説明

所有者,画像閲覧可能な者を知らしめる情報開示手段を持つことを特徴とする防犯カメラシステム

【課題】
取得画像の暗号化保存により,画像の所有・管理者と,画像の閲覧権者を分離する運用を可能とした防犯カメラシステムにおいても,一般通行人が防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧者や設置場所など防犯カメラに関する確実な情報を知ることが難しく,結果として,防犯カメラシステムの存在からプライバシー侵害に関する心理的ストレスを受ける問題を解決する.
【解決手段】
定点設置型のカメラ,電車の天井に高密度に設置されたカメラ,自動車に搭載されたカメラなどを含む防犯カメラにおいて,防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧可能者や設置場所などの防犯カメラに関する情報を,PCまたは携帯電話またはその他の電子機器へ知らしめる情報開示手段を有することを特徴とする防犯カメラシステムとする.これにより,被撮影者のプライバシーの侵害を防ぐことができる.

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,監視システムに関するものであり,さらに詳細には,様々な場所に設置されている防犯カメラについて,その所有者やそのカメラにより撮影された映像を閲覧できる人または組織を判別できるシステムである.
【0002】
現在,各家庭や施設には防犯カメラが設置されている.現在の防犯カメラは各自の家庭や施設への侵入者の監視を主な目的にしている.
一方,公的な場所での犯罪に対応するため,警察,公的な機関,NPOなどが防犯カメラを設置するケースも増えている.この場合,防犯カメラを誰が設置したのか,そして,誰が閲覧可能なのかというのを撮影される者が知ることはプライバシーの観点からは非常に重要である.また,公的な場所に盗撮を目的とした防犯カメラを設置したとしても,一般の人は区別がつかない.よって,撮影される側の人間がその防犯カメラが誰に設置され,誰が閲覧可能であり,どのような目的であるかを知る手段を用意することが必要である.
【背景技術】
【0003】
画像を暗号化することを通して,画像を所有・管理する者(所有者)と,その画像を閲覧することができる者(閲覧権者)を,分離することを特長とする,防犯カメラ運用に関する新しいコンセプトを,発明者らが組織する特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会では提案している.これにより,事件発生など,所有者と閲覧権者の双方が,必要と認める場合にのみ,暗号化された画像が,所有者から閲覧権者に渡され,閲覧権者により暗号が解除され閲覧されることになる.これにより,不要不急な場合以外は,誰も画像を閲覧できないことになる.本コンセプトは,プライバシー侵害の危険性を抑制し,同時に,第3者に与えうる無用な精神的な負荷を低減することにより,防犯カメラの地域社会全域に渡る普及を促進することを目的として提案される.
【0004】
近年,世界的に,防犯カメラの普及が著しいが,これにともない,プライバシー侵害に関する懸念がより強くでてきている.防犯カメラの運用にあたっては,防犯カメラの撮影した画像の所有者・管理者・閲覧権者は,同一である.しかしながら,多くの場合,撮影された画像は,事件などが起こらない限り,一度も閲覧されない.これは,多くの場所では,それほど頻繁には事件が起きないことと,閲覧に要する人件費が高いことに由来する.しかるに,「撮影された画像は,システム所有者により,自由に閲覧される」という事実が,一般の人々に与える精神的負荷は非常に大きく,このことが,防犯カメラのさらなる普及における大きな障害になっている.
【0005】
したがって,常時,人間が監視していなければならい重度のセキュリティが要求されている場所以外,すなわち,地球上のほとんどの地域社会においては,本コンセプトに基づいて防犯カメラシステムを運用することにより,防犯カメラ導入による効用(犯罪抑止,犯罪が起こったときの保存画像の捜査機関への提供)を損なうことなく,プライバシー侵害,および,その懸念を,大幅に低減することが可能となる.
【0006】
群馬県桐生市における実施例では,商店会の個々商店主が所有・管理するPCベースの防犯カメラシステムは,暗号化して画像を保存する.保存された画像を閲覧するには,桐生警察署に設置したPCにインストールされた専用ソフトウェアを使う以外に方法がない.商店主,警察の双方が必要を認めたときにのみ,商店主から警察に画像が提供され,警察において画像が閲覧され,捜査に役立てられる.事件・事故などが発生しない限り,各商店で保存された暗号化画像は,30日後に自動消去される.
