説明

排気ガス浄化装置

【課題】排気ガスに含まれる窒素酸化物に対する尿素水による浄化効率の向上させる排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】、排気ガス浄化装置101は、排気ガスが流通する経路の途中に設けられた酸化触媒層12と、酸化触媒層12の下流に設けられた第一SCR触媒15sと、第一SCR触媒15sの下流に設けられた第二SCR触媒16sと、第一SCR触媒15sの上流に尿素水を供給するための噴射バルブ19とを備え、第二SCR触媒16sは、第一SCR触媒15sより多くのアンモニアを吸着可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス浄化装置に係り、特にディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するために尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒を使用した排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するための尿素SCRシステムが開発されている。尿素SCRシステムでは、尿素水の加水分解により生成されたアンモニア(NH)とNOxとの化学反応によってNOxを窒素(N)及び水(HO)に浄化するために、選択還元触媒である(尿素)SCR触媒と呼ばれる触媒が用いられる。
【0003】
尿素SCRシステムでは、SCR触媒は、エンジンとマフラーとの間の排気経路に設けられている。さらに、この排気経路において、SCR触媒よりエンジン側となる上流側には、排気ガス中のハイドロカーボン(HC)及び一酸化炭素(CO)を水(HO)及び二酸化炭素(CO)に酸化すると共に一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するのを促進するための酸化触媒、及び排気ガス中に尿素水を噴射するための噴射バルブが設けられている。
また、尿素SCRシステムの他に、エンジンとマフラーとの間の排気経路には、排気ガスに含まれるカーボン等の粒子状物質(パティキュレートマター:PM)を減少させるためのDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)装置が設けられている。
【0004】
特許文献1には、高温活性型のNOx吸蔵触媒と、NOx吸蔵触媒の下流に配置され且つ低温活性型のユリアSCR触媒が担持されたDPFと、NOx吸蔵触媒及びDPFの間に配置された尿素添加インジェクタとを1つのケースに含む排気後処理装置が記載されている。この排気後処理装置では、触媒温度が400℃未満となる低温時、尿素添加インジェクタから尿素水が噴射され、尿素水が加水分解されて生成したアンモニアによりユリアSCR触媒において排気ガス中のNOxの還元除去が行われる。また、触媒温度が400℃以上となる高温時は、排気ガス中のNOxがNOx吸蔵触媒により吸蔵されて浄化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−274986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の排気後処理装置において、尿素添加インジェクタから噴射された尿素水が加水分解されて生成するアンモニアは、その全てがユリアSCR触媒において排気ガス中のNOxに対して還元反応を起こすわけではない。例えば、尿素水の噴射量が多く、尿素水からのアンモニアの生成量が排気ガス中のNOx量より多くなる場合は、余剰なアンモニアが発生し、このアンモニアがユリアSCR触媒から排出されることになる。よって、NOxの浄化に使用するアンモニアに無駄が生じ、アンモニアを生成する尿素水の使用量に対するNOxの浄化効率が低くなるという問題がある。従って、特許文献1の排気後処理装置には、尿素水によるNOxの浄化効率が高くないという問題がある。
【0007】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、排気ガスに含まれるNOxに対する尿素水による浄化効率の向上を図る排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、排気ガス浄化装置は、排気ガスが流通する経路の途中に設けられた酸化触媒と、酸化触媒の下流に設けられた第一SCR触媒と、第一SCR触媒の下流に設けられた第二SCR触媒と、第一SCR触媒の上流に尿素水を供給するための尿素水供給手段とを備え、第二SCR触媒は、第一SCR触媒より多くのアンモニアを吸着可能である。
【0009】
これにより、第二SCR触媒は第一SCR触媒よりも多くのアンモニアを吸着できるので、尿素水供給手段から供給された尿素水の加水分解により生成したアンモニアのうち、第一SCR触媒で吸着されずにそして排気ガス中に含まれる窒素酸化物の還元浄化にも使用されなかった余剰のアンモニアを第二SCR触媒で吸着することができる。よって、排気ガス中に含まれる窒素酸化物は、第一SCR触媒及び第二SCR触媒において還元浄化される。例えば、第一SCR触媒から流出し第二SCR触媒に流入した排気ガスにおいて、含まれているアンモニアの量が、含まれている窒素酸化物の還元浄化に要するアンモニアの量より多い場合、第二SCR触媒によって余剰となるアンモニアが吸着される。一方、含まれているアンモニアの量が、含まれている窒素酸化物の還元浄化に要するアンモニアの量より少ない場合、第二SCR触媒では、吸着しているアンモニアを使用して窒素酸化物が還元浄化される。よって、尿素水から生成したアンモニアが、排気ガス浄化装置の外部に排出されることなく、高い割合で窒素酸化物の還元浄化に使用される。従って、排気ガス浄化装置では、尿素水の使用量に対して排気ガスに含まれる窒素酸化物の浄化に使用される割合である浄化効率が向上しており、尿素水による窒素酸化物の浄化効率が向上する。
【0010】
第二SCR触媒の単位体積当たりでのアンモニアの吸着可能量が、第一SCR触媒の単位体積当たりでのアンモニアの吸着可能量より多くてもよい。これにより、第二SCR触媒は、第一SCR触媒よりアンモニアを吸着する性質が強い。このため、第一SCR触媒でのアンモニアの吸着量及び吸着したアンモニアの放出量は少ないものとなるため、第二SCR触媒に供給されるアンモニアの量の変動に対して、第一SCR触媒が与える影響は小さいものとなる。よって、第二SCR触媒でのアンモニアの処理の安定化を図ることができ、窒素酸化物の還元浄化へのアンモニアの使用効率が向上する。
【0011】
