説明

成形機

【課題】金型の加熱冷却タイミングを最適化でき、高品質の成形品を高能率に成形可能な成形機を提供する。
【解決手段】制御装置9は、金型温度検出センサ4の出力信号s1,s2,s3及びスクリュー位置検出センサ5の出力信号s4を取り込み、出力信号s1,s2,s3が所定の設定値に達したと判定し、かつ出力信号s4が所定の設定値に達したと判定したとき、バルブコントロールユニット8に加熱停止指令信号s9を出力して、加熱媒体供給装置6から金型1への加熱媒体の供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機に係り、特に、金型の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを繰り返す成形機における金型の加熱停止タイミングを制御する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチック製品を成形する射出成形機、ブロー成形機、熱成形機等は、上述した一連の成形サイクルを繰り返すことによって製品の成形を行っており、金型の加熱及び冷却は、金型への加熱媒体の供給及び冷却媒体の供給を制御することにより行われる。
【0003】
従来、この種の成形機に適用される成形システムとしては、金型の各部に配置した複数の温度検出部と、金型に蒸気等の加熱媒体を供給する加熱用ユニットと、金型に冷却水等の冷却媒体を供給する冷却用ユニットと、加熱媒体及び冷却媒体が流れる媒体路を切り換えるバルブユニットと、バルブユニットの切り換えを制御する制御手段と、制御手段に具備されたタイマーとを有し、制御手段は、前記複数の温度検出部の夫々の検出温度を判定し、この検出温度の判定結果と前記タイマーによる時間設定信号とを組み合わせて、バルブユニットの切り換えによる金型の加熱冷却制御、並びに金型内への成形材料の供給制御を行うものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の成形システムによれば、温度検出部の検出温度とタイマーによる時間設定信号との組み合わせでバルブユニットの切り換えを行うので、加熱工程における金型への加熱媒体の流入開始タイミング及び流入停止タイミング、射出工程における金型への成形材料の射出開始タイミング、並びに冷却工程における金型への冷却媒体の流入開始タイミング及び流入停止タイミング等を自由に変更することが可能となり、製品の成形に必要な最適な温度域で各工程を実施できて、成形品の品質の安定性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2007−83502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の成形機を用いて成形される成形品の品質は、金型内への成形材料の充填量に大きく依存するので、外形不良や寸法不良のない成形を行うためには、成形材料の射出及び保圧工程において金型内に所定量の成形材料が充填される必要がある。また、1サイクルの成形に要する時間は、金型の加熱及び冷却のタイミングに大きく依存するので、1サイクルの成形時間を短縮し、成形品の生産性を高めるためには、金型内に所定量の成形材料が充填されることを条件として、なるべく短時間のうちに加熱工程から冷却工程に切り換える必要がある。
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の成形システムは、装置各部の駆動タイミング制御において、金型内における成形材料の充填量を何ら考慮しないので、適正品質の成形品を簡単な制御プログラムを用いて高能率に成形することが難しいという問題がある。即ち、特許文献1に記載の成形システムは、金型内への加熱媒体の流入開始タイミング及び流入終了タイミング、金型内への冷却媒体の流入開始タイミング及び流入終了タイミング、並びに金型内への成形材料の射出タイミングを、タイマーの設定時間を変更することにより変更する構成であるので、金型内に必要量の成形材料を充填するためには、タイマーの設定時間に応じて金型内への成形材料の射出速度を制御しなくてはならず、成形機の制御プログラムが複雑になる。また、タイマーの設定時間は、設定時間の変更と成形品の品質評価を繰り返すことによって実験的に求められるが、実験データにはある程度のばらつきが生じるので、良品を高い歩留まりで成形するためには、タイマーの設定時間をばらつきの最長時間又はそれ以上に設定せざるを得ず、金型内への成形材料の充填量に即して最短時間にすることができないことから、1サイクルの成形に要する時間が長くなって、成形品の生産性を高めることが難しい。