説明

排気ガス浄化システム

【課題】リーンバーン条件下において、排気ガス中のNOx及びHCをより効率的に浄化しうる車両用浄化システムを提供すること。
【解決手段】排気ガス流路上に配置され、排気ガス中の還元ガス成分に対する水素成分比を増加させる、水素富化手段20と、排気ガス流路上の上記水素富化手段の後に配置されたNOx浄化触媒30と、更に、排気ガス流路上のNOx浄化触媒の後に配置されたHCトラップ触媒40とを有する排気ガス浄化システムである。 水素富化手段からNOx浄化触媒に、排気ガスが常に直接流れる。水素富化手段が、内燃機関10の燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期及び吸排気弁の開閉タイミングの少なくともいずれかを制御することにより、水素を生成する燃焼制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、移動体、特に車両の内燃機関から排出される窒化酸化物(NOx)を含む排気ガスを浄化するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の移動体の内燃機関から排出される排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒化酸化物(NOx)等を浄化するため、理論空燃比(Air/Fuel)の下で働く三元触媒やこれを用いた排気浄化システムが用いられている。
一方、燃費を良くするため、理論空燃比より高い空燃比領域で燃焼を起こす、リーンバーン(希薄燃焼:lean burn)エンジンが実用化されている。リーンバーン条件下で、排出される窒素酸化物(NOx)を浄化する手段としては、NOxをトラップする機能を有するNOx浄化触媒が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−257417号公報
【0003】
このリーンバーン用のNOx浄化触媒は、NOxを還元して浄化する触媒の他にNOxトラップ剤(NOx吸着材)を備えており、空燃比がリーン(燃料比が小さい)条件で排出されるNOxをNOxトラップ剤に吸着させ、空燃比がリッチ(燃料比が大きい)になった際に、トラップしていたNOxを排気ガス中の還元ガス成分で還元し、放出浄化する。即ち、このNOx浄化触媒では、空燃比がリッチのとき、内燃機関より排出された炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、水素(H)等の還元ガス成分がNOx還元浄化触媒に供給され、還元反応によりNOxが浄化され、Nとして放出される。なお、各還元ガスの還元機能は、温度条件に依存している。HC、COがNOxの浄化反応に優れた還元作用を発現するのは、250℃以上の温度条件が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、リーンバーン条件での排気ガス温度は低く、HC、COがNOxの放出浄化のために優れた還元作用を発現する250℃以上の温度には達しにくい。特に、コールド領域と呼ばれるエンジン始動時の排気ガス温度は、180℃〜200℃の温度であるため、NOx浄化触媒によるNOの還元浄化を効率的に行うことができない。
また、ディーゼルエンジンを使用する車両の場合は、排気ガス温度は更に低くなるため、NOx浄化触媒の還元浄化の効率はより悪くなる。
一方、車両用の排気ガス規制の対象は、NOxのみならず、HCガスも含まれる。上述するように、排気ガス温度が低い場合には、NOx浄化触媒において、排気ガス中のHCやCOが還元反応に利用されないと、消費されず、そのまま排気ガスとして外部に流出してしまうおそれがある。
【0005】
なお、リーンバーンを行う内燃機関における低温でのHCの流出という問題点に対して、特開2000−257417号公報では、NOx浄化触媒の後段に高炭素数のHCをトラップするHCトラップ剤及び低炭素数のHCを浄化する酸化触媒を配置する排気浄化装置が開示されている。
しかし、上記排気浄化装置では、低温でのNOx浄化は行われず、NOx浄化は温度を上昇させて行い、この温度上昇により後段のHCトラップ剤にトラップしたHCも放出浄化している。即ち、この装置では、温度加熱手段を常に用いているので、燃料消費の増大を招く。従って、リーンバーンによる最大の利点である良好な燃費が得られない。
【0006】
本発明の目的は、リーンバーン条件下において、排気ガス中のNOx及びHCをより効率的に浄化しうる車両用浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の態様による車両用排気ガス浄化システムは、燃焼ガス又は排気ガス流路内に配置され、排気ガス中の還元ガス成分に対する水素成分比を増加させる、水素富化手段と、上記排気ガス流路上の上記水素富化手段の後に配置されたNOx浄化触媒と、更に、上記排気ガス流路上の上記NOx浄化触媒の後に配置されたHCトラップ触媒とを有し、上記水素富化手段からNOx浄化触媒に、排気ガスが常に直接流れ、上記水素富化手段が、内燃機関の燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期及び吸排気弁の開閉タイミングの少なくともいずれかを制御することにより、水素を生成する燃焼制御手段を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、NOx浄化触媒の上流に水素富化手段を備え、NOx浄化触媒の下流にHCトラップ触媒を配置することなどにより、水素を有効利用してNOxを効率良く浄化し得るとともに、大気中へのHC流出量を低減した排気ガス浄化システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明者らはこれまで、250℃未満の低温でのNOx浄化に関して種々の検討を行ってきた。これらの検討から、本願発明者等は米国特許出願09/692,470に開示する、水素をNOx浄化に有効に利用した排気ガス浄化システムを提案している。この排気ガス浄化システムは、排気ガス流路上のNOx浄化触媒の前に水素富化手段を備えたものである。
