説明

排ガスターボチャージャーのためのタービンホイールを製造するための方法

本発明は、金属粉末射出成形によって排ガスターボチャージャーのためのタービンホイールを製造するための方法であって、以下の工程:(a)金属粉末とバインダーを含む原材料を用意する工程、(b)タービンホイールを金属粉末射出成形するために、製造するタービンホイールのネガティブ型を含む工具を用意する工程、(c)バインダーを含む回転対称コアを、工程(b)で用意された工具のネガティブ型に導入し、及び前記コアを、製造するタービンホイールの回転軸に対して、対称的に配置する工程、(d)工程(a)で用意された原材料を前記コアの周囲に金属粉末射出成形することによって、素地を製造する工程、(e)タービンホイールの形状の成形物を得るために、バインダー除去工程を行って素地からバインダーを除去する工程、及び(f)成形物をシンタリングする工程、を含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン内の、排ガスターボチャージャーのための、質量が低減されたタービンホイールを、金属粉末射出成形によって製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンのためのターボチャージャーは、(内燃エンジンの排ガス流に配置され、及びシャフトによって内燃エンジンの吸気管(intake tract)内の圧縮器に連結された)排ガスタービンを含んでいる。タービンは、内燃エンジンの排ガス流によって回転され、そしてコンプレッサーホイールを駆動させる。コンプレッサーホイールは、エンジンの吸気管中の圧力を増し、これにより、吸引フェーズの間、(セクションエンジンの場合よりも)多くの量の空気がシリンダー内に入る。この結果、より多くの酸素が、対応する大量の燃料の燃焼に使用可能となる。タービンホイールの、(複雑な幾何学形状を有する)排ガス流に曝される「ホット」側は、通常、精密鋳造によって、高−温度−抵抗性材料から製造され、そして摩擦溶接によってシャフトに連結される。コンプレッサーホイールは、例えばスクリュー連結によって、シャフトの反対側の端部に備え付けられる。ターボチャージャーを運転する間、2個のホイールを有するシャフトの、300000rpmまでの非常に速い回転速度が達成される。ターボチャージャーの非常に速い応答を達成するために、回転部分の慣性は非常に低くあるべきである。
【0003】
ターボチャージャー成分の質量の低減に関する文献の一つとして、日本の公報JP2007−120409がある。この文献は、タービンホイールの装飾、及び従って、質量を低減するための材料の節約を開示している。精密鋳造によって、装飾された(decored)タービンホイールが製造される。しかしながら、不利な点は、記載されている精密鋳造は複雑で高価なことである。
【0004】
金属粉末射出成形(MIM)は、金属部品、特に、仕上げに近接した寸法を有する、この種の部品を大量生産するための方法として公知である。MIM法は、複雑な形状を有する、サイズが小〜中程度の部品を、安価に、及び自動的に大量に製造することを可能にする。
【0005】
MIM法は、球状、又は不規則な形態(粒子径は、通常、100μm未満である)を有する金属粉を、バインダーを使用して可塑化(plasticization)し、原材料を得ること含む。原材料の均一化が、ねっか機(kneader)内で行われ、そして次に原材料が射出成形機内に導入される。バインダーの部分(例えば適切なワックス)が加熱領域内で融解され融解物が得られる。そしてスクリューが融解物を分割可能な型に運ぶ。型の充填が完了した後、融解物が凝固し、そして成分を型から取り出すことが可能になる。シンタリング(焼結)に先立って、バインダー除去工程によって、バインダーの除去が行われる。バインダーに依存して、種々の方法で、バインダーが成分から除去される。
【0006】
バインダーを除去する場合、通常、熱的なバインダー除去(融解除去、又はバインダーのガラス層を介した分解)、溶媒抽出、及び触媒的なバインダー除去の間で区別がなされる。バインダー除去工程の次に、シンタリング工程(焼結工程)が行われ、シンタリング工程で、理論密度の95%を超える、好ましくは98%を超える成分の緻密化が、拡散工程を使用して行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排ガスターボチャージャー部品(成分)の製造における金属粉末射出成形の使用は、従来技術では不成功であった。この理由は、精密鋳造の通常の製造方法に取って代わるためには、この方法は十分に経済的ではないからである。
【0008】
本発明の目的は、内燃エンジンの排ガスターボチャジャーのためのタービンホイールを製造するための新しい、経済的な方法を提供することにある(これにより、排ガスターボチャージャーのための質量が低減されたタービンホイールを単純な方法で成造できる)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、金属粉末射出成形によって排ガスターボチャージャーのためのタービンホイールを製造するための方法であって、以下の工程:
a)金属粉末とバインダーを含む原材料を用意する工程、
b)タービンホイールを金属粉末射出成形するために、製造するタービンホイールのネガティブ型を含む工具を用意する工程、
c)バインダーを含む回転対称コアを、工程(b)で用意された工具のネガティブ型に導入し、及び前記コアを、製造するタービンホイールの回転軸に対して、対称的に配置する工程、
d)工程(a)で用意された原材料を前記コアの周囲に金属粉末射出成形することによって、素地を製造する工程、
e)タービンホイールの形状の成形物を得るために、バインダー除去工程を行って前記素地からバインダーを除去し、及びこれと同時にコアを除去する工程、及び
f)成形物をシンタリング(焼結)する工程、
を含む方法によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内燃エンジンのための排ガスターボチャージャーのためのタービンホイール1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の方法は、規定された内部構造の空洞空間を有する、排ガスターボチャージャーのためのタービンホイールを単純に及び安価に製造することを可能にする。空洞空間を規定する内部構造は、工程(e)で行われるバインダー除去工程でコアを除去することにより形成される。このことは、(以前は、精密鋳造を使用して、固体成分として製造されていた)タービンホイールを空洞成分として大量に製造することを経済的なものにし、そしてこの結果、ターボチャージャーの質量を大きく低減することができる。この質量低減は、必要とされる燃料の低下、及び内燃エンジンの効率上昇、及び材料の相当量の節約に関係して、より迅速な応答をもたらす。更に、本発明の方法は、この技術分野では公知の精密鋳造法とは対照的に、排ガスターボチャージャーのためのタービンホイールを、壁の熱さが、0.1〜1mmの特に微細な設計で製造することを可能にする。
【0012】
本発明の方法のために、「原材料(feedstock)」は、通常、シンタリング(焼結)可能な金属、又はセラミック粉及びバインダーを含み、及び金属粉末射出成形に使用するのに適切な組成物を意味する。このような組成物は、この技術分野の当業者にとって公知である。本発明の目的のために、「金属粉末(metal powder)」という用語は、粉の金属(pulverulent metal)又は粉の合金、又はこれらの混合物を意味する。原材料中に粉末の状態で含まれることができる金属として、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、チタニウム、モリブデン、ニオブ、及びアルミニウムが記載されても良く;合金は、例えば、ニッケルベースの合金、又はチタニウムベースの合金が記載されても良い。合金は、好ましくは、ニッケルベースの合金で、例えば登録商標名Inconel(登録商標)713が例示され;これらは、74質量%のニッケル、12.5質量%のクロム、4.2質量%のモリブデン、2質量%のニオブ、6質量%のアルミニウム、0.8質量%のチタン、及び0.12質量%のカーボンを含むものである。同様に、ニッケルベースの合金の場合、登録商標名Inconel(登録商標)718で得られる合金が好ましい。このベース合金は、50〜55質量%のニッケル、17〜21質量%のクロム、<24質量%の鉄、2.8〜3.3質量%のモリブデン、4.8〜5.5質量%のニオブ、0.2〜0.8質量%のアルミニウム、0.7〜1.1質量%のチタン、及び0.08質量%未満のカーボンを含む。ニッケルベースの合金の場合、同様に、NIMONIC(登録商標)90が好ましい。NIMONIC(登録商標)90は、0.13質量%未満のカーボン、2〜3質量%のチタン、1〜2質量%のアルミニウム、1.5質量%未満の鉄、15〜21質量%のコバルト、18〜21質量%のクロムを含み、ニッケルでバランスさせている。ニッケルベースの合金は、より好ましくはHASTELLOY(登録商標)Xである。HASTELLOY(登録商標)Xは、0.05〜0.15質量%のカーボン、0.5質量%未満のアルミニウム、0.5〜2.5質量%のコバルト、8〜10質量%のモリデン、17〜20質量%の鉄、20〜23質量%のクロム、及びバランスとしてニッケルを含む。更なる適切な合金は、約15質量%のクロム、約10質量%の鉄、5質量%のモリブデン、2質量%のチタン、ニオブ、及びニッケルを含む合金である。原材料中の金属粉末の割合は、広い範囲で変動し、そして通常は、原材料に対して40〜70体積%、好ましくは45〜60体積%である。
【0013】