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、金型の加熱冷却タイミングを最適化することで、高品質の成形品を高能率に成形可能な成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するため、第1に、開閉可能に構成された金型と、型閉された金型内に成形材料を射出する射出装置とを備え、金型の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを繰り返す成形機において、前記金型の温度を検出する1乃至複数の金型温度検出手段と、前記射出装置により前記金型内に充填された前記成形材料の充填量を検出する充填量検出手段と、前記金型に加熱媒体を供給する加熱媒体供給手段と、所定の金型温度及び充填量が設定されており、前記加熱媒体供給手段から前記金型への前記加熱媒体の供給を開始した後、前記金型温度検出手段から出力される金型温度信号及び前記充填量検出手段から出力される充填量信号に基づいて前記加熱媒体供給手段から前記金型に供給される加熱媒体の停止タイミングを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記金型温度信号が前記設定された金型温度に達したか否かを判定すると共に、前記充填量信号が前記設定された充填量に達したか否かを判定し、前記金型温度信号が前記設定された金型温度に達したと判定し、かつ前記充填量信号が前記設定された充填量に達したと判定したとき、前記加熱媒体供給手段に供給停止信号を出力して、前記加熱媒体供給手段から前記金型への前記加熱媒体の供給を停止するという構成にした。
【0009】
このように、金型温度と金型内への成形材料の充填量とに基づいて加熱媒体供給手段から金型に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを制御すると、金型内への成形材料の射出速度を制御することなく、金型内に必要量の成形材料を充填することが可能になるので、成形機の制御プログラムを簡略化することができる。また、金型内への成形材料の充填量に基づいて、加熱媒体供給手段から金型に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを直接制御することから、金型内への成形材料の充填量をタイマーの設定時間に置き換えて加熱媒体の供給停止タイミングを制御する場合に比べて、加熱媒体の供給停止タイミング制御をより厳密に行うことができる。
【0010】
本発明は第2に、前記第1の成形機において、前記制御手段は、前記金型温度信号が前記設定された金型温度に達したと判定し、かつ前記充填量信号が前記設定された充填量に達したと判定したとき計時を開始するタイマーを具備しており、このタイマーに設定された遅延時間が経過したときに、前記加熱媒体供給手段に前記加熱媒体の供給停止信号を出力して、前記加熱媒体供給手段から前記金型への加熱媒体の供給を停止するという構成にした。
【0011】
成形材料や成形品の形状及びサイズ等によっては、保圧工程が成形品の品質に重大な影響を及ぼす場合がある。この場合、加熱媒体供給手段から金型に供給される加熱媒体の供給停止タイミングは、保圧工程の終了を基準として制御されるべきであるが、この保圧工程においては金型内における成形材料の充填量がほとんど変化しないので、金型内における成形材料の充填量を基準として保圧工程の終了タイミングを規制することが困難である。そこで、制御手段にタイマーを具備し、このタイマーに設定された遅延時間が経過したときに加熱媒体供給手段に供給停止信号を出力して、加熱媒体供給手段から金型への加熱媒体の供給を停止する構成にすると、タイマーに遅延時間として保圧時間を設定することにより、保圧工程の終了を基準として加熱媒体の停止タイミングを規制することができるので、成形材料や成形品の形状及びサイズ等が異なる各種の成形品を高品質にかつ効率良く製造することができる。
【0012】
本発明は第3に、前記第1又は第2の成形機において、前記射出装置は、外周にバンドヒータが巻回され、所要の位置に成形材料供給穴が開設された加熱シリンダと、加熱シリンダの先端に取り付けられたノズルと、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に配設されたスクリューとを有し、後退位置で前記スクリューを回転することにより前記成形材料供給穴から供給された成形材料の計量を行うと共に、前記スクリューを前進することにより前記ノズルから計量された前記成形材料を前記金型内に射出するものであり、前記充填量検出手段は、前記ノズルからの前記成形材料の射出時に、前記スクリューが所定の前進位置まで前進したことを検出するものであるという構成にした。
