説明

排出ローラの製造方法、排出ローラの金型、排出ローラ、並びに記録装置

【課題】排出ローラによる記録媒体の蹴飛ばし現象を防止することができる記録装置を提供すること。
【解決手段】排出ローラ163の軸部163aを合成樹脂により中空形状に形成する。これにより、従来の排出ローラの断面積よりも大きな断面積を有する排出ローラとすることにより曲げ剛性を高めることができるので、この排出ローラに排出方向とは逆方向側の力が掛かっても、排出ローラのしなり等の変形を規制することができる。したがって、排出ローラによる記録媒体の蹴飛ばし現象を防止することができ、特に全面記録時の記録精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録書き込みした記録媒体を排出する排出ローラ及びその排出ローラの製造方法並びにそれらの排出ローラを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録装置の1つであるインクジェット式プリンタは、給紙トレイに収納されている用紙を給紙ローラにより給紙し、紙送りローラと従動ローラとの間に挟持して記録部へ搬送する。そして、用紙に対して記録ヘッドからインク滴を吐出させて記録し、排紙ローラとギザローラとの間に挟持して排紙トレイに排紙するように概略構成されている。このように、用紙は排紙ローラと紙送りローラとの間で記録されるので、排紙ローラの回転速度が紙送りローラの回転速度より若干速くなるように設定して、排紙ローラと紙送りローラとの間で用紙をぴんと張ることにより、用紙を平坦にして記録精度を向上させることができる。
【0003】
図13は、従来の排紙ローラを示す斜視図である。この排紙ローラ1は、プラスチックで成る軸部2が少なくとも記録可能な最大用紙幅より長くなるように形成され、さらにゴムで成るローラ部3が軸部2に所定の間隔をあけて複数嵌入されている。このような排紙ローラ1は、断面形状が円形部分は直径Ds、断面形状が十字部分は厚さtとなるように形成されており、排紙ローラの直径Drより小さく設定しなければならない(特許文献1参照)。
【0004】
図14は、従来の他の排紙ローラを示す断面図である。この排紙ローラは、プラスチックにより成形されており、円筒状の胴体部30と、胴体部30の両端に連設され、胴体部30より直径が小さい軸部20を備えている。この排紙ローラの軸部20は、中子75及び樹脂の注入部77により形成された中空部と、胴体部30内に軸方向略全域にわたって例えばガスインジェクション法により形成された一体の空洞31を備えている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−129910号公報
【特許文献2】特開平10−291674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の排紙ローラ1を合成樹脂により形成する場合、成形時の内部応力により発生する軸の変形、ヒケを防止するために、厚肉にならないよう肉抜き(肉盗み)形状を設ける必要がある。そのため、ある一定水準の剛性しか確保できない。また、排紙ローラ1は紙送りローラに対して増速するように設定しているため、紙送りローラ側に引き込まれる力が作用する。このため、排紙ローラ1にしなり等の変形が生じるおそれがある。
【0007】
そして、排紙ローラ1のしなり等の変形は用紙の後端が紙送りローラから外れたときに復元するので、そのときにいわゆる用紙の蹴飛ばし現象が発生する場合がある。上述したインクジェット式プリンタが用紙の全面もしくは略全面に記録可能なプリンタの場合、用紙の後端は紙送りローラから外れた後も記録が継続されているので、上記蹴飛ばし現象が発生すると、記録精度に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
また、上述した従来の排紙ローラの中子75側の軸部20には、胴体部30に設けられた捨てキャビ40との連通部にて引け34が生ずる場合があり、排紙ローラ表面の変形及び排紙ローラの剛性低下による変形が生じるおそれがある。さらに、排紙ローラにおけるガスインジェクション法を含めたプラスチックの成形において、軸部20の外周及び胴体部30の外周にばりが生じた場合、そのばりが軸受部摺動負荷の増大または用紙の送り精度の悪化を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題に鑑みなされたものであり、記録媒体排出時の蹴飛ばし現象を防止することができる排出ローラ及びその排出ローラの製造方法並びにそれらの排出ローラを備えた記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的達成のため、本発明の排出ローラでは、記録書き込みした記録媒体を排出する排出ローラにおいて、前記排出ローラの軸部は、合成樹脂により中空形状に形成されていることを特徴としている。