【0007】
本コンセプトに基づくシステムであることの保障方法として,桐生市の実施例では,各店舗に,「いつでも,警察等による査察を受けます」という宣言文を掲示することを,採用している.より,確実な保障法として,以下を特徴とする発明が特許出願されている.(シール封印方式の発明)
・ 各種条件設定(アクセスパスワード,暗号化キー等)を書き換え不可能な形式で焼きこんだ上で,壊さない限り取り除くことができないシールで封印したカメラを使用する.
・ 公的機関がシール封印する.シールには,封印者,および,閲覧権者が明記される.
これにより,一般通行人も,カメラを外側から見るだけで,当該カメラで撮影される画像は,暗号化して保存され,かつ,事件がない限り誰も画像を閲覧することはないことを納得することができる.
【0008】
本コンセプトは,もともと,防犯カメラ運用に関するコンセプトとして我々が提唱しているe自警ネットワークの普及を促進する目的で創出されたものである.e自警ネットワークとは,各人が自分の身の回りを市民としての責任感から見守る,そして,その手段として,PC,無料ソフトウェア,PCカメラを用いるというものである.多くの市民が,自宅前を見守る地域社会は,高い犯罪抑止力を獲得すると考えられる.
【0009】
ここで,特筆すべきは,地域社会全体における犯罪抑止効果・犯人特定能力という観点からみると,個々のシステムの安定性・信頼性はあまり高くなくてもよく,そのために,安価なハードウェアを使うことができる点である.また,個々の市民が自発的に導入することを基本とするため,行政による財政的・人的な負担がほとんどいらないという点も特徴である.さらに,画像は,個々の市民により,分散的に所有・管理されるため,プライバシーの侵害の危険性が,多くのカメラからの画像を警察などが一元的に管理・所有する通常のシステムに比べて,小さいと考えている.群馬県前橋市など多くの地域で,本システムが導入され成功を収めている.
【0010】
ただし,プライバシー侵害の危険性について危惧する声が多いのも事実であり,このことが,e自警ネットワークの爆発的な普及における最大の障害になっていたと分析してきた.
【0011】
この「暗号化によるプライバシー保護のコンセプト」を,より,確実に実施するためには,「私は,警察署,自治会等の査察(動いているソフトウェア確認のためえの査察)を,いつでも無条件に受け入れることを誓います.」という張り紙だけでは,十分とはいえない.その点で,「新コンセプト」の普及にあたっては,先の発明である特許文献1により,より確実な保証が実現できることとなった.しかしながら,防犯カメラは,人の手の届かないところに設置されていることが多く,したがって,防犯カメラに張られたシールを,通行人が判読することは,容易でない場合があった.この点を,解決することが,強く求められていた.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
本発明は,防犯カメラ自身が,積極的かつ明示的に,電子的な手段により,自身の素性を明らかにすることを特徴とするものである.本発明により,より積極的に,より明示的に,防犯カメラ自身が,自身の素性を明らかにすることが可能となる.防犯カメラを一般住宅街の道路などの公共スペースに普及させていく上で,本発明は,キーとなるコンセプトである.
【特許文献1】特開2009-44311
【0013】
防犯カメラは犯罪の抑止等の目的で設置されており,その注目される機能としてはカメラとしての機能が中心であり,動体検知などの技術は数多く存在する.しかし,防犯カメラの普及とともに,被撮影者のプライバシーの問題が生じている.被撮影者は撮影された映像がどのように利用されるか,いつ撮影されたかなどを知ることが出来ない.つまり,被撮影者に対する配慮が十分には払われていない.
【0014】
防犯カメラを誰が設置したもので,誰が閲覧されている者であるかということは,これまでの防犯カメラの設置方法では明らかであった.つまり,設置された場所から容易に推測できたが,現在では公的な場所に設置されるようになり,各家庭に設置されていてもその設置主体が公的な機関であるなど,防犯カメラの設置者や画像閲覧可能な者がわからないという状況となっており,被撮影者がこのような情報を知る方法はない.一方,プライバシーを考慮した防犯カメラシステムとしては,これまでに特許文献2や特許文献3などがある.いずれも集合住宅のエレベータにおける住居者のプライバシーを守ることが目的であり,本発明である公の場で不特定多数の人物のプライバシーを守ることは考慮されていない.