ここで、適切な「バインダー」は、原則として、この技術分野では公知で、及び金属粉末射出成形に使用するのに適切な全ての系である。原材料中のバインダーの割合は、広い範囲で変動することができ、そして通常、原材料に対して、10〜60体積%、好ましくは30〜50体積%である。適切なバインダーは、通常、熱可塑性の樹脂、例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレン−ビニルアセテートコポリマーである。このようなバインダーは、素地(グリーンボディー)から、例えば、300〜500℃の温度に、3〜8時間加熱することによって除去することができる。ここで、バインダーは、熱的に分離される。更に適切なバインダーは、溶媒を使用して素地から抽出可能なものである。ポリオキシメチレンに基づくバインダーが同様に適切であり、そしてガス状の酸含有雰囲気中で素地を処理することにより除去される。これらの工程で使用される酸は、通常、プロトン酸、すなわち水との反応で(水和した)プロトンとアニオンに分離される酸である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態では、原材料は、
(A)40〜90体積%のシンタリング可能な粉末金属、又粉末金属合金、又はこれらの混合物、
(B)10〜60体積%の、以下の混合物
(B1)B)に対して、80〜98質量%、特に85〜98質量%のポリオキシメチレンホモポリマー、又はコポリマー、及び
(B2)2〜20質量%、特に2〜15質量%のポリオレフィン、又はポリオレフィンの混合物、
を含む。
【0015】
ポリオキシメチレンホモポリマー又はコポリマーは、それ自体、この技術分野の当業者にとって公知であり、そして文献に記載されている。ホモポリマーは、通常、ホルムアルデヒド又はトリオキサンを、好ましくは適切な触媒の存在下に重合することによって製造される。好ましいポリオキシメチレンコポリマーは、繰り返し単位−OCH2−に加え、50モル%以下の、好ましくは0.1〜20モル%の、及び特に好ましくは0.3〜10モル%の繰り返し単位
【0016】
【化1】

【0017】
(但し、
1〜R4が、それぞれ互いに独立して、水素原子、C1〜C4−アルキル基、又は1〜4個の炭素原子を有するハロゲン−置換されたアルキル基であり、及びR5が、CH2−、−CH2−O−、C1〜C4−アルキル、又はC1〜C4−ハロアルキルで置換されたメチレン基、又は対応するオキシメチレン基であり、及びnは0〜3の範囲である。)
を含む。これらの基は、環状エーテルの開環によってコポリマーに導入できることが有利である。好ましい環状エーテルは、式(II)
【0018】
【化2】

【0019】
(但し、
1〜R4及びnは上記に定義したものである)
のものである。単に例示として、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、及びジオキセパンを環状エーテルとして、及び直鎖状のオリゴフォーマル、又はポリフォーマル、例えばポリジオキセパンをコポリマーとして記載しても良い。
【0020】
成分B1)として適切な更なるポリマーは、オキシメチレンターポリマーで、例えば、トリオキサン、上述した環状エーテルの一種、及び第3のモノマー、例えば式(III)の二官能性の化合物
【0021】
【化3】

【0022】
(但し、
Zは、化学的結合、−O−又は−ORO−(R=C1〜C8−アルキレン、又はC3〜C8−シクロアルキレンである)
の反応によって製造されるものである。この種の好ましいモノマーは、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル、及びグリシジル及びホルムアルデヒド、ジオキサン又はトリオキサンの2:1のモル割合からのジエーテル、及び2モルのグリシジル化合物、及び1モルの2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジオールから誘導されるジエーテル、例えばエチレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオール、及びシクロヘキサン−1,4−ジオールであるが、これらは例示に過ぎない。
【0023】
上述したホモポリマー及びコポリマーを製造するための方法は、この技術分野では公知であり、及び文献に記載されているので、更なる詳細についてはここでは不必要である。好ましいポリオキシメチレンホモポリマー及びコポリマーは、融点が少なくとも150℃であり、及び(質量平均の)分子量が、5000〜150000、好ましくは7000〜60000である。
【0024】
成B2)は、ポリオレフィン又はこれらの混合物を含む。ポリオレフィンとして、2〜8個の炭素原子を有するもの、特に2〜4個の炭素原子を有するもの、及びこれらのコポリマーである。特に好ましいものは、ポリエチレン、及びポリプロピレン、及び(この技術分野の当業者にとって公知の、及び市販されている)これらのコポリマー、例えばBASF SEからのLupolen(登録商標)及びNovolen(登録商標)である。
【0025】
成分C)として、本発明の方法に使用されるバインダーは、0〜6体積%、好ましくは1〜5体積%の分散剤を含むことができる。ここで、単なる例示として、平均分子量が200〜600のオリゴマー性ポリエチレンオキシド、ステアリン酸、ステアルアミド、ヒドロキシステアリン酸、脂肪アルコール、脂肪アルコールスルホネート、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーが例示される。
