説明

投写型映像表示装置の起動システム

【課題】投写型映像表示装置の起動時において光源となる半導体レーザ素子アレイがレーザ動作設定温度に達してから作動するようにし、装置の空転時間を短縮するとともに半導体レーザ素子アレイを熱的影響から保護する。
【解決手段】同一基板上に複数の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイを受熱板に配設し、且つ、該受熱板に電熱ヒータおよび半導体レーザ素子アレイの温度検出手段(温度センサ)を配設してなる複数の光源エレメントを、3原色毎に合成プリズムの照射面に導光するように、階層状に配置して光源ユニットを構成し、前記光源エレメントの受熱板を冷却手段に接続するとともに、電熱ヒータおよび温度センサを制御手段に接続してなり、該制御手段により前記温度センサの温度と予め設定されているレーザ動作設定温度とを比較することにより、半導体レーザ素子アレイの作動時期を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3原色のレーザ光を画像情報により変調して合成することにより投写光を生成し、投写レンズを介してスクリーンに映像を投影する投写型映像表示装置(プロジェクタ)の起動システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多くの投写型映像表示装置においては、3原色の光を生成するための光源にメタルハライドランプや超高圧水銀ランプなどの放電型ランプが採用され、いわゆる3板式による場合は、放電型ランプが発する白色光をダイクロイックミラーにより赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色に分離し、この3原色を画像情報により変調して合成プリズム(ダイクロイックプリズム)で合成した後、投写レンズを介して映像をスクリーンに表示するようにしている。
【0003】
このような放電型ランプを採用する投写型映像表示装置において高輝度化(高出力化)の要求に対応するためには、高出力の放電型ランプを採用したり、多灯化が試みられている。ところが、このような対応は放電型ランプからの発熱が多くなることから冷却構造が大型化し、騒音や電源の大型化などの対策も不可欠なものとなる。放電型ランプの発光スペクトルは、黄色にピークを持つため、その出射光を有効に利用するためには、赤色もしくは緑色に黄色を混ぜて使用する必要がある。したがって、生成される単色の色純度が悪く、高い色再現性を実現できないという課題があった。また、放電型ランプは、発光スペクトルにおける緑色、青色の波長帯域の光量に比べ、赤色の波長帯域の光量が十分でないため、この赤色の波長帯域の光量を補う対策が必要であるという課題があった。
【0004】
放電型ランプを採用した投写型映像表示装置にはこのような課題があるにも拘わらず、近年、業務市場などにおいてはスクリーンに投影する映像の大型化の要求が高まり、これに伴って光源の発光量の増大が課題となっている。しかしながら、光源の高出力化にも限界があると同時に、複数個の光源を用いた場合の効率低下により、有効に使用できる光量の増加が実現できないという課題がある。そこで、上記のような放電型ランプを採用した場合の課題を解決するため、特に高出力化を目的とする光源の要素に半導体レーザ素子アレイを採用する試みがなされている(特許文献1参照)。
【0005】
この半導体レーザ素子アレイは、例えば、半導体の同一基板上にモノシリックで数10個以上の半導体レーザ素子が高密度に配列されてアレイ化されたものであり、配列数に相当する発光スポットが形成されるようにしている。このような半導体レーザ素子アレイを採用する場合において、この半導体レーザ素子アレイの各半導体レーザ素子を安定にレーザ発振させるため、レーザ動作設定温度を一定に保つことが重要な課題となっている。
【0006】
レーザ動作設定温度が変動すると、半導体レーザ素子アレイからの発光出力が変動し、色合成の結果に影響が生じるとともに、寿命を短くすることにもなる。そこで、特許文献1に開示された技術では、ペルチェ素子とヒートシンクを組み合わせ、半導体レーザ素子アレイを冷却している。また、半導体レーザ素子を強制的に冷却する他の手段として、冷却装置から冷却媒体通路を各半導体レーザ素子に対して並列的に配置することにより所定の温度に冷却するようにしたものがある(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−201285号公報
