説明

抗腫瘍剤

DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤と、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤とを組み合わせてなる抗腫瘍剤。本発明によれば、副作用が軽減され、優れた抗腫瘍作用を有する抗腫瘍剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤から選ばれる抗腫瘍剤とその抗腫瘍効果を顕著に増強させる薬剤とを組み合わせてなる医薬組成物および該薬剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
一般に、腫瘍、特に悪性腫瘍の化学療法においては抗腫瘍剤を単独で投与しても所望の抗腫瘍効果が得られることはまれであり、その効果を増大させるために臨床の場では作用機序の異なった2剤あるいは3剤以上を組み合わせた多剤併用療法が行われている。この併用療法は、作用機序の異なった抗腫瘍剤を組み合わせることにより、1)非感受性細胞集団を減少させる、2)薬剤耐性出現を予防あるいは遅延させる、3)毒性の異なる薬剤の組み合わせにより毒性を分散させるなど、副作用の軽減や抗腫瘍作用の増強を目的としている。しかしながら作用機序の異なる抗腫瘍剤を漫然と組み合わせて併用療法を行っても必ずしも抗腫瘍作用の増強効果や相乗効果が得られるとは限らない。
【0003】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤はヒストンの高アセチル化を誘発し、結果として、各種遺伝子の転写調節活性、細胞周期阻害活性及びアポトーシスを誘導することが報告されている。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は強力な抗癌剤としても知られている(特公平7−64872号公報、Experimental Cell Research, 米国,(1998), 241号, p.126−133参照)。
【0004】
例えば、式(I)
【0005】
【化1】

【0006】
で表される化合物またはその医薬として許容される塩(以下、化合物Aとも称する)、特に式(II)
【0007】
【化2】

【0008】
で表される立体異性体(以下、FK228とも称する)またはその医薬として許容される塩は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であり、強力な抗腫瘍活性を有することが報告されている(特公平7−64872号公報(対応米国特許第4977138号)、Experimental Cell Research, 米国,(1998), 241号, p.126−133参照)。
【0009】
しかしながら、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と、従来抗腫瘍剤として広く用いられているシスプラチン等のDNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、5−フルオロウラシル等の代謝拮抗物質系抗腫瘍剤またはタキサン系抗腫瘍剤との併用、ならびに併用によって得られる効果についての報告はまだなされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の開示
したがって、本発明の目的は、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤から選ばれる抗腫瘍剤とその抗腫瘍効果を顕著に増強させる薬剤との併用により、副作用が軽減され、優れた抗腫瘍作用を有する抗腫瘍剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究した結果、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、特に強力なヒストンデアセチラーゼ阻害作用を有することが知られている化合物Aが、既知の抗腫瘍剤であるDNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を顕著に増強することも見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0012】
[1]DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤と、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤とを組み合わせてなる抗腫瘍剤及び医薬組成物、ならびに該組成物および剤を投与することを含む患者の治療方法。
[2]ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【0013】
【化3】

【0014】
で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である上記[1]記載の抗腫瘍剤。
[3]DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である上記[2]記載の抗腫瘍剤。
[4]白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである上記[3]記載の抗腫瘍剤。
[5]代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである上記[2]記載の抗腫瘍剤。
[6]タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である上記[2]記載の抗腫瘍剤。
[7]肺癌、悪性リンパ腫、消化器癌、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫、膀胱癌、白血病、腎臓癌または前立腺癌に対する抗腫瘍剤である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の抗腫瘍剤。
【0015】
[8]ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を有効成分として含有する、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果増強剤、ならびに該組成物および剤を投与することを含む患者の治療方法。
[9]ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【0016】
【化4】

【0017】
で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である上記[8]記載の増強剤。
[10]DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である上記[9]記載の増強剤。
[11]白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである上記[10]記載の増強剤。
[12]代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである上記[9]記載の増強剤。
[13]タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である上記[9]記載の増強剤。
[14]肺癌、悪性リンパ腫、消化器癌、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫、膀胱癌、白血病、腎臓癌または前立腺癌に対する抗腫瘍効果増強剤である、上記[8]〜[13]のいずれかに記載の増強剤。
【0018】
[15]DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤を含む併用剤、および該併用剤をヒストンデアセチラーゼ阻害剤とともに抗腫瘍剤として使用することができるまたは使用すべきであることを記載した該併用剤に関する記載物を含む、商業パッケージ。
[16]ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【0019】
【化5】

