説明

抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤、並びに皮膚化粧料、及び飲食品

【課題】優れた抗酸化作用を有し、かつ安全性の高い抗酸化剤、優れた抗炎症作用を有し、かつ安全性の高い抗炎症剤、及び優れた抗老化作用を有し、かつ安全性の高い抗老化剤、並びに、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを利用した皮膚化粧料、及び飲食品の提供。
【解決手段】スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有する抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤、並びに、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを含有する皮膚化粧料、及び飲食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スオウの抽出物を含有する抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤、並びに、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを利用した皮膚化粧料、及び飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体成分を酸化させる要因として、活性酸素が注目されており、その生体への悪影響が問題となっている。活性酸素は、生体細胞内のエネルギー代謝過程で生じるものであり、スーパーオキサイド〔即ち、酸素分子の一電子還元で生じるスーパーオキシドアニオン(・O−)、過酸化水素(H)、一重項酸素()、ヒドロキシラジカル(・OH)〕等がある。このような活性酸素は食細胞の殺菌機構にとって必須であり、ウイルスや癌細胞の除去に重要な働きを果たしている。
しかし、前記活性酸素の過剰な生成は、生体内の膜及び組織を構成する生体内分子を攻撃し、各種疾患を誘発する。生体内で生産され、他の活性酸素の出発物質ともなっているスーパーオキサイドは、通常、細胞内に含まれているスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)の触媒作用により逐次消去されている。しかし、スーパーオキサイドの産生が過剰な場合、あるいはSODの作用が低下している場合には、スーパーオキサイドの消去が不十分になってスーパーオキサイド濃度が高くなる。このことが、関節リウマチ、ベーチェット病等の組織障害、心筋梗塞、脳卒中、白内障、シミ、ソバカス、しわ、糖尿病、動脈硬化、肩凝り、冷え性、皮膚の老化などを起こす原因の一つであると考えられている。
【0003】
これらの中でも、皮膚は紫外線等の環境因子の刺激を直接受けるため、スーパーオキサイドが生成し易い器官であるから、スーパーオキサイド濃度の上昇により、例えば、コラーゲン等の生体組織を分解、変性、又は架橋したり、また油脂類を酸化して細胞に障害を与える過酸化脂質を生成して、皮膚のしわを形成したり、皮膚の弾力性低下等の老化、炎症、肌の色素沈着を引き起こすという問題がある(非特許文献1参照)。
そこで、活性酸素消去物質、ラジカル消去物質、過酸化水素消去物質等を安全性の点で有利な天然物から得る試みがなされており、アブラナ科ブラシカ属植物の抽出物(特許文献1参照)、ベンケイソウ科リュウキュウベンケイ属植物の抽出物(特許文献2参照)、タマコチョウの抽出物(特許文献3参照)、スイオウの抽出物(特許文献4参照)、などに有効性が確認されている。
【0004】
また、炎症性の疾患、例えば接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種皮膚疾患等の原因及び発症機構は多種多様である。その原因として、例えば、一酸化窒素(NO)産生、血小板凝集によるものなどが知られている。
【0005】
前記一酸化窒素(NO)は、大気汚染、酸性雨等の要因となる窒素酸化物である。また、近年、一酸化窒素(NO)は、血管内皮由来弛緩因子(EDRF)、神経伝達物質、生体防御における微生物、腫瘍細胞の障害因子等、生体内で多彩な機能を示す生理活性物質であることが報告されている。生理活性物質としては、マクロファージから産生される一酸化窒素が細菌及びウイルスの感染を防御することが知られている。しかし、前記マクロファージから産生される一酸化窒素が大量に生合成されると、生体にとって無毒ではなく、自己組織の破壊を引き起こし、炎症の悪化、リューマチ、糖尿病等の病態の原因となることがある。また、大量に生合成された一酸化窒素が血管平滑筋の弛緩と過剰な透過性の増大をもたらし、著しい血圧の低下によってエンドトキシン・ショックを引き起こすこともある。
このような炎症性疾患において、一酸化窒素(NO)の過剰な産生を抑制することが重要となる。このような一酸化窒素の産生抑制作用を有する生薬としては、例えば、ローズマリー抽出液、カルノソール、カルノシン酸、コーヒー豆の抽出液、サクラダソウ抽出液、オウレン抽出液、オウバク抽出液、カンゾウ抽出液、イヌノイバラの抽出液、センキュウ抽出液、トウニン抽出液、シャクヤク抽出液、ヨクイニン抽出液、アカブドウ抽出液(特許文献5参照)、唐独活、タラ根皮、和続断、車前子、遠子、茜草根、半枝連、槐花、花椒(非特許文献2参照)、などが報告されている。
【0006】
また、皮膚の表皮及び真皮は、表皮細胞、皮膚線維芽細胞、及び、これらの細胞の外にあって皮膚構造を支持するコラーゲン等の細胞外マトリックスにより構成されている。若い皮膚においては、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことにより、水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線(UV−A、UV−B)の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄、過酸化水素との接触等の外的因子の影響があったり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンの産生量が減少すると共に、架橋による弾力低下を起こす。その結果、皮膚は保湿機能や弾力性が低下し、角質は異常剥離を始めるため、肌は張りや艶を失い、荒れ、シワ等の老化症状を呈するようになる。更に、外的因子の影響や加齢に伴い、線維芽細胞の増殖率が低下すると、天然保湿因子であるヒアルロン酸の産生量が低下する。
このように皮膚の老化に伴う変化、即ち、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等には、コラーゲン等の真皮マトリックス成分の減少乃至変性が関与していることが知られている。
また、コラーゲンの中でもI型コラーゲンは、最も多く体内に含まれるコラーゲンであり、皮膚の真皮にも多く含まれ、皮膚の強さを生み出す役割を果たしていることが知られている。
【0007】
また、近年、真皮マトリックス成分の減少乃至変性を誘導する因子として、マトリックスメタロプロテアーゼ類(以下、「MMPs」と称することもある)と呼ばれるタンパク質分解酵素群の分解及び再構築がある。
前記MMPsは、その一次構造と基質特異性の違いから、(1)コラゲナーゼ群(MMP−1、MMP−8及びMMP−13)、(2)ゼラチナーゼ群(MMP−2及びMMP−9)、(3)ストロメライシン群(MMP−3及びMMP−10)、(4)膜結合型マトリックスメタロプロテアーゼ群(MMP−14、MMP−15、MMP−16、及びMMP−17)、(5)その他(MMP−7、MMP−11、及びMMP−12)の5つのグループに分類されている(特許文献6参照)。
前記MMPsの中でも、MMP−1及びMMP−14は、皮膚の真皮マトリックスの主な構成成分であるI型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲンを分解する酵素として知られている。また、その発現は紫外線の照射により大きく増加し、紫外線によるコラーゲンの減少乃至変性の一因となり、皮膚のシワ形成等の大きな要因であると考えられる。
