説明

排熱回収ボイラ配管を予熱するシステム及び方法

【課題】排熱回収ボイラ配管を予熱することによって応力を緩和すると共に発電プラント全体のスタートアップ時間を改善するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】排熱回収ボイラ300は、過熱器160と、第1のタービン部110と、過熱器160及び第1のタービン部と連通する第1の主蒸気管路170と、過熱器からの蒸気流が第1のタービン部内に流入することなく第1の主蒸気管路を予熱するように第1の主蒸気管路の下流に設置された第1の予熱管路310とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して複合サイクル発電プラントに関し、特に、排熱回収ボイラ配管を予熱することによって応力を緩和すると共に発電プラント全体のスタートアップ時間を改善するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複合サイクル発電プラントは、ガスタービンと蒸気タービンとを組合せたものを用いて発電する。具体的には、ガスタービンサイクルが排熱回収ボイラ(HRSG)等を介して蒸気タービンサイクルと作動的に組み合わされる。
【0003】
蒸気タービンサイクルはガスタービンの排気により駆動されるので、ガスタービンサイクルが蒸気タービンサイクルを適切な温度に高めるまで、HRSGは完全に動作可能にはならない。例えば、排気ガスの温度は、スタートアップ時にガスタービンの燃焼温度が上昇するのに伴って次第に上昇する。ガスタービンからの高温の排気ガスがHRSGを通って流れるが、当初は低温のHRSGが十分な圧力及び温度の蒸気を生成できるようになるまでに相当な時間がかかることがある。そのため、従来のシステムでは、HRSGが所望の圧力及び温度の蒸気を生成できるレベルにHRSGの温度が上昇するまで、ガスタービンの負荷が比較的低く保たれる。
【0004】
HRSGで生成される過熱蒸気は、蒸気タービンから数百フィート以上離れた位置にあることもある。このため、HRSGと蒸気タービンとを接続する配管の温度は、生成される過熱蒸気よりも数百度低いこともある。しかし、蒸気と比べて低い金属温度の配管を介して過熱蒸気を流すと、蒸気タービン内への導入時点における蒸気温度が低くなることがある。この温度低下は、設備寿命を縮めたり、不適切な配管予熱時間によるタービンへの蒸気導入の遅延に繋がったりすることがある。同様に、配管を徐々に予熱するために蒸気の導入を遅らせると、生成された蒸気が仕事の生成に用いられずに復水器等へとバイパスされるので、運転コストが増大することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0158738A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、排熱回収ボイラシステムと関連の配管のスタートアップ及び予熱手順の改良が望ましい。こうした改良型のシステムと手順は、配管内の応力を緩和するだけでなくスタートアップ時間も改善するものであることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本出願は排熱回収ボイラを開示する。この排熱回収ボイラは、過熱器と、第1のタービン部と、過熱器及び第1のタービン部と連通する第1の主蒸気管路と、過熱器からの蒸気流が第1のタービン部内に流入することなく第1の主蒸気管路を予熱するように第1の主蒸気管路の下流に設置された第1の予熱管路とを含む。
【0008】
本出願は、更に、排熱回収ボイラのスタートアップ方法を提供する。この方法は、過熱器内で蒸気流を生成するステップと、第1の主蒸気管路を介して蒸気流を導くステップと、蒸気流が所定の温度に達するまで第1の予熱管路を介して蒸気流を迂回させるステップと、所定の温度に達すると、蒸気流を第1のタービン部へと導くステップとを含む。
【0009】
本出願は、更に、排熱回収ボイラを提供する。この排熱回収ボイラは、過熱器と、第1のタービン部と、過熱器及び第1のタービン部と連通する第1の主蒸気管路と、過熱器からの蒸気流が第1のタービン部内に流入することなく第1の主蒸気管路を予熱するように第1の主蒸気管路の下流に設置された第1の予熱管路と、第2のタービン部と、第1のタービン部の下流の再熱器と、再熱器及び第2のタービン部と連通する第2の主蒸気管路と、再熱器からの蒸気が第2のタービン部内に流入することなく第2の主蒸気管路を予熱するように第2の主蒸気管路の下流に設置された第2の予熱管路とを含む。
【0010】
幾つかの図面と添付の特許請求の範囲に関連して以下の詳細な説明を検討すると、本出願のこれら及びその他の特徴、並びに改良が当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】周知の排熱回収ボイラシステムの概略図である。
【図2】本明細書で説明する排熱回収ボイラシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、複数の図面を通して同様の符号で同様の部品を示す図面を参照すると、図1に、従来の排熱回収ボイラ(HRSG)システム100を示す。蒸気流105は、高圧段110と中圧段120と低圧段130とを含む一連のタービン段を通って循環する。復水器140は、低圧段130に接続されると共に、バイパス管路145等を介して高圧段120に間接的に接続される。復水器140は、様々な段110、120、130で用いられる蒸気、水、又はこれらの混合物を回収する。
