説明

手動ステージ用ベース板

【課題】手動ステージを土台に固定する締結具が機械振動などにより緩むことを防止する手動ステージ用ベース板を提供する。
【解決手段】精密機器が取付けられる摺動部品と、土台7に固定されるベース板1が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板1において、ベース板1の裏面には、凹状箱部2が設けられ、凹部の内部に直方体の磁石5、弾性体、又は粘弾性材が収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動ステージ用ベース板に係り、特に、精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品とが摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDカメラやセンサなどの電機・電子機器、レンズや顕微鏡等の光学機器、LEDなどの照明機器といった精密機器は、取り付けに際し、位置決めやピント合わせのために位置調整しなければならない。また、取り付け後において、さらにその位置を微調整する場合も発生する。
【0003】
これらの精密機器は、一般的に「ステージ」と称される機械要素上に設置されて位置調整される。手動ステージとは、これらのステージのうち、ハンドル操作により部品を手動で摺動させるステージをいう。この手動ステージは、機器が取付けられる摺動部品と、土台に接続される固定部品とが摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を固定部品に対して手動で摺動させるのが一般的である。この手動ステージには、その摺動機構により、例えば、アリ溝式ステージ、送りネジ式ステージ、リニアボール式ステージ、クロスローラ式ステージ、簡易ボール式ステージ、アリ溝スライドレール式ステージなどが含まれる。また、それぞれのステージには、使用目的に応じて多様な形式があり、例えば、アリ溝式ステージの場合には、1方向に摺動するX軸アリ溝式ステージ、略直交する2方向に摺動するXY軸アリ溝式ステージ、上下方向に摺動するZ軸アリ溝ステージ、回転して摺動する回転ステージなどがある。
【0004】
図18に、従来の一般的なX軸アリ溝式ステージを示す。X軸アリ溝式ステージ100は、台形状に窪んだアリ溝102を有する固定部品105に対し、台形状に突出したアリ101を有する摺動部品104が移動可能に嵌合される。この固定部品105は、締結具(図示せず)が挿入される土台締結用孔106を有するベース板108を介して土台(図示せず)に固定される。また、摺動部品104は、精密機器取付け用孔107に挿入される締付具(図示せず)を介して精密機器(図示せず)に接続される。摺動部品104は、ハンドル109を回転させることにより図中の矢印の方向に移動する。これは、X軸アリ溝式ステージ100の内部に、ラック及びピニオンギア(図示せず)、或いは送りねじ(図示せず)などの駆動機構が組み込まれていることによる。これらの駆動機構により、ハンドル109の回転が、摺動部品104の水平方向への移動に変換される。
【0005】
図19に、従来の一般的なXY軸アリ溝式ステージを示す。このXY軸アリ溝式ステージ200は、図中の左右方向である矢印の方向に摺動する上部ユニット202と,上部ユニット202と略直交する方向に摺動する下部ユニット203とが、締付具201及び接着剤により接着面206で接合されている。なお、図19では、上部ユニット202の摺動ユニット204を図の左側にスライドさせた状態を示す。上部ユニット202の固定ユニット205には、締付具201用の接続用孔207aが設けられ、下部ユニット203の摺動ユニット204には、締付具201用の接続用孔207bが設けられている。そして、略直交する2つのハンドル209a及び209bによりXY方向に摺動させる。
【0006】
送りネジ式ステージは、アリを有する摺動部品、アリ溝を有する固定部品、摺動機構である雄ネジ棒及び雌ネジ筒、ハンドル、及びストッパから構成される。この雄ネジ棒を雌ネジ筒に係合させ、ハンドルを回転させることで摺動部品が固定部品に対して摺動する機構のステージである。
【0007】