【0008】
また角層は、表皮角化細胞が終末分化して形成された角質細胞と、細胞間を埋める細胞間脂質から形成される。セラミドを主成分とする細胞間脂質は、ラメラ構造を形成することにより、角層バリア機能を担っている。一方、角質細胞は、ケラチン線維を主成分とし、膜の裏打ち蛋白であるコーニファイドエンベロープ(角質肥厚膜、以下「CE」と略す。)という疎水的で強靭な細胞膜様構造物に覆われている。CEは、表皮角化細胞の分化に従って細胞内で産生されるインボルクリン、ロリクリンなど複数のCE前駆体蛋白質が、酵素トランスグルタミナーゼ−1により架橋され、不溶化して形成され、このCEが皮膚のバリア機能に密接に関与している。さらに、その一部にはセラミド等が共有結合し、疎水的な構造をとることで細胞間脂質のラメラ構造の土台を供給し、角層バリア機能及び皮膚の水分保持機能の基礎が形成される。
【0009】
しかしながら、加齢、乾燥、紫外線(UV−A、UV−B)などの影響によりターンオーバー速度に異常が生じると、ラメラ構造の乱れやCEが不完全な状態で形成された、いわゆる不全角化が誘発され、角質細胞や細胞間脂質の構造に異常が生じ、角層の水分保持機能及びバリア機能は低下する。このことが肌荒れ、乾燥肌等の皮膚の老化症状につながると考えられる。また、乾癬やアトピー性皮膚炎の患者では、バリア機能が低下した皮疹部で未熟なCEが高頻度に観察され、CEが正しく形成されることが皮膚のバリア機能に非常に重要であると考えられている(非特許文献3参照)。
【0010】
また、加齢に伴う皮膚老化の一因として、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌が減退することがある。エストロゲンは成人女性の健康維持に深く関わっており、その分泌不足は種々の内科的疾患を招く他、肌の過敏症、弾力性低下、潤いの減少等の好ましくない肌の変化の原因となることが知られている。
【0011】
したがって、ヒアルロン酸の産生促進、I型コラーゲンの産生促進、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害、UV−Bダメージからの回復を補うこと、加齢によるエストロゲン分泌減退を補うことなどにより、皮膚のしわの形成、弾力性低下等の皮膚の老化を予防乃至治療できると考えられる。
これまでにヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、例えば、アメリカニガキ抽出物(特許文献7参照)などが報告されている。
また、エストロゲン様作用剤としては、例えば、ステロイド系エストロゲン、非ステロイド系エストロゲン、フラボン系化合物(特許文献8〜10参照)などが報告されている。
【0012】
しかしながら、現在までのところ、入手が容易で安価であり、安全性の高い天然物系のものであって、味、匂い、使用感等の点で添加対象物の品質に悪影響を及ぼさず、皮膚化粧料及び飲食品に広く使用可能な抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−81848号公報
【特許文献2】特開2005−29483号公報
【特許文献3】特開2006−321730号公報
【特許文献4】特開2007−8902号公報
【特許文献5】特開2002−87975号公報
【特許文献6】特開2000−344672号公報
【特許文献7】特開2003−081850号公報
【特許文献8】特開2002−226323号公報
【特許文献9】特開2001−316240号公報
【特許文献10】特開2003−55245号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「フレグランスジャーナル」臨時増刊No.14、p156、1995年
【非特許文献2】「和漢医薬学雑誌」,Vol.15,p.302−303,1998年発行
【非特許文献3】Experimental Dermatology 12:591−601(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた抗酸化作用を有し、かつ安全性の高い抗酸化剤、優れた抗炎症作用を有し、かつ安全性の高い抗炎症剤、及び優れた抗老化作用を有し、かつ安全性の高い抗老化剤、並びに、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを利用した皮膚化粧料、及び飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物が、優れた抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用を有することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤である。
<2> スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有する前記<1>に記載の抗酸化剤である。
<3> スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有することを特徴とする抗炎症剤である。
<4> 一酸化窒素(NO)産生抑制作用を有する前記<3>に記載の抗炎症剤である。
<5> スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有することを特徴とする抗老化剤である。
<6> マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、UV−Bダメージからの回復作用、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有する前記<5>に記載の抗老化剤である。
<7> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の抗酸化剤、前記<3>から<4>のいずれかに記載の抗炎症剤、及び前記<5>から<6>のいずれかに記載の抗老化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする皮膚化粧料である。
<8> 前記<1>から<2>のいずれかに記載の抗酸化剤、前記<3>から<4>のいずれかに記載の抗炎症剤、及び前記<5>から<6>のいずれかに記載の抗老化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、従来における諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた抗酸化作用を有し、かつ安全性の高い抗酸化剤、優れた抗炎症作用を有し、かつ安全性の高い抗炎症剤、及び優れた抗老化作用を有し、かつ安全性の高い抗老化剤、並びに、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを利用した皮膚化粧料、及び飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤)
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤は、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0020】
前記抗酸化剤は、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかに基づく抗酸化作用を有するものである。
前記抗炎症剤は、一酸化窒素(NO)産生抑制作用に基づく抗炎症作用を有するものである。
前記抗老化剤は、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、UV−Bダメージからの回復作用、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかに基づく抗老化作用を有するものである。