【0013】
かかる構成を有するスクリュー式射出装置は、スクリューを前後進するボールネジ機構と、このボールネジ機構の回転部に備えられたロータリエンコーダなどの回転検出装置とを有している。したがって、この種の射出装置を備えた成形機においては、回転検出装置の出力からスクリューの前進位置、即ち、金型内への成形材料の充填量を直接的に求めることができるので、加熱媒体供給手段から金型に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを容易かつ低コストに制御することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の成形機は、制御手段により、金型温度検出手段から出力される金型温度信号が所定の設定値に達したか否かを判定すると共に、充填量検出手段から出力される充填量信号が所定の設定値に達したか否かを判定し、金型温度信号が所定の設定値に達したと判定し、かつ充填量信号が所定の設定値に達したと判定したときに、加熱媒体供給手段に供給停止信号を出力して、加熱媒体供給手段から金型への加熱媒体の供給を停止するので、金型内への成形材料の射出速度を制御することなく、金型内に必要量の成形材料を充填することが可能になり、成形機の制御プログラムを簡略化することができる。また、金型内への成形材料の充填量に基づいて、加熱媒体供給手段から金型に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを直接制御するので、金型内への成形材料の充填量をタイマーの設定時間に置き換えて加熱媒体の停止タイミングを制御する場合に比べて、加熱媒体の供給停止タイミング制御をより厳密に行うことができ、成形品の生産性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る成形機の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は実施形態に係る成形機のシステム構成図であり、図2は実施形態に係る成形機に備えられる制御装置のブロック図である。これらの図から明らかなように、本例の成形機は、開閉可能に構成された金型1と、金型1を開閉動作させる金型開閉装置2と、型閉された金型1内に成形材料を射出する射出装置3と、金型1の温度を検出する1乃至複数(図2の例では、3個)の金型温度検出センサ4と、射出装置3に備えられたスクリューの前後進方向の位置を検出するスクリュー位置検出センサ5と、金型1に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置6と、金型1に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置7と、加熱媒体供給装置6から金型1に供給される加熱媒体の断続及び冷却媒体供給装置7から金型1に供給される冷却媒体の断続を行うバルブコントロールユニット8と、金型温度検出センサ4から出力される金型温度信号s1,s2,s3及びスクリュー位置検出センサ5から出力される充填量信号s4に基づいて、金型開閉装置2による金型1の開閉、射出装置3による成形材料の計量と射出、及びバルブコントロールユニット8に備えられた各種バルブの開閉を制御する制御装置9とから主に構成されている。
【0017】
金型1は、固定側金型1aと可動側金型1bとから構成されており、金型開閉装置2により可動側金型が開閉方向に駆動されるようになっている。金型温度検出センサ4は、固定側金型、可動側金型の所定の位置に設置される。
【0018】
金型開閉装置2は、一端が可動側金型1bを固定した可動ダイプレートに連結され、他端が可動側金型1bと対向に配置されたテールストックに連結されたトグルリンク機構と、このトグルリンク機構を伸縮させるボールネジ機構とからなる。ボールネジ機構は、固定部に回転可能に設置されたナット体と、このナット体に螺合されたネジ軸とからなり、ナット体を電動モータにて正転又は逆転することにより、その回転量に応じた直進移動量だけトグルリンク機構を伸縮させる。電動モータには、ロータリエンコーダなどの回転検出装置が付設されており、この回転検出装置からの出力信号に基づいて電動モータの起動及び停止が制御される。これらトグルリンク機構及びボールネジ機構は、周知に属するものであり、かつ本発明の要旨でもないので、図示を省略する。
【0019】
