説明

排気後処理システムのための動作方法および排気後処理システム

本発明は、排気ガス後処理システム(100)の動作方法であって、少なくとも、エンジン(10)の排気ガスからの煤を保持するための微粒子除去フィルタ(42)、および前記エンジン(10)の前記排気ガス内の窒素酸化物を還元するためのNOx除去触媒コンバータ(44)を包含する。前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の動作レジームは、前記触媒コンバータ(44)が、あらかじめ決定済みの限界より上の窒素酸化物変換効率を提供する間、前記微粒子除去フィルタ(42)の再生を実行するために互いに関して同期される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気後処理システムのための動作方法および排気後処理に関する。
【背景技術】
【0002】
排気後処理システムは、乗り物の排出物質の低減に使用される。ヘビーデューティ・トラック等の商用の乗り物のディーゼル・エンジンのための将来的な法規制は、排出物質の低減を要求する。乗り物の煤排出物質の低減には微粒子除去フィルタ・システムを使用することが可能である。通常、微粒子除去フィルタは、数日から数週間に至る運転時間の後に満杯になり、再生が行なわれなければならない。
【0003】
排気後処理システムは、特許文献1の中で開示されており、それにおいては酸化触媒が排気微粒子除去フィルタの上流に配される。そのシステムは、さらに、フィルタ内の微粒子物質の量を検出するための手段を包含し、粒子の量が限界を超えると再生信号が送出される。フィルタを再生するために、望ましい温度に到達するように関係のあるエンジン・パラメータがコントロールされる。微粒子除去フィルタの再生は、マニュアルでトリガされることも可能である。再生のために、排気ガス内に未燃焼燃料を噴射して排気温度を増加することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 882 829号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コントロールされた粒子除去フィルタ再生を可能にする排気ガス後処理システムを動作させるための方法を提供することである。本発明の別の目的は、改善された後処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって達成される。そのほかの請求項および記述は、本発明の有利な実施態様を開示する。
【0007】
排気ガス後処理システムの動作方法が提案されており、当該システムは、少なくとも、エンジンの排気ガスからの煤を保持するための微粒子除去フィルタ、およびエンジンの排気ガス内の窒素酸化物を還元するためのNOx除去触媒コンバータを包含する。微粒子除去フィルタの動作レジームおよびNOx除去触媒コンバータのそれは、触媒コンバータが、あらかじめ決定済みの限界より上の窒素酸化物変換効率を提供する間、微粒子除去フィルタの再生を実行するために互いに関して同期される。
【0008】
微粒子除去フィルタの動作レジームおよびNOx除去触媒コンバータのそれは、NOx除去触媒コンバータおよび微粒子除去フィルタの好都合な動作状態において微粒子除去フィルタが再生されることが可能となるように同期することが可能である。これは、微粒子除去フィルタの煤レベルがあらかじめ決定済みの値に到達したとき、または好都合な動作レジームにおいてNOx除去触媒フィルタが動作している時々になされることが可能である。好都合なことに、窒素酸化物NOxの増加出力、およびより高い排気ガス温度を伴うモードにおいて動作するべくエンジンが設定されることが可能である。好ましくは、酸素に代えて二酸化窒素NOが、微粒子除去フィルタ内の煤の燃焼のために提供される。これは、NOが微粒子除去フィルタ内に蓄積された煤を酸化させるNOベースの微粒子除去フィルタの再生を活動させることになる。微粒子除去フィルタ内の煤レベルが望ましいレベルまで引下げられた後は、エンジン・モードが、NOxの正常生成レベルおよび、より低い排気ガス温度を伴う正常動作状態まで戻ることが可能である。
【0009】
NOを用いた微粒子除去フィルタの能動的再生は、エンジンはもとより乗り物が走行モードにあるときになされることが可能である。微粒子除去フィルタのNOベースの再生の活動化は、乗り物が駐車している間の停止状態においてさえトリガされることが可能である。たとえば、運転者が、ボタンまたはスイッチを押すことによってマニュアルで再生を活動させることが可能であり、それが、相応じてエンジンを、増加NOx生成およびより高い排気ガス温度を伴うモードに設定する。好ましくは、充分に高い温度の排気ガス内に充分なNOが存在するとき、微粒子除去フィルタの再生が行なわれる。
【0010】
有利なことに、エンジンのその種の動作モード(『ヒート・モード』)を、排気ガス再循環、空気の質量流(たとえば、可変ジオメトリ・タービン(VGT)のタービン・ジオメトリを調整することによって)、排気ガス内への炭化水素の後噴射、インテーク・スロットル設定、および/または排気圧力ガバナ(EPG)デバイスの適切な調整によって強制することが可能である。
【0011】
好都合なことに、エンジンのヒート・モードが、上側限界と下側限界の間となる温度の排気ガスを生成する方法でコントロールされる。都合のよいことに上側温度限界は、高すぎる温度に触媒がさらされると触媒が老化するという有害な効果に起因してNOx除去触媒によって設定されることが可能であり、下側温度限界は、微粒子除去フィルタ再生の間にわたる排出物質の減少に及ぼす有害な効果に起因してNOx除去触媒によって設定されることが可能である。
【0012】
同時に、NOx除去触媒コンバータの動作レジームが高い効率を伴って窒素酸化物NOxを変換する場合には、微粒子除去フィルタの再生を排出物質ニュートラルとすること、または少なくともあらかじめ決定済みの限界内において変化させることが可能である。微粒子除去フィルタの再生動作レジームの高いNOx変換を伴うNOx除去触媒コンバータの動作レジームとの、特に選択的触媒還元(SCR)にわたる同期は、NOx除去触媒コンバータに関してNOx変換を決定することによってトリガされることが可能である。これは、たとえばNOx除去触媒コンバータの上流に1つ、その下流に1つとする2つのNOxセンサを介して容易に行なわれることが可能である。NOx除去触媒コンバータの上流のNOxセンサは、仮想センサとすること、すなわち仮想センサの『信号』が、エンジンならびにエンジンとNOx除去触媒コンバータの間の構成要素の動作パラメータから演繹されること、あるいは現実のセンサとすることが可能である。好ましくは、NOx除去触媒コンバータの下流のNOxセンサは現実のセンサである。都合のよいことに、これら2つのNOxセンサは、タイマおよび/または、微粒子除去フィルタの煤詰まりを決定する差動圧力センサと結合されることが可能である。
【0013】