簡易ボール式ステージは、溝部を有する摺動部品、溝部を有する固定部品、ハンドル、及びワイヤ、スプリングなどから構成される送り手段から構成される。摺動部品の溝部及び固定部品側の溝部は、互いに対向する略半円筒状の溝であり、組み合わされると略円筒状となる。この略円筒状の溝内に複数のボールが嵌め込まれて配置される。そして、このボールの回転により摺動部品と固定部品が滑らかにスライドする機構のステージである。
【0008】
アリ溝スライドレール式ステージは、アリ溝を有する摺動部品、アリを有する固定部品、ハンドル、及び摺動部品に取付けられた脚部から構成される。固定部品には土台固定用締結孔が設けられ、摺動部品には精密機器取付け用孔が設けられる。この摺動部品と固定部品とは、摺動部品に取付けられた複数の脚部により接触する。すなわち、この脚部が固定部品のレール状のアリに接触しながらスライドする機構のステージである。
【0009】
リニアボール式ステージは、固定部品と摺動部品とが擬円筒の摺動面であるゴシックアーク溝を形成し、ボールがそのゴシックアーク溝に挟まれるように配置されることで固定部品に対して摺動部品を摺動させる機構のステージである。
【0010】
クロスローラ式ステージは、固定部品と摺動部品とにV字型の溝であるローラレースが形成され、円筒コロがこの2本のローラレースに挟まれた空間に互い違いに配置されることで固定部品に対して摺動部品を摺動させる機構のステージである。
【0011】
一方、特許文献1には、XY軸アリ溝式ステージである汎用アリ溝摺動ユニットが開示されている。ここでは、複数のアリ溝摺動ユニットを、締結具により着脱自在である連結部品により組合せることで、精密機器を平面状の2軸方向に位置調整でき、また、複数のアリ溝摺動ユニットが着脱自在であることで、例えば、ハンドルの方向などを容易に変更できるアリ溝摺動ユニットが記載されている。
【0012】
また、特許文献2には、XY軸アリ溝式ステージである複合アリ溝摺動ユニットが開示されている。ここでは、更に複数のアリ溝摺動ユニットを、連結部品を用いずに連結させる技術が記載されている。また、複数のアリ溝摺動ユニットのそれぞれのハンドルの回転軸を共有させ、2つのハンドル操作を1箇所で行うことができるアリ溝摺動ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3923997号
【特許文献2】特開2008−8446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの手動ステージは、固定部品に接続するベース板が締結具の締め付けにより土台に固定されるが、手動ステージの使用中において取付けられた精密機器、或いは周囲の駆動装置などの繰り返しの機械振動を受け、締め込まれた締結具が緩み手動ステージの位置がずれてしまうという問題がある。
【0015】
本願の目的は、かかる課題を解決し、手動ステージを土台に固定する締結具が機械振動などにより緩むことを防止する手動ステージ用ベース板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明に係る手動ステージ用ベース板は、精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板において、ベース板の裏面には、箱状の凹部が設けられ、凹部の内部に直方体の磁石が接合されて収納され、ベース板が、磁石の磁力により土台に固定されることを特徴とする。
【0017】
上記構成により、手動ステージ用ベース板は、磁石の磁気によりベース板が土台に固定され、繰り返しの機械振動を受けた場合であっても、ベース板は土台の横方向の動きにつれて同じ動きをする。従って、手動ステージを土台に固定する締結具が緩むことが防止できる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る手動ステージ用ベース板は、精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板において、ベース板の裏面には箱状の凹部が設けられ、ベース板が、凹部の内部に直方体の弾性体の厚みの一部を収納して弾性体を保持し、弾性体が、ベース板を土台に固定する締結具が締付けられることで圧縮され、その復元力により締付具に張力を導入することを特徴とする。
【0019】
上記構成により、手動ステージ用ベース板は、圧縮された弾性体の復元力により締結具に張力が導入され、繰り返しの機械振動を受けた場合であっても、手動ステージを土台に固定する締結具が緩むことが防止できる。