射出装置3は、図3に示すように、図示しない射出ユニットベース盤上に所定距離をおいて対向に配設されたヘッドストック11及び支持盤12と、これらヘッドストック11と保持プレート12との間に架け渡された連結バー13と、この連結バー13に案内されてヘッドストック11と保持プレート12との間を前後進する直動ブロック14と、基端部がヘッドストック11に固定された加熱シリンダ15と、加熱シリンダ15の先端に取り付けられたノズル16と、加熱シリンダ15の外周に巻装されたバンドヒータ17と、加熱シリンダ15内に回転可能かつ前後進可能に配設されたスクリュー18とを備えている。スクリュー18の基端部は、回転体19に保持され、回転体19は、軸受を介して直動ブロック14に回転可能に保持されている。また、回転体19には、被動プーリ20が固定されており、この被動プーリ20には、直動ブロック14に搭載された計量用サーボモータ21の出力軸に固定された駆動プーリ22との間に、図示しないタイミングベルトが輪掛けされている。したがって、スクリュー18は、駆動プーリ22、図示しないタイミングベルト、被動プーリ20及び回転体19を介して計量用サーボモータ21により回転駆動される。
【0020】
支持盤12には、射出用サーボモータ23が搭載されると共に、軸受を介してボールネジ機構25のネジ軸26が回転可能に保持される。ボールネジ機構25は、ネジ軸26と、このネジ軸26に螺合されたナット体27とから構成されており、ナット体27の端部は、ロードセルユニット28を介して直動ブロック14に固定されている。ネジ軸26の端部には、被動プーリ29が固定されており、この被動プーリ29には、射出用サーボモータ23の出力軸に固定された駆動プーリ24との間に、図示しないタイミングベルトが輪掛けされている。したがって、スクリュー18は、駆動プーリ24、図示しないタイミングベルト、被動プーリ29、ボールネジ機構25、直動ブロック14及び回転体19を介して射出用サーボモータ23により前後進される。
【0021】
なお、図中の符号11a及び15aは、図示しないホッパーから落下・供給される成形材料を加熱シリンダ15の後端部内に供給するために、ヘッドストック11および加熱シリンダ15の対応する位置に穿設された成形材料供給穴を示している。また、符号25aは、制御装置9からの指令に基づいて計量用サーボモータ21を駆動制御するモータドライバ、符号25bは、制御装置9からの指令に基づいて射出用サーボモータ23を駆動制御するモータドライバを示している。
【0022】
このように構成された本例の射出装置3は、計量用サーボモータ21及び射出用サーボモータ23の駆動停止を制御することにより、成形材料供給穴11a,15aを通って供給される成形材料の計量と、計量された成形材料の可塑化及び混練と、可塑化及び混練された成形材料の金型1内への射出とを行う。
【0023】
即ち、計量工程時には、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25aからの出力により、計量用サーボモータ21が所定方向に回転駆動され、駆動プーリ22、図示しないタイミングベルト、被動プーリ20及び回転体19を介して、スクリュー18が所定方向に回転駆動される。このスクリュー18の回転により、図示しないホッパから原料供給穴11a,15aを通して加熱シリンダ15の内部後端側に原料樹脂が供給される。この原料樹脂は、可塑化及び混練されつつスクリュー18のネジ送り作用によって前方に移送され、溶融樹脂となってスクリュー18の前方側に貯えられる。スクリュー18の前方側に溶融樹脂が送り込まれるにつれてスクリュー18は後退するが、この際、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25bからの出力により、射出用サーボモータ23を圧力フィードバック制御で駆動制御し、スクリュー18の直線移動位置を制御することで、スクリュー18には所定の背圧が付与される。そして、スクリュー18の先端側に1ショット分の溶融樹脂が貯えられた時点で、計量用サーボモータ21によるスクリュー18の回転駆動は停止される。
【0024】
