説明

振動片、振動子及び発振器

【課題】基部の強度が向上し、耐衝撃特性を向上させることができる振動片の提供。
【解決手段】水晶振動片1は、水晶の原石などから、水晶の結晶軸としての互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対して所定の角度で切り出されたZ板を基材とし、外形形状がエッチングによって形成された振動片であって、基部10と、基部10からY軸方向に延びる一対の振動腕11と、基部10をX軸方向に切り欠いた切り欠き部12,13と、を備え、切り欠き部12が、基部10をX軸のプラス側からマイナス側へ切り欠き、切り欠き方向に沿った辺12aと基部10の外周10bとの間に、切り欠き部12の幅が外周10bに近づくに連れて広がるように形成された傾斜部12cを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動片、この振動片を備えた振動子及びこの振動片を備えた発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基部と、基部から突出して形成されている振動腕部(以下、振動腕という)とを有し、振動腕に溝部が形成されている振動片であって、基部に切り込み部(以下、切り欠き部という)が形成されている振動片が開示されている。
特許文献1の振動片は、基部に切り欠き部が形成されていることにより、振動腕から基部への振動漏れが減少し、CI(クリスタルインピーダンス)値(Q値)のばらつきの抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−280870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記振動片は、通常、エッチングによって外形形状が形成されている。そして、水晶を基材とした振動片においては、水晶の結晶軸に対する方向によってエッチング速度が異なるエッチング異方性を有する。
このエッチング異方性に起因して、振動片は、基部の切り欠き部の先端部分が、オーバーエッチング(エッチング過多)されることによって、本来の位置より基部の中央側に入り込み、例えば、先端が尖ったくさびのような、応力が集中しやすい形状に形成されることがある。
これにより、振動片は、落下時などの衝撃が加わった際に、切り欠き部の先端部分に応力が集中し、その部分から破損する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる振動片は、水晶の結晶軸としての互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対して所定の角度で切り出されたZ板を基材とし、外形形状がエッチングによって形成された振動片であって、基部と、前記基部から前記Y軸方向に延びる少なくとも1本の振動腕と、前記基部を前記X軸方向に切り欠いた切り欠き部と、を備え、前記切り欠き部の少なくとも1つは、前記基部を前記X軸のプラス側からマイナス側へ切り欠き、切り欠き方向に沿った少なくとも1つの辺と前記基部の外周との間に、前記切り欠き部の幅が前記外周に近づくに連れて広がるように形成された傾斜部を有することを特徴とする。
【0007】
これによれば、振動片は、基部をX軸方向に切り欠いた切り欠き部を備え、切り欠き部の少なくとも1つが、基部をX軸のプラス側からマイナス側へ切り欠き、切り欠き部の幅が外周に近づくに連れて広がるように形成された傾斜部を有する。
振動片は、上記方向に切り欠き部を設けることで、振動漏れをより効果的に抑制できる。そして、振動片は、切り欠き部に傾斜部を有することで、切り欠き部の先端部分におけるエッチングの進行度合いが変化し、オーバーエッチングを抑制できる。
この結果、振動片は、切り欠き部の先端部分における応力集中が緩和されることから、基部の強度が向上し、耐衝撃特性を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる振動片において、前記傾斜部は、前記切り欠き部において前記Y軸のプラス側に位置する一方の辺に接続され、前記一方の辺との成す角度が3度〜35度の範囲内であることが好ましい。
【0009】
これによれば、振動片は、Y軸のプラス側に位置する一方の辺と傾斜部との成す角度が3度〜35度の範囲内である。
振動片は、一方の辺と傾斜部との成す角度が上記範囲内であることにより、効果的にオーバーエッチングを抑制できる。なお、上記範囲は、発明者らが現物との整合性を検証した上でのエッチングのシミュレーションによる解析結果から得た知見である。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる振動片において、前記傾斜部は、前記切り欠き部において前記Y軸のマイナス側に位置する他方の辺に接続され、前記他方の辺との成す角度が10度〜30度の範囲内であることが好ましい。
【0011】
これによれば、振動片は、Y軸のマイナス側に位置する他方の辺と傾斜部との成す角度が10度〜30度の範囲内である。
振動片は、他方の辺と傾斜部との成す角度が上記範囲内であることにより、効果的にオーバーエッチングを抑制できる。なお、上記範囲は、発明者らが現物との整合性を検証した上でのシミュレーションによる解析結果から得た知見である。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる振動片において、前記切り欠き部は、対で設けられ、前記振動腕の延びる方向に沿った前記基部の中心線を対称軸として、対称形状に形成されていることが好ましい。