【0020】
上記目的を達成するため、本発明に係る手動ステージ用ベース板は、精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板において、ベース板が、凹部の内部に直方体の粘弾性材の厚みの一部を収納して粘弾性材を保持し、粘弾性材が、ベース板を土台に固定する締結具が締付けられることで圧縮され、その復元力により締付具に張力を導入し、せん断変形に対する復元力により土台から入力される振動のエネルギを吸収することを特徴とする。
【0021】
上記構成により、手動ステージ用ベース板は、圧縮された粘弾性材の復元力により締結具に張力が導入され、繰り返しの機械振動を受けた場合であっても、手動ステージを土台に固定する締結具が緩むことが防止できる。また、土台から入力される微振動に対して粘弾性材によりエネルギ吸収され、取付けられる精密機器の微振動を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係る手動ステージ用ベース板によれば、手動ステージを土台に固定する締結具が機械振動などにより緩むことを防止する手動ステージ用ベース板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る手動ステージ用ベース板の第1の実施形態である磁石が収納された場合の概略構成を示す平面図及び断面図である。
【図2】本発明に係る手動ステージ用ベース板の第2の実施形態である弾性体が収納された場合の概略構成を示す平面図及び断面図である。
【図3】本発明に係る手動ステージ用ベース板の第3の実施形態である粘弾性材が収納された場合の概略構成を示す平面図及び断面図である。
【図4】粘弾性材のせん断変形後の形状の概念を示す断面図である。
【図5】本発明の対象となるX軸ステージの平面図及び側面図である。
【図6】本発明の対象となるX軸ステージ(ハンドル延長タイプ)の平面図及び側面図である。
【図7】本発明の対象となるXY軸ステージの平面図及び側面図である。
【図8】本発明の対象となるZ軸ステージの平面図及び側面図である。
【図9】本発明の対象となるX軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図10】本発明の対象となるZ軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図11】本発明の対象となるX軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図12】本発明の対象となるXステージ(アリ溝送りネジタイプ)の平面図、底面図、及び側面図である。
【図13】本発明の対象となるX軸ステージ(アリ溝スリム送りネジタイプ)の平面図、底面図、及び側面図である。
【図14】本発明の対象となるX軸ステージ(アリ溝スリム送りネジタイプ)の平面図、底面図、及び側面図である。
【図15】本発明の対象となる回転ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図16】本発明の対象となるX軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図17】本発明の対象となるX軸粗微動ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図18】従来の一般的なX軸アリ溝式ステージを示す斜視図である。
【図19】従来の一般的なXY軸アリ溝式ステージの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を用いて本発明に係る手動ステージ用ベース板の実施形態につき、詳細に説明する。本実施形態では、手動ステージの一例としてX軸アリ溝式ステージについて説明するが、それに限らずXY軸アリ溝式ステージ、Z軸アリ溝式ステージ、回転ステージなどのベース板にも適用される。また、その他の機構の手動ステージである、送りネジ式ステージ、簡易ボール式ステージ、アリ溝スライドレール式ステージ、リニアボール式ステージ、クロスローラ式ステージなどのベース板にも適用される。
【0025】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態である、手動ステージ用ベース板1に磁石5が収納された場合の概略構成を示す。図1(a)には、手動ステージ用ベース板1を裏面からみた平面を示す。図1(b)には、図1(a)のA−A断面を示す。
