説明

排気系熱交換器の車体搭載構造

【課題】排気系熱交換器内での気泡の滞留を抑制することができる排気系熱交換器の車体搭載構造を得る。
【解決手段】車両用排気系搭載構造10は、長手方向の一端側が他端側よりも車体上下方向の上側に位置するように傾斜して配置され排気ガスとエンジン冷却水との熱交換を行う排気系熱交換器14と、該排気系熱交換器14内のエンジン冷却水の流路における車体上下方向の最上部に車体上下方向の上側から連通された冷却水出口パイプ64とを備えている。冷却水出口パイプ64は、エンジン冷却水中の気泡を排出するためのガス抜き部としても機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の排気ガスと冷媒との熱交換を行う排気系熱交換器を車体に搭載するための排気系熱交換器の車体搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気ガスを排出するための排気系における触媒コンバータとマフラとの間に、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換を行う排気系熱交換器を配設した構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−105464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、排気系熱交換器内での気泡の滞留を抑制することができる排気系熱交換器の車体搭載構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、長手方向の一端側が他端側よりも車体上下方向の上側に位置するように傾斜して配置され、排気ガスと冷却液との熱交換を行う排気系熱交換器と、前記排気系熱交換器の前記冷却液の流路における車体上下方向の最上部に車体上下方向の上側から連通されたガス抜き部と、を備えている。
【0005】
請求項1記載の排気系熱交換器の車体搭載構造では、例えば排気ガスを排出するエンジンの停止等に伴って冷却液の循環が停止された場合に、排気系熱交換器の余熱によって冷却液が沸騰して気泡が生じ得る。この気泡は、排気系熱交換器の冷却液流路における最上部に連通するガス抜き部に集まり、又は該ガス抜き部を経由して排出され、排気系熱交換器内での気泡の滞留を抑制することができる。
【0006】
請求項2記載の発明に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、請求項1記載の排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記ガス抜き部は、前記排気系熱交換器における冷却液の流路に対する該冷却液の入口部及び出口部の少なくとも一方である。
【0007】
請求項2記載の排気系熱交換器の車体搭載構造では、車体に対し傾斜して支持された排気系熱交換器における冷却液流路の最上部に該冷却液の入口部及び出口部の何れか一方又は双方が設けられており、該入口部又は出口部から、冷却液流路で生成された気泡が排出される。
【0008】
請求項3記載の発明に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、請求項1又は請求項2記載の排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記排気系熱交換器は、外郭を成すシェルが前記冷却液の流路の外壁を構成しており、前記ガス抜き部は、前記シェルの車体上下方向の最上部に設けられている。
【0009】
請求項3記載の排気系熱交換器の車体搭載構造では、冷却液流路が排気系熱交換器の最外層を構成しているので、換言すれば、冷却液はシェルを介して外気と熱交換(外気による冷却)可能であるため、沸騰による気泡発生自体が抑制される。また、シェルにガス抜き部を設けるため、構造が簡単である。
【0010】
また、以下の態様の排気系熱交換器の車体搭載構造が考えられる。
【0011】
第1の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、車体フロアの下側に配置され排気ガスと冷媒との熱交換を行う排気系熱交換器の車体上下方向における最下部が、車体骨格の車体上下方向における最下部よりも車体上下方向の上側に位置している。
【0012】
この車体搭載構造では、車体骨格が排気系熱交換器よりも車体上下方向の下方に張り出しているため、路面干渉を生じる場合には、車体骨格が路面に当接し易い。このため、排気系熱交換器は、路面干渉に対し保護される。
【0013】
このように、本態様の排気系熱交換器の車体搭載構造では、車体フロア下に配置された排気系熱交換器を良好に保護することができる。なお、本発明における排気系熱交換器(における最下部)は、排気ガスと冷媒との熱交換が行われる部分(の最下部)であれば足り、付属部品等が車体骨格よりも車体上下方向の下側に突出していても良い。
【0014】
第2の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第1の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記車体骨格は、前記排気系熱交換器の長手方向一端側に対し車体上下方向の下側に位置する第1部材と、前記排気系熱交換器の長手方向他端側に対し車体上下方向の下側に位置する第2部材とを含む。
【0015】
この車体搭載構造では、排気系熱交換器の長手方向の一端側が第1部材によって路面干渉等に対し保護されると共に、該熱交換器の長手方向の他端側が第2部材によって路面干渉等に対し保護されている。このため、排気系熱交換器が路面等と干渉することが効果的に防止される。
【0016】
第3の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第2の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記排気系熱交換器は、車体前後方向に長手とされており、前記第1部材の車体上下方向の最下部は、該第1部材に対し車体前後方向の後側に位置する前記第2部材の車体上下方向の最下部よりも車体上下方向の上側に位置する。
