説明

抗真菌剤の活性を増強するためのヒストンデアセチラーゼ阻害剤

本発明は、真菌感染症を選択的に処置する組成物および方法に関する。さらに具体的には、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌の感受性を選択的に増強するための組成物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月19日出願の米国仮出願通番第60/751,703号および2006年12月19日出願の米国仮出願通番第__________号の利益を請求する。上記で参照した出願の教示全体を、本出願において参考として援用する。
【0002】
発明の背景
(a)発明の分野
本発明は、真菌感染症を処置する組成物および方法に関する。さらに具体的には、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌の感受性を増強するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(b)従来技術の説明
真核細胞において、核DNAは、ヒストンと会合して、クロマチンと呼ばれるコンパクトな複合体を形成する。ヒストンは、一般的に真核生物種を通して保存性が高い塩基性タンパク質の族を構成する。H2A、H2B、H3およびH4と呼ばれるコアヒストンは、会合してタンパク質コアを形成する。DNAは、このタンパク質コアの周囲に巻き付き、ヒストンの塩基性アミノ酸は、DNAの負に帯電したリン酸基と相互作用する。DNAの約146個の塩基対は、ヒストンコアの周囲を包囲して、クロマチンの反復構造モチーフであるヌクレオソーム粒子を構成する。
【0004】
Csordas (1990, Biochem. J., 286: 23-38)は、ヒストンが、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT1)により触媒される反応であるN末端リシン残基のアミノ基の翻訳後アセチル化を受けることを教示している。アセチル化により、リシン側鎖の正の電荷が中和され、これは、クロマチン構造に影響すると考えられる。実際に、Tauntonら(1996,Science,272:408-411)は、クロマチン鋳型への転写因子の接近は、ヒストン高アセチル化により増強されることを教示している。Tauntonら(上記)はさらに、低アセチル化ヒストンH4の濃縮が、ゲノムの転写に関してサイレントな領域において見出されていることを、教示している。
【0005】
ヒストンアセチル化は、可逆的修飾であり、脱アセチル化は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)と呼ばれる酵素のファミリーにより触媒される。HDAC活性を有するタンパク質をコードする遺伝子配列の分子クローニングにより、一組の異なるHDAC酵素アイソフォームの存在が立証された。系統学的分析および酵母Rpd3(reduced potassium dependency 3)、Hda1およびSir2(silent imformation regulator 2)に対する配列相同性に基づいて、HDACは、異なるクラスに分類される(Jang and Gregoire, 2005, Molecular and Cellular Biology, 25(8):2873-2884)。
【0006】
ヒトにおいては18種の既知のHDACがあり、これらは4つのクラスに分けられる:クラスI(HDAC1、−2、−3および−8;Rpd3と相同)、クラスII(HDAC4、−5、−6、−7、−9および−10;Hda1に関連する)、クラスIII(Sirt1、−2、−3、−4、−5、−6および−7;Sir2に類似)並びにクラスIV(HDAC11)。クラスI、IIおよびIVのHDACは、亜鉛依存性酵素である。クラスIIIのHDACは、NAD依存性デアセチラーゼである。Saccharomyces cerevisiaeにおいて、10種の既知のHDACがあり、これらは、3つのクラスに分けられる:クラスI(Rpd3、Hos1およびHos2)、クラスII(Hda1およびHos3)、ならびにクラスIII(Sir2および4種のHstタンパク質、Sir2の相同体)。
【0007】
これらの個別のHDAC酵素がどのような役割を果たすのかは、不明であった。Trojerら(2003, Nucleic Acids Research, 31(14):3971-3981)は、HdaAおよびRpdAが、糸状菌Aspergillus nidulansの全HDAC活性に対する主要な寄与体であり、HdaAがHDAC活性の主要な部分の主な原因となることを示している。
【0008】
既知のHDAC阻害剤を用いた研究により、アセチル化と遺伝子発現との間の関連が立証された。多くの研究で、HDACと遺伝子発現との間の関係が試験された。Taunton et al., Science 272:408-411 (1996)には、酵母の転写制御因子に関連するヒトHDACが開示されている。Cress et al., J. Cell. Phys. 184:1-16 (2000)には、ヒト癌に関連して、HDACの役割が、転写の補助抑制因子としてのものであることが、開示されている。Ng et al. TIBS 25:2000年3月には、転写抑制因子系の広汎な特徴としてのHDACが開示されている。Magnaghi-Jaulin et al., Prog. Cell Cycle Res. 4:41-47 (2000)には、細胞サイクル進行に重要な転写補助制御因子(co-regulator)としてのHDACが開示されている。
【0009】
HDAC活性の阻害剤を記載する多くの報告がなされている。例えば、Richon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 3003-3007 (1998)には、Streptomyces hygroscopicusから単離された天然の生成物であり、ヒストンデアセチラーゼ活性を阻害し、G1およびG2期において細胞における細胞サイクル進行を停止させることが示されている (Yoshida et al., 1990, J. Biol. Chem. 265: 17174-17179; Yoshida et al., 1988, Exp. Cell Res. 177: 122-131) トリコスタチンA(TSA)により、および合成化合物であるスベロイル(suberoyl)アニリドヒドロキサム酸(SAHA)により、HDAC活性が阻害されることが開示されている。YoshidaおよびBeppu (1988, Exper. Cell Res., 177: 122-131)は、TSAが、細胞サイクルのGおよびG期においてラット線維芽細胞の停止をもたらすことを教示しており、これは、HDACを細胞サイクル調節において関連づける。
【0010】
実際に、Finnin et al. (1999, Nature, 401:188-193)は、TSAおよびSAHAが、マウスにおいて細胞増殖を阻害し、最終分化を誘発し、かつ腫瘍の形成を防止することを、教示している。HDAC阻害剤として作用する化合物の他の非限定的例には、WO 01/38322およびWO 01/70675のものが含まれる。A. nidulansのHda1酵素は、HDAC阻害剤TSAに対して高度に感受性であり、一方、HosBは、TSAおよび他のHDAC阻害剤であるHCトキシンの両方に対して高度に耐性であることが示されている(Trojer et al., 上記)。
【0011】
SmithおよびEdlind(2002,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,46(11):3532-3539)は、既知のHDACのpan−阻害剤であるTSA、アピシジン(apicidin)、酪酸ナトリウムおよびトラポキシン(trapoxin)が、選択された真菌種のアゾール抗真菌剤に対する感受性を増強する能力を試験した。彼らは、TSAのみがCandida albicansの感受性を増強することができることを見出した。しかし、必要なTSAの濃度は、哺乳動物細胞に有毒なものよりも高かった。TSAは、Candida glabrataの感受性を増強するとは見出されなかった。
【0012】
抗真菌剤の使用およびこれに対する必要性は、広範囲であり、動物における真菌感染症の処置から消毒薬製剤;ヒトに用いるための医薬までの範囲にわたる。現在の抗真菌製剤についての主な問題は、感染した宿主に対するこれらの毒性である。これは、多くの真菌感染が、AIDS、または癌化学療法もしくは臓器移植からなどの衰弱性疾患に対して続発性の日和見感染症である場合において、特に重要である。したがって、少なくともヒトおよび他の動物に投与されるべきである抗真菌剤について、治療係数は、好ましくは、毒性が目的の真菌に選択性であり、宿主に対して毒性でない程度である。
【0013】
カンジダ種およびアスペルギルス種などの日和見種により主に引き起こされる重篤な真菌感染症は、免疫低下状態の患者および他の脆弱な患者において、ますます一般的である(Georgopapadakou,1998)。これらは、入院した患者、ならびにHIV、癌および移植患者における罹患率および死亡率の重要な原因である。
【0014】
カンジダによる感染症は、一般的に、真菌膜の主な成分であるエルゴステロール合成における必須の酵素であるラノステロールデメチラーゼを標的とする、抗真菌アゾールで処置される。アゾールは、静真菌性であり、これらの使用は、アゾール耐性、特に非albicansのカンジダ種、例えばCandida glabrataの出現により損なわれ得る(Kaurら、2004)。さらに、アゾール処置の結果、「トレーリング発育(trailing growth)」がもたらされ、生存する真菌細胞は、再発のためのレゼルボアとなる。抗真菌アゾールの主な限界は、殺真菌活性のこれらの一般的な欠如であり、これは、重篤な易感染性の患者に一般的な処置の失敗の原因となり得る。
【0015】
Aspergillus fumigatusは、死亡率60〜90%の重篤な疾患である侵襲性アスペルギルス症(IA)を引き起こす主なアスペルギルス種であり、侵襲性アスペルギルス症の発生率は、免疫低下患者の数の増大のために、過去20年において著しく増大している(Takaiaら、2005)。現在の抗真菌剤は、その乏しいインビボ効能および宿主毒性により、IAの処置においては制限される(Latge 1999)。
【0016】
現在の抗真菌剤、例えばアゾール類についての欠点には、耐性の発生、薬物−薬物相互作用の可能性および有毒な肝臓への影響の可能性が含まれる。
【0017】
アゾール類に対する耐性における重要な要因は、エルゴステロール生合成経路の酵素をコードするERG遺伝子の上方調節であると、考えられる。Henryらは、アゾール類への曝露により、カンジダ種においてラノステロールデメチラーゼをコードする遺伝子であるERG11の上方調節がもたらされることを例証した。同じ研究においてまた、試験した5種の他のERG遺伝子において、上方調節が起こることが、明らかになった。エルゴステロール経路の他の段階に対して作用する抗真菌剤であるテルビナフィンおよびフェンプロピモルフ(fenpropimorph)について、同様の結果が得られた(Henry et al., 2000, Antimicrob. Agents Chemother. 44:2693-2700; Song et al., 2004 Antimicrob. Agents Chemother. 48(4):1136-1144)。
【0018】
真菌感染症を処置するための組成物および方法を提供することが、非常に望ましい。また、抗真菌化合物に対する真菌感受性を増強するための組成物および方法を提供することが、非常に望ましい。特に重要なことには、宿主に対して毒性であることなく病原性の真菌に対して選択的に毒性であるような組成物および方法を提供することが、非常に望ましい。
【発明の開示】
【0019】
発明の概要
驚くべきことに、ヒストンデアセチラーゼの特定の阻害剤、特にヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤は、哺乳動物細胞に対して毒性ではない阻害剤の濃度において、真菌種に対する抗真菌剤との相乗的活性を示すことが見出された。
【0020】
本発明は、真菌感染症を選択的に処置する化合物およびその組成物ならびに方法を提供する。本発明はさらに、抗真菌化合物に対する真菌感受性を選択的に増強するための化合物およびその組成物ならびに方法を提供する。本発明の好ましい態様において、化合物は、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤、より好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤である。本発明の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤は、植物または哺乳動物のヒストンデアセチラーゼよりも、真菌のヒストンデアセチラーゼに対して活性が高い;好ましくは、阻害活性は、真菌のヒストンデアセチラーゼに特異的である。
【0021】
第1の局面において、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌感受性を選択的に増強するのに有用である化合物を提供する。好ましい態様において、当該化合物は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするHDACの阻害剤、ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体である。別の好ましい態様において、当該化合物は、式(A)で表される化合物、ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体である。
【0022】
第2の局面において、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌感受性を選択的に増強するために有用である、式(B)で表される化合物、ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体を提供する。
【0023】
第3の局面において、本発明は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、抗真菌剤、および薬学的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。好ましい態様において、組成物は、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼの阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、抗真菌有効量の抗真菌剤、および薬学的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤を含む。
【0024】
第4の局面において、本発明は、真菌細胞を抗真菌剤に対して選択的に感作する方法であって、前記細胞を、選択的感作有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、またはこれらの組成物と接触させることを含み、ここでヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体の選択的有効量が、当該抗真菌剤の量と相乗的である、前記方法を提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0025】
第5の局面において、本発明は、真菌細胞に対する抗真菌剤の活性を選択的に増強する方法であって、該真菌細胞を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組合せ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0026】
第6の局面において、本発明は、真菌増殖を選択的に阻害する方法であって、真菌を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0027】
第7の局面において、本発明は、真菌感染症を選択的に処置する方法であって、少なくとも1の感染性真菌単位で感染した生物に、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはその組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0028】
第8の局面において、本発明は、真菌細胞の抗真菌剤に対する耐性を選択的に低下させる方法であって、前記真菌細胞を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0029】
第9の局面において、本発明は、エルゴステロール生合成に関与する真菌細胞中の遺伝子の抗真菌剤依存性上方調節を選択的に低下させる方法であって、真菌細胞を、有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼのヒドロキサム酸塩をベースとする阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0030】
第10の局面において、本発明は、真菌細胞を抗真菌剤と接触させることによる抗真菌剤耐性真菌細胞の発達を選択的に阻害する方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0031】
第11の局面において、本発明は、真菌細胞の抗真菌剤での処理の間に、真菌細胞中のエルゴステロール生合成を選択的に阻害する、好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害する、または多剤輸送体の合成を選択的に阻害する、好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部を阻害する方法であって、真菌細胞を、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体と接触させることを含む、前記方法を提供する。他の態様において、化合物は、式(B)で表される。
【0032】
第12の局面において、本発明は、真菌細胞に対する抗真菌剤の殺真菌効果を選択的に増大させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせと接触させることを含む、前記方法を提供する。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0033】
第13の局面において、本発明は、真菌細胞に対する抗真菌剤の抗生物質投与後効果を選択的に増大させる方法であって、前記真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせと接触させることを含む、前記方法を提供する。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0034】
上記は、単に本発明のいくつかの局面を要約するものであり、本質的に限定されることを意図しない。これらの局面ならびに他の局面および態様を、以下により十分に記載する。
【0035】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、真菌感染症を選択的に処置するための化合物およびその組成物ならびに方法に関する。さらに具体的には、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌感受性を選択的に増大させるための化合物およびその組成物ならびに方法に関する。
【0036】
本発明において、真菌感染症を選択的に処置するための化合物、組成物および方法を提供する。
本発明において、また抗真菌化合物に対する真菌感受性を選択的に増大させるための化合物、組成物および方法を提供する。
【0037】
本明細書中で言及する特許明細書および科学文献は、当業者に有用な知識を確立する。本明細書中で引用する発行された特許、出願および参考文献を、各々が具体的かつ個々に参考として援用されるものとする場合と、同等の程度で、本明細書において参考として援用する。矛盾する場合には、本開示が優先する。
【0038】
本発明の目的のために、以下の用語を以下で定義する。
多数の活性な抗真菌剤は、これらの構造の一部としてアゾール官能性を有する;このような抗真菌剤を、一般的に「抗真菌性アゾール」、「アゾール抗真菌剤」または「アゾール」と呼ぶ。
【0039】
本明細書を通じて用いられる場合、用語「選択的な」、「選択的に」および「選択性」は、本明細書中で記載するヒストンデアセチラーゼ阻害化合物ならびに組成物および方法におけるその使用により、宿主細胞に対して有毒な濃度において用いずともその目的が達成されることを意味することを意図する。「宿主細胞」は、処置される動物または植物の細胞である。このような選択性は、本発明のヒストンデアセチラーゼ阻害化合物、ならびに本発明の組成物および方法におけるその使用により、初めて得られる。
【0040】
単純化のために、化学的部分を、全体にわたり主に、1価の化学的部分(例えばアルキル、アリールなど)として定義し、言及する。しかし、このような用語をまた用いて、当業者には明らかな適切な構造的状況の下で対応する多価の部分を示す。例えば、「アルキル」部分が一般的に1価の基(例えばCH−CH−)を指す一方、いくつかの状況においては、2価の結合部分を、「アルキル」とすることができ、この場合においては、当業者は、アルキルが、2価のラジカル(例えば−CH−CH−)であり、これは、用語「アルキレン」と同意義であると理解する。(同様に、2価の部分が必要であり、「アリール」であると述べられている状況においては、当業者は、用語「アリール」は、対応する2価の部分であるアリーレンを表すことを理解する)。すべての原子は、結合の形成についてこれらの通常の原子価の数を有すると理解される(即ち、炭素については4、Nについては3、Oについては2、およびSについてはSの酸化状態に依存して2、4または6)。時々、部分を、例えば、(A)−B−であり、式中aは0または1である、と定義してもよい。このような例において、aが0である場合には、当該部分はB−であり、aが1である場合には、当該部分はA−B−である。
【0041】
単純化のために、「C〜C」ヘテロシクリルまたは「C〜C」ヘテロアリールへの言及は、「n個」〜「m個」の環原子を有し、ここで「n」および「m」は整数であるヘテロシクリルまたはヘテロアリールを意味する。したがって、例えば、C〜Cヘテロシクリルは、少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員環または6員環であり、ピロリジニル(C)およびピペリジニル(C)を含む;Cヘテロアリールは、例えばピリジルおよびピリミジルを含む。
【0042】
用語「アルキル」は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族基を意味することを意図する。他の好ましいアルキル基は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する。好ましいアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられるがこれらに限定されない。「C」アルキル(「C〜Cアルキル」におけるもののように)は、共有結合である。
【0043】
用語「アルケニル」は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する、1つまたは2つ以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和の直鎖または分枝鎖の脂肪族基を意味することを意図する。好ましいアルケニル基として、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
用語「アルキニル」は、2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子、より好ましくは2〜6個の炭素原子を有する、1つまたは2つ以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和の直鎖または分枝鎖の脂肪族基を意味することを意図する。好ましいアルキニル基として、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書中で用いられる場合、用語「アルキレン」、「アルケニレン」または「アルキニレン」は、それぞれ、2つの他の化学的基の間に位置してこれらを結合させる作用を奏する、上記で定義したアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を意味することを意図する。好ましいアルキレン基として、メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアルケニレン基として、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいアルキニレン基として、エチニレン、プロピニレンおよびブチニレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
用語「シクロアルキル」は、約3〜15個の炭素を有する、好ましくは3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、より好ましくは3〜6個の炭素を有する、飽和または不飽和の単環式、二環式、三環式または多環式炭化水素基を意味することを意図する。特定の好ましい態様において、シクロアルキル基は、アリール、ヘテロアリールまたは複素環基に融合している。好ましいシクロアルキル基として、シクロペンテン−2−エノン、シクロペンテン−2−エノール、シクロヘクス−2−エノン、シクロヘクス−2−エノール、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環式」または「複素環」は、約3〜約14個の原子を有し、ここで1個または2個以上の原子が、独立して、N、OおよびSからなる群から選択される単環式、二環式または多環式構造である基を意味することを意図する。環状構造は、飽和、不飽和または部分的に不飽和であってもよい。特定の好ましい態様において、複素環基は、非芳香族である。二環式または多環式構造において、1つまたは2つ以上の環は、芳香族であってもよい;例えば、二環式複素環の1つの環または三環式複素環の1つもしくは2つの環は、インダンおよび9,10−ジヒドロアントラセンにおけるように、芳香族であってもよい。
【0048】
好ましい複素環基として、エポキシ、アジリジニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニルおよびモルホリノが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好ましい態様において、複素環基は、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキル基に融合している。かかる融合複素環の例として、テトラヒドロキノリンおよびジヒドロベンゾフランが挙げられるが、これらに限定されない。この用語の範囲から特に除外されるのは、環のOまたはS原子が別のOまたはS原子に隣接している化合物である。
【0049】
特定の好ましい態様において、複素環基は、ヘテロアリール基である。本明細書中で用いる場合、用語「ヘテロアリール」は、5〜14個の環原子、好ましくは5個、6個、9個または10個の環原子を有する;環状配列中に共有された6個、10個または14個のパイ電子を有する;および炭素原子に加えて、独立してN、OおよびSからなる群から選択される1個または2個以上のヘテロ原子を有する、単環式、二環式、三環式または多環式基を意味することを意図する。例えば、ヘテロアリール基は、ピリミジニル、ピリジニル、ベンズイミダゾリル、チエニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニルおよびインドリニルであってもよい。好ましいヘテロアリール基として、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフリル、ジベンゾフリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、テトラゾリル、オキサゾリル、チアゾリルおよびイソキサゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
用語「アリール」は、好ましくは1〜3個の芳香環を含む、単環式、二環式、三環式または多環式C〜C14芳香族部分を意味することを意図する。好ましくは、アリール基は、C〜C10アリール基、より好ましくはCアリール基である。好ましいアリール基として、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
好ましいヘテロシクリルおよびヘテロアリールとして、アクリジニル、アゾシニル(azocinyl)、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フリル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、チアジアゾリル(例えば1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル)、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、トリアゾリル(例えば1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル)、およびキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書中で用いる場合、他に述べない限り、部分(例えばアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリルなど)を「随意に置換されている」と記載する場合には、これは、当該基が、随意に、1〜4、好ましくは1〜3、より好ましくは1または2の非水素置換基を有することを意味する。好適な置換基として、ハロ、ヒドロキシ、オキソ(例えば、オキソで置換されている環の−CH−は、−C(O)−である)、ニトロ、ハロヒドロカルビル、ヒドロカルビル、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル、アミノアルキル、アシル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アレーンスルホニル、アルカンスルホンアミド、アレーンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミド、アルキルカルボニル、アシルオキシ、シアノおよびウレイド基が挙げられるが、これらに限定されない。これら自体がさらに置換されない(他に特に述べない限り)好ましい置換基は、以下のものである:
【0053】
(a)ハロ、シアノ、オキソ、カルボキシ、ホルミル、ニトロ、アミノ、アミジノ、グアニジノ、
(b)C〜Cアルキルまたはアルケニルまたはアリールアルキル イミノ、カルバモイル、アジド、カルボキサミド、メルカプト、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C〜Cアシル、C〜Cアシルアミノ、C〜Cアルキルチオ、アリールアルキルチオ、アリールチオ、C〜Cアルキルスルフィニル、アリールアルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、C〜C N−アルキルカルバモイル、C〜C15N,N−ジアルキルカルバモイル、C〜Cシクロアルキル、アロイル、アリールオキシ、アリールアルキルエーテル、アリール、シクロアルキルまたは複素環または別のアリール環に融合したアリール、C〜C複素環、C〜C15ヘテロアリール、またはシクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはアリールに融合したかもしくはスピロ融合した(spiro-fused)これらの環のすべて、ここで前記の各々はさらに、上記(a)において列挙した1つまたは2つ以上の部分で随意に置換されている;および
【0054】
(c)−(CR3233−NR3031、式中sは0(この場合において、窒素は、置換されている部分に直接結合している)〜6であり、R32およびR33は、各々独立して、水素、ハロ、ヒドロキシルまたはC〜Cアルキルであり、R30およびR31は、各々独立して水素、シアノ、オキソ、ヒドロキシル、−C〜Cアルキル、C〜Cヘテロアルキル、C〜Cアルケニル、カルボキサミド、C〜Cアルキルカルボキサミド、カルボキサミド−C〜Cアルキル、アミジノ、C〜Cヒドロキシアルキル、C〜Cアルキルアリール、アリール−C〜Cアルキル、C〜Cアルキルヘテロアリール、ヘテロアリール−C〜Cアルキル、C〜Cアルキルヘテロシクリル、ヘテロシクリル−C〜Cアルキル、C〜Cアルキルシクロアルキル、シクロアルキル−C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシ−C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリール−C〜Cアルコキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、ヘテロアリール−C〜Cアルコキシカルボニル、C〜Cアシル、C〜Cアルキル−カルボニル、アリール−C〜Cアルキル−カルボニル、ヘテロアリール−C〜Cアルキル−カルボニル、シクロアルキル−C〜Cアルキル−カルボニル、C〜Cアルキル−NH−カルボニル、アリール−C〜Cアルキル−NH−カルボニル、ヘテロアリール−C〜Cアルキル−NH−カルボニル、シクロアルキル−C〜Cアルキル−NH−カルボニル、C〜Cアルキル−O−カルボニル、アリール−C〜Cアルキル−O−カルボニル、ヘテロアリール−C〜Cアルキル−O−カルボニル、シクロアルキル−C〜Cアルキル−O−カルボニル、C〜Cアルキルスルホニル、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールアルキルスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、C〜Cアルキル−NH−スルホニル、アリールアルキル−NH−スルホニル、アリール−NH−スルホニル、ヘテロアリールアルキル−NH−スルホニル、ヘテロアリール−NH−スルホニルアロイル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アリール−C〜Cアルキル−、シクロアルキル−C〜Cアルキル−、ヘテロシクリル−C〜Cアルキル−、ヘテロアリール−C〜Cアルキル−または保護基であり、ここで、前記の各々は、さらに随意に上記(a)において列挙した1つまたは2つ以上の部分で置換されており;または
【0055】
30およびR31は、これらが結合しているNと一緒になって、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールを形成し、この各々は、随意に、上記(a)からなる群から選択された1〜3個の置換基、保護基、および(X30−Y31−)で置換されており、ここで、前記ヘテロシクリルはまた、架橋されていてもよく(メチレン、エチレンまたはプロピレン架橋を有する二環式部分を形成する);ここで、
【0056】
30は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル−、C〜Cアルキニル−、−C〜Cアルキル−C−Cアルケニル−C〜Cアルキル、C〜Cアルキル−C〜Cアルキニル−C〜Cアルキル、C〜Cアルキル−O−C〜Cアルキル−、HO−C〜Cアルキル−、C〜Cアルキル−N(R30)−C〜Cアルキル−、N(R30)(R31)−C〜Cアルキル−、N(R30)(R31)−C〜Cアルケニル−、N(R30)(R31)−C〜Cアルキニル−、(N(R30)(R31))−C=N−、C〜Cアルキル−S(O)0〜2−C〜Cアルキル−、CF−C〜Cアルキル−、C〜Cヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アリール−C〜Cアルキル−、シクロアルキル−C〜Cアルキル−、ヘテロシクリル−C〜Cアルキル−、ヘテロアリール−C〜Cアルキル−、N(R30)(R31)−ヘテロシクリル−C〜Cアルキル−からなる群から選択され、ここで、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクリルは、随意に、(a)からの1〜3個の置換基で置換されており;またY31は、直接結合、−O−、−N(R30)−、−C(O)−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、−N(R30)−C(O)−、−C(O)−N(R30)−、−N(R30)−C(S)−、−C(S)−N(R30)−、−N(R30)−C(O)−N(R31)−、−N(R30)−C(NR30)−N(R31)−、−N(R30)−C(NR31)−、−C(NR31)−N(R30)、−N(R30)−C(S)−N(R31)−、−N(R30)−C(O)−O−、−O−C(O)−N(R31)−、−N(R30)−C(S)−O−、−O−C(S)−N(R31)−、−S(O)0〜2−、−SON(R31)−、−N(R31)−SO−および−N(R30)−SON(R31)−からなる群から選択される。
【0057】
フェニル、チオフェニルまたはピリジニルなどの環構造の隣接する原子に結合した2つの随意の置換基がある場合には、当該置換基は、これらが結合している原子と一緒に、随意に1個、2個または3個のヘテロ環原子を有する5員環または6員環シクロアルキルまたは複素環を形成する。
【0058】
好ましい態様において、複素環基は、1または2以上の位置において炭素、窒素および/または硫黄上で置換されている。窒素上の好ましい置換基としては、N−オキシド、アルキル、アリール、アラルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールカルボニル、アリールスルホニル、アルコキシカルボニルまたはアラルコキシカルボニルが挙げられるが、これらには限定されない。硫黄上の好ましい置換基としては、オキソおよびC1〜6アルキルが挙げられるが、これらには限定されない。
【0059】
さらに、環状部分(即ちシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール)上の置換基には、もとの環状部分に融合して二環式または三環式融合環系を形成する5〜6員単環および9〜14員二環部分が含まれる。環状部分上の置換基にはまた、共有結合によりもとの環状部分に結合して二環式または三環式の二環系(bi-ring system)を形成する5〜6員単環および9〜14員二環部分が含まれる。例えば、随意に置換されているフェニルには、以下のものが含まれるが、これらには限定されない:
【化1】