第一SCR触媒と第二SCR触媒とは、間隔をあけて配置されてもよい。これにより、第一SCR触媒と第二SCR触媒との間において、未だ加水分解されていない尿素水を加水分解させてアンモニアを生成することができる。よって、尿素水からアンモニアへの変換効率が向上し、排気ガスに含まれる窒素酸化物に対する尿素水による浄化効率が向上する。
また、第一SCR触媒と第二SCR触媒とは、隣接して配置されてもよい。これにより、第一SCR触媒と第二SCR触媒とを隣接して配置することによって、排気ガス浄化装置の小型化を図ることが可能になる。
【0012】
排気ガス浄化装置は、粒子状物質捕集手段をさらに備え、粒子状物質捕集手段は、第一SCR触媒と一体であってもよい。これにより、粒子状物質捕集手段と第一SCR触媒とを一体にすることによって、排気ガス浄化装置の小型化を図ることが可能になる。
また、排気ガス浄化装置は、粒子状物質捕集手段をさらに備え、粒子状物質捕集手段は、第一SCR触媒の上流に設けられてもよい。これにより、粒子状物質捕集手段と第一SCR触媒とを別個に設けることによって、第一SCR触媒が受ける、粒子状物質捕集手段に蓄積した粒子状物質の燃焼時の熱による影響が低減される。よって、第一SCR触媒の耐久性を向上させることが可能になる。
【0013】
排気ガス浄化装置は、エンジンアセンブリに取り付けられてもよい。これにより、排気ガス浄化装置には、エンジンアセンブリから排出された温度低下の少ない高温の排気ガスが供給される。また、排気ガス浄化装置は、エンジンアセンブリの発生する熱をその外部から受けることができる。よって、排気ガス浄化装置は、コールドスタート時においても、排気ガス浄化装置を尿素水の加水分解可能な温度にまで上昇させる時間、並びに、第一SCR触媒及び第二SCR触媒をその活性化する温度にまで上昇させる時間を短縮することができる。従って、排気ガス浄化装置は、コールドスタート時から短時間で窒素酸化物の浄化を開始することができるため、窒素酸化物の浄化性能を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る排気ガス浄化装置によれば、排気ガスに含まれる窒素酸化物に対する尿素水による浄化効率の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係る排気ガス浄化装置及びその周辺の構成を示す模式図である。
【図2】図1の排気ガス浄化装置の構成を示す模式図である。
【図3】図2のIIIa−IIIa線に沿った断面を示す模式図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置の構成を示す模式図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る排気ガス浄化装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1及び2を用いて、この発明の実施の形態1に係る排気ガス浄化装置101及びその周辺の構成を説明する。なお、以下の実施形態において、ディーゼルエンジンを搭載する車両に排気ガス浄化装置を使用した場合の例について説明する。
【0017】
まず、図1を参照すると、エンジン本体1には、吸入された吸入空気を複数のシリンダ1aのそれぞれに分配するための吸気マニフォールド(インテークマニフォールド)4が、複数の吸気ポート1bに対して接続されている。
吸気マニフォールド4における吸入空気の入口4aには、エンジン吸気管3が接続され、さらに、エンジン吸気管3は、ターボチャージャ8のコンプレッサハウジング8aに接続されている。また、コンプレッサハウジング8aには、外気を吸入するための吸気管2が接続されている。
【0018】
一方、エンジン本体1の複数の排気ポート1cのそれぞれには、排気ポート1cから排出される排気ガスを1つに集約するための排気マニフォールド(エキゾーストマニフォールド)5が接続されている。さらに、排気マニフォールド5における排気ガスの出口5aには、ターボチャージャ8のタービンハウジング8bが接続されている。また、タービンハウジング8bには、略円筒形をした排気ガス浄化装置101が接続され、排気ガス浄化装置101はエンジン本体1の側部に隣接するようにして配置されている。そして、排気ガス浄化装置101には、排気管6が接続されており、さらに、排気管6の下流側の端部には、消音器(マフラー)7が接続されている。よって、図示しない車両における吸気系統は、吸気管2、ターボチャージャ8、エンジン吸気管3及び吸気マニフォールド4によって構成され、排気系統は、排気マニフォールド5、ターボチャージャ8、排気ガス浄化装置101、排気管6及び消音器7によって構成されている。ここで、エンジン本体1、エンジン吸気管3、吸気マニフォールド4、排気マニフォールド5、及びターボチャージャ8は、エンジンアセンブリ10を構成している。
【0019】
次に、図2を参照すると、排気ガス浄化装置101は、略円筒形をした筐体11を有している。筐体11における上流側の端部11aには、ターボチャージャ8のタービンハウジング8bの出口8b2が接続されており、筐体11の下流側の端部11bには、排気管6の上流側の端部6aが接続されている。そして、筐体11の内部は、タービンハウジング8bの内部及び排気管6の内部に連通している。
【0020】
円筒状をした筐体11の内部には、上流側から下流側に向かって、酸化触媒が担持された酸化触媒層12、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)本体14、及び第二SCR触媒16sが担持された第二SCR触媒層16が順次設けられている。ここで、DPF本体14は、粒子状物質捕集手段を構成している。
なお、酸化触媒層12、DPF本体14、及び第二SCR触媒層16は、筐体11の円筒部11cの中心軸に垂直な方向に延びる円柱状をした層状の形態を有し、円筒部11cの内側を塞ぐようにして形成されている。また、酸化触媒層12及びDPF本体14、並びに、DPF本体14及び第二SCR触媒層16は、互いに離れて配置されており、それぞれの間には空間17a並びに17bが形成されている。
【0021】
なお、酸化触媒層12は、排気ガスに含まれるハイドロカーボン(HC)及び一酸化炭素(CO)を水(HO)及び二酸化炭素(CO)に酸化すると共に、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化するのを促進する酸化触媒が図示しない基材に担持された層である。酸化触媒層12の酸化触媒としては、例えば、白金(Pt),パラジウム(Pd),ロジウム(Rh),銀(Ag),鉄(Fe),銅(Cu),ニッケル(Ni),金(Au)等、及びそれら2種以上の混合体等が好ましい。
【0022】