一方、射出工程時には、計量が完了した後の適宜のタイミングで、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25bからの出力により、射出用サーボモータ23が速度フィードバック制御で駆動制御され、これにより、射出用サーボモータ23の回転が、駆動プーリ24、図示しないタイミングベルト、被動プーリ29を介してボールネジ機構25に伝えられ、ボールネジ機構25により回転運動が直線運動に変換されて、直線運動がロードセルユニット28、直動ブロック14及び回転体19を介してスクリュー18に伝達されることで、スクリュー18が急速に前進駆動されて、スクリュー18の先端側に貯えられた溶融樹脂が型締状態にある金型1(図1参照)のキャビティ内に射出充填され、一次射出工程が実行される。一次射出工程に引き続く保圧工程では、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25bからの出力により、射出用サーボモータ23が圧力フィードバック制御で駆動制御され、これにより、設定された保圧力がスクリュー18から金型1内の樹脂に付加される。
【0025】
スクリュー位置検出センサ5は、射出用サーボモータ23内に配置され、射出用サーボモータ23の出力軸の回転を検出する。前述したように、射出用サーボモータ23の出力軸は、駆動プーリ24、図示しないタイミングベルト、被動プーリ29、ボールネジ機構25のネジ軸26、ボールネジ機構25のナット体27、ロードセルユニット28、直動ブロック14及び回転体19を介してスクリュー18に連結されているので、射出用サーボモータ23の出力軸の回転を検出することによって、スクリュー18の移動位置を検出することができる。そして、射出工程におけるスクリュー18の移動位置は、金型1内への成形材料の充填量に対応するので、結局のところ、スクリュー位置検出センサ5により、金型1内への成形材料の充填量を検出することができる。なお、このスクリュー位置検出センサ5としては、射出用サーボモータ23の出力軸に固着されるロータと、ロータに設けられたコード板と、コード板と対向に配置され、コード板に記されたコードを検出する検出器とを有するロータリエンコーダを用いることができる。
【0026】
加熱媒体供給装置6は、防腐剤等の薬剤を注入した軟水を加熱媒体である蒸気に変換するボイラーと、このボイラーにて発生した蒸気を金型1に供給するポンプと、ポンプから吐出される蒸気を金型1に供給する加熱媒体供給配管とから主に構成される。
【0027】
一方、冷却媒体供給装置7は、熱交換により冷却媒体である水温が10℃〜常温の冷却水を生成するクーリングタワーと、クーリングタワーにて冷却された冷却水を金型1に供給するポンプと、ポンプから吐出される冷却水を金型1に供給する冷却媒体供給配管とから主に構成される。
【0028】
コントロールバルブユニット8は、加熱媒体供給装置6と金型1とを繋ぐ加熱媒体供給配管に設けられる加熱媒体切替バルブ、及び冷却媒体供給装置7と金型1とを繋ぐ冷却媒体供給配管に設けられる冷却媒体切替バルブをユニット化したものであって、制御装置9からの制御信号により前記各切替バルブをオンオフ制御して、金型1への加熱媒体の供給及び冷却媒体の供給を断続する。
【0029】
制御装置9は、図1に示すように、金型温度検出センサ4から出力される金型温度信号s1,s2,s3及びスクリュー位置検出センサ5から出力される充填量信号s4の入力部31と、金型開閉装置2に送信される型開指令信号s5及び型閉指令信号s6、射出装置3に送信される計量指令信号及び射出指令信号s7、バルブコントロールユニット8の加熱媒体切替バルブに送信される加熱開始指令信号s8及び加熱停止指令信号s9、並びにバルブコントロールユニット8の冷却媒体切替バルブに送信される冷却開始指令信号s10及び冷却停止指令信号s11の出力部32と、運転条件設定格納部33と、測定値格納部34と、運転プロセス制御部35と、タイマー36と、所要のデータを入力するデータ入力部37とを備えている。
【0030】
運転条件設定格納部33には、データ入力部37から予め入力された成形サイクルの各工程(型閉じ、計量、射出、型開き、加熱、冷却の各工程)の運転制御条件及び各種の設定値が書き換え可能に格納され、測定値格納部34には、成形機の各部に備えられた金型温度検出センサ4及びスクリュー位置検出センサ5を含むセンサ群により検出された成形機各部の計測情報がリアルタイムで取り込まれて格納される。運転プロセス制御部35は、予め用意された各工程の運転制御プログラムと、運転条件設定格納部33に格納された各工程の運転条件の設定値とに基づき、測定値格納部34中の計測情報や各部からの状態確認情報や自身の計時情報を参照しつつ、図示しないドライバ群を駆動制御して、各工程の運転を実行させる。タイマー36は、必要に応じて金型1の加熱終了タイミング及び冷却開始タイミングを遅延させるための遅延時間を設定するもので、遅延時間を設定する必要がない場合には、省略することもできる。
【0031】
以下、図4に基づいて、制御装置9による成形機各部の駆動制御を説明する。なお、図4は、成形サイクル中の金型温度の変化と各工程の実行タイミングとを示すグラフ図である。
