説明

排熱回収装置

【課題】少ない部品点数で打音等の騒音を低減させることができる、排熱回収装置の提供を課題とする。
【解決手段】冷却水を温める熱回収器18と、熱回収器18内に排気ガスを導く熱回収路15と、熱回収路15を迂回する迂回路16と、迂回路16及び熱回収路15の流路を切替えるバルブ13と、冷却水の温度で作動するサーモアクチュエータ35とからなる排熱回収装置10であって、バルブ13は、迂回路16の入口又は熱回収路15の入口を閉じる流路閉じ面28が、断面視で球面である。
【効果】バルブ13の上流と下流とで圧力の差が生じることがある。流路閉じ面28が球面とされ、力の向きが分散される。圧力差が生じてもバルブ13が開くことを防止できる。即ち、バルブ13の上流と下流とで圧力の差が生じても、バルブ13が開かないため、バルブ13に錘を取付ける必要がなくなる。錘を取り付ける必要がないことで、部品点数を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの熱で冷却水を温める排熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を作動させることで排気ガスが生ずる。この排気ガスの熱を利用して冷却水を温めることが広く行われている。このとき、排熱回収を行う熱回収路とは別に、迂回路を設けて排気ガスを円滑に排出する排熱回収装置が知られている。このような排熱回収装置は、次図で説明するような問題点を有していた。
【0003】
図9(a)に示すように、排熱回収装置100は、排気ガス導入部材101内に設けられているセパレータ102と、このセパレータ102の上流に設けられている回転軸103と、この回転軸103に固定され回転軸103が回転することで回転するバルブ104と、バルブ104の先端が着座する着座部105とを備えている。
【0004】
セパレータ102の上が、排気ガスの熱を回収するための熱回収路107である。一方、セパレータ102の下は、熱回収が必要でない場合、及び熱回収時でも排気ガスが所定の流量を超えた場合に排気ガスを逃がすための迂回路108である。
【0005】
導入部材101の外部には、迂回路108を閉じる方向に回転軸103を回転させるばねが備えられている。バルブ104が迂回路108を閉じることで、排気ガスが熱回収路107に流される。
【0006】
内燃機関を作動させると、内燃機関で生じた排気ガスが排熱回収装置100に向かって流される。
排気ガスが流されることで、バルブ104より上流側の点Aでの圧力が、バルブ104より下流側の迂回路108内の点Bでの圧力よりも大きくなることがある。即ち、点Aでの圧力>点Bでの圧力となる。
【0007】
すると、(b)に示すように、バルブ104が押され、迂回路108が開放される。
迂回路108が開放された後のある瞬間では、点Aでの圧力≒点Bでの圧力となり、着座部105側へ付勢する回転軸103に取り付けられたばねで、バルブ104が迂回路108を閉じる方向に回転される。
【0008】
さらに、点Aでの圧力<点Bでの圧力となった場合は、(a)に示すように、回転軸103が迂回路108を閉じる方向にバルブ104を付勢する上に、さらに白抜き矢印で示す圧力がバルブ104にかかる。迂回路108を閉じる方向に大きな力が加わることで、バルブ104は勢いよく閉じる。バルブ104が勢いよく着座部105に当たることで、打音等の騒音が発生する。
【0009】
ここで、内燃機関は、吸気、圧縮、燃焼、排気を繰り返している。このため、所定の回転数以下では、バルブ104の先端が着座部105に当たって騒音を出してから後に、次の燃焼による排気圧がバルブ104にかかり開こうとする。この繰り返しにより、バルブ104が着座部105に勢いよく当たることで、特に打音等の騒音が大きくなる。
【0010】
このような騒音を低減させる技術が提案されている(例えば、特許文献1(図1(b))参照。)。
【0011】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10に示すように、排気装置200は、図面右から左に向かって排気ガスが流される流路201と、この流路201の下流端を閉じるバルブ202と、このバルブ202の上部に取付けられているおもり203と、回転軸204を囲うように設けられ流路201を閉じる方向に付勢するばね205とを備えている。
【0012】