好都合なことに、非常に高い温度およびフィルタの損傷を結果としてもたらす自発的煤燃焼のリスクが回避されることが可能である。微粒子除去フィルタは、コントロールされた態様で能動的に再生されることが可能である。好ましくは、二酸化窒素(NO)を用いて微粒子除去フィルタ内の煤を酸化させることによってフィルタの再生が行なわれる。その種の能動的な煤の再生は、300℃から350℃までの範囲内の低い温度において実行されることが可能である。これと対照区別して述べれば、酸素を用いる能動的再生は、600℃を超えるはるかに高い温度を必要とすることになり、それが微粒子除去フィルタの下流の触媒コンバータに対して有害な効果を有することがある。
【0014】
有利なことに、微粒子除去フィルタのより高い煤詰まりはもとより、より長い再生間隔が、その微粒子除去フィルタへの損傷のリスクを伴うことなく許容可能である。特に、微粒子除去フィルタ内の完全な煤詰まりの酸化は、必要なときにその微粒子除去フィルタの再生が中断可能であることから必須ではない。微粒子除去フィルタの再生は、その後、容易に再開されることが可能である。これと対照区別して述べれば、NOの代わりに酸素を用いる再生は、微粒子除去フィルタ内のすべての煤の酸化を必要とし、再生を停止する可能性を伴うことなく、高い排気ガス温度を生成することになる。
【0015】
この方法は、比較的低い温度において実行されることが可能である。したがって、排気ガス後処理システム内の構成要素が、高温によって引き起こされる損傷から保護されることが可能である。触媒コンバータ、たとえばディーゼル酸化触媒の老化が低減されることが可能である。特に、微粒子除去フィルタの下流の構成要素の老化が低減されることが可能である。
【0016】
好都合なことに、排気ガス温度の増加が達成されなければならない場合、バタフライ・バルブ等の増加背圧デバイスの形式の温度を上昇させるためのハードウエアを最小化すること、あるいは排気ガスへの炭化水素噴射の必要性を回避することさえも可能である。
【0017】
本発明の好都合な方法ステップによれば、動作レジームが、微粒子除去フィルタおよび/またはNOx除去触媒コンバータの動作温度、排気ガスの組成、動作レジームのうちの少なくとも1つの調整タイミング、のうちの少なくとも1つに関して同期されることが可能である。好都合なことに、NOx除去触媒コンバータの適正かつ効率的な動作のための適切な温度範囲はもとより、微粒子除去フィルタ内の煤のための酸化剤としてのNOの充分な量が達成されることが可能である。
【0018】
本発明の好都合な方法ステップによれば、窒素酸化物排出物質が一定に維持されるか、または決定済みの境界域内において修正されるようにNOx除去触媒コンバータの上流において還元剤の添加が修正されることが可能である。有利なことに、微粒子除去フィルタの再生は、排出物質に関して実質的にニュートラルで実行されることが可能である。
【0019】
本発明の好都合な方法ステップによれば、微粒子除去フィルタの下流およびNOx除去触媒コンバータの上流の排気ガスの動作温度が、NOx除去触媒コンバータが許容可能な上側温度に制限されることが可能である。高い排気ガス温度への露出に起因するNOx除去触媒コンバータの老化が低減されることが可能である。
【0020】
本発明の好都合な方法ステップによれば、微粒子除去フィルタの下流および追加の触媒コンバータの上流の排気ガスの動作温度が、当該追加の触媒コンバータが許容可能な上側温度に制限されることが可能である。高い排気ガス温度への露出に起因する当該追加の触媒コンバータの老化が低減されることが可能である。その種の追加の触媒コンバータは、排気ガス内の炭化水素および/またはアンモニア等の残留還元剤を酸化させるための酸化触媒コンバータとすることが可能である。その種の触媒コンバータは、しばしば、クリーンナップ触媒コンバータとしても知られる。
【0021】
本発明の好都合な方法ステップによれば、微粒子除去フィルタおよび/または触媒コンバータの動作レジームが、排気ガス後処理システムの1つまたは複数の構成要素の老化効果について補償されることが可能である。有利なことに、微粒子除去フィルタの再生および排出物質が最適化されることが可能である。
【0022】
本発明の好都合な方法ステップによれば、微粒子除去フィルタおよびNOx除去触媒コンバータの動作レジームが、少なくともエンジンの運転の間にわたって連続的に同期されることが可能である。微粒子除去フィルタは、NOx除去触媒コンバータが窒素および水へのNOxの変換のための高効率モードにある時々に再生されることが可能である。再生は、NOx除去触媒コンバータの動作状態があまり効率的でなくなり始めるとき停止されることが可能である。微粒子除去フィルタの再生は、NOx除去触媒コンバータが再び高効率変換モードに到達すると直ちに再開されることが可能である。時間にわたって平均されるとき、微粒子除去フィルタは、低い煤詰まりを伴う状態に維持されることが可能である。
【0023】
本発明の好都合な方法ステップによれば、微粒子除去フィルタおよびNOx除去触媒コンバータの動作レジームが、少なくともエンジンの運転の間にわたって周期的なベースで同期されることが可能である。微粒子除去フィルタの再生モードは、良好に定義された時々に実行されることが可能であり、それは、乗り物またはその類の望ましい動作モードまたは周囲状態に従って選択されることが可能である。
【0024】
本発明の別の態様によれば、発明の方法を実行するための排気ガス後処理システムが提案され、それにおいては、微粒子除去フィルタ内の煤を酸化させるための窒素酸化物の量を増加させるため、および触媒コンバータ内における窒素酸化物変換を強化するために、微粒子除去フィルタの再生段階の間にわたって微粒子除去フィルタおよびNOx除去触媒コンバータの動作レジームを互いに関して同期するべく適合されたコントロール・ユニットが提供される。都合のよいことに、排出物質について実質的にニュートラルなコントロール付きの微粒子除去フィルタの再生が達成されることが可能である。微粒子除去フィルタの再生は、コントロールされた方法で停止され、望ましい場合には再開されることが可能である。再生は、排気ガス内に充分な量の二酸化窒素を提供することによって能動的にトリガされることが可能である。微粒子除去フィルタの再生は、たとえば300℃から350℃までの間といった比較的低い温度において煤を酸化させることが可能な窒素酸化物を用いて実行されることが可能であり、対照区別して述べれば、酸素を用いた再生は、600℃から650℃までの範囲内となるはるかに高い温度において動作する。したがって、排気ガスの過熱が回避されることが可能である。
【0025】
本発明の好都合な実施態様によれば、NOx除去触媒コンバータを選択的触媒還元触媒コンバータとすることが可能である。選択的触媒還元(SCR)触媒コンバータは、NOxを効率的に窒素および水に変換することが可能である。
【0026】
本発明の好都合な実施態様によれば、酸化触媒が、微粒子除去フィルタとNOx除去触媒コンバータの間に配されることが可能である。酸化触媒は、一酸化炭素および炭化水素はもとより、NOへのNOの酸化を行なうことが可能である。
【0027】
本発明の好都合な実施態様によれば、微粒子除去フィルタがNOx除去触媒コンバータの上流に配されることが可能であり、それによってNOx除去触媒コンバータの性能が、SCR触媒の場合には、カリウム、リン、硫黄、煤、炭化水素等であり得る、いわゆる触媒毒によって否定的に影響されることから保護される。
【0028】