【0032】
まず、金型1が型開状態にあり、金型1から成形品が取り出された後、制御装置9は、金型開閉装置2に型閉指令信号s6を出力して、可動側金型の型閉方向への移動を開始する。また、制御装置9は、これと同時に、バルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力して、加熱媒体供給装置6から金型1への加熱媒体(蒸気)の供給を開始する。これにより、図4に示すように、金型温度が上昇する。
【0033】
制御装置9は、金型温度が射出開始温度THに達したと判定すると、射出装置3に射出指令信号s7を出力して、金型1内への成形材料の充填を開始する。なお、金型温度が射出開始温度THに達したか否かの判定は、金型1に複数個の金型温度検出センサ4を備えた場合には、予め定められた特定の金型温度検出センサ4の出力値のみを基準として行うこともできるし、それら複数個の金型温度検出センサ4の出力値の平均値とすることもできる。
【0034】
制御装置8から加熱媒体供給装置6への加熱停止指令信号s9の出力は、制御装置9が、金型温度検出センサ4から出力される金型温度信号s1,s2,s3に基づいて、金型温度は射出開始温度THに達したと判定すると共に、スクリュー位置検出センサ5から出力される充填量信号s4に基づいて、充填量信号s4は設定された充填量に達したと判定したときに行われる。したがって、本例の成形機においては、制御装置9からバルブコントロールユニット8への加熱停止指令信号s9の出力が、図4(a)に示すように金型温度が射出開始温度THに達したと判定されたときに行われることもあるし、図4(b)に示すように射出開始から保圧終了までの間の期間に行われることもあるし、図4(c)に示すように保圧終了と同時に行われることもある。これにより、金型1内への成形材料の十分な充填が確保され、高品質の成形品の成形が可能になる。
【0035】
なお、制御装置9からバルブコントロールユニット8への加熱停止指令信号s9の出力を保圧終了と同時に行う場合〔図4(c)の場合〕には、タイマー36に、スクリュー位置が充填完了位置まで前進したときから保圧終了までの時間に相当する遅延時間TDを設定しておき、この遅延時間TDが経過したときに制御装置9から加熱媒体供給装置6に加熱停止指令信号s9を出力することにより行うことができる。
【0036】
かかる制御によると、保圧工程の終了を基準として、加熱媒体供給装置6から金型1に供給される加熱媒体の停止タイミングを制御することも可能になるので、成形機の汎用性を高めることができる。即ち、成形材料や成形品の形状及びサイズ等によっては、保圧工程が成形品の品質に重大な影響を及ぼす場合がある。この場合、加熱媒体供給装置6から金型1に供給される加熱媒体の停止タイミングは、保圧工程の終了を基準として制御されるべきであるが、この保圧工程においては金型1内における成形材料の充填量がほとんど変化しないので、金型1内における成形材料の充填量を基準として保圧工程の終了タイミングを規制することが困難である。そこで、制御装置9にタイマー36を具備しておき、このタイマー36に設定された遅延時間TDが経過したときにバルブコントロールユニット8に加熱停止指令信号s9を出力すると、タイマー36に遅延時間として保圧時間を設定することにより、保圧工程の終了を基準として加熱媒体の停止タイミングを規制できるので、成形材料や成形品の形状及びサイズ等が異なる各種の成形品を高品質にかつ効率良く製造することができる。
【0037】
制御装置9は、図4(d),(e),(f)に示すように、バルブコントロールユニット8に加熱停止指令信号s9を出力すると同時、又はそれ以後に、バルブコントロールユニット8に冷却開始指令信号s10を出力し、冷却媒体供給装置7から金型1に冷却水を供給して、金型1を強制冷却する。そして、金型温度が型開に適した温度TLになったときに、金型開閉装置2に型開指令信号s5を出力して、型開工程を実行する。
【0038】
上述のように、本例の成形機においては、金型温度THと金型1内への成形材料の充填量(スクリュー18の位置)とに基づいて加熱媒体供給装置6から金型1に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを制御するので、金型1内への成形材料の射出速度を制御することなく、金型内に必要量の成形材料を充填することが可能になり、成形機の制御プログラムを簡略化することができる。また、金型1内への成形材料の充填量に基づいて、加熱媒体供給装置6から金型1に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを直接制御することから、金型1内への成形材料の充填量をタイマーの設定時間に置き換えて加熱媒体の停止タイミングを制御する場合に比べて、加熱媒体の停止タイミング制御をより厳密に行うことができ、成形品の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態に係る成形機のシステム構成図である。