【特許文献2】特開2005−026575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体レーザ素子を光源とした場合、放電型ランプを採用した場合に比べて瞬時点灯および消灯が可能であり、色再現性が広く長寿命であるという特質がある。しかしながら、半導体レーザ素子は温度が上昇すると発光効率が低下し、結晶欠陥の増加が進行する。これに伴って非発光遷移の割合が増加することから、本来の発光原理として動作する遷移機構においても発熱し、素子の温度が上昇して発光能力が加速度的に低下することになり、動作温度を管理しないと寿命の短期化にもつながることになる。
【0008】
本発明は、このような光学的物性のある複数の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイから出射される3原色を合成する構成を前提とするものであるが、前述したように半導体レーザ素子においては温度による影響を大きく受ける特質を備えるもので、素子の温度が変化すると、出射光の波長、輝度、発光スポット径が変化する。このような状態に至るとホワイトバランスが崩れる状態となる。
【0009】
したがって、半導体レーザ素子アレイは、安定した動作が維持される一定のレーザ動作設定温度に常時保たれるようにしなければならない。例えば、半導体レーザ素子は室温より比較的低い温度(20℃程度)において高い出力が得られ、長い寿命を保つことができるので、環境温度がどのように変化してもレーザ動作設定温度を一定に保つ冷却手段が必要となり、その温度を、例えば、±1℃の範囲に収めることが理想となる。
【0010】
ところが、上記特許文献1に開示された冷却手段においては、ペルチェ素子とヒートシンクの複合構造によるもので、光源エレメントの周辺部が複雑かつ大型化することから、3原色毎に複数の半導体レーザ素子アレイを配置する構成の光源エレメントには採用することはできず、個々の半導体レーザ素子アレイを正確に温度制御することはできない。また、上記特許文献2に開示された冷却手段においては、個々の半導体レーザ素子の温度状態を把握することが困難であるとともに、冷却冷媒の流量の調整手段を個々に備えるというきわめて大掛かりな装置となる。
【0011】
このように温度に対する配慮が重要な半導体レーザ素子アレイを光源とする投写型映像表示装置には、更に解決しなければならない課題がある。即ち、上記したような従来の冷却手段は、投写型映像表示装置が起動されて安定した状態に至った場合を前提とするものであり、装置の起動時の熱的問題をも配慮するものではない。周知のように半導体レーザ素子は、それ自体が発熱源であり起動時における半導体レーザ素子の温度は、室内などに設置した場合の環境温度と同化しており、この状態で装置が起動され、同時に冷却手段が運転を開始しても所定の冷却能力が得られる状態に至るまでに、発光した半導体レーザ素子は瞬時に環境温度以上の高温に至ってしまうことになる。
【0012】
かかる状態は半導体レーザ素子アレイがレーザ動作設定温度から大きく逸脱することから定常の発光状態とならず、正確な色階調表現ができないことになり、寿命を短くする原因となる。したがって、装置を起動して半導体レーザ素子アレイがレーザ動作設定温度で作動するまでの時間を可及的に短くすることにより、起動時の装置の空転時間が短くなるとともに、半導体レーザ素子アレイに熱的悪影響を及ぼさないことになる。
【0013】
本発明は、半導体レーザ素子アレイを受熱板に配設してなる複数の光源エレメントを、3原色毎に合成プリズムの照射面に導光するように、階層状に配置するようにした光源ユニットを備える投写型映像表示装置において、装置の起動に伴って半導体レーザ素子アレイが急速にレーザ動作設定温度に至るようにし、しかる後、半導体レーザ素子アレイを作動するようにして装置の空転時間を短縮できるようにするとともに、半導体レーザ素子アレイの保護を同時に実現できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、3原色のレーザ光を画像情報により変調して合成することにより投写光が得られるようにした投写型映像表示装置であり、同一基板上に複数の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイを受熱板に配設し、且つ、該受熱板に電熱ヒータおよび半導体レーザ素子アレイの温度検出手段(温度センサ)を配設してなる複数の光源エレメントを、3原色毎に合成プリズムの照射面に導光するように、階層状に配置して光源ユニットを構成し、前記光源エレメントを冷却手段に接続するとともに、電熱ヒータおよび温度センサを制御手段に接続してなり、該制御手段により前記温度センサの温度と予め設定されているレーザ動作設定温度とを比較することにより、半導体レーザ素子アレイの作動時期を決定する起動システムとなるようにする。