前記スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物が含有する、抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用の少なくともいずれかを発揮する物質の詳細については不明であるが、前記スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物がこのような優れた作用を有し、抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤として有用であることは、従来には全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0021】
前記スオウ(Caesalpinia sappan)は、スホウ、風流子ともいい、マメ科の植物であり、インドからマレー半島等に分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
抽出原料として使用する前記スオウの部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、花、蕾、果実、果皮、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、種子が好ましい。
【0022】
抽出原料である前記スオウは、例えば、乾燥した後に、そのままの状態で又は粗砕機等を用いて粉砕した状態で、溶媒抽出に供することができる。中でも、前記抽出原料としては、採取後ただちに乾燥し、粉砕したものが好ましい。前記乾燥は、例えば、天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。なお、前記スオウは、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、前記スオウの極性溶媒による抽出処理を、効率よく行うことができる。
【0023】
前記スオウの抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。また、前記スオウの抽出物としては、市販品を使用してもよい。なお、前記スオウの抽出物には、前記スオウの抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又は、これらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0024】
前記抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又は、これらの混合溶媒を、室温又は溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。前記スオウに含まれる抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用の少なくともいずれかを示す成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって、容易に抽出することができる。
【0025】
前記抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。したがって、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0026】
前記抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、該親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1質量部〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0027】
抽出原料である前記スオウから、抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用の少なくともいずれかを有する抽出物を抽出するにあたって、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出することができる。
具体的には、抽出溶媒を満たした処理槽内に、前記各抽出原料を投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分〜4時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出物を得ることができる。抽出溶媒量は通常、抽出原料の5倍量〜15倍量(質量比)である。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50℃〜95℃にて1時間〜4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40℃〜80℃にて30分間〜4時間程度である。なお、溶媒で抽出することにより得られる抽出液は、抽出溶媒が安全性の高いものであれば、そのまま本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の有効成分として用いることができる。
【0028】
抽出により得られる前記スオウの抽出液は、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物を得るため、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られる前記スオウの抽出液は、そのままでも抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又はその乾燥物としたものの方が利用しやすい。抽出液の乾燥物を得るにあたっては、常法を利用することができ、また、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。また、抽出原料である前記スオウは特有の匂いと味を有している場合があり、そのため、前記スオウの抽出物に対しては、生理活性の低下を招かない範囲で、脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、例えば皮膚化粧料に添加する場合などには大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。なお、精製は、具体的には、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0029】
以上のようにして得られる前記スオウの抽出物は、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、ラジカル消去作用、一酸化窒素(NO)産生抑制作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを有し、これらの作用に基づき、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかの有効成分として好適に利用可能なものである。
なお、前記スオウの抽出物は、前記した各作用に基づき、スーパーオキサイド消去剤、過酸化水素消去剤、ラジカル消去剤、一酸化窒素(NO)産生抑制剤、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害剤、エストロゲン様作用剤、I型コラーゲン産生促進剤、ヒアルロン酸産生促進剤、及びUV−Bダメージからの回復作用剤としても、それぞれ好適に利用可能である。
【0030】
本発明の抗酸化剤における抗酸化作用は、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかに基づいて発揮される。これらの中でも、前記抗酸化剤は、スーパーオキサイド消去作用を少なくとも有していることが好ましい。
本発明の抗炎症剤における抗炎症作用は、一酸化窒素(NO)産生抑制作用に基づいて発揮される。
本発明の抗老化剤における抗老化作用は、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、UV−Bダメージからの回復作用、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかに基づいて発揮される。これらの中でも、前記抗老化剤は、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用を少なくとも有していることが好ましい。
