説明

扁平型ブラシ付コアレスモータ

【課題】 モータの薄型化、軽量化、出力性能、低騒音、低コストなどの性能を成立させること。
【解決手段】 出力軸側のブラケットにマグネットを配し、内径の小さいマグネットにてマグネット面積を確保(マグネットの磁束を確保)し出力性能を満足させると同時に、反出力側のブラケットに同等の磁気回路を構成する為の平面部を有し、且つ軸受ハウジングを有し、ブラシを具備する樹脂成形ブラシホルダーを直接上記反出力軸側の磁気回路を構成する平面部に直接固定することで、モータの薄型、低騒音、軽量化、低コストなどを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車搭載の軽量、薄型、低コストを要求されるDCブラシ付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用モータは1)低燃費を実現する為の軽量化、2)限られたスペースの中で使用可能な薄型化、3)低コスト化が要求されている。その中で、出力60Wまでの要求性能においては、その薄型、軽量化のメリットが生かされる扁平型ブラシ付コアレスモータ:以下フラットモータが使用されている。その代表的な構造について第2図を参照しながら説明する。第2図はフラットモータを示す。巻線と整流子1を有するロータと呼ばれる無鉄心の回転子2が軸受3、4を介して保持されており、略ドーナツ形状マグネット5は反出力軸側のブラケット6に配設され、カーボンブラシ7:以下ブラシを配設するための異形形状を持ち、その平面からの軸方向への磁束と、巻線に流れる電流によって回転トルクを発生するもので、そのときに整流子1とブラシ5によって電流方向が切替え、整流されて一定方向の有効なトルクを発生するものである。その駆動トルクを発生する源であるマグネット5からの磁束の量は、そのロータ2に対面するマグネット5の面積に比例し、面積が大きいほど有効な磁束を確保することになる。
【0003】
このフラットモータの特徴は第3図に示す有鉄心のモータに対し、軽量、薄型が実現できることが特徴である。第3図においては、巻線8は鉄心9に具備されマグネット5の形状は弓型で磁束を、軸方向ではなく、軸に対し放射状の方向に発生させる。そのため、鉄心9による重量と、軸方向にある程度の鉄心9とマグネット5の長さが必要となる。この2つのタイプのモータを同一出力で比較した時、重量で約20%の軽量化 薄型化で約15%の薄型化が実現できる。逆に短所としては、軸方向に磁束を発生するモータの為、その磁気変動による振動1次モードは第2図内の破線で示すようなモータ外周を節とした太鼓状の振動となり、モータの加振周波数と合致した時に共振音を発生するという短所がある。第4図はその振動モードをCAEで解析した結果と、その共振音をFFTで周波数分析した結果である。
【0004】
上記軽量化、薄型化の比較指標は胴径がφ90〜100程度の胴径を有するモータの場合の比較となる。これがφ60〜φ80の小さい胴径を必要とする、φ120〜φ160の小径ファン回転用のモータとなるとマグネット5の形状の中でブラシを配設するために設けられた異形形状部分(図1:薄いハッチング部分で有効磁束を発生しない部分)の比率が大きくなる為、同等重量で同等出力を得ることが困難となる。
【0005】
この改善策として、出力軸側にマグネットを配設し、反出力軸側にそのマグネットの面積分をもつブラケットを配設する方法がある。図5はその実施形態を示す為の説明図であるが、軸受3を保持する部分をブラケット6と分離した3ピース構造とする為に、2つの軸受の同軸を確保することが難しく軸受異音の発生という課題と、ブラシホルダー10を合わせた部品点数がアップする課題と、薄型化が犠牲になるという課題がある。
【特許文献1】特開2003−153500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題はモータの薄型化、軽量化、出力性能、低騒音、低コストなどの性能を成立させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、まず出力軸側のブラケットにマグネットを配し、内径の小さいマグネットにてマグネットの面積を確保(マグネットの磁束を確保)し出力性能を満足させると同時に、反出力軸側のブラケットに同等の磁気回路を構成する為の平面部を有し、且つ軸受ハウジングを有し、ブラシ、電源リード線を具備しながら防水性の確保する為の蓋の役割をする樹脂成型ブラシホルダーを、上記反出力軸側のブラケットの磁気回路を構成する平面部に直接固定する構造としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフラットモータは、胴径φ40の有鉄心モータに対し、φ60の胴径で同等出力性能を確保し、且つフラットモータの特徴である 軽量化:15%を実現し、薄型化:53%を実現することができる。また、部品点数を増やすことなく実現できている為、その構成材料費は同等で、且つ、上記反出力軸側のブラケットの磁気回路を構成する平面部に樹脂成型ブラシホルダーを直接固定する構造とすることで上記振動1次モードに対し大きなダンピング効果を発生させることにより共振音の低減を実現することができ、且つ、軸受の保持構造を2ピースで実現している為、同軸ズレによる軸受異音の発生もないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
モータの薄型化、軽量化、出力性能、低騒音、低コストなどの性能を成立させるという目的を、部品点数、モータ組立工数を増加させること無く実現した。
【0010】