【0060】
用語「薬学的に許容し得る担体」は、細胞、細胞培養物、組織試料または身体中の生物システムと適合性であり、活性成分(1種または2種以上)の生物学的活性の有効性に干渉しない、無毒性の物質を意味することを意図する。したがって、本発明の組成物は、阻害剤および抗真菌剤に加えて、希釈剤、賦形剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤および/または当該分野において周知の他の物質を含んでいてもよい。薬学的に許容し得る処方の製剤の例は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に記載されている。
【0061】
用語「ヒストンデアセチラーゼのヒドロキサム酸塩をベースとする阻害剤」は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤であり、ヒドロキサム酸塩部分を含む化合物を意味することを意図する。
担体の性質は、特定の用途のための投与の経路に依存することが、理解される。
【0062】
用語「薬学的に許容し得る塩」は、本発明の化合物の所望の生物学的活性を維持し、最小の望ましくない毒性作用を示すかまたは毒性作用を全く示さない塩を意味することを意図する。このような塩の例には、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)により生成される酸付加塩、ならびに有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸およびポリガラクツロン酸により生成される塩が含まれるが、これらには限定されない。当該化合物はまた、当業者に知られている薬学的に許容し得る第四級塩の形態であってもよく、特に、式−NR+Z−で表される第四級アンモニウム塩を含み、式中Rは水素、アルキルまたはベンジルであり、Zは対イオンであり、塩化物、臭化物、ヨウ化物、−O−アルキル、トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、スルホン酸、リン酸またはカルボン酸(例えば安息香酸、コハク酸、酢酸、グリコール酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、ベンジル酸およびジフェニル酢酸)を含む、。本明細書中で用いる場合、用語「塩」はまた、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属との錯体を包含することを意味する。
【0063】
本発明の組成物の活性化合物は、薬学的に許容し得る担体中に、組成物を投与する個体に対して重大な有毒な効果を生じずに有効な所望の量を送達するのに十分な量で含まれる。
【0064】
用語「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」は、ヒストンデアセチラーゼと相互作用し、ヒストンデアセチラーゼの活性を阻害することができる化合物を意味することを意図する。いくつかの好ましい態様において、かかる活性の低下は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%である。本発明のいくつかの好ましい態様において、当該化合物は、本明細書中で定義される構造を有する化合物である。
【0065】
用語「抗真菌剤」は、真菌細胞の増殖、生存能力および/または複製を阻害するかまたは防止することができる物質を意味することを意図する。好ましい抗真菌剤は、動物または植物における真菌感染を防止するかまたは処置することができるものである。好ましい抗真菌剤は、広範囲の抗真菌剤である。しかし、抗真菌剤はまた、真菌の1種または2種以上の特定の種に特異的であってもよい。
【0066】
好ましい抗真菌剤は、エルゴステロール合成阻害剤であり、これには、アゾール類およびフェンプロピモルフが含まれるが、これらには限定されない。他の抗真菌剤には、テルビナフィンが含まれるが、これに限定されない。好ましいアゾール類には、イミダゾール類およびトリアゾール類が含まれる。さらなる好ましい抗真菌剤には、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾールおよびミコナゾールが含まれるが、これらに限定されない。アゾール類と同様に、フェンプロピモルフは、エルゴステロール合成阻害剤であるが、合成経路のエルゴステロール還元酵素(ERG24)の段階に対して作用する。テルビナフィンもまた、エルゴステロール阻害剤であるが、スクアレンエポキシダーゼ(ERG1)の段階に対して作用する。
【0067】
用語「ヒストンデアセチラーゼ阻害剤」および「ヒストンデアセチラーゼの阻害剤」は、ヒストンデアセチラーゼと相互作用し、この酵素活性を阻害することができる化合物を意味することを意図する。「ヒストンデアセチラーゼの酵素活性を阻害する」とは、ヒストンデアセチラーゼがアセチル基をヒストンから除去する能力を低下させることを意味する。いくつかの好ましい態様において、かかるヒストンデアセチラーゼ活性の低下は、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%、なおより好ましくは少なくとも約90%である。他の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ活性は、少なくとも95%、またより好ましくは少なくとも99%低下する。
【0068】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼの活性における低下をもたらす任意の分子であってもよい。これには、タンパク質、ペプチド、DNA分子(アンチセンスを含む)、RNA分子(RNAiおよびアンチセンスを含む)ならびに小分子が含まれる。
【0069】
好ましくは、このような阻害は、特異的であり、即ちヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼが他の無関連の生物学的効果を生じるのに必要な阻害剤の濃度より低い濃度でヒストンからアセチル基を除去する能力を低下させる。好ましくは、ヒストンデアセチラーゼ阻害活性に必要な阻害剤の濃度は、無関連の生物学的効果を生じるのに必要な濃度よりも、少なくとも2倍低く、より好ましくは少なくとも5倍低く、さらにより好ましくは少なくとも10倍低く、最も好ましくは少なくとも20倍低い。
【0070】
本明細書中で用いる用語「有効な量」は、その適用により意図される効果を達成する本発明の化合物の量である。「有効な量」を構成する本発明の化合物の量は、化合物、意図される用途、疾患状態およびこの重篤度、処置されるべき患者の年齢などに依存して変化する。有効な量を、当業者により常習的に決定することができる。
【0071】
本発明の目的のために本明細書中で用いる場合、用語「患者」には、ヒトおよび他の動物、特に哺乳動物、ならびに他の生物が含まれる。したがって、本発明の化合物、組成物および方法は、ヒト療法と獣医学的用途との両方に適用可能である。好ましい態様において、患者は哺乳動物であり、最も好ましい態様において、患者はヒトである。
【0072】
本明細書中で用いる用語場合、「処置する」または「処置」は、動物または植物における疾患状態の処置を包含し、この疾患状態は、病原体の侵入により特徴づけられ、以下の少なくとも1つを含む:(i)特に動物または植物が、疾患状態に対する素因があるが、未だ罹患しているとは診断されていない場合に、疾患状態が動物または植物において発生するのを防止すること;(ii)疾患状態を阻害すること、即ちその進行を停止させること;および(iii)疾患状態を軽減すること、即ち疾患状態の退行をもたらすこと。本発明の好ましい態様において、動物は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。当該分野において知られているように、全身対局所的送達、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与の時間、薬物の相互作用および状態の重篤度についての調整が、必要であり得、当業者による常習的な実験で決定することができる。
【0073】
本発明はまた、本発明の化合物のプロドラッグを含む。用語「プロドラッグ」は、当該プロドラッグが哺乳動物対象または真菌に投与された際に活性成分を放出することができる、共有結合した担体を表すことを意図する。活性成分の放出は、インビボで起こる。プロドラッグを、当業者に公知の手法により調製することができる。これらの手法により、一般的に、所定の化合物中の適切な官能基が修飾される。しかし、これらの修飾された官能基は、常習的な操作により、またはインビボで、もとの官能基を再生する。本発明の化合物のプロドラッグには、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸または同様の基が修飾されている化合物が含まれる。プロドラッグの例には、エステル類(例えばアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体)、ヒドロキシまたはアミノ官能基のカルバメート類(例えばN,N−ジメチルアミノカルボニル)、アミド類(例えばトリフルオロアセチルアミノ、アセチルアミノなど)などが含まれるが、これらには限定されない。
【0074】
本発明の化合物を、例えば、そのままで、またはプロドラッグとして、例えばインビボで加水分解可能なエステルもしくはインビボで加水分解可能なアミドの形態で、投与してもよい。カルボキシまたはヒドロキシ基を含む本発明の化合物のインビボで加水分解可能なエステルは、例えば、処置される生物、好ましくはヒトまたは動物の身体において加水分解されて、もとの酸またはアルコールを生じる薬学的に許容し得るエステルである。あるいはまた、加水分解は、真菌細胞において起こる。カルボキシについては、好適な薬学的に許容し得るエステルとして、C1〜6アルコキシメチルエステル類(例えばメトキシメチル)、C1〜6アルカノイルオキシメチルエステル類(例えばピバロイルオキシメチル)、フタリジルエステル類、C3〜8シクロアルコキシカルボニルオキシC1〜6アルキルエステル類(例えば1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル);1,3−ジオキソレン−2−オニルメチルエステル類(例えば5−メチル−1,3−ジオキソレン−2−オニルメチル;およびC1〜6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル類(例えば1−メトキシカルボニルオキシエチル)が挙げられ、本発明の化合物中のいずれの適切なカルボキシ基において形成されてもよい。
【0075】
ヒドロキシ基を含む本発明の化合物のインビボで加水分解可能なエステルには、リン酸エステルおよびα−アシルオキシアルキルエーテル類などの無機エステル類、ならびにエステルのインビボでの加水分解の結果として分解してもとのヒドロキシ基を生じる関連化合物が含まれる。α−アシルオキシアルキルエーテル類の例には、アセトキシメトキシおよび2,2−ジメチルプロピオニルオキシ−メトキシが含まれる。ヒドロキシについての、インビボで加水分解可能なエステルを形成する基の選択肢として、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換ベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキル炭酸エステル類を生じる)、ジアルキルカルバモイルおよびN−(N,N−ジアルキルアミノエチル)−N−アルキルカルバモイル(カルバメート類を生じる)、N,N−ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。ベンゾイル上の置換基の例には、環窒素原子からメチレン基を介してベンゾイル環の3または4位に結合しているモルホリノおよびピペラジノが含まれる。カルボキシ基を含む本発明の化合物のインビボで加水分解可能なアミドについての好適な値は、例えば、N−C1〜6アルキルまたはN,N−ジ−C1〜6アルキルアミド、例えばN−メチル、N−エチル、N−プロピル、N,N−ジメチル、N−エチル−N−メチルまたはN,N−ジエチルアミドである。
【0076】
本発明は、いかなる方法においても、純粋にヒトへの適用に限定されることを意図せず、例えば獣医学、農業および水中での用途を包含することを意図し、これには、例えば、非ヒト哺乳動物、魚類および植物の真菌感染症を処置するための方法が含まれる。例えば、SmithおよびEdlind(上記)は、TSAにより、エルゴステロール生合成経路における酵素標的がアリルアミン類およびアゾール類のものに追随する農業用殺菌剤であるモルホリンフェンプロピモルフの最小阻害濃度が低下することを示した。
【0077】
化合物
第1の局面において、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌の感受性を選択的に増強するのに有用である化合物を提供する。好ましい態様において、化合物は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするHDACの阻害剤、ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体である。
【0078】
第1の局面の好ましい態様において、本発明は、抗真菌剤化合物に対する真菌の感受性を選択的に増大させるのに有用である、ヒドロキサム酸塩をベースとする化合物、好ましくは式(A):
【化2】

