覆膜の前記裏面に成膜を行い、表面に突起の配列を有する成型品を形成する工程とを備えることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成型品の製造方法において、前記窪みは、前記被覆膜の前記裏面から表面に向かうにつれて先細る部分球面で区画されることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の成型品の製造方法において、前記球状微粒子は酸化珪素または金属酸化物から構成され、前記被覆膜は金属から構成されることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の成型品の製造方法において、前記球状微粒子は酸化珪素から構成され、前記被覆膜はニッケルから構成されることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の成型品の製造方法において、前記エッチング処理にあたってイオンミリングが用いられることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載の成型品の製造方法において、前記被覆膜の成膜にあたってめっき法が用いられることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の成型品の製造方法において、前記成型品の成膜にあたってめっき法が用いられることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の成型品の製造方法において、前記球状微粒子は樹脂から構成され、前記被覆膜は金属から構成されることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の成型品の製造方法において、前記球状微粒子は円弧に沿って配列されることを特徴とする成型品の製造方法。
【請求項10】
記録媒体用基板の表面に樹脂層を形成する工程と、請求項1〜9に記載の成型品の製造方法で製造された成型品の突起の配列を前記樹脂層に押し当てて、前記突起の配列を反映する表面形状を前記樹脂層に形成する工程と、前記表面形状に基づき前記記録媒体用基板の表面に所定のパターンに則った形状を形成する工程とを備えることを特徴とする記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−196171(P2009−196171A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38956(P2008−38956)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】