NOx浄化触媒の前に置かれた水素富化手段は、水素を生成し、あるいは水素以外の還元ガスを選択酸化することにより、NOx浄化触媒に入る排気ガス中の相対的な水素濃度を上げる。水素は、250℃未満の低温においても高い還元作用を発揮できるので、NOx浄化触媒にトラップされたNOxを効率的に還元放出させることができる。この浄化システムを用いることにより、従来不可能であると思われていた排気ガス温度がコールド域にあっても、NOxを浄化することが可能となる。
【0010】
しかしながら、本発明者らが更に検討を加えた結果、上記排気ガス浄化システムにおいても、水素富化手段やNOx浄化触媒で反応に関与しなかった一部のHCが低温で大気中に流出する虞れがあり、これらの大気中に流出するHC濃度を低減する必要があることが判明した。
本発明の実施の形態に係る排気ガス浄化システムは、上記浄化システムを改良したものであり、リーンバーン条件下において、内燃機関から排出される排気ガス中のNOxのみならず、HCをより効率的に浄化しうる車両用浄化システムである。以下、具体的に説明する。なお、本明細書において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0011】
まず、図1に示すように、本実施の形態の排気ガス浄化システムでは、エンジン10からの排気ガス流路上に、水素富化手段20と、NOx浄化触媒30と、HCトラップ触媒40とを、この順番にインラインに並べている。水素富化手段は、常に排気ガスにさらされており、排気ガス又は燃焼ガスの流れの中に配置されている。よって、このシステムでは、バイパスを設けて排気ガスを循環させたり、排気ガス流路中に切り替え弁を設けたり、上記排気ガス流路の外部から水素を供給したりする必要がない。本システムは、よりコンパクトな高い性能のシステムとなり、車両用として優れたものである。
なお、エンジン10は、制御装置15により運転状態に応じて燃料噴射条件等が制御され、空燃比がリーン状態又はリッチ状態が発生する。
【0012】
まず、水素富化手段20について概説する。水素富化手段とは、燃焼ガス及び/又は排気ガス中の還元ガス成分に対する水素成分比を増加させる手段のことであり、具体的には、(a)燃焼ガス及び/又は排気ガス中で水素を生成する手段、若しくは(b)燃焼ガス及び/又は排気ガス中で水素以外の還元成分を減少させる手段に相当する。なお、水素富化手段として、上記(a)を用いるが、(b)を併用してもよい。
具体的に、上記水素生成手段(a)は、燃焼ガスや排気ガス中で水素を生成し、該ガス中に存在する水素量自体を増加させて積極的に水素濃度を増大させる手段であり、燃料噴射タイミングや点火時期などに関する燃焼制御手段(燃焼系)と、ロジウム(Rh)等の貴金属を含有する水素生成触媒(触媒系)と、が例示でき、本発明では少なくとも上記の燃焼系を使用する。また、上記還元成分減少手段(b)は、HCやCO等の還元成分を選択的に(又は水素よりも優位に)減少させ、該ガス中での水素存在比率を増加させるものである。CO・HC選択酸化触媒や、水素の消費比率を他のガス成分の消費比率よりも低減する固体酸性酸化物を含有する触媒等を挙げることができる。
【0013】
図2は、NOxトラップ型のNOx浄化触媒30における浄化のメカニズムを説明する図である。NOx浄化触媒30は、NOx還元浄化触媒である白金(Pt),Rh等の貴金属触媒35と、NOxを硝酸塩としてトラップするBa等の吸着材36とを有している。空燃比がリーンの際に、吸着材36にトラップされたNOxは、空燃比がリッチになった際に、貴金属触媒35のもと、排気ガス中の還元ガスにより還元、浄化され、Nとして放出される。
排気ガス中に含まれる水素以外のHCやCO等の還元成分は、250℃〜500℃の温度条件で還元機能を発現するが、リーンバーン条件下で排出される排気ガス温度のように、250℃未満の低温では還元機能を発現しない。また、図2に示すように、250℃未満の温度では、特にCOガスが、NOx浄化触媒35表面に被着し、NOxの浄化反応を阻害する傾向がある。
【0014】
一方、水素は、200℃以下の低温、コールド域の温度でも還元機能を発現するので、排気ガス中の水素量が増加すれば、NOx浄化触媒30によるNOxの浄化反応は促進される。また、排気ガス中の水素以外の還元成分(HCやCO)を減少させ、相対的な水素濃度が上がる場合においても、浄化反応を阻害するCO量等が減少するため、水素による浄化反応は促進される。
具体的には、本実施の形態のNOx浄化触媒がNOx浄化を行う際、上述の水素富化手段により水素富化が実行され、排気ガス中の水素濃度[H2]と全還元成分濃度[TR]が、次の(f1)式及び(f2)式を充たすことが好ましい。
[H2/TR]d>[H2/TR]u…(f1)
[H2/TR]d≧0.3…(f2)
ここで、[H2/TR]uは上記水素富化手段の水素富化実行前又は上流での水素濃度[H2]uと全還元成分濃度[TR]uの比、[H2/TR]dは上記NOx浄化触媒の入口での水素濃度[H2]dと全還元成分濃度[TR]dの比を示す。
【0015】