【0079】
式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個または2個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体を含む。
【0080】
本発明の化合物の好ましい態様において、Rは、随意に、1つまたは2つ以上、好ましくは1つ〜約3つ、より好ましくは1つまたは2つの置換基を有し、これは、好ましくは、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル;ハロ、好ましくはCl、BrまたはF;ハロアルキル、好ましくは(ハロ)1〜5(C〜C)アルキル、より好ましくは(ハロ)1〜5(C〜C)アルキル、および最も好ましくはCF;C〜Cアルコキシ、好ましくはメトキシ、エトキシまたはベンジルオキシ;C〜C10アリールオキシ、好ましくはフェノキシ;C〜Cアルコキシカルボニル、好ましくはC〜Cアルコキシカルボニル、最も好ましくはカルボメトキシまたはカルボエトキシ;C〜C10アリール、好ましくはフェニル;(C〜C10)アル(C〜C)アルキル、好ましくは(C〜C10)アル(C〜C)アルキル、より好ましくはベンジル、ナフチルメチルまたはフェネチル;ヒドロキシ(C〜C)アルキル、好ましくはヒドロキシ(C〜C)アルキル、より好ましくはヒドロキシメチル;アミノ(C〜C)アルキル、好ましくはアミノ(C〜C)アルキル、より好ましくはアミノメチル;(C〜C)アルキルアミノ、好ましくはメチルアミノ、エチルアミノまたはプロピルアミノ;ジ(C〜C)アルキルアミノ、好ましくはジメチルアミノまたはジエチルアミノ;(C〜C)アルキルカルバモイル、好ましくはメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイルまたはベンジルカルバモイル;(C〜C10)アリールカルバモイル、好ましくはフェニルカルバモイル;(C〜C)アルカンアシルアミノ、好ましくはアセチルアミノ;(C〜C10)アレーンアシルアミノ、好ましくはベンゾイルアミノ;(C〜C)アルカンスルホニル、好ましくはメタンスルホニル;(C〜C)アルカンスルホンアミド、好ましくはメタンスルホンアミド;(C〜C10)アレーンスルホニル、好ましくはベンゼンスルホニルまたはトルエンスルホニル;(C〜C10)アレーンスルホンアミド、好ましくはベンゼンスルホニルまたはトルエンスルホニル;(C〜C10)アル(C〜C)アルキルスルホンアミド、好ましくはベンジルスルホンアミド;C〜Cアルキルカルボニル、好ましくはC〜Cアルキルカルボニル、より好ましくはアセチル;(C〜C)アシルオキシ、好ましくはアセトキシ;シアノ;アミノ;カルボキシ;ヒドロキシ;ウレイド;ニトロおよびオキソからなる群から選択される。
【0081】
本発明の化合物の他の好ましい態様において、Rは、非置換であるか、またはC〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜C10アリール、(C〜C10)アル(C〜C)アルキル、ハロ、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、カルボキシおよびアミノからなる群から独立して選択された1つまたは2つの置換基により置換されている。
【0082】
本発明の化合物の好ましい態様において、Rは、フェニル、ピリジンまたはインドール、より好ましくはフェニルまたはインドール、より好ましくはフェニルである。
本発明の化合物の好ましい態様において、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、トリハロアルキル、ハロゲン、CN、アミジン、アルキルアミジン、スルホン、アルキルスルホン、イミデートおよびアルキルイミデートからなる群から独立して選択された1つまたは2つ以上の置換基で置換されている。
【0083】
本発明の化合物の好ましい態様において、Rは、フェニルまたはインドールであり、アルキル、アルケニル、アルキニル、トリハロアルキル、ハロゲン、CN、アミジン、アルキルアミジン、スルホン、アルキルスルホン、イミデートおよびアルキルイミデートからなる群から独立して選択された1つまたは2つ以上の置換基、より好ましくはアルキル、アルケニル、アルキニル、トリハロアルキルおよびハロゲンからなる群から独立して選択された1つまたは2つ以上の置換基で置換されている。
【0084】
本発明の化合物の好ましい態様において、xは、2〜4、より好ましくは3〜4の整数である。
本発明の化合物の好ましい態様において、nは、1〜2の整数、より好ましくは1である。
本発明の化合物の好ましい態様において、YはHである。
本発明の化合物の好ましい態様において、長さxの鎖の1個の炭素原子は、ヘテロ原子、好ましくはSで置換されている。
【0085】
本発明の化合物の好ましい態様において、化合物は、
【化3】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される。
【0086】
本発明の化合物の好ましい態様において、化合物は、
【化4】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される。
【0087】
本発明の化合物の好ましい態様において、化合物は、
【化5】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である。
【0088】
第1の局面の好ましい態様において、式(A)は、式(A−1):
【化6】