【特許文献2】特開2008−72258
【特許文献3】特許第3743403号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このような背景から,本発明では,防犯カメラで撮影された被撮影者がその防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧者や設置場所など防犯カメラに関する情報を分からないという問題を解決する.これにより,被撮影者のプライバシーの侵害を防ぐことができる.防犯カメラは社会の安全・安心を確保するために重要な役割を担うが,一方で,プライバシーの問題も大きく,このことが,防犯カメラの普及を阻害している.本発明は結果として防犯カメラの普及に大きく貢献する.
【0016】
防犯カメラが誰によりどこに設置され,誰が画像を閲覧することが可能であるかを防犯カメラに記載してもそれが本当であるかどうかを確認することは難しい.そこで,電子的に防犯カメラに関する情報を誰でも確認できるようにし,その情報が偽装されないようにする必要がある.偽装されてしまうと,偽装された防犯カメラを設置されてしまい,そのカメラにより撮影された画像が被撮影者のプライバシーを侵害する可能性が生じる.
【0017】
このため,本発明では,防犯カメラが持つ所有者などの情報(ID情報)をPCや専用の機器を用いて読み取り,ID情報をチェックすることを基本的な技術解決手段とする.しかし,単純にこの方法では,ID情報の偽装が行われてしまう.そこで,ID情報の暗号化やチェックの仕組に工夫を講じる必要がある.
【課題を解決するための手段】
【0018】
防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧可能者や設置場所などの防犯カメラに関する情報(ID情報)を,PCまたは携帯電話またはその他の電子機器へ知らしめる情報開示手段を有することを特徴とする防犯カメラシステムとする.また,情報開示手段としては,有線通信,無線通信,2次元バーコード,画像や文字列の表示,音声の提供や,それらを暗号化したものを用いる.
定点に設置されるカメラだけでなく,電車,バス,旅客機などの公共交通機関の天井に高密度に設置されたカメラ,かばん,ベルト等身に付けて持ち歩くものに内蔵されたカメラ,自動車に搭載されたカメラなどを含む防犯カメラに,本発明を適用することも好適である.
【0019】
防犯カメラは防犯カメラに関する情報(ID情報)を保持する.なお,この情報は暗号化されていてもよい.このID情報を防犯カメラからPC等で取得し,そのID情報から専用の処理方法により,防犯カメラの様々な情報(カメラ情報)を取得することで防犯カメラの様々な情報を得る.また,防犯カメラの外部に防犯カメラの様々な情報を明記することで,簡単に防犯カメラの様々な情報がわかるようにし,その情報の真偽を防犯カメラのID情報から得られた防犯カメラの様々な情報と比較することで確認することもできる.これにより,防犯カメラの様々な情報を被撮影者が知ることができる.
【0020】
防犯カメラからID情報を取得し,専用の処理方法により防犯カメラの様々な情報を取得する代わりに,ID情報をあらかじめ指定されたサーバへ送信し,そのサーバが防犯カメラの様々な情報を示すことにより,防犯カメラの様々な情報を被撮影者が知ることができる.
【0021】
防犯カメラからID情報を得て,それに基づき防犯カメラの様々な情報を得る方法は,シンプルであり実現が安価にできるが,問題もある.例えば,ある場所に防犯カメラが設置されている場合,悪意のある人間が本物の防犯カメラを偽装された防犯カメラに置き換え,偽装された防犯カメラに本物の防犯カメラのID情報を埋め込み,偽装された防犯カメラがID情報の要求に対して本物の防犯カメラのID情報を返信させる.これにより,ID情報が暗号化されていても偽装された防犯カメラを本物の防犯カメラのように振舞わせることができる.これでは,防犯カメラの様々な情報が誤魔化されてしまうことになる.
【0022】
この問題を解決するための手段の1つとして,防犯カメラから送信されるID情報が一定ではないようすること,つまり,変化させることがある.具体的には,送信されるID情報を時間に応じて変化する暗号鍵により暗号化する.受け取ったID情報は時間によって変化しているが,専用の処理方法により防犯カメラの様々な情報を取得することができる.この方法ではあれば,本物の防犯カメラからID情報を取得し,それを偽装された防犯カメラに埋め込んでも,そのID情報をどのように時間で変化させればよいか明らかではないので,正しいID情報を偽装された防犯カメラは送信することができない.