DPF本体14は、セラミック等の多孔質性の材料によって形成されており、排気ガスに含まれる粒子状物質(パティキュレートマター:PM)を捕集するためのものである。
【0023】
さらに、DPF本体14には、その全体にわたって、選択還元触媒である第一SCR触媒15sがコーティング等の手段によって担持され、DPF本体14と第一SCR触媒15sとは一体となっている。なお、第一SCR触媒15sは、DPF本体14の全体にわたって担持されているが、一部であってもよい。また、DPF本体14及び第一SCR触媒15sは一体となって触媒付DPF13を構成している。
なお、選択還元触媒は特定の物質同士に対して選択的に化学反応をもたらす触媒であり、選択還元触媒の中でも尿素SCR触媒(以下、SCR触媒と称す)は、窒素酸化物(NOx)と還元剤であるアンモニア(NH)との間で作用してNOxの還元をもたらすものである。そして、NOxはアンモニアによって還元されると窒素(N)及び水に分解される。
【0024】
第一SCR触媒15sには、アンモニアの吸着性が低い特性を有するSCR触媒が使用される。アンモニアの吸着性は、触媒が担持されている基材の単位体積当たりのアンモニアの吸着可能な重量によって示される。そこで、第一SCR触媒15sにおける低いアンモニアの吸着性は、具体的には、基材の単位体積1リットル当たりに第一SCR触媒15sが180グラム担持されている場合に、触媒の温度が200℃で、基材の単位体積1リットル当たりに100ミリグラム以下のアンモニアを吸着可能とする特性であることが好ましい。さらに、第一SCR触媒15sのアンモニアの吸着可能量は、触媒の温度の上昇と共に減少する傾向を有しているが、第一SCR触媒15sは、触媒の温度上昇と共に吸着可能量が減少する割合が低いもの、すなわちアンモニア吸着可能量の温度依存性が低いものが好ましい。そして、第一SCR触媒15sとしては、ジルコニウム(Zr),チタン(Ti),ケイ素(Si),セリウム(Ce),タングステン(W)等の酸化物、これら酸化物の複合体、および高温(650℃以上)で熱処理された鉄(Fe),銅(Cu)等によって一部金属置換されたZSM−5型のゼオライトの触媒等が好ましい。
【0025】
また、第一SCR触媒15sは、その温度が所定の温度以上の範囲にある時に、還元作用が活性化する特性を有している。なお、上述の所定の温度は、一般的に150℃であり、活性化するとは、アンモニアによるNOxの還元速度が急速に高まることを意味する。特に、第一SCR触媒15sは、還元作用が活性化する150℃以上において、アンモニアの吸着可能量が少ないものが好ましく、上述に挙げる触媒材料は、この特性を有している。
【0026】
次に、第二SCR触媒層16は、図示しない基材に、第二SCR触媒16sがコーティング等の手段によって担持されて形成されている。なお、第二SCR触媒16sには、アンモニアの吸着性が第一SCR触媒15sより高い特性を有するSCR触媒が使用されている。
【0027】
第二SCR触媒16sのアンモニアの吸着性は、具体的には、基材の単位体積1リットル当たりに第二SCR触媒16sが180グラム担持されている場合に、触媒の温度が200℃で、基材の単位体積1リットル当たりに250ミリグラム以上のアンモニアを吸着可能とする特性であることが好ましい。そして、第二SCR触媒16sとしては、650℃未満で熱処理された鉄(Fe),銅(Cu)等によって一部金属置換されたZSM−5型のゼオライトの触媒等が好ましい。さらに、第二SCR触媒16sのアンモニアの吸着可能量は、触媒の温度の上昇と共に減少する傾向を有している。そして、第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sを含むSCR触媒は、アンモニアの吸着可能量が多い特性であるものほど触媒の温度上昇と共に吸着可能量が減少する割合が高くなっている、すなわちアンモニアの吸着可能量の温度依存性が高くなっている。このため、第二SCR触媒16sは、第一SCR触媒15sよりアンモニアの吸着可能量の温度依存性が高くなっている。
【0028】
さらに、上述の触媒材料を使用した第二SCR触媒16sは、150℃以上でその還元作用が活性化する特性を有している。
また、上述のようにして形成された第二SCR触媒層16全体でのアンモニアの吸着可能量は、第一SCR触媒15sを有する触媒付DPF13全体でのアンモニアの吸着可能量より多くなっている。
【0029】
また、筐体11の円筒部11cには、酸化触媒層12及び触媒付DPF13の間となる位置に、電磁弁である噴射バルブ19が設けられている。ここで、噴射バルブ19は、尿素水供給手段を構成している。さらに、噴射バルブ19は、図示しない車両に設けられた尿素水タンク20に連通しており、尿素水タンク20から供給される尿素水を筐体11の空間17a内(第一SCR触媒15sの上流)に噴射する。なお、図2に示す噴射バルブ19は、酸化触媒層12における下流側の直後の位置に配置され、酸化触媒層12における下流側の直後に尿素水を噴射する。
さらに、噴射バルブ19は、ドージングコントロールユニット(DCU)30に電気的に接続されており、DCU30の制御によって噴射バルブ19の開閉が行われる。また、尿素水タンク20は、内部の尿素水を噴射バルブ19に供給するための電動ポンプを備えており、この電動ポンプは、DCU30に電気的に接続され、DCU30の制御によってその稼動が制御される。なお、DCU30は個別に設置してもよく、また図示しない車両ECUと一体にしてもよい。また、詳細は後述するが、噴射バルブ19は、触媒付DPF13の上流側における酸化触媒層12の付近に配置されるのが好ましい。
【0030】
また、触媒付DPF13の上流側の端面13aには、排気ガスに含まれる物質を端面13a全体に均等に分布させるための、円板状をしたミキサ18が設けられている。ミキサ18としては、特表平6−509020号公報、特開2006−9608号等に開示されものを使用することができる。なお、特表平6−509020号公報に開示されるミキサは、ガスの流路を格子状に仕切り、各格子を通過したガスに対して渦状の流れ及び隣接する格子の方向に向かう流れを発生させることにより、ガスに含まれる物質を流路全体に分布させるものである。また、特開2006−9608号に開示されるミキサは、ガスの流路の方向に垂直な分散板を複数設けることによって流通するガスを蛇行させ、ガスに含まれる物質を均等に分布させるものである。
【0031】
また、筐体11の上流側の端部11aには、排気ガスの温度を検出するための排気温度センサ51が設けられている。排気温度センサ51は、DCU30に電気的に接続されており、検出した排気ガスの温度情報をDCU30に送る。
さらに、筐体11の端部11aにおける排気温度センサ51の下流側には、NOxの濃度を検出するためのNOxセンサ52が設けられている。NOxセンサ52は、DCU30に電気的に接続されており、検出したNOxの濃度情報をDCU30に送る。