式中、
Rは、式(A)について定義したとおりであり;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、またここで、長さxの鎖の1個または2個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;
は、Hまたは−OHであり;
【0089】
Zは、−R20、−O−R20、−R21または
【化7】

であり、ここで、−R20は、−C(O)−R10、−C(O)O−R10、−R11、−CH(R12)−O−C(O)−R10、−C(O)−[C(R10)(R10’)]1〜4−NH(R13)、−S(O)R10、−P(O)(OR10)(OR10)、−C(O)−(CH−CH(OH)−CH−O−R10、−C(O)−O−(CH−CH(OH)−CH−O−R10および−C(O)−(CH−C(O)OR10からなる群から選択され、ただし、Zが結合しているNは、2個の酸素原子に直接結合しておらず;または
は、存在せず、R20は、これが結合しているNと共に随意に置換されている複素環を形成し;
nは、1〜4であり;
【0090】
10は、水素、随意に置換されているC〜C20アルキル、随意に置換されているC〜C20アルケニル、随意に置換されているC〜C20アルキニル、随意に置換されているC〜C20アルコキシカルボニル、随意に置換されているシクロアルキル、随意に置換されているヘテロシクロアルキル、随意に置換されているアリール、随意に置換されているヘテロアリール、随意に置換されているシクロアルキルアルキル、随意に置換されているヘテロシクロアルキルアルキル、随意に置換されているアリールアルキル、随意に置換されているヘテロアリールアルキル、随意に置換されているシクロアルキルアルケニル、随意に置換されているヘテロシクロアルキルアルケニル、随意に置換されているアリールアルケニル、随意に置換されているヘテロアリールアルケニル、随意に置換されているシクロアルキルアルキニル、随意に置換されているヘテロシクロアルキルアルキニル、随意に置換されているアリールアルキニル、随意に置換されているヘテロアリールアルキニル、糖残基およびアミノ酸残基(好ましくはアミノ酸のカルボキシ末端を介して結合している)からなる群から選択され;
10’は、水素であり、または
10およびR10’は、これらが結合している炭素原子と一緒に、随意に置換されているスピロシクロアルキルを形成し;
【0091】
21は、−アミノ酸−R13であり、ここで、R13は、N末端に共有結合しており;
11は、水素、随意に置換されているアルキル、随意に置換されているシクロアルキル、随意に置換されているヘテロシクロアルキル、随意に置換されているアリールおよび随意に置換されているヘテロアリールからなる群から選択され;
12は、水素またはアルキルから選択され;および
13は、水素、アミノ保護基およびR10からなる群から選択され、
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表されるプロドラッグを表す。
【0092】
いくつかの好ましい態様において、Zは、−O−C(O)−R10、−O−C(O)−[C(R10)(R10’)]1〜4−NH(R13)または−OR11である。
いくつかの好ましい態様において、アミノ酸は、L−アミノ酸である。
特定の好ましい態様において、糖残基は、グルコース、ガラクトース、マンノース、グロース、イドース、タロース、アロース、アルトロース、フルクトース、ラムノース、リボースおよびキシロースからなる群から選択された糖類である。
【0093】
本発明の化合物の好ましい態様において、プロドラッグは、
【化8】

からなる群から選択される。
【0094】
本発明の化合物の好ましい態様において、プロドラッグは、
【化9】

からなる群から選択される。
【0095】
第2の局面において、本発明は、抗真菌化合物に対する真菌の感受性を選択的に増強するのに有用である、式(B):
【化10】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化11】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;また
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化12】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体を含む。
【0096】
第1の局面の好ましい態様において、式(B)は、式(B−1)
【化13】

式中、
A、E、X、X、Zおよびtは、式(B)について定義されており;
は、Hまたは−OHであり;
【0097】
は、−R20、−O−R20、−R21または
【化14】

であり、ここで、−R20は、−C(O)−R10、−C(O)O−R10、−R11、−CH(R12)−O−C(O)−R10、−C(O)−[C(R10)(R10’)]1〜4−NH(R13)、−S(O)R10、−P(O)(OR10)(OR10)、−C(O)−(CH−CH(OH)−CH−O−R10、−C(O)−O−(CH−CH(OH)−CH−O−R10および−C(O)−(CH−C(O)OR10からなる群から選択され、ただし、Zが結合しているNは、2個の酸素原子に直接結合しておらず;または
は、存在せず、R20は、これが結合しているNと共に随意に置換されている複素環を形成し;
nは、1〜4であり;
【0098】
10は、水素、随意に置換されているC〜C20アルキル、随意に置換されているC〜C20アルケニル、随意に置換されているC〜C20アルキニル、随意に置換されているC〜C20アルコキシカルボニル、随意に置換されているシクロアルキル、随意に置換されているヘテロシクロアルキル、随意に置換されているアリール、随意に置換されているヘテロアリール、随意に置換されているシクロアルキルアルキル、随意に置換されているヘテロシクロアルキルアルキル、随意に置換されているアリールアルキル、随意に置換されているヘテロアリールアルキル、随意に置換されているシクロアルキルアルケニル、随意に置換されているヘテロシクロアルキルアルケニル、随意に置換されているアリールアルケニル、随意に置換されているヘテロアリールアルケニル、随意に置換されているシクロアルキルアルキニル、随意に置換されているヘテロシクロアルキルアルキニル、随意に置換されているアリールアルキニル、随意に置換されているヘテロアリールアルキニル、糖残基およびアミノ酸残基(好ましくはアミノ酸のカルボキシ末端を介して結合している)からなる群から選択され;
10’は、水素であり、または
10およびR10’は、これらが結合している炭素原子と一緒に、随意に置換されているスピロシクロアルキルを形成し;
【0099】
21は、−アミノ酸−R13であり、ここで、R13は、N末端に共有結合しており;
11は、水素、随意に置換されているアルキル、随意に置換されているシクロアルキル、随意に置換されているヘテロシクロアルキル、随意に置換されているアリールおよび随意に置換されているヘテロアリールからなる群から選択され;
12は、水素またはアルキルから選択され;および
13は、水素、アミノ保護基およびR10からなる群から選択される、
で表されるプロドラッグを表す。
【0100】
いくつかの好ましい態様において、Zは、−O−C(O)−R10、−O−C(O)−[C(R10)(R10’)]1〜4−NH(R13)または−OR11である。
いくつかの好ましい態様において、アミノ酸は、L−アミノ酸である。
特定の好ましい態様において、糖残基は、グルコース、ガラクトース、マンノース、グロース、イドース、タロース、アロース、アルトロース、フルクトース、ラムノース、リボースおよびキシロースからなる群から選択された糖類である。
【0101】
本発明の化合物の好ましい態様において、AはNHである。
本発明の化合物の好ましい態様において、Aはアリール、好ましくはフェニルである。
本発明の化合物の好ましい態様において、EはCHまたはC=N(OH)である。
本発明の化合物の好ましい態様において、XおよびXの一方はCHである。
【0102】
本発明の化合物の好ましい態様において、ZはCHである。
本発明の化合物の好ましい態様において、
【化15】

は二重結合である。
本発明の化合物の好ましい態様において、tは0である。
【0103】
本発明の化合物の好ましい態様において、化合物は、
【化16】

ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される。
【0104】
本発明の化合物の好ましい態様において、化合物は、
【化17】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である。
【0105】
天然に存在するか、または天然に存在しないアミノ酸を用いて、本発明のプロドラッグを調製する。特に、プロドラッグ部分として適する標準的なアミノ酸には、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、システインおよびプロリンが含まれる。特に好ましいのは、L−アミノ酸である。随意に、包含されるアミノ酸は、α−、β−またはγ−アミノ酸である。また、天然に存在する標準的ではないアミノ酸を、本発明の組成物および方法において用いることができる。例えば、タンパク質中に一般的に見出される標準的な天然に存在するアミノ酸に加えて、天然に存在するアミノ酸にはまた、4−ヒドロキシプロリン、ガンマ−カルボキシグルタミン酸、セレノシステイン、デスモシン、6−N−メチルリシン、エプシロン−N,N,N−トリメチルリシン、3−メチルヒスチジン、O−ホスホセリン、5−ヒドロキシリシン、エプシロン−N−アセチルリシン、オメガ−N−メチルアルギニン、N−アセチルセリン、ガンマ−アミノ酪酸、シトルリン、オルニチン、アザセリン、ホモシステイン、ベータ−シアノアラニンおよびS−アデノシルメチオニンが例示的に含まれる。天然に存在しないアミノ酸には、フェニルグリシン、メタ−チロシン、パラ−アミノフェニルアラニン、3−(3−ピリジル)−L−アラニン、4−(トリフルオロメチル)−D−フェニルアラニンなどが含まれる。
【0106】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 4,443,435(この全体を参考として援用する)に、−CH(R130)−X15−C(O)−R131を含むものとして記載されていることを除いて、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含み、ここで、
【0107】
15は、O、SまたはNR132であり;
131は、
(a)1〜20個の炭素原子を有する直鎖状または分枝状鎖アルキル、特にメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチルまたはヘキシル;
(b)6〜10個の炭素原子を有するアリール、特にフェニル、置換フェニルまたはナフタレン;
【0108】
(c)3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、特にシクロペンチルまたはシクロヘキシル;
(d)2〜20個の炭素原子を有するアルケニル、特にC2〜6アルケニル、例えばビニル、アリルまたはブテニル;
(e)5〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニル、特にシクロペンテニルまたはシクロヘキセニル;
【0109】
(f)2〜20個の炭素原子を有するアルキニル、特にC2〜6アルキニル、例えばエチニル、プロピニルまたはヘキシニル;
(g)アラルキル、アルカリール、アラルケニル、アラルキニル、アルケニルアリールまたはアルキニルアリール、ここでアルキル、アリール、アルケニルおよびアルキニルは、前に定義したとおりである;
【0110】
(h)低級アルコキシカルボニル、特にC1〜6アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルおよびシクロペントキシカルボニル;
(i)カルボキシアルキルまたはアルカノイルオキシアルキル、特にカルボキシ−C1〜6アルキル、例えばホルミルオキシメチルおよびホルミルオキシプロピル;またはC1〜6(アルキルカルボキシアルキル)、例えばアセトキシメチル、n−プロパノイルオキシエチルおよびペンタノイルオキシブチル;
【0111】
(j)飽和または不飽和の単環式複素環または多環式複素環または融合複素環であって、カルボニル官能基に直接結合しているか、またはアルキレン架橋を介してこれに結合しており、その各々の複素環中に、ヘテロ原子N、SまたはOのいずれか1または2以上を1〜3個含み、かかる環の各々が、3〜8員環であり;および
【0112】
(k)上記の単置換または多置換誘導体であって、前記置換基の各々が、低級アルキル;低級アルコキシ;低級アルカノイル;低級アルカノイルオキシ;ハロ、特にブロモ、クロロまたはフルオロ;ハロ低級アルキル、特にフルオロ、クロロまたはブロモ低級アルキル、例えばトリフルオロメチルおよび1−クロロプロピル;シアノ;カルベトキシ;低級アルキルチオ、特にC1〜6低級アルキルチオ、例えばメチルチオ、エチルチオおよびn−プロピルチオ;ニトロ;カルボキシル;アミノ;低級アルキルアミノ、特にC1〜6アルキルアミノ、例えばメチルアミノ、エチルアミノおよびn−ブチルアミノ;ジ低級アルキルアミノ、特にジ(C1〜6低級アルキル)アミノ、例えばN,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノおよびN,N−ジヘキシルアミノ;カルバミル;低級アルキルカルバミル、特にC1〜6アルキルカルバミル、例えばメチルカルバミルおよびエチルカルバモイル;ならびにR133−X−C(O)−フェニル−、ここでR133は、水素または1〜10個の炭素を有するアルキルである、からなる群から選択されるものであり;
【0113】
130は、水素、(b)R131、低級アルカノイル、シアノ、ハロ低級アルキル、カルバミル、低級アルキルカルバミルまたはジ低級アルキルカルバミル、−CHONO、または−CHOCOR131であり;
132は、水素または低級アルキルであり;またさらにここで、R131およびR130は、一緒になって:
【化18】

からなる群から選択された環化部分を形成してもよい。
【0114】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 6,407,235(この全体を参考として援用する)に、以下のものを含むものとして記載されていることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む:
【0115】
a)−C(O)(CHC(O)OR40、ここでmは1、2、3または4である、
b)
【化19】