上記(f1)、(f2)式が充たされる場合、水素がNOx浄化反応で還元成分として有効に利用され、NOxを効率良く浄化する。
本願発明者等の検討によれば、水素富化手段を用いない場合、自動車エンジンからの排気ガスや排気ガス浄化用触媒を用いた場合は、[H2/TR]d<0.3であるので、上記(f2)の式を充たす場合、明らかに水素富化手段の効果を得ることができる。なお、より好ましくは、[H2/TR]d≧0.5とする。なお、安全性向上のため、水素含有量は、全排ガスに対し4%未満とすることが好ましい。
上述した水素富化手段は、水素富化を常時実行することができるが、水素富化の実行時をNOx浄化触媒によるNOx浄化時と一致させることは、NOx浄化効率を高めるという観点から望ましい。
【0016】
更に、本実施の形態の浄化システムでは、NOx浄化時におけるNOxトラップ浄化触媒の入口での、水素濃度[H2]dと全還元成分濃度[TR]d中の一酸化炭素濃度[CO]dとの比率が、以下の(f3)式を満足することが好ましい。
[H2/CO]d>1…(f3)
(f3)が充たされる場合は、還元ガス中で、特に、NOx触媒表面に被着し、NOxと水素との浄化反応を阻害する傾向が高いCOの濃度が低減されるので、還元力の強いHとNOxとの反応性を高め、NOxの浄化効率を更に向上させることができる。
【0017】
次に、本実施の形態に係るHCトラップ触媒40について説明する。図3は、本実施の形態に係るHCトラップ触媒40の構成を示す外観図及び部分断面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムでは、HCトラップ触媒40は、上述したNOx浄化触媒の下流に配置される。HCトラップ触媒40は、低温時にHCを吸着し、温度上昇に伴って(活性化温度に達すると)HCを放出できる吸着剤を含有するものである。NOx浄化触媒で消費されず、排気ガス中に残ったHCをトラップする。放出されたHCは、HCトラップ触媒40が一体に備える三元触媒又はHCトラップ触媒40と別に設けられた三元触媒により浄化される。
【0018】
なお、HCトラップ触媒と別体として三元触媒等のHC浄化触媒を有してもよいが、HCトラップ触媒自体にHC吸着剤層とHC浄化触媒とを含む構造を有する方が、HCを効率良く放出浄化できる。
例えば、図3に示すように、本実施の形態のHCトラップ触媒は、断面が多角形のセルを複数有するモノリス担体41上に、炭化水素吸着材層42と、三元触媒である金属触媒層43が積層形成されたものである。金属触媒層43の内側のセル中央を排気ガスが通過する。モノリス担体41としては、例えば、コージェライトなどのセラミック製のものや、フェライト系ステンレスなどの金属製のものを用いることができる。
炭化水素吸着材層42の炭化水素吸着材としては、ゼオライト又は活性炭を挙げることができる。また、金属触媒層43の金属触媒としては、Pd、Pt又はRh等のいわゆる三元触媒機能を有する金属を使用できる。なお、炭化水素吸着材としてゼオライトを使用する場合は、耐久性を上げるために、ゼオライト層中には、金属触媒を含まないことが望ましい。
【0019】
このように、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムでは、NOx浄化触媒の上流に水素富化手段を有するとともに、NOx浄化触媒の下流にHCトラップ触媒を配置しているので、NOxの浄化反応を効率良く促進できるとともに、NOxの浄化反応で使用されず、排気ガス中に残ったHCについては、HCトラップ触媒によってトラップし、HCの大気中への流出を未然に防止できる。即ち、コールド域で発生するHCの流出を抑制できる。
なお、本実施の形態に係るHCトラップ触媒40の、炭化水素吸着材層42の種類は、対象とする内燃機関の燃料の種類に応じて適宜変更することが好ましい。
【0020】
図4は、排気ガス中のHCの分子径分布を示したグラフである。図4中、線Aはガソリン燃料を使用したガソリン車の場合、線Bは、軽油燃料を使用したディーゼル車の場合である。
図4中の線Aを参照にするように、燃料がガソリンなどの軽質油の場合、未浄化HCには炭素数が3以上や分子径が4Å(0.4nm)以上のHCが多く含まれる。これに対する炭化水素吸着材としては、これらの分子径を効率的に吸着するβ−ゼオライトやZSM−5などを用いることが好ましい。なお、吸着する平均的な分子径とゼオライトの細孔径とは相関があるため、吸着すべき分子径と同等以上の細孔径を有するゼオライトを使用することが好ましい。
【0021】
一方、図4中の線Bを参照にするように、燃料が軽油などの重質油の場合、排気ガス中には、炭素数が3未満の分子径が4Å未満のHCから炭素数が3以上の分子径が4Å以上の種々のHCが含まれる。従って、炭化水素吸着材として、4Å以上のHCを効率的に吸着できるβ−ゼオライトやZSM−5の他に、4Å未満のHCを効率的に吸着できるフェリエライト、A型,B型ゼオライトなどを用いることが好ましい。
なお、HCトラップ触媒は、水素富化手段と、NOx浄化触媒の後に配置される。水素富化手段として、CO・HC選択酸化触媒を使用する場合は、炭素数が3以上の分子径が4Å以上のHCは、このCO・HC選択酸化触媒によって酸化浄化される。従って、ディーゼル車のように、燃料として軽油を使用する場合であって、しかも、水素富化手段としてCO・HC選択酸化触媒を使用する場合は、図4の線bに示すように、この触媒を通過した排気ガス中には、主に炭素数が3未満や分子径が4Å未満のHCが含まれる。従って、この場合は、炭化水素吸着材として、4Å(0.4nm)未満のHCを効率的に吸着できるフェリエライト、A型ゼオライト,B型ゼオライトなどを用いることが好ましい。