【0023】
PCによりID情報に復号化等の処理を行い防犯カメラに関する情報を得る場合,その復号化等の処理の仕組みがPCで動作する処理方法を分析することで第3者に解明されてしまう可能性がある.そのため,復号化を第3者のPCでは行わずに,あらかじめ決められたサーバに防犯カメラから送信されたID情報を送り,このサーバが復号化等の処理を行い,得られる防犯カメラに関する情報をPCへ返信する.これにより,PCで防犯カメラに関する情報を取得することができる.この方法であれば,ID情報に関する処理方法を分析される危険性が少なくなる.
【0024】
防犯カメラから送信されるID情報を悪用されないようにする他の手段は,PCから適当なデータを防犯カメラに送信し,防犯カメラがそのデータとID情報から専用の処理を行い,その結果を防犯カメラからの返信とし,適当なデータと返信のデータを利用することで防犯カメラに関する情報を得る方法である.具体的には,PC等から防犯カメラに適当なデータ(A)を送り,それに対する防犯カメラからの返信(B)を受け取る.(B)には防犯カメラに関する情報も含まれている.PC等は専用の処理を行い,(A)から(B)が得られたものであるかを判定し,そうであれば,防犯カメラに関する情報を(B)から取得する.また,PC等で専用の処理を行うのではなく,あらかじめ指定されたサーバへ,PC等から(A)と(B)の情報を送信し,サーバにおいて専用の処理を行い,(A)から(B)が得られたものであるかを判定し,そうであれば,防犯カメラに関する情報を(B)から取得し,その結果をPC等へ返信する.これにより,被撮影者が防犯カメラの様々な情報を取得することができる.
【0025】
これまで示した方法は,PC等やサーバなど防犯カメラ以外のものを利用することにより,防犯カメラの様々な情報を取得可能にするとともに偽装を防いだ.防犯カメラのみで防犯カメラに関する情報を取得しかつ偽装を防ぐ方法としては,複数のカメラが設置されている場所において,偽装された防犯カメラが設置されている場合,本当の防犯カメラが偽装された防犯カメラを検知することにより,防犯カメラや防犯カメラに関する情報の偽装を防ぐことができる.具体的には,複数個ある防犯カメラは相互に通信を行い,設置されているはずの防犯カメラが稼動していることを確認することで,本当の防犯カメラを取り除いて偽装された防犯カメラを設置することをできないようにする.また,定期的に設置されている防犯カメラの台数を防犯カメラの周囲に周知することにより,偽装された防犯カメラが設置されている場合,被撮影者が設置されたカメラの台数と周知されていうカメラの台数の違いから,偽装された防犯カメラが存在することを検知できる.
【0026】
電車,バス,旅客機などの公共交通機関の天井に高密度に設置された防犯カメラシステムに対して,防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧可能者や設置場所などの防犯カメラに関する情報を,PCまたは携帯電話またはその他の電子機器へ知らしめる情報開示手段を付与することにより,利用者に安心感を与えることができる.特に,暗号化により,管理者は当該交通機関の運営会社,閲覧権者は警察と明確に分離し,事件事故がない限り,画像は誰にも閲覧されることなく,一定期間後に自動消去されるシステムとすることにより,利用者の心理的抵抗を低減でき,システムの導入がやりやすくなる.こうしたシステムにより,公共交通機関内での犯罪の証拠写真が確実に確保されることが可能となる.また,こうしたシステムは,痴漢行為などにおける冤罪の削減にも,大きく貢献できるものと思われる.このシステムにより,公共交通機関の利用者が持つ,防犯カメラによるプライバシー侵害に関する不快感・ストレスを低減しつつ,犯罪に対する不安,冤罪に対する不安を,低減することが可能となる.
【0027】
また,保安上の理由から,旅客機機内においては,客席のモニタを,必要に応じて行えるようにすうことは,意義のあることであると考えられる.たとえば,そういうモニタは,特別な資格を持つ警察官などが,地上において行うということも,考えられる.
【発明の効果】
【0028】
防犯カメラに付属する「プライバシー侵害の危険性」という必要悪とみなされていた部分をキレイに取り去ることができる.テロの脅威が増すなか,必要悪として防犯カメラが爆発的に普及しつつある昨今,世界中から注目される可能性が高い.