本発明の好都合な実施態様によれば、微粒子除去フィルタが、NOx除去触媒コンバータの下流に配され、NOx除去触媒コンバータの上流の熱質量を低減することが可能である。この方法は、NOx除去触媒コンバータが、低温運転サイクルまたはコールド・スタート条件におけるNOx変換に関して好都合な着火温度を有することを可能にする。
【0029】
本発明の好都合な実施態様によれば、クリーンナップ触媒が、微粒子除去フィルタ、NOx除去触媒コンバータ、および酸化触媒コンバータの下流に配されることが可能である。クリーンナップ触媒コンバータは、たとえば、NOx除去触媒コンバータを通じて放出される排気ガス内の可能量のアンモニアを排除することが可能である。
【0030】
本発明は、高デューティ、中または低デューティ・タイプのトラックといった商用の乗り物の中において好ましく使用されることが可能である。
【0031】
本発明は、上述の、およびそのほかの目的ならびに利点とともに、以下の図面の中に略図的に示された本発明の実施態様の詳細な説明から最良の理解が得られるであろうが、それらの実施態様に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従った排気ガス後処理システムの概略図である。
【図2】低温サイクルをシミュレーションする動的サイクルにおける包括的な温度プロファイル(図2a)およびその種の温度プロファイルを伴うエンジンの動作サイクルの間にわたって煤が蓄積される煤の蓄積ならびに再生を示す曲線(図2b)である。
【図3】NOベースの煤燃焼のための排気温度の関数として必要とされるNOx/煤の比を一例で示したグラフである。
【図4】能動的NOベースの微粒子除去フィルタ再生事象を活動させる煤のトリガ・レベルについて、いくつかの入力パラメータとともに示した図式表現である。
【図5】SCR触媒コンバータのNOx還元における性能に基づく再生ロジックのトリガを図解したフローチャートである。
【図6】排気微粒子除去フィルタ内の煤詰まりに基づく再生ロジックのトリガを図解したフローチャートである。
【図7】煤詰まりしたフィルタについて煤微粒子に関するNO変換の確率を温度の関数として図解したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面内においては、等しいかまたは類似の要素が等しい参照番号によって参照される。これらの図面は単なる略図的な表現であり、本発明の特定のパラメータを描写することは意図されていない。さらにまた図面には、本発明の代表的な実施態様だけを図示することが意図されており、したがって本発明の範囲を限定していると見なされるべきではない。
【0034】
図1は、本発明に従った排気ガス後処理システム100の概略図を示している。エンジン10には、排気ガスをエンジン10の排気マニフォールド14から吸気マニフォールド12へ再循環ライン34を通じて転送する排気ガス再循環のためのEGRシステムが装備されている。
【0035】
エンジン10の正常動作の間にわたり、取入れ口の空気が、ターボチャージャ20の圧縮機24、取入れ口ライン26、およびチャージ・エア・クーラー28を介してEGR混合チャンバ30へ導かれる。EGR混合チャンバ30においては、取入れ口の空気が排気ライン16から到来し、再循環ライン34およびECGRクーラー36に通される排気ガスの一部と混合される。EGRバルブ32は、EGR質量流を、したがってエンジンから出るNOx排出物質をコントロールする。用語NOxは、一酸化窒素NOならびに二酸化窒素NOを包含する。排気ガス流は、排気ライン16を介して導かれ、ターボチャージャ20のタービン22を通過して微粒子コントロールのための排気微粒子除去フィルタ42およびNOx除去触媒コンバータ44、たとえば排気管コントロール内のNOxのためのSCR触媒コンバータへ向かう。NOx除去触媒コンバータ44の上流には、噴射器58を配することが可能である。噴射器58は、還元剤、たとえば尿素またはアンモニアを排気ガス・ストリーム内に噴射することが可能であり、それが、NOx除去触媒コンバータ44内の触媒にわたるNOxのNへの還元を補助する。
【0036】
微粒子除去フィルタ42の上流には、酸化触媒コンバータ(図示せず)を配することが可能であり、それが排気ガス内のNOを酸化させて微粒子除去フィルタ42内において使用することが可能なNOに変える。熱の生成のために、酸化触媒コンバータは、排気ガス・ストリーム内に噴射されることが可能な炭化水素を燃焼することも可能である。
【0037】
図示されていない実施態様においては、排気ガス後処理システム100の構成要素を、酸化触媒コンバータ−−排気微粒子除去フィルタ−−酸化触媒コンバータ(オプション)−−NOx除去触媒コンバータ−−クリーンナップ触媒コンバータ(オプション)の順序で配することが可能である。
【0038】
別の図示されていない実施態様においては、排気ガス後処理システム100の構成要素を、酸化触媒コンバータ−−NOx除去触媒コンバータ−−酸化触媒コンバータ(オプション)−−排気微粒子除去フィルタ−−クリーンナップ触媒コンバータ(オプション)の順序で配することが可能である。
【0039】
排気ガス後処理システム100内のユニットを通過した後、きれいな排気ガスが環境内へ排出される。
【0040】
コントロール・ユニット70には、多数のセンサおよび排気後処理システム100内の構成要素が結合されている。コントロール・ユニット70は、単一の構成要素として図示されているが、それに代えてセンサならびに構成要素と結合される複数のコントロール・ユニットが提供されることは可能である。
【0041】
コントロール・ユニット70には、微粒子除去フィルタ42の上流の温度センサ46、および微粒子除去フィルタ42の下流かつNOx除去触媒コンバータ44の上流の温度センサ48が接続されている。差動圧力センサ50は、微粒子除去フィルタ42の煤詰まり状態と関係する情報を引渡す。NOx除去触媒コンバータ44の上流および下流には、排気ガス内のNOxの量に関係する情報を提供するNOxセンサ52、54が配されている。さらにコントロール・ユニット70には、EGRバルブ32およびターボチャージャ20を結合することが可能である。
【0042】
NOx除去触媒コンバータ44の上流のNOxセンサ52は、仮想センサとすること、すなわち仮想センサの『信号』が、エンジンならびにエンジン10とNOx除去触媒コンバータ44の間の構成要素の動作パラメータから演繹されること、あるいは現実のセンサとすることが可能である。好ましくは、NOx除去触媒コンバータ44の下流のNOxセンサ54は現実のセンサである。2つのNOxセンサ52、54にタイマおよび/または、微粒子除去フィルタ42の煤詰まりを決定する差動圧力センサ50を結合することによって、高いNOx変換を伴うNOx除去触媒コンバータ44の動作レジームを検知することが可能である。
【0043】
燃焼および排気ガス排出物質コントロールはもとより燃料効率を有意に増加するための新しいコンセプトを適用する将来のエンジンは、排気ガス後処理システム100内の構成要素の適正な働きの維持に利用可能な排気ガス・エネルギがより低くなること、すなわち排気ガス後処理システム100内の温度が低くなることを結果としてもたらすことになるであろう。すでに今日においても、特定の運転サイクル、たとえばバスのサイクル、ゴミ収集トラックのサイクルが、図2aに図解されているとおり、同じタイプの問題を呈している。