排気装置200によれば、バルブ202におもり203を取付けることで、バルブ202の重量を変えている。バルブ202の重量が変わることで、固有振動数を変化させ、騒音を低減させている。
【0013】
しかし、このような排気装置200は、おもり203を取付けることで、部品点数が増加し、また重量が増加する。
少ない部品点数で騒音を低減させることができる、排熱回収装置の提供が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4056227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、少ない部品点数で騒音を低減させることができる、排熱回収装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に係る発明は、排気ガスの熱で冷却水を温める熱回収器と、この熱回収器に繋げられ熱回収器内に排気ガスを導く熱回収路と、この熱回収路を迂回するように設けられる迂回路と、これらの迂回路及び熱回収路の上流に回動可能に設けられ迂回路又は熱回収路を閉じることで排気ガスの流路を切替えるバルブと、このバルブを回動させる回動軸に接続され冷却水の温度が所定の温度に達することで作動するサーモアクチュエータとからなる排熱回収装置であって、
バルブは、迂回路の入口又は熱回収路の入口を閉じる流路閉じ面の少なくとも一部が、断面視で球面であることを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、バルブの回動する軌跡に沿ってバルブの下流側にカバー部材が設けられ、
このカバー部材に、迂回路に向かって開けられる第1開口部及び熱回収路に向かって開けられる第2開口部が備えられ、
第1開口部を迂回路の入口とし、第2開口部を熱回収路の入口としたことを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明は、カバー部材は、熱回収路側の先端部から軌跡を延長するようにして延ばされる延長部を、一体的に備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明は、回動軸に基部が取付けられると共に、バルブが迂回路を閉じている場合に、迂回路の軸に対して略垂直に設けられ、排気ガスを通すための通し穴が空けられている板状部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明では、流路閉じ面が、断面視で球面である。バルブが迂回路を開いている場合において、バルブの上流と下流とで圧力の差が生じることがある。この圧力の差により、流路閉じ面に所定の力が加わる。流路閉じ面は球面であるため、力の向きが分散されると同時にバルブの着座方向に力が働きにくい。そのため、勢いよくバルブが閉じることを防止することができる。バルブが勢いよく閉じることを防止することで、打音等の騒音の発生を抑える。
【0021】
本発明によれば、流路閉じ面を球面とすることで騒音の発生を防ぐため、バルブの固有振動数の調節をする必要がない。固有振動数の調節をする必要がないから、バルブに錘を取付ける必要がなくなる。さらに錘を付けても取りきれない着座音を改善することができる。錘を取り付ける必要がないことで、部品点数を削減することができる。
【0022】
請求項2に係る発明では、カバー部材に、迂回路に向かって開けられる第1開口部及び熱回収路に向かって開けられる第2開口部が備えられる。流路閉じ面は、第1開口部又は第2開口部を閉じることで、排気ガスの流路を切り替える。迂回路の入口又は熱回収路の入口の全てを塞ぐ場合に比べ、排気ガスを漏らすことなく、確実に流路を切り替えることができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、カバー部材は、熱回収路側の先端部から軌跡を延長するようにして延ばされる延長部を、一体的に備えている。サーモアクチュエータが所定の範囲を超えて作動する、オーバーリフトが生じることがある。オーバーリフト分を、延長部で吸収する。延長部でオーバーリフトを吸収することで、サーモアクチュエータにオーバーリフトを吸収するための部品を取付ける必要がない。部品を取付けるためのスペースが不要になり、サーモアクチュエータを小型化することができる。
【0024】