ここでR41は−N(R42)(R43)であり、R42およびR43は、水素もしくは低級アルキルであるか、または随意に低級アルキルにより置換されている5員もしくは6員のヘテロシクリルもしくはヘテロアリールであり、あるいは
c)-C(O)(CH)NHC(O)(CH)N(R42)(R43)。
【0116】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 6,545,131(この全体を参考として援用する)に、以下のものを含むものとして記載されていることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む:
【0117】
CO−(CH=CH)n1−(CHn2−Ar−NH、−CO−(CHn2−(CH=CH)n1−Ar−NH、CO−(CHn2−(CH=CH)n1−CO−NH−Ar−NHおよびCO−(CH=CH)n1−(CHn2−CO−NH−Ar−NHならびにこれらの置換された変形、ここでn1およびn2は、0〜5であり、Arは、置換または非置換アリール基である。いくつかの好ましい態様において、Zは、CO−(CHn3−NHであり、ここでn3は、0〜15、好ましくは3〜15、また好ましくは6〜12である。このクラス中の特に好ましい置換基は、6−アミノヘキサノイル、7−アミノヘプタノイル、8−アミノオクタノイル、9−アミノノナノイル、10−アミノデカノイル、11−アミノウンデカノイルおよび12−アミノドデカノイルである。これらの置換基は、一般に、対応するアミノ酸類、6−アミノヘキサン酸などから合成される。当該アミノ酸類は、標準的な方法、例えばBoc保護によりN末端で保護されている。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCCI)で促進されたN末端保護された置換基のタプシガルギンへのカップリングと、その後の標準的な脱保護反応により、第一級アミンを含むタプシガルギンのアナログが生成する。
【0118】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 7,115,573(この全体を参考として援用する)に、以下のものを含むものとして記載されていることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む:
【0119】
式(1)(AA)−AA−AA−AAで表されるオリゴペプチドであって、式中:各々のAAは、独立してアミノ酸を表し、nは、0または1であり、nが1である場合には、(AA)は、AAであり、これは、任意のアミノ酸を表し、AAは、イソロイシンを表し、AAは、任意のアミノ酸を表し、AAは、任意のアミノ酸を表す、
(2)安定化基、および
(3)随意に、トロアーゼ(trouase)により切断可能ではないリンカー基、例えばTOP(以下により詳細に記載する)
【0120】
ここで、オリゴペプチドは、当該オリゴペプチドの第1の結合部位において安定化基に直接結合しており、当該オリゴペプチドは、当該オリゴペプチドの第2の結合部位において、治療剤に直接結合しているか、またはリンカー基を介して治療剤に間接的に結合しており、
ここで、安定化基は、全血中に存在する酵素による化合物の切断を妨げ、および
【0121】
ここで、当該化合物は、標的細胞と関連する酵素により切断され、当該標的細胞と関連する酵素は、TOP(Thimetオリゴペプチダーゼ)以外である。当該化合物は、好ましくは、トロアーゼ、特にTOPによる切断に対して耐性である、即ち生理学的条件の下での切断に対して耐性であるオリゴペプチドを含む。トロアーゼにより切断可能ではない随意に存在するリンカー基は、生理学的条件の下で切断可能ではない。
【0122】
プロドラッグのこれらの部分の典型的な配向は、以下の通りである:(安定化基)−(オリゴペプチド)−(随意のリンカー基)−(治療剤)。
【0123】
プロドラッグの2つの部分の直接の結合は、共有結合が2つの部分の間に存在することを意味する。したがって、安定化基およびオリゴペプチドは、オリゴペプチドの第1の結合部位、典型的にはオリゴペプチドのN末端において、共有化学結合を介して直接結合している。オリゴペプチドおよび治療剤が直接結合している場合には、これらは、オリゴペプチドの第2の結合部位において互いに共有結合している。オリゴペプチドの第2の結合部位は、典型的には、オリゴペプチドのC末端であるが、オリゴペプチド上の他の箇所であってもよい。
【0124】
プロドラッグの2つの部分の間接的な結合は、2つの部分の各々がリンカー基に共有結合していることを意味する。代替的な態様において、プロドラッグは、オリゴペプチドの治療剤への間接的な結合を有する。したがって、典型的には、オリゴペプチドは、リンカー基に共有結合しており、これは次に、治療剤に共有結合している。
【0125】
代替的な態様において、プロドラッグの配向を、安定化基がオリゴペプチドにC末端において結合し、治療剤がオリゴペプチドのN末端に直接または間接的に結合するように、逆転させてもよい。したがって、代替的な態様において、オリゴペプチドの第1の結合部位は、オリゴペプチドのC末端であってもよく、オリゴペプチドによる第2の結合部位は、オリゴペプチドのN末端であってもよい。リンカー基は、随意に治療剤とオリゴペプチドとの間に存在し得る。本発明のプロドラッグの代替的な態様は、主要な態様が機能するのと同様にして機能する。
【0126】
安定化基は、典型的に、血液、血清および正常な組織中に存在するプロテイナーゼおよびペプチダーゼによる切断からプロドラッグを保護する。特に、安定化基は、オリゴペプチドのN末端をキャップするため(したがって時々NキャップまたはNブロックと呼ばれる)、これは、プロドラッグがさもなければ影響されやすい場合があるペプチダーゼに対して回避する作用を奏する。全血中に存在する酵素によりオリゴペプチドの切断を妨げる安定化基は、以下のものから選択される:
【0127】
(1)アミノ酸以外、および
(2)(i)遺伝子的にコードされていないアミノ酸、または(ii)アスパラギン酸のβ−カルボキシル基もしくはグルタミン酸のγ−カルボキシル基においてオリゴペプチドのN末端に結合している、アスパラギン酸またはグルタミン酸のいずれかである、アミノ酸。
【0128】
例えば、ジカルボン酸(もしくはより高次のカルボン酸)またはこの薬学的に許容し得る塩を、安定化基として用いてもよい。2つよりも多いカルボン酸を有する化学的ラジカルがまた、プロドラッグの一部として許容し得るため、ジカルボン酸(またはより高次のカルボン酸)を有する末端基は、例示的なNキャップである。このように、Nキャップは、2または3以上のカルボン酸を含む化学的基のモノアミド誘導体であってもよく、ここで、アミドは、ペプチドのアミノ末端上に結合しており、残りのカルボン酸は、遊離であり、結合していない。この目的のために、Nキャップは、好ましくはコハク酸、アジピン酸、グルタミン酸またはフタル酸であり、コハク酸およびアジピン酸が最も好ましい。本発明のプロドラッグ化合物における有用なNキャップの他の例には、ジグリコール酸、フマル酸、ナフタレンジカルボン酸、ピログルタミン酸、酢酸、1−または2−ナフチルカルボン酸、1,8−ナフチルジカルボン酸、アコニット酸、カルボキシケイ皮酸、トリアゾールジカルボン酸、グルコン酸、4−カルボキシフェニルボロン酸、(PEG).sub.nアナログ、例えばポリエチレングリコール酸、ブタンジスルホン酸、マレイン酸、ニペコチン酸およびイソニペコチン酸が含まれる。
【0129】
さらに、遺伝子的にコードされていないアミノ酸、例えば以下のうち1種をまた、安定化基として用いてもよい:β−アラニン、チアゾリジン−4−カルボン酸、2−チエニルアラニン、2−ナフチルアラニン、D−アラニン、D−ロイシン、D−メチオニン、D−フェニルアラニン、3−アミノ−3−フェニルプロピオン酸、γ−アミノ酪酸、3−アミノ−4,4−ジフェニル酪酸、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、4−アミノメチル安息香酸およびアミノイソ酪酸。
【0130】
オリゴペプチドと治療剤との間のリンカー基は、以下のような理由により有利であり得る:1.AAアミノ酸の酵素による放出または他の酵素による活性化の段階を容易にするための立体的考察のためのスペーサーとして。2.治療剤とオリゴペプチドとの間の適切な結合化学を提供するため。3.プロドラッグ共役体を製造する合成プロセスを改善するため(例えば、共役の前に治療剤またはオリゴペプチドをリンカー基で予め誘導体化して、収率または特異性を増大させることにより)。4.プロドラッグの物理的特性を改善するため。5.薬剤の細胞内放出のための追加の機構を提供するため。
【0131】
リンカー構造は、所要の官能性により影響される。可能なリンカー化学の例は、ヒドラジド、エステル、エーテルおよびスルフヒドリルである。アミノカプロン酸は、二官能性リンカー基の例である。アミノカプロン酸をリンカー基の一部として用いる場合には、これは、オリゴペプチドの番号付けスキームにおいてアミノ酸として数えない。
【0132】
オリゴペプチド部分は、当該オリゴペプチドの第1の結合部位において、全血中に存在する酵素によるオリゴペプチドの切断を妨げる安定化基に結合しており、当該オリゴペプチドの第2の結合部位において治療剤に直接、または間接的に結合している。オリゴペプチドの治療剤および安定化基への結合を、任意の順序で行っても、同時に行ってもよい。得られた共役体を、TOPによる切断されやすさ(cleavability)について試験する。TOPによる切断に対して耐性な試験化合物を選択する。得られた共役体をまた、全血中での安定性について試験することができる。全血中で安定な試験化合物を選択する。
【0133】
オリゴペプチド、安定化基およびUS 7,115,573の随意のリンカーの組み合わせは、US 2002-0142955にさらに記載されており、これをまた、本明細書において参考として援用する。
【0134】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 2004-0019017 A1(この全体を参考として援用し、これには、カスパーゼ阻害剤プロドラッグが記載されている)において:
【化20】

【0135】
式中、R51は、2〜30個、好ましくは2〜24個の炭素原子の、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状の、置換または非置換アルキルであり;
52は、Hまたはリン脂質頭部基、好ましくはコリンであり;
【0136】
は、直接の共有結合または基C(O)LR53であり、ここで、Lは、2〜15個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の、直鎖状または分枝状の、置換または非置換アルキルであり、これは、随意に環状要素を含み、酸素、硫黄およびN(R54)からなる群から選択された1個または2個以上の原子により随意に隔てられており;R53は、O、SおよびN(R54)からなる群から選択され、ここでR54は、Hまたは1〜6個の炭素原子を有する飽和または不飽和のアルキルである、
を含むものとして記載されていることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む。
【0137】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 7,115,573(この全体を参考として援用する)に記載されているY部分であることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む。
【0138】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)のR20がUS 2006-0166903 A1(この全体を参考として援用する)に、−X−L−O−P(O)(O)−O−CH−CH−N(CH、式中XおよびLは、US 2006-0166903A1に記載されている通りである、を含むものとして記載されていることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む。
【0139】
他の態様において、本発明の化合物は、Z(式Aの)およびZ(式Bの)が、すべてこれらの全体を本明細書において参考として援用するUS 6,855,702、US 2005-0137141およびUS 2006-0135594に記載されている切断可能なプロドラッグ部分の1つであることを除き、上記で定義した式(A)および(B)で表される化合物を含む。
【0140】
第3の局面において、本発明は、ヒストンデアセチラーゼの阻害剤を含む組成物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、抗真菌剤、および薬学的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。好ましい態様において、当該組成物は、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼの阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、抗真菌有効量の抗真菌剤、および薬学的に許容し得る担体、賦形剤または希釈剤を含む。
【0141】
本発明の組成物を、当該分野において周知のすべての方法により処方することができ、非経口、経口、舌下、経皮的、局所的、鼻腔内、気管内または直腸内を含むがこれらに限定されない任意の経路による投与のために、調製することができる。特定の好ましい態様において、本発明の組成物を、病院の設備において静脈内投与する。特定の他の好ましい態様において、投与を、好ましくは経口経路によるものであってもよい。
【0142】
担体の性質は、投与の経路に依存する。本明細書中で用いる場合、用語「薬学的に許容し得る」とは、生物システム、例えば細胞、細胞培養物、組織または器官と適合性であり、活性成分(1種または2種以上)の生物学的活性の有効性に干渉しない無毒性物質を意味する。したがって、本発明の組成物は、阻害剤に加えて、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤および当該分野において周知の他の物質を含んでいてもよい。薬学的に許容し得る処方物の調製は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 第18版、A. Gennaro編、Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990に記載されている。
【0143】
本発明の組成物の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、好ましくは式(A)
【化21】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、またここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体である。
【0144】
本発明の組成物の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、
【化22】

ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される。
【0145】
本発明の組成物の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、
【化23】

ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される。
【0146】
本発明の組成物の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、
【化24】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である。
【0147】
本発明の組成物の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、式(B)
【化25】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化26】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化27】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体である。
【0148】
第4の局面において、本発明は、真菌細胞を抗真菌剤に対して選択的に感作する方法であって、細胞を、選択的感作有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、またはこれらの組成物と接触させることを含み、ここで選択的有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、またはこれらの組成物が、当該量の当該抗真菌剤と相乗的である、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0149】
第5の局面において、本発明は、真菌細胞に対する抗真菌剤の活性を選択的に増強する方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体の組合せ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0150】
第6の局面において、本発明は、真菌増殖を選択的に阻害する方法であって、真菌を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物と接触させること含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0151】
第7の局面において、本発明は、真菌感染症を選択的に処置する方法であって、少なくとも1の感染性真菌単位により感染した生物に、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物を投与することを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼのヒドロキサム酸塩をベースとする阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0152】
第8の局面において、本発明は、真菌細胞の抗真菌剤に対する耐性を選択的に低下させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0153】
第9の局面において、本発明は、エルゴステロール生合成に関与する真菌細胞中の遺伝子の抗真菌剤依存性上方調節を選択的に低下させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0154】
第10の局面において、本発明は、真菌細胞を抗真菌剤と接触させることによる抗真菌剤耐性真菌細胞の発達を選択的に阻害する方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくはこれらの複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法を提供する。好ましい態様において、当該阻害剤は、ヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物である。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0155】
第11の局面において、本発明は、抗真菌剤による真菌細胞の処理の間の真菌細胞において、エルゴステロール生合成を選択的に阻害する、好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害する、または多剤輸送体の合成を選択的に阻害する、好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部を阻害する方法であって、前記真菌細胞を、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体と接触させることを含む、前記方法を提供する。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0156】
第12の局面において、本発明は、真菌細胞に対する抗真菌剤の殺効果を選択的に増大させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせと接触させることを含む、前記方法を提供する。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0157】
第13の局面において、本発明は、真菌細胞に対する抗真菌剤の抗生物質投与後効果を選択的に増大させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、好ましくはヒドロキサム酸塩をベースとするヒストンデアセチラーゼの阻害剤、より好ましくは式(A)で表される化合物、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせと接触させることを含む、前記方法を提供する。他の態様において、当該化合物は、式(B)で表される。
【0158】
本発明の好ましい方法において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、式(A)
【化28】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体;ならびに
【0159】
式(B)
【化29】

式中、
Aは、−O(CH)、−NH およびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化30】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化31】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択された化合物である。
【0160】
本発明の方法の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、
【化32】

およびこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグのおよび複合体からなる群から選択される。
【0161】
本発明の方法の好ましい態様において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、
【化33】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である。
【0162】
本発明の方法の好ましい態様において、プロドラッグは、
【化34】