これにより、従来の排出ローラの断面積に対し、より大きな断面積を有する排出ローラとすることにより曲げ剛性を高めることができるので、この排出ローラに排出方向とは逆方向側の力が掛かっても、排出ローラのしなり等の変形を規制することができる。したがって、排出ローラによる記録媒体の蹴飛ばし現象を防止することができ、特に全面記録時の記録精度を向上させることができる。
【0011】
また、前記合成樹脂は、曲げ剛性を高めるための添加物が添加されていることを特徴としている。これにより、排出ローラのしなり等の変形をより規制することができるので、排出ローラによる記録媒体の蹴飛ばし現象を防止することができ、特に全面記録時の記録精度をさらに向上させることができる。また、前記排出ローラの軸部における軸受け部は、径方向に分割され、かつ軸方向に一体化された金型により成形可能な形状に形成されていることを特徴としている。これにより、排出ローラの軸部の形状は単純化されるので、成形精度を向上させることができ、排出ローラ回転時のローラ振れを抑制することができる。また、前記排出ローラの軸部は、ガスインジェクション法により成形されていることを特徴としている。これにより、排出ローラの軸部を中空形状に容易に成形することができ、コストの上昇を抑えることができる。
【0012】
上記目的達成のため、本発明の排出ローラの製造方法では、記録書き込みした記録媒体を排出する排出ローラの製造方法において、前記排出ローラの軸部における軸受け部を成形するための、径方向に分割され、かつ軸方向に一体化された金型を用いてインジェクション法により成形することを特徴としている。これにより、排出ローラの軸部の形状は単純化されるので、成形サイクルタイムを短縮させることができる。
【0013】
また、前記金型は、分割部がインロー構造に形成されていることを特徴としている。これにより、金型の分割部を高精度に密着させることができるので、ばり等の発生を抑制することができる。また、前記金型は、キャビティ部が温調されていることを特徴としている。これにより、成形材をキャビティ部の内面に貼り付けた状態で固化させることができるので、成形精度を向上させることができる。また、前記インジェクション法は、ガスインジェクション法であることを特徴としている。これにより、排出ローラの軸部を中空形状に容易に成形することができ、コストの上昇を抑えることができる。
【0014】
上記目的達成のため、本発明の記録装置では、記録書き込みした記録媒体を排出する排出ローラを備えた記録装置において、上記各排出ローラまたは上記各製造方法により製造された排出ローラを備えたことを特徴としている。これにより、上記各作用・効果を奏する記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外部構成の全体を排紙口を閉じた状態で斜め前方から見た斜視図、図2は、その排紙口を開いた状態の斜視図ある。このインクジェット式プリンタ100は、全体が幅方向に長く延びる直方体状の上部ハウジング101と下部ハウジング102を備えている。上部ハウジング101と下部ハウジング102は、スナップフィットにより締結されている。
【0017】
上部ハウジング101の後方側には、給紙口103が形成されている。この給紙口103には、給紙される用紙が積層載置される給紙トレイ110が配設されている。給紙トレイ110は、斜め上後方へ突き出るように配設されており、用紙を傾斜した状態で保持するようになっている。上部ハウジング101の前方側には、排紙口104が形成されている。そして、上部ハウジング101と下部ハウジング102の前面側には、排紙される用紙が積層載置される排紙スタッカ120が配設されている。
【0018】
排紙スタッカ120は、その下部の回動軸を中心に上部ハウジング101と下部ハウジング102の前面側に回動可能に取り付けられ、不使用時は起立方向に回動されて排紙口104を閉じ、使用時は倒伏方向に回動されて排紙口104を開け、下部ハウジング102から斜め上前方に突き出る位置で停止して用紙を傾斜した状態で受けるようになっている。この排紙スタッカ120は、基端側の1段目のスタッカ部材121及びこの1段目のスタッカ部材121に格納・引出自在に設けられた先端側の2段目のスタッカ部材122との2段構成となっている。