【0029】
プライバシーの侵害の危険性が小さくなれば,防犯カメラの普及の障害がなくなり,多くのところが防犯カメラの監視範囲となる.犯罪者は防犯カメラの監視外に逃れることはできなくなり,犯罪者逮捕への絶大な効果があり,結果として犯罪を減少させることができる.
【0030】
本発明のシステムにより,各世帯では自らを家だけではなく家の前の道など公的な場所も監視することが可能になり,各自の家のセキュリティを向上させることができる.さらに,公的な場所も各世帯の設置した防犯カメラにより監視できるため,警察・行政は,財政的負担なしに,町中の安全・安心を高めることが可能になる.本発明は,e自警カメラ(=暗号化によるプライバシー保護機能付防犯カメラシステム)が普及する上で,キーとなるアイデアである.
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1に,防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧可能者や設置場所などの防犯カメラに関する情報を,PCまたは携帯電話またはその他の電子機器へ知らしめる情報開示手段を有することを特徴とする防犯カメラシステムの説明図を示す.この例では,カメラはスタンドアローンタイプであり,撮影された画像は,暗号化された上で,メモリカードに記録される.一番古い画像から,順次,上書きされていき,常時,最新の約1週間分の画像が保存されている.カメラ(画像)の所有者と,画像の閲覧権者を分離することにより,平穏時のプライバシー保護の徹底を図ることを目的した使い方を想定している.
画像の保存は,一定時間ごと,たとえば,1秒間に2枚程度で行ってもよいし,あるいは,記憶容量の節約のために,動きが検出されたときに行ってもうよい.さらに,赤外線センサなどに連動させてもよい.また,通行人にカメラの方に顔を向けさせることを意図する場合,動きが検出されたときなど,音(ビープ音,「こんにちは」などの挨拶,など)を出すことも有効である.
【0032】
この例では,開示情報は,以下である.
・ カメラの所有者の名称
・ 記録画像の閲覧権者の名称
・ カメラの設置場所,撮影範囲
・ この開示情報の信頼性を保障する認証機関
この例では,カメラはスタンドアローンタイプであり,インターネット等とは接続されていない.Bluetoothなど短距離用の無線通信方法により近隣に存在する電子機器との通信が行われるだけである.カメラの近くを通る通行人が所持する携帯電話などの電子機器とカメラは,Bluetoothなどの短距離用の無線通信方式により自動的に通信し,カメラの開示情報が通行人の電子機器に送られる.夫々の通行人は,あらかじめ,携帯する電子機器の設定を行い,その種の通信を行うか否かを決めておく.
【0033】
また,カメラは,情報を提供するにあたり,問い合わせ者の身元の開示を求めることも考えられる.その際,問い合わせ者の身元,開示内容に関する情報・履歴を,メモリ上の専用ファイルに記録することも考えられる.この記録については,小さな容量ですむので,数年間など長期間にわたる保管も容易である.
【0034】
また,カメラ本体が発見されにくい形態で設置される場合には,開示情報の中で,「カメラの設置場所,撮影範囲」については,あいまいな情報とすることも考えられる.カメラ本体の位置,および,視野があいまいとすることは,犯罪抑止効果を高める上で有効な場合がある.通行人は,さらに詳しい情報を,認証機関との通信により,得ることができる.さらに詳しい情報として,以下のようなものが想定される.
【0035】
・ 当該カメラを含む,同一所有者が管理する防犯カメラネットワークに関する情報.
・ 当該カメラの運用ルール(どういった場合に,画像が,所有者から閲覧権者に渡されるかなどの情報)
・ カメラの所有者の名称・住所・連絡先
・ 記録画像の閲覧権者の名称・住所・連絡先
・ カメラの詳細(位置,視野,カメラの仕様)
・ この開示情報の信頼性を保障する認証機関の名称・住所・連絡先
認証機関により認証されたカメラは,開封すると壊れるシール等により封印されても良い.特に,下記の先願発明である
【特許文献1】特開2009-44311に基づく封印シールによる封印されると,本発明との相乗効果が得られる.