【0017】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、第1及び第2部材のうち相対的に車体前後方向の後側に位置する第2部材が、第1部材に対して車体上下方向の下側に張り出しているため、車体フロア下を流れる走行風の一部は、第2部材によって流れ方向が排気系熱交換器側に案内される。これにより、例えば排気系熱交換器の冷媒が過熱されることが防止される。
【0018】
第4の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第1〜第3の何れか1つの態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記排気系熱交換器は、車体前後方向に長手とされ、前記車体フロアに設けられたフロアトンネルに配置されており、前記車体骨格は、それぞれ車体前後方向に長手とされ、前記車体フロアにおける前記フロアトンネルの車体上下方向下向きの開口端部に対する車幅方向両側から前記排気系熱交換器よりも車体上下方向下側に突出して設けられた一対のトンネルサイドリインフォースメントを含む。
【0019】
この車体搭載構造では、車体フロアの外面(車体上下方向の下面)側に、フロアトンネルの下向き開口端に沿ってトンネルサイドリインフォースメントが配設されており、このトンネルサイドリインフォースメントの車体上下方向の下端が、フロアトンネルに配設された排気系熱交換器の最下部よりも車体上下方向の下側に張り出している。すなわち、排気系熱交換器は、その長手方向の各部がトンネルサイドリインフォースメントによって、路面等と干渉することが効果的に防止される。
【0020】
第5の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、車体前後方向に長手とされて車体フロアの下側に配置され、排気ガスと冷媒との熱交換を行う排気系熱交換器と、前記排気系熱交換器の前端側に対し車体上下方向の下側に配置された第1部材と、前記排気系熱交換器の後端側に対する車体上下方向の下側に配置されると共に、車体上下方向の最下部が前記第1部材の車体上下方向の最下部よりも車体上下方向の下側に位置する第2部材と、を備えている。
【0021】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、第2部材が、該第2部材の車体前後方向の前側に位置する第1部材に対して車体上下方向の下側に張り出しているため、車体フロア下を流れる走行風の一部は、第2部材によって排気系熱交換器側に案内(流れ方向が変換)される。これにより、例えば排気系熱交換器の冷媒が過熱されることが防止される。
【0022】
第6の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第3又は第5の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記第1部材における車体上下方向の上側の面は、車体前後方向の前側よりも後側が車体上下方向の上側に位置するように傾斜した傾斜部を含む。
【0023】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、車体フロア下を流れる走行風の一部は、第1部材の傾斜面によって排気系熱交換器側に案内(流れ方向が変換)される。これにより、例えば排気系熱交換器の冷媒が過熱されることが効果的に防止される。
【0024】
第7の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、車体前後方向に長手とされて車体フロアの下側に配置され、排気ガスと冷媒との熱交換を行う排気系熱交換器と、前記排気系熱交換器の前端側に対し車体上下方向の下側に配置され、車体上下方向の上側及び車体前後方向の前側を共に向くように傾斜した傾斜面を有する車体骨格部材と、を備えている。
【0025】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、車体フロア下を流れる走行風の一部は、車体骨格部材の傾斜面によって排気系熱交換器側に案内(流れ方向が変換)される。これにより、例えば排気系熱交換器の冷媒が過熱されることが効果的に防止される。
【0026】
第8の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第1〜第7の何れか1つの態様に係る記載の排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記排気系熱交換器は、車体前後方向に長手とされ、かつ車体前後方向の前側が後側よりも車体上下方向の上側に位置するように傾斜して配置されている。
【0027】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、排気系熱交換器の下端が車体前後方向の前側を向くように該熱交換器が車体に対し傾斜して支持されている。このため、排気系熱交換器は、車体前後方向の前端側が路面上の障害物等に干渉する(引っ掛かる)ことが防止される。
【0028】
第9の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第8の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記排気系熱交換器は、前記冷媒として冷却液を流通させるようになっており、該冷却液の流路における車体上下方向の最上部に車体上下方向の上側から連通されたガス抜き部を有する。
【0029】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、例えば排気ガスを排出するエンジンの停止等に伴って冷却液の循環が停止された場合に、排気系熱交換器の余熱によって冷却液が沸騰して気泡が生じ得る。この気泡は、排気系熱交換器の冷却液流路における最上部に連通するガス抜き部に集まり、又は該ガス抜き部を経由して排出され、排気系熱交換器内での気泡の滞留を抑制することができる。
【0030】
第10の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、長手方向の一端側が他端側よりも車体上下方向の上側に位置するように傾斜して配置され、排気ガスと冷却液との熱交換を行う排気系熱交換器と、前記排気系熱交換器の前記冷却液の流路における車体上下方向の最上部に車体上下方向の上側から連通されたガス抜き部と、を備えている。
