説明

成形装置

【課題】設備が大掛かりでなく、また、成形枠内で樹脂を成形するため余剰樹脂やバリを抑えることが出来、原料コストの削減、成形にかかる時間を短縮することが可能で、更に、成形されるまでの樹脂の経時変化の問題を解決することが出来る成形装置を提供する。
【解決手段】樹脂を加熱して溶融し、その溶融された樹脂をプレスすることで樹脂を成形する成形装置であって、樹脂を成形するための周壁を有する成形枠と、前記成形枠の周壁の内壁に沿って前記成形枠と独立して移動する上金型と、下金型とを有し、前記成形枠と下金型が相対的に垂直方向に上下動するよう設置され、且つ、前記下金型上に置載された樹脂を溶融させるための加熱手段と、樹脂を加熱成形後に凝固させるための冷却手段とを備えたことを特徴とする成形装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂の成形方法として、型による上金型方式や射出成形方式が行われている。上金型方式によると、成形形状を施した上型、下型に溶融した樹脂を注入し、圧力をかけて成形した後冷却し、型を外すことで樹脂の成形を行っている。
【特許文献1】特開2004−148546号公報
【特許文献2】特開2004−322323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図1は従来行われている成形方法を示したもので、32は上金型、33は下金型、34は上金型支持体、35は下金型支持体、36は加熱手段、37は冷却手段、38は溶融樹脂注入口で、加熱手段を備えた上下金型に予め溶融した樹脂を注入して成形を行っていた。この方法によると、上下金型を指定温度まで昇温させるための時間と、成形後の冷却に時間を要していた。また、前記予め溶融した樹脂を注入する際に上金型と下金型で作られる空間の空気を逃がすために、上金型と下金型との間に隙間を設ける必要から、該隙間の部分から溶融した樹脂がはみ出し、余剰樹脂となっていた。その結果、成形品にバリが発生しバリの処理が必要となり、バリ除去の工程と時間が必要であった(特許文献1)。
【0004】
更に、前記加熱手段36は樹脂を溶融させるものではなく、金型を予熱するものであり、樹脂は別に設けられた樹脂溶融部にて溶融されてから金型内に導入されるようになっていた。このため、樹脂が溶融されてから成形されるまでの樹脂の経時変化が問題となることがあった。
【0005】
上記特許文献2に示される従来法においては、加熱された下金型及び樹脂をペルチェ素子にて冷却させていた。この方法によると、冷却のための時間は短くて済むものの、ペルチェ素子に付随する冷却板と直流電源を必要とすることから大掛かりで高価な装置になってしまう問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたもので、設備が大掛かりでなく、また、成形枠内で樹脂を成形するため余剰樹脂やバリを抑えることが出来、原料コストの削減、成形にかかる時間の短縮することが可能で、更に、成形されるまでの樹脂の経時変化の問題を解決することが出来る成形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、樹脂を加熱して溶融し、その溶融された樹脂を上金型することで樹脂を成形する成形装置であって、樹脂を成形するための周壁を有する成形枠と、前記成形枠の周壁の内壁に沿って前記成形枠と独立して移動する上金型と、下金型とを有し、前記成形枠と下金型が相対的に垂直方向に上下動するよう設置され、且つ、前記下金型上に置載された樹脂を溶融させるための加熱手段と、樹脂を加熱成形後に凝固させるための冷却手段とを備えたことを特徴とする成形装置である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、前記加熱手段と前記冷却手段は共に移動可能な構造を有することを特徴とする請求項1記載の成形装置である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、前記下金型に微細パターンを有することを特徴とする請求項1または2記載の成形装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、溶融した樹脂を成形する時に樹脂のはみ出しやバリを発生させずに成形が可能で、また樹脂成形品の表面に微細パターンを形成する場合であっても容易に形成するすることが出来、更に原料コストの削減や成形時間の短縮が出来,更に溶融した樹脂が成形までの経時変化が問題となる樹脂を成形する場合であっても成形の経時変化を抑えた成形が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の成形装置の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図2は本発明の成形装置の構成を説明する概略図で、図2(a)は成形装置を正面から見た概略図、図2(b)は成形装置を側面から見た概略図であって、1、2、3、4はエアシリンダ、5は成形枠、6は上金型、7はヒーター、8は冷却ノズルである。
【0013】
本発明の成形装置では、図2に示すように、成形枠5と上金型6の上方にエアシリンダ1及びエアシリンダ2を備え、成形枠5と上金型6が各々上下動できるようになっている。また、その下方には、エアシリンダ3によって加熱手段であるヒーター7が上下動できるよう設置され、さらにエアシリンダ4によってヒーター7が移動するのと同時に、冷却手段である冷却ノズル8が移動できるように配置されている。なお、本発明ではエアシリンダを駆動源として使用しているが、これに限らず例えばモーター駆動などを利用しても良い。
【0014】
図3(a)〜図3(e)は、本発明の成形に係る一連の流れを示した詳細図であって、9は下金型、10は樹脂。11は下金型9の支持体である。
【0015】