【0026】
手動ステージ用ベース板1の裏面には略正方形に窪んだ凹状箱部2が設けられる。そして、凹状箱部2の内部に直方体の磁石5が接合されて収納される。本実施形態では、この凹状箱部2は手動ステージ用ベース板1の裏面に1箇所だけ設けられるが、これに限らず、例えば、より小さな複数箇所の略正方形の凹状箱部2が配置されても良い。また、本実施形態では、凹状箱部2の形状を略正方形としているがそれに限らず、例えば、長方形、円形などの形状であっても良い。
【0027】
略正方形の磁石5の各片長は、凹状箱部2に挿入可能な大きさであれば良い。また、磁石5の幅は、磁石5が挿入された手動ステージ用ベース板1を土台7に設置した際に、磁石5と土台7とが接触する幅に設定される。この磁石5は、図1(b)に示すように、磁石5及び手動ステージ用ベース板1にそれぞれ4箇所設けられた磁石取付け用孔6にビス(図示せず)がねじ込まれて手動ステージ用ベース板1の裏面に固定される。或いは、磁石5は、手動ステージ用ベース板1の裏面に接着により固定されても良い。
【0028】
手動ステージ用ベース板1は、手動ステージである、例えば、図5のX軸アリ溝ステージ100の固定部品105、図6のXY軸アリ溝ステージ200の固定ユニット205、又は他の手動ユニットのベース板に接続するための4箇所のベース板取付け用孔4を有する。手動ステージ用ベース板1はこのベース板取付け用孔4にビス(図示せず)がねじ込まれて固定される。
【0029】
また、手動ステージ用ベース板1は、その隅に4箇所の土台締結用孔3を有する。この土台締結用孔3に締結具8が貫通されて土台7に固定される。土台7は、例えば、鋼製の工作機械、鉄製の定盤などの磁性体であり、永久磁石の性質を有する磁石5に引き付けられる。本実施形態では、締結具8は、手動ステージの位置出しの役割を果たす。さらには、手動ステージに締結具8を用いずに土台7に固定しても良い。
【0030】
本手動ステージ用ベース板1に磁石5を組み込んで土台7上に設置することで、磁石5の磁気により土台7と強固に連結され、機械振動などの発生に起因する土台7に対する手動ステージ用ベース板1の微細なずれが回避できる。そして、土台締結用孔3に挿入された締結具8が機械振動などにより緩むことが防止できる。
【0031】
(第2実施形態)
図2に、本発明の第2実施形態である、手動ステージ用ベース板10に弾性体11が収納された場合の概略構成を示す。図2(a)には、手動ステージ用ベース板10を裏面からみた平面を示す。図2(b)には、図2(a)のB−B断面を示す。
【0032】
手動ステージ用ベース板10の裏面には略正方形に窪んだ凹状箱部2が設けられる。そして、凹状箱部2の内部に直方体の弾性体11が収納される。本実施形態では、この凹状箱部2は手動ステージ用ベース板10の裏面に1箇所だけ設けられるが、これに限らず、例えば、より小さな複数箇所の略正方形の凹状箱部2が配置されても良い。また、本実施形態では、凹状箱部2の形状を略正方形としているがそれに限らず、例えば、長方形、円形などの形状であっても良い。
【0033】
略正方形の弾性体11の各片長は、凹状箱部2に挿入可能であり、弾性体11が圧縮された場合に横方向へ膨出するのを抑えるだけの大きさであれば良い。また、弾性体11の幅は、弾性体11が挿入された手動ステージ用ベース板10を土台7に設置した際に、弾性体11と土台7とが所定の離間距離(d1)を有するように設定される。この弾性体11は、図2に示すように、接触面12で接触するように接着剤により手動ステージ用ベース板10の裏面に固定される。この弾性体11は、図1に示す磁石取付け用孔6と同様な孔を手動ステージ用ベース板10に設けてビスにより固定しても良い。また、この弾性体11は、例えばゴムのように、圧縮力を受けると大きな弾性変形を起こし元の形状に戻ろうとする復元力が発生する材料であれば良い。
【0034】
手動ステージ用ベース板10は、手動ステージである、例えば、図5のX軸アリ溝ステージ100の固定部品105、図6のXY軸アリ溝ステージ200の固定ユニット205、又は他の手動ユニットのベース板に接続するために4箇所のベース板取付け用孔4を有する。手動ステージ用ベース板10はこのベース板取付け用孔4にビス(図示せず)がねじ込まれて固定される。