からなる群から選択される。
【0163】
本発明の方法の好ましい態様において、プロドラッグは、
【化35】

からなる群から選択される。
【0164】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤は、エルゴステロール合成の阻害剤、好ましくはアゾールである。
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤は、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される。
【0165】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤は、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである。他の好ましい態様において, 抗真菌剤は、ニッコーマイシン(nikkomycin)である。
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤に対して真菌細胞を選択的に感作することは、エルゴステロール生合成を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0166】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤に対して真菌細胞を選択的に感作することは、多剤輸送体の合成を阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部の発現を阻害することを含む。
【0167】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤の活性を選択的に増大させることは、エルゴステロール生合成を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0168】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤の活性を選択的に増大させることは、多剤輸送体の合成を阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部の発現を阻害することを含む。
【0169】
本発明の方法の好ましい態様において、真菌増殖を選択的に阻害することは、エルゴステロール生合成を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0170】
本発明の方法の好ましい態様において、真菌増殖を選択的に阻害することは、多剤輸送体の合成を阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部の発現を阻害することを含む。
【0171】
本発明の方法の好ましい態様において、真菌感染症を選択的に処置することは、エルゴステロール生合成を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0172】
本発明の方法の好ましい態様において、真菌感染症を選択的に処置することは、多剤輸送体の合成を阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部の発現を阻害することを含む。
【0173】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤に対する真菌細胞の耐性を選択的に低下させることは、エルゴステロール生合成を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0174】
本発明の方法の好ましい態様において、抗真菌剤に対する真菌細胞の耐性を選択的に低下させることは、多剤輸送体の合成を阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部の発現を阻害することを含む。
【0175】
本発明の方法の好ましい態様において、細胞を抗真菌剤と接触させることによる抗真菌剤耐性真菌の発達を選択的に阻害することは、エルゴステロール生合成を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害することを含む。
【0176】
本発明の方法の好ましい態様において、細胞を抗真菌剤と接触させることによる抗真菌剤耐性真菌の発達を選択的に阻害することは、多剤輸送体の合成を阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子またはこの一部の発現を阻害することを含む。
【0177】
本発明の方法の好ましい態様において、真菌細胞の抗真菌剤での処理の間に、真菌細胞において、エルゴステロール生合成を選択的に阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成経路における段階を阻害すること、より好ましくはエルゴステロール生合成に関与する遺伝子の発現を阻害すること、または多剤輸送体の合成を選択的に阻害すること、より好ましくは多剤輸送体をコードする遺伝子もしくはこの一部を阻害することは、真菌細胞を、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤と接触させることを含む。
【0178】
本発明の方法の好ましい態様において、エルゴステロール生合成に関与する遺伝子は、ERG1およびERG11からなる群から選択される。
本発明の方法の好ましい態様において、多剤輸送体の合成に関与する遺伝子は、CDR1およびCDR2からなる群から選択される。
本発明の方法の好ましい態様において、真菌細胞は、他の生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトの、中または上にある。
【0179】
本発明の方法の好ましい態様は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤および抗真菌剤またはこれらの組成物を、これらを必要としている生物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトに投与することを含む。
【0180】
本発明の好ましい態様において、HDAC阻害剤および抗真菌剤を、一緒に投与する。本発明の別の好ましい態様において、HDAC阻害剤および抗真菌剤を、別個に投与する。本発明のいくつかの好ましい態様において、HDAC阻害剤を、抗真菌剤の投与の前に投与する。本発明のいくつかの他の好ましい態様において、HDAC阻害剤を、抗真菌剤の投与の後に投与する。
【0181】
本明細書中に提示するデータは、本発明の化合物の抗真菌剤増強効果を例証する。これらのデータは、本発明の化合物が、抗真菌剤の効果を増強するためのみならず、カンジダ種およびアスペルギルス種などの種による感染症を含む真菌感染症の処置のための治療剤としても有用であることを、合理的に予測させる。
【0182】
本発明は、以下の例を参照することによりより容易に理解され、これらは、本発明の範囲を限定するのではなく、本発明を例示するために示される。
【0183】
例1
HDAC阻害剤の抗真菌剤との相乗効果
既知のHDAC阻害剤であるLAQ−824、MS275、オキサムフラチン(oxamflatin)、SAHAおよびTSAを含むHDAC阻害剤、ならびに抗真菌剤の原液(10mg/ml)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に作成する。その後これを、DMSOの最終濃度が0.5%となるように培地で希釈する。
【0184】
本発明の化合物は、典型的には、これらが抗真菌剤に相乗作用を付与する濃度において抗真菌活性を有せず(しかし本発明の範囲内においてこれらは抗真菌活性を有してもよい)、宿主細胞に対して毒性でもない。
【0185】
HDAC阻害剤または抗真菌剤(または両方)の最小阻害濃度(MIC80)は、真菌の増殖を、HDAC阻害剤または抗真菌剤の不在下での真菌の増殖と比較して80%減少させる濃度である。
【0186】
HDAC阻害剤の哺乳動物細胞毒性を、570nmにおける吸収として測定される、臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム(MTT;Sigma)の還元により、決定する。
【0187】
カンジダ種
Candida.albicans(ATCC 90028)、C.glabrata(ATCC 90030)、C.krusei(ATCC 14243)、C.parapsilosis(ATCC 22019)およびC.tropicalis(ATCC 750)を、酵母抽出物−ペプトン−デキストロース培地(YEPD;1%酵母、2%ペプトン、2%デキストロース、pH6.3)中で増殖させる。
【0188】
感受性の研究のために、両方のカンジダ種の一晩の培養物を、YEPD培地で1:100に希釈し、30℃で4時間増殖させ、血球計数器において計数し、次に5×10個の細胞/mlの濃度に希釈する。最小阻害濃度(MIC)を、30℃での24時間および48時間のインキュベーションの後での、96ウェルプレート中での化合物(0〜128μg/ml)および抗真菌剤(0〜32μg/ml)の連続的な2倍希釈により、決定する。チェッカーボード法により決定する相乗性を、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤および抗真菌剤のみのMICの和よりも大きい、抗真菌剤のMICの低下として、定義する。好ましい態様において、このような相乗性の結果、抗真菌剤のみに対して、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と組み合わせての抗真菌剤のMICの≧4倍の低下がもたらされる。好ましい態様において、抗真菌剤のみまたはヒストンデアセチラーゼのみの相乗的濃度は、抗真菌活性を有しない。
【0189】
アスペルギルス種
A. fumigatus(ATCC 1022)を、RPMI 1640培地(Sigma)中で、37℃にて振盪せずに増殖させる。
抗真菌MIC80(≧80%増殖阻害)および抗真菌剤との相乗性を、RPMI 1640培地を用いて、5×10分生子(conidiospore)/mlの接種菌液において、ブロス微量希釈法(NCCLSプロトコルM38−A)により、測定する。
【0190】
相乗性について、試験化合物を2倍希釈(0.125〜128μg/ml)において、また2倍希釈(0.06〜64μg/ml)における抗真菌剤と組み合わせて、チェッカーボード様式において試験する。相乗性は、好ましくは、37℃で48時間後に、抗真菌剤のみと比較して4倍またはこれより大きいMICの変化をもたらす。
【0191】
真菌細胞におけるHDAC阻害活性の決定
C.albicansおよびC.glabrataのプロトプラストを、Franzusoffら(1991)のリチカーゼ(lyticase)法により調製し、次に試験化合物(0〜30μg/ml)と共に2時間インキュベートする。試験化合物の活性を試験するために、蛍光基質Fluor-de-Lys (BioMol)を、Ruijtgerら(2004)のプロトコルに記載されたように用い、λex360nm、λem470nmにて測定する。
【0192】
A.fumigatusのプロトプラストを、30℃にて一晩培養物からの細胞を、グルカナーゼGおよびドリセラーゼ(driselase)(InterSpex Inc.)で4〜5時間消化することにより、調製する(Weidner 1998)。その後、試験化合物の阻害効果を、プロトプラスト(1×10/50μl)を試験化合物(0.001〜40μg/ml)と共に2時間インキュベートし、続いて100μMのHDAC基質(Boc-Lys(Ac)-AMC;Bachem Inc.)と共に2時間インキュベートし、脱アセチル化されたペプチド産物をトリプシン加水分解し、蛍光を測定する(λex370nm、λem470nm)ことにより、決定する。
【0193】
C.albicans、C.glabrataおよびA.fumigatusのプロトプラストにおけるHDAC活性アッセイの結果を、図1および2に示す。
【0194】
化合物スクリーニングアッセイ
化合物スクリーニングアッセイを、各々のウェルが以下の成分:1%DMSO中の50μlの試験化合物(最終濃度の4倍)、50μlの抗真菌剤(1%DMSO中、最終濃度の4倍)およびYEPD培地中の100μlの10細胞/ml懸濁液(最終密度、200μlのアッセイ容積中5×10細胞/ml)を含む、96ウェルの平坦底ポリスチレンプレート(VWR, New Jersey, USA)において、行う。
【0195】
実験の日に、100%DMSO中に5mMで試験化合物を含む96ウェルプレートを、−20℃の冷凍庫から取り出し、融解させ、2000rpmで2分間回転させて、溶液を各ウェルの底に採集する。以下の条件を、すべての試験化合物について調査する:10μg/mlの化合物のみ;50μg/mlの化合物のみ;10μg/mlの化合物と0.5μg/mlの抗真菌剤との組み合わせ、ならびに50μg/mlの化合物と0.5μg/mlの抗真菌剤との組み合わせ。
【0196】
各々のプレートを、Progene(Ultident Scientific,Quebec,Canada)からの空気透過性シーラーで被覆し、プレートを、COを含まない30℃のインキュベーター中に配
置する。24時間のインキュベーションの後、各々のプレートを、インキュベーターから取り出し、放置して室温に到達させ、細胞を、各々のウェルについて別個のチップで再懸濁させる。各々のウェルについての600nmにおける吸光度(A600)を、24時間および42時間において、TECANプレートリーダー(North Carolina,USA)中で、製造供給元により供給されたXFluor4プログラムを用いて、測定する。プレートを密閉し、24時間および42時間においてA600の読み取りを行う。
【0197】
相乗的活性の結果は、本発明の化合物が、抗真菌剤に相乗作用を付与する(即ち、これらが、抗真菌剤のMICを低下させる)ことを例証する(表1〜12)。すべての相乗性の結果は、他に示さない限り、48時間におけるものである。
【0198】
【表1】

【0199】
【表2】

【0200】
【表3】

【0201】
【表4】

【0202】
【表5】

【0203】
【表6】

【0204】
【表7】

【0205】
【表8】

【0206】
【表9】

【0207】
【表10】

【0208】
【表11】

【0209】
【表12】

【0210】
【表13】

【0211】
【表14】

【0212】
【表15】

【0213】
【表16】

【0214】
【表17】

【0215】
【表18】

【0216】
【表19】

【0217】
【表20】

【0218】
抗真菌剤の化合物4との相乗性
化合物4はまた、C.glabrataに対して2μg/mLにおいてフェンプロピモルフに相乗作用を付与する。
SmithおよびEdlind(2002, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 46(11):3532-3539)は、TSAが、C.tropicalisおよびC.parapsilosisに対するアゾール活性を増強することを報告したが、C.glabrataおよびC.kruseiについてのイトラコナゾール活性に対するTSAの効果は最小であるかまたはないことを報告した。対照的に、本発明の化合物4とのケトコナゾールおよびイトラコナゾールの相乗性は、表13に示すように、数種の真菌種において例証される。
【0219】
【表21】