【0026】
更に、バインダーは、通常の添加剤、及び成形の間、混合物のレオロジー的な特性に好ましい影響を与える加工剤を含むことができる。
【0027】
原材料は、通常、成分B)を(好ましくはツインスクリュー押出機内で、好ましくは150〜220℃の温度で、特に170〜200℃の温度で)融解(溶融)させることによって製造される。金属粉A)は、次に必要とされる量で、同様の範囲の温度で、バインダー(成分B))の融解物の流れ内に導入される。
【0028】
本発明の方法の工程(b)では、製造されるタービンホイールのネガティブ型を含む工具が用意される。本発明に従えば、これはタービンホイールの金属粉末射出成形のために適切である。このような工具は、この技術分野の当業者にとって公知であり、そしてこの時点では更に記載する必要がないものである。通常、工具はコアを取り出すことが可能な工具である。
【0029】
製造するタービンホイールのネガティブ型を含む工具を用意した後、本発明の方法の工程(c)で、回転対称コアが、工具のネガティブ型内に導入される。回転対称コアは、付属物(補助物)で、これを使用して空洞空間構造がタービンホイールに導入される。このコアは、本発明に従えば、製造されるタービンホイールの回転軸に対して対称的になるようにネガティブ型内に配置される。「回転軸に対して対称的に」という記載は、コアが、この配置(alignment)の結果、製造されるタービンホイール内に不均衡(アンバランス)を引き起こさないように、ネガティブ型内で配置されることを意味する。コアは、上述したバインダーを含むか、又は上記に定義したバインダーから成り、この結果、バインダーは、(本発明の方法が行われた後、タービンホイールの製造の間)タービンホイールから完全に除去され、回転軸に対して対照的に配置された空洞の空間構造が残される。本発明の一般的な実施の形態に従えば、コアは、適切な受け入れ装置を使用して、工具内に導入され、そしてこの位置に保持される。受け入れ装置は、例えば、その上にコアが配置されるピン又はロッドである。従って、コアが構成されるバインダー又はバインダーの成分は、バインダー除去工程の間、(素地中に受け入れ装置を残して)空洞空間から拡散除去することができる。
【0030】
本発明の方法の工程(d)では、工程a)で用意された原材料は、コア周囲のネガティブ型内に射出され、素地(green body)を形成する。通常のスクリュー又はピストン射出成形機を、工程(d)で射出成形を行うために使用することができる。原材料の成形は、通常、60〜200℃の温度、及び300〜2000バールの射出圧力で、60〜150℃の温度を有する工具内で行われる。この処理は、製造されるタービンホイールの構造を有し、及びバインダーから作成されたコアを含む素地を生成する。
【0031】
原材料からバインダーを除去するために、及び素地からコアを除去するために、(タービンホイールの形状を有する成形物を得ることを目的として、)バインダー除去工程、すなわち工程(e)が行われる。バインダー除去工程は、選ばれるバインダーに応じて行われる。バインダー除去工程の進行状態は、例えば素地の質量変化を測定することによって、この技術分野の当業者によって監視することができる。成分A)、B)及び任意にC)を含む好ましいバインダーが使用された場合、バインダー除去工程は、通常、20〜180℃の範囲の温度で、0.1〜24時間、好ましくは0.5〜12時間、ガス状の酸を含む雰囲気内で行われる。処理のための適切な酸は、室温でガス状であり、又は処理温度で少なくとも気化する無機酸である。ハロゲン化水素及びHNO3を例示しても良い。適切な有機酸は、沸点が、大気圧で130℃未満のもの、例えばギ酸、酢酸、又はトリフルオロ酢酸、又はこれらの混合物である。更なる適切な酸は、BF3、及び有機エーテルとのその付加物化合物である。必要とされる処理時間は、ごく通常、処理温度、及び処理雰囲気中の酸の濃度に依存する。キャリアガスが使用される場合、これは事前に酸中に通され、そして後者を積み込む。積み込みを行ったキャリアガスは、次に処理温度にされる(この処理温度は、酸の凝結を回避するために、積み込み温度よりも高いことが有利である)。酸は、計量導入装置を介してキャリアガスに混合され、そして混合物を、酸がもはや凝結し得ない範囲に加熱することが好ましい。
【0032】
バインダー除去工程は、例えば2工程で行うことも可能である。第1の工程での処理は、バインダーのポリオキシメチレン成分B1)が、少なくとも80質量%の範囲、好ましくは少なくとも90質量%の範囲で除去されるまで行われる。このことは、素地の質量の低減から容易に認識することができる。このようにして得られた成形物は、次に実際上、全ての残留するバインダーを除去するために、250〜500℃、好ましくは350〜450℃で、0.1〜12時間、好ましくは0.3〜6時間、加熱される。