【0013】
過熱蒸気流105は、高圧過熱器160により供給される。高圧過熱器160は、ガスタービンからの排気等により加熱される。高圧過熱器160は、高圧段主蒸気管路170を介して過熱蒸気流105を高圧段120へと導く。高圧段主蒸気管路遮断弁180が、自身を通る蒸気流を制御するように高圧過熱器160と高圧段主蒸気管路170との間に設置される。同様に、高圧段主蒸気管路制御弁190は、圧力と自身を通る蒸気流とを制御するように高圧段主蒸気管路170と高圧段110との間に設置される。
【0014】
蒸気流105が高圧段110を駆動させた後、この蒸気流105は低温再熱管路210を介して再熱器200へと導かれる。この上に、低温再熱管路弁220が設置される。また、高圧段カスケードバイパス管路230が、高圧過熱器160の下流に、低温再熱管路210と連通して設置される。この上に、高圧段カスケードバイパス管路弁240が設置される。
【0015】
低温再熱管路210及び/又は高圧段カスケードバイパス管路230の出力は、その後、再熱器200内で加熱される。再熱器200も、ガスタービンからの排気等により加熱される。再熱器200からの蒸気流105は、中圧段主蒸気管路250を介して中圧段120の方へと導かれる。再熱器200と中圧段主蒸気管路250との間の流れは、高温再熱遮断弁260により制御される。同様に、中圧段主蒸気管路250と中圧段120との間の流れ及び圧力は、中圧段主蒸気管路制御弁270により制御される。また、高温再熱バイパス管路280が、再熱器200の下流に、復水器140と連通して設置される。この上に、高温再熱バイパス管路弁290が設置される。上述の各構成部品は1つしか図示されていないが、HRSGシステム100全体で同様の構成部品を幾つ用いてもよい。
【0016】
蒸気タービンサイクルは蒸気流105から機械エネルギーを引き出すので、蒸気タービンサイクル部品とその関連の蒸気管路とは、極めて高温で動作する。しかし、これらの部品及び蒸気管路が所望の動作範囲を外れることがある。例えば、HRSGシステム100が、長時間にわたる非動作状態の後に「低温」の熱的状態条件となることがある。低温時に単純にHRSGシステム100を作動させると、急激な熱膨張によって部品と蒸気管路に物理的応力がかかり、これが耐用寿命の短縮及び/又は損傷に繋がることがある。
【0017】
図2に、本明細書に開示する排熱回収ボイラ(HRSG)システム300を示す。HRSGシステム300は、HRSGシステム100と概ね同じであってよい。HRSGシステム300は、更に、高圧段予熱管路310を含む。高圧段予熱管路310は、高圧段主蒸気管路170の下流且つ高圧段主蒸気管路制御弁190の直ぐ上流に設置される。高圧段予熱管路310は、高圧段カスケードバイパス管路230まで延在する。この上に、更に、高圧段予熱弁320が設置される。高圧段予熱管路310は、高圧段主蒸気管路170がなるべく大きく確実に温まるように、高圧段主蒸気管路制御弁190のなるべく近くに設置される。
【0018】
同様に、中圧段予熱管路330は、中圧段主蒸気管路制御弁270の直ぐ上流から復水器140付近の高温再熱バイパス管路280まで延在する。この上に、中圧段予熱管路弁340が設置される。
【0019】
運転時、高圧過熱器160及び再熱器200からの蒸気流105は、有用な仕事を行わずにバイパス管路145、280等を介して復水器140に直接的又は間接的に放出されるのではなく、高圧段主蒸気管路170と中圧段主蒸気管路250との加温に用いられる。具体的には、高圧段主蒸気管路遮断弁180と高圧段予熱管路弁320とを開弁すると共に、高圧段主蒸気管路制御弁190と高圧段カスケードバイパス弁240とを閉弁することによって、高圧段主蒸気管路170を加温する。
【0020】
同様に、高温再熱遮断弁260と中圧段予熱管路弁340とを開弁すると共に中圧段主蒸気管路制御弁270と高温再熱バイパス弁290とを閉弁することによって、中圧段主蒸気管路250を加温する。このように、この予熱によって主蒸気管路170、250を加温し、この予熱シーケンスが完了すると、段110、120に流入する蒸気流105の温度が確実にほぼ適正になる。蒸気流105がこうした温度を適当な時間にわたって維持すると、予熱シーケンスが終了し、蒸気105が通常の態様で段等を流れる。
【0021】
複数の過熱器又は出口を用いる場合は、予熱に使用できる蒸気を確保するために、高圧段カスケードバイパス弁240が所定のストロークに達すると、高圧段予熱管路弁320と高圧段主蒸気管路遮断弁180とを開弁する。残りの予熱管路弁340と遮断弁260とは、正方向の流れを確保できるように、高圧過熱器160の出口圧力が高圧段主蒸気管路170内の圧力よりも高くなると開弁する。これによって、予熱の動作的柔軟性が得られ、様々な負荷で動作するガスタービンに対応できるようになる。
【0022】
このように、本明細書に記載のHRSGシステム300は、追加のエネルギーコストを全く要さずに主蒸気管路170、250を加熱できる。この蒸気流105は、再熱器200等にも適用可能である。この予熱の概念は、低圧部130等にも適用可能である。
【0023】