【0013】
これによれば、振動片は、切り欠き部が対で設けられ、振動腕の延びる方向に沿った基部の中心線を対称軸として、対称形状に形成されていることから、バランスのとれた振動を得ることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる振動片において、前記振動腕を複数本備え、前記複数本の振動腕と、前記基部とを含んで音叉を構成することが好ましい。
【0015】
これによれば、振動片は、振動腕を複数本備え、複数本の振動腕と基部とを含んで音叉を構成することから、耐衝撃特性が向上した音叉型振動片を提供できる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる振動子は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動片と、前記振動片を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
これによれば、振動子は、耐衝撃特性が向上した振動片を備えることから、耐衝撃特性を向上させることができる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる発振器は、上記適用例のいずれか一例に記載の振動片と、前記振動片を発振させる発振回路を有する回路素子と、前記振動片及び前記回路素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする。
【0019】
これによれば、発振器は、耐衝撃特性が向上した振動片を備えることから、耐衝撃特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態の振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図2】図1(a)の要部拡大図。
【図3】切り欠き部における傾斜部の角度と、先端部分のエッチング形状との関係を示す図。
【図4】第2の実施形態の振動片の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図5】図4(a)の要部拡大図。
【図6】切り欠き部における傾斜部の角度と、先端部分のエッチング形状との関係を示す図。
【図7】第3の実施形態の振動子の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【図8】第4の実施形態の発振器の概略構成を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の振動片の概略構成を示す模式図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図である。図2は、図1(a)のB部拡大図である。
【0023】
図1に示すように、振動片としての水晶振動片1は、水晶の原石などから、水晶の結晶軸としての互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対して所定の角度で切り出されたZ板を基材とし、外形形状がフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング(ウエットエッチング)によって形成された振動片である。
ここで、Z板とは、切り出し面(主面10a)がZ軸に対して略直交したものをいい、このZ軸に直交した主面10aが、X軸のプラス側から見てY軸からZ軸の方向へ反時計回りまたは時計回りに0度〜数度の範囲で回転した状態で切り出されたものも含まれる。
水晶振動片1は、X軸が電気軸、Y軸が機械軸、Z軸が光軸となるように、水晶の単結晶から切り出される。
なお、水晶振動片1は、水晶からの切り出し角度の誤差を、X軸、Y軸及びZ軸の各々につき多少の範囲(例えば、0度〜5度程度の範囲)で許容できる。
【0024】
水晶振動片1は、基部10と、基部10からY軸方向に延びる互いに略平行な一対の振動腕11と、基部10をX軸方向に切り欠いた一対の切り欠き部12,13と、基部10からX軸方向に突出し、振動腕11側に折れ曲がってY軸方向に延びる一対の支持部14とを備えている。
水晶振動片1は、基部10と、一対の振動腕11とを含んで音叉を構成することで、音叉型振動片となっており、支持部14の所定の位置に形成された図示しないマウント電極を介してパッケージなどの外部部材に固定されるようになっている。
【0025】
振動腕11は、基部10側に位置する腕部15と、腕部15よりも先端側に位置し、腕部15よりも幅が広い錘部16と、振動腕11の延びる方向(Y軸方向)に沿って形成され、一対の振動腕11の並ぶ方向(X軸方向)に切断した振動腕11の断面形状が、H字状となる溝部17とを有している。
水晶振動片1は、振動腕11に形成された図示しない励振電極に、マウント電極を経由して外部から駆動信号が印加されることにより、一対の振動腕11が、所定の周波数(例えば、32kHz)で矢印C方向及び矢印D方向に交互に屈曲振動(共振)する。
【0026】
ここで、一対の切り欠き部12,13について詳述する。
