説明

抗しわ化粧品組成物

【課題】しわ、特に表情じわに抗するための、及び/又は皮膚を弛緩させるための、及び/又は皮膚の線を弱めるための薬剤の提供。
【解決手段】少なくても1種の下記式(I)のアデノシン誘導体及びその塩、光学異性体、並びに溶媒和物。また本化合物を含有する化粧料および美容のための使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アデノシン誘導体を含有する組成物の皮膚への局所適用を含む、しわのある皮膚の化粧処置方法に関する。本発明はまた、新規なアデノシン誘導体に関する
【背景技術】
【0002】
女性、さらに男性でさえ、現在、可能な限り長く若く見えることを望んでおり、したがって、特にしわと小じわによって現れる皮膚の老化の表れを和らげることを望んでいる。これに関し、宣伝広告及びファッション関係は、可能な限り長い間美しく、しわのない皮膚を保つことを目的とした製品例を提供している。これらは若い皮膚のしるしであり、なおさらのこと、身体的外観は心と気力に影響を及ぼす。
【0003】
今日まで、しわ及び小じわは、例えば、皮膚細胞の交代の改善又はそれに代えて細胞合成の促進によって、あるいは皮膚組織を構成する弾性繊維の分解を防止することによって皮膚に作用する活性成分を含む化粧品を用いて処置されている。
【0004】
これらの処置は、暦年齢あるいは内因的老化によるしわ及び小じわに、及び光老化によるしわ及び小じわに作用することを可能にするが、表情じわへの作用はせず、それには(筋弛緩剤による)しわの筋収縮性成分への、あるいは(皮膚弛緩剤による)しわの皮膚収縮成分への作用を必要とする。
【0005】
これは、表情じわが、老化によってしわを生成する機構とは異なる機構の結果だからである。
【0006】
詳細には、表情じわは、顔の表情を可能にする広頚筋によって皮膚に作用したストレスの影響で生じる。顔の形に応じ、顔の表情及び場合によりチックの頻度に応じて、表情じわは幼年期から現れうる。年齢、並びに特定の環境因子、例えば、日光への暴露、は表情じわの発生に関与しないが、それらをさらに深くし、それらに永久性を付与しうる。
【0007】
表情じわは、鼻(nasogenian groove)、口(頬側しわ及び「苦虫をかみつぶしたような」しわ)、及び目(カラスのあしあと)の近くに形成される、開口部周囲(鼻唇溝)、(これらの周りには広頚筋がある)、及び眉毛の間(眉間じわ、あるいは「ライオン」じわ)の溝の存在によって特徴づけられる。
【0008】
今日まで、表情じわに作用させるために一般に用いられている唯一の手段は、ボツリヌス毒素であり、これは、特に、眉毛の間のしわである眉間じわに注入される(J.D.Carrutersら、J. Dermatol. Surg. Oncol., 1992, 18, pp. 17-21を参照されたい)。
【特許文献1】国際公開WO2004/037159
【非特許文献1】J.D.Carrutersら、J. Dermatol. Surg. Oncol., 1992, 18, pp. 17-21.
【非特許文献2】Helvetica Chimica Acta, 1993 (vol. 76), 2367.
【非特許文献3】Poppe, L. et al., Helvetica Chimica Acta (1993), 76(6), 2367-83.
【非特許文献4】Jones, A.S. et al., Journal of the Chemical Society [Section] C: Organic (1971), (19), 3183-7.
【非特許文献5】Mornet, D. et al., FEBS Letters (1977), 84(2), 362-6.
【非特許文献6】Huber Gerhard, Chem. Ber., 89, 2853-62 (1956);ref. CA52:2027g.
【非特許文献7】Takemoto, K. et al., Polymeric Materials Science and Engineering (1988), 58, 250-3.
【非特許文献8】Purkayastha, Bhupesh C.; Bhattacharyya, S.N., J. Indian Chem. Soc., 34, 427-33 (1957) (CA52:2627hを参照されたい)
【非特許文献9】Peterli, Stefan et al., Helvetica Chimica Acta (1992), 75(3), 696-706.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
さらに、本出願人は、皮膚に局所的に適用された場合に、別の経路を介して表情じわに作用することのできる抗しわ効果を提供しうる様々な化合物を提供してきた。
【0010】
しかし、しわ、特に表情じわを滑らかにし、あるいは和らげるのに有効なその他の化合物を入手可能にすることがなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実際、本発明者は驚くべきことに、特定のアデノシン誘導体が、上記の要求を満たすことを可能にすることを発見した。
【0012】
したがって、本発明の主題は、しわ、特に、表情じわに抗するための薬剤、及び/又は皮膚の線を緩和させるするための薬剤としての、下記式(I)のアデノシン誘導体、その塩、光学異性体、及び溶媒和物のうち少なくとも1つの美容のための使用である。
【化1】