【0035】
また、手動ステージ用ベース板10は、その隅に4箇所の土台締結用孔3を有する。この土台締結用孔3に締結具8が貫通されて土台7に固定される。本実施形態では、締結具8は、手動ステージの位置出し、及び手動ステージ用ベース板10を土台7に固定する役割を果たす。
【0036】
本手動ステージ用ベース板10に弾性体11を組み込んで土台7上に設置し、締結具8をネジ孔に締めこむと、圧縮剛性の小さな弾性体11は、図2(b)のX方向に圧縮される。この締結具8による締め込みは、手動ステージ用ベース板10と土台7とが接触するまで行われ、このとき弾性体11と土台7との離間距離(d1)がほぼゼロになる。この際に、弾性体11には圧縮に対する復元力がXと逆方向に発生し、その復元力は、手動ステージ用ベース板10と土台7とを連結する締結具8に作用する。そして、締結具8には、復元力と等しい張力が導入される。この張力が導入された締結具8は頭部15と手動ステージ用ベース板10との間に接触摩擦力が発生し、土台締結用孔3に挿入された締結具8が機械振動などにより緩むことが防止できる。
【0037】
(第3実施形態)
図3に、本発明の第3実施形態である、手動ステージ用ベース板20に粘弾性材21が収納された場合の概略構成を示す。図3(a)には、手動ステージ用ベース板20を裏面からみた平面を示す。図3(b)には、図3(a)のC−C断面を示す。また、図4には、粘弾性材21のせん断変形後の形状の概念図を示す。
【0038】
手動ステージ用ベース板20の裏面には略正方形に窪んだ凹状箱部2が設けられる。凹状箱部2の内部に直方体の粘弾性材21が収納される。本実施形態では、この凹状箱部2は手動ステージ用ベース板20の裏面に1箇所だけ設けられるが、これに限らず、例えば、より小さな複数箇所の略正方形の凹状箱部2が配置されても良い。また、本実施形態では、凹状箱部2の形状を略正方形としているがそれに限らず、例えば、長方形、円形などの形状であっても良い。
【0039】
略正方形の粘弾性材21の各片長は、凹状箱部2に挿入可能であり、図4に示す粘弾性材21のせん断変形を許容する大きさに設定される。また、粘弾性材21の幅は、粘弾性材21が挿入された手動ステージ用ベース板20を土台7に設置した際に、粘弾性材21と土台7とが離間距離(d2)を有するように設定される。この粘弾性材21は、図3(b)に示すように、接触面22で手動ステージ用ベース板20に固定され,接触面23で土台7に固定されるように接着剤により手動ステージ用ベース板20の裏面及び土台7の表面に固定される。この粘弾性材21は、図1に示す磁石取付け用孔6と同様な孔を手動ステージ用ベース板10に設けてビスにより固定し、さらに接着剤により土台7の表面に固定しても良い。
【0040】
この粘弾性材21は、流体のような粘性とスプリングのような弾性を併せ持った力学的挙動をする高分子材料をいい、クロロプレンゴムやシリコーンゴムなどが用いられる。また、この粘弾性材21は、高減衰ゴムともいわれ、材料自体に減衰性能を有する。すなわち、この粘弾性材21に応力が加わった場合、その荷重履歴に伴う非線形な挙動により振動や衝撃のエネルギを吸収し、主として熱エネルギに変換する。特に、シート状の粘弾性材21が、その面内にせん断力を受けると、せん断変形を起こすと共にエネルギ吸収を行い、振動や衝撃により発生する応力を減衰する。
【0041】
手動ステージ用ベース板20は、手動ステージである、例えば、図5のX軸アリ溝ステージ100の固定部品105、図6のXY軸アリ溝ステージ200の固定ユニット205、又は他の手動ユニットのベース板に接続するための4箇所のベース板取付け用孔4を有する。手動ステージ用ベース板20はこのベース板取付け用孔4にビス(図示せず)がねじ込まれて固定される。
【0042】
また、手動ステージ用ベース板20は、その隅に4箇所の土台締結用孔3を有する。この土台締結用孔3に締結具8が貫通されて土台7に固定される。本実施形態では、締結具8は、手動ステージの位置出し、及び手動ステージ用ベース板20を土台7に固定する役割を果たす。
【0043】