【0036】
防犯カメラからID情報を得て,それに基づき防犯カメラの様々な情報を得る方法では,ID情報を暗号化していても,このID情報を流用し,偽装された防犯カメラに本物の防犯カメラのID情報を埋め込み,偽装された防犯カメラがID情報の要求に対して本物の防犯カメラのID情報を返信させることで,偽装された防犯カメラを本物の防犯カメラのように振舞わせることができる.これを防ぐ方法としては,ID情報の暗号化のための鍵を時間で変化させる方法がある.図2にそれを示す.
図2の防犯カメラは、防犯カメラのID情報を秘密の暗号鍵と時間で変化する暗号鍵により暗号したデータをPCへ送る.この送信されるデータには時間で変化する暗号鍵を合わせてもよい.そのデータを受信したPCは,時間で変化する暗号鍵と秘密の暗号鍵により復号化することでID情報を得ることができる.また、送信データに時間で変化する暗号鍵が含まれている場合には、PCが送信データから時間で変化する暗号鍵を取り出し、その暗号鍵と秘密の暗号鍵を用いて復号化することでID情報を得ることができる.
【0037】
図3に示すように防犯カメラに通信機能をつけ,PCから図3の1のように防犯カメラへデータを送る.防犯カメラからは,そのデータから計算されるデータを図3の2のようにPCへ返信する.この防犯カメラが行う計算は防犯カメラごとに異なっていてもよい.図3の2のデータを受け取ったPCは,サーバへ図3の1と図3の2におけるデータを両方とも送る.これが図3の3に当たる.サーバは図3の1と図3の2の2つのデータの組み合わせが正しいかどうかを判定し,正しければ,そのカメラの所有者,設置場所,画像閲覧可能者などの情報をPCへ送信する.これが図3の4に当たる.開示内容として,以下などが好適である.
【0038】
・ 撮影者(所有者・管理者),閲覧可能者,封印者
・ 場所・視野
・ 画像保存期間
また,問い合わせ者を記録に残すことも,考えられる.相手の資格・身元に応じて,開示内容を制限することも,考えられる.
【0039】
この実施例では,図3の1で送信するデータを変化させることにより,防犯カメラからの返信データを変化させることができる.これにより,防犯カメラの偽装を行おうとするものは,データからどのような返信データが得られるかを推測することが必要となるが,これは極めて困難である.
【0040】
図4に示すように,図4の1にあるようにPCがサーバから判別用ソフトウェアを受け取り,図4の2にあるようにPCが防犯カメラから送信されるデータを受け取り,判別用ソフトウェアで防犯カメラの所有者,管理者,画像閲覧者などの情報を得る方法もある.
【0041】
図5にあるように,防犯カメラをインターネットに接続し,防犯カメラのURLを防犯カメラの表面に記載するなどにより公開し,図5の1のようにインターネットを経由してそのURLに接続することで,防犯カメラにアクセスし図5の2のように防犯カメラの所有者,管理者,画像閲覧者の情報を得ることができる.このとき,URLは防犯カメラを管理している組織のドメイン名であることにより,偽装を防ぐことができる.
【0042】
図5で用いているURLは,httpなどの電子証明書により認証局から保証されたものを利用することもできる.
【0043】
盗撮等を目的として偽装された防犯カメラが設置されると,プライバシーの問題が起きる.図6は相互に通信可能である防犯カメラシステムを示している.相互に通信を行うことにより,周囲に設置されている防犯カメラの台数を各防犯カメラが把握し,その状況をディスプレイなどで防犯カメラの周囲に周知する.図6では4台の防犯カメラが公園で稼動している.防犯カメラ同士の通信は,暗号化により行われることにより,偽装された防犯カメラが通信を行うことができないようにする.これにより,その場所に設置されている防犯カメラの台数を被撮影者が知ることができる.暗号化の方法としては,共有鍵暗号や公開鍵暗号など様々な方式が考えられ,さらに暗号化するための鍵を長くすることにより強度を上げることができる.また、各防犯カメラや防犯カメラ設置場所にディスプレイを設置し、相互に防犯カメラが通信した結果として得られる周囲のカメラの台数やカメラの位置を表示することで被撮影者に防犯カメラに関する情報を提供する.