【0019】
上部ハウジング101の上部から前面にかけて窓部105が形成されている。
この窓部105は、透明もしくは半透明な湾曲した開閉自在なカバー106によって覆われている。このカバー106を開放することにより、インクカートリッジの交換作業や内部機構のメンテナンス作業等を容易に行うことができる。また、上部ハウジング101の左後方側には、押しボタン式のパワー系のスイッチ131と操作系のスイッチ132、133が配設されている。
【0020】
図3は、図1のインクジェット式プリンタ100の上部ハウジング101を取り外したときの内部構成の全体を斜め前方から見た斜視図、図4は、その主要部の断面側面図である。下部ハウジング102上には、プリンタコントローラを構成する図3に示すメイン基板130が縦置きに配置されていると共に、プリントエンジンを構成する図3に示す記録手段140と、図4に示す用紙の供給手段150及び搬送手段160等が配設されている。
【0021】
メイン基板130には、図示しないCPU、ROM、RAM、ASIC等の制御素子や記憶素子、及びその他の各種回路素子が装着されており、その上端には、上述したパワー系のスイッチ131や操作系のスイッチ132、133が押された時にそれぞれ発光することによりユーザがスイッチONを確認し得るように配置された発光ダイオード134、135、136が突設されている。
【0022】
記録手段140は、キャリッジ141、記録ヘッド142、キャリッジモータ143、タイミングベルト144、吸引ポンプ145等を備えている。搬送手段160により搬送される用紙は、キャリッジモータ143とタイミングベルト144により走査されるキャリッジ141に搭載された記録ヘッド142により記録されるようになっている。この記録ヘッド142は、フルカラー印刷が可能なように、キャリッジ141内に収納された例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの計4色のインクカートリッジ146から各色インクが供給されるようになっている。
【0023】
供給手段150は、給紙トレイ110、給紙ガイド111、給紙ローラ151、ホッパ152、分離パッド153等を備えている。給紙トレイ110に積層載置され給紙ガイド111により揃えられた用紙Pは、給紙ローラ151の回転に伴うホッパ152の上昇により分離パッド153で給紙ローラ151に押付けられ、最上位の用紙Pから1枚ずつ分離されて搬送手段160へ給送されるようになっている。
【0024】
搬送手段160は、紙送りローラ161と従動ローラ162、排紙ローラ163とギザローラ164、紙送りモータ165、排紙スタッカ120等を備えている。供給手段150から供給される用紙Pは、紙送りモータ165により駆動されている紙送りローラ161と従動ローラ162に挟持されて記録手段140へ搬送され、さらに紙送りモータ165により駆動されている排紙ローラ163とギザローラ164に挟持されて排紙スタッカ120へ搬送されるようになっている。
【0025】
図5(A)、(B)は、排紙ローラ163の詳細を示す斜視図及び断面図である。この排紙ローラ163は、プラスチックで成る軸部163aが、少なくとも記録可能な最大用紙幅より長くなるように、かつ軸方向に延びる中空部163cを有するように形成され、さらにゴム等のエラストマで成るローラ部163bが、軸部163aに所定の間隔をあけて複数接合されている。排紙ローラ163の軸部163aは、金型成形する際に発生する内部応力を抑えることにより、ひけやそりを防止することができるボイドを発生させるインジェクション法またはガスインジェクション法により成形されている。そして、排紙ローラ163のローラ部163bは、軸部インサート成形によるインジェクション法により成形されている。
【0026】
このように排紙ローラ163の軸部163aを従来の排紙ローラ1の断面積よりも大きな断面積を有する中空形状とすることにより、この排紙ローラ163の曲げ剛性を従来の排紙ローラ1の曲げ剛性より高めることができる。したがって、排紙ローラ163と紙送りローラ161との間で用紙を張ったときに、排紙ローラ163のしなり等の変形を規制することができるので、排紙ローラ163による用紙の蹴飛ばし現象を防止することができ、特に全面記録時の記録精度を向上させることができる。
【0027】