【0031】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、例えば排気ガスを排出するエンジンの停止等に伴って冷却液の循環が停止された場合に、排気系熱交換器の余熱によって冷却液が沸騰して気泡が生じ得る。この気泡は、排気系熱交換器の冷却液流路における最上部に連通するガス抜き部に集まり、又は該ガス抜き部を経由して排出され、排気系熱交換器内での気泡の滞留を抑制することができる。
【0032】
第11の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第9又は第10の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記ガス抜き部は、前記排気系熱交換器における冷却液の流路に対する該冷却液の入口部及び出口部の少なくとも一方である。
【0033】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、車体に対し傾斜して支持された排気系熱交換器における冷却液流路の最上部に該冷却液の入口部及び出口部の何れか一方又は双方が設けられており、該入口部又は出口部から、冷却液流路で生成された気泡が排出される。
【0034】
第12の態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、第9〜第11の何れか1つの態様に係る排気系熱交換器の車体搭載構造において、前記排気系熱交換器は、外郭を成すシェルが前記冷却液の流路の外壁を構成しており、前記ガス抜き部は、前記シェルの車体上下方向の最上部に設けられている。
【0035】
この排気系熱交換器の車体搭載構造では、冷却液流路が排気系熱交換器の最外層を構成しているので、換言すれば、冷却液はシェルを介して外気と熱交換(外気による冷却)可能であるため、沸騰による気泡発生自体が抑制される。また、シェルにガス抜き部を設けるため、構造が簡単である。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように本発明に係る排気系熱交換器の車体搭載構造は、排気系熱交換器内での気泡の滞留を抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施形態に係る排気系熱交換器の車体搭載構造が適用された車両用排気系搭載構造10について、図1乃至図10に基づいて説明する。以下、車両用排気系搭載構造10の排気ガス系統の概略全体構成、排気系熱交換器の構成、車両用排気系搭載構造10が搭載される車体Bの概略全体構成、車体Bに対する排気系熱交換器14の搭載構造(搭載姿勢)の順で説明することとする。なお、以下の説明で、単に上流・下流の語を用いるときは、排気ガスの流れ方向の上流・下流を示すものとする。また、各図に示す矢印FR、矢印UP、矢印Wは、車両用排気系搭載構造10が適用された自動車の車体前後方向の前側(走行方向)、車体上下方向の上側、車幅方向をそれぞれ示すものとする。
【0038】
(排気ガス系統の概略全体構成)
図9(A)には、車両用排気系搭載構造10の概略全体構成が底面図にて示されており、図9(B)には車両用排気系搭載構造10が側面図にて示されている。これらの図に示される如く、車両用排気系搭載構造10は、上流から順に、排気ガスを浄化するための触媒コンバータ12、エンジンの暖機促進や暖房維持のために排気ガスの熱回収する排気系熱交換器14、排気音を低減(消音)するためのマフラ16が設けられ、これらの機器が排気管18にて直列に連通されている。
【0039】
下流端が触媒コンバータ12の上流側に接続された排気管18Aは、上流端が図示しない内燃機関エンジンの排気マニホルドに接続されており、該内燃機関エンジンの排気ガスが導入されるようになっている。また、触媒コンバータ12と排気系熱交換器14とは、それぞれの長手方向が車体前後方向に略一致され、排気管18Bによって平面視で略直線状に連結されている。この実施形態では、排気管18A、触媒コンバータ12、排気管18B、排気系熱交換器14が平面視で略直線状に配設されている。一方、上流端が排気系熱交換器14の下流端に接続された排気ガス流出管部としての排気管18Cは、平面視で車体前後方向に対し傾斜している。これにより、車両用排気系搭載構造10は、例えば排気系熱交換器14の後方に配置された図示しない燃料タンクを回避している。排気管18Cの詳細構成については後述する。
【0040】
マフラ16は、長手方向が車体前後方向に略一致されており、例えば上記した燃料タンクと車幅方向に並列して配置される。排気管18Cの下流端は、マフラインレットパイプ22の上流端に接続されている。マフラインレットパイプ22は、その上流部22Aが排気管18Cと略一直線を成すように車体前後方向に対し傾斜すると共に、その主にマフラ16内に位置する下流部22Bが車体前後方向に沿って長手とされ、これら上流部22Aと下流部22Bとを連続するように中間部22Cが湾曲している。また、上流部24Aがマフラ16内に配置されたマフラアウトレットパイプ24は、下流端が排気ガスの大気開放部18Dとされた排気管18Eに一体化されている。
【0041】
以上説明したような車両用排気系搭載構造10のレイアウトは、例えば小型のエンジン前置き前輪駆動車(FF車)に適用される。
【0042】
(排気系熱交換器の構造)
排気系熱交換器14は、排気ガスの熱を冷媒又は冷却液としてのエンジン冷却水に回収する構成とされており、図10に示される如く該排気ガスの流路とエンジン冷却水の流路とを隔てる隔壁パイプ26を備えている。この実施形態では、隔壁パイプ26は、そのパイプ壁の内外に螺旋状に形成された螺旋溝26A、26Bが形成されている。螺旋溝26A、螺旋溝26Bは、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換を行う熱交換部14Aの略全長に亘り形成されており、隔壁パイプ26の前後は、熱交換部14Aに対し前後にそれぞれ延設された排気ガス導入部26C、排気ガス排出部26Dとされている。
【0043】