なお、一般にメタン(CH)は排ガス規制の対象にならないので、上記HCトラップ触媒でトラップされる炭化水素は、少なくともCHより大きい分子をトラップできるものであればよい。言い換えれば、沸点が−50℃以上の炭化水素を主にトラップできるものであればよい。
【0022】
以上に説明するように、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムでは、排気ガス流路に配置されたNOx浄化触媒の上流に特定の水素富化手段を配置し、且つ該NOxトラップ浄化触媒の下流にHCトラップ触媒を配置し、この水素富化手段によって、該NOx浄化触媒に水素が富化された燃焼ガスや排気ガスを供給するので、NOxの浄化処理を効率的に行うとともに、HCトラップ触媒によって、コールド域でのHCの大気中への流出を未然に防止できる。
【0023】
再び、本実施の形態に係る水素富化手段につき更に詳細に説明する。
上述したように、水素富化手段には、大きく分けて水素生成手段(a)と水素以外の還元成分を減少させる手段(b)とがある。更に、水素生成手段(a)としては、燃焼制御手段(I)(燃焼系)及び水素生成触媒(II)(触媒系)があげられる。また、水素以外の還元成分を減少させる手段(b)としては、CO・HC選択酸化触媒(III)(触媒系)、固体酸性酸化物含有触媒(IV)(触媒系)が挙げられる。
これらの手段は、完全に区別されるものではなく、ひとつの触媒が複数の触媒機能を有する場合もある。また、(I)〜(IV)の手段については、(I)の手段を必須構成とするが、他の手段を組み合わせて用いることができる。好適な水素富化手段の構造としては、燃焼制御手段(I)と、水素生成触媒(II)、HC・CO選択酸化触媒(III)及び固体酸性酸化物含有触媒(IV)を組合せたものが挙げられる。
【0024】
具体的に、燃焼制御手段(I)としては、燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期又は吸排気弁の開閉タイミング及びこれらの任意の組合せを制御する手段を挙げることができる。また、この燃焼制御手段には、燃焼ガス及び/又は排気ガス中で、主としてHCを部分酸化し、CO生成を起こす手段を有するものがある。
水素生成触媒(II)としては、燃焼ガス及び/又は排気ガス中のHCとCOから水素を生成する機能を有する触媒であれば十分であるが、Pt,Pd又はRh及びこれらの任意の混合物に係る貴金属を含有する貴金属触媒を例示することができる。なお、かかる水素生成触媒において、単独の貴金属を用いるものとしては、Rhを含有する触媒が最も好ましい。
【0025】
CO・HC選択酸化触媒(III)は、H以外の還元成分を減らす効果を有する。例えば、この触媒としては、H生成機能をも有するジルコニウム酸化物を含有する触媒を挙げることができる。この場合、ジルコニウム酸化物としては、アルカリ土類金属を含有し、その組成が、次の一般式(f4)を充たすものを用いることが好ましい。
[X]aZrbOc…(f4)
ここで、式中のXは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属、a及びbは各元素の原子比率、cはX及びZrの原子価を満足するのに必要な酸素原子数を示し、a=0.01〜0.5、b=0.5〜0.99、a+b=1を満たす。
上記(f4)式において、aが0.01未満ではジルコニウム酸化物に対する添加元素(アルカリ土類金属)の改質効果が十分に得られず、逆に、aが0.5を超えると耐熱性が悪化し触媒活性が低下することがある。また、a+bが1.0を超えるとジルコニウム酸化物の構造安定性が低下することがあり、好ましくない。
【0026】
上述の如く、このジルコニウム酸化物に係るCO・HC選択酸化触媒は、水素生成触媒、好ましくはRhと併用することが可能であり、かかる併用により、Rhの電子状態が好適な状態に維持され、Hが効率良く生成されるようになるので、水素富化をいっそう促進することができる。
この場合、Rhの使用量は、触媒1L当たり、0.01〜10g/Lとすることが望ましく、0.01g/L未満ではRhによるH成分比率の増大効果が十分に得られず、逆に10g/Lを超えると増大効果が飽和する。
なお、かかる併用の際、上記(f4)式で表されるジルコニウム酸化物において、a+bが1.0を超えると、添加したアルカリ土類金属が触媒表面に析出してRhの触媒活性を低下させることがある。
【0027】
また、かかるCO・HC選択酸化触媒には、未燃焼HC及びCOを選択的に酸化・除去しH成分比率を増大すべく、Pdとセリウム酸化物を含有させることができ、この場合、全Pd量の20〜80%がこのセリウム酸化物に担持されるようにすることが望ましい。
セリウム酸化物上に担持されるPd量が20%未満ではH生成比率の増大効果が十分に得られず、逆に80%を超えるとPdの分散性が悪化し触媒活性が低下する。
また、Pdの使用量は、触媒1L当たり、0.01〜50g/Lとすることが望ましく、0.01g/L未満では、Pdが未燃焼HC及びCOを選択的に酸化・除去してH成分比率を高める改良効果が十分に得られず、逆に50g/Lを超えると改良効果が飽和する。
【0028】
次に、固体酸性酸化物含有触媒(IV)は、Hの消費を抑制するものである。好ましくはCO・HC選択酸化機能をも有する、固体酸性ジルコニウム酸化物を含有する触媒を挙げることができる。
このような固体酸性ジルコニウム酸化物としては、チタン、アルミニウム、タングステン、モリブデン及び亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素を含有し、その組成が次の一般式(f5)で表されるものが望ましい。