排紙ローラ163の軸部163aの材料としては、例えばABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合体)、PS(ポリスチレン)、POM(ポリアセタール)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、アロイ系等の熱可塑性樹脂が使用される。さらに、曲げ剛性をより高めるために、例えばGF(ガラスフィラー)、GB(ガラスビーズ)、カーボン、ナイロン、チタン酸カリウム等の添加物が添加される。この添加物の添加量としては、5%〜50%、特に10%〜30%が曲げ剛性をより高めるうえで好ましい。
【0028】
図6は、排紙ローラ163の軸部163aの成形に用いられる金型を示す斜視図、図7(A)、(B)は、その平面図及びA−A線断面図である。この金型200は、排紙ローラ163の軸部163aを1本成形するためのキャビティ部201、202が形成された金型であり、径方向に2分割された上型210と下型220を備えている。ここで、従来の金属で形成された排紙ローラの軸部は剛性が高いため、両端支持の2節点構造で撓みを防止することができるが、本発明の排紙ローラ163の軸部163aは金属の排紙ローラの軸部より剛性が低いプラスチックで形成されているため、両端のみならず中間も支持する5節点構造を採用して撓みを防止している。このため、排紙ローラ163の軸部163aにおける各軸受け部の成形精度は、排紙ローラ163を回転させたときのローラ振れ精度に大きく影響する。
【0029】
そこで、排紙ローラ163の軸部163aにおける各軸受け部の成形精度を向上させるために、各軸受け部を軸方向に一体化された金型により成形可能な形状に設計変更している。すなわち、図6及び図7に示すように、上型210及び下型220は、軸受け部以外の部分を成形する箇所で3分割されているが、各軸受け部の部分を成形する箇所は一体化された第1上金型211、第2上金型212、第3上金型213及び第1下金型221、第2下金型222、第3下金型223で構成されている。
【0030】
このように、排紙ローラ163の軸部163aの形状を単純化して一体化された金型を使用可能としているので、金型製作時にワイヤカット放電加工や切削加工等の通し加工を行うことができ、金型の加工精度を高めることができるとともに、金型製作コストを低減させることができる。したがって、排紙ローラ163の軸部163aの成形精度を向上させることができ、排紙ローラ163を回転させた時のローラ振れを抑制することができる。また、排紙ローラ163の軸部163aの形状は単純化されるので、射出成形機に対する金型のセッティングが簡易となり、成形サイクルタイムを短縮させることができる。さらに、排紙ローラ163のコストを低減させることができる。
【0031】
なお、各軸受け部近傍における形状の制約から、キャビティ部201、202の通し加工が不可能な部分も生じるが、これらの部分は入れ子214、224を嵌め込んで対応している。図8は、第2下金型222の詳細を示す斜視図である。この第2下金型222は、同図(A)に示すように、5つの入れ子224が嵌め込まれている。そして、各入れ子224は、同図(B)に示すように、第2下金型222のキャビティ部202から底面222cにかけて設けられている入れ子用貫通穴222aに底面222c側から嵌め込まれるようになっている。なお、図示していないが、第1上金型211、第2上金型212、第3上金型213及び第1下金型221、第3下金型223についても同様の構造となっている。
【0032】
また、上記金型200は、径方向の分割部がインロー構造に形成されている。
すなわち、図9に示すように、上型210の噛み合せ部215と下型220の噛み合せ部225は、噛み合せ可能な凹凸状に形成され、かつ噛み合せ部215の側面215aと噛み合せ部225の側面225aは、噛み合せ可能なテーパ面として形成されている。
【0033】
このように、金型200の径方向の分割部をインロー構造に形成することにより、従来のように外部のコアピンをガイドにして平面に形成した噛み合せ部を噛み合せる方式の金型に比べて、上型210のキャビティ部201と下型220のキャビティ部202を高精度に一致させることができる。したがって、排紙ローラ163の軸部163aの外周の軸方向に延びるばり等の発生を抑えて成形精度を向上させることができ、排紙ローラ163を回転させた時のローラ振れを抑制することができる。
【0034】
また、上記金型200は、キャビティ部201、202が温調されている。図10(A)、(B)は、第2下金型222の平面図及びA−A線断面図である。