【0044】
図2aは、低温サイクルをシミュレーションする動的サイクルにおける包括的な温度プロファイルを示しており、図2bは、煤の蓄積ならびに再生を表わす曲線を図示しているが、それにおいて煤は、図2aに示された類の温度プロファイルを伴うエンジンの動作サイクルの間にわたって蓄積され、たとえば市内の運転、たとえばゴミ収集トラックのサイクルまたはバスのサイクルについて典型的な運転においてこの低温サイクルに遭遇する。
【0045】
曲線Aは、エンジン(図1の10)から排出される排気ガス温度を示しており、曲線Bは、微粒子除去フィルタ(図1の42)から出る排気ガスの排気ガス温度である。排気ガスの温度は低く、200℃に近い。
【0046】
図2bの曲線Cは、図2aに示された動的なサイクルの間にわたって微粒子除去フィルタ(図1の42)内に煤が蓄積される様子を示している。曲線Dは、NOベースの再生の結果を示しており、それにおいては微粒子除去フィルタ(図1の42)内に蓄積された煤が30分間にわたってNOによって酸化される。
【0047】
このエンジンから出る低い温度は、必要とされるエンジンから出るNOx排出物質に対して将来の厳格な排出物質の法規制の遵守が求められることと組合わされて、微粒子除去フィルタ(図1の42)の再生のために受動的な連続再生(CRT再生)を適用することを排除する。図3から理解できるとおり、煤対NOx(煤/NOx)の比および微粒子除去フィルタ(図1の42)内の優勢な温度は、乗り物の多くの運転サイクルにおいて充分でないことがある。煤を酸化させるために必要とされるNOの量は、排気ガス温度の減少とともに強く増加し、300℃を超える温度においては比較的低い。受動的CRT再生は、300℃を優に超える温度において生じることができる。
【0048】
図1を参照するが、本発明によれば、エンジン10の排気ガスからの煤を保持するための微粒子除去フィルタ42、エンジン10の排気ガス内の窒素酸化物を還元するためのNOx除去触媒コンバータ44を少なくとも包含する排気ガス後処理システム100のための動作方法が提案されており、それにおいては、微粒子除去フィルタ42内の煤を酸化させるための窒素酸化物の量を増加するため、および/または微粒子除去フィルタ42の再生段階の間にわたって触媒コンバータ44内における窒素酸化物の変換を強化するために微粒子除去フィルタ42およびNOx除去触媒コンバータ44の動作レジームが互いに関して同期される。低NOx含有量(したがって、低NO含有量)および温度の問題を解決するための可能性はいくつか存在する。
【0049】
排気ガス温度を増加させるための1つの好都合な可能性は、エンジン10の燃焼モードを変更し、EGR流を減少させることによってエンジンから出るNOx排出物質を増加することである。この方法は、より高いエネルギを生成する、より効率的な燃焼と同時にEGRクーラー36を介した冷却システムにおけるより低いエネルギ損失を結果としてもたらす。より多くのエネルギが、排気質量流を介して排気ガス後処理システム100に利用可能となる。
【0050】
排気ガス温度を増加させるための別の好都合な可能性は、たとえばエンジンへの取入れ口空気のスロットル、ターボ装置にわたる排出再循環バルブ(DRV)の使用、排気ガス・ライン内における炭化水素噴射器の使用、エンジンのシリンダ内への遅い燃料後噴射、または追加の炭化水素を燃焼させる別体のバーナ等を包含する。
【0051】
排気ガス温度を増加させるための別の好都合な可能性は、尿素の噴射特性を変更して排気システム内のアンモニア含有量を下げ、尿素の気化およびアンモニアと水へのそれの分解に必要となる総合的な熱に影響を与えることを包含する。
【0052】
排気ガス温度を増加させることによって、NOベースの微粒子除去フィルタ再生が、通常はその種のNOベースの再生を可能にしないエンジン状態の下に達成されることが可能となる。NOベースの再生は、能動的にトリガされることが可能であり、CRT再生プロセスにおけるように連続的に適用される必要がない。能動的NOベースの再生は、オプションかつ排出物質ニュートラルであり、NOx除去触媒コンバータ44のNOx還元効率、すなわちNOx除去触媒コンバータ44の変換効率、たとえばSCR触媒コンバータの変換効率への高い依存を有する。
【0053】
NOx除去触媒コンバータ44の変換効率は、NOx除去触媒コンバータ44内の触媒にわたってNOxをNへ還元する化学反応を可能にするための最低温度に依存する。還元剤として尿素を用いる場合には、決定パラメータがアンモニアへの尿素の加水分解のための温度であり、約200℃から250℃において可能になる。アンモニアを貯蔵できるSCR触媒の使用は、NへのNOxの変換反応の温度を200℃より低い温度まで下げることが可能であり、これはまた、コールド・スタートのためにも非常に都合がよい。
【0054】
アンモニアを貯蔵できる触媒についての例は、ゼオライト・ベースの材料、たとえば鉄含有ゼオライト、または銅含有ゼオライトをはじめ、バナジウム含有押出物である。
【0055】
他方、アンモニアを貯蔵できるSCR触媒の多くがゼオライト・ベースであることから、その種のSCR触媒の長い経時変化のために、最高許容可能温度のオーバーシュートを回避することが極めて好都合である。
【0056】
最高温度は、NOx除去触媒コンバータ44および/または備えられることがあるクリーンナップ触媒コンバータの材料特性によって決定され、通常は600℃から650℃までの範囲内である。
【0057】
微粒子除去フィルタ42の酸素ベースの再生については、600℃を優に超える温度が必要とされ、再生プロセスのコントロールが極めて困難である。最高温度は、温度センサ46、48によって監視することが可能である。600℃より低い温度における酸素ベースの再生を容易にするために燃料添加物、たとえば酸化セリウムが使用される場合には、再生の間にわたって最高温度を超える温度上昇を回避することが非常に重要になる。したがって、NOベースの再生は、低い温度において酸素ベースの再生より優れている。
【0058】
微粒子除去フィルタ42の能動的なNOベースの再生が実行されることになるとき、再生事象は、より詳細が図4、5、および6に示されているとおり、微粒子除去フィルタ42内の煤詰まりおよびNOx除去触媒コンバータ44のNOx変換に依存する。
【0059】
概して言えば、本発明に従った能動的NOベースの再生のための許容可能な煤詰まりは、時間の関数として発熱性酸化反応によって生成される温度上昇が酸素ベースの再生事象よりNOベースの方が低いことから、酸素ベースの再生の場合より高い。好都合なことに、NOを用いる微粒子除去フィルタ42の再生の間における最高温度の超過が、容易に防止されることが可能である。
【0060】
図4は、能動的NOベースの微粒子除去フィルタ再生事象を活動させる煤のトリガ・レベルについて、EGR入力パラメータp_a、VGT入力パラメータp_b、タイミング・パラメータp_c、ニードル開き圧力(NOP)パラメータp_dといったいくつかの入力パラメータとともに示した図式表現である。
【0061】