請求項4に係る発明では、バルブが迂回路を閉じている場合に、迂回路の軸に対して略垂直に設けられる板状部材が備えられている。迂回路の軸に対して板状部材を略垂直に設けることで、排気ガスの一部は板状部材に接触する。排気ガスの流量が一定の量を超えることで、排気ガスは、バルブの閉まろうとする力に抗してバルブを開く。冷却水の温度に関係なく、流量が多い場合に一部の排気ガスを迂回路から逃がすことで、効率よく排気を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る排熱回収装置の断面図である。
【図2】本発明に係る排熱回収装置の側面図である。
【図3】実施例1に係るバルブの斜視図である。
【図4】カバー部材の側面図である。
【図5】冷却水の温度が低い状態での作用説明図である。
【図6】冷却水の温度が高い状態での作用説明図である。
【図7】サーモアクチュエータの断面図である。
【図8】実施例2に係るバルブの断面図である。
【図9】従来の技術の問題点を説明する図である。
【図10】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0027】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、排熱回収装置10は、内燃機関で発生した排気ガスが送りこまれる排ガス導入部11と、この排ガス導入部11の近傍で排気ガスの流れ方向に対して垂直(図面表裏方向)に設けられる回動軸12と、この回動軸12に支持されるバルブ13と、このバルブ13の下流側に設けられバルブ13が回動する軌跡に沿って設けられるカバー部材14と、このカバー部材14に接続されバルブ13で切替えられる一方の流路である熱回収路15と、この熱回収路15の下部に熱回収路15を迂回するように設けられる迂回路16と、この迂回路16の上面に設けられ熱回収路15から流される排気ガスの熱で冷却水を温める熱回収器18と、この熱回収器18を通過した排気ガスを迂回路16へ排出する排出穴19とからなる。
【0028】
バルブ13は、回動軸12に取付けられる球状の本体部21と、回動軸12に基部22が取付けられ迂回路16の軸23に対して略垂直に設けられる板状部材24とからなる。
【0029】
熱回収器18は、本体としてのコアケース26と、このコアケース26内に複数設けられ排気ガスが流されるヒートプレート27とからなる。
コアケース26内に流される冷却水は、ヒートプレート27内を流される排気ガスの熱によって温められる。
【0030】
回動軸12は、ばね等により、矢印(1)で示すように時計回り方向に付勢される。回動軸12が時計回り方向に付勢されることで、本体部21は迂回路16を閉じる。即ち、回動軸12はバルブ13が迂回路16を閉じるよう、付勢される。このとき迂回路16に臨み、迂回路16を閉じる面を流路閉じ面28という。
【0031】
バルブ13は、カバー部材14の下部に設けられたストッパ29によって、迂回路16を閉じる方向への移動が規制される。
バルブ13は、冷却水の温度が高くなることで、回動し熱回収路15を閉じる。詳細を次図で説明する。
【0032】
図2に示すように、熱回収器18は、冷却水を導入する冷却水導入部32と、コアケース26内を通過した冷却水を排出する冷却水排出部33とがコアケース26に接続される。
【0033】
サーモアクチュエータ35は、冷却水排出部33に基部が支持され、冷却水排出部33から排出される冷却水の一部が送られる。
サーモアクチュエータ35のロッド36は、回動軸12に支持されるリンク部材37に先端が接触する。
【0034】
冷却水の温度が上がることで、サーモアクチュエータ35のロッド36が、矢印(2)で示すように図左側に向かって進出する。ロッド36が進出することで、リンク部材37は矢印(3)で示すように反時計回りに回転させられる。リンク部材37に支持される回動軸12及びバルブ13も反時計回りに回転し、バルブ13が熱回収路15を閉じる。
【0035】
バルブ13が熱回収路15を閉じている状態から、冷却水の温度が低下すると、ロッド36が後退する。ロッド36が後退することで、時計回り方向に付勢される回動軸12は、バルブ13を時計回りに回動させる。回動されたバルブ13は、迂回路16を閉じる。即ち、図に示すような状態となる。
このようにして回転されるバルブ13について次図で詳細に説明する。
【0036】
図3に示すように、バルブ13の本体部21は、球を分割した分割球状を呈する。板状部材24は、基部22が回動軸12に取付けられ、本体部21の内周に沿って半円形状を呈する。