式中:
−(a)R及びRは、同一であり、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を示すか、又はR及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;かつ、
は:
(i)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表し、これらの基は任意選択で、―OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい);又は、
(ii)ビオチンに由来するエステル基、
を表し、あるいは、
−(b)R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成し;かつ、Rは任意選択により、―OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜C10もしくは不飽和直鎖状C〜C10又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C10炭化水素基を表し;
ここで、R’及びR’’は、水素原子、又は、任意選択で−OZ、−NZZ’、又は−COOZから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す(ここで、Z及びZ’は、互いに独立して、水素原子、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す)。
【0013】
本発明のさらなる主題は、しわのある皮膚、特に顔及び/又は額の皮膚の美容のための処置方法であって、生理学的に許容可能な媒体中に少なくとも1種の上で定義した式(I)のアデノシン誘導体を含む組成物を、前記皮膚に局所適用することを含む方法である。
【0014】
2’,3’−イソプロピリデン−5’−アセチルアデノシンは、公知の化合物であり、特に国際出願WO-A-2004/037159中で、肥満治療のための医薬組成物の中に記載されている(化合物265、203頁)。この文献は、特に、しわの処置のためにその組成物を皮膚へ適用することを記載していない。
【0015】
本発明の別の主題は、生理学的に許容可能な媒体中に、下記式(II)のアデノシン誘導体、及びその塩、光学異性体、並びに溶媒和物のうち、少なくとも1種を含む組成物である。
【化2】

式中:
−(a)R及びRは、同一であり、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を示すか、又はR及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;かつ、
は:
(i)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、―OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい);又は、
(ii)ビオチンに由来するエステル基、
を表し、あるいは、
−(b)R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成し;かつ、Rは任意選択により、―OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜C10もしくは不飽和直鎖状C〜C10又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C10炭化水素基を表し;
ここで、R’及びR’’は、水素原子、又は、任意選択により−OZ、−NZZ’、又は−COOZから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す(ここで、Z及びZ’は、互いに独立して、水素原子、又は、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す)。
【0016】
式(I)の化合物のいくつかは、先行技術において公知であり、以下の文献に記載されている。
- WO-A-2004/037159;
- Poppe, L. et al.; “Synthesis and characterization of (5’-deoxyadenosin-5’-yl)cobalamin (= ‘adenosyl-cobalamin’) analogs mimicking the transition-state geometry of coenzyme-B12-dependent rearrengements”(コエンザイムB12依存性転位の遷移状態配置をまねる(5’-デオキシアデノシン-5’-イル)コバラミン(=アデノシルコバラミン)アナログの合成と特性分析; Helvetica Chimica Acta (1993), 76(6), 2367-83;
- Jones, A.S. et al.; “Synthesic analogs of polynucleotides. VII. Synthesis of 5’-O-acryloylnucleosides and copolymers of these with other acryloyl compounds”(ポリヌクレオチドの合成アナログ VII. 5’-O-アクリロイルヌクレオシド類及びそれらと別のアクリロイル化合物のコポリマー); Journal of the Chemical Society [Section] C: Organic (1971), (19), 3183-7;
- Mornet, D. et al.; “The reaction of myosin with a bromoalkyl analog of adenosine triphosphate”(アデノシン三リン酸のブロモアルキルアナログとミオシンの反応); FEBS Letters (1977), 84(2), 362-6;
- Huber Gerhard; “Esters of adenosine with organic and inorganic acids”(有機及び無機酸とアデノシンとのエステル); Chem. Ber., 89, 2853-62 (1956);ref. CA52:2027g;
- Takemoto, K. et al.; “Nucleic acid analogs: their specific interaction and applicability”(核酸アナログ:それらの特異的相互作用及び適用可能性); Polymeric Materials Science and Engineering (1988), 58, 250-3;
- Purkayastha, Bhupesh C.; Bhattacharyya, S.N.; “Use of Ca oxalate monohydrate in the investigation of rare earth and thorium activities”(希土類及びトリウム活性の研究におけるシュウ酸カルシウム一水和物の使用); J. Indian Chem. Soc., 34, 427-33 (1957);ref. CA52:2627h;
- Peterli, Stefan et al.; “Nitrostyrene derivatives of adenosine 5’-glutarates as selective inhibitors of the epidermal growth factor receptor protein tyrosine kinase”(皮膚成長因子受容体タンパク質チロシンキナーゼの選択的阻害剤としての、アデノシン5’-グルタレートのニトロスチレン誘導体); Helvetica Chimica Acta (1992), 75(3), 696-706.

Asselineau et al., Exp. Cell. Res., 1985, 159, 536-539; Models in Dermatology, 1987, vol.3, pp. 1-7
【0017】
本発明のさらなる主題は下記式(III)の新規化合物及びそれらの塩、光学異性体、並びに溶媒和物である。
【化3】