【0020】
で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である上記[15]記載の商業パッケージ。
[17]DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である上記[16]記載の商業パッケージ。
[18]白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである上記[17]記載の商業パッケージ。
[19]代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである上記[16]記載の商業パッケージ。
[20]タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である上記[16]記載の商業パッケージ。
【0021】
[21]ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有する製剤、および該製剤をDNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を増強するために使用することができるまたは使用すべきであることを記載した該製剤に関する記載物を含む、商業パッケージ。
[22]ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【0022】
【化6】

【0023】
で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である上記[21]記載の商業パッケージ。
[23]DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である上記[22]記載の商業パッケージ。
[24]白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである上記[23]記載の商業パッケージ。
[25]代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである上記[22]記載の商業パッケージ。
[26]タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である上記[22]記載の商業パッケージ。
【0024】
発明の詳細な説明
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(特に、化合物A)は、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤(特に、白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤)、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤もしくはタキサン系抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を顕著に増強する。
【0025】
したがって、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤とヒストンデアセチラーゼ阻害剤とを組み合わせてなる本発明の抗腫瘍剤は、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤から選ばれる抗腫瘍剤またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤の単独投与に比べ、低用量でより高い癌の治療効果が得られ、また、副作用を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明を実施するための最良の形態
本発明で使用されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤とは、ヒストンデアセチラーゼの活性部位に基質と競合して結合する化合物、および/またはヒストンデアセチラーゼの酵素活性を減少する効果を示すか、さもなくば酵素活性を阻害する化合物であり、既にヒストンデアセチラーゼ阻害剤として知られている化合物を含む。具体的には、上述の化合物Aまたはその塩やその誘導体(例えば、化合物Aをアセチル化したものやS−S結合を還元したチオール体等、WO 02/06307に記載)が挙げられる。FK228の類縁体は米国特許第6403555号に記載されている。さらにトリコスタチンA(Tricostatin A)、酪酸ナトリウム、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(suberoylanilide hydroxamic acid(SAHA))、MS−275、ヒドロキサム酸含有環状ペプチド(Cyclic hydroxamic-acid-containing peptide)、アピシジン(Apicidin)、トラポキシン(Trapoxin)等もヒストンデアセチラーゼ阻害活性を有することが報告されている化合物である。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、一種でもよく、また二種以上を混合したものであってもよい。
【0027】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としては、化合物Aが好ましく用いられる。化合物Aは、不斉炭素原子および二重結合に基づく光学活性体または幾何異性体等の立体異性体(例えばFK228)を有することがあるが、これらすべての異性体及びそれらの混合物も化合物Aの範囲に含まれる。
さらに、本明細書記載の化合物の溶媒和物(例えば包接化合物(例えば水和物等))、無水物、他の結晶多形または医薬として許容される塩もこの発明の範囲に含まれる。
以下、本明細書中、特に断りのない限り、単に化合物Aと言う場合にはFK228またはその医薬として許容される塩も含む、立体異性を問わない化合物群を意味する。
【0028】
上記に列挙されたヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、いずれも公知の物質であり入手可能である。例えば、化合物Aの立体異性体の一つであるFK228は、FK228を生産しうるクロモバクテリウム(Chromobacterium)属に属する菌株を好気性条件下に培養、当該培養ブロスから当該物質を回収することによって得ることができる。FK228を生産しうるクロモバクテリウム属に属する菌株としては、例えばクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)WB968(FERM BP−1968)が挙げられる。FK228はより具体的には特公平7−64872号(対応米国特許4977138号)公報に記載したとおりにしてFK228生産菌から得ることができる。FK228は、より容易に入手できるので、FK228を産生しうるクロモバクテリウム属に属する菌株からの回収が好ましい。さらなる精製工程が不要あるいは工程数が少なくてすむという点で、合成あるいは半合成のFK228もまた有利である。同様にFK228以外の化合物Aについても、従来公知の方法により半合成、全合成することができる。より具体的にはKhan W.Li,らによって報告されている方法(J. Am. Chem. Soc., Vol. 118, 7237-7238(1996))に準じて製造することができる。
【0029】
その他のヒストンデアセチラーゼ阻害剤、例えばトリコスタチンA、酪酸ナトリウム、SAHA、MS−275、ヒドロキサム酸含有環状ペプチド、アピシジン、トラポキシン等も市販により入手可能または公知の方法により調製することができる。
【0030】