切り欠き部12は、基部10をX軸のプラス側からマイナス側へ切り欠いて形成されている。
そして、図2に示すように、切り欠き部12は、切り欠き方向に沿った辺12a,12bの内、Y軸のプラス側に位置する一方の辺としての辺12aと、基部10の外周10bとの間に、切り欠き部12の幅が外周10bに近づくに連れて広がるように形成された傾斜部12cを有する。
傾斜部12cは、上記のように、切り欠き部12においてY軸のプラス側に位置する辺12aに接続され、辺12aとの成す角度θが、3度〜35度の範囲内となるように形成されている。
一方、切り欠き部13は、図1(a)に示すように、切り欠き部12と対になるように設けられ、振動腕11の延びる方向(Y軸方向)に沿った基部10の中心線10cを対称軸として、切り欠き部12と対称形状に形成されている。
【0027】
ここで、切り欠き部12における傾斜部12cの角度θと、切り欠き部12の先端部分のエッチング形状との関係について、発明者らのシミュレーションによる解析結果に基づいて説明する。
図3は、切り欠き部における傾斜部の角度と、先端部分のエッチング形状との関係を示す図である。
シミュレーションによって得られたエッチング形状については、3段階で評価し、応力が集中しやすい形状順に×:不良、○:良、◎:優良、で表している。エッチング形状は、○、◎の評価であれば、応力が集中し難く量産に適用できるものと判断される。
【0028】
図3に示すように、エッチング形状は、傾斜部12cの角度θが3度〜35度の範囲内で○以上であり、特に10度〜30度の範囲内で◎である。これに対して、エッチング形状は、傾斜部12cの角度θが0度、37度、40度で×である。
この解析結果によれば、傾斜部12cの角度θは、3度〜35度の範囲内が好ましく、10度〜30度の範囲内がより好ましい。また、角度θは、エッチング異方性の影響を踏まえた傾斜部12cの形成精度の観点からすれば、ほぼ30度とすることが特に好ましい。
【0029】
シミュレーションによるエッチング形状について詳述すると、図2の2点鎖線は、傾斜部12cがない場合(従来形状であって、図3の角度θが0度の場合)の先端部分の形状を示している。
この場合には、切り欠き部12の先端部分が、大きくオーバーエッチングされ、実線で示した本来の円弧状の形状より基部10の中央側に入り込み、先端が尖ったくさびのような、応力が集中しやすい形状に形成されている。
これに対して、傾斜部12cの角度θが3度〜35度の範囲内の場合には、切り欠き部12の先端部分におけるエッチングの進行度合いが変化し、オーバーエッチングが抑制され、切り欠き部12の先端部分が、実線で示した本来の円弧状の形状に近似した形状で形成されている。
【0030】
上述したように、第1の実施形態の水晶振動片1は、基部10をX軸方向に切り欠いた切り欠き部12,13を備えている。そして、水晶振動片1は、切り欠き部12が、基部10をX軸のプラス側からマイナス側へ切り欠き、切り欠き方向に沿った辺12a,12bの内、Y軸のプラス側に位置する辺12aと、基部10の外周10bとの間に、切り欠き部12の幅が外周10bに近づくに連れて広がるように形成された傾斜部12cを有する。
【0031】
これによれば、水晶振動片1は、上記方向に切り欠き部12,13を設けることで、振動漏れをより効果的に抑制できる。
そして、水晶振動片1は、切り欠き部12に傾斜部12cを有することで、切り欠き部12の先端部分におけるエッチングの進行度合いが変化し、オーバーエッチングを抑制できる。
この結果、水晶振動片1は、切り欠き部12の先端部分における応力集中が緩和されることから、基部10の強度が向上し、耐衝撃特性を向上させることができる。
【0032】
また、水晶振動片1は、傾斜部12cと辺12aとの成す角度θが3度〜35度の範囲内であれば、効果的にオーバーエッチングを抑制でき、傾斜部12cと辺12aとの成す角度θが10度〜30度の範囲内であれば、より効果的にオーバーエッチングを抑制できる。
【0033】
また、水晶振動片1は、切り欠き部12,13が対で設けられ、振動腕11の延びる方向(Y軸方向)に沿った基部10の中心線10cを対称軸として、切り欠き部12と切り欠き部13とが対称形状に形成されていることから、バランスのとれた屈曲振動を得ることができる。
【0034】
また、水晶振動片1は、振動腕11を一対(2本)備え、2本の振動腕11と基部10とを含んで音叉を構成することから、耐衝撃特性が向上した音叉型振動片を提供できる。
なお、水晶振動片1は、水晶のエッチング異方性により切り欠き部13の先端部分がオーバーエッチングされ難いことから、切り欠き部13には傾斜部がなくてもよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の振動片の概略構成を示す模式図であり、図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)のE−E線での断面図である。図5は、図4(a)のF部拡大図である。
なお、第1の実施形態との共通部分については、同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0036】
図4に示すように、振動片としての水晶振動片2は、切り欠き部12,13の形状が第1の実施形態と異なる。