アゾールのMIC、<0.008mg/ml、ND:決定されず
keto=ケトコナゾール;itra=イトラコナゾール;vori=ボリコナゾール
【0220】
エルゴステロール生合成に関与する遺伝子の転写に対するアゾールとの相乗性
アゾールは、ステロール生合成経路における酵素ラノステロールデメチラーゼを阻害する。ラノステロールデメチラーゼは、遺伝子ERG11によりコードされる。C.albicans臨床的単離物におけるアゾール耐性についての複数の機構が確認されており、これには、多剤輸送体(CDR1、CDR2およびMDR1によりコードされる)の増大された発現、アゾール結合を低減させるラノステロールデメチラーゼにおける変異、ならびにERG11の発現の増大が含まれる(Henry et al. 2000, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 44(10):2693-2700)。
【0221】
遺伝子的研究により、ステロール生合成に関与する約20種の酵素の多くが増殖のために必須であることが例証されている(Smith and Edlind、上記)。しかし、そのMICよりも大幅に高い濃度における場合を除いて、これらの酵素を標的とするステロール生合成阻害剤のいずれも殺真菌性ではない。さらに、MICよりも十分に高い濃度において、増殖がより低い速度で継続するため、これらの抗真菌剤は、真に静真菌性ではない(Smith and Edlind、上記)。したがって、真菌細胞が、ステロール生合成の阻害に応答して適合することを可能にする機構を有することは、明らかである。多くのアゾール耐性C.albicans単離物における、ステロール生合成に関与する1または2以上の遺伝子の恒常的な上方調節が報告されている(Smith and Edlind、上記)。SmithおよびEdlind(上記)は、TSAが、ERG1およびERG11のフルコナゾールまたはテルビナフィン依存性上方調節、ならびにCDR1のフルコナゾール依存性上方調節を、ほぼ完全に遮断することを報告した。
【0222】
図3は、C.albicansにおけるERG11発現に対するTSAおよび化合物6の、フルコナゾールとの相乗性の効果を示す。図3に示すように、ERG11発現は、化合物6およびフルコナゾールでの処理に伴って低下する。
【0223】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、アゾール類の抗真菌の後の効果(post-antifungal effect)および殺真菌能を増大する
抗真菌の後の効果(PAFE)は、薬剤を除去した後の1のlog10の細胞の増殖を達成するのに必要な時間である。
【0224】
1つないし2つのコロニーを、5mlのYPD中に再懸濁させる。10倍の連続的希釈を、200μlの最終容積において、10倍までの希釈で行う(96ウェルプレート中)。細胞を、30℃で一晩インキュベートする。朝、600nmにおける光学密度を読み取る。0.3に最も近いがこれを上回らないA600における細胞(初期のlog相細胞)を採取し、以下のようにさらに処理する:20マイクロリットルを、200μlの最終容積において目的の薬物(1種または2種以上)(4〜8×MICにおける抗真菌剤および/または0.25〜0.5×MICにおける化合物4)の不在下または存在下でYPDを含むウェル中に移し(時間0)、細胞を、30℃にて2時間インキュベートする。次に、細胞を温かいYEPD培地中に10倍に希釈することにより、薬物を除去し、細胞を、30℃にてさらにインキュベートする。CFU/mlの計数を、時間0、細胞を希釈する前および後、ならびに所定の時点において行って、各々の薬物の組み合わせのPAFEおよび殺真菌能を決定する(図5〜10)。
【0225】
あるいはまた、細胞を、30℃で20〜24時間インキュベートする。600nmにおける吸光度を読み取り、化合物4/抗真菌剤の4倍相乗性を決定する。相乗的濃度における抗真菌剤および化合物4とインキュベートしたウェル中に存在する細胞を、未処理細胞と共に、ならびに抗真菌剤または化合物4のみ(相乗的濃度において)とインキュベートした細胞を、計数し、適切な希釈の後に、各々の条件の等しい数の細胞を、YEPD寒天プレート上に播種する。細胞を、30℃で20〜24時間インキュベートし、CFU計数を行って、各々の薬物の組み合わせの殺真菌能について評価する(図11〜13)。
【0226】
Turnidge JD, Gudmundsson S, Vogelman B, Craig WA., The postantibiotic effect of antifungal agents against common pathogenic yeasts, J Antimicrob Chemother. 1994 Jul;34(1):83-92。
【0227】
用いるアゾールおよび/またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤の濃度に依存して、ボリコナゾールまたは化合物4のみについてPAFE≦0.5時間が観察され、これはアンホテリシンB(2.8〜3.5時間)とは異なっていた。化合物4をボリコナゾールと組み合わせると、PAFEが〜1時間に延長された(図5および6C)。PAFEは、0.25MICにおいてイトラコナゾールのみについては観察されなかった。イトラコナゾールを化合物4と組み合わせると、PAFEが0.5時間に延長された(図7)。化合物4により、ボリコナゾール殺真菌活性における最小限の増大(1.1〜1.2倍)が、C.parapsilosisおよびC.tropicalisにおいて、観察された(データは示していない)。
【0228】
図8〜13は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤とアゾールとの組み合わせが、C.albicansにおいて4倍まで、C.glabrataにおいて6倍より大きい程度まで、またC.kruseiにおいて14倍を超えて、アゾール類の殺真菌活性を増大することを示す。
【0229】
HDAC阻害剤によるアゾール耐性の発達の頻度の低減
HDAC阻害剤(10mg/ml)およびアゾール類(フルコナゾール、25.6mg/ml;イトラコナゾール、10mg/ml)の原液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に作成する。これをその後、培養培地で希釈して、DMSOの最終濃度が1%より低くなるようにする。
【0230】
C.glabrata(ATCC 90030)変異体を、Vermitsky & Edlindの方法(2004, AAC, 48(10):3773-3781)に基づき、小変異体を避けるためにグリセロールをデキストロースと交換したアゾール(4×または8×MICにおける)を含むYEPG寒天プレートを用いて、、発生させる。その後、C.glabrata親菌株(ATCC 90030)およびC.glabrata変異体を、YEPD培地中で30℃で増殖させる。
【0231】
感受性の研究のために、C.glabrataの一晩の培養物を、YPD培地で1:100に希釈し、30℃で4時間増殖させ、血球計数器において計数し、次に1×10個の細胞/mlの濃度に希釈する。MICを、30℃での24時間のインキュベーションの後での、96ウェルプレート中における、HDAC阻害剤および各々のアゾールの連続的な2倍希釈により決定する。チェッカーボード法により決定した相乗性を、アゾールのみに対して、HDAC阻害剤と組み合わせての各アゾールのMICの≧4倍の低下として定義する。
【0232】
輸送の変化を、ローダミン123(Rh123)、即ち多剤耐性輸送体の基質であると知られている蛍光プローブ(λex、485nm;λem、535nm)(Clark et al., 1996, AAC, 40(2):419-425)を用いて、試験する。中期対数期の細胞を、10μMのRh123と共に30分間37℃でインキュベートし、外部のRh123を、PBS1Xを用いて除去し、細胞に結合する蛍光を、測定する。
【0233】
エルゴステロールレベルを、メタノール、次いでメタノール/ベンゼン(1/1、容積比)での、後期対数期の細胞の脂質抽出、および281nmにおける吸光度読み取りの後に決定する(Arthington-Skaggs et al., 1999, JCM, 37(10):3332-3337)。アゾールに対するエルゴステロール合成の感受性を試験するために、増殖する細胞を、脂質抽出の前に、4.75時間にわたり、0、2、5、10、20および50ng/mlのアゾールに曝露する。
【0234】
イトラコナゾールおよびフルコナゾールに対して耐性のC.glabrata変異体を、それぞれ3×10−7および5×10−6の頻度で、4×MICの関連するアゾールを含む寒天プレート上で検出した。フルコナゾール耐性変異体について、親菌株についての32μg/mlと比較して、MIC80>256μg/mlが見出された。イトラコナゾール耐性変異体について、親菌株についての1μg/mlと比較して、MIC80>64μg/mlが見出された。
【0235】
相乗的MIC80の4倍の化合物4とイトラコナゾールとの存在下で、耐性変異体が、1×10−7の頻度で検出された(2×MICにおいては、変異体は検出されなかった)。相乗的MIC80濃度の4倍の化合物4とフルコナゾールとの存在下で、耐性変異体が、2×10−7の頻度で検出された。アゾール耐性変異体における基底のエルゴステロールレベルは、親菌株から不変であり、これは、アゾールの標的であるErg11が変異体において恒常的に過剰発現される可能性が低いことを示唆する。
【0236】
アゾール耐性真菌に対するヒストンデアセチラーゼ阻害剤による抗真菌剤活性の増強
7種のイトラコナゾール耐性変異体および14種のフルコナゾール耐性変異体を、さらに試験した。単離して試験したイトラコナゾール耐性変異体の7種のうち3種およびフルコナゾール耐性変異体の14種のうち13種は、変化したRh123輸送を有し、これは、これが、これらの変異体の主要な耐性機構であることを示唆する。インビトロで観察されたこのアゾール耐性機構は、C.glabrataの臨床的単離物について報告されたものと類似する(Sanguinetti et al.、2005)。7種のイトラコナゾール耐性変異体のうちの4種は、フルコナゾールに対して交差耐性を示した(MIC80フルコナゾール 8×野性型)。単離したすべてのフルコナゾール耐性変異体は、イトラコナゾールに対して交差耐性を示した(MIC80イトラコナゾール 64×野性型)。
【0237】
イトラコナゾール耐性変異体について、化合物4は、≦4μg/mlにおいて、イトラコナゾールMIC80を>64μg/mlから≦1μg/mlまで低下させた;これは、影響を受けやすい親のMIC80に匹敵する。フルコナゾール耐性変異体について、化合物4は、フルコナゾールMICを>256μg/mlから4〜32μg/mlまで低下させた;これは、影響を受けやすい親よりもいくらか高い(32〜64μg/mlから4〜8μg/mlまで低下した)。化合物4は、(≦4μg/mlにおいて)試験したすべてのアゾール耐性変異体に対して、これらのアゾールに相乗作用を付与した。
【0238】
3種の典型的なフルコナゾール耐性変異体(それぞれ変異体番号10、12および14)について表14において明らかなように、化合物4は、≦1または≦2μg/mlの化合物4の濃度において、フルコナゾールに相乗作用を付与した。実際に、化合物4は、すべてのフルコナゾール耐性変異体に対して、4μg/mlの化合物4の最大値で、フルコナゾールに相乗作用を付与した(データは示していない)。化合物4は、同様に、すべてのフルコナゾール耐性変異体に対して≦4μg/mlの化合物4において、イトラコナゾールに相乗作用を付与した。
【0239】
4種の典型的なイトラコナゾール耐性変異体(変異体番号15、19、20および21)を、フルコナゾールおよびイトラコナゾールの両方との化合物4の相乗性について、試験した(表14)。これらの典型について、化合物4の相乗性は、≦0.5μg/mlの化合物4において、イトラコナゾールおよびフルコナゾールの両方について見られた。さらに、化合物4は、≦4μg/mlの化合物4において、すべてのイトラコナゾール耐性変異体に対して、イトラコナゾールおよびフルコナゾールの両方に相乗作用を付与した。
【0240】
【表22】

【0241】
アゾール抗真菌活性のHDAC阻害剤増強をまた、アゾール耐性菌株を含む一連の臨床的に単離したカンジダおよびアスペルギルス菌株において決定した(Diekema et al., University of Iowa College of Medicine)。
【0242】
抗真菌剤感受性試験を、Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI)M27−A2およびM38−Aブロス微量希釈法に従って、行った。組み合わせ試験を、チェッカーボード法により行った(カンジダについてフルコナゾール(FLU)またはボリコナゾール(VOR)と組み合わせての化合物4、およびアスペルギルスについてイトラコナゾール(ITR)またはVORと組み合わせての化合物4)。Fractional inhibitory concentration(FIC)(薬剤の組み合わされた阻止/抗真菌効果が相乗的、付加的または拮抗的のいずれであるかを示す相互作用係数)を、計算し、以下のように定義した:相乗的、<0.5;相加性、>0.5であるが<1;差異なし、>1であるが<4;および拮抗的、>4。アゾールの最小阻害濃度(MIC)の>4倍の低下をもたらす化合物4の濃度を、記録した。
【0243】
61種の単離物を、試験した(Michael Pfaller, Medical Microbiology Section, Pathology Department, University of Iowa):45種の侵襲性の(血流)カンジダ種の臨床的単離物(16種のFLU耐性および9種のVOR耐性単離物を含む)、ならびに16種のアスペルギルス種の臨床的単離物。化合物4は、37/45(82%)の試験したカンジダ種に対してVORとの相乗性、および34/45(76%)の試験したカンジダ種に対してFLUとの相乗性を示した。14種のC.glabrata(9FLU−R)のすべてについて、アゾールMICにおける4倍の低下が、<0.5μg/mLの化合物4の濃度において記録された。試験した16種のアスペルギルス種のうち、化合物4は、11種(69%)に対するVORおよびITRの両方との相乗性ならびに4種(25%)に対しての相加性を示した。1〜8μg/mLの化合物4の濃度は、アスペルギルス種に対するアゾールMICの4倍の低下をもたらすのに必要であった。試験した単離物のいずれについても、化合物4−アゾールの組み合わせは、インビトロでの拮抗作用を示さなかった。
【0244】
表15および16は、これらの結果を要約する。示されるように、化合物4は、アゾール耐性単離物を含むカンジダ種およびアスペルギルス種の臨床的単離物の大多数に対して、アゾール類との相乗性を示す。
【0245】
【表23】

【0246】
【表24】

【0247】
VOR MIC=ボリコナゾールの最小阻害濃度、μg/mL、CLSI M27−A2法を用い、48時間の終点とした。
FLU MIC=フルコナゾールの最小阻害濃度、μg/mL、CLSI M27−A2法を用い、48時間の終点とした。
4倍低下のための化合物4の濃度=アゾール(VORまたはFLU)MICが4倍低下する化合物4の濃度、μg/mL。記号「---」は、化合物4の試験した濃度がいずれもアゾールMICにおける4倍の低下をもたらさなかったことを示す。記号「NA」は、化合物4のみ(アゾールの不在下で)が、アゾールMICの4倍の低下が達成される前に生物の増殖を阻害したことを示す。角かっこ内の数値は、この阻害が示された最小の化合物4の濃度(μg/mL)を表す。
VOR/化合物4 FICまたはFLU/化合物4 FIC=アゾール(VORまたはFLU)と化合物4との組み合わせについてのfractional inhibitory concentration。丸かっこ内の文字は、FICの解釈を表す:S=相乗的;A=相加的およびI=差異なし。拮抗作用が見出された単離物はなかった。
【0248】
化合物4は、C.dubliniensisの4種の臨床的単離物すべてに対して単独で強力な活性を示し、これは、各々の場合においてアゾールの添加により差異なしと示されたことの主な原因となる。
【0249】
【表25】

【0250】
VOR MIC=ボリコナゾールの最小阻害濃度、μg/mL、CLSI M38−A法を用い、48時間の終点とした。
ITR MIC=イトラコナゾールの最小阻害濃度、μg/mL、CLSI M38−A法を用い、48時間の終点とした。
4倍低下のための化合物4の濃度=アゾール(VORまたはITR)MICが4倍低下する、化合物4の濃度、単位μg/mL。記号「---」は、化合物4の試験した濃度のいずれも、アゾールMICにおける4倍の低下をもたらさなかったことを示す。記号「NA」は、化合物4のみ(アゾールの不在下で)が、アゾールMICの4倍の低下が達成される前に生物の増殖を阻害したことを示す。角かっこ内の数値は、この阻害が示された最小の化合物4の濃度(μg/mL)を表す。
VOR/化合物4 FICまたはITR/化合物4 FIC=アゾール(VORまたはITR)と化合物4との組み合わせについてのfractional inhibitory concentration。丸かっこ内の文字は、FICの解釈を表す:S=相乗的;A=相加的およびI=差異なし。拮抗作用が見出された単離物はなかった。
【0251】
他の作用の機構でのエルゴステロール合成阻害剤および抗真菌化合物の活性のヒストンデアセチラーゼ阻害剤による増強
化合物4が抗真菌剤のイトラコナゾール、ボリコナゾール、アンホテリシンB、ニッコーマイシン、テルビナフィン、フェンプロピモルフ、5−フルオロシトシンおよびカスポファンギンに相乗作用を付与する能力を、C.albicans(ATCC 90028)、C.glabrata(ATCC 90030)、C.parapsilosis(ATCC 22019)またはC.tropicalis(ATCC 750)において試験する。相乗性を試験するために、細胞増殖を、共にブロス微量希釈アッセイにおいて連続的に希釈した、化合物4と組み合わせての前述の剤の存在下で評価する。
【0252】
化合物4は、すべてのカンジダ種に対して、試験したすべてのアゾール類に相乗作用を付与した。さらに、化合物4は、テルビナフィンおよびフェンプロピモルフ、即ちエルゴステロール合成経路を阻害する抗真菌剤に、C−14デメチラーゼ(当該酵素は、アゾール類により特異的に標的とされる)が関与しない段階において、相乗作用を付与した。対照的に、化合物4は、アンホテリシンB、カスポファンギンまたは5−フルオロシトシン、即ち作用の機構がエルゴステロール合成経路の範囲外にある化合物には、相乗作用を付与しなかった。また、相乗性は、ニッコーマイシン、即ち作用の機構がエルゴステロール合成経路の範囲外にある抗真菌剤について、観察された(表17)。
【0253】
【表26】