【0015】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の投写型映像表示装置の起動システムにおいて、温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度以上であるとき、直ちに前記冷却手段を駆動して半導体レーザ素子アレイを降温し、しかる後、温度センサがレーザ動作設定温度を検知した時点において半導体レーザ素子アレイを作動する。
【0016】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載の投写型映像表示装置の起動システムにおいて、温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度以下にあるとき、直ちに前記電熱ヒータにより半導体レーザ素子アレイを昇温し、一方温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度を超えていることを検知した時点において前記冷却手段を駆動し、半導体レーザ素子アレイをレーザ動作設定温度にまで降温した段階で半導体レーザ素子アレイを作動する。
【0017】
請求項4記載の発明では、3原色のレーザ光を画像情報により変調して合成することにより投写光が得られるようにした投写型映像表示装置であり、同一基板上に複数の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイを受熱板に配設し、且つ、該受熱板に電熱ヒータおよび温度センサを配設してなる複数の光源エレメントを、3原色毎に合成プリズムの照射面に導光するように、階層状に配置して光源ユニットを構成し、前記光源エレメントを冷却手段に接続するとともに、電熱ヒータおよび半導体レーザ素子アレイの温度検出手段(温度センサ)を制御手段に接続してなり、前記温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度以上であるとき、直ちに前記冷却手段を駆動して半導体レーザ素子アレイを降温し、しかる後、温度センサがレーザ動作設定温度を検知した時点において半導体レーザ素子アレイを作動するようになし、該半導体レーザ素子アレイが作動された後、各光源エレメントから温度センサにより得られた各温度において最高温度を示した光源エレメントが所望のレーザ動作設定温度となるように冷却手段を制御する一方、その他の光源エレメントを各々の電熱ヒータにて昇温することにより所望のレーザ動作設定温度となるようにする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明によれば、温度センサにより半導体レーザ素子アレイの温度を検出し、それらの温度をレーザ動作設定温度と比較することで半導体レーザ素子アレイの作動時期を決定することが可能となる。
【0019】
本発明の請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、半導体レーザ素子アレイがレーザ動作設定温度より高温にある状態を検知し、半導体レーザ素子アレイの作動に先行して冷却手段を駆動するようにしたので、半導体レーザ素子アレイの発光に伴う異常高温が発生しない安全な起動が可能となる
【0020】
本発明の請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、レーザ動作設定温度以下にある半導体レーザ素子アレイを電熱ヒータにより昇温してから半導体レーザ素子アレイ冷却手段を駆動するようにしたので、例えば、寒冷地においても的確な装置の起動が可能となる。
【0021】
本発明の請求項4記載の発明によれば、半導体レーザ素子アレイを冷凍機が機能した時点で作動して発光させるとともに、発光後に温度の変動があった場合においても半導体レーザ素子アレイをレーザ動作設定温度に保たれるようにしたので、信頼性を永続的に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図にもとづいて詳細に説明する。図1は、本発明の光源ユニットの基本的構成を示す平面図であり、同光源ユニットの組立状態の斜視図を図2に示す。図3は、本発明の具体的構成を示す図であり、本発明に採用する冷却手段の例を図4に示す。また、本発明の起動システムの処理の流れを図5に示し、この起動システムによる温度制御の態様を図6乃至図10に示す。