式中:
−(a)R及びRは、同一であり、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を示すか、又はR及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;
は:
(i)−COR基(Rは、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C炭化水素基もしくは分枝状C〜C炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、―OR’、−NR’R’’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよく、但しRは2−アミノエチル基ではない);又は、
(ii)ビオチンに由来するエステル基、
を表し、あるいは、
−(b)R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成し;かつ、Rは、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C10炭化水素基もしくは分枝状C〜C10炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい);
ここで、R’及びR’’は、水素原子、又は、任意選択により−OZ、−NZZ’、又は−COOZから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C基を表す(ここで、Z及びZ’は、互いに独立して、水素原子、又は、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す)。
【0018】
式(I)中、上記炭化水素(又はアルキル)基は、特に、場合によっては、以下の群から選択できる:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、又はデシル。
【0019】
上述した式(I)〜(III)において好ましいR及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒に、イソプロピリデン基を形成しているものである。
【0020】
式(I)の化合物については以下の意味を有する化合物が好ましい。
- R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
- Rは:
(i)飽和直鎖状C〜C10もしくは不飽和直鎖状C〜C10又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C10炭化水素基;又は、
(ii)−COR基(Rは、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C炭化水素基もしくは分枝状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0021】
以下の式(I)の化合物を用いることが好ましい。
- R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
- Rは:
(i)直鎖状C〜C10炭化水素基;又は、
(ii)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0022】
以下の式(I)の化合物を用いることがさらに好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
- −COR基(Rは、直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
- ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0023】
式(II)の化合物については、以下の意味を有する化合物が好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
(i)飽和直鎖状C〜C10もしくは不飽和直鎖状C〜C10又は飽和もしくは不飽和の分枝状C〜C10炭化水素基;又は
(ii)−COR基(Rは、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C炭化水素基もしくは分枝状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0024】
以下の式(II)の化合物を用いることが好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
(i)直鎖状C〜C10炭化水素基;又は
(ii)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0025】
以下の式(II)の化合物を用いることがさらに好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
- −COR基(Rは、直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
- ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0026】
式(III)の化合物については、以下の意味を有する化合物が好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
(i)飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C10炭化水素基もしくは分枝状C〜C10炭化水素基;又は
(ii)−COR基(Rは、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C炭化水素基もしくは分枝状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0027】
以下の式(III)の化合物を用いることが好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
(i)直鎖状C〜C10炭化水素基;又は
(ii)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0028】
以下の式(III)の化合物を用いることがさらに好ましい。
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成する;
は:
- −COR基(Rは、直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
- ビオチンに由来するエステル基
を表す。
【0029】
式(I)〜(III)の化合物の塩としては、特に、塩酸、硫酸、及びリン酸から選択される無機酸と、又は、特に、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、及び酒石酸から選択される有機酸と、式(I)、(II)、又は(III)の化合物との付加によって得られる塩が挙げられる。
【0030】
式(I)、(II)、又は(III)の塩は、塩酸又は酢酸又はクエン酸から選択される酸との塩から選択されることが好ましい。
【0031】
化合物(I)、(II)、又は(III)は、R、R、及びRの基の意味に応じて、以下に示す4つの合成方法の一つによって調製できる。
【0032】
[第一の方法]
=RかつRが上に定義した炭化水素基を表す式(I)の化合物は、特に、以下の反応スキームIにしたがって調製できる。
【化4】

【0033】
上記合成方法は、特に、Helvetica Chimica Acta, 1993 (vol. 76), 2367頁に記載されている。
【0034】
第1段階により、イソプロピリデンアデノシンをクロロトリメチルシランと、特にピリジン中で反応させ、次いで1.2モル当量のベンゾイルクロライドを加える。対応するN−ベンゾイル誘導体の形成後、酸性媒体中で、水/メタノール混合物中のフッ化ナトリウムを加える。
【0035】
第2段階により、ジメチルホルムアミド中の水素化ナトリウムを、得られた上記化合物に添加し、さらに、式ROTsのトシレート(Tsはトシル基を表す)又は式RXのハロゲン化合物(XはCl、Br、又はIを表す)を添加する。
【0036】
第3段階により、10%塩酸水溶液及びメタノールを加え、混合物を10分間還流させる。
【0037】
第4段階により、ジメチルホルムアミド中の水素化ナトリウム、次に2モル当量の式ROTs(Tsはトシル基を表す)のトシレート化合物又は2モル当量の式RX(XはCl、Br、又はIを表す)のハロゲン化合物を加える。
【0038】
第5段階により、メタノール中の触媒量のナトリウムメトキシドを加える。
【0039】
[第二の方法]
及びRが一緒になってイソプロピリデン基を形成し、Rが上で定義した炭化水素基を表す式(I)の化合物は、特に、以下の反応スキームIIにしたがって調製できる。
【化5】

【0040】
第1段階により、イソプロピリデンアデノシンを、クロロトリメチルシランと、特にピリジン中で反応させ、次に1.2モル当量のベンゾイルクロライドを添加する。対応するN−ベンゾイル誘導体の形成後、酸性媒体中、水/メタノール混合物中のフッ化ナトリウムを添加する。
【0041】
第2段階により、ジメチルホルムアミド中の水素化ナトリウムを、得られた上記化合物に添加し、さらに、式ROTsのトシレート(Tsはトシル基を表す)又は式RXのハロゲン化合物(XはCl、Br、又はIを表す)を添加する。
【0042】
第3段階により、メタノール中の触媒量のナトリウムメトキシドを加える。
【0043】
[第三の方法]
=Rであって炭化水素基を表し、Rが上で定義したように−COR基もしくはビオチンに由来するエステル基を表す式(I)の化合物は、特に、以下の反応スキームIIIにしたがって調製できる。
【化6】

【0044】
第1段階により、イソプロピリデンアデノシンを2.1モル当量のベンゾイルクロライドと、特にピリジン中で反応させる。
【0045】
次に、第2段階により、10%塩酸水溶液及びメタノールを加え、混合物を10分間還流させる。
【0046】
第3段階により、ジメチルホルムアミド中の水素化ナトリウム、次に、2モル当量の式RX(XはCl、Br、又はIを表す)のハロゲン化合物を加える。
【0047】
第4段階により、メタノール中の触媒量のナトリウムメトキシドを加える。
【0048】
第5段階により、式RCOOHの有機酸を、約40℃の温度で、ジメチルホルムアミド中、カルボニルジイミダゾールの存在下に添加する。
【0049】
[第四の方法]
及びRが一緒になってイソプロピリデン基を形成し、Rが上で定義したように−COR基もしくはビオチンに由来するエステル基を表す式(I)の化合物は、特に、以下の反応スキームIVにしたがって調製できる。
【化7】