4つのレベルの煤詰まりSL、すなわち低煤詰まりSL_l、中煤詰まりSL_m、高煤詰まりSL_h、および臨界煤詰まりSL_cが定義される。これらの煤詰まりレベルは、異なるエンジン最適化特性に対応し、それにおいて低煤詰まりSL_lは燃料最適化エンジン特性(op_f)に対応し、中煤詰まりSL_mは温度最適化エンジン特性(op_t)に対応し、高煤詰まりSL_hは温度ならびにNOxまたはNO最適化エンジン特性(op_t,NOxに対応し、臨界煤詰まりSL_cはNOxエンジン特性を用いた緊急再生(op_ereg)に対応する。
【0062】
入力パラメータに基づいて、エンジン・コントローラ内に含めることができるエンジン・マップ(map_sel)から望ましいエンジン最適化特性を選択することが可能である。パラメータは、無段階で選択することが可能であり、すなわち明確なレベルを選択することに代えて補間された値を選択すること、たとえば1または2といったちょうどの値に代えて1.5、1.6、1.7といった値を選択することが可能である。
【0063】
図5は、SCR触媒コンバータ44のNOx還元における性能に基づく再生ロジックのトリガを図解したフローチャートを示している。排気ガス後処理システム100の構成要素のために与えられた参照番号は、図1に示されている構成要素を参照する。
【0064】
ステップ200において、温度センサおよびNOxセンサの信号が読取られる(図1における温度センサ46、48、NOxセンサ52、54)。ステップ202において、NOx除去触媒コンバータ44および/または微粒子除去フィルタ42の上流における実際の温度があらかじめ決定済みの最低温度T1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされる。特に、両方の位置からのT信号を使用することが可能である。NOx除去触媒コンバータ44内におけるNOx変換効率η_NOxがあらかじめ決定済みの最低効率η1と等しいか、あるいはそれより大きい場合。
【0065】
両方の要件が満たされる場合(フローチャート内の『yes』)には、プロセスがステップ204へ続き、煤詰まりSL、煤タイマSL_tim、再循環される排気EGRの量、ニードル開き圧力(NOP)パラメータp_d、および可変ジオメトリ・タービンVGTの状態が読取られる。状態は、多様なパラメータ、たとえばタービン速度、バッフルのタービン開き角度、ガス圧およびガス温度等々によって記述することが可能である。
【0066】
ステップ202において温度ならびにNOx変換の両方が、それぞれの必要とされるレベルに満たない場合(フローチャート内の『no』)には、ヒート・モードがステップ210においてトリガされる。ヒート・モードにおいては、窒素酸化物NOxの出力の増加および、より高い排気ガス温度を伴うモードで運転するべくエンジンが設定される。ヒート・モードは、排気ガス再循環、空気の質量流(たとえば、可変ジオメトリ・タービン(VGT)のタービン・ジオメトリを調整することによって)、排気ガス内への炭化水素の後噴射、インテーク・スロットル設定、および/またはEPGデバイスの適切な調整を包含することが可能である。EPGデバイス(EPG=排気圧力ガバナ)は、エンジンをより激しく働かせる背圧を作り出すデバイスである。
【0067】
ヒート・モードの終了時には、ステップ212において温度センサならびにNOxセンサの信号が再度読取られる。ステップ214においては、微粒子除去フィルタ42の上流におけるこのときの実際の温度があらかじめ決定済みの最低温度T1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされ、NOx除去触媒コンバータ44内のこのときのNOx変換効率η_NOxがあらかじめ決定済みの最低効率η1と等しいか否か、あるいはそれより大きいか否かがチェックされる。これに当て嵌まらない場合(フローチャート内の『no』)には、ルーチンがステップ210へ戻り、ステップ210、212、および214のシーケンスが繰り返される。最低温度T1ならびに最低効率η1を超える場合(フローチャート内の『yes』)には、ルーチンがステップ204へジャンプし、煤詰まりSL、煤タイマSL_tim、再循環される排気EGRの量、ニードル開き圧力(NOP)パラメータp_d、および可変ジオメトリ・タービンVGTの状態が読取られる。状態は、多様なパラメータ、たとえばタービン速度、バッフルのタービン開き角度、ガス圧およびガス温度等々によって記述することが可能である。
【0068】
ステップ206においては、煤詰まりSLがあらかじめ決定済みの第1のレベルSL1(低レベル)と等しいあるいはそれより大きいか否か、および/または煤タイマSL_timがあらかじめ決定済みの時間パラメータST1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされる。第1の煤レベルSL1および/または煤再生のためのあらかじめ決定済みの時間ST1に到達していない場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ208において、このコントロール・シーケンスを実行する次の機会が見積もられる。その後このルーチンは、ステップ240において終了する。
【0069】
ステップ206において第1の煤レベルSL1および/または煤再生のためのあらかじめ決定済みの時間ST1に到達している場合(フローチャート内の『yes』)には、このルーチンがステップ220へ続き、煤詰まりSLに応じて先へ進み、望ましいエンジン最適化特性がエンジン・コントローラのエンジン・マップ内において選択されることになる。
【0070】
ステップ220においては、温度センサおよびNOxセンサの信号が読取られる。その後に続くステップ222においては、煤詰まりSLが第1の低レベルSL1と第2の最低煤詰まりSL2の内にあるか否かがチェックされる。煤詰まりがこの限界内にある場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ224において、エンジン・マップ内の燃料最適化エンジン特性op_fが選択される。その後このルーチンがステップ206へジャンプし、それにおいてステップ208および240へ進むこと、またはステップ220へ戻ってステップ222を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0071】
ステップ222において煤詰まりSLが限界の外側であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ226において、煤詰まりが第2の中煤詰まりSL2と第3の高煤詰まりSL3の内にあるか否かがチェックされる。これに当て嵌まる場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ228においてエンジン・マップ内の温度最適化エンジン特性op_tが選択された後にルーチンがステップ206へジャンプし、それにおいてステップ208および240へ進むこと、またはステップ220へ戻ってステップ222を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0072】