前記スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用に基づく抗老化作用によれば、例えば、皮膚において過剰に生成された活性酸素による皮膚のしわの形成や皮膚の弾力性の低下を抑制することができる。
【0031】
前記抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤中の前記スオウの抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、また、前記抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤は、前記スオウの抽出物そのものであってもよい。
【0032】
また、前記抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤中に含まれ得る、前記スオウの抽出物以外のその他の成分としても、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記スオウの抽出物を所望の濃度に希釈等するための、生理食塩液などが挙げられる。また、前記抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤中の前記その他の成分の含有量にも、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
また、前記抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤は、必要に応じて製剤化することにより、粉末状、顆粒状、錠剤状等、任意の剤形とすることができる。
【0033】
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、抗老化剤は、優れた抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用を有すると共に、安全性に優れるため、例えば、後述する本発明の皮膚化粧料、本発明の飲食品などへの利用に好適である。
【0034】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、前記した本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記皮膚化粧料は、前記スオウの抽出物を、その活性を妨げないように任意の皮膚化粧料に配合したものであってもよいし、前記スオウの抽出物を主成分とした皮膚化粧料であってもよい。また、前記皮膚化粧料は、前記スオウの抽出物そのものであってもよい。
【0035】
本発明の皮膚化粧料は、皮膚に使用した場合に高い安全性を有し、優れたスーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、ラジカル消去作用、一酸化窒素(NO)産生抑制作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを発揮するものである。
【0036】
ここで、前記皮膚化粧料の用途としては、特に制限はなく、各種用途から適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼントなどが挙げられる。
【0037】
前記皮膚化粧料は、更に必要に応じて本発明の目的及び作用効果を損なわない範囲で、その皮膚化粧料の製造に通常使用される各種主剤及び助剤、その他の成分を添加することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、などが挙げられる。
【0038】
前記皮膚化粧料中の、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、皮膚化粧料の種類や抽出物の生理活性等によって適宜調整することができるが、例えば、前記スオウの抽出物の量として、0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜5質量%がより好ましい。
【0039】
(飲食品)
本発明の飲食品は、前記した本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
前記飲食品は、前記スオウの抽出物を、その活性を妨げないように任意の飲食物に配合したものであってもよいし、前記スオウの抽出物を主成分とする栄養補助食品であってもよい。また、前記飲食品は、前記スオウの抽出物そのものであってもよい。
【0040】
本発明の飲食品は、高い安全性を有し、優れたスーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、ラジカル消去作用、一酸化窒素(NO)産生抑制作用、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びUV−Bダメージからの回復作用の少なくともいずれかを発揮するものである。
【0041】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品や栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。
【0042】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飲食品を製造するにあたって通常用いられる、補助的原料又は添加物などが挙げられる。
前記補助的原料又は添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0043】
前記飲食品中の、前記抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかの含有量としては、対象となる飲食品の種類に応じて異なり、一概には規定することができないが、例えば、飲食品本来の味を損なわない範囲で任意の飲食物に配合することを目的とする場合には、有効成分である前記スオウの抽出物の量として、0.001質量%〜50質量%が好ましく、0.01質量%〜20質量%がより好ましい。また、例えば、前記スオウの抽出物を主成分とする顆粒、錠剤、カプセル形態等の栄養補助飲食品を製造することを目的とする場合には、有効成分である前記スオウの抽出物の量として、0.01質量%〜100質量%が好ましく、5質量%〜100質量%がより好ましい。
【0044】
(効果)
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤、並びに、皮膚化粧料及び飲食品は、日常的に使用することが可能であり、有効成分である前記スオウの抽出物の働きによって、抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用の少なくともいずれかを、極めて効果的に発揮させることができるものである。
【0045】
なお、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤、並びに、皮膚化粧料及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することも可能である。また、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤、並びに、皮膚化粧料及び飲食品は、天然由来の前記スオウの抽出物を有効成分としたものであり、安全性に優れる点でも、有利である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(製造例1)
−スオウ(Caesalpinia sappan)の水抽出物の製造−