上述より、排気ガス浄化装置101は、SCR触媒による排気ガスの浄化装置とDPFによる排気ガスの浄化装置とを一体としてエンジンアセンブリ10に取り付けられ、エンジン本体1に隣接して配置される構成を有している。(図1参照)
【0032】
次に、図1〜3を用いて、この発明の実施の形態1に係る排気ガス浄化装置101及びその周辺の動作を説明する。
図1を参照すると、エンジン本体1が稼動することによって、吸気管2を介して、ターボチャージャ8のコンプレッサハウジング8aに外気である吸入空気が吸入される。さらに、吸入空気は、コンプレッサハウジング8a内の図示しないコンプレッサホイールにより過給されて、エンジン吸気管3に送られる。送られた吸入空気は、エンジン吸気管3及び吸気マニフォールド4を経由して、エンジン本体1のシリンダ1aの内部に流入する。そして、シリンダ1aの内部の吸入空気は、シリンダ1aの内部に供給された燃料(軽油)と混合されて、自己着火により燃焼する。
【0033】
燃焼した吸入空気及び燃料は、排気ガスとして複数の排気ポート1cから排気マニフォールド5に排出され、さらに、排気マニフォールド5内の流通過程で1つに集約されて、ターボチャージャ8のタービンハウジング8bに流入する。流入した排気ガスは、タービンハウジング8b内の図示しないタービンホイール及びタービンホイールに連結されたコンプレッサホイールの回転を上昇させつつ、排気ガス浄化装置101に排出される。さらに、排気ガスは、排気ガス浄化装置101の内部を流通した後、排気管6及び消音器7を経由して、図示しない車両の外部に排出される。
【0034】
さらに、図2を参照すると、排気ガス浄化装置101内に導入された排気ガスの全ては、まず、酸化触媒層12を通過する。酸化触媒層12を通過する過程において、排気ガスに含まれるハイドロカーボン及び一酸化炭素が二酸化炭素及び水に酸化されると共に、NOの一部が、より還元作用を受けやすいNOに酸化される。
次に、酸化触媒層12を通過した排気ガスは、空間17aを通過し、さらにミキサ18を通過して触媒付DPF13に流入する。そして、触媒付DPF13を流通する過程において、DPF本体14によって排気ガスに含まれるPMが捕集される。
【0035】
また、同時に、DCU30の制御によって尿素水タンク20内の電動ポンプが稼働されると共に噴射バルブ19が開弁され、尿素水タンク20の尿素水が噴射バルブ19から空間17aに噴射される。噴射された尿素水は、空間17aを流通する排気ガスの熱の作用によって加水分解が促進され、アンモニア及び二酸化炭素に分解される。
なお、噴射バルブ19を空間17a内における酸化触媒層12の近傍に配置することによって、噴射された尿素水が触媒付DPF13の第一SCR触媒15sに到達するまでの滞留時間を多くとることができる。これにより、尿素水からアンモニアへの加水分解の反応時間を多くとることができるため、加水分解の効率を向上させることができる。このような理由で、噴射バルブ19は、触媒付DPF13の上流側の空間17aにおける酸化触媒層12の付近のような、触媒付DPF13との距離をできるだけ大きくとることのできる位置に配置するのが好ましい。また、尿素水は、酸化触媒層12より下流側で噴射されてアンモニアに加水分解されるため、生成したアンモニアは酸化触媒層12の酸化触媒の作用によって酸化されることがない。
【0036】
次に、空間17aでの尿素水の加水分解により生成したアンモニアは、排気ガスと共にミキサ18を通過し、ミキサ18の通過の際に分散されて触媒付DPF13に流入する。さらに、排気ガスと共に流入したアンモニアは、触媒付DPF13の第一SCR触媒15sの作用によって、排気ガスに含まれるNO及びNOからなるNOxをNに還元浄化する。
【0037】
なお、排気ガスに含まれるアンモニアはミキサ18を通過する際に分散されるが、触媒付DPF13の上流側の端面13a方向であるIIIa−IIIa線(図2参照)に沿った断面方向でのアンモニアの分布には、まだ偏りがある。なお、IIIa−IIIa線に沿った断面は、筐体11の円筒部11cの中心軸に垂直な断面、すなわち排気ガスの上流側から下流側への流れの方向に垂直な断面である。
また、特に、空間17aにおいて、噴射バルブ19の出口と触媒付DPF13との距離Lが短い場合、噴射された尿素水が、触媒付DPF13に到達するまでにアンモニアに加水分解される割合が減少するため、IIIa−IIIa線に沿った断面方向でのアンモニアの分布の偏りが大きくなる。
【0038】
例えば、図3に示す噴射バルブ19に最も近い部位Pでは、部位Pと噴射バルブ19との距離が短いため、アンモニアの分布量が少なくなり、噴射バルブ19に最も遠い部位Rでは、部位Rと噴射バルブ19との距離が長いため、アンモニアの分布量が多くなる。このため、例えば、IIIa−IIIa線に沿った断面の部位Pを通過する排気ガスでは、NOxの含有量がアンモニアの含有量より多くなり、部位Rを通過する排気ガスでは、NOxの含有量がアンモニアの含有量より少なくなる。また、部位Qを通過する排気ガスでは、NOxの含有量とアンモニアの含有量とが同じになる。
【0039】
さらに、図2に戻り、部位P(図3参照)の下流側では、排気ガスに含まれているアンモニアの全てがNOxの還元浄化に使用されるが、排気ガスには、アンモニアと未反応の余剰のNOxが残留する。このため、アンモニアによって還元浄化されなかった余剰のNOxを含んでいるがアンモニアを含んでいない排気ガスが触媒付DPF13から空間17bに流出する。
また、部位Q(図3参照)の下流側では、排気ガスに含まれているNOxの全てがアンモニアの全てによって還元浄化される。このため、NOx及びアンモニアを含んでいない排気ガスが触媒付DPF13から空間17bに流出する。
【0040】
さらに、部位R(図3参照)の下流側では、排気ガスに含まれているNOxの全てがアンモニアによって還元浄化されるが、排気ガスには、NOxと未反応の余剰のアンモニアが残留する。このため、NOxの還元反応において消費されなかった余剰のアンモニアを含んでいるがNOxを含んでいない排気ガスが触媒付DPF13から空間17bに流出する。なお、この余剰のアンモニアは、低いアンモニアの吸着性を有する第一SCR触媒15sによってほとんど吸着されずに、空間17bに流出する。
従って、触媒付DPF13から流出する排気ガスは、アンモニア及びNOxを含んだ状態となっている。さらに、触媒付DPF13から流出した排気ガスは、空間17a及び触媒付DPF13を流通する過程で加水分解されず残留している尿素水も含んでいる。
【0041】
そして、この触媒付DPF13から空間17bに流出した排気ガスは、下流方向に流れて空間17bを通過し、第二SCR触媒層16に流入する。