ステップ226において煤詰まりSLが限界の外側であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ230において、煤詰まりが第3の高煤詰まりSL3と第4の臨界煤詰まりSL4の内にあるか否かがチェックされる。これに当て嵌まる場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ232においてエンジン・マップ内の温度およびNOx最適化エンジン特性op_t,NOxが選択された後にルーチンがステップ206へジャンプし、それにおいてステップ208および240へ進むこと、またはステップ220へ戻ってステップ222を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0073】
ステップ230において煤詰まりSLが限界の外側であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ234において、煤詰まりが第4の臨界煤詰まりSL4より大きいか否かがチェックされる。これに当て嵌まる場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ236においてエンジン・マップ内の緊急NOx最適化エンジン特性op_eregが選択された後にルーチンがステップ206へジャンプし、それにおいてステップ208および240へ進むこと、またはステップ220へ戻ってステップ222を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0074】
ステップ230において、煤詰まりSLが臨界煤詰まりSL4より下であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ルーチンがステップ206へ戻り、それにおいてステップ208および240へ進むこと、またはステップ220へ戻ってステップ222を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0075】
図6は、排気微粒子除去フィルタ42内の煤詰まりに基づく再生ロジックのトリガを図解したフローチャートを図示している。排気ガス後処理システム100の構成要素のために与えられた参照番号は、図1に示されている構成要素を参照する。
【0076】
ステップ300においては、煤詰まりSL、煤タイマSL_tim、再循環される排気EGRの量、ニードル開き圧力(NOP)パラメータp_d、および可変ジオメトリ・タービンVGTの状態が読取られる。状態は、多様なパラメータ、たとえばタービン速度、バッフルのタービン開き角度、ガス圧およびガス温度等々によって記述することが可能である。ステップ302においては、煤詰まりSLがあらかじめ決定済みの第1のレベルSL1(低レベル)と等しいあるいはそれより大きいか否か、および/または煤タイマSL_timがあらかじめ決定済みの時間パラメータST1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされる。第1の煤レベルSL1および/または煤再生のためのあらかじめ決定済みの時間ST1に到達していない場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ304において、このコントロール・シーケンスを実行する次の機会が見積もられる。その後このルーチンは、ステップ340において終了する。
【0077】
ステップ302において第1の煤レベルSL1および/または煤再生のためのあらかじめ決定済みの時間ST1に到達している場合(フローチャート内の『yes』)には、このルーチンがステップ306へ続き、それにおいて温度センサおよびNOxセンサの信号が読取られる(図1における温度センサ46、48、NOxセンサ52、54)。
【0078】
その後に続くステップ308においては、NOx除去触媒コンバータ44および/または微粒子除去フィルタ42の上流における実際の温度があらかじめ決定済みの最低温度T1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされ、NOx除去触媒コンバータ44内のNOx変換効率η_NOxがあらかじめ決定済みの最低効率η1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされる。両方の要件が満たされる場合(フローチャート内の『yes』)には、このルーチンがステップ320へ続き、煤詰まりSLに応じて先へ進み、望ましいエンジン最適化特性がエンジン・コントローラのエンジン・マップ内において選択されることになる。
【0079】
ステップ308において温度ならびにNOx変換の両方が、それぞれの必要とされるレベルに満たない場合(フローチャート内の『no』)には、ヒート・モードがステップ310において実行される。ヒート・モードにおいては、窒素酸化物NOxの出力の増加およびより高い排気ガス温度を伴うモードで運転するべくエンジンが設定される。ヒート・モードは、排気ガス再循環、空気の質量流(たとえば、可変ジオメトリ・タービン(VGT)のタービン・ジオメトリを調整することによって)、排気ガス内への炭化水素の後噴射、インテーク・スロットル設定、および/またはEPGデバイスの適切な調整を包含することが可能である。
【0080】
ヒート・モードの終了時には、ステップ312において温度センサならびにNOxセンサの信号が再度読取られる。ステップ314においては、NOx除去触媒コンバータ44および/または微粒子除去フィルタ42の上流におけるこのときの実際の温度があらかじめ決定済みの最低温度T1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされ、NOx除去触媒コンバータ44内のこのときのNOx変換効率η_NOxがあらかじめ決定済みの最低効率η1と等しいあるいはそれより大きいか否かがチェックされる。これに当て嵌まらない場合(フローチャート内の『no』)には、ルーチンがステップ310へ戻り、ステップ310、312、および314のシーケンスが繰り返される。最低温度T1ならびに最低効率η1を超える場合(フローチャート内の『yes』)には、ルーチンがステップ320へジャンプする。
【0081】
ステップ320においては、煤詰まりSLが第1の低レベルSL1と第2の最低煤詰まりSL2の内にあるか否かがチェックされる。煤詰まりがこの限界内にある場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ322において、エンジン・マップ内の燃料最適化エンジン特性op_fが選択される。その後このルーチンがステップ302へジャンプし、それにおいてステップ304および340へ進むこと、またはステップ306へ戻ってステップ308を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0082】
ステップ320において煤詰まりSLが限界の外側であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ324において、煤詰まりが第2の中煤詰まりSL2と第3の高煤詰まりSL3の内にあるか否かがチェックされる。これに当て嵌まる場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ326においてエンジン・マップ内の温度最適化エンジン特性op_tが選択された後にルーチンがステップ302へジャンプし、それにおいてステップ304および340へ進むこと、またはステップ306へ戻ってステップ308を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0083】