隔壁パイプ26の内側には、略円筒状に形成されたインナパイプ28が同軸的に配置されている。この隔壁パイプ26とインナパイプ28との間に形成された空間が、排気系熱交換器14の排気ガス流路30とされている。また、隔壁パイプ26は、略円筒状に形成されると共に同軸的に配置されたアウタパイプ32にて外周側から覆われている。この隔壁パイプ26とアウタパイプ32との間の空間が排気系熱交換器14のエンジン冷却水流路34とされている。
【0044】
排気系熱交換器14では、排気ガス流れ方向におけるエンジン冷却水流路34の形成範囲が、排気ガスとエンジン冷却水との熱交換が行われる熱交換部14Aとされており、インナパイプ28は熱交換部14Aよりも上流側及び下流側に突出している。この排気系熱交換器14におけるインナパイプ28内の空間は、排気系熱交換器14における熱交換部14Aをバイパスするためのバイパス流路36とされている。
【0045】
より具体的には、図10に示される如く、インナパイプ28の上流端28Aは、排気管18Bの下流端が接続されており、インナパイプ28の下流端28Bは、排気ガス案内パイプ38の上流端38Aに略同軸的に接続されている。なお、排気ガス案内パイプ38に代えて、インナパイプ28を下流側に延長しても良い。また、隔壁パイプ26におけるアウタパイプ32(エンジン冷却水流路34)よりも上流に突出した排気ガス導入部26C(熱交換部14Aよりも上流部分)の前端は、インナパイプ28の上流端28Aの外周面に気密状態で接続されている。さらに、隔壁パイプ26におけるアウタパイプ32(エンジン冷却水流路34)よりも下流に突出した隔壁パイプ26の排気ガス排出部26D(熱交換部14Aよりも下流部分)は、エンドパイプ40を介して排気ガス案内パイプ38に気密状態で接続されている。
【0046】
そして、インナパイプ28における隔壁パイプ26の排気ガス導入部26Cの内側に位置する部分には、該インナパイプ28内の空間であるバイパス流路36と排気系熱交換器14の排気ガス流路30と連通する透孔42が設けられている。すなわち、透孔42が排気ガス流路30とバイパス流路36との分岐部を構成している。一方、エンドパイプ40には、排気ガス流路30の内外を連通する透孔44が設けられている。透孔44及び排気ガス案内パイプ38の下流側開口端38Bは、上流側開口端46Aがエンドパイプ40に気密状態で接続された排気系熱交換器後部シェル46内の空間である排気ガス出口ヘッダ48において、それぞれ開口している。
【0047】
したがって、排気系熱交換器14では、熱交換部14Aをバイパスしてバイパス流路36を通過した排気ガスは、排気ガス案内パイプ38の内側を経由して排気系熱交換器後部シェル46内の排気ガス出口ヘッダ48に至り、一方、透孔42を経由して排気ガス流路30を通過した排気ガスは、排気ガス案内パイプ38の外側、透孔44を経由して排気系熱交換器後部シェル46内の排気ガス出口ヘッダ48に至る構成とされている。
【0048】
さらに、排気系熱交換器14は、排気ガス案内パイプ38の下流側開口端38Bを開閉するためのバルブ装置50を備えている。バルブ装置50は、排気系熱交換器後部シェル46に支持された回動軸52廻りに回動することで、排気ガス案内パイプ38の下流側開口端38Bを閉止する閉止姿勢(図10の実線参照)と、該閉止位置から矢印A方向に回動して排気ガス案内パイプ38の下流側開口端38Bを開放する開放姿勢(図10の想像線参照)とをとり得るバルブ54を備えている。閉止姿勢に位置するバルブ54は、排気ガス案内パイプ38における下流側開口端38B廻りに設けられた弁座(シール)55に当接する構成とされている。
【0049】
また、バルブ装置50は、バルブ54を閉止位置に偏倚させるための付勢力を回動軸52に付与するリターンスプリング56を備えている。これにより、排気系熱交換器14では、排気ガスの圧力が低い場合には、リターンスプリング56の付勢力によってバルブ54が排気ガス案内パイプ38すなわちバイパス流路36を閉止し、排気ガスが熱交換部14Aの排気ガス流路30を流通するようになっている。一方、排気ガスの圧力が所定値以上になると、バルブ54はリターンスプリング56の付勢力に抗して排気ガスの圧力に応じた開放姿勢をとるようになっている。この実施形態では、上記した内燃機関エンジンが最高出力を発生する場合の排気ガスの圧力によって、バルブ54は、排気ガスの圧力による最大開度となる開放姿勢をとる設定とされている。
【0050】
また、この実施形態では、バルブ装置50は、排気ガスと熱交換を行うエンジン冷却水の温度が所定温度以上である場合には、排気ガスの圧力に依らず強制的にバルブ54を開放姿勢で保持するようになっている。具体的には、アウタパイプ32における排気ガス流れ方向の下流側には、内部がエンジン冷却水流路34に連通した第1冷却水入口パイプ58が接続されている。第1冷却水入口パイプ58の端部には、サーモアクチュエータ60が配設されており、サーモアクチュエータ60は、内部に充填したワックスの熱膨張によって、リターンスプリング56の付勢力に抗して回動軸52から径方向に張り出した図示しないレバーを押圧して、バルブ54を開放位置側に回動させるようになっている。この実施形態では、サーモアクチュエータ60は、エンジン冷却水温が80℃以上である場合に、バルブ54を上記した排気ガス圧力による開放姿勢よりも開度が大きい全開姿勢(図10の一点鎖線参照)とするようになっている。
【0051】
図10に示される如く、第1冷却水入口パイプ58の中間部には、該第1冷却水入口パイプ58を経由して排気系熱交換器14のエンジン冷却水流路34にエンジン冷却水を導入するための第2冷却水入口パイプ62が接続されている。一方、アウタパイプ32における排気ガス流れ方向の上流側には、エンジン冷却水流路34からエンジン冷却水を排出するための冷却水出口パイプ64が接続されている。冷却水出口パイプ64は、アウタパイプ32のほぼ上下方向頂部(後述する車体Bへの取付姿勢における最上部)に連通しており、第2冷却水入口パイプ62は、アウタパイプ32の上下方向頂部よりも若干下側に連通した第1冷却水入口パイプ58の最上部であって、アウタパイプ32の最上部よりも高位である部分に連通している。第2冷却水入口パイプ62及び冷却水出口パイプ64は、内燃機関エンジン、ラジエータ、ヒータコアを含む冷却水循環路に、少なくともエンジン冷却水流れに沿って内燃機関エンジンと直列となるように接続されている。