次に、本発明の具体例を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明のモータの1実施例の図であって、軸方向に断面した図と反出力軸側から見た図である。マグネット5はブラケット11に配し、内径はロータ2の外径に対し、50%の小さい内径のドーナツ形状のものである。反出力軸側のブラケット6はそのマグネット5の内径部分まで平面部を有し、マグネット5との間に適正な磁気的エアギャップを確保していると同時に、軸受3を保持する軸受ハウジング14と、ブラシホルダー10に具備されたブラシ7が整流子1に接する為の開口部分を有している。ブラシ7を具備し、電源リード線12が接続され防水の為のシール等が施されたブラシホルダー10は、反出力軸側のブラケット6の上記平面部分に直接ボルト13で固定されている。反出力軸側のブラケット6への固定の為のネジ穴は反出力軸側のブラケット6をバーリング加工で反出力側に有効ネジ長を確保している。固定ボルト13はマグネット5のラジアル方向のN極、S極の磁極の極間に配設され磁界の乱れることを防止していると同時に、モータ取り付け穴1ヶ所と連動した位置に配設されモータが実機に取り付けられた後の剛性アップに寄与している。
【0012】
マグネット5を出力軸側のブラケット11にロータ径の50%以下で配することで、ドーナツ上のマグネット5の面積をフルに活用し、且つ反出力軸側のブラケット6に相当面積の平面部を有することで約20%の有効磁束がアップしている。それによって本実施例におけるモータの重量は約200gで他の同等出力のモータに対し大きく優位性のある軽量化となっている。
【0013】
ブラシホルダー10を直接反出力軸側のブラケット6の平面部にボルト13で固定する構造によってモータの軸方向の厚みを極めて薄く、且つ 共振音低減を実現させることができる。本実施例における厚みは約29mmで他の同等出力のモータに大きく50%以上の優位性のある厚みとなっている。またブラシホルダー13は反出力軸側のブラケットの開口部に対し、蓋の役目を果たし、モータとして防水構造を確保できている。本実施例における振動1次モードに対するCAE解析の結果及び共振音のFFTアナライザによる周波数分析データの図6に示す。共振音を約1/3に低減できている。
【0014】
また、反出力軸側のブラケット6は軸受3を保持するハウジング14を具備しているため、出力軸側のブラケット11と2つのパーツで保持構造を完結することができるため、両軸受の同軸精度が極めて高い精度で組み立てることが可能で、そのことによって軸受の異常音の発生を抑制でき低騒音のモータを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、自動車搭載の軽量、薄型、低コストを要求されるDCブラシ付モータに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を実施したフラットモータの構造断面図と矢視外観図
【図2】従来のフラットモータの構造断面図と矢視モータ内部説明図
【図3】従来の有鉄心モータの構造断面図と矢視モータ内部説明図
【図4】従来のフラットモータの振動1次モードCAE解析結果図と共振音の周波数分析結果図
【図5】従来のフラットモータの構造断面図
【図6】本発明を実施したフラットモータの振動1次モードCAE解析結果図と共振音の周波数分析結果図
【図7】従来のフラットモータの振動1次モードCAE解析結果(図4)の詳細図
【図8】本発明を実施したフラットモータの振動1次モードCAE解析結果(図6)の詳細図
【符号の説明】
【0017】
1 整流子
2 ロータ
3 軸受
4 軸受
5 マグネット
6 反出力軸側のブラケット
7 ブラシ
8 巻線
9 鉄心
10 ブラシホルダー
11 出力軸側のブラケット
12 電源リード線
13 固定ボルト
14 軸受を保持するハウジング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーナツ形状マグネット平面からの軸方向への磁束を利用して駆動力を発生する、扁平型ブラシ付コアレスモータにおいて、マグネットを出力軸側のブラケットに配し、反出力側の磁気回路を構成するブラケットにはマグネットの内径部分まで平面部を構成し、且つロータの軸受を保持するハウジングを有し、且つカーボンブラシを具備する樹脂成形ブラシホルダーを、上記マグネット内径部分までの磁気回路を構成する平面部に直接固定する構造としたことを特徴とした扁平型ブラシ付コアレスモータ。
【請求項2】
マグネットの内径をロータ外径の52%以下にしたことを特徴とした請求項1記載の扁平型ブラシ付コアレスモータ。
【請求項3】
ブラシホルダーをボルトにて固定することを特徴とした請求項1記載の扁平型ブラシ付コアレスモータ。
【請求項4】
ブラシホルダーを固定する為にブラケットにバーリングを構成したことを特徴とした請求項1記載の扁平型ブラシ付コアレスモータ。
【請求項5】
ブラシホルダーの固定位置をマグネットの極間に設置することを特徴とした請求項1記載の扁平型ブラシ付コアレスモータ。
【請求項6】
ブラシホルダーの固定位置をブラケット取付け穴と連動した位置に設置することと特徴とした請求項1記載の扁平型ブラス付コアレスモータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−149019(P2006−149019A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333007(P2004−333007)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】