【0023】
図1は、本発明の投写型映像表示装置Pの要部となる光源ユニット1の基本的構成を示す平面図であり、中央に配置された合成プリズム2の3側面に3原色のレーザ光の照射面2R、2G、2Bが形成されている。前記照射面2Rには赤色レーザ光が照射され、照射面2Gには緑色レーザ光が照射され、照射面2Bには青色レーザ光が照射される。
【0024】
各照射面2R、2G、2Bには液晶パネル3R、3G、3Bとともに入射側偏光板4R、4G、4Bおよび出射側偏光板5R、5G、5Bが対面して平行に配設されている。前記液晶パネル3R、3G、3Bに特定の直線偏光成分を入射させるため、入射側偏光板4R、4G、4Bにおいて各原色の光束を所定の偏光方向(P偏光)に揃え、そのP偏光が液晶パネル3R、3G、3Bで変調された後、変調光のS偏光成分のみが出射側偏光板5R、5G、5Bから透過される。
【0025】
そして、均一な照度分布が得られるようにするコンデンサレンズ6R、6G、6Bが入射側偏光板4R、4G、4Bに対面して平行に配設され、さらに、各レーザ光の輝度を均一化するためのインテグレータ(フライアイレンズ)7R、7G、7Bがコンデンサレンズ6R、6G、6Bに対面して平行に配設されている。前記インテグレータ7Rは光源エレメント8から赤色レーザ光を入射し、インテグレータ7Gは光源エレメント9から緑色レーザ光を入射し、インテグレータ7Bは光源エレメント10から青色レーザ光を入射する。
【0026】
前記各光源エレメント8、9、10は全て同一に構成されるもので、熱伝導性に優れた金属により形成された受熱板8a、9a、10aの先端に、数10個以上の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bを、例えば、熱伝導性接着剤により固定する。なお、例えば、半導体レーザ素子アレイ8bからは赤色の波長帯域である650nm近辺、半導体レーザ素子アレイ9bからは緑色の波長帯域である550nm近辺、半導体レーザ素子アレイ10bからは青色の波長帯域である440nm近辺のレーザ光が出射される。
【0027】
このように構成された半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bから出射される各原色のレーザ光は、合成プリズム2へ所定の光量で入射するようにしなければならない。したがって、各原色毎の個々の半導体レーザ素子の発光量を配慮し、配列する素子数を定めたり、あるいは駆動電流を3原色毎に設定して供給することは設計上の課題として重要となる。
【0028】
光源エレメント8、9、10は以上のように構成され、図2に示すように同一原色の照射範囲内に同一原色を発光する複数の光源エレメント8、9、10が合成プリズム2の照射面2R、2G、2Bに向けて階層状に配置される。同図では、合成プリズム2の照射面2Bに向けて青色を発光する光源エレメント10の配置状態を例示しているが、赤色を発光する光源エレメント8および緑色を発光する光源エレメント9も各々照射面2R、2Gに向けて同様に配置される。なお、階層間の光源エレメント8、9、10は、照射光が分散されるように千鳥状などの配置状態とすることを要する。
【0029】
このように構成された光源ユニット1を駆動すると、光源エレメント8、9、10から3原色のレーザ光が合成プリズム2の照射面2R、2G、2Bに向けて出射される。そして、各色レーザ光の輝度はインテグレータ7R、7G、7Bにおいて均一化され、さらに、コンデンサレンズ6R、6G、6Bにおいて照度分布が均一となり、入射側偏光板4R、4G、4Bへ入射する。
【0030】
このようにして均一化された3原色の各レーザ光は、液晶パネル3R、3G、3Bへ入射し、画像を形成するため階調(強度)変調され、出射側偏光板5R、5G、5Bを介して合成プリズム2へ入射する。階調変調された3原色のレーザ光は、この合成プリズム2において合成される。そして、この投写光は出射面2Sから出射し、投写レンズLを介してスクリーンに投影される。
【0031】