化合物Aにおける医薬として許容される塩としては、無機塩基との塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)、有機塩基との塩(例えばトリエチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロへキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機アミン塩)、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸・スルホン酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)、塩基性あるいは酸性アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等)との塩等の、塩基との塩または酸付加塩が挙げられる。
【0031】
本発明で使用されるDNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤とは、DNAに直接作用して架橋を形成することにより抗腫瘍効果を示すかぎり、いかなる抗腫瘍剤でもよい。例としては、公知の白金化合物系抗腫瘍剤、公知のアルキル化剤系抗腫瘍剤等が含まれる。具体例には、白金化合物系抗腫瘍剤としてはシスプラチン、カルボプラチン等が、アルキル化剤系抗腫瘍剤としてはシクロホスファミド、メルファラン等が挙げられる。DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤は、一種でもよく、または二種以上を混合したものであってもよい。
【0032】
本発明で使用される代謝拮抗物質系抗腫瘍剤とは、抗腫瘍剤として公知の代謝拮抗物質であればよい。具体例としては、5-フルオロウラシル、テガフール等が挙げられる。代謝拮抗物質系抗腫瘍剤は、一種でもよく、または二種以上を混合したものであってもよい。
【0033】
本発明で使用されるタキサン系抗腫瘍剤は、セイヨウイチイ(Taxusbrevifolia)から単離されるタキサン骨格を構造中に有する各種成分またはその半合成品あるいはタキサン骨格を有する純粋合成品を含む。具体的には、パクリタキセル、ドセタキセル等が挙げられる。タキサン系抗腫瘍剤は、一種でもよく、または二種以上を混合したものであってもよい。
【0034】
本発明において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(特に、化合物A)は、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤を顕著に増強させる。したがって、本発明の抗腫瘍剤および抗腫瘍効果増強剤は、血液癌及び固型癌等を含む癌疾患、より具体的には、肺癌、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、消化器癌(例えば、胃癌、胆のう・胆管癌、膵臓癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫 (例えば、骨肉腫等)、膀胱癌、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病の急性転化を含む急性白血病等)、腎臓癌および前立腺癌等の治療薬として有用である。
【0035】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤は、一種の化合物でもよく、または二種以上の化合物を別々にまたは混合して投与してもよい。
本明細書中、特に断りのない限り、「抗腫瘍剤A」というときは「DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤」を意味するものとする。
【0036】
本発明の抗腫瘍剤または医薬組成物は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを組み合わせてなるもの(即ち、併用剤)であり、投与時にヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを組み合わすことができるものであればよい。本発明の抗腫瘍剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを同時に製剤化して得られる単一の製剤であっても、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを別々に製剤化して得られる少なくとも二種の製剤を組み合わせたものであってもよい。
【0037】
投与形態は、特に限定されず、例えば、(1)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを含有する組成物、即ち、単一の製剤としての投与、(2)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与(例えばヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗腫瘍剤Aの順序での投与、あるいは逆の順序での投与)、(4)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、(5)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えばヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗腫瘍剤Aの順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。
【0038】
本発明の増強剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有してなるものであり、投与時にヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを組み合わすことができるものであればよい。従って、本発明の増強剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有するものであれば、抗腫瘍剤Aを単一の製剤中に含有するものであってもよく、抗腫瘍剤Aを含有しないものであっても併用剤として抗腫瘍剤Aを別途投与すればよい。
投与形態は、特に限定されず、例えば、(1)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとを単一の製剤中に含有する本発明の増強剤の投与、(2)本発明の増強剤と抗腫瘍剤Aの同一投与経路での同時投与、(3)本発明の増強剤と抗腫瘍剤Aの同一投与経路での時間差をおいての投与(例えば抗腫瘍剤A、本発明の増強剤の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)、(4)本発明の増強剤と抗腫瘍剤Aの異なる投与経路での同時投与、(5)本発明の増強剤と抗腫瘍剤Aの異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば抗腫瘍剤A、本発明の増強剤の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。
【0039】
本発明において、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と抗腫瘍剤Aとの組合せの割合は、両者が単一製剤とされる場合、別個の製剤とされる場合のいずれにおいても、重量比率として、通常1:100〜100:1の範囲であり、1:10〜10:1の範囲が好ましい。
【0040】
抗腫瘍剤Aを二種以上の混合物とする場合、その配合比は特に限定されない。DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤と代謝拮抗物質系抗腫瘍剤の混合物とする場合は1:100〜100:1の範囲の配合比(重量比率)が好ましく、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤とタキサン系抗腫瘍剤の混合物とする場合は1:100〜100:1の範囲の配合比(重量比率)が好ましく、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤とタキサン系抗腫瘍剤の混合物とする場合は1:100〜100:1の範囲の配合比(重量比率)が好ましい。