[Y]dZreOf…(f5)
ここで、式中のYはチタン、アルミニウム、タングステン、モリブデン及び亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、d及びeは各元素の原子比率、fはY及びZrの原子価を満足するのに必要な酸素原子数を示し、d=0.01〜0.5、e=0.5〜0.99、d+e=1を満たす。
上記(f5)において、dが0.01未満ではジルコニウム酸化物に対するチタン等の添加元素の改質効果が十分に得られず、逆にdが0.5を超えると耐熱性が悪化し触媒活性が低下することがある。また、a+bが1.0を超えるとジルコニウム酸化物の構造安定性が低下することがある。
【0029】
また、この固体酸性酸化物含有触媒(IV)は、水素生成触媒、特にPtと併用することができ、かかる併用により、H成分比率が高くなった組成ガス中のHを効率良くNOx浄化触媒に供給することができる。
この場合、PtのH消費を抑制すべく、Ptを上記(f5)式で表されるジルコニウム酸化物上に担持することが好ましく、全Pt量の10〜30%がこのジルコニウム酸化物に担持されるようにすることが望ましい。かかるジルコニウム酸化物上に担持されるPt量が10%未満では、生成したHに対する消費抑制効果が十分に得られず、逆に30%を超えると抑制効果が飽和する。
また、Ptの使用量は、触媒1L当たり、0.01〜25g/Lとすることが望ましく、0.01g/L未満ではPtが未燃焼HC及びCOを選択的に酸化・除去しH成分比率を高める改良効果が十分に得られず、逆に25g/Lを超えると改良効果が飽和する。
なお、かかる併用の際、上記(f5)式で表されるジルコニウム酸化物において、a+bが1.0を超えると、チタン等の添加元素が触媒表面に析出してPtの触媒活性を低下させることがあるため、好ましくない。
【0030】
ここで、上述した水素生成触媒、及びCO・HC選択酸化触媒などとの併用触媒の触媒構造などにつき、詳細に説明しておく。
本実施の形態の排気ガス浄化システムにおいて、水素富化手段の一例である水素生成触媒及び他成分との併用触媒については、モリノス担体等を用いた一体構造型の触媒とし、かかる担体の排気ガス流路の上流側にHC及びCOを酸化し酸素を低減する触媒成分を配置し、この下流側に水素を生成する触媒成分を配置し、水素生成触媒成分に接触する酸素量が低減されるような構成とすることが好ましい。
【0031】
上記触媒においては、空間速度や温度等の条件変動に素早く対応するため、上流側のHC・COを酸化し、Oを低減する触媒成分としてPd及び/又はPtを用いることが好ましく、この場合、Pd及び/又はPtの含有量を触媒体積当たり0.1〜50g/Lとすることが望ましい。なお、必要に応じ、担体としてアルミナを使用してもよい。
Pd及び/又はPtの含有量が0.1g/L未満では十分な触媒活性が得られないことがあり、逆に50g/Lを超えると触媒活性が飽和する。
また、残HC及びCOからHを効率良く生成するためには、下流の水素生成触媒成分として、Rhとジルコニウム酸化物を含有させることが好ましい。
空間速度や温度等の条件変動に素早く対応するため、Rhの含有量は触媒体積当たり0.1〜50g/L、ジルコニウム酸化物の含有量は10〜300g/Lとすることが好ましい。なお、ジルコニウム酸化物は担体として用いられるものである。
Rhの含有量が0.1g/L未満では十分な触媒活性が得られないことがあり、逆に50g/Lを超えると触媒活性が飽和する。また、ジルコニウム酸化物の含有量が5g/L未満ではロジウムの触媒性能の改質効果が十分に得られず、逆に、100g/Lを超えると触媒活性が飽和する。
【0032】
また、かかるジルコニウム酸化物として、上記(f4)式で表されるアルカリ土類金属を含有するジルコニウム酸化物を用い、Rhの電子状態を好適な状態に維持すれば、Hを効率良く生成させることができる。
更に、上記同様に、Pdとセリウム酸化物を含有させて、Pdの電子状態を好適な状態に維持し、Hの更に効率的な生成を促進することも可能である。
この場合、Pd含有量を0.01〜50g/L、セリウム酸化物(担体)の含有量を10〜300g/Lとすることが好ましく、Pdの含有量が0.1g/L未満では十分な触媒活性が得られないことがあり、逆に50g/Lを超えると触媒活性が飽和する。また、セリウム酸化物の含有量が10g/L未満ではPdの触媒性能の改質効果が十分に得られないことがあり、逆に300g/Lを超えると触媒活性が飽和する。
【0033】
なお、本実施の形態の排気ガス浄化システムにおいて、上記各種の水素富化手段を組み合わせることができるが、特に、上記燃焼制御手段(I)と上記触媒系の水素富化手段 ((II)〜(IV))との組合せは有効である。
即ち、内燃機関の燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期又は吸排気弁の開閉タイミング及びこれらの任意の組合せを上記燃焼制御手段によって制御して、上記触媒系の水素富化手段に流入する燃焼ガスや排気ガスをそのZ値が断続的に1.0以下になるような炭化水素等の還元成分過剰雰囲気(リッチ域)に調整すれば、Hの生成効果などが更に向上するため、(f1)式〜(f3)式に規定するガス組成制御を容易に実行し易くなる。
なお、上述のZ値は、酸化剤と還元剤との量論比を表すもので、次式で定義される。
Z=([O2]×2+[NO])/([H2]×2+[CO]+[HC]×α)
ここで、[O2]、[NO]、[H2]、[CO]及び[HC]は、それぞれ酸素、一酸化窒素、水素、一酸化炭素及び炭化水素の濃度を示し、αはHC成分の種類によって定まる係数である。
【0034】