【0050】
カルボン酸RCOOHを、ジメチルホルムアミド中、カルボジイミド(CDI)の存在下で、約40℃の温度で反応させ、さらにイソプロピリデンアデノシンを添加する。
【0051】
式(III)(これは上述した式(I)及び(II)の化合物の一部をも構成する)の新規化合物として、以下の化合物が挙げられる。
【0052】
化合物A:2’,3’-イソプロピリデン-5’-ブタノイルアデノシン
【化8】

【0053】
化合物B:2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクタノイルアデノシン
【化9】

【0054】
化合物C:2’,3’-イソプロピリデン-5’-ビオチノイルアデノシン
【化10】

【0055】
化合物D:2’,3’-イソプロピリデン-5’-エチルアデノシン
【化11】

【0056】
化合物E:2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクチルアデノシン
【化12】

【0057】
化合物F:2’,3’-ジメチル-5’-ブタノイルアデノシン
【化13】

【0058】
式(I)の化合物の一部を構成する公知の化合物として、下記化合物Gが挙げられる。
化合物G:2’,3’-イソプロピリデン-5’-アセチルアデノシン(CAS No. 15888-38-7)
【化14】

【0059】
本発明にしたがって用いることができるアデノシン誘導体の量は、もちろん、所望する効果に左右され、広範囲に変動しうる。
【0060】
量の程度を示すと、これらの誘導体は本組成物の総重量の0.01%〜10%に相当する量で、好ましくは本組成物の総重量の0.05%〜5%に相当する量で、さらに好ましくは本組成物の0.1%〜2%に相当する量で用いることができる。
【0061】
本発明の組成物は、皮膚への局所適用用として適しており、生理学的に許容可能な媒体、すなわち、皮膚、及び場合によってはその表面の身体的増殖物(睫毛、爪、毛髪)、及び/又は粘膜に適合性の媒体、を含有する。この媒体は、化粧品として許容可能、すなわち、それが、使用者に本組成物を使用することを躊躇させるかゆみ、ヒリヒリ感、又は発赤をもたらさず、心地よい外観、におい、及び感触を示すことが有利である。
【0062】
この組成物は、化粧品分野で通常用いられる全ての剤形で提供されることができ、特に、任意にゲル化されていてもよい溶液、任意に2相分散液の形態であってもよいローションタイプ、水性相中に脂肪相を分散させて得られるエマルション(O/W)又はその逆(W/O)又はトリプルエマルション(W/O/W、又はO/W/O)、あるいは、イオン性及び/又は非イオン性タイプのベシクル分散液の形態であることができる。これらの組成物は、通常の方法にしたがって調製される。本発明によれば、水中油型エマルションの形態の組成物を用いることが好ましい。
【0063】
この組成物は多かれ少なかれ液状であり、白色もしくは着色された、クリーム、軟膏、乳液、ローション、美容液(セラム)、ペースト、又はフォームの外観を有することができる。任意選択によりエアロゾル形態で適用することもできる。本組成物は、固体形態、特に、スティック形態で提供されることもできる。本組成物は、皮膚用のケア製品及び/又はメークアップ製品として用いることができる。
【0064】
公知の方法で、本発明に用いる組成物は、化粧品分野で一般的な補助剤、例えば、オイル、ワックス、乳化剤、ゲル化剤、皮膜形成ポリマー、保存料、香料、充填剤、UVスクリーニング剤、殺菌剤、におい吸収剤、染料、親水性もしくは親油性活性成分、植物抽出物、又は酸化防止剤、などを含むこともできる。これらの様々な補助剤の量は、考慮している分野において従来用いられている量であり、例えば、組成物の総重量の0.01〜20%である。これらの補助剤は、それらの性質に応じて、脂肪相中に、水性相中に、又は脂質ベシクル中に導入できる。いずれの場合も、これらの補助剤及びその割合は、本発明の化合物に対して所望される特性を害しないように選択する。
【0065】
本発明にしたがって用いられる組成物がエマルションである場合は、脂肪相の割合は組成物の総重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲であることができる。エマルション形態の組成物中で用いられるオイル、乳化剤、及び共乳化剤は、考慮している分野で従来用いられているものから選択される。乳化剤及び共乳化剤は、本組成物中に、組成物の総重量に対して0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の割合で存在する。
【0066】
本発明で用いることができるオイルとしては、鉱物油(液体ペトロラタム)、植物由来のオイル(アボカドオイル、大豆油)、動物由来のオイル(ラノリン)、合成油(パーヒドロスクアレン)、シリコーンオイル(シクロメチコーン)、及びフッ素化油(パーフルオロポリエーテル)が挙げられる。脂肪物質として、脂肪アルコール類(セチルアルコール)、脂肪酸、又はワックス(カルナウバワックス、オゾケライト)も使用できる。
【0067】
本発明において用いることができる乳化剤及び共乳化剤としては、例えば、脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、例えば、PEG−100ステアレート、及び脂肪酸とグリセロールのエステル、例えば、グリセリルステアレート、が挙げられる。
【0068】
親水性ゲル化剤/増粘剤としては、カルボキシビニルポリマー(カーボマー)、アクリルコポリマー類(例えば、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマー)、ポリアクリルアミド類、多糖類、天然ガム、及びクレーを特に挙げることができ、親油性ゲル化剤/増粘剤としては、変性クレー(例えば、ベントン)、脂肪酸の金属塩、及び疎水性シリカを挙げることができる。