また、排気ガスの空間17bの流通過程において、排気ガス中に残留している尿素水は、排気ガスの熱の作用によって加水分解が促進されて、アンモニアに分解される。これにより、排気ガス中に残留している尿素水のほとんど全てがアンモニアに加水分解される。よって、噴射バルブ19から噴射された尿素水は、第二SCR触媒層16に到達するまでの間において、高い変換効率でアンモニアに加水分解されることになる。
【0042】
また、触媒付DPF13を通過した排気ガスは、その通過過程において、触媒付DPF13によってその流れが整流されている。そして、触媒付DPF13の下流側の端面13bから流出した際には、排気ガスは、端面13bでの流出する部位によって、NOxを含んでいたり、アンモニアを含んでいたりしていた。しかしながら、この含まれているNOx及びアンモニアは、空間17bを流通する過程で、整流された排気ガスの流れによって分散される。このため、排気ガスに含まれているNOx及びアンモニアは、第二SCR触媒層16に流入する際には、第二SCR触媒層16の上流側の端面16a方向であるIIIb−IIIb線に沿った断面方向で均一化された状態となっている。なお、IIIb−IIIb線に沿った断面は、IIIa−IIIa線に沿った断面に平行な断面である。
【0043】
次に、第二SCR触媒層16に流入した排気ガスに含まれているアンモニアは、第二SCR触媒16sの作用により、同じく排気ガスに含まれているNOxを還元浄化する。そして、排気ガスに含まれているNOx及びアンモニアは均一化された状態となっているため、互いに高い割合すなわち高い効率で反応しあう。
【0044】
さらに、第二SCR触媒層16において、排気ガスに含まれているNOxの還元浄化に必要なアンモニアの量より、排気ガスに含まれているアンモニアの量が多い場合、余剰となるアンモニアは、高いアンモニアの吸着性を有する第二SCR触媒16sによって吸着される。このため、第二SCR触媒層16に流入した排気ガスに含まれるアンモニアは、NOxの浄化に使用されること、及び、第二SCR触媒16sに吸着されることによって、排気ガス中から全て除去される。
【0045】
一方、排気ガスに含まれているアンモニアによって還元浄化可能なNOxの量より、排気ガスに含まれているNOxの量が多い場合、このアンモニアによって還元浄化されない余剰のNOxは、第二SCR触媒16sに吸着しているアンモニアによって還元浄化される。このため、第二SCR触媒層16に流入した排気ガスに含まれるNOxは、排気ガス中から除去される。
よって、第二SCR触媒層16に排気ガスと共に流入したアンモニアは、第二SCR触媒層16から流出することなく、NOxの還元浄化のために高い割合で使用され、その使用効率が高くなっている。
【0046】
また、第二SCR触媒層16においてNOxの浄化及びアンモニアの除去がなされた排気ガスは、筐体11すなわち排気ガス浄化装置101から排気管6に排出され、さらに、排気管6及び消音器7を経由して図示しない車両の外部に排出される。
【0047】
また、噴射バルブ19からの尿素水の噴射は、第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sが、活性化する温度以上、例えば、上述に示す一般的な活性化温度である150℃以上である場合に行われる。第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sの温度は、流通する排気ガスの温度とみなすことができるため、排気温度センサ51の検出する温度が上述の活性化温度150℃以上の場合、DCU30は、噴射バルブ19を開弁し、また、活性化温度150℃より低い場合に噴射バルブ19を閉弁し、NOxの還元の実施・不実施を制御する。
【0048】
さらに、DCU30は、NOxセンサ52から送られるNOxの濃度の値から、所定の時間間隔当たりのNOxの流通量を算出し、この流通量におけるNOxを還元浄化可能なアンモニアの量を算出し、さらにこのアンモニアを生成するための尿素水の量を算出する。そして、DCU30は、この算出した尿素水の量を所定の時間間隔当たりの噴射量として、尿素水を噴射バルブ19から噴射する。このように、尿素水から生成されるアンモニアの量は、流通する排気ガスに含まれるNOxの量に対して、過剰に供給されないように制御される。
【0049】
また、第二SCR触媒層16では、流入する排気ガスに含まれるアンモニアの量が一時的に増減した場合であっても、第二SCR触媒16sが、余剰のアンモニアを吸着するか、又は、吸着しているアンモニアを使用して不足するアンモニアを補うことにより、還元浄化すべきNOxの量に対するアンモニアの量の変動が緩衝される。これにより、第二SCR触媒層16では、アンモニアが高い割合で効率よく消費される。
さらに、上述に示すような、流入する排気ガス中のNOxを還元浄化可能であり且つ過剰でない量の尿素水の供給を行うことにより、所定の時間間隔を通じて、第二SCR触媒16sに吸着されたアンモニアが過剰に蓄積されることがない。よって、第二SCR触媒16sに吸着されているアンモニアが放出されて排気ガス浄化装置101の外部に流出することがなく、又は、排気ガスに含まれる余剰のアンモニアが第二SCR触媒16sによって吸着できずに排気ガス浄化装置101の外部に流出することがない。
【0050】
また、第一SCR触媒15sのアンモニアの吸着性が低いため、第二SCR触媒層16には、NOxセンサ52からのNOxの濃度情報に基づいてDCU30が算出した、NOxの流通量とこれに対応するアンモニアの量との比率に近い含有比率を有する排気ガスが流入する。このため、第二SCR触媒層16では、排気ガスに含まれているNOx及びアンモニアの還元反応が、効率のよい状態で行われる。
さらに、第一SCR触媒15sのアンモニアの吸着性が低いため、第二SCR触媒層16に流入する排気ガスに含まれているアンモニアの量の予測が容易になり、第二SCR触媒層16において吸着されるアンモニアの量の制御も容易になる。このため、DCU30は、第二SCR触媒層16に吸着されるアンモニアの量を制御することによって、図示しない車両の運転状態の変化により生じる、排気ガス中のNOxの量の変動に対応する。
【0051】
一方、第一SCR触媒15sが第二SCR触媒16sより高いアンモニアの吸着性を有する場合や、第一SCR触媒15sを備える触媒付DPF13が第二SCR触媒層16より多いアンモニアの吸着可能量を有する場合、排気ガスに含まれるアンモニアが触媒付DPF13の第一SCR触媒15sによって多量に吸着されるため、第二SCR触媒層16に流入する排気ガスに含まれているアンモニアの量が、同様に含まれているNOxの量に対して不足する。さらに、これにより、第二SCR触媒層16では、流入する排気ガスに含まれるアンモニアの量が不足する傾向にあるため、アンモニアが吸着されていない。従って、第二SCR触媒層16でのNOxの浄化能力が不足することになるため、排気ガス浄化装置101のNOxの浄化能力が低下する。