次に、NOx浄化触媒について詳細に説明する。
このNOx浄化触媒は、上述した各種水素富化手段の下段に配置され、水素等の還元成分によりNOxを還元処理できれば十分であり、特に限定されるものではないが、大別して、アルミナ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属及びこれらの任意の混合物とPt、Pd又はRh及びこれらの任意の混合物とを含有するNOxトラップ型のNOx浄化触媒と、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)又は銀(Ag)及びこれの任意の混合物とPt、イリジウム(Ir)又はRh及びこれらの任意の混合物とを含有する選択還元型のNOx浄化触媒に分類される。
【0035】
を還元成分として高効率で利用できる触媒としては、前者のNOxトラップ型触媒が望ましく、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムでは、NOxトラップ型を用いる。
この場合、アルカリ金属としてセシウム(Cs)、アルカリ土類金属としてマグネシウム(Mg)、Ca、ストロンチウム(Sr)及び/又はBaを用い、これらを酸化物換算で触媒1L当たり10〜70g/Lの割合で含有させることが好ましい。これらの含有量の合計が10g/L未満では十分な性能が得られず、逆に70g/Lを超えて含有させるとNOx浄化性能が低下することがある。
また、PtやRh等の貴金属担持量は、0.01〜25g/Lとすることが好ましい。貴金属担持量が、0.01g/L未満では十分なNOx浄化性能が得られないことがあり、逆に25g/Lを超えても触媒活性が飽和する。
【0036】
かかるNOxトラップ型のNOx浄化触媒において、アルカリ金属やアルカリ土類金属の担持方法としては、酢酸塩などの水溶性塩の溶液を用いた含浸法、又は炭酸塩や硫酸塩などの難溶性塩/不溶性塩を水溶性スラリーに混ぜ込む混ぜ込み法など、任意の方法を用いることができる。
なお、NOx浄化触媒のその他の例としては、少なくともRhを含有し、活性温度が260〜380℃である触媒を用いることができ、この触媒を使用すれば、比較的低温の排気ガス中のNOxも有効に浄化することができるようになる。
また、各種触媒において、触媒成分を担持するのに用いる多孔質基材としては、アルミナ、シリカアルミナ又はゼオライト及びこれらの任意の混合物が好適であるが、特に比表面積が50〜300m/g程度の活性アルミナが好ましい。
更に、アルミナの比表面積を高める目的で、これに希土類元素やジルコニウムなどを添加してもよい。多孔質担体の使用量は触媒1L当たり50〜300gとすることが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例の排気ガス浄化システムは、図1に示すように、内燃機関10と連結している排気ガス通路上に、水素富化手段20、NOx浄化触媒30及びHCトラップ触媒40を配置している。また、水素富化手段20としては、水素生成・透過触媒21と、HC、CO選択的酸化触媒22とを直列に並べて使用している。
ここで、水素生成・透過触媒21とは、水素生成触媒(II)、CO・HC選択酸化触媒(III)、固体酸性酸化物含有触媒(IV)とを組み合わせた構造の触媒である。
図5に、その構造例を示す。担体210上に、Pd及びセリウム酸化物を含有する水素生成触媒層220を形成し、更に水素生成触媒層220上の排気ガス上流側に、アルミナ等に担持させたPdを含むCO・HC選択酸化触媒層230を形成し、水素生成触媒220上の排気ガス下流側に、アルカリ土類金属を含有するジルコニウム酸化物担体にRhを担持させた固体酸性酸化物含有触媒層240を形成している。
【0038】
排気ガス中のHC、CO、HOは、CO・HC選択酸化触媒層230を透過する過程でHCは酸化されCOになる。更に、HC及びCOは水素生成触媒層220に達したところで、HOと反応し水素を生成する。生成された水素は固体酸性酸化物含有触媒240により消費されることなく、外部に放出される。このように、この構造では、水素を生成するとともに、生成された水素を透過する機能を示す。
なお、この水素生成・透過触媒21によって消費されなかったHC及びCOの多くは、次のHC、CO選択的酸化触媒22によって、酸化消費される。
【0039】
内燃機関10は希薄燃焼を行うことができ、例えばリーンバーンエンジン、直噴エンジン及びディーゼルエンジンなどが用いられる。内燃機関10は、制御装置15により運転状態に応じて燃料噴射条件等を制御され、空燃比がリーン又はリッチの状態が発生されることとなる。
排気ガス温度が低い状態にあるコールド域において、内燃機関10の空燃比がリッチのときに発生した排気ガス成分のうち、一部のHCはH生成・透過触媒21、及びHC・COを選択酸化触媒22により部分酸化され、後段に配置されたNOx浄化触媒30に流入する。後段に配置されたNOx浄化触媒30は、トラップ型の触媒であり、内燃機関10の空燃比がリーンのときに排出されるNOxをトラップする機能を有する。
【0040】
排気ガス温度が低い状態にあるコールド域において、空燃比がリーンのときにトラップされたNOxは、内燃機関10の空燃比がリッチのときにNOx浄化触媒30に流入するHにより還元され浄化される。
このとき、HとともにNOx浄化触媒30に流入するHCは、排気ガス温度が低いために、NOx浄化触媒30にトラップされたNOxを放出浄化する還元剤としては消費されず、NOx浄化触媒30を通過する。通過したHCは、NOx浄化触媒30の後段に配置されたHCトラップ触媒40の炭化水素吸着材にトラップされる。HCトラップ触媒40にトラップされたHCは排ガス温度の上昇により放出され、炭化水素吸着材層上に形成された三元触媒層によって浄化される。