【0069】
活性成分としては、本発明にしたがって用いられる組成物中に、以下のものから選択される少なくとも1種の化合物を導入することが有利である:
落屑剤;保湿剤;抗グリコシル化剤;NO合成酵素阻害剤;真皮又は表皮高分子の合成を促進する及び/またはそれらの分解を阻害する薬剤;線維芽細胞及び/又はケラチノサイトの増殖を促進し、及び/又はケラチノサイトの分化を促進する薬剤;その他の筋弛緩剤及び/又は皮膚弛緩剤;引き締め剤;汚れもしくはフリーラジカルに対抗するための薬剤;微小循環に作用する薬剤;細胞のエネルギー代謝に作用する薬剤;及びそれらの混合物。
【0070】
そのような追加の化合物の例は、レチノール及びその誘導体(例えば、レチニルパルミテート);アスコルビン酸及びその誘導体(例えば、アスコルビルリン酸マグネシウム、及びアスコルビルグルコシド);トコフェロール及びその誘導体(例えば、酢酸トコフェロール);ニコチン酸及びその前駆体(例えば、ニコチンアミド);ユビキノン−e;グルタチオン及びその前駆体(例えば、L-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸);植物抽出物、及び特に植物タンパク質及びそれらの加水分解物、及び植物ホルモン;海産物抽出物(例えば、藻類抽出物);微生物抽出物;サポゲニン(例えば、ジオスゲニン、及びジオスゲニンを含む天然ヤムイモ抽出物);セラミド類;ヒドロキシ酸(例えば、サリチル酸及び5-(n-オクタノイル)サリチル酸;レスベラトロール;オリゴペプチド及びシュードペプチド及びそれらのアシル化誘導体;マンガン塩及びマグネシウム塩、特にグルコネート;並びにそれらの混合物、である。
【0071】
上に示したように、本発明の組成物は、さらに、UV−A及び/又はUV−B領域に活性な光保護剤を、有機化合物又は無機化合物の形態で含むことができ、後者は任意選択でそれらに疎水性を付与するためにコーティングされていてもよい。
【0072】
有機光保護剤は、特に以下のものから選択できる:
アントラニレート、特に、メンチルアントラニレート;ベンゾエート類、特に、ベンゾフェノン−1、ベンゾフェノン−3、ベンゾフェノン−5、ベンゾフェノン−6、ベンゾフェノン−8、ベンゾフェノン−9、ベンゾフェノン−12、及び好ましくは、ベンゾフェノン−3(オキシベンゾン)又はベンゾフェノン−4(Uvinul MS40、BASF社から入手可能);ベンジリデンカンファー類、特に、3−ベンジリデンカンファー、ベンジリデンカンファースルホン酸、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、テレフタリリデンジカンファースルホン酸、及び、好ましくは、4−メチルベンジリデンカンファー(Eusolex 6300、Merck社から入手可能);ベンゾイミダゾール類、特に、ベンゾイミダジレート(Neo Heliopan AP、Haarmann and Reimer社から入手可能)又はフェニルベンゾイミダゾールスルホン酸(Eusolex 232、Merck社から入手可能);ベンゾトリアゾール類、特に、ドロメトリゾールトリシロキサン又はメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(Tinosorb M、Ciba社から入手可能);シンナメート類、特に、シノキセート、DEAメトキシシンナメート、ジイソプロピルメチルシンナメート、グリセリルエチルヘキサノエートジメトキシシンナメート、イソプロピルメトキシシンナメート、イソアミルシンナメート、及び好ましくは、エトクリレン(Uvinul N35、BASF社より入手可能)、オクチルメトキシシンナメート(Parsol MCX、Hoffmann-LaRoche社より入手可能)、又はオクトクリレン(Uvinul 539、BASF社より入手可能);ジベンゾイルメタン類、特に、ブチルメトキシジベンゾイルメタン(Parsol 1789);イミダゾリン類、特に、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリン;PABA類、特に、エチルジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシルジメチルPABA、グリセリルPABA、PABA、PEG−25PABA、及び好ましくは、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン(Uvasorb HEB、3V Sigma社から入手可能)、エチルヘキシルトリアゾン(Uvinul T150、BASF社から入手可能)、又はエチルPABA(ベンゾカイン);サリシレート類、特に、ジプロピレングリコールサリシレート、エチルヘキシルサリシレート、ホモサレート又はTEAサリシレート;トリアジン類、特に、アニソトリアジン(Tinosorb S、Ciba社から入手可能);又は、ドロメトリゾールトリシロキサン。
【0073】
無機光保護剤は、酸化亜鉛及び/又は二酸化チタンから構成されていることが好ましく、ナノメートルサイズのものが好ましく、任意選択によりアルミナ及び/又はステアリン酸でコーティングされていてもよい。
【0074】
本発明の組成物は、表情じわのある顔及び/又は額の領域に、及び/又は表情じわのある人々に適用されることが意図されていることが有利である。
【0075】
関係あるしわは、口及び/目のまわりに放射状に位置したしわ、特に、からすの足跡、及び/又は額上にあるしわ、特に、眉毛の間の場所の眉間にある「ライオンじわ」、及び/又は額に水平にあるしわであることが好ましい。
【0076】
本発明を以下の非制限的実施例によって説明する。これらの実施例中、量は重量%で示す。
【0077】
[実施例1]2’,3’-イソプロピリデン-5’-ビオチニルアデノシン(化合物C)の合成
【化15】