【0052】
以上により、排気系熱交換器14は、排気ガスの流れ方向とエンジン冷却水の流れ方向とが反対向きである向流型排気系熱交換器とされており、この実施形態では、排気系熱交換器14は、排気ガスが螺旋溝26Aに沿って螺旋状の流れを生じると共に、エンジン冷却水が螺旋溝26Bに沿って排気ガスとは逆向きの螺旋状の流れを生じることで、コンパクトで熱交換効率の高い構成とされている。また、排気系熱交換器14では、バイパス流路36を通過することによる排気ガスの圧力損失(背圧)が、排気ガス流路30を通過することによる排気ガスの圧力損失に対し十分に小さく、バルブ54が開放姿勢をとる場合に排気ガスは主にバイパス流路36を流通するようになっている。
【0053】
(車体構造)
図2には、車体Bの前部構造が底面図にて示されており、図3には、車体Bの前部構造が側面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体Bは、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のロッカ66を備えている。左右のロッカ66は、車幅方向外端のボディ骨格を構成している。左右のロッカ66には、フロントフロアパネル68の車幅方向の異なる端部がそれぞれ接合されている。このフロントフロアパネル68の車幅方向中央部には、車体上下方向の下向きに開口するフロアトンネル70が形成されている。フロアトンネル70は、車体前後方向の前向きにも開口しており、図3に示される如くフロントフロアパネル68の前端68Aに接合されたダッシュパネル72に形成されたトンネル部72Aに連続している。
【0054】
また、フロントフロアパネル68におけるフロアトンネル70と左右のロッカ66との間の下面には、車体前部の骨格を成すフロントサイドメンバ74の後部74Aが接合されている。フロントサイドメンバ74の後部74Aは、上向きに開口する断面ハット形状に形成され、フロントフロアパネル68に接合されて閉断面を成している。フロントサイドメンバ74の後部74Aは、車体前後方向に対し後端74B側が車幅方向外側に位置するように傾斜(湾曲)しており、該後端74Bにおいて左右のロッカ66に接合(連結)されている。左右のフロントサイドメンバ74は、それぞれの後部74Aの前側に連続すると共にダッシュパネル72の下面に接合されたキック部74Cを有し、キック部74Cの前端74Dには、単独で閉断面を成す前部74Eが連続している。前部74Eの前端74F間は、フロントバンパを構成するフロントバンパリインフォースメント75にて架け渡されている。
【0055】
さらに、図2に示される如く、フロントフロアパネル68におけるフロアトンネル70の開口端70Aの車幅方向両外側の近傍には、それぞれ車体前後方向に長手とされたトンネルサイドリインフォースメント76が設けられている。各トンネルサイドリインフォースメント76は、図4乃至図8に示される如く車体上下方向の上向きに開口する断面形状を有し、開口端から延設されたフランジ76Aがフロントフロアパネル68の下面、フロアトンネル70の内面に接合されることで閉断面を成している。それぞれ車体Bの車幅方向中央に対し同じ側のトンネルサイドリインフォースメント76とフロントサイドメンバ74の後部74Aとは、フロントフロアパネル68の下面に接合されることで車幅方向に長手でかつ閉断面の骨格を成すフロアクロスメンバ78にて架け渡されている。
【0056】
そして、図2及び図3に示される如く、左右のトンネルサイドリインフォースメント76は、車幅方向に長手とされると共に左右のフロアクロスメンバ78と車体前後方向の同じ位置に配置されたボディクロスメンバ80にて架け渡されている。図7及び図8に示される如く、ボディクロスメンバ80は、車体上下方向の下向きに開口する略ハット形状の断面形状を有すると共に、正面視で全体として車体上下方向の上向きに開口するハット形状を成し、該上向き開口端から車幅方向に張り出したフランジ80Aがトンネルサイドリインフォースメント76の下面76Bに接合されている。このため、ボディクロスメンバ80におけるフロントサイドメンバ74の車体上下方向の下方を横切るクロス部80B(の上面)は、トンネルサイドリインフォースメント76の下面76Bよりも車体上下方向の下側に位置している。
【0057】
なお、車体Bの車幅方向に対し同じ側に位置するフロントサイドメンバ74の後部74Aとトンネルサイドリインフォースメント76とは、フロントフロアパネル68の前端68Aに沿って配置されたクロスメンバ82にて架け渡されており、車体Bの車幅方向に対し同じ側に位置するフロントサイドメンバ74の後部74Aとロッカ66とは、フロントフロアパネル68の前端68Aに沿って配置されたクロスメンバ84にて架け渡されている。
【0058】
また、図2に示される如く、車体Bは、フロントフロアパネル68の前方に配置されたサブフレーム(サスペンションメンバ)86を備えている。サブフレーム86は、それぞれ車体前後方向に長手とされ後端88Aが車幅方向中央に対し同じ側に位置するフロントサイドメンバ74のキック部74Cに固定された左右一対のサイドレール88と、車幅方向に長手とされ左右一対のサイドレール88の後端88A間を架け渡したエンジンリヤマウントサポートメンバ(リヤクロスメンバ)90と、車幅方向に長手とされ左右一対のサイドレール88の前端88B間を架け渡したフロントクロスメンバ92とで、平面視で略矩形枠状に形成されている。
【0059】
この実施形態では、サブフレーム86は、上記した排気ガスを排出する図示しない内燃機関エンジン、左右の前輪を支持するためのフロントサスペンション等が取り付けられるようになっている。より具体的には、エンジンリヤマウントサポートメンバ90には、内燃機関エンジンの後部を支持するための図示しないエンジンリヤマウントが固定されるリヤマウント支持部90Aが設けられている。また、左右一対のサイドレール88にそれぞれフロントサスペンションを構成するロアアームを支持するための前後一対のロアアーム支持部88C、88Dが形成されている。さらに、左右一対のサイドレール88のロアアーム支持部88C、88D間には、フロントサイドメンバ74の前部74Eに接続されるサイドメンバ結合部88Eが設けられている。
【0060】