この第2下金型222の内部には、キャビティ部202の温調用の冷却液(水等)が通る流路204が形成されている。この流路204は、第2下金型222の一端面222b側の底面222cから略垂直に延びた後に略直角に曲がり、一端面222b側から他端面222d側まで延びた後に略直角に曲がって他端面222d側の底面222cから貫ける略C字形状に形成されている。このような流路204は、同図(A)に示すように、キャビティ部202の両側にそれぞれ形成されている。そして、図示していないが、第1下金型221及び第3下金型223についても同様の流路が形成されている。
【0035】
図11は、上記金型200を射出成形機の金型装着部300に装着した状態を示す断面図である。射出成形機の金型装着部300には、金型装着部300自体を温調するための冷却液(水等)が通る直線状の流路301が形成されているとともに、金型装着部300自体及び金型200のキャビティ部201、202を温調するための冷却液(水等)が通る略L字形状及び略C字形状に折れ曲った流路302が金型200の流路204と繋がるように形成されている。
【0036】
これにより、キャビティ部201、202の内面を冷却させておくことができるので、溶融したプラスチックが射出されると、外表面はキャビティ部201、202の内面に貼り付いた状態で固化され、内部にはボイドが発生し易くなる。
したがって、排紙ローラ163の軸部163aの成形品の内部応力の発生を抑えて、ひけやそりを防止することができ、排紙ローラ163の軸部163aの特に外径精度を向上させて、排紙ローラ163を回転させた時のローラ振れを抑制することができる。また、金型200は比較的早く冷却されるので、射出成形機の金型装着部300に対する金型200のセッティングが簡易となり、成形サイクルタイムを短縮させることができる。
【0037】
また、上記インジェクション法として、ガスインジェクション法を採用することができる。図12は、ガスインジェクション法を説明するための断面図である。ガスインジェクション用射出成形機の金型装着部には、上記金型200と同様の構成である排紙ローラ163の軸部163aを1本成形するためのキャビティ部401、402が形成された金型400と、この金型400の排出口404に取り付けられる後述する捨てキャビティ部451が形成された金型450が装着されている。
【0038】
このような構成において、金型400のキャビティ部401、402を所定温度に温調した後、所定量の溶融したプラスチックを金型400の注入口403から注入する。続いて、所定量のガスを金型400の注入口403から注入する。
これにより、キャビティ部401、402の内面に接するプラスチック外表面は、急速に冷却されるとともにプラスチック内部からのガス圧に押圧されるので、キャビティ部401、402の内面に貼り付いた状態で固化されることになる。
【0039】
そして、金型400の注入口403から排出口404にわたるプラスチック内部にある溶融プラスチックは、ガスにより排出口404から押し出されて捨てキャビティ部451内に送り出される。これにより、排紙ローラ163の軸部163aの成形品の内部応力の発生を抑えて、ひけやそりを防止することができ、排紙ローラ163の軸部163aの特に外径精度を向上させることができるとともに、排紙ローラ163の軸部163aに軸方向全域にわたって均一なを中空部163cを安定して形成することができるので、排紙ローラ163を回転させた時のローラ振れを抑制することができる。
【0040】
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は以上の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用されるのは勿論である。例えば、記録装置としてインクジェット式のプリンタを例に説明したが、これに限られるものではなく、排紙ローラを有する記録装置であれば、例えば熱転写式等のプリンタ、インクジェット式、熱転写式等のファクシミリ装置やコピー装置等にも適用可能である。
【0041】
以上説明したように、排出ローラに排出方向とは逆方向側の力が掛かっても、排出ローラの曲げ剛性を高めることにより、排出ローラのしなり等の変形を規制することができる。したがって、排出ローラによる記録媒体の蹴飛ばし現象を防止することができ、特に全面記録時の記録精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録装置の1つであるインクジェット式プリンタの外部構成の全体を排紙口を閉じた状態で斜め前方から見た斜視図である。