【0052】
さらに、第一SCR触媒15sのアンモニアの吸着可能量が、高い温度依存性を有すると、排気ガスの温度の上昇時、すなわち第一SCR触媒15sの温度の上昇時に、吸着されているアンモニアが放出されやすくなり、温度の上昇と共にアンモニアの放出量が増大する。このため、第二SCR触媒層16に流入する排気ガスに含まれているアンモニアの量が、同様に含まれているNOxの量に対して過剰になる。そして、第二SCR触媒16sが、この過剰なアンモニアの全てを吸着除去しきれず、排気ガス浄化装置101の外部、さらには図示しない車両の外部にアンモニアが放出されるおそれがある。
【0053】
従って、第一SCR触媒15sが第二SCR触媒16sよりアンモニアの吸着性が低く、触媒付DPF13全体のアンモニアの吸着可能量が第二SCR触媒層16全体のアンモニアの吸着可能量より少なく、且つ、第一SCR触媒15sのアンモニアの吸着可能量の温度依存性が低いことが好ましい。特に、第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sが活性化する温度以上で尿素水が供給されて排気ガスに含まれるNOxの浄化が行われるため、この活性化する温度以上で上述に示す特性を有することが好ましい。
【0054】
さらに、第二SCR触媒16sは、第一SCR触媒15sでの吸着及び使用によってアンモニアが不足する場合に自身が吸着しているアンモニアを使用し、また、第一SCR触媒15sでの放出によってアンモニアが過剰な場合に過剰なアンモニアを吸着することによって、第二SCR触媒層16におけるアンモニアの流通量の変動を緩衝するためにも、アンモニアの吸着性が高いものが好ましい。さらに、第二SCR触媒層16全体のアンモニアの吸着可能量が多いことが好ましい。
【0055】
また、図1を参照すると、エンジン本体1に隣接して配置される排気ガス浄化装置101には、ターボチャージャ8、すなわち、エンジン本体1から排出された直後の温度低下の少ない排気ガスが流入する。また、エンジン本体1に隣接して配置される排気ガス浄化装置101には、稼動中にエンジン本体1の発生する熱が、排気ガス浄化装置101の筐体11(図2参照)の外側に付与され、付与された熱は、筐体11を伝導して筐体11の内部に伝達する。
さらに、図2を参照すると、筐体11の内部は、上述の温度低下の少ない排気ガスの熱や付与された熱によって加熱されるため、温度が上昇しやすくなる。これにより、筐体11では、エンジン本体1のコールドスタート時において、尿素水が加水分解可能な温度状態に至る時間、並びに第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sが活性化状態に至る時間が短縮されている。よって、排気ガス浄化装置101は、エンジン本体1のコールドスタート時から短時間でNOxの浄化を開始することができるため、NOxの浄化能力が向上している。
【0056】
このように、この発明に係る排気ガス浄化装置101は、排気ガスが流通する経路の途中に設けられた酸化触媒層12と、酸化触媒層12の下流に設けられた第一SCR触媒15sと、第一SCR触媒15sの下流に設けられた第二SCR触媒16sと、第一SCR触媒15sの上流に尿素水を供給するための噴射バルブ19とを備え、第二SCR触媒16sは、第一SCR触媒15sより多くのアンモニアを吸着可能である。
【0057】
これにより、第二SCR触媒16sは第一SCR触媒15sよりも多くのアンモニアを吸着できるので、噴射バルブ19から供給された尿素水の加水分解により生成したアンモニアのうち、第一SCR触媒15sで吸着されずにそして排気ガス中に含まれるNOxの還元浄化にも使用されなかった余剰のアンモニアを第二SCR触媒16sで吸着することができる。よって、排気ガス中に含まれるNOxは、第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sにおいて還元浄化される。例えば、第一SCR触媒15sから流出し第二SCR触媒層16に流入した排気ガスにおいて、含まれているアンモニアの量が、含まれているNOxの還元浄化に要するアンモニアの量より多い場合、第二SCR触媒16sによって余剰となるアンモニアが吸着される。一方、含まれているアンモニアの量が、含まれているNOxの還元浄化に要するアンモニアの量より少ない場合、第二SCR触媒層16では、吸着しているアンモニアを使用してNOxが還元浄化される。よって、尿素水から生成したアンモニアが、排気ガス浄化装置101の外部に排出されることなく、高い割合でNOxの還元浄化に使用される。従って、排気ガス浄化装置101では、尿素水の使用量に対して排気ガスに含まれるNOxの浄化に使用される割合である浄化効率が向上しており、尿素水によるNOxの浄化効率を向上させることが可能になる。
【0058】
また、第二SCR触媒16sの単位体積当たりでのアンモニアの吸着可能量が、第一SCR触媒15sの単位体積当たりでのアンモニアの吸着可能量より多いことにより、第二SCR触媒16sは、第一SCR触媒15sよりアンモニアを吸着する性質が強い。このため、第一SCR触媒15sすなわち触媒付DPF13でのアンモニアの吸着量及び吸着したアンモニアの放出量は少ないものとなるため、第二SCR触媒層16に供給されるアンモニアの量の変動に対して、第一SCR触媒15sが与える影響は小さいものとなる。よって、第二SCR触媒層16でのアンモニアの処理の安定化を図ることができ、NOxの還元浄化へのアンモニアの使用効率を向上させることが可能になる。
【0059】
また、第一SCR触媒15sを有する触媒付DPF13と第二SCR触媒層16とが、間隔をあけて配置されることにより、触媒付DPF13と第二SCR触媒層16との間において、未だ加水分解されていない尿素水を加水分解させてアンモニアを生成することができる。よって、尿素水からアンモニアへの変換効率が向上し、排気ガスに含まれるNOxに対する尿素水による浄化効率を向上させることが可能になる。
また、排気ガス浄化装置101は、DPF本体14を備えているが、DPF本体14と第一SCR触媒15sとを一体化することによって、排気ガス浄化装置101の小型化を図ることが可能になる。
さらに、酸化触媒層12と、DPF本体14と一体化された第一SCR触媒15sと、第二SCR触媒16sと、噴射バルブ19とが1つの筐体11内に収められているため、装置全体の小型化を図ることができる。