本手動ステージ用ベース板20に粘弾性材21を組み込んで土台7上に設置し、締結具8をネジ孔に締めこむと、圧縮剛性の小さな粘弾性材21は、図3(b)のY方向に圧縮される。この締結具8による締め込みは、手動ステージ用ベース板20と土台7とが接触しない程度に行われ、このとき粘弾性材21と土台7との離間距離(d2)はより小さな離間距離(d3)となる。この離間距離(d3)は、手動ステージ用ベース板20と土台7との間に動的な摩擦力が発生しなければ、ほぼゼロであっても良い。この際に、粘弾性材21には圧縮に対する復元力がYと逆方向に発生し、その復元力は、手動ステージ用ベース板20と土台7とを連結する締結具8に作用する。そして、締結具8には、復元力と等しい張力が導入される。この張力が導入された締結具8は頭部15と手動ステージ用ベース板20との間に接触摩擦力が発生し、土台締結用孔3に挿入された締結具8が機械振動などにより緩むことが防止できる。
【0044】
図3,4に示すように、手動ステージ用ベース板20は、離間距離(d3)により粘弾性材21を介して手動ステージ用ベース板20と土台7とが接続するように構成される。これにより、土台7にZ方向の微振動が生じた場合に粘弾性材21がせん断変形を起こし、そのせん断に対する復元力によりエネルギ吸収を行い、機械振動などの発生に起因する微振動が粘弾性材21により熱エネルギ等として吸収され減衰される。
【0045】
図5〜図19には、本発明の対象となるアリ溝式の手動ステージの一部を例示する。これらの図は、平面図、底面図、側面図などにより記載されるが、各図面の表示は省略する。これらの従来のアリ溝式の手動ステージには、本発明の請求項1〜3の特徴事項を備えるベース板を取り付けることができるが、これらの例に限らず、従来の全てのアリ溝式の手動ステージである、例えば、X軸アリ溝式ステージ、XY軸アリ溝式ステージ、Z軸アリ溝式ステージ、回転ステージなどにも取付けることができる。
【符号の説明】
【0046】
1,10,20 手動ステージ用ベース板、2 凹状箱部、3,106 土台締結用孔、4 ベース板取付け用孔、5 磁石、6 磁石取付け用孔、7 土台、8 締結具、11 弾性体、12,22,23 接触面、15 頭部、21 粘弾性材、100 X軸アリ溝ステージ、101 アリ、102 アリ溝、104 摺動部品、105 固定部品、107 精密機器取付け用孔、108 ベース板、109 ハンドル、200 XY軸アリ溝ステージ、201 締付具、202 上部ユニット、203 下部ユニット、204 摺動ユニット、205 固定ユニット、206 接着面、207a,b 接続用孔、209a,b ハンドル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板において、
ベース板の裏面には、箱状の凹部が設けられ、凹部の内部に直方体の磁石が接合されて収納され、ベース板は、磁石の磁力により土台に固定されることを特徴とする手動ステージ用ベース板。
【請求項2】
精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板において、
ベース板の裏面には箱状の凹部が設けられ、ベース板は、凹部の内部に直方体の弾性体の厚みの一部を収納して弾性体を保持し、弾性体は、ベース板を土台に固定する締結具が締付けられることで圧縮され、その復元力により締付具に張力を導入することを特徴とする手動ステージ用ベース板。
【請求項3】
精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定されるベース板が接続される固定部品と、が摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージの部品である手動ステージ用ベース板において、
ベース板の裏面には箱状の凹部が設けられ、ベース板は、凹部の内部に直方体の粘弾性材の厚みの一部を収納して粘弾性材を保持し、粘弾性材は、ベース板を土台に固定する締結具が締付けられることで圧縮され、その復元力により締付具に張力を導入し、せん断変形に対する復元力により土台から入力される振動のエネルギを吸収することを特徴とする手動ステージ用ベース板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−256014(P2010−256014A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102550(P2009−102550)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(506177268)株式会社ミラック光学 (14)
【Fターム(参考)】