【0254】
化合物4の相乗作用がエルゴステロール合成阻害剤に独占的であることは、この作用の機構が、この経路における1または2以上の酵素の遺伝子発現をもたらし得ることを示唆する。さらに、この相乗性の範囲には、主な日和見真菌種が含まれ、これは、活性範囲が2〜3のカンジダ種のみに限定されるpan−HDAC阻害剤であるトリコスタチンAとは対照的である(Smith and Edlind、上記)。
【0255】
他の真菌種におけるヒストンデアセチラーゼ阻害剤とアゾール類との間の相乗性
他の真菌種に対する化合物4とアゾール類との間の相乗性を決定するために、一連の臨床的単離物(Micheal Rinaldi, University of Texas Health Science Center)を、例1に記載したようにチェッカーボード法により試験した。表18は、化合物4が2種を除くすべてにおいてアゾールに相乗作用を付与することを示す。
【0256】
【表27】

【0257】
2倍の相乗性が得られた
*1/2MICの化合物4において相乗性が起こる。
**アゾールのMIC<0.06μg/ml−アゾールのみのこの濃度は低すぎたので、相乗的濃度をさらに決定することができなかった。
すべての単離物は、純粋な単離物である。「種」として同定される単離物は、種のレベルを超えて同定されていない−したがって、例えば、3種のフザリウム種は、3種の別個の種または同一の種の3つの菌株であり得る。
【0258】
インビボでのマウスのカンジダ症研究
マウスカンジダ症研究のための標準的な方法は、以下の通りである。雌のCD−1マウスを、240mg/kgのシクロホスファミドを−3日において、次に80mg/kgのシクロホスファミドを1日および5日において注射することにより、免疫低下状態とする。C.albicansを、Sabouraud寒天中で増殖させ、細胞を、0.9%生理食塩水中に再懸濁させ、血球計数器中で計数する。0.2mlの容積中の合計10個の細胞を、各々のマウスの側方尾静脈中に注射する(0日において)。
【0259】
マウスを、ケトコナゾール+/−試験化合物で、感染の1日後から開始して、7日間にわたり毎日処置する。これらを、体重損失および死亡について毎日モニタリングする。マウスを、8日目に屠殺し、腎臓を取り出し、ホモジナイズし、1対の腎臓あたりの真菌負荷(CFU)を、決定する。図4は、(シクロホスファミド処置による)免疫低下状態の全身カンジダ症のマウスモデルにおけるケトコナゾールの活性に対する、2〜10mg/kgにおける化合物4の増強(すなわち、相乗)効果を示し、真菌に感染した宿主における本発明の化合物の治療効果を例証する。
【0260】
本発明を、この特定の態様に関連させて記載したが、これは、さらに改変することが可能であり、本出願は、一般的に本発明の原理に従い、本発明が関連する分野内の既知または一般的な実施内にあり、本明細書において前に述べた本質的な特徴に対して適用され得、添付した特許請求の範囲内にある、本開示からの逸脱を含む、本発明のすべての変化、使用または適合を包含することを意図することが、理解される。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】Aspergillus fumigatusプロトプラストにおけるヒストンデアセチラーゼ活性に対する試験化合物の効果を示す図である。
【図2】Candida albicansおよびC.glabrataにおけるヒストンデアセチラーゼ活性に対する試験化合物の効果を示す図である。
【図3】Candida albicansにおけるERG11発現に対するTSAおよび化合物6とフルコナゾールとの効果を示す図である。
【図4】免疫低下状態の全身のカンジダ症のマウスモデルにおける化合物4とケトコナゾールとの相乗性を示す図である(7日の処置)(20mg/kgにおけるケトコナゾール、腹腔内、毎日、化合物4、単位mg/kg、腹腔内、毎日)。
【0262】
【図5】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.25×MIC)と組み合わせたボリコナゾール(4×MICまたは8×MIC)およびアンホテリシンB(4×MICおよび8×MIC)の抗生物質投与後の効果(PAE)を示す図である。
【図6A】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.25×MICおよび0.5×MIC)と組み合わせたボリコナゾール(1×MICまたは2×MIC)およびアンホテリシンB(4×MIC)の抗生物質投与後の効果(PAE)を示す図である。
【図6B】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.25×MICおよび0.5×MIC)と組み合わせたボリコナゾール(1×MICまたは2×MIC)およびアンホテリシンB(4×MIC)の抗生物質投与後の効果(PAE)を示す図である。
【図6C】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.25×MICおよび0.5×MIC)と組み合わせたボリコナゾール(1×MICまたは2×MIC)およびアンホテリシンB(4×MIC)の抗生物質投与後の効果(PAE)を示す図である。
【図7】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.125×MIC)と組み合わせたイトラコナゾール(0.25×MIC)およびボリコナゾール(0.25×MIC)の抗生物質投与後の効果(PAE)を示す図である。
【0263】
【図8】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.25×MIC)と組み合わせたボリコナゾール(4×MICまたは8×MIC)およびアンホテリシンB(4×MICおよび8×MIC)の殺真菌対静真菌活性を示す図である。
【図9】C.glabrataにおいて2時間にわたって化合物4(0.25×MICおよび0.5×MIC)と組み合わせたボリコナゾール(1×MICまたは2×MIC)およびアンホテリシンB(4×MIC)の殺真菌対静真菌活性を示す図である。
【図10】C.glabrataにおいて化合物4(0.125×MIC)と組み合わせたイトラコナゾール(0.25×MIC)およびボリコナゾール(0.25×MIC)の殺真菌対静真菌活性を示す図である。
【0264】
【図11】カンジダ・アルビカンスにおける化合物4と組み合わせたボリコナゾールの殺真菌対静真菌活性を示す図である。
【図12】カンジダ・アルビカンスにおける化合物4と組み合わせたイトラコナゾールの殺真菌対静真菌活性を示す図である。
【図13】C. kruseiにおける化合物4と組み合わせたイトラコナゾールの殺真菌対静真菌活性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、抗真菌有効量の抗真菌剤、および薬学的に許容し得る担体を含む、組成物。
【請求項2】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化1】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化2】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化3】

またはこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化4】

またはこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(B)
【化5】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化6】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化7】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
抗真菌剤が、エルゴステロール合成経路における段階を阻害する、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
抗真菌剤がアゾールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
真菌細胞を抗真菌剤に対して選択的に感作する方法であって、前記細胞を、選択的に感作する有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体と接触させることを含み、ここで選択的に感作する有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体が、抗真菌有効量の抗真菌剤と相乗的である、前記方法。
【請求項12】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化8】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体;ならびに
式(B)
【化9】

式中、Aは、−O(CH)、−NH およびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立して、HおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化10】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化11】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択される化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化12】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよびこれらの複合体からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化13】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
抗真菌剤がアゾールである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
抗真菌剤に対して真菌細胞を感作することが、エルゴステロール生合成を阻害することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
エルゴステロール生合成を阻害することが、ERG1またはERG11を阻害することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
抗真菌剤に対して真菌細胞を感作することが、多剤輸送体の合成を阻害することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
CDR1およびCDR2からなる群から選択された遺伝子の合成を阻害することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
真菌細胞がヒトの中にある、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、および抗真菌剤、またはこれらの組成物を、ヒトに投与することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
真菌細胞に対する抗真菌剤の活性を選択的に増強する方法であって、該真菌細胞を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいは請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項25】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化14】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない;
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体;ならびに
式(B)
【化15】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化16】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化17】

からなる群から選択された化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択された化合物である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化18】

ならびにその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化19】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
抗真菌剤がアゾールである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
抗真菌剤の活性を増強することが、エルゴステロール生合成を阻害することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
エルゴステロール生合成を阻害することが、ERG1およびERG11からなる群から選択される遺伝子を阻害することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
抗真菌剤の活性を増強することが、多剤輸送体の合成を阻害することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
多剤輸送体の合成を阻害することが、CDR1およびCDR2からなる群から選択される遺伝子を阻害することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
真菌細胞がヒトの中にある、請求項24に記載の方法。
【請求項36】
抗真菌剤およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくはこれらの複合体、またはこれらの組成物を、ヒトに投与することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
真菌増殖を選択的に阻害する方法であって、真菌を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいは請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項38】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化20】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたはこれらの複合体;ならびに
式(B)
【化21】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立して、HおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化22】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化23】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択された化合物である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化24】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化25】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
抗真菌剤がアゾールである、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
真菌増殖を阻害することが、エルゴステロール生合成を阻害することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
エルゴステロール生合成を阻害することが、ERG1およびERG11からなる群から選択される遺伝子を阻害することを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
真菌増殖を阻害することが、多剤輸送体の合成を阻害することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
多剤輸送体の合成を阻害することが、CDR1およびCDR2からなる群から選択された遺伝子を阻害することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
真菌がヒトの中にある、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
抗真菌剤、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、あるいはこれらの組成物を、ヒトに投与することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
真菌感染症を選択的に処置する方法であって、少なくとも1の感染性真菌単位で感染した生物に、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいは請求項1に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化26】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体;ならびに
式(B)
【化27】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立して、HおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化28】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化29】

からなる群から選択された化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択された化合物である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化30】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化31】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
抗真菌剤がアゾールである、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
真菌増殖を阻害することが、エルゴステロール生合成を阻害することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
エルゴステロール生合成を阻害することが、ERG1およびERG11からなる群から選択された遺伝子を阻害することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
真菌増殖を阻害することが、多剤輸送体の合成を阻害することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
多剤輸送体の合成を阻害することが、CDR1およびCDR2からなる群から選択された遺伝子を阻害することを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
生物がヒトである、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
真菌細胞の抗真菌剤に対する耐性を選択的に低下させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の抗真菌剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくはこれらの複合体との組み合わせ、あるいは請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項63】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化32】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体;ならびに
式(B)
【化33】

式中、
Aは、−O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化34】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化35】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択された化合物である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化36】

ならびにこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグおよび複合体からなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化37】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
抗真菌剤がアゾールである、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項68】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項62に記載の方法。
【請求項69】
真菌細胞のアゾール抗真菌剤に対する耐性を低下させることが、エルゴステロール生合成を阻害することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項70】
エルゴステロール生合成を阻害することが、ERG1およびERG11からなる群から選択された遺伝子を阻害することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
真菌細胞の抗真菌剤に対する耐性を低下させることが、多剤輸送体の合成を阻害することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項72】
多剤輸送体の合成を阻害することが、CDR1およびCDR2からなる群から選択される遺伝子を阻害することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
真菌細胞がヒトの中にある、請求項62に記載の方法。
【請求項74】
抗真菌剤、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、あるいはこれらの組成物を、ヒトに投与することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
真菌細胞において遺伝子の抗真菌剤依存性上方調節を選択的に低下させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいは請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項76】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、式(A)
【化38】

式中、
Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル、好ましくはシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクリルであり、これらのすべては、随意に置換されていてもよく;
xは、0〜5の整数であり、ここで、長さxの鎖は、随意に置換されており、およびここで、長さxの鎖の1個の炭素原子は、随意にヘテロ原子で置換されており;
nは、0〜2の整数であり;および
Yは、Hおよび複素環基からなる群から選択され;
ただし、xが4である場合には、nは2ではなく、xが3である場合には、nは3ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体;ならびに
式(B)
【化39】

式中、
Aは、 −O(CH)、−NHおよびアリールからなる群から選択され、ここでアリールは、随意に共有結合を介してフェニルに結合しているか、またはアリールは、フェニルに融合しており;
Eは、CH、CH(OCH)、C=N(OH)、C=CHおよびOからなる群から選択され;
およびXは、独立してHおよびCHからなる群から選択され;
Zは、HおよびCHからなる群から選択され;
【化40】

は、単結合および二重結合からなる群から選択され;および
tは、0〜1の整数であり、
ただし、式(B)で表される化合物は、
【化41】

からなる群から選択される化合物ではない、
で表される化合物、およびその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体、
からなる群から選択される化合物である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化42】

およびこれらの水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグまたは複合体からなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、
【化43】

またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
抗真菌剤がアゾールである、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
抗真菌剤が、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾールおよびラブコナゾールからなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
抗真菌剤が、フェンプロピモルフまたはテルビナフィンである、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
遺伝子が、エルゴステロール生合成に関与する遺伝子および多剤輸送体をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
遺伝子がERG1またはERG11である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
遺伝子がCDR1またはCDR2である、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
真菌細胞がヒトの中にある、請求項75に記載の方法。
【請求項86】
抗真菌剤、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体、あるいはこれらの組成物を、ヒトに投与することを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項87】
真菌細胞を抗真菌剤と接触させることによる抗真菌剤耐性真菌細胞の発達を選択的に阻害する方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤または水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいは請求項1に記載の組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項88】
真菌細胞のアゾールでの処理の間に、真菌細胞においてエルゴステロール生合成に関与する遺伝子または多剤輸送体をコードする遺伝子の発現を選択的に抑制する方法であって、真菌細胞を、選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体と接触させることを含む、前記方法。
【請求項89】
エルゴステロール生合成に関与する遺伝子が、ERG1またはERG11である、請求項80に記載の方法。
【請求項90】
多剤輸送体をコードする遺伝子が、CDR1またはCDR2である、請求項80に記載の方法。
【請求項91】
真菌細胞に対する抗真菌剤の殺効果を選択的に促進する方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、またはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項92】
真菌細胞に対する抗真菌剤の抗生物質投与後の効果を選択的に増大させる方法であって、真菌細胞を、抗真菌有効量の剤と選択的および相乗的量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその水和物、溶媒和物、薬学的に許容し得る塩、プロドラッグもしくは複合体との組み合わせ、あるいはこれらの組成物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項93】
式(1):
【化44】

で表される化合物またはこれらの薬学的に許容し得る塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−521424(P2009−521424A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546679(P2008−546679)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2006/003697
【国際公開番号】WO2007/072179
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(500301027)メチルジーン インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】