【0041】
本発明の抗腫瘍効果を増強させるために、ATRA(all-trans-retinoic acid)と併用して投与(例えば合剤として投与、別々の製剤として同時または前後別々に投与)することも好ましい。
【0042】
本発明の医薬組成物、すなわち抗腫瘍剤Aおよび/またはヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、有効成分としてヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および/または抗腫瘍剤Aを含有し、経直腸、経鼻、経肺、経膣、外用(局所)、経口または非経口(皮下、植込み、静脈内および筋肉内を含む)投与に適した固体、半固体または液体(錠剤、ペレット剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、エアゾール剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、注射液など)等の医薬製剤の形態で使用できる。
【0043】
本発明の抗腫瘍効果増強剤は、有効成分としてヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有し、経直腸、経鼻、経肺、経膣、外用(局所)、経口または非経口(皮下、植込み、静脈内および筋肉内を含む)投与に適した固体、半固体または液体(錠剤、ペレット剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、クリーム剤、軟膏剤、エアゾール剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、注射液など)等の医薬製剤の形態で使用できる。
【0044】
本発明の抗腫瘍剤および抗腫瘍効果増強剤は、製薬目的で慣用されている種々の有機または無機担体、例えば賦形剤(例えばスクロース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなど)、縮合剤(例えばセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、スクロース、デンプンなど)、崩壊剤(例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウムなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、エアロシル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウムなど)、矯味剤(例えばクエン酸、メントール、グリシン、オレンジ末など)、保存剤(例えば安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベンなど)、安定化剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸など)、懸濁剤(例えばメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウムなど)、分散剤(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、希釈剤(例えば水など)、基材ワックス(例えばカカオバター、ポリエチレングリコール、白色ワセリンなど)を用いる常法によっても製造することができる。
【0045】
本発明の抗腫瘍剤および抗腫瘍効果増強剤は、ヒトを含む哺乳動物に上記慣用の医薬製剤の形で、特に限定なく投与することができる。その中でも静脈内、筋肉内または経口投与するのが好ましい。
【0046】
本発明における投与量は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤または抗腫瘍剤Aをそれぞれ単独で投与した場合より低用量に設定することができる。
例えば、患者の体重および/または年令ならびに/または疾病の程度ならびに投与経路のような種々の要因によって適宜決定される。
例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤として化合物A、抗腫瘍剤Aとしてシスプラチンを用いる場合は、通常、化合物Aおよびシスプラチンを合わせた1日投与量は、静脈内投与の場合には、ヒトの体表面積1mあたり通常1〜1000mg、好ましくは5〜100mg、更に好ましくは10〜60mgで連続点滴投与して処置することができる。この場合、化合物Aの1日投与量としては、ヒトの体表面積1mあたり化合物Aの量で0.1〜100mg、好ましくは1〜50mg、更に好ましくは5〜30mgであり、[前記化合物Aおよびシスプラチンを合わせた投与量−化合物Aの投与量]の用量でシスプラチンが投与される。
【0047】
本発明には、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤とヒストンデアセチラーゼ阻害剤とを組み合わせてなる併用剤、および該併用剤を抗腫瘍剤として使用することができるまたは使用すべきであることを記載した該併用剤に関する記載物を含む、商業パッケージ;および、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有する製剤、および該製剤をDNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を増強するために使用することができるまたは使用すべきであることを記載した該製剤に関する記載物を含む、商業パッケージが含まれる。
【実施例】
【0048】
実施例
本発明の有用性を示した薬理試験結果を以下に示す。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤としてFK228、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤としてシスプラチン(CDDP)、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤として5−フルオロウラシル(5−FU)、タキサン系抗腫瘍剤としてパクリタキセルを用い、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤と各腫瘍剤の併用効果を評価した。評価試験は、ヒト前立腺癌細胞DU−145(ATCC(AMERICAN TYPE CULTURE COLLECTION)より入手)を10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ変法イーグル培地で培養したものを使用した。
【0049】
試験例1:FK228とシスプラチンの併用効果(同時添加)
各前立腺癌細胞(6×10個/ウェル)を96ウェルプレートで24時間培養後、種々の濃度になるようにFK228(0.1nM、0.2nM、0.5nM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nMおよび50nM)、シスプラチン(50nM、100nM、200nM、500nM、1000nM、2000nMおよび5000nM)、あるいは両薬剤(前記濃度の組み合わせの同時添加)を添加した。24時間培養後、1%FBS(Fetal Bovine Serum)含有PBS(−)(phosphate-buffered saline (calcium magnesium free))で細胞を2回洗浄した。その後薬物を含まない培地と交換し、さらに96時間の培養を行った。FK228は使用前にエタノールに溶解し培地で希釈し、シスプラチンは使用前に培地で希釈した。
【0050】
各処理による抗腫瘍活性の評価はMTTアッセイにより行った。すなわち、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾニウムブロミド (MTT)を2.5mg/mLの濃度でPBSに溶解し、各ウェルに20μl加え4時間培養した。生細胞により形成されたホルマザンを酸性イソプロパノール100μlを加え溶解し、580nmの波長で各ウェルの吸光度を測定した。