【0041】
HCトラップ触媒40において、流入するHCをトラップするHC吸着材は、多孔質物質であり、例えばゼオライトが用いられる。流入するHC成分の分子の大きさに応じて、HCトラップ剤の細孔の大きさ、即ち細孔径の異なるトラップ剤に適宜変更することができる。
以上のように、この排気ガス浄化システムにより、低温であるコールド域において、NOxを浄化しつつ、HCの大気中への流出を未然に防止することが可能となる。
【0042】
図6Aは、リーンバーンエンジンを用いたガソリン車において、本実施例の排気ガス浄化システムを使用した場合のHCトラップ特性の一例を示す。なお、ここでは、燃料ガスとして、ガソリンが用いられる。
図6Aに示すように、ガソリンを燃料とする内燃機関で発生したHC成分は、炭素数(C数)が3以上のHC成分が86%存在しており、HCトラップ触媒40の入口でもC数が3以上の成分が82%存在している。従って、この場合は、コールド域でのHCの流出を未然に防止するには、C3以上のHC成分を低減することが必要となる。
そこで、本実施例では、HCトラップ触媒40の吸着剤として、C3以上のHC成分を有効にトラップするβゼオライトを用いている。この結果、図6Aに示すように、HCトラップ触媒40で60%のHCが低減できる。また、その低減効果はC数が3以上のHC成分のトラップによるものであることが判る。
【0043】
図6Bは、ディーゼル車において、本実施例の排気ガス浄化システムを使用した場合のHCトラップ特性の一例を示す。なお、ここでは、燃料ガスとして軽油が用いられる。
図6Bにおいて、軽油を用いた内燃機関で発生したHC成分は、ガソリンを用いた内燃機関とは異なり、炭素数(C数)が3未満のHC成分が40%と多く、HCトラップ触媒40の入口でもガソリンのそれとは対照的にC数が3未満の成分が60%存在する。よって、燃料として軽油を用いた内燃機関において、コールド域でのHCの流出を未然に防止するには、C数が3未満のHC成分を低減することが必要となる。
そこで、本実施例においては、HCトラップ触媒40の吸着剤として、C3未満のHC成分を効率的にトラップするフェリエライトを用いる。この結果、図6Bに示すように、HCトラップ触媒40により50%のHCが低減できる。また、その低減効果はC数が3未満のHC成分のトラップによるものであることが判る。
【0044】
以上に説明したように、本発明の排気ガス浄化システムを用いる内燃機関の違いにより、HCトラップ触媒のHCトラップ剤を適宜変えることにより、コールド域でのHCの大気中への流出を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係る、水素富化手段と、NOx浄化触媒と、HCトラップ触媒を有する排気ガス浄化システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るNOx浄化触媒におけるNOx浄化のメカニズムを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るHCトラップ触媒の一例を示す外観図及び、部分拡大断面図である。
【図4】排気ガス中に含まれるHCの分子径分布を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る水素富化手段のひとつである水素生成・透過触媒の構成例を示す図である。
【図6】Aはガソリンエンジンを使用した場合の各場所における排気ガス中のHC濃度を示し、Bはディーゼルエンジンを使用した場合の各場所における排気ガス中のHC濃度を示すグラフである。
【符号の説明】
【0046】
10 エンジン
15 制御装置
20 水素富化手段
21 H2生成・透過触媒
22 HC・CO選択的酸化触媒
30 NOx浄化触媒
35 貴金属触媒
36 吸着材
40 HCトラップ触媒
41 モノリス担体
42 炭化水素吸着材層
43 金属触媒層
210 担体
220 水素生成触媒層
230 CO・HC選択酸化触媒層
240 固体酸性酸化物含有触媒層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガス又は排気ガス流路内に配置され、排気ガス中の還元ガス成分に対する水素成分比を増加させる、水素富化手段と、
上記排気ガス流路上の上記水素富化手段の後に配置されたNOx浄化触媒と、
更に、上記排気ガス流路上の上記NOx浄化触媒の後に配置されたHCトラップ触媒とを有し、
上記水素富化手段からNOx浄化触媒に、排気ガスが常に直接流れ、
上記水素富化手段が、内燃機関の燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火時期及び吸排気弁の開閉タイミングの少なくともいずれかを制御することにより、水素を生成する燃焼制御手段を有する、ことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項2】
上記水素富化手段が水素生成手段を有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項3】
上記水素富化手段が排気ガス中の水素以外の還元成分を減少させる手段を有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項4】
上記水素富化手段が、排気ガス成分から水素を生成する反応を促進する、水素生成触媒を有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項5】