前記光源エレメント8、9、10が、受熱板8a、9a、10aに半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bを熱伝導性接着剤により接着、あるいはネジ止めされるような場合、接合面での接触性の具合により接触熱抵抗に誤差が生じる。また、受熱板8a、9a、10aから最終放熱先の外気(空冷の場合)に至る経路においても接合面や固体内熱伝達による熱抵抗の差が生じる。これらの熱抵抗の差は、各受熱板8a、9a、10aや半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bの温度を不均一にする要因となる。この状態で半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bを発光させると、熱的条件の相違から発光量が均一とならなくなり、寿命も相違してくることになる。
【0032】
そこで、図3に示すように光源エレメント8、9、10の全ての受熱板8a、9a、10aに電熱ヒータ20および温度センサ21を配設し、この電熱ヒータ20と温度センサ21をリード線L1、L2により制御装置22に接続する。そして、前記受熱板8a、9a、10aは、冷却手段となる冷凍機23から延設され、合成プリズム2の照射面2R、2G、2Bへ各別に対面する冷媒回路24R、24G、24B中に設けられた吸熱器(蒸発器)25に熱伝導性接着剤などの適宜手段により固定され、受熱板8a、9a、10aの熱が吸熱器25に吸収されるようにしている。
【0033】
図4は前記冷凍機23内の冷媒回路の例を示すもので、冷媒圧縮機23a、凝縮器23b、減圧器23R、23G、23B、吸熱器25、アキュームレータ23cの順で環状に接続されている。この冷媒回路の冷媒圧縮機23aで圧縮された高温高圧のガス冷媒は、凝縮器23bの送風ファン23dにて外気(空冷の場合)と熱交換して凝縮し、液冷媒となる。次いで、減圧器23R、23G、23Bにて低温低圧となった冷媒は、吸熱器25にて蒸発する。この際の吸熱作用により受熱板8a、9a、10aの冷却が行われる。なお、減圧器23R、23G、23Bにおいて冷媒の絞り量を調整することや送風ファン23dの風量を調整すること、さらに冷媒圧縮機23aの回転数を調整することにより各原色毎の吸熱器25の冷却能力を調整することができる。
【0034】
さらに、前記光源エレメント8、9、10の温度センサ21からの信号を入力し、前記電熱ヒータ20の発熱制御および前記減圧器23R、23G、23Bによる冷媒の流量調整制御および冷媒圧縮機23aの回転制御を行う制御装置22を備え、受熱板8a、9a、10aの冷却および加熱の相互の制御が可能となるようにし、全ての半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bがレーザ動作設定温度に定まるようにしている。
【0035】
ここで、本発明におけるシステムの処理の流れを図5に基づいて以下に説明する。投写型映像表示装置Pを起動する以前においては、光源エレメント8、9、10の温度Tは環境温度に同化しており、例えば、環境温度が26℃であると図6に示すように、全ての光源エレメント8、9、10は26℃となっている。なお、同図においては、理解を容易とするため、青色の光源エレメント10を代表例として例示し、枝番号により個々の光源エレメント10の温度状態が把握できるようにしている。また、光源エレメント8、9、10の温度は、各温度センサ21の検出信号を入力する制御装置22において個々に把握される。
【0036】
かかる状態において本発明の投写型映像表示装置Pを起動させると(ステップSa1)、温度センサ21により光源エレメント8、9、10の温度Tの状態を確認し(ステップSa2)、この温度Tと制御装置22に予め設定されたレーザ動作設定温度Ta(例えば、20℃)が比較される(ステップSa3)。この段階で温度Tがレーザ動作設定温度Ta以上である場合、光源エレメント8、9、10を昇温するための電熱ヒータ20は作動することなく(ステップSa4)、冷凍機23の駆動(除熱運転)が開始される(ステップSa5)。
【0037】
温度Tがレーザ動作設定温度Ta未満である場合は、光源エレメント8、9、10を昇温するための電熱ヒータ20を作動させる(ステップSa9)。なお、前記レーザ動作設定温度Taは許容誤差温度(例えば、1〜5℃)を加えた値でもよく、温度Tは任意に定めた温度センサ21から検出されたものでよく、その場合は全ての温度センサ21から検出された温度を確認しなくてよい。
【0038】
このようにして、冷凍機23が駆動を開始すると、光源エレメント8、9、10がレーザ動作設定温度Taとなるように冷凍機23を制御する。このようにして吸熱器25に供給される。吸熱器25は光源エレメント8、9、10を冷却することにより半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bは包括的に冷却される。この間、温度センサ21により光源エレメント8、9、10の温度Tの状態を確認し(ステップSa6)、レーザ動作設定温度Taと比較する(ステップSa7)。