【0078】
150mLのジメチルホルムアミド、5gのビオチン、及び次に4gのカルボニルジイミダゾール(CDIと記す)を、窒素下で三ツ口フラスコに入れた。この混合物を1時間、40℃に加熱し、次に、6.3gの市販のイソプロピリデンアデノシンを添加し、次に5gのナトリウムアミドを添加した。この溶液を24時間、40℃に加熱した。
ジメチルホルムアミド(DMFと記す)を40℃を超えないようにして留去し、残留物に200mLのジクロロメタンを添加した。
有機相を150mLの水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥するまで真空下で溶媒留去した。
残留物をシリカカラムで精製した。溶離は、ジクロロメタン、次にジクロロメタン95/メタノール5を用いて行って、固体生成物を得、これをジクロロメタンに溶かし、ジエチルエーテルで沈殿させた。
得られた沈殿物を濾別し、エーテルで洗浄し、真空下で乾燥させた。
収率=50%。
【0079】
[分析]
NMR DMSO 13D:スペクトルは合致
元素分析は合致:C 51.3; H 5.89; N 18.2; O 19.03; S 5.92
【0080】
[実施例2]2’,3’-イソプロピリデン-5’-ブタノイルアデノシン(化合物A)の合成
この化合物は、ビオチンの代わりに酪酸を用い、実施例1の方法と同様の方法にしたがって調製した。
【0081】
[実施例3]2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクタノイルアデノシン(化合物B)の合成
この化合物は、ビオチンの代わりにオクチル酸を用い、実施例1の方法と同様の方法にしたがって調製した。
【0082】
[実施例4]2’,3’-イソプロピリデン-5’-エチルアデノシン(化合物D)の合成
【化16】