図5に示すように、水晶振動片2の切り欠き部12は、切り欠き方向に沿った辺12a,12bの内、Y軸のマイナス側に位置する他方の辺としての辺12bと、基部10の外周10bとの間に、切り欠き部12の幅が外周10bに近づくに連れて広がるように形成された傾斜部12dを有する。
傾斜部12dは、上記のように、切り欠き部12においてY軸のマイナス側に位置する辺12bに接続され、辺12bとの成す角度θ1が、10度〜30度の範囲内となるように形成されている。
一方、切り欠き部13は、図4(a)に示すように、切り欠き部12と対になるように設けられ、振動腕11の延びる方向(Y軸方向)に沿った基部10の中心線10cを対称軸として、切り欠き部12と対称形状に形成されている。
【0037】
ここで、切り欠き部12における傾斜部12dの角度θ1と、切り欠き部12の先端部分のエッチング形状との関係について、発明者らのシミュレーションによる解析結果に基づいて説明する。
図6は、切り欠き部における傾斜部の角度と、先端部分のエッチング形状との関係を示す図である。
シミュレーションによって得られたエッチング形状については、2段階で評価し、応力が集中しやすい形状順に×:不良、○:良、で表している。エッチング形状は、○の評価であれば、応力が集中し難く量産に適用できるものと判断される。
【0038】
図6に示すように、エッチング形状は、傾斜部12dの角度θ1が10度〜30度の範囲内で○である。これに対して、エッチング形状は、傾斜部12dの角度θ1が0度で×である。
この解析結果によれば、傾斜部12dの角度θ1は、10度〜30度の範囲内が好ましいことがわかる。
【0039】
シミュレーションによるエッチング形状について詳述すると、図5の2点鎖線は、傾斜部12dがない場合(従来形状であって、図6の角度θ1が0度の場合)の先端部分の形状を示している。
この場合には、第1の実施形態と同様に、切り欠き部12の先端部分が、大きくオーバーエッチングされ、実線で示した本来の円弧状の形状より基部10の中央側に入り込み、先端が尖ったくさびのような、応力が集中しやすい形状に形成されている。
これに対して、傾斜部12dの角度θ1が10度〜30度の範囲内の場合には、切り欠き部12の先端部分におけるエッチングの進行度合いが変化し、オーバーエッチングが抑制され、切り欠き部12の先端部分が、実線で示した本来の円弧状の形状に近似した形状で形成されている。
【0040】
上述したように、第2の実施形態の水晶振動片2は、切り欠き部12が、切り欠き方向に沿った辺12a,12bの内、Y軸のマイナス側に位置する辺12bと、基部10の外周10bとの間に、切り欠き部12の幅が外周10bに近づくに連れて広がるように形成された傾斜部12dを有する。
そして、水晶振動片2は、傾斜部12dと辺12bとの成す角度θ1が、10度〜30度の範囲内となるように形成されている。
【0041】
これにより、水晶振動片2は、切り欠き部12の先端部分におけるエッチングの進行度合いが変化し、オーバーエッチングを抑制できる。
この結果、水晶振動片2は、切り欠き部12の先端部分における応力集中が緩和されることから、基部10の強度が向上し、耐衝撃特性を向上させることができる。
なお、水晶振動片2は、水晶のエッチング異方性により切り欠き部13の先端部分がオーバーエッチングされ難いことから、切り欠き部13には傾斜部がなくてもよい。
【0042】
なお、上記各実施形態では、振動腕11の数を2本としたが、これに限定するものではなく、1本、または3本以上でもよい。
また、支持部14、錘部16、溝部17は、なくてもよい。また、振動腕11の屈曲振動の方向は、振動腕11の厚み方向(Z軸方向)であってもよい。また、傾斜部12cと傾斜部12dとは、併用されてもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、上記で説明した水晶振動片を備えた振動子について説明する。
図7は、第3の実施形態の振動子の概略構成を示す模式図であり、図7(a)は平面図、図7(b)は、図7(a)のG−G線での断面図である。
【0044】
図7に示すように、振動子としての水晶振動子5は、第1の実施形態の水晶振動片1と、水晶振動片1を収容するパッケージ80と、を備えている。
パッケージ80は、パッケージベース81、シームリング82、蓋体85などから構成されている。
パッケージベース81は、水晶振動片1を収容できるように凹部が形成され、その凹部に水晶振動片1の図示しないマウント電極と接続される接続パッド88が設けられている。
接続パッド88は、パッケージベース81内の配線に接続され、パッケージベース81の外周部に設けられた外部接続端子83と導通可能に構成されている。
【0045】
パッケージベース81の凹部の周囲には、シームリング82が設けられている。さらに、パッケージベース81の底部には、貫通穴86が設けられている。
水晶振動片1は、パッケージベース81の接続パッド88に導電性接着剤84を介して接着固定されている。そして、パッケージ80は、パッケージベース81の凹部を覆う蓋体85とシームリング82とがシーム溶接されている。
パッケージベース81の貫通穴86には、金属材料などからなる封止材87が充填されている。この封止材87は、減圧雰囲気内で溶融後固化され、パッケージベース81内が減圧状態を保持できるように、貫通穴86を気密に封止している。