【0044】
図7のように偽装された防犯カメラがある場合,被撮影者から見ると周囲に設定されている防犯カメラが5台であるが,図7の偽の防犯カメラは図7の4つの防犯カメラは通信できない.よって、4つの防犯カメラにより被撮影者に提供される周囲の防犯カメラの台数は4台であり、この情報はディスプレイなどに表示される.一方、被撮影者が見つけることができる防犯カメラの台数は5台であり,被撮影者は偽の防犯カメラが存在することを知ることができる.
【0045】
図6や図7で示してきた方法では防犯カメラ同士の相互通信により偽装された防犯カメラの検知や防止を行うことができるが,図6にあるすべての防犯カメラを偽装された防犯カメラに置き換えられてしまうと,その偽装された防犯カメラを被撮影者が検知することはできない可能性が生じる.この対策としては,図8のように防犯カメラがインターネット等によりサーバと通信可能である場合には,起動している防犯カメラがサーバに防犯カメラ自身の情報を通知する方法がある.防犯カメラの被撮影者は,サーバにアクセスし被撮影者のいる場所の防犯カメラの台数を確認することができ,偽装された防犯カメラが設置されている場合には,それを検知することができる.図8では,防犯カメラ4台が相互に通信し、各防犯カメラ4台の情報をあらかじめ定められたサーバへ送信する.被撮影者はサーバへアクセスし、場所などを送信することで、その場所で稼動している防犯カメラの情報を得ることができる.被撮影者はその場所で確認することができる防犯カメラとサーバから得られる防犯カメラの情報を比較することで、偽装された防犯カメラの存在を検知することができる.
【0046】
前述の方法では、防犯カメラの情報をサーバへ送信し、その情報を被撮影者が閲覧することで、偽装された防犯カメラの検知を可能としていた。しかし、真の防犯カメラを稼動させたまま被撮影者から隠し,偽装された防犯カメラを稼動させることで,偽装された防犯カメラを設置することができる.これに対する対策として、防犯カメラからサーバへ送られる情報に防犯カメラが撮影している映像も合わせて送信し、被撮影者はサーバにアクセスし各防犯カメラの映像を閲覧し防犯カメラが何を撮影しているのかを被撮影者が確認することで,防犯カメラの設置場所から想定される映像とサーバから提供される防犯カメラの映像を比較することで偽装されたカメラの存在を検知することができる.
【0047】
防犯カメラの情報と撮影している映像をサーバへ送信する前述の方法であれば,偽装された防犯カメラを検知することが可能であるが,サーバにアクセスすることで防犯カメラの映像が見ることができる.しかしこれは,本発明の目的である防犯カメラによるプライバシーの侵害の防止と相反するものであり,被撮影者以外でも防犯カメラの映像を見ることができてしまう.そこで,防犯カメラの映像にどこを撮影しているのかがわかる程度のモザイク等の画像処理を施した後で,防犯カメラがサーバへ映像を送信することで,防犯カメラの映像を見ることによるプライバシーの侵害を防ぐことができる.
【0048】
防犯カメラが,どこを撮影しているかを被撮影者が確認する方法としては,図9に示す方法がある.初めに,被撮影者が防犯カメラにアクセスし,防犯カメラの画像を確認するためのアクセス先を要求する.これは図9の1に当たる.次に防犯カメラはサーバへ,そのときに撮影した映像をあらかじめ定められたサーバへ送信する.これが図9の2に当たる.次に,サーバはこの映像を受け取った後に、防犯カメラへ,その映像を被撮影者が確認するためのアクセス先を防犯カメラへ送信する.これが図9の3に当たる.このときのアクセス先は偽装されないようにあらかじめ定められた文字列とランダムな文字列から構成されるものとする.例えば,http://www.e-jikei.org/camera/parkA/39ijflaskjlfj39434/といったものであり,http://www.e-jikei.org/の部分があらかじめ定められた文字列であり,camera/parkA/39ijflaskjlfj39434/の部分がランダムな文字列である.次に、防犯カメラはサーバから受け取ったアクセス先を被撮影者に送信する.これが図9の4に当たる.次に被撮影者は図9の4で送信されたアクセス先にアクセスする.これが図9の5に当たる.次にサーバは被撮影者がアクセスしてきたところにある映像を被撮影者に送信する.これが図9の6に当たる.