以上説明したサブフレーム86のエンジンリヤマウントサポートメンバ90は、図1に示される如く、ボディクロスメンバ80のクロス部80Bよりも車体上下方向の上側に位置している。
【0061】
また、車体Bでは、ダッシュパネル72によって隔てられたエンジンルームEと車室Cとに、図示しない変速機とシフトレバー装置とが配置されており、これら変速機とシフトレバー装置は、シフトケーブル94にて操作可能に連結されている。シフトケーブル94は、エンジンルームEからフロアトンネル70内を経由し、該フロアトンネル70の上壁70Bを貫通して車室Cに至っている。
【0062】
(排気系熱交換器の搭載構造)
図3に示される如く、車両用排気系搭載構造10では、内燃機関エンジンに接続された排気管18A、触媒コンバータ12は、エンジンルームE内に配置され、排気管18Bがフロアトンネル70の前向き開口端70Cを通じてフロアトンネル70内に至っている。そして、上記の通り車体前後方向に長手とされた排気系熱交換器14は、フロアトンネル70内に配設されている。また、マフラ16は、一方のトンネルサイドリインフォースメント76に対し車幅方向外側に位置しており、底面視では排気管18Cがトンネルサイドリインフォースメント76を横切っている。
【0063】
車両用排気系搭載構造10では、排気系が全体として、図9(A)及び図9(B)に示されるサポートロッド96、98、100を介して車体Bに支持されている。この実施形態では、サポートロッド96は、排気系熱交換器14を構成する隔壁パイプ26の排気ガス排出部26Dに溶接にて固定されており、サポートロッド98は、マフラ16の前端部16Aに溶接にて固定されており、サポートロッド100は、排気管18Eの後部に溶接にて接合されている。これらのサポートロッド96、98、100は、それぞれ車体側のサポートロッド(図示省略)が挿し込まれたサポートゴム102に挿し込まれることで、車体Bに対し弾性的に支持されている。サポートロッド96、98、100のサポートゴム102による支持点を結ぶ仮想的な三角形Tの内側には、車両用排気系搭載構造10の重心Gが配置されるようになっている。
【0064】
そして、上記の車体Bに対する支持状態で排気系熱交換器14は、図1に示される如く、フロアトンネル70内で、車体前後方向の前端14Bが後端14C(排気系熱交換器後部シェル46側)よりも車体上下方向の上側に位置する(路面Rから離間する)ように、水平面に対し傾斜(後傾)している。また、排気系熱交換器14の前端14Bは、車体骨格又は第1部材としてのエンジンリヤマウントサポートメンバ90に対する車体上下方向の上側に位置し、後端14Cは、車体骨格又は第2部材としてのボディクロスメンバ80に対する車体上下方向の上側に位置している。
【0065】
より具体的には、エンジンリヤマウントサポートメンバ90は、下向きに開口する断面ハット形状のアッパメンバ104のフランジに平板状のロアメンバ106を接合することで閉断面構造を成しており、その上壁108は、車体上下方向の上側及び車体前後方向の前側を向くように傾斜した前傾面108Aと、前傾面108Aの後方に連続し車体上下方向の上側及び車体前後方向の後側を向くように傾斜した後傾面108Bとを有している。排気系熱交換器14の前端14Bは、主にエンジンリヤマウントサポートメンバ90の後傾面108Bの上方に位置している。
【0066】
また、排気系熱交換器14の後端14Cを構成する排気系熱交換器後部シェル46は、ボディクロスメンバ80に対するほぼ真上に離間して(非接触で)配置されている。したがって、排気系熱交換器14の最下部である後端14Cにおける最下部14Dは、ボディクロスメンバ80よりも車体上下方向の上側に位置している。さらに、排気系熱交換器14の車体前後方向の前方に位置する排気管18Bは、エンジンリヤマウントサポートメンバ90の前傾面108Aに対する車体上下方向の上側を該前傾面108Aから離間して(非接触で)通過している。
【0067】
さらに、車両用排気系搭載構造10では、図3に示される如く、エンジンリヤマウントサポートメンバ90とボディクロスメンバ80との間では、排気系熱交換器14は、トンネルサイドリインフォースメント76の下面76Bよりも上側に位置している。すなわち、図4乃至図8に示される如く、排気系熱交換器14におけるエンジンリヤマウントサポートメンバ90とボディクロスメンバ80との間に位置する部分の長手方向の各位置で、左右のトンネルサイドリインフォースメント76が、排気系熱交換器14の長手方向各位置での最下部14Eよりも車体上下方向の下側に張り出している。これにより、排気系熱交換器14は、その前後左右から、該排気系熱交換器14よりも車体上下方向の下側に突出した車体骨格にて囲まれている。
【0068】
特に、車両用排気系構造10では、排気系熱交換器14の熱交換部14Aは、車体前後方向の全長に亘って、最下部14Eがトンネルサイドリインフォースメント76の下面76Bよりも車体上下方向の上側に位置している。すなわち、熱交換部14Aに対しては、トンネルサイドリインフォースメント76が、最下部14Eのうちの最下部(熱交換部14Aの後端における最下部14E)よりも車体上下方向の下方に位置するトンネルサイドリインフォースメント76の下面76B(最下部)を有し、本発明における車体骨格部材に相当するものと把握することができる。
【0069】
またさらに、上記の通り全体として後傾するように傾斜して配置された排気系熱交換器14では、シェルとしてのアウタパイプ32の前端近傍における頂部に下端部64Aが接続された冷却水出口パイプ64は、エンジン冷却水流路34の略最上部に連通して本発明におけるガス抜き部としても機能する(後述)ようになっている。この冷却水出口パイプ64には、図示しないヒータホースが接続されており、該ヒータホースを介して内燃機関エンジンの冷却水路(ウォータポンプ)に連通されている。車両用排気系搭載構造10では、排気系熱交換器14の車体前後方向の前端14Bに冷却水出口パイプ64を配置しているため、該冷却水出口パイプ64と内燃機関エンジンとを最短距離で結ぶようにヒータホースを配策する構成とされている。すなわち、熱交換部14Aにて排気ガスからエンジン冷却水に回収した熱がヒータホースから放出されることが抑制される構成とされている。
【0070】