【図2】図1のインクジェット式プリンタの排紙口を開いた状態の斜視図ある。
【図3】図1のインクジェット式プリンタの上部ハウジングを取り外したときの内部構成の全体を斜め前方から見た斜視図である。
【図4】図3のインクジェット式プリンタの主要部の断面側面図である。
【図5】図1のインクジェット式プリンタの排紙ローラの詳細を示す斜視図及び断面図である。
【図6】図5の排紙ローラの成形に用いられる金型を示す斜視図である。
【図7】図6の平面図及びA−A線断面図である。
【図8】図6の第2下金型の詳細を示す斜視図である。
【図9】図6の上型の噛み合せ部と下型の噛み合せ部を示す側面図である。
【図10】図6の第2下金型の平面図及びA−A線断面図である。
【図11】図6の金型を射出成形機の金型装着部に装着した状態を示す断面図である。
【図12】ガスインジェクション法を説明するための断面図である。
【図13】従来の排紙ローラを示す斜視図である。
【図14】従来の別の排紙ローラを示す平面図である。
【符号の説明】
【0043】
100…インクジェット式プリンタ、101…上部ハウジング、102…下部ハウジング、103…給紙口、104…排紙口、105…窓部、106…カバー、110…給紙トレイ、111…給紙ガイド、120…排紙スタッカ、130…メイン基板、140…記録手段、141…キャリッジ、142…記録ヘッド、143…キャリッジモータ、144…タイミングベルト、145…吸引ポンプ、146…インクカートリッジ、150…供給手段、151…給紙ローラ、160…搬送手段、161…紙送りローラ、163…排紙ローラ、163a…軸部、163b…ローラ部、163c…中空部、165…紙送りモータ、166…プラテン、200,400,450…金型、201,202,401,402…キャビティ部、204…流路、210…上型、215…噛み合せ部、220…下型、225…噛み合せ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録書込みした記録媒体を排出する排出ローラにおいて、
前記排出ローラの軸部は、合成樹脂により中空形状に形成されていることを特徴とする排出ローラ。
【請求項2】
前記合成樹脂は、曲げ剛性を高めるための添加物が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の排出ローラ。
【請求項3】
前記排出ローラの軸部における軸受け部は、径方向に分割され、かつ軸方向に一体化された金型により成形可能な形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の排出ローラ。
【請求項4】
前記排出ローラの軸部は、ガスインジェクション法により成形されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の排出ローラ。
【請求項5】
記録書込みした記録媒体を排出する排出ローラの製造方法において、
前記排出ローラの軸部における軸受け部を成形するための、径方向に分割され、かつ軸方向に一体化された金型を用いてインジェクション法により成形することを特徴とする排出ローラの製造方法。
【請求項6】
前記金型は、分割部がインロー構造に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の排出ローラの製造方法。
【請求項7】
前記金型は、キャビティ部が温調されていることを特徴とする請求項5または6に記載の排出ローラの製造方法。
【請求項8】
前記インジェクション法は、ガスインジェクション法であることを特徴とする請求項5〜7の何れか一項に記載の排出ローラの製造方法。
【請求項9】
記録書込みした記録媒体を排出する排出ローラを備えた記録装置において、
請求項1〜4の何れか一項に記載の排出ローラまたは請求項5〜8の何れか一項に記載の製造方法により製造された排出ローラを備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−150218(P2008−150218A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55954(P2008−55954)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【分割の表示】特願2003−61845(P2003−61845)の分割
【原出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】