ステップ324において煤詰まりSLが限界の外側であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ328において、煤詰まりが第3の高煤詰まりSL3と第4の臨界煤詰まりSL4の内にあるか否かがチェックされる。これに当て嵌まる場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ330においてエンジン・マップ内の温度およびNOx最適化エンジン特性op_t,NOxが選択された後にルーチンがステップ302へジャンプし、それにおいてステップ304および340へ進むこと、またはステップ306へ戻ってステップ308を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0084】
ステップ328において煤詰まりSLが限界の外側であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ステップ332において、煤詰まりが第4の臨界煤詰まりSL4より大きいか否かがチェックされる。これに当て嵌まる場合(フローチャート内の『yes』)には、ステップ334においてエンジン・マップ内の緊急NOx最適化エンジン特性op_eregが選択された後にルーチンがステップ302へジャンプし、それにおいてステップ304および340へ進むこと、またはステップ306へ戻ってステップ308を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0085】
ステップ332において、煤詰まりSLが臨界煤詰まりSL4より下であると決定された場合(フローチャート内の『no』)には、ルーチンがステップ302へ戻り、それにおいてステップ304および340へ進むこと、またはステップ306へ戻ってステップ308を続けることのうちのいずれかが決定される。
【0086】
図7は、煤詰まりしたフィルタについて煤微粒子に関するNO変換の確率を温度の関数として図解したグラフである。例として述べるが、微粒子除去フィルタは、2g/lの煤詰まりを伴う。観察できるであろうが、NO変換の確率は、低温において低く、高温において高い。例として述べるが、NO変換は、約220℃において10%であるが、約320℃においてはNO変換が50%、約430℃においては90%となる。
【0087】
たとえば、微粒子除去フィルタの上流に酸化触媒コンバータが配される場合には、それが、排気ガス内に含まれるNOを、その後に続いて微粒子除去フィルタ内の煤の燃焼のために使用されることが可能なNOに酸化させるだけでなく、排気ガス・ストリーム内に噴射される炭化水素を燃焼させることによって熱を生成することも可能である。
【0088】
排気温度が低すぎて微粒子除去フィルタの効率的なNOベースの再生が得られない場合には、温度を増加させるために炭化水素、すなわち燃料の噴射が好都合である。炭化水素は、微粒子除去フィルタの上流の酸化触媒上において燃焼されることが可能であり、当該酸化触媒から排出される排気ガスの温度を増加する。酸化触媒が炭化水素を酸化させているとき、同時にNOからNOへの変換を行なうことは可能でない。これは煤の再生をまったく導かないか、またはそれが低い。炭化水素による酸化触媒の『毒作用』を回避するためには、炭化水素の短い噴射パルスを使用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 エンジン
12 吸気マニフォールド
14 排気マニフォールド
16 排気ライン
20 ターボチャージャ
22 タービン
24 圧縮機
26 取入れ口ライン
28 チャージ・エア・クーラー
30 EGR混合チャンバ
32 EGRバルブ
34 再循環ライン
36 EGRクーラー
42 排気微粒子除去フィルタ、微粒子除去フィルタ
44 NOx除去触媒コンバータ、SCR触媒コンバータ
46 温度センサ
48 温度センサ
50 差動圧力センサ
52 NOxセンサ
54 NOxセンサ
58 噴射器
70 コントロール・ユニット
100 排気ガス後処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス後処理システム(100)の動作方法であって、少なくとも、エンジン(10)の排気ガスからの煤を保持するための微粒子除去フィルタ(42)、および前記エンジン(10)の前記排気ガス内の窒素酸化物を還元するためのNOx除去触媒コンバータ(44)を包含し、それにおいて前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の動作レジームは、前記触媒コンバータ(44)が、あらかじめ決定済みの限界より上の窒素酸化物変換効率を提供する間、前記微粒子除去フィルタ(42)の再生を実行するために互いに関して同期される、方法。
【請求項2】
前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の動作レジームは、
− 前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の動作温度、
− 排気ガスの組成、
− 微粒子除去フィルタ再生のタイミングおよび前記NOx除去触媒コンバータ(44)内の高い窒素変換、
のうちの少なくとも1つによって同期される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微粒子除去フィルタ(42)の再生のために、ある量の二酸化窒素が提供され、特にそれにおいて二酸化窒素の量が増加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
窒素酸化物排出物質が一定に維持されるか、または決定済みの境界域内において修正されるように前記NOx除去触媒コンバータ(44)の上流において還元剤の添加が修正される請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記微粒子除去フィルタ(42)の下流および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の上流の前記排気ガスの動作温度は、前記触媒コンバータ(44)が許容可能な上側温度に制限される、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記微粒子除去フィルタ(42)の下流および追加の触媒コンバータの上流の前記排気ガスの動作温度は、前記追加の触媒コンバータが許容可能な上側温度に制限される、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記微粒子除去フィルタ(42)および/または前記触媒コンバータ(44)の前記動作レジームは、前記排気ガス後処理システム(100)の1つまたは複数の構成要素の老化効果について補償される、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の前記動作レジームは、少なくとも前記エンジン(10)の運転の間にわたって連続的に同期される、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の前記動作レジームは、少なくとも前記エンジン(10)の運転の間にわたって周期的なベースで同期される、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の方法を実行するための排気ガス後処理システム(100)において、前記微粒子除去フィルタ(42)内の煤を酸化させるための窒素酸化物の量を増加させるため、および/または、前記触媒コンバータ(44)内における窒素酸化物変換を強化するために、前記微粒子除去フィルタ(42)の再生段階の間にわたって前記微粒子除去フィルタ(42)および前記NOx除去触媒コンバータ(44)の動作レジームを互いに関して同期するべく適合されたコントロール・ユニット(70)が提供されるシステム。