【図2】実施形態に係る成形機に備えられる制御装置のブロック図である。
【図3】実施形態に係る成形機に備えられる射出装置の断面図である。
【図4】実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 金型
2 金型開閉装置
3 射出装置
4 金型温度検出センサ(金型温度検出手段)
5 スクリュー位置検出センサ(充填量検出手段)
6 加熱媒体供給装置(加熱媒体供給手段)
7 冷却媒体供給装置(冷却媒体供給手段)
8 バルブコントロールユニット
9 制御装置(制御手段)
s1,s2,s3 金型温度信号
s4 充填量信号
s5 型開指令信号
s6 型閉指令信号
s7 射出指令信号
s8 加熱開始指令信号
s9 加熱停止指令信号
s10 冷却開始指令信号
s11 冷却停止指令信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能に構成された金型と、型閉された金型内に成形材料を射出する射出装置とを備え、金型の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを繰り返す成形機において、
前記金型の温度を検出する1乃至複数の金型温度検出手段と、前記射出装置により前記金型内に充填された前記成形材料の充填量を検出する充填量検出手段と、前記金型に加熱媒体を供給する加熱媒体供給手段と、所定の金型温度及び充填量が設定されており、前記加熱媒体供給手段から前記金型への前記加熱媒体の供給を開始した後、前記金型温度検出手段から出力される金型温度信号及び前記充填量検出手段から出力される充填量信号に基づいて前記加熱媒体供給手段から前記金型に供給される加熱媒体の供給停止タイミングを制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記金型温度信号が前記設定された金型温度に達したか否かを判定すると共に、前記充填量信号が前記設定された充填量に達したか否かを判定し、前記金型温度信号が前記設定された金型温度に達したと判定し、かつ前記充填量信号が前記設定された充填量に達したと判定したとき、前記加熱媒体供給手段に供給停止信号を出力して、前記加熱媒体供給手段から前記金型への前記加熱媒体の供給を停止することを特徴とする成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の成形機において、
前記制御手段は、前記金型温度信号が前記設定された金型温度に達したと判定し、かつ前記充填量信号が前記設定された充填量に達したと判定したとき計時を開始するタイマーを具備しており、このタイマーに設定された遅延時間が経過したときに、前記加熱媒体供給手段に前記加熱媒体の供給停止信号を出力して、前記加熱媒体供給手段から前記金型への加熱媒体の供給を停止することを特徴とする成形機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の成形機において、
前記射出装置は、外周にバンドヒータが巻回され、所要の位置に成形材料供給穴が開設された加熱シリンダと、加熱シリンダの先端に取り付けられたノズルと、加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に配設されたスクリューとを有し、後退位置で前記スクリューを回転することにより前記成形材料供給穴から供給された成形材料の計量を行うと共に、前記スクリューを前進することにより前記ノズルから計量された前記成形材料を前記金型内に射出するものであり、
前記充填量検出手段は、前記ノズルからの前記成形材料の射出時に、前記スクリューが所定の前進位置まで前進したことを検出するものであることを特徴とする成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−255450(P2009−255450A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109086(P2008−109086)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】