また、図3に示される如く、シフトケーブル94は、フロアトンネル70の上壁70Bの貫通部分を含め、排気系熱交換器14に対する車体上下方向の上側に配索されている。すなわち、シフトケーブル94は、フロアトンネル70内における排気系からの輻射熱が小さい部分である排気系熱交換器14の上方に配索されることで、熱害対策が簡素化されると共に耐久寿命が向上されている。
【0071】
さらに、図3に示される如く、上流端が排気系熱交換器14の排気系熱交換器後部シェル46に接続された排気管18Cは、該排気系熱交換器14とマフラ16(マフラインレットパイプ22)との間に最低所110を形成するように湾曲形成されている。これにより、熱交換部14Aでの熱交換によって冷却された排気ガスから凝縮された凝縮水が、排気系熱交換器14(排気系熱交換器後部シェル46)内に滞留することなく排気管18Cに排出されるようになっている。排気管18Cに排出された凝縮水は、排気ガスの排出に伴ってマフラ16で気化(霧化)され、排気管18Eから系外に排出されるようになっている。
【0072】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0073】
上記構成の車両用排気系搭載構造10では、エンジン冷却水温が低い場合には、サーモアクチュエータ60に対しバルブ54がフリーとされ、バルブ装置50は自圧バルブとして作用する。このため、排気ガスの圧力が低い運転条件では、リターンスプリング56の付勢力によって排気ガス案内パイプ38すなわちバイパス流路36が閉止され、排気ガスは、熱交換部14Aの排気ガス流路30を流れ、エンジン冷却水流路34を流れるエンジン冷却水との熱交換が行われる。これにより、内燃機関エンジンの暖機促進や、低温始動時の暖房維持が果たされる。
【0074】
例えば加速や登坂等の内燃機関エンジンの出力が増す運転条件で、排気ガスの圧力が上昇すると、この排気ガスの圧力を受けたバルブ54は、リターンスプリング56の付勢力に抗し矢印A方向に回動し、開放姿勢に至る。これにより、排気ガスは、主にバイパス流路36を流れ、排気ガス流路30を流れる場合と比較して背圧が低減される。すなわち、自圧バルブとして機能するバルブ装置50を備えた車両用排気系搭載構造10では、内燃機関エンジンの暖気等のための排気熱回収よりも出力確保のための背圧低減が優先される場合に、排気ガスが熱交換部14Aをバイパスしてバイパス流路36を流れることで、自動的に背圧の低減が果たされる。そして、内燃機関エンジンが最高出力を発生する際には、その排気ガスの圧力でバルブ54が図10に想像線にて示す誘導姿勢(排気ガスの圧力による最大開度)となる。
【0075】
また、車両用排気系搭載構造10では、エンジン冷却水温が80℃以上になると、サーモアクチュエータ60の押圧ロッド60Aが回動軸52の図示しないレバーを押圧してバルブ54を全開位置に保持する。これにより、排気ガスは主にバイパス流路36を流れ、排気ガス案内パイプ38、排気系熱交換器後部シェル46の排気ガス出口ヘッダ48を経由して排気管18Cから排出される。すなわち、排気熱の回収が不要な運転状態では、排気ガス流路が自動的にバイパス流路36に切り替えられる。
【0076】
ここで、車両用排気系搭載構造10では、排気系熱交換器14の車体上下方向の最下部14D(この実施形態では排気系熱交換器後部シェル46)がボディクロスメンバ80よりも上側に位置するため、排気系熱交換器14が車両走行に伴う路面干渉に対し保護される。特に、車両用排気系搭載構造10では、排気系熱交換器14の前端14Bがエンジンリヤマウントサポートメンバ90の上方に位置すると共に、排気系熱交換器14の前端14Bが80の上方に位置するため、排気系熱交換器14への路面干渉が生じ難い。すなわち、路面干渉の衝撃荷重(ダメージ)を排気系熱交換器14が直接的に受けることが防止される。
【0077】
また特に、車両用排気系搭載構造10では、左右のトンネルサイドリインフォースメント76が、エンジンリヤマウントサポートメンバ90とボディクロスメンバ80との間で、排気系熱交換器14の長手方向各位置の最下部14Eよりも車体上下方向の下側に張り出しているため、排気系熱交換器14を前後左右の四方向から路面干渉に対し保護することができる。しかも、左右のトンネルサイドリインフォースメント76は、エンジンリヤマウントサポートメンバ90とボディクロスメンバ80との間において、排気系熱交換器14の長手方向の略全長(エンジンリヤマウントサポートメンバ90近傍の一部を除く全長)に亘り、排気系熱交換器14の最下部14Eよりも車体上下方向の下側に張り出しているため、排気系熱交換器14は、路面干渉に対し一層効果的に保護される。特に、エンジン冷却水が流れる熱交換部14A(アウタパイプ32)は、左右のトンネルサイドリインフォースメント76によって、全長に亘ってより一層効果的に保護される。
【0078】
さらに、車両用排気系搭載構造10では、排気系熱交換器14が前端14B(における最下部14E)を後端14C(における最下部14Eである最下部14D)よりも車体上下方向の上側に位置させるように傾斜しているため、車両走行に伴って車体前後方向の前端14Bが路面R上の障害物等に干渉する(引っ掛かる)ことが防止される。
【0079】
またここで、車両用排気系搭載構造10では、エンジンリヤマウントサポートメンバ90よりも車体上下方向の下側にボディクロスメンバ80が配置されているため、図1に矢印F1にて示される如く、ボディクロスメンバ80によって(堰き止められた)走行風が排気系熱交換器14の熱交換部14Aに向けて案内され、この走行風を熱交換部14Aを構成するアウタパイプ32に当てることができる。また、車両用排気系搭載構造10では、エンジンリヤマウントサポートメンバ90の上面の前部が前傾面108Aとされているため、図1に矢印F2にて示される如く、走行風が前傾面108Aに案内され、この走行風を熱交換部14Aを構成するアウタパイプ32に当てることができる。これらにより、高速走行時等の排気ガスがバイパス流路36を流通する運転条件で、エンジン冷却水温が上昇してラジエータの負荷が上昇することが防止される。
【0080】