【0039】
そして、ステップSa7において温度Tとレーザ動作設定温度Taが一致すると、ここで半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bに電源が投入され、発光が開始されることになる(ステップSa8)。このようにして、半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bの発光が開始されると、その直後の温度状態は前述したような熱抵抗の差などがあると、図7に例示すように各光源エレメント10−1〜10−nの間で温度の差異が生じる。
【0040】
かかる状態で半導体レーザ素子アレイ8b、9b、10bが発光すると、その発熱で各光源エレメント10−1〜10−nは図8に示すごとくほぼ一律に温度が上昇し、目標とするレーザ動作設定温度(20℃)から外れた状態となる。そこで、制御装置22は、同一の冷媒回路に接続されている複数の光源エレメント8、9、10において、最高温度値を抽出し、この最高温度(図8に示す例では、光源エレメント10−4の24℃)をレーザ動作設定温度(20℃)まで降下すべく、冷凍機23を制御して冷却能力を高くする。
【0041】
この結果、図9に示すように光源エレメント10−4をレーザ動作設定温度の20℃に一致させることができるが、その他の各光源エレメントも一律に温度が降下するため、レーザ動作設定温度の20℃から1℃乃至4℃の温度降下が生じてしまうことになる。そこで、制御装置22は、各光源エレメント8、9、10の温度センサ21により検出した温度値とレーザ動作設定温度(20℃)を比較し、該当する光源エレメントの温度がレーザ動作設定温度(20℃)が維持されるように電熱ヒータ20に電流を流し、光源エレメントを昇温する。
【0042】
即ち、図9において、例えば、光源エレメント10−1はレーザ動作設定温度(20℃)より4℃低い状態となるため、制御装置22は電熱ヒータ20により4℃昇温し、光源エレメント10−2は1℃昇温することになる。このようにして、光源エレメント10−4以外の光源エレメントの温度が補完され、図10に示すように全ての光源エレメント10−1〜10−nを目標のレーザ動作設定温度(20℃)に定めることができる。
【0043】
このように、同一の冷媒配管に接続された光源エレメントを冷却するにあたり、特定の光源エレメントが示した最高温度値を冷凍機により目標のレーザ動作設定温度まで降下させ、これ以外の光源エレメントを電熱ヒータにより昇温するとともに、光源エレメントの温度Tとレーザ動作設定温度Taが常に照合される状態にあるため、装置の起動時において半導体レーザ素子アレイの発光により温度に変化が生じた場合においても正確な温度制御が可能となる。
【0044】
本発明はこのように構成されていることから、装置の起動にあたり光源エレメントを予め冷却し、しかる後、半導体レーザ素子アレイを発光するようにしたので、半導体レーザ素子アレイの発光に伴う発熱による温度急上昇を抑え、温度制御と装置が正常に動作するまでの時間を短縮できるとともに、半導体レーザ素子アレイの保護を同時に実現することが可能となるなど特有の効果を奏する。
【0045】
なお、上述した実施例では、透過型液晶パネルを採用した例について説明したが、これに代わる表示素子として、例えば、反射型液晶パネルを用いて3板式あるいは単板式で光源ユニットを構成した場合においても、同等の効果を奏することができる。また、本発明はDLP( Digital Light Processing )に採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の光源ユニットの基本的構成を示す平面図である。
【図2】本発明の光源ユニットの組立状態を示す斜視図である。
【図3】本発明のシステム構成を示す図である。
【図4】本発明に採用する冷却手段の例を示す図である。
【図5】本発明におけるシステムの処理流れを説明する図である。
【図6】本発明における光源エレメントの冷却の態様を説明する図である。
【図7】本発明における光源エレメントの冷却の態様を説明する図である。
【図8】本発明における光源エレメントの冷却の態様を説明する図である。
【図9】本発明における光源エレメントの冷却の態様を説明する図である。
【図10】本発明における光源エレメントの冷却の態様を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