スオウの種子の粉砕物に、質量比で10倍量の水を加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の水を加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、スオウの水抽出物(凍結乾燥品)を得た。なお、得られたスオウの水抽出物の抽出率は、18.4%であった。
【0048】
(製造例2)
−スオウ(Caesalpinia sappan)の50質量%エタノール抽出物の製造−
スオウの種子の粉砕物に、質量比で10倍量の50質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の50質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、スオウの50質量%エタノール抽出物(凍結乾燥品)を得た。なお、得られたスオウの50質量%エタノール抽出物の抽出率は、10.6%であった。
【0049】
(製造例3)
−スオウ(Caesalpinia sappan)の80質量%エタノール抽出物の製造−
スオウの種子の粉砕物に、質量比で10倍量(質量比)の80質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。残渣に同量の80質量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱し、ろ過した。ろ液を濃縮、凍結乾燥して、スオウの80質量%エタノール抽出物(凍結乾燥品)を得た。なお、得られたスオウの80質量%エタノール抽出物の抽出率は、7.1%であった。
【0050】
(実施例1:スーパーオキサイド消去作用試験(NBT法))
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりスーパーオキサイド消去作用を試験した。
【0051】
3mmol/Lのキサンチン、3mmol/LのEDTA、1.5mg/mLの牛血清アルブミン(BSA)溶液、0.75mmol/Lのニトロブルーテトラゾリウム(NBT)各0.1mL、及び0.05mol/LのNaCO緩衝液(pH10.2)2.4mLを試験管にとり、これに各試料溶液0.1mLを添加し、25℃で10分間放置した。次いで、キサンチンオキシダーゼ溶液を加えて素早く攪拌し、25℃で20分間静置した。その後、6mmol/Lの塩化銅0.1mLを加えて反応を停止させ、波長560nmにおける吸光度を測定した。このとき測定した吸光度を「試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度」とした。
また、同様の操作と吸光度の測定を、酵素溶液を添加せずに行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度」とした。
また、試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度」とした。
また、酵素溶液を添加せず、更に試料溶液を添加せずに蒸留水を添加した場合についても同様の測定を行った。このとき測定した吸光度を「試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度」とした。
そして、測定結果から、下記数式1によりスーパーオキサイド消去率を求めた。結果を表1に示す。なお、被験試料は、試料濃度100μg/mL、50μg/mL、25μg/mL、12.5μg/mLで使用した。
<数式1>
スーパーオキサイド消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
A:試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度
B:試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度
C:試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度
D:試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度
【0052】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記スーパーオキサイド消去率の測定を行い、スーパーオキサイドの消去率が50%になる試料濃度(以下、「IC50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【表2】

表1から2の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、中〜強度のスーパーオキサイド消去作用を有することが確認できた。
【0054】
(実施例2:過酸化水素消去作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により過酸化水素消去作用を試験した。
【0055】
1.5mmol/Lの過酸化水素溶液10μLに、各試料溶液10μLを加え、37℃で20分間反応した後、発色溶液〔100μmol/LのDA−64、0.5質量%のトライトンX−100含有0.1mol/LのPIPES緩衝液(pH7.0)100mLに100units/mLのペルオキシダーゼ1mLを添加〕2.98mLを添加し、37℃で5分間反応した。反応終了後、波長727nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
そして、測定結果から、下記数式2により過酸化水素消去率を求めた。結果を表3に示す。なお、被験試料は、試料濃度50μg/mL、25μg/mL、12.5μg/mLで使用した。
<数式2>
過酸化水素消去率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
St:被験試料溶液の波長727nmにおける吸光度
Sb:被験試料溶液ブランクの波長727nmにおける吸光度
Ct:コントロール溶液の波長727nmにおける吸光度
Cb:コントロール溶液ブランクの波長727nmにおける吸光度
【0056】
【表3】

表3の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、強い過酸化水素消去作用を有することが確認できた。
【0057】
(実施例3:DPPHに対するラジカル消去作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により非常に安定なラジカルである1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl radical(DPPH)を使用してラジカル消去作用を試験した。
【0058】
1.5×10−4mol/LのDPPHエタノール溶液3mLに各試料溶液3mLを加え、直ちに容器を密栓して振り混ぜ、30分間静置した後、波長520nmの吸光度を測定した。
コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶液を溶解した溶媒を用いて同様に操作し、波長520nmの吸光度を測定した。また、ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。
そして、測定結果から、下記数式3によりラジカル消去率(%)を求めた。結果を表4に示す。なお、被験試料は、試料濃度100μg/mL、50μg/mL、25μg/mLで使用した。
<数式3>
ラジカル消去率(%)={1−(B−C)/A}×100
A:コントロールの吸光度
B:試料溶液を添加した場合の吸光度
C:ブランクの吸光度
【0059】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記ラジカル消去率の測定を行い、DPPHラジカルの消去率が50%になる試料濃度(以下、「IC50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表5に示す。
【0060】
【表4】

【表5】

表4から5の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、DPPHに対するラジカル消去作用を有することが確認できた。