無処置の細胞における吸光度(OD)を100%として、各薬剤単独あるいは併用での抗腫瘍活性の濃度反応曲線を作成した。
【0051】
FK228とシスプラチンの併用効果はSteelらの方法(Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 5: 85-91, 1979.)に従って、アイソボログラム解析で評価した。すなわち、各薬剤単独の濃度反応曲線より、併用した際の80%増殖抑制濃度(IC80)を理論的に求めグラフ上に曲線で示した。実際の併用でIC80となった薬剤濃度をプロットした(図1参照)。プロットが曲線に囲まれた範囲(b)に位置した場合には相加効果があると判定し、それより原点に近い範囲(a)に位置した場合には相乗効果があると判定し、原点から遠い範囲(c)に位置した場合には拮抗効果があると判定した。単剤でのIC80値を1として相対値で表現した。
試験例1のアイソボログラムを図2に示す。FK228とシスプラチンの併用(同時添加)により、抗腫瘍活性は、顕著に増強した。
【0052】
試験例2:FK228とシスプラチンの併用効果(連続添加)
各前立腺癌細胞(6×10個/ウェル)を96ウェルプレートで24時間培養後、種々の濃度になるようにFK228(0.1nM、0.2nM、0.5nM、1nM、2nM、5nM、10nM、20nMおよび50nM)またはシスプラチン(50nM、100nM、200nM、500nM、1000nM、2000nMおよび5000nM)を添加した。24時間培養後、1%FBS含有PBS(−)で細胞を2回洗浄した。
洗浄後、両薬剤の組み合わせによる連続添加(FK228⇒シスプラチンまたはシスプラチン⇒FK228の順序で各濃度の組み合わせとなるように添加)で、FK228またはシスプラチンを添加した。さらに24時間培養し、1%FBS含有PBS(−)で2回洗浄した。薬物を含まない培地と交換し、さらに細胞を72時間培養した。試験例1と同様な方法で併用効果を評価した。
試験例2のアイソボログラムを図3(FK228⇒シスプラチンの添加順序)および図4(シスプラチン⇒FK228の添加順序)に示す。FK228とシスプラチンの併用(連続添加)は何れの添加順序(FK228⇒シスプラチンまたはシスプラチン⇒FK228の順序)においても、顕著な抗腫瘍活性の増強が認められた。
【0053】
試験例3:FK228と5−フルオロウラシルの併用効果(同時添加)
シスプラチンの代わりに各種濃度の5−フルオロウラシル(5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μMおよび500μM)を添加したこと以外は、試験例1と同様に行い、併用効果を評価した。5−フルオロウラシルは添加前に培地で希釈した。
試験例3のアイソボログラムを図5に示す。FK228と5−フルオロウラシルの併用(同時添加)は、抗腫瘍活性を増強した。
【0054】
試験例4:FK228と5−フルオロウラシルの併用効果(連続添加)
シスプラチンの代わりに各種濃度の5−フルオロウラシル(5−フルオロウラシル⇒FK228の添加順序の場合は、5μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μMおよび500μM;FK228⇒5−フルオロウラシルの添加順序の場合は、100μM、200μM、500μM、1000μM、2000μM、5000μMおよび10000μM)を添加したこと以外は、試験例2と同様に行い、併用効果を評価した。5−フルオロウラシルは添加前に、培地で希釈した。
試験例4のアイソボログラムを図6(FK228⇒5−フルオロウラシルの添加順序)および図7(5−フルオロウラシル⇒FK228の添加順序)に示す。FK228と5−フルオロウラシルの併用(連続添加)は何れの添加順序(FK228⇒5−フルオロウラシルまたは5−フルオロウラシル⇒FK228の順序)においても、抗腫瘍活性を増強した。
【0055】
試験例5:FK228とパクリタキセルの併用効果(パクリタキセル⇒FK228の添加順序の連続添加)
シスプラチンの代わりに各種濃度のパクリタキセル(0.2nM、0.5nM、1nM、2nM、5nM、10nMおよび20nM)を、パクリタキセル⇒FK228の順序で添加したこと以外は、試験例2と同様に行い、併用効果を評価した。パクリタキセルは添加前にエタノールで溶解し培地で希釈した。
試験例5のアイソボログラムを図8に示す。FK228とパクリタキセルの併用(パクリタキセル⇒FK228の順序の連続添加)は、抗腫瘍活性を増強した。
【0056】
製剤例1
FK228 20mg
エタノール 20ml
FK228(20mg)をエタノール(20ml)に溶解・希釈し注射用製剤を得る。
【0057】
製剤例2
FK228 20mg
シスプラチン 100mg
生理食塩水 100ml
FK228(20mg)およびシスプラチン(100mg)を生理食塩水(100ml)に溶解・希釈し注射用製剤を得る。
【0058】
製剤例3
FK228 20mg
5−フルオロウラシル 500mg
エタノール 100ml
FK228(20mg)および5−フルオロウラシル(500mg)をエタノール(100ml)に溶解・希釈し注射用製剤を得る。
【0059】
製剤例4
FK228 20mg
パクリタキセル 20mg
エタノール 40ml
FK228(20mg)およびパクリタキセル(20mg)をエタノール(40ml)に溶解・希釈し注射用製剤を得る。
【0060】
本発明がその好ましい態様を参照して提示または記載される一方、本明細書中において、添付の請求の範囲で包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態や詳細の様々な変更をなし得ることは当業者に理解されるであろう。本明細書中に示されまたは参照されたすべての特許、特許公報およびその他の刊行物は、参照によりその全体が取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、解析の概念を示すグラフである。
【図2】図2は、DU−145細胞に対するFK228とシスプラチンの併用(同時添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例1)。
【図3】図3は、DU−145細胞に対するFK228とシスプラチンの併用(FK228⇒シスプラチンの順序の連続添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例2)。
【図4】図4は、DU−145細胞に対するFK228とシスプラチンの併用(シスプラチン⇒FK228の順序の連続添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例2)。
【図5】図5は、DU−145細胞に対するFK228と5−フルオロウラシルの併用(同時添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例3)。
【図6】図6は、DU−145細胞に対するFK228と5−フルオロウラシルの併用(FK228⇒5−フルオロウラシルの順序の連続添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例4)。
【図7】図7は、DU−145細胞に対するFK228と5−フルオロウラシルの併用(5−フルオロウラシル⇒FK228の順序の連続添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例4)。
【図8】図8は、DU−145細胞に対するFK228とパクリタキセルの併用(パクリタキセル⇒FK228の順序の連続添加)におけるアイソボログラム解析を示すグラフである(実施例5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤とともに組み合わせて患者に投与することを含む、該患者を治療する方法。
【請求項2】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【化1】