P・・・・・投写型映像表示装置
L・・・・・投写レンズ
1・・・・・光源ユニット
2・・・・・合成プリズム
3R、3G、3B・・・・・液晶パネル
4R、4G、4B・・・・・入射側偏光板
5R、5G、5B・・・・・出射側偏光板
6R、6G、6B・・・・・コンデンサレンズ
7R、7G、7B・・・・・インテグレータ
8、9、10・・・・・光源エレメント
8a、9a、10a・・・・・受熱板
8b、9b、10b・・・・・半導体レーザ素子アレイ
20・・・・・電熱ヒータ
21・・・・・温度センサ
22・・・・・制御装置
23・・・・・冷凍機
24R、24G、24B・・・・・冷媒回路
25・・・・・吸熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3原色のレーザ光を画像情報により変調して合成することにより投写光が得られるようにした投写型映像表示装置であり、
同一基板上に複数の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイを受熱板に配設し、且つ、該受熱板に電熱ヒータおよび半導体レーザ素子アレイの温度検出手段(温度センサ)を配設してなる複数の光源エレメントを、3原色毎に合成プリズムの照射面に導光するように、階層状に配置して光源ユニットを構成し、
前記光源エレメントを冷却手段に接続するとともに、電熱ヒータおよび温度センサを制御手段に接続してなり、
該制御手段により前記温度センサの温度と予め設定されているレーザ動作設定温度とを比較することにより、半導体レーザ素子アレイの作動時期を決定するようにしたことを特徴とする投写型映像表示装置の起動システム。
【請求項2】
前記温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度以上であるとき、直ちに前記冷却手段を駆動して半導体レーザ素子アレイを降温し、しかる後、温度センサがレーザ動作設定温度を検知した時点において半導体レーザ素子アレイを作動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の投写型映像表示装置の起動システム。
【請求項3】
前記温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度以下にあるとき、直ちに前記電熱ヒータにより半導体レーザ素子アレイを昇温し、一方温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度を超えていることを検知した時点において前記冷却手段を駆動し、半導体レーザ素子アレイをレーザ動作設定温度にまで降温した段階で半導体レーザ素子アレイを作動するようにしたことを特徴とする請求項1記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
3原色のレーザ光を画像情報により変調して合成することにより投写光が得られるようにした投写型映像表示装置であり、
同一基板上に複数の半導体レーザ素子を配列した半導体レーザ素子アレイを受熱板に配設し、且つ、該受熱板に電熱ヒータおよび半導体レーザ素子アレイの温度検出手段(温度センサ)を配設してなる複数の光源エレメントを、3原色毎に合成プリズムの照射面に導光するように、階層状に配置して光源ユニットを構成し、
前記光源エレメントを冷却手段に接続するとともに、電熱ヒータおよび温度センサを制御手段に接続してなり、
前記温度センサが検知する温度がレーザ動作設定温度以上であるとき、直ちに前記冷却手段を駆動して半導体レーザ素子アレイを降温し、しかる後、温度センサがレーザ動作設定温度を検知した時点において半導体レーザ素子アレイを作動するようになし、
該半導体レーザ素子アレイが作動された後、各光源エレメントから温度センサにより得られた各温度値において最高温度値を示した光源エレメントが所望のレーザ動作設定温度となるように冷却手段を制御する一方、その他の光源エレメントを各々の電熱ヒータにて昇温することにより所望のレーザ動作設定温度となるようにしたことを特徴とする投写型映像表示装置の起動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−86272(P2009−86272A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255733(P2007−255733)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】