【0083】
a)クロロトリメチルシラン(1.76g、16.3mmol)を、イソプロピリデンアデノシン(1)(4g、13mmol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(50mg)のピリジン(20mL)溶液に、0℃で、滴下して加えた。
この混合物を0℃で10分間撹拌し、次いで、室温で1時間撹拌した。
ベンゾイルクロライド(1.51mL、13mmol)を添加し、混合物を0℃で10分間撹拌した。
室温で2時間撹拌した後、6/4のメタノール/HO(30mL)、NaF(1g)、及びテトラブチルアンモニウムクロライド(100mg)を添加し、次に、混合物を室温で終夜撹拌しておいた。
この混合物を氷冷水(40mL)で希釈し、約40mLの5N HClでpHを2.5に調節し;CHCl(4×50mL)で抽出後、有機相を、2M HCl(20mL)次に飽和NaHCO溶液(30mL)、次に水で洗浄し、NaSO上で乾燥させた。
溶媒を蒸発させた後、残留物をシリカカラムで精製した。溶離は、3/1のCHCl/アセトンで行った。
2gの化合物(2)が、白色固体の形態で得られた。
【0084】
b)DMF(10mL)中の化合物(2)(500mg、1.2mmol)の溶液を0℃に冷却し、オイル中60%のNaH 245mg(6mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した;105μLのブロモエタンを添加し、氷浴を取り除くことなく2時間、反応を行わせた。15mLの飽和NHCl溶液を添加して処理し、次いでCHClで抽出した。有機相を水、次にNaClで飽和した水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、溶媒を蒸発させた。
650mgの化合物(3)(化合物Dに相当する)をオイルの形態で得た。これをさらに精製することなく以下の段階で用いた。
【0085】
c)25mLの20%NH水(140mmol)を、20mLのメタノール中の化合物(3)(600mg、1.4mmol)の溶液に添加した。
この溶液を60℃で2時間加熱し、次に、冷却後、蒸発させた。
残留物をシリカゲル上で精製した(3/1 CHCH/アセトン)。
200mgの化合物(4)を白色固体の形態で得た。
最後の2つの段階の収率:45%
【0086】
NMR d−DMSO 13C:スペクトルは合致
【0087】
[実施例5]2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクチルアデノシン(化合物E)の合成
この化合物は、エチルブロマイドに代えてオクチルブロマイドを用い、実施例4の方法と同様の方法にしたがって調製した。
【0088】
[実施例6]本発明に用いる化合物の、皮膚弛緩効果の実証
a)試験の原理
正常ヒト線維芽細胞を播いたコラーゲンマトリクスからなる皮膚等価モデルに対する試験品の効果を研究することからなる。
これらの条件は、顔の表情において生じる皮膚収縮現象をインビトロでまねることを意図している。なぜなら、これらの条件下で、細胞は、自発的にコラーゲンゲルの収縮を引き起こす張力を発現するからである。このことは、経時的に上記皮膚等価体の全表面積の減少をもたらす。この表面積の測定が、この皮膚等価体と予め接触させた物質の弛緩効果を評価することを可能にする。
【0089】
b)プロトコル
正常なヒト線維芽細胞を含む添付の皮膚等価体2系列を調製した:いかなる処理もしていない対照系列と、試験化合物(10μM)で処理した系列。試験は3回繰り返した。
【0090】
上記皮膚等価体は、Asselineau et al., Exp. Cell. Res., 1985, 159, 536-539; Models in Dermatology, 1987, vol.3, pp. 1-7 に記載されたように、以下の比率で、調製した。
【0091】
MEM媒体1.76 x, 化合物あり又は無し 45%
ウシ胎仔血清 10%
NaOH (0.1 N) 5%
酢酸(1/1000) 4%
コラーゲン 26%
線維芽細胞 10%
【0092】
処理した皮膚等価体は、対照皮膚等価体と異なり、その中に10μMの試験化合物を添加した。
【0093】
用いたコラーゲンは、I型コラーゲン(市販溶液)である。これは、ウシの皮膚から酸加水分解によって抽出され、酸性媒体中に+4℃で貯蔵されている。これは、37℃に再加熱すること、及びに酸性度の低下によって、自然に重合する。コラーゲンは、水+酢酸の連続浴に対して、予め透析する。
【0094】
プロトコルは以下のとおりである:添加剤(1%グルタミン、1%非必須アミノ酸類、1%ピルビン酸ナトリウム、1%のファンギゾン(fungizone)、及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン)、ウシ胎仔血清、及び0.1 N NaOH溶液の存在下でクラッシュアイス中に貯蔵した遠心管中に、上記1.76×MEM媒体を入れた。ヒトの皮膚外植片から単離した線維芽細胞を、培養媒体1mL当たり1.5×10細胞の濃度で添加した。
【0095】
次に、白っぽい曇った外観が観察されるように上記遠心管の壁をつたわせて、1/1000のコラーゲンと酢酸の混合物(体積/体積)をゆっくり添加する。
【0096】
混合した生成物を次に注意深く混合し、12ウェル培養皿(Costerタイプ, reference 3512)のウェル中に、1ウェル当たり2mLの混合物の割合で分配する。最終的な細胞濃度は、3×10細胞/皮膚等価体であり、1mg/mLのコラーゲン最終濃度を有する。次に、培養皿を、37℃、5%COにてインキュベーター中に置く。
【0097】
ひとたびコラーゲンの重合後に皮膚等価体が形成されたら、皮膚等価体は3日間、培養支持体に接着させたままにし、次に、その支持体から取り外して、上記収縮が開始できる。これらの取り外した皮膚等価体は、それらの表面積を測定するための画像を撮るために、インキュベーターから取り出し、それは収縮の速度論の各点(0、4、8、及び24時間)に対してである。各測定点の間は、それらはすぐにインキュベーター中に戻す。
【0098】
(試験化合物で)処理した皮膚等価体と、対照(試験化合物なし)の皮膚等価体の自発的収縮の評価は、自発的収縮の開始後の上述した様々な時間において、それらの表面積を測定することによって行う。
【0099】
このためには、各処理又は未処理の皮膚等価体に対し、カメラ(CCDカメラ−Iris Sony DXC-107P)を用いてデジタル画像を取得し、次に、画像解析システム(Zeiss Axiovision 3.0)によって、表面積を各画像について計算する。この表面積測定に対して、下記式による表面積の比に等しい収縮のパーセンテージが対応する。
%収縮=(Sp−Si)/Sp×100
(式中、「Sp」は、培養皿のウェルの表面積を表す;これは収縮前の皮膚等価体の全表面積を表す;
「Si」は、収縮の速度論の時刻iにおける皮膚等価体の表面積を表す。)
【0100】
c)結果
上述した、化合物C(実施例1)、D(実施例4)、及びE(実施例5)、並びにG(2’,3’-イソプロピリデン-5’-アセチルアデノシン;参照番号I 4127でSigma社から販売されている化合物)を、上述したプロトコルにしたがって試験を行い、アデノシン及びイソプロピリデンアデノシンと比較した。
【0101】
以下の結果が得られた。
【表1】

【0102】
化合物C、D、E、及びGは、対照に対して、試験(10μMで試験した)の期間にわたって、平均で少なくとも21%、線維芽細胞の収縮を低下させた。
【0103】
したがって、これらの化合物は、アデノシンの効果(15%の低下)よりも大きな、顕著な皮膚弛緩効果を有する。イソプロピリデンアデノシンは、全く皮膚弛緩効果を有しない。
【0104】
化合物C及びGは、得られたそれらの良好な結果から、特に好ましい。
【0105】
[実施例7]スキンケア組成物
水中油型エマルションを調製し、それは以下の組成を有する。
【表2】

【0106】
上記クリームを毎日適用した後、顔のしわが緩和された。
【0107】
化合物Gは、化合物A又はBと置き換え可能である。
【0108】
[実施例8]スキンケア組成物
顔のケアのためのゲルを調製し、それは以下の組成を有する。
【0109】
【表3】