【0061】
実施例1から3の結果から、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物は、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有することが確認され、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物が、抗酸化剤、及び抗老化剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0062】
(実施例4:一酸化窒素(NO)産生抑制作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法により一酸化窒素(NO)産生抑制作用を試験した。
【0063】
マウスマクロファージ細胞(RAW264.7)を10質量%の牛胎児血清(FBS)含有ダルベッコMEMを用いて培養した後、セルスクレーパーにより細胞を回収した。回収した細胞を3.0×10cells/mLの濃度になるように10質量%のFBS含有フェノールレッド不含ダルベッコMEMで希釈した後、96穴マイクロプレートに1穴当たり100μLずつ播種し、4時間培養した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.5質量%のDMSOを含む10質量%のFBS含有フェノールレッド不含ダルベッコMEMで溶解した各試料溶液を各穴に100μL添加し、終濃度1μg/mLで10質量%のFBS含有フェノールレッド不含ダルベッコMEMに溶解したリポポリサッカライド(LPS、E.coli 0111;B4、DIFCO社製)を100μL加え、48時間培養した。NO産生量は亜硝酸イオン(NO−)量を指標に測定した。培養終了後、各穴の培養液に、同量のグリス試薬(1質量%のスルファニルアミド、0.1質量%のN−1−naphthyl ethylendiamine dihydrochloride in 5質量%のリン酸溶液)を添加し、10分間室温にて反応した。反応後、波長540nmにおける吸光度を測定した。コントロールの一酸化窒素(NO)産生量を基にして、下記数式4からNO産生抑制率を求めた。結果を表6に示す。なお、被験試料は、試料濃度200μg/mL、50μg/mLで使用した。
<数式4>
NO産生抑制率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
A:試料添加、LPS刺激時の波長540nmにおける吸光度
B:試料添加、LPS無刺激時の波長540nmにおける吸光度
C:コントロールのLPS刺激時の波長540nmにおける吸光度
D:コントロールのLPS無刺激時の波長540nmにおける吸光度
【0064】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記NO産生抑制率の測定を行い、NO産生抑制率が50%になる試料濃度(以下、「IC50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた(このIC50値が小さいほどNO産生抑制作用が強い)。結果を表7に示す。
【0065】
【表6】

【表7】

表6から7の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、強い一酸化窒素(NO)産生抑制作用を有することが確認できた。
【0066】
実施例4の結果から、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物は、一酸化窒素(NO)産生抑制作用を有することが確認され、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物が、抗炎症剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0067】
(実施例5:マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用を試験した。この試験方法は、Wunsch and Heidrich法を一部改変したものである。
【0068】
蓋付試験管にて、20mmol/mLの塩化カルシウム含有0.1mol/LのTris−HCl緩衝液(pH7.1)に溶解した各試料溶液50μL、MMP−1溶液50μL、及びPz−peptide溶液400μLを混合し、37℃にて30分間反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1,600×g、10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
なお、MMP−1としては、COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum(シグマ社製)を使用した。
Pz−peptideとしては、Pz−Pro−Leu−Gly−Pro−D−Arg−OH(BACHEM Fenichemikalien AG社製)を使用した。
そして、得られた結果から、下記数式5によりMMP−1活性阻害率を求めた。結果を表8に示す。なお、被験試料は、試料濃度400μg/mL、200μg/mL、100μg/mLで使用した。
<数式5>
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
A:試料溶液無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度
B:試料溶液無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度
C:試料溶液添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度
D:試料溶液添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度
【0069】
次に、試料濃度を段階的に減少させて上記MMP−1活性阻害率を測定し、MMP−1活性阻害率が50%になる濃度(以下、「IC50」と称することがある。)(μg/mL)を内挿法により求めた。結果を表9に示す。
【0070】
【表8】

【表9】

表8から9の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、中程度のマトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用を有することが確認できた。
【0071】
(実施例6:エストロゲン様作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりエストロゲン様作用を試験した。
【0072】
ヒト乳癌由来細胞(MCF−7)を10%の牛胎児血清(FBS)、1質量%のNEAA、及び1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含有するMEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を活性炭処理した10%のFBS、1質量%のNEAA、及び1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含有するフェノールレッド不含MEM(T−MEM)を用いて3.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48穴マイクロプレートに1穴あたり450μLずつ播種し、細胞を定着させるため培養した。6時間後(0日目)にT−MEMで終濃度の10倍に調製した各試料溶液を各穴に50μLずつ添加し、培養を続けた。3日目に培地を抜き、T−MEMで終濃度に調製した試料溶液を各穴に0.5mL添加し、更に培養を続けた。