【0033】
バインダー除去工程でバインダーが除去された成形物は、通常の方法で、シンタリング(焼結)によって金属性成形物に変換され得る。シンタリングの間、成形物は緻密化され、そして収縮して最終的な幾何学的な特性を有する成分(部品)を形成する。シンタリングの間、従って成形物は、その寸法が、空間の3方向全てにおいて均一に収縮した状態で小さくなる。直線状の収縮は、バインダー含有量に依存して、通常、10%〜20%である。シンタリングは、種々の保護ガス下に、又は減圧下に行なうことができる。工程(f)は、通常、250〜1500℃の温度で行われる。シンタリング時間は、通常、1〜12時間の範囲、好ましくは2〜5時間の範囲である。本発明の好ましい実施の形態では、成分(部品)の歪曲を少なくとも大きく防止するために、シンタリングの間、成形物を保持する保持装置が、工程(f)におけるシンタリングの間に使用される。本発明の一実施の形態では、この保持装置は、マンドレル(心棒)の状態で部品(成分)に固定される。本発明の特に好ましい実施の形態では、(その材料組成及び壁厚さが製造されるタービンホイールの組成と壁厚さに適合された)1個以上の保持装置が、シンタリングの間、使用される。これにより、シタリングされる成形物、及び対応する保持装置が緻密化され、そしてシンタリングの間、同じ範囲に収縮することが確実化される。シンタリングの間の、成分(部品)と保持装置の間の反応、又は拡散を回避するために、及び従って、成分(部品)と保持装置が一緒にシンタリングされることを回避するために、各保持装置の一表面が、少なくとも部分的に被覆される。この表面は、少なくとも、保持装置がシンタリングされる成形物と接触する領域で被覆される。保持装置は、全ての側を被覆することもできる。当然、使用される被覆は、シンタリングされる成形物の材料、又は材料組成に依存する。保持装置のために、セラミック被覆又は窒化チタン(titanium nitrite)の被覆を使用することが好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態では、工程(c)で導入されるコアは、原材料中に含まれるバインダーと同じバインダーを含む。これにより、コア、及び原材料中に含まれるバインダーの除去を、同じ工程で行うことができる。
【0035】
工程(c)で導入される回転対称のコアのサイズ及び/又はジオメトリーは、広い範囲にわたって変化することができる。通常、コアのサイズは、タービンホイールの体積の5〜60%の体積を有するように、好ましくはタービンホイールの体積の45〜55%の体積を有するように選ばれる。コアの導入、及びコアから得られる空洞空間構造は、単純な方法で製造可能であり、及び従来技術から公知のタービンホイールと比較して、質量が大きく低減されたタービンホイールを与える。更に、本発明の方法は、コアが無くなっているタービンホイールを製造することを可能にする。
【0036】
相当な厚さを有し及び質量が集結したタービンホイールの中央領域へのコアの導入は、(通常では発生する)ボイド及び欠陥の回避を可能とする。コアのジオメトリーは、タービンホイールのジオメトリーに応じて、この技術分野の当業者によって選択されることができる。コーンジオメトリー、ボールジオメトリー(球状ジオメトリー)、楕円形のジオメトリー、シリンダー状ジオメトリー、又は非常に一般的な回転対称ジオメトリーが、通常では適切である。本発明の好ましい一実施の形態では、コアとして、そのジオメトリー(幾何学的形状)が、タービンホイールのジメトリーをおおよそ再生するコアを選択することができ、この結果、その壁厚さが運転の間、これらに作用する力に耐える、特に質量が最適化されたタービンホイールが得られる。
【0037】
本発明のタービンホイールを製造した後、これは通常、摩擦溶接、又は直接射出成形によってシャフトに連結され、そして次にバランスされる。
【0038】
本発明の一実施の形態では、工程(f)で得られたタービンホイールは、金属射出成形を使用して、更なる工程(g)でシャフトに連結される。
【0039】
本発明を、図及び実施例を使用して以下に説明する。
図1は、内燃エンジンのための排ガスターボチャージャーのためのタービンホイール1の断面図である。
【0040】
図1に示した内燃エンジンのための排ガスターボチャージャーのためのタービンホイール1は、本発明の方法によって作られた空洞空間構造2を有している。空洞空間構造は、タービンホイールの中央に、そしてタービンホイール1の回転軸に対して対称に配置されている。
【0041】
実施例
原材料として、耐熱性ニッケル超合金(DIN24632)のシンタリング(焼結)された成形物を製造するための射出成形可能なペレット化材料を使用した(これは、BASF SEによって、商標名Catamold(登録商標)N90で市販されている)。
【0042】
原材料をEngel ES80/10熱可塑性射出成形機を使用して加工した。
【0043】
機械の設定を以下に示す:
【0044】
【表1】

【0045】