【0037】
本体部21と板状部材24は、図に示す分割球状と半円形状の他、分割円柱状と長方形の組み合わせであってもよい。即ち、回動軸12に対して垂直に断面した場合に、本体部21の流路閉じ面28が球面であればよい。また、板状部材24は、本体部21の内周に沿う形状であればよい。
【0038】
板状部材24は、排気ガスを通すための複数の異なる形状の通し穴39a〜cが設けられる。これらの通し穴39a〜cの面積の合計が大きいほど、排気ガスの通りがよくなる。排気ガスの通りがよくなることで、排気ガスの流量が増えた場合でも、円滑に排気ガスを熱回収路へ流すことができる。
【0039】
一方、通し穴39の面積の合計が小さいほど、板状部材24に接触する排気ガスの量が増加する。板状部材24に接触する排気ガスの量が増加することで、バルブ13が回転しやすくなる。
このようなバルブ13を覆うカバー部材について次図で説明する。
【0040】
図4に示すように、カバー部材14は、迂回路(図1、符号16)に向かって開けられる第1開口部41が備えられると共に、熱回収路(図1、符号15)に向かって開けられる第2開口部42が備えられる。
【0041】
バルブ13a(aは、バルブが第1開口部41を閉じる位置にあることを示す添え字。以下同じ。)が第1開口部41を閉じることで、排気ガスは、第2開口部42から熱回収路に流れる。
【0042】
一方、バルブ13b(bは、バルブが第2開口部42を閉じる位置にあることを示す添え字。以下同じ。)が第2開口部42を閉じることで、排気ガスは、第1開口部41から迂回路に流れる。
即ち、第1開口部41は迂回路への入口とされ、第2開口部42は熱回収路への入口とされる。
【0043】
ところで、バルブ13a、bは想像線で示す範囲を回動し、排気ガスの流路を切り替える。このため、バルブ13a、bを覆うカバー部材14は、P1からP2までの区間に設けられればよい。カバー部材14のうち、P1からP2までをベース部44と呼ぶことにする。
【0044】
一方で、冷却水の温度が所定の温度を超えた場合に、バルブ13bがP2からさらにP3に向かって移動することがある。バルブ13bの過移動を吸収するために、カバー部材14はP3まで設けられることが望ましい。即ち、P2からP3までをベース部44から延長された延長部45と呼ぶ。
即ち、カバー部材14は、ベース部44の先端部P2から、バルブ13bの軌跡に沿って延長される延長部45を、一体的に備えている。
【0045】
流路閉じ面28は、第1開口部41又は第2開口部42を閉じることで、排気ガスの流路を切り替える。迂回路の入口又は熱回収路の入口の全てを塞ぐ場合に比べ、排気ガスを漏らすことなく、確実に流路を切り替えることができる。簡単な構成で確実に流路を切り替えることができ望ましい。
【0046】
特に本発明では、流路閉じ面28の断面が球面である。球面である流路閉じ面28で確実に流路を閉じるために、バルブ13a、bの軌跡に沿った形状のカバー部材14を設けることは望ましい。
排熱回収装置の作用について次図以降で詳細に説明する。
【0047】
図5(a)に示すように、冷却水の温度がT1と低い場合は、バルブ13が迂回路16を閉じる。迂回路16を閉じることで、排気ガスは熱回収路15を通過し、熱回収器18で冷却水と熱交換を行い、冷却水を温める。熱回収器18を通過した排気ガスは、排出穴19を通じて外部へ排出される。
【0048】
バルブ13が迂回路16を閉じている場合に、瞬間的に排気ガスの流量が増加することがある。(b)に示すように、排気ガスの一部は板状部材24に接触する。排気ガスの流量が一定の量を超えることで、板状部材24に接触した排気ガス(白抜き矢印(4)参照。)は、バルブ13の閉まろうとする力に抗してバルブ13を開く。バルブ13を開くことで、白抜き矢印(5)で示すように、排気ガスを迂回路16へ逃がすことができる。
【0049】
排気ガスを迂回路16へ逃がした後に、バルブ13より上流Cの圧力がバルブ13より下流Dの圧力とほぼ同等になることがある。流路閉じ面28は球面であるため、白抜き矢印(6)、(6)で示すように、力の向きが分散される。即ち、バルブ13が閉じる方向へ圧力が加わることを防止することができる。力の向きを分散させ、勢いよくバルブ13が閉じることを防止することで、騒音の発生を抑える。
【0050】