【0049】
盗撮等を目的として偽装された防犯カメラを設置するためには,アクセス先を偽装しようとする場合,http://www.e-jikei.org/へのアクセスを偽装するためには,インターネット上のDomain Name Serviceにおけるwww.e-jikei.orgのIP addressを偽装する必要があるが,これはDomain Name Serviceの仕組みから考えるとかなり困難である.また,ランダムな文字列は推測困難であるように生成することが可能である.よって,このアクセス先を偽装することはかなり困難である.また,図9の2により,サーバは防犯カメラから送信された映像をアクセス先に被撮影者がアクセスしたときに表示されるようにしておく.図9の5や6のように,被撮影者はアクセス先にアクセスし,映像を確認し,その防犯カメラの撮影している映像を確認することが可能となる.
【0050】
図2,3,4,5,6,7,8,9にあるサーバと防犯カメラの通信,防犯カメラ同士の通信,被撮影者とサーバの通信,被撮影者と防犯カメラの通信を暗号化することで通信データの盗聴を防ぐ.
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は,住宅街などの監視カメラシステムとして好適である.
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にもとづくカメラの説明図である.
【図2】防犯カメラがID情報を送信する場合,送信の度にID情報の暗号化のための暗号鍵を変化させる場合の説明図である.
【図3】防犯カメラにデータを送り,その返信を利用して,サーバから防犯カメラの情報を得る場合の説明図である.
【図4】サーバから防犯カメラの情報を得るためのソフトウェアをダウンロードして,防犯カメラの情報を得る場合の説明図である.
【図5】インターネットを経由して防犯カメラに表示されているURLにアクセスすることにより防犯カメラの情報を得る場合の説明図である.
【図6】防犯カメラが相互に通信し,周囲の防犯カメラの台数を各防犯カメラが知る方法の説明図である.
【図7】防犯カメラが相互に通信し,周囲の防犯カメラの台数を各防犯カメラが知り,偽装された防犯カメラの有無を知る方法の説明図である.
【図8】防犯カメラが相互に通信し,周囲の防犯カメラの台数や偽装された防犯カメラの有無をサーバへ伝える場合の説明図である.
【図9】防犯カメラの撮影映像や撮影場所や撮影範囲を被撮影者が確認するときに,サーバへのアクセス先がランダムに変化する場合の説明図である.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防犯カメラの所有者や管理者や画像閲覧可能者や設置場所などの防犯カメラに関する情報を,PCまたは携帯電話またはその他の電子機器へ知らしめる情報開示手段を有することを特徴とする防犯カメラシステム.
【請求項2】
請求項1にある防犯カメラが撮影画像や防犯カメラに関する情報を暗号化して保存する防犯カメラシステムであることを特徴とする請求項1のシステム.
【請求項3】
請求項1にある情報開示手段が有線通信または無線通信または暗号化された有線通信または暗号化された無線通信または2次元バーコードなどの画像データまたは音声であることを特徴とする請求項1または2のシステム.
【請求項4】
防犯カメラへ任意のデータを送信し,その防犯カメラからの返信と送信したデータを比較すること,またはサーバへ送信しサーバにおいて比較することにより,その防犯カメラの所有者や画像閲覧可能者や設置場所などの情報を確認できる特徴を有する請求項1から3までのシステム.
【請求項5】
防犯カメラに通知されるURLなどのアクセス先へアクセスすることで,防犯カメラの関する情報を確認できる特徴を有する請求項1から4までのシステム.
【請求項6】
防犯カメラが相互に通信することで,各防犯カメラが周囲に設置された他の防犯カメラの情報を収集交換し,サーバまたは防犯カメラの周囲にその情報を周知するとともに,同一の防犯カメラの情報を有する防犯カメラが複数存在する場合に,その情報をサーバ及び防犯カメラの周囲に周知させることができる特徴を有する請求項1から5のシステム.
【請求項7】
防犯カメラがあらかじめ指定されたサーバへ,その防犯カメラが撮影した映像または撮影場所がわかる程度に処理を施した映像を送信し,被撮影者が予め指定されたサーバかまたは防犯カメラから指示されたサーバへアクセスすることで各防犯カメラから送信された映像を確認することにより,防犯カメラの撮影している範囲や場所を被撮影者が確認することができる特徴を有する請求項1から6のシステム.

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39737(P2011−39737A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185748(P2009−185748)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(709003492)特定非営利活動法人e自警ネットワーク研究会 (6)
【Fターム(参考)】