図3を用いて、樹脂の成形に係る流れを説明する。図3(a)では、下金型9上に溶融させる樹脂10を所定位置に置くものとする。樹脂10が置かれた後、樹脂を溶融温度に加熱するヒーター7がエアシリンダ3によって上昇し、下金型9の下部に接触することで樹脂10の溶融が始まる。
【0016】
樹脂10が成形可能な状態に溶融したところで、次に図3(b)に示すように、成形枠5がエアシリンダ1により下金型9上に接触するように下方へ移動し、下金型9上で固定される。
【0017】
次に図3(c)に示すように、エアシリンダ2により上金型6が成形枠5の周壁の内壁に沿って移動し、十分に溶融した樹脂10を押し始め、樹脂10の成形が行われる。ここで、図3(c)での成形枠5の内壁部と上金型6の外壁部の隙間は出来るだけ小さいものとし、空気は上金型の外に逃げるが樹脂は上金型の外に漏れないように、樹脂の粘度から隙間の大きさが調整される。隙間を出来るだけ小さく調整し、更に、成形枠内で樹脂を成形することにより樹脂のはみ出しやバリを抑えることが出来る。
【0018】
次に図3(d)に示すように、樹脂が要求された形状へと成形がなされたのを見計らい、ヒーター7がエアシリンダ3により下方へ下がり下金型9から離れる。ヒーター7が下方へ下がりきると、エアシリンダ4によりヒーター7が下金型9の下方から水平方向へ移動し、代わりに冷却手段である冷却ノズル8が下金型9の下方に配置されエアブローによる冷却を行う。このとき、ヒーター7と冷却ノズル8が入れ替わることでヒーター7の放射熱の影響を受けることなく、下金型9が冷え、樹脂10が凝固する。
【0019】
最後に図3(e)に示すように、樹脂10が凝固し、熱の影響により形状に変化が起こらなくなったら、成形枠5をエアシリンダ1で成形された樹脂の外形高さ分だけ上昇させ、樹脂10と成形枠5の接触面とを分離させる。分離を終えたら、エアシリンダ2にて上金型6を上昇させ、一連の成形が終わるものである。
【0020】
上記本発明の実施形態では、成形枠を上下動させたが、これに限定されず、成形枠と下金型を相対的に上下動させても良い。
【0021】
更に、図3(b)で示されるように成形枠5は下金型9の上面に接するように移動させたが、これに限定されず、下金型の周壁と成形枠の内壁が接するように移動させても良い。
【0022】
更に、上記本発明の実施形態では、加熱手段としてセラミックヒータを用い,冷却手段として冷却ノズルを用いたが、これに限定されず、例えば図3に示すようなコイル41、コイルに接続される電源42、冷却エアー注入口43、冷却エアー吹出口44を有した加熱冷却体40を、加熱時には下金型9に下方から接触させ、コイル41に電源42を接続することによって誘導加熱し、冷却時には前記加熱冷却体40を下金型9の下方に移動させて下金型9との間に隙間を保った後、冷却エアーを冷却エアー注入口43から注入し、冷却エアー吹出口44から吹出して冷却しても良い。また別の加熱手段として、下金型9上に載置された樹脂10を樹脂10の上方からレーザーを照射する方法あるいは温風を吹付けるといった方法も採用できる。
【0023】
更に、本発明では、下金型9に微細パターンを形成しておくことができ、前記微細パターンは下金型に直接形成してもよく、あるいは、下金型の表面に凹部を設け、該凹部に微細パターンを形成した微細パターン転写体を設けても良い。
【0024】
本発明によれば、溶融した樹脂を成形する時に樹脂のはみ出しやバリを発生させずに樹脂成形が可能で、また樹脂成形品の表面に微細パターンを形成する場合であっても容易に形成することが出来、更に原料コストの削減や成形時間の短縮が出来、更に、成形されるまでの樹脂の経時変化の問題を解決することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の成形方法を説明するための図
【図2】本発明に係る成形装置の構成を説明する概略図。
【0026】
(a)は成形装置の正面図。
【0027】
(b)は成形装置の側面図。
【図3】本発明の成形に係る一連の流れを示した図。
【図4】本発明に係る別の加熱、冷却手段の説明図。
【符号の説明】
【0028】
1・・・エアシリンダ1
2・・・エアシリンダ2
3・・・エアシリンダ3
4・・・エアシリンダ4
5・・・成形枠
6・・・上金型
7・・・ヒーター
8・・・冷却ノズル
9・・・下金型
10・・・樹脂
11・・・下金型支持体
32・・・上金型
33・・・下金型
34・・・上金型支持体
35・・・下金型支持体
36・・・加熱手段
37・・・冷却手段
38・・・注入口
40・・・加熱冷却体
41・・・コイル
42・・・電源
43・・・冷却エアー注入口
44・・・冷却エアー吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を加熱して溶融し、その溶融された樹脂をプレスすることで樹脂を成形する成形装置であって、樹脂を成形するための周壁を有する成形枠と、前記成形枠の周壁の内壁に沿って前記成形枠と独立して移動する上金型と、下金型とを有し、前記成形枠と下金型が相対的に垂直方向に上下動するよう設置され、且つ、前記下金型上に置載された樹脂を溶融させるための加熱手段と、樹脂を加熱成形後に凝固させるための冷却手段とを備えたことを特徴とする成形装置。
【請求項2】
前記加熱手段と前記冷却手段は共に移動可能な構造を有することを特徴とする請求項1記載の成形装置。
【請求項3】
前記下金型に微細パターンを有することを特徴とする請求項1または2記載の成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−58362(P2010−58362A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225682(P2008−225682)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】