で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である請求項1に請求される方法。
【請求項3】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がFK228またはその医薬として許容される塩である請求項1に請求される方法。
【請求項4】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がSAHAまたはその医薬として許容される塩である請求項1に請求される方法。
【請求項5】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である請求項2に請求される方法。
【請求項6】
白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである請求項5に請求される方法。
【請求項7】
代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである請求項2に請求される方法。
【請求項8】
タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である請求項2に請求される方法。
【請求項9】
肺癌、悪性リンパ腫、消化器癌、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫、膀胱癌、白血病、腎臓癌または前立腺癌に対する抗腫瘍剤である、請求項1〜8のいずれかに請求される方法。
【請求項10】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を有効成分として投与することを含む、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を増強する方法。
【請求項11】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【化2】

で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である請求項10に請求される方法。
【請求項12】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がFK228またはその医薬として許容される塩である請求項10に請求される方法。
【請求項13】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤がSAHAまたはその医薬として許容される塩である請求項10に請求される方法。
【請求項14】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である請求項11に請求される方法。
【請求項15】
白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである請求項14に請求される方法。
【請求項16】
代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである請求項11に請求される方法。
【請求項17】
タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である請求項11に請求される方法。
【請求項18】
肺癌、悪性リンパ腫、消化器癌、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫、膀胱癌、白血病、腎臓癌または前立腺癌に対する抗腫瘍効果増強剤である、請求項10〜17のいずれかに請求される方法。
【請求項19】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤と、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤とを組み合わせてなる抗腫瘍剤。
【請求項20】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【化3】