水晶振動子5は、外部接続端子83を介した外部からの駆動信号により水晶振動片1が励振され、所定の周波数(例えば、32kHz)で発振する。
【0046】
上述したように、水晶振動子5は、耐衝撃特性が向上した水晶振動片1を備えていることから、耐衝撃特性を向上させることができる。
なお、水晶振動子5は、水晶振動片1に代えて水晶振動片2を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0047】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、上記で説明した水晶振動片を備えた発振器について説明する。
図8は、第4の実施形態の発振器の概略構成を示す模式図であり、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)のJ−J線での断面図である。
【0048】
発振器としての水晶発振器6は、上記水晶振動子5の構成に回路素子をさらに備えた構成となっている。なお、水晶振動子5との共通部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図8に示すように、水晶発振器6は、第1の実施形態の水晶振動片1と、水晶振動片1を発振させる発振回路を有する回路素子としてのICチップ91と、水晶振動片1及びICチップ91を収容するパッケージ80と、を備えている。
ICチップ91は、パッケージベース81の底部に固着され、金線などの金属ワイヤー92により他の配線と接続されている。
水晶発振器6は、ICチップ91の発振回路からの駆動信号により水晶振動片1が励振され、所定の周波数(例えば、32kHz)で発振する。
【0049】
上述したように、水晶発振器6は、耐衝撃特性が向上した水晶振動片1を備えていることから、耐衝撃特性を向上させることができる。
なお、水晶発振器6は、水晶振動片1に代えて水晶振動片2を用いても、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0050】
1,2…振動片としての水晶振動片、5…振動子としての水晶振動子、6…発振器としての水晶発振器、10…基部、10a…主面(切り出し面)、10b…外周、11…振動腕、12,13…切り欠き部、12a…一方の辺としての辺、12b…他方の辺としての辺、12c,12d…傾斜部、14…支持部、15…腕部、16…錘部、17…溝部、80…パッケージ、81…パッケージベース、82…シームリング、83…外部接続端子、84…導電性接着剤、85…蓋体、86…貫通穴、87…封止材、88…接続パッド、91…回路素子としてのICチップ、92…金属ワイヤー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶の結晶軸としての互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対して所定の角度で切り出されたZ板を基材とし、外形形状がエッチングによって形成された振動片であって、
基部と、
前記基部から前記Y軸方向に延びる少なくとも1本の振動腕と、
前記基部を前記X軸方向に切り欠いた切り欠き部と、を備え、
前記切り欠き部の少なくとも1つは、前記基部を前記X軸のプラス側からマイナス側へ切り欠き、切り欠き方向に沿った少なくとも1つの辺と前記基部の外周との間に、前記切り欠き部の幅が前記外周に近づくに連れて広がるように形成された傾斜部を有することを特徴とする振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の振動片において、前記傾斜部は、前記切り欠き部において前記Y軸のプラス側に位置する一方の辺に接続され、前記一方の辺との成す角度が3度〜35度の範囲内であることを特徴とする振動片。
【請求項3】
請求項1に記載の振動片において、前記傾斜部は、前記切り欠き部において前記Y軸のマイナス側に位置する他方の辺に接続され、前記他方の辺との成す角度が10度〜30度の範囲内であることを特徴とする振動片。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動片において、前記切り欠き部は、対で設けられ、前記振動腕の延びる方向に沿った前記基部の中心線を対称軸として、対称形状に形成されていることを特徴とする振動片。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の振動片において、前記振動腕を複数本備え、前記複数本の振動腕と、前記基部とを含んで音叉を構成することを特徴とする振動片。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする振動子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の振動片と、
前記振動片を発振させる発振回路を有する回路素子と、
前記振動片及び前記回路素子を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−176665(P2011−176665A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39785(P2010−39785)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】