エストロゲン様作用は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、1質量%のNEAA、1mmol/Lのピルビン酸ナトリウムを含有するMEMに終濃度0.4mg/mLで溶解したMTT〔3−(4,5−Dimethyl−2−thiazolyl)−2,5−diphenyl−2H−tetrazolium Bromide〕を各穴に200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。ポジティブコントロールとして、10−9mol/Lのエストラジオールを使用した。
そして、得られた測定結果から、下記数式6によりエストロゲン様作用(エストロゲン依存性増殖作用)率を求めた。なお、エストロゲン様作用の強さは、試料溶液無添加の場合の吸光度を100%として算出した。結果を表10に示す。
なお、被験試料は、試料濃度50μg/mL、12.5μg/mL、3.125μg/mLで使用した。
<数式6>
エストロゲン様作用率(%)=(A/B)×100
A:試料溶液添加の場合の吸光度
B:試料溶液無添加の場合の吸光度
【0073】
【表10】

表10の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、エストロゲン様作用を有することが確認できた。
【0074】
(実施例7:I型コラーゲン産生促進作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりI型コラーゲン産生促進作用を試験した。
【0075】
ヒト正常線維芽細胞(Detroit 551)を、10質量%FBS、1質量%NEAA(non−essential amino acids)、及び1mmol/Lピルビン酸含有ダルベッコMEMを用いて37℃、5%CO下で培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの濃度に上記培地で希釈した後、96穴マイクロプレートに1穴当たり100μLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養終了後、培地を抜き、0.5質量%FBS含有ダルベッコMEMに溶解した各試料溶液を各穴に150μL添加し、37℃、5%CO下で3日間培養した。培養後、以下のようにして各穴の培地中のコラーゲン量をELISA法により測定した。
前記培養後の上清90μLをELISAプレートに移し換え、4℃、一晩でプレートに吸着させた後、溶液を捨て、0.05質量%Tween−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行った。その後、1質量%ウシ血清アルブミンを含むリン酸生理緩衝液で、ブロッキング操作を行った。溶液を捨て、0.05質量%Tween−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行い、抗ヒトコラーゲンタイプI抗体(ウサギIgG;ケミコン社製)を反応させた。溶液を捨て、0.05%Tween−20を含むリン酸生理緩衝液(PBS−T)にて、洗浄を行い、HRP標識抗ウサギIgG抗体と反応させた後、同様の洗浄操作を行い、発色反応を行った。
I型コラーゲン産生促進作用は下記数式7から求めた。I型コラーゲン産生促進作用の強さは、標準品を用いて上記ELISAを行い、検量線を作成し、被験試料無添加時のI型コラーゲン量を100%として算出した。結果を表11に示す。
なお、被験試料は、試料濃度100μg/mL、25μg/mLで使用した。
<数式7>
I型コラーゲン産生促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時のI型コラーゲン量
B:被験試料無添加時のI型コラーゲン量
【0076】
【表11】

表11の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、I型コラーゲン産生促進作用を有することが確認できた。
【0077】
(実施例8:ヒアルロン酸産生促進作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
【0078】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB、理化学研究所より入手)を10%FBS含有α−MEM(minimum essential medium)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.2×10cells/mLの濃度に5%FBS含有α−MEMで希釈した後、96穴プレートに1穴当たり100μLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養終了後、0.5%FBS含有α−MEMに溶解した被験試料を各穴に100μL添加し、37℃、5%CO下で3日間培養した。培養後、各穴の培地中のヒアルロン酸量を間接的ELISA法により測定した。
ヒアルロン酸産生促進作用は、下記数式8により求めた。なお、ヒアルロン酸産生促進作用の強さは、被験試料無添加時のヒアルロン酸量を100%として算出した。結果を表12に示す。なお、被験試料は、試料濃度200μg/mL、50μg/mLで使用した。
<数式8>
ヒアルロン酸産生促進率(%)=(A/B)×100
A:被験試料添加時のヒアルロン酸量
B:被験試料無添加時のヒアルロン酸量
【0079】
【表12】

表12の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、ヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認できた。
【0080】
(実施例9:UV−Bダメージからの回復作用試験)
前記製造例1から3で得られた各スオウの抽出物を被験試料として用い、下記の試験方法によりUV−Bダメージからの回復作用を試験した。
【0081】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10%FBS含有α−MEMを用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞をα−MEMを用いて2.0×10cells/mLの濃度に希釈した後、48穴プレートに1穴あたり200μLずつ播種した。24時間培養後、培地を100μLのPBS(−)へ交換し、1.0J/cmのUV−Bを照射した。照射後、直ちに、PBS(−)を抜き、10%FBS含有D−MEMに溶解した各試料溶液を各穴に400μL添加し、24時間培養した。紫外線UV−Bダメージからの回復効果は、MTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで溶解したMTTを各穴に200μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール200μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、細胞播種した後、UV−Bを照射しない細胞、及び細胞播種後UV−Bを照射し被験試料を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非照射群と照射群とした。
UV−Bダメージ回復率は、下記数式9により求めた。結果を表13に示す。なお、被験試料は、試料濃度100μg/mL、25μg/mL、6.25μg/mLで使用した。
<数式9>
UV−Bダメージ回復率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
Nt:UV−Bを照射しない細胞での吸光度
C:UV−Bを照射し被験試料を添加しない細胞での吸光度
Sa:UV−Bを照射し被験試料を添加した細胞での吸光度
【0082】
【表13】

表13の結果から、製造例1から3のスオウの抽出物が、UV−Bダメージ回復作用を有することが確認できた。
【0083】
実施例5から9の結果から、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物は、マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、及びUV−Bダメージ回復作用の少なくともいずれかを有することが確認され、スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物が、抗老化剤の有効成分として、好適に利用可能であることが示唆された。