上記水素生成触媒が、Pt,Pd又はRh及びこれらの任意の混合物に係る貴金属を含有することを特徴とする請求項4に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項6】
上記水素富化手段は、次の一般式(f5)で表される酸化ジルコニウムを含有する触媒を有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化システム。
[Y]dZreOf…(f5)
ここで、式中のYはチタン、アルミニウム、タングステン、モリブデン及び亜鉛から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素、
d及びeは各元素の原子比率、fはY及びZrの原子価を満足するのに必要な酸素原子数を示し、d=0.01〜0.5、e=0.5〜0.99、d+e=1を満たす。
【請求項7】
上記HCトラップ触媒は、炭化水素吸着材層と、上記炭化水素吸着材層上に形成された三元触媒層とを有する請求項1に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項8】
上記排気ガス浄化システムは、ガソリン車両に搭載されるものであり、上記HCトラップ触媒の上記炭化水素吸着材層は、主成分として分子径が0.4nm以上のHCを主にトラップするゼオライトを含むことを特徴とする請求項7に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項9】
上記ゼオライトは、β−ゼオライト、ZSM−5のいずれかであることを特徴とする請求項8に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項10】
上記排気ガス浄化システムは、ディーゼル車両に搭載されるものであり、上記HCトラップ触媒の上記炭化水素吸着材層は、主成分として、分子径が0.4nm未満のHCを主にトラップするゼオライトを含むことを特徴とする請求項7に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項11】
上記ゼオライトは、フェリエライト、A型ゼオライト又はB型ゼオライトのいずれかである請求項10に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項12】
上記排気ガス浄化システムは、ディーゼル車両に搭載されるものであり、
上記上記水素富化手段は、排気ガス中のHC又はCOを酸化する反応を促進する、HC・CO酸化触媒を有し、
上記HCトラップ触媒の上記炭化水素吸着材層は、主成分として、分子径が0.4nm未満のHCを主にトラップするゼオライトを含むことを特徴とする請求項7に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項13】
上記HC・CO酸化触媒は、以下の化学式(f4)で表されるジルコニウム酸化物を含む触媒を有する、ことを特徴とする請求項12に記載の排気ガス浄化システム。
[X]aZrbOc…(f4)
ここで、式中のXは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから成る群より選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属であり、
a及びbは各元素の原子比率、cはX及びZrの原子価を満足するのに必要な酸素原子数を示し、a=0.01〜0.5、b=0.5〜0.99、a+b=1を満たす。
【請求項14】
上記ゼオライトは、フェリエライト、A型ゼオライト又はB型ゼオライトのいずれかであることを特徴とする請求項12又は13に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項15】
上記NOx浄化触媒がNOx浄化を行う際、上記水素富化手段により水素富化が実行され、排気ガス中の水素濃度[H2]と全還元成分濃度[TR]が、次の(f1)式及び(f2)式
[H2/TR]d>[H2/TR]u…(f1)
[H2/TR]d≧0.3…(f2)
(式中の[H2/TR]uは上記水素富化手段の水素富化実行前又は上流での水素濃度[H2]uと全還元成分濃度[TR]uの比、[H2/TR]dは上記NOx浄化触媒の入口での水素濃度[H2]dと全還元成分濃度[TR]dの比を示す。)を充たすことを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。
【請求項16】
NOx浄化時における上記NOx浄化触媒の入口での、水素濃度[H2]dと全還元成分濃度[TR]d中の一酸化炭素濃度[CO]dとの比率が、次の(f3)式
[H2/CO]d>1…(f3)
を満足することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つの項に記載の排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−132355(P2007−132355A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351600(P2006−351600)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【分割の表示】特願2002−68817(P2002−68817)の分割
【原出願日】平成14年3月13日(2002.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】