射出成形を行う前に、バインダーを含み、及び体積が約6cm3のコアを工具のネガティブ型に導入した。
【0046】
バインダー除去を110℃で、HNO3雰囲気中で行った。体積が50lで、及び酸の導入が30ml/hでなされ、及びフラッシングガス流(窒素)が500l/hの、Heraeus VT6060MU2バインダー除去オーブンをこの目的のために使用した。バインダー除去工程は、素地の出発材料に対して、7.7%のバインダーロスの後に完了した。
【0047】
シンタリングを100%のアルゴン雰囲気下で行った。使用したアルゴンは、清浄で乾燥していた(99.98%、露点<−80℃)。シンタリングサイクルを以下に示す。
【0048】
室温−5K/min−60℃、1時間保持、
600℃−5K/min−1325℃、3時間保持、
炉冷。
【0049】
タービンホイールの密度を非常に高くするために、成分(部品)を、1185℃で、4時間、100バールの圧力で保持した。
【0050】
強度特性を更に最適化するために、次に2工程加熱処理を行った。工程1で、タービンホイールを減圧下に、900mbarのアルゴン下で、1080℃で8時間、加熱した。工程2では、ワークピースを減圧下に、900mbarのアルゴン下で、705℃で16時間、処理した。
【0051】
これにより、体積が7.5cm3のタービンホイールが得られ、これは、固体タービンホイールよりも3分の1軽いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末射出成形によって排ガスターボチャージャーのためのタービンホイール(1)を製造するための方法であって、以下の工程:
a)金属粉末とバインダーを含む原材料を用意する工程、
b)タービンホイール(1)を金属粉末射出成形するために、製造するタービンホイール(1)のネガティブ型を含む工具を用意する工程、
c)バインダーを含む回転対称コアを、工程(b)で用意された工具のネガティブ型に導入し、及び前記コアを、製造するタービンホイール(1)の回転軸に対して、対称的に配置する工程、
d)工程(a)で用意された原材料を前記コアの周囲に金属粉末射出成形することによって、素地を製造する工程、
e)タービンホイール(1)の形状の成形物を得るために、バインダー除去工程を行ってバインダーを除去し、及びこれと同時にコアを除去する工程、及び
f)成形物をシンタリングする工程、
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)で用意される原材料中に含まれるバインダーを含むコアが、工程(c)で導入されることを特徴とする方法。
【請求項3】
(A)40〜90体積%のシンタリング可能な粉末金属、又は粉末金属合金、又はこれらの混合物、
(B)10〜60体積%の、バインダーとしての以下の混合物
(B1)80〜98質量%のポリエチレンホモポリマー、又はコポリマー、及び
(B2)2〜20質量%のポリオレフィン、又はポリオレフィンの混合物、及び
(C)0〜5質量%の分散剤、
を含む原材料が工程(a)で提供されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
金属粉末としてニッケル−ベースの合金、又はチタニウムベースの合金を含む原材料が、工程(a)で提供されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(f)で、成形物が、少なくとも1個の保持装置に備え付けられることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
タービンホイールの体積の5〜60%の体積を有するコアが、工程(c)で導入されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(e)が20〜180℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(f)が、250〜1500℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
空洞の空間構造を有する、排ガスターボチャージャーのためのタービンホイールであって、前記空洞の空間構造は、タービンホイールの回転軸に対して対称であり、及びタービンホイールの体積に対して5〜60体積%の体積を有することを特徴とするタービンホイール。

【図1】
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【公表番号】特表2012−523496(P2012−523496A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503983(P2012−503983)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054400
【国際公開番号】WO2010/115837
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】