【0084】
(配合例1)
−乳液−
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.10g
・ホホバオイル・・・4.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・アルブチン・・・3.00g
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・2.50g
・オリーブオイル・・・2.00g
・スクワラン・・・2.00g
・セタノール・・・2.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・グリチルリチン酸ステアリル・・・0.10g
・黄杞エキス・・・0.10g
・グリチルリチン酸ジカリウム・・・0.10g
・イチョウ葉エキス・・・0.10g
・コンキオリン・・・0.10g
・オウバクエキス・・・0.10g
・カミツレエキス・・・0.10g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計100.00g)
【0085】
(配合例2)
−化粧水−
下記組成に従い、化粧水を常法により製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の水抽出物(製造例1)・・・0.10g
・グリセリン・・・3.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・3.00g
・アスコルビン酸グルコシド・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・2.00g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・0.15g
・グリチルリチン酸二カリウム・・・0.10g
・クエン酸・・・0.10g
・クエン酸ソーダ・・・0.10g
・油溶性甘草エキス・・・0.10g
・海藻エキス・・・0.10g
・クジンエキス・・・0.10g
・キシロビオースミクスチャー・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0086】
(配合例3)
−クリーム−
下記組成に従い、クリームを常法により製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・0.10g
・スクワラン・・・10.00g
・1,3−ブチレングリコール・・・6.00g
・流動パラフィン・・・5.00g
・サラシミツロウ・・・4.00g
・セタノール・・・3.00g
・モノステアリン酸グリセリル・・・3.00g
・ラノリン・・・2.00g
・オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)・・・1.50g
・パラオキシ安息香酸メチル・・・1.50g
・ステアリン酸・・・1.00g
・アスコルビン酸リン酸マグネシウム・・・0.10g
・グリチルレチン酸・・・0.10g
・酵母抽出液・・・0.10g
・シソ抽出液・・・0.10g
・シナノキ抽出液・・・0.10g
・ジユ抽出液・・・0.10g
・香料・・・0.10g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0087】
(配合例4)
−パック−
下記組成に従い、パックを常法により製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・0.20g
・ポリビニルアルコール・・・15.00g
・エタノール・・・10.00g
・プロピレングリコール・・・7.00g
・ポリエチレングリコール・・・3.00g
・セージ抽出液・・・0.10g
・トウキ抽出液・・・0.10g
・ニンジン抽出液・・・0.10g
・パラオキシ安息香酸エチル・・・0.05g
・香料・・・0.05g
・精製水・・・残部(合計:100.00g)
【0088】
(配合例5)
−錠剤状栄養補助食品−
下記の混合物を打錠して、錠剤状栄養補助食品を製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の50質量%エタノール抽出物(製造例2)・・・30g
・粉糖(ショ糖)・・・178g
・ソルビット・・・10g
・グリセリン脂肪酸エステル・・・12g
【0089】
(配合例6)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の80質量%エタノール抽出物(製造例3)・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1,000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【0090】
(配合例7)
−顆粒状栄養補助食品−
下記の混合物を顆粒状に形成して、顆粒状栄養補助食品を製造した。
・スオウ(Caesalpinia sappan)の種子の水抽出物(製造例1)・・・20g
・ビートオリゴ糖・・・1,000g
・ビタミンC・・・167g
・ステビア抽出物・・・10g
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを配合した皮膚化粧料は、優れた抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、かつ安全性にも優れているので、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、入浴剤、アストリンゼントなどに好適に利用可能である。
また、本発明の抗酸化剤、抗炎症剤、及び抗老化剤の少なくともいずれかを配合した飲食品は、経口摂取によっても優れた抗酸化作用、抗炎症作用、及び抗老化作用の少なくともいずれかを有し、かつ安全性にも優れているので、例えば、健康食品、栄養補助食品などに好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有する請求項1に記載の抗酸化剤。
【請求項3】
スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有することを特徴とする抗炎症剤。
【請求項4】
一酸化窒素(NO)産生抑制作用を有する請求項3に記載の抗炎症剤。
【請求項5】
スオウ(Caesalpinia sappan)の抽出物を含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項6】
マトリックスメタロプロテアーゼ−1(MMP−1)活性阻害作用、エストロゲン様作用、I型コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、UV−Bダメージからの回復作用、スーパーオキサイド消去作用、過酸化水素消去作用、及びラジカル消去作用の少なくともいずれかを有する請求項5に記載の抗老化剤。
【請求項7】
請求項1から2のいずれかに記載の抗酸化剤、請求項3から4のいずれかに記載の抗炎症剤、及び請求項5から6のいずれかに記載の抗老化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする皮膚化粧料。
【請求項8】
請求項1から2のいずれかに記載の抗酸化剤、請求項3から4のいずれかに記載の抗炎症剤、及び請求項5から6のいずれかに記載の抗老化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2010−280621(P2010−280621A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135978(P2009−135978)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】