【0110】
このゲルは、水中で構成成分を混合し、最後にゲル化剤を添加することで得られる。
【0111】
このゲルは毎日2回適用される;皮膚に脂っぽさを残さないので、朝に適用するのに特に適している。本ゲルの毎日の適用後、しわの減少が認められた。
【0112】
化合物Cは、化合物F又はG又はD又はEによって置き換え可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
しわ、特に、表情じわに抗するための薬剤、及び/又は皮膚の線を緩和するための薬剤としての、下記式(I):
【化1】

[式中:
−(a)R及びRは、同一であり、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を示すか、又はR及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;かつ、
は:
(i)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、−OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい);又は、
(ii)ビオチンに由来するエステル基、
を表し、あるいは、
−(b)R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成し;かつ、Rは、−OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で任意選択により置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜C10もしくは不飽和直鎖状C〜C10又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C10炭化水素基を表し;
ここで、R’及びR’’は、水素原子、又は、任意選択により−OZ、−NZZ’、又は−COOZから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す(ここで、Z及びZ’は、互いに独立して、水素原子、又は飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す)。]
で表されるアデノシン誘導体、その塩、光学異性体、及び溶媒和物のうち少なくとも1つの、美容のための使用。
【請求項2】
前記化合物(I)が、
− R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;
− Rは:
(i)直鎖状C〜C10炭化水素基;又は
(ii)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜C炭化水素基を表す。);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基、
を表すものであることを特徴とする、請求項1に記載の美容のための使用。
【請求項3】
前記化合物(I)が、
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;
は:
- −COR基(Rは、飽和直鎖状C〜C炭化水素基を表す。);又は、
- ビオチンに由来するエステル基、
を表すものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の美容のための使用。
【請求項4】
前記化合物(I)が、
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-ブタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-ビオチノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-エチルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクチルアデノシン;
- 2’,3’-ジメチル-5’-ブタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-アセチルアデノシン、
から選択されることを特徴とする、請求項1記載の美容のための使用。
【請求項5】
しわのある皮膚、特に顔及び/又は額の皮膚の美容のための処置方法であって、生理学的に許容可能な媒体中に、請求項1〜4のいずれか一項中で定義した式(I)のアデノシン誘導体の少なくとも1つを含む組成物の前記皮膚への局所適用を含む処置方法。
【請求項6】
生理学的に許容可能な媒体中に、下記式(II):
【化2】

[式中、
−(a)R及びRは、同一であり、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を示すか、又はR及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;かつ、
は:
(i)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、−OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい);又は、
(ii)ビオチンに由来するエステル基、
を表し、あるいは、
−(b)R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成し;かつ、Rは任意選択により、−OR’、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜C10もしくは不飽和直鎖状C〜C10又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C10炭化水素基を表し;
ここで、R’及びR’’は、水素原子、任意選択により−OZ、−NZZ’、又は−COOZから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す(ここで、Z及びZ’は、互いに独立して、水素原子、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す)。
で表されるアデノシン誘導体、及びその塩、光学異性体、並びに溶媒和物のうち、少なくとも1種を含む組成物。
【請求項7】
前記化合物(II)が、
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成し;
は:
(i)直鎖状C〜C10炭化水素基;又は
(ii)−COR基(Rは、飽和直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
(iii)ビオチンに由来するエステル基
を表すものであることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物(II)が、
及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になって、イソプロピリデン基を形成し;
は:
- −COR基(Rは、直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
- ビオチンに由来するエステル基
を表すものであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物(II)が、
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-ブタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-ビオチノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-エチルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクチルアデノシン;
- 2’,3’-ジメチル-5’-ブタノイルアデノシン;
から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
化粧品組成物又は皮膚科学用組成物を構成することを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
下記式(III):
【化3】

[式中、
−(a)R及びRは、同一であり、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を示すか、又はR及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;
− Rは:
(i)−COR基(Rは、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C炭化水素基もしくは分枝状C〜C炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、−OR’、−NR’R’’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよく、但しRは2−アミノエチル基ではない);又は、
(ii)ビオチンに由来するエステル基、
を表し、あるいは、
−(b)R及びRは、それらが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成し;かつ、
は、飽和もしくは不飽和の、直鎖状C〜C10炭化水素基もしくは分枝状C〜C10炭化水素基を表し、これらの基は任意選択により、−NR’R’’、−COOR’、−CONR’R’’、−CF、−F、−OCF、−CN、又は−NOから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい);
ここで、R’及びR’’は、水素原子、任意選択により−OZ、−NZZ’、又は−COOZから選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよい、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C基を表す(ここで、Z及びZ’は、互いに独立して、水素原子、又は、飽和直鎖状C〜Cもしくは不飽和直鎖状C〜C又は飽和もしくは不飽和分枝状C〜C炭化水素基を表す)。]
で表される化合物及びそれらの塩、光学異性体、並びに溶媒和物。
【請求項12】
及びRは、R及びRが結合している酸素原子と一緒になってイソプロピリデン基を形成しており;
は:
- −COR基(Rは、直鎖状C〜C炭化水素基を表す);又は、
- ビオチンに由来するエステル基、
を表すことを特徴とする、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
以下の化合物:
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-ブタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクタノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-ビオチノイルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-エチルアデノシン;
- 2’,3’-イソプロピリデン-5’-オクチルアデノシン;
- 2’,3’-ジメチル-5’-ブタノイルアデノシン
から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の化合物。

【公開番号】特開2007−277248(P2007−277248A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−104230(P2007−104230)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】