明らかなように、前述の内容は本出願の一部の実施形態のみに関するものであって、当業者は、添付の特許請求の範囲とその等価物の全体的な技術的範囲を逸脱することなく、これに多数の改変及び修正を加えることができる。
【符号の説明】
【0024】
100 排熱回収ボイラ
105 蒸気流
110 高圧段
120 中圧段
130 低圧段
140 復水器
160 高圧過熱器
170 高圧段主蒸気管路
180 高圧段主蒸気管路弁
190 高圧段主蒸気管路制御弁
200 再熱器
210 低温再熱管路
220 低温再熱管路弁
230 高圧カスケードバイパス管路
240 高圧カスケード管路カスケード弁
250 中圧段主蒸気管路
260 高温再熱遮断弁
270 中圧段主蒸気管路制御弁
280 高圧再熱バイパス管路
290 高圧再熱バイパス管路弁
300 排熱回収ボイラ
310 高圧部予熱管路
320 高圧部予熱管路弁
330 中圧部予熱管路
340 中圧部予熱管路弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過熱器(160)と、
第1のタービン部(110)と、
前記過熱器(160)及び前記第1のタービン部(110)と連通する第1の主蒸気管路(170)と、
前記過熱器(160)からの蒸気流(105)が前記第1のタービン部(110)内に流入することなく前記第1の主蒸気管路(170)を予熱するように前記第1の主蒸気管路(170)の下流に設置された第1の予熱管路(310)と、を有する排熱回収ボイラ(300)。
【請求項2】
前記第1のタービン部(110)は高圧部(110)を有し、前記第1の主蒸気管路(170)は高圧部主蒸気管路(170)を有する、請求項1に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項3】
前記第1の主蒸気管路(170)の上流にあって前記第1の予熱管路(310)と連通する第1のバイパス管路(230)を更に有する、請求項1に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項4】
前記第1のバイパス管路(230)はカスケードバイパス管路(230)を含む、請求項3に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項5】
前記第1のバイパス管路(230)は第1のバイパス管路弁(240)を自身の上に有する、請求項3に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項6】
前記第1の主蒸気管路(170)は自身の上流に遮断弁(180)を有し、自身の下流に制御弁(190)を有する、請求項1に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項7】
再熱器(200)と、第2の主蒸気管路(250)と、前記第1のタービン部(110)の下流の第2のタービン部(120)とを更に有する、請求項1に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項8】
前記再熱器(200)からの蒸気流(105)が前記第2のタービン部(120)内に流入することなく前記第2の主蒸気管路(250)を予熱するように前記第2の主蒸気管路(250)の下流に設置された第2の予熱管路(330)を更に有する、請求項7に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項9】
前記第2のタービン部(120)は中圧部(120)を有し、前記第2の主蒸気管路(250)は中圧部主蒸気管路(250)を有する、請求項8に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項10】
前記第2の主蒸気管路(250)の上流にあって前記第2の予熱管路(330)と連通する第2のバイパス管路(280)を更に有する、請求項8に記載の排熱回収ボイラ(300)。
【請求項11】
過熱器(160)内で蒸気流(105)を生成するステップと、
第1の主蒸気管路(170)を介して前記蒸気流(105)を導くステップと、
前記蒸気流(105)が所定の温度に達するまで第1の予熱管路(310)を介して前記蒸気流(105)を迂回させるステップと、
前記所定の温度に達すると、第1のタービン部(110)へと前記蒸気流(105)を導くステップとを含む、排熱回収ボイラ(300)のスタートアップ方法。
【請求項12】
再熱器(200)内で前記蒸気流(105)を再加熱するステップと、
第2の主蒸気管路(250)を介して前記蒸気流(105)を導くステップと、
前記蒸気流(105)が所定の温度に達するまで第2の予熱管路(330)を介して前記蒸気流(105)を迂回させるステップと、
前記所定の温度に達すると、第2のタービン部(120)へと前記蒸気流(105)を導くステップとを更に含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−179494(P2011−179494A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34062(P2011−34062)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】