【請求項11】
前記NOx除去触媒コンバータ(44)は選択的還元触媒コンバータである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
酸化触媒が、前記微粒子除去フィルタ(42)と前記NOx除去触媒コンバータ(44)の間に配される、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項13】
前記微粒子除去フィルタ(42)は、前記NOx除去触媒コンバータ(44)の上流に配される、請求項9乃至11のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記微粒子除去フィルタ(42)は、前記NOx除去触媒コンバータ(44)の下流に配される、請求項9乃至11のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
クリーンナップ触媒が、前記微粒子除去フィルタ(42)、前記NOx除去触媒コンバータ(44)、および前記酸化触媒コンバータの下流に配される、請求項9乃至13のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
排気ガス後処理システムの動作方法であって、少なくとも、エンジンの排気ガスからの煤を保持するための微粒子除去フィルタ、および前記エンジンの前記排気ガス内の窒素酸化物を還元するためのNOx除去触媒コンバータを包含し、それにおいて前記微粒子除去フィルタおよび前記NOx除去触媒コンバータの動作レジームは、前記触媒コンバータが、あらかじめ決定済みの限界より上の窒素酸化物変換効率を提供する間、前記微粒子除去フィルタの再生を実行するために互いに関して同期される方法。
【請求項17】
前記微粒子除去フィルタおよび前記NOx除去触媒コンバータの動作レジームは、
− 前記微粒子除去フィルタおよび前記NOx除去触媒コンバータの動作温度、
− 排気ガスの組成、
− 微粒子除去フィルタ再生のタイミングおよび前記NOx除去触媒コンバータ内の高い窒素変換、
のうちの少なくとも1つによって同期される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記微粒子除去フィルタの再生のために、ある量の二酸化窒素が提供され、特にそれにおいて二酸化窒素の量が増加される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
窒素酸化物排出物質が一定に維持されるか、または決定済みの境界域内において修正されるように前記NOx除去触媒コンバータの上流において還元剤の添加が修正される請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記微粒子除去フィルタの下流および前記NOx除去触媒コンバータの上流の前記排気ガスの動作温度は、前記触媒コンバータが許容可能な上側温度に制限される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記微粒子除去フィルタの下流および追加の触媒コンバータの上流の前記排気ガスの動作温度は、前記追加の触媒コンバータが許容可能な上側温度に制限される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記微粒子除去フィルタおよび/または前記触媒コンバータ(44)の前記動作レジームは、前記排気ガス後処理システムの1つまたは複数の構成要素の老化効果について補償される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記微粒子除去フィルタおよび前記NOx除去触媒コンバータの前記動作レジームは、少なくとも前記エンジンの運転の間にわたって連続的に同期される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記微粒子除去フィルタおよび前記NOx除去触媒コンバータの前記動作レジームは、少なくとも前記エンジンの運転の間にわたって周期的なベースで同期される、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法を実行するための排気ガス後処理システムにおいて、前記微粒子除去フィルタ内の煤を酸化させるための窒素酸化物の量を増加させるため、および/または、前記触媒コンバータ内における窒素酸化物変換を強化するために、前記微粒子除去フィルタの再生段階の間にわたって前記微粒子除去フィルタおよび前記NOx除去触媒コンバータの動作レジームを互いに関して同期するべく適合されたコントロール・ユニットが提供されるシステム。
【請求項26】
前記NOx除去触媒コンバータは選択的還元触媒コンバータである、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
酸化触媒が、前記微粒子除去フィルタと前記NOx除去触媒コンバータの間に配される、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記微粒子除去フィルタは、前記NOx除去触媒コンバータの上流に配される、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記微粒子除去フィルタは、前記NOx除去触媒コンバータの下流に配される、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
クリーンナップ触媒が、前記微粒子除去フィルタ、前記NOx除去触媒コンバータ、および前記酸化触媒コンバータの下流に配される、請求項25に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−520419(P2012−520419A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553974(P2011−553974)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/SE2009/000136
【国際公開番号】WO2010/104422
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】