さらにここで、車両用排気系搭載構造10では、冷却水出口パイプ64がエンジン冷却水流路34の最上部に連通されているので、エンジン冷却水流路34内にエンジン冷却液よりも比重の小さい異物が混入した場合に、エンジン冷却水の循環停止状態でも、この異物は冷却水出口パイプ64から排出される。このため、例えば内燃機関エンジンの高負荷運転直後に該ネイ念帰還エンジンを停止した場合に、仮に(万が一)排気系熱交換器14の余熱でエンジン冷却液が沸騰して気泡が生じた場合でも、この気泡は排気系熱交換器14のエンジン冷却水流路34から冷却水出口パイプ64を経由して排出され、エンジン冷却水の冷却に伴って消滅する。すなわち車両用排気系搭載構造10では、排気系熱交換器14のエンジン冷却水流路34に気泡等の異物が滞留することが防止される。
【0081】
また、冷却水出口パイプ64をガス抜き部として用いるため、換言すれば、エンジン冷却水流路34から排出された異物をエンジン冷却液の循環に伴って熱交換部14Aから遠ざけることができるため、内燃機関エンジンの再起動によってガス抜き部内に留まった気泡が排気ガスの熱で膨張することがない。さらに、ガス抜き部として別部材を設ける必要もなく、また熱交換性能に影響を与えることなくエンジン冷却水流路34内の異物滞留を防止する構成が実現された。
【0082】
さらに、車両用排気系搭載構造10では、排気系熱交換器14の熱交換部14Aの最外層をエンジン冷却水流路34が構成しているため、換言すれば、エンジン冷却水はアウタパイプ32を介して外気と熱交換(外気による冷却)可能であるため、エンジン冷却水の沸騰による気泡発生自体が抑制される。また、単にアウタパイプ32に冷却水出口パイプ64を設けるため、構造が簡単である。
【0083】
なお、上記実施形態では、冷却水出口パイプ64が本発明におけるガス抜き部である例を示したが本発明はこれに限定されず、本発明のガス抜き部は基本的にエンジン冷却水の循環停止中に機能すれば足りるので、例えば、エンジン冷却水流路34のエンジン冷却水流れ方向を逆にしてエンジン冷却水の入口をガス抜き部として機能するように構成しても良く、エンジン冷却水が熱交換部14Aの長手方向に往復するようにエンジン冷却水流路34を構成してエンジン冷却水の出入口を共にガス抜き部として機能するように構成しても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、車両用排気系搭載構造10が排気系熱交換器14の路面干渉に対する保護機能、走行風による冷却促進機能、内燃機関エンジン停止時の気泡の除去機能等を共に果たす例を示したが、本発明はこれに限定されず、上記した機能のうち少なくとも気泡の除去機能を果たすように構成すれば良い。
【0085】
したがって、長手方向一端側が他端側よりも車体上下方向の上側に位置するように傾斜配置された排気系熱交換器14にガス抜き部を有する構成においては、該排気系熱交換器14がボディクロスメンバ80、エンジンリヤマウントサポートメンバ90、一対のトンネルサイドリインフォースメント76の少なくとも1つにて保護される構成や、走行風が熱交換部14Aに案内される構成に限定されることはない。
【0086】
またさらに、上記実施形態では、排気系熱交換器14が略車体前後方向に沿って長手とされた例を示したが、本発明はこれに限定されず、排気系熱交換器14を平面視で車体前後方向に対し傾斜して配置したり、車幅方向に沿って配置したりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の実施形態に係る排気系搭載構造の要部を示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る排気系搭載構造を示す底面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用排気系構造を示す側面図である。
【図4】図2の4―4線に沿った断面図である。
【図5】図2の5―5線に沿った断面図である。
【図6】図2の6―6線に沿った断面図である。
【図7】図2の7―7線に沿った断面図である。
【図8】図2の8―8線に沿った断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る排気系搭載構造の排気ガス系統を示す図であって、(A)は底面図、(B)は側面図である。
【図10】本発明の実施形態に係る排気系搭載構造を構成する排気系熱交換器の側断面図である。
【符号の説明】
【0088】
10 排気系搭載構造(排気系熱交換器の車体搭載構造)
14 排気系熱交換器
32 アウタパイプ(シェル)
34 エンジン冷却水流路(冷却液の流路)
64 冷却水出口パイプ(ガス抜き部)
68 フロントフロアパネル(車体フロア)
70 フロアトンネル
76 トンネルサイドリインフォースメント(車体骨格)
80 ボディクロスメンバ(車体骨格、第2部材)
90 エンジンリヤマウントサポートメンバ(車体骨格、第1部材)
108A 前傾面(傾斜部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端側が他端側よりも車体上下方向の上側に位置するように傾斜して配置され、排気ガスと冷却液との熱交換を行う排気系熱交換器と、
前記排気系熱交換器の前記冷却液の流路における車体上下方向の最上部に車体上下方向の上側から連通されたガス抜き部と、
を備えた排気系熱交換器の車体搭載構造。
【請求項2】
前記ガス抜き部は、前記排気系熱交換器における冷却液の流路に対する該冷却液の入口部及び出口部の少なくとも一方である請求項1記載の排気系熱交換器の車体搭載構造。
【請求項3】
前記排気系熱交換器は、外郭を成すシェルが前記冷却液の流路の外壁を構成しており、前記ガス抜き部は、前記シェルの車体上下方向の最上部に設けられている請求項1又は請求項2記載の排気系熱交換器の車体搭載構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−74552(P2009−74552A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275675(P2008−275675)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【分割の表示】特願2006−233999(P2006−233999)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】