また、排気ガス浄化装置101がエンジンアセンブリ10に取り付けられることにより、排気ガス浄化装置101には、エンジンアセンブリ10から排出された温度低下の少ない高温の排気ガスが供給される。さらに、稼動中にエンジン本体1の発生する熱が、排気ガス浄化装置101の筐体11内に付与される。よって、コールドスタート時においても、排気ガス浄化装置101を尿素水の加水分解可能な温度にまで上昇させる時間、並びに、第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒16sをその活性化する温度にまで上昇させる時間を短縮することができる。従って、排気ガス浄化装置101は、コールドスタート時から短時間でNOxの浄化を開始することができるため、NOxの浄化性能を向上させることが可能になる。
【0060】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置102は、実施の形態1における排気ガス浄化装置101のDPF本体14及び第一SCR触媒15sを別個に設けたものである。すなわち、実施の形態2では、図4に示すように、DPF本体24を第一SCR触媒層25の上流に設けたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0061】
図4を参照すると、排気ガス浄化装置102の筐体11の内部には、上流側から下流側に向かって、酸化触媒層12、DPF本体24、第一SCR触媒層25、及び第二SCR触媒層16が順次配置されている。そして、酸化触媒層12及びDPF本体24は隣接して配置され、DPF本体24及び第一SCR触媒層25は、空間27aを介して間隔をあけて配置され、第一SCR触媒層25及び第二SCR触媒層16は、空間27bを介して間隔をあけて配置されている。
また、第一SCR触媒層25は、実施の形態1の第二SCR触媒層16と同様の形態で形成されており、図示しない基材に、実施の形態1の第一SCR触媒15sと同じ第一SCR触媒25sがコーティング等の手段によって担持されて形成されている。なお、第二SCR触媒層16全体でのアンモニアの吸着可能量は、第一SCR触媒層25全体でのアンモニアの吸着可能量より多くなっている。
【0062】
さらに、第一SCR触媒層25の上流側の端面25aにミキサ18が設けられている。
また、噴射バルブ29は、DPF本体24と第一SCR触媒層25との間となる、DPF本体24における下流側の直後の位置に設けられており、尿素水タンク20から供給される尿素水を筐体11の空間27a内(第一SCR触媒25sの上流)に噴射する。
【0063】
よって、排気ガス浄化装置102の筐体11に導入された排気ガスは、酸化触媒層12を通過してそのままDPF本体24に流入し、DPF本体24において内部に含まれるPMが捕集される。さらに、DPF本体24を流出した排気ガスは、空間27aにおいて尿素水が添加された後、第一SCR触媒層25、空間27b及び第二SCR触媒層16を通過して、排気ガス浄化装置102の外部に排出される。また、第一SCR触媒層25、空間27b及び第二SCR触媒層16を流通する際に排気ガスのNOx等の含有物が受ける作用は、実施の形態1における、触媒付DPF13の第一SCR触媒15s、空間17b及び第二SCR触媒層16において排気ガスの含有物が受ける作用とそれぞれ同様である。
【0064】
また、DPF本体24では、蓄積したPMの燃焼が定期的に実施されるが、この燃焼時の熱の影響を第一SCR触媒層25は受けることがない。
また、この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置102のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
このように、実施の形態2における排気ガス浄化装置102によれば、上記実施の形態1の排気ガス浄化装置101と同様な効果が得られる。
また、排気ガス浄化装置102が筐体11の内部にDPF本体24を備え、DPF本体24が第一SCR触媒層25の上流に設けられている。DPF本体24と第一SCR触媒層25とを別個に設けることにより、第一SCR触媒25sが受ける、DPF本体24に蓄積したPMの燃焼時の熱による影響が低減される。よって、第一SCR触媒25sの耐久性を向上させることが可能になる。
また、実施の形態2において、DPF本体24は、噴射バルブ29の上流に設けられていたが、噴射バルブ29の下流、すなわち、噴射バルブ29と第一SCR触媒層25との間に設けてもよい。
【0066】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る排気ガス浄化装置103は、実施の形態1における排気ガス浄化装置101の触媒付DPF13と第二SCR触媒層16との間に空間17bを設けないものである。すなわち、実施の形態3では、図5に示すように、第一SCR触媒35sが担持されたDPF本体34及び第二SCR触媒層36を隣接させて一体にしたものである。
【0067】
図5を参照すると、排気ガス浄化装置103の筐体11の内部には、上流側から下流側に向かって、酸化触媒層12、DPF本体34、及び第二SCR触媒層36が順次設けられている。そして、酸化触媒層12及びDPF本体34は空間37を介して間隔をあけて配置され、DPF本体34及び第二SCR触媒層36は隣接して配置されている。
また、DPF本体34には、実施の形態1の第一SCR触媒15sと同じ第一SCR触媒35sがコーティング等の手段によって担持されて形成されている。さらに、第二SCR触媒層36は、実施の形態1の第二SCR触媒層16と同様の形態で形成されており、図示しない基材に、第二SCR触媒36sがコーティング等の手段によって担持されて形成されている。なお、第二SCR触媒層36全体でのアンモニアの吸着可能量は、第一SCR触媒35sが担持されたDPF本体34全体でのアンモニアの吸着可能量より多くなっている。
【0068】
さらに、第一SCR触媒35sが担持されたDPF本体34と、第二SCR触媒層36とは、一体となっており、触媒付DPF33を構成している。
また、触媒付DPF33の上流側の端面33aにミキサ18が設けられている。
さらに、噴射バルブ39は、酸化触媒層12と触媒付DPF33との間となる、酸化触媒層12における下流側の直後の位置に設けられており、尿素水タンク20から供給される尿素水を筐体11の空間37内(第一SCR触媒35sの上流)に噴射する。
【0069】