で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である請求項19に請求される抗腫瘍剤。
【請求項21】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である請求項20に請求される抗腫瘍剤。
【請求項22】
白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである請求項21に請求される抗腫瘍剤。
【請求項23】
代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである請求項20に請求される抗腫瘍剤。
【請求項24】
タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である請求項20に請求される抗腫瘍剤。
【請求項25】
肺癌、悪性リンパ腫、消化器癌、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫、膀胱癌、白血病、腎臓癌または前立腺癌に対する抗腫瘍剤である、請求項19〜24のいずれかに請求される抗腫瘍剤。
【請求項26】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を有効成分として含有する、DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果増強剤。
【請求項27】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【化4】

で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である請求項26に請求される増強剤。
【請求項28】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である請求項27に請求される増強剤。
【請求項29】
白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである請求項28に請求される増強剤。
【請求項30】
代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである請求項27に請求される増強剤。
【請求項31】
タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である請求項27に請求される増強剤。
【請求項32】
肺癌、悪性リンパ腫、消化器癌、乳癌、卵巣癌、筋骨格肉腫、膀胱癌、白血病、腎臓癌または前立腺癌に対する抗腫瘍効果増強剤である、請求項26〜31のいずれかに請求される増強剤。
【請求項33】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤を含む併用剤、および該併用剤を抗腫瘍剤として使用することができるまたは使用すべきであることを記載した該併用剤に関する記載物を含む、商業パッケージ。
【請求項34】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【化5】

で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である請求項33に請求される商業パッケージ。
【請求項35】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である請求項34に請求される商業パッケージ。
【請求項36】
白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである請求項35に請求される商業パッケージ。
【請求項37】
代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである請求項34に請求される商業パッケージ。
【請求項38】
タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である請求項34に請求される商業パッケージ。
【請求項39】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含有する製剤、および該製剤をDNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤、代謝拮抗物質系抗腫瘍剤およびタキサン系抗腫瘍剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の抗腫瘍剤の抗腫瘍効果を増強するために使用することができるまたは使用すべきであることを記載した該製剤に関する記載物を含む、商業パッケージ。
【請求項40】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が式(I)
【化6】

で表される化合物、その還元体、類縁体、プロドラッグまたはその医薬として許容される塩である請求項39に請求される商業パッケージ。
【請求項41】
DNAに架橋を形成し抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤が白金化合物系抗腫瘍剤またはアルキル化剤系抗腫瘍剤である請求項40に請求される商業パッケージ。
【請求項42】
白金化合物系抗腫瘍剤がシスプラチンである請求項41に請求される商業パッケージ。
【請求項43】
代謝拮抗物質系抗腫瘍剤が5−フルオロウラシルである請求項40に請求される商業パッケージ。
【請求項44】
タキサン系抗腫瘍剤が、パクリタキセルまたはドセタキセルの少なくとも一種である請求項40に請求される商業パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−524650(P2007−524650A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526473(P2006−526473)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003689
【国際公開番号】WO2005/079827
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】