よって、排気ガス浄化装置103の筐体11に導入された排気ガスは、酸化触媒層12を通過し、空間37において尿素水が添加された後、触媒付DPF33に流入する。流入した排気ガスは、DPF本体34において内部に含まれるPMが捕集され、さらに、DPF本体34に担持されている第一SCR触媒35sの作用のもと、排気ガスに含まれるNOxが同じく排気ガスに含まれるアンモニアによって還元浄化される。DPF本体34から流出した排気ガスはそのまま第二SCR触媒層36に流入し、第二SCR触媒36sの作用のもと、排気ガスに含まれるNOxが同じく排気ガスに含まれるアンモニアによって還元浄化される。そして、第二SCR触媒層36を流出した排気ガスは、排気ガス浄化装置103の外部に排出される。また、触媒付DPF33において、第一SCR触媒35sが担持されたDPF本体34及び第二SCR触媒層36を流通する際に排気ガスのNOx等の含有物が受ける作用は、実施の形態1における、触媒付DPF13の第一SCR触媒15s及び第二SCR触媒層16において排気ガスの含有物が受ける作用とそれぞれ同様である。
【0070】
また、排気ガス浄化装置103では、触媒付DPF33のDPF本体34を流出した排気ガスに加水分解されていない尿素水が含まれる場合、この尿素水はそのまま第二SCR触媒層36に流入する。この尿素水が全て加水分解されていないことにより、第二SCR触媒層36に流入する排気ガスに含まれているNOxの量に対して、同じく排気ガスに含まれているアンモニアの量が不足する可能性がある。このアンモニアの量の不足を防ぐために、第二SCR触媒36sのアンモニアの吸着性及び第二SCR触媒層36のアンモニアの吸着可能量はそれぞれ、実施の形態1の第二SCR触媒16sの吸着性及び第二SCR触媒層16のアンモニアの吸着可能量よりもさらに高い方が好ましい。
また、この発明の実施の形態3に係る排気ガス浄化装置103のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
このように、実施の形態3における排気ガス浄化装置103によれば、上記実施の形態1の排気ガス浄化装置101と同様な効果が得られる。
また、排気ガス浄化装置103が筐体11の内部にDPF本体34を備え、DPF本体34が第一SCR触媒35s及び第二SCR触媒36sと隣接させて一体に設けられている。これにより、筐体11の小型化を図ることができ、排気ガス浄化装置103の小型化を図ることが可能になる。
【0072】
また、実施の形態1〜3において、排気ガス浄化装置101〜103は、ターボチャージャ8を備えるエンジンアセンブリ10に設けられていたが、これに限定されるものではない。ターボチャージャ8を備えないエンジンアセンブリ10では、排気マニフォールド5の出口5aに排気ガス浄化装置101〜103を直接接続するようにしてもよい。また、排気ガス浄化装置101〜103は、エンジンアセンブリ10から離れた位置に設けられてもよい。
【0073】
また、実施の形態1〜3において、排気ガス浄化装置101〜103の筐体11は円筒状の形状を有していたが、これに限定されるものではない。筐体11は、四角柱等の多角柱状の形状、または、球状若しくは楕円体状の形状であってもよい。
また、実施の形態1〜3おいて、排気ガス浄化装置101〜103は、ミキサ18を有していたが、省略してもよい。
また、実施の形態1及び2において、第一SCR触媒15s,25sと、第二SCR触媒16sとは、1つの筐体11の内部に設けられていたが、これに限定されるものではなく、別個に設けられてもよい。そして、第一SCR触媒15s,25sと、第二SCR触媒16sとの距離は、これら触媒間を流通する過程での排気ガスの温度低下により第二SCR触媒16sの活性が低下しないように、排気ガスの温度低下を抑えるように設定することが好ましい。
また、実施の形態1〜3において、第二SCR触媒16s,36sは、第一SCR触媒15s,25s,35sより高いアンモニアの吸着性を有していたが、これに限定されるものではない。第二SCR触媒16s,36sが担持されている部位全体のアンモニアの吸着可能量が、第一SCR触媒15s,25s,35sが担持されている部位全体のアンモニアの吸着可能量より多くなっているだけでもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 エンジンアセンブリ、12 酸化触媒層(酸化触媒)、13,33 触媒付DPF、14,24,34 DPF本体(粒子状物質捕集手段)、15s,25s,35s 第一SCR触媒、25 第一SCR触媒層(第一SCR触媒)、16,36 第二SCR触媒層(第二SCR触媒)、16s,36s 第二SCR触媒、19,29,39 噴射バルブ(尿素水供給手段)、101,102,103 排気ガス浄化装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流通する経路の途中に設けられた酸化触媒と、
前記酸化触媒の下流に設けられた第一SCR触媒と、
前記第一SCR触媒の下流に設けられた第二SCR触媒と、
前記第一SCR触媒の上流に尿素水を供給するための尿素水供給手段とを備え、
前記第二SCR触媒は、前記第一SCR触媒より多くのアンモニアを吸着可能である排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第二SCR触媒の単位体積当たりでのアンモニアの吸着可能量が、前記第一SCR触媒の単位体積当たりでのアンモニアの吸着可能量より多い
請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第一SCR触媒と前記第二SCR触媒とは、間隔をあけて配置される
請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第一SCR触媒と前記第二SCR触媒とは、隣接して配置される
請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
粒子状物質捕集手段をさらに備え、
前記粒子状物質捕集手段は、前記第一SCR触媒と一体である
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
粒子状物質捕集手段をさらに備え、
前記粒子状物質捕集手段は、前記第一SCR触媒の上流に設けられる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
エンジンアセンブリに取り付けられる
請求項1〜6のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−52612(P2011−52612A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202825(P2009−202825)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】