本発明によれば、流路閉じ面28を球面とすることで騒音の発生を防ぐため、バルブ13の固有振動数の調節をする必要がない。固有振動数の調節をする必要がないから、バルブ13に錘を取付ける必要がなくなる。さらに錘を取り付けてもとりきれない着座音を改善することができる。錘を取り付ける必要がないことで、部品点数を削減することができる。
【0051】
加えて、冷却水の温度に関係なく、排気ガスの流量が多い場合に一部の排気ガスを迂回路16から逃がす。流路抵抗の高い熱回収路15を迂回することで、効率よく排気を行うことができる。
【0052】
さらに、通し穴39の総面積を調節することで、バルブ13が開く際の排気ガスの流量を調節することができる。即ち、通し穴39の総面積が大きければバルブ13が開きにくくなり、通し穴39の総面積が小さければバルブ13が開きやすくなる。通し穴39を設けるだけで調節を行うことができ、調節にかかる労力を低減させることができる。
冷却水を温め続けることで、冷却水の温度が所定の温度まで上昇する。所定の温度まで冷却水が上昇した際の作用を次図で説明する。
【0053】
図6(a)に示すように、冷却水の温度が所定の温度T2まで上昇することで、バルブ13は熱回収路15を閉じ、熱交換を停止する。排気ガスは、迂回路16を流れる。
【0054】
ところで、冷却水の温度が当初想定していた最高の温度T2よりも上昇することがある。T2よりも高い温度T3まで上昇することで、サーモアクチュエータのロッド(図2、符号36)が所定の範囲を超えて前進することがある。
【0055】
(b)に示すように、サーモアクチュエータのロッドが所定の範囲を超えて前進するオーバーリフトが生じた場合に、延長部45でバルブ13の過移動を吸収する。延長部45でオーバーリフトを吸収することで、次図で説明するような効果を得ることができる。
【0056】
図7(a)に示すように、比較例に係るサーモアクチュエータ300は、冷却水導入部301及び冷却水排出部302が設けられ内部にワックスが収納されるケース303と、このケース303内に収納されワックスによって作動されるピストン304と、このピストン304の先端に吸収ばね305を介して配置されるロッド306と、このロッド306の一部を収納しケース303に接続される蓋体307と、この蓋体307に収納されワックスの収縮時にロッド306を戻すための戻しばね308とからなる。
【0057】
比較例に係るサーモアクチュエータ300は、オーバーリフトを吸収するために吸収ばね305が設けられる。
【0058】
一方、(b)に示す、実施例に係るサーモアクチュエータ35は、オーバーリフトをカバー部材(図1、符号カバー部材14)に設けられた、延長部(図1、符号延長部45)で吸収する。このため、サーモアクチュエータ35に、吸収ばねを用いる必要がない。吸収ばねを配置しない分、サーモアクチュエータ35をαだけ小型化することができる。
【実施例2】
【0059】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図8に示されるように、バルブ50は、板状部材51の基部52から折曲げるようにして延長支持部53を延ばすことで、V字状の支持部材54を形成し、この支持部材54を回動軸55に取付け、支持部材54に流路閉じ面57を備えた本体部58を取付ける。
【0060】
61、62は、排気ガスを通すための通し穴である。通し穴は、板状部材51と延長支持部53の両方に設けられる。
【0061】
このようなバルブ50を用いた場合も、流路閉じ面57が断面視で球面とされ、力の向きが分散される。バルブ50が勢いよく閉じることを防止し、打音等の騒音の発生を防ぐ。騒音の発生を防ぐために、錘を取り付ける必要がないため、部品点数を削減することができる。
【0062】
加えて、V字形状の支持部材54に本体部58を取付けるため、バルブ50の組立作業が容易である。
【0063】
尚、本発明に係る排熱回収装置は、排熱回収器の他、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラ等にも適用可能であり、その他の用途に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の排熱回収装置は、ハイブリッド車に好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…排熱回収装置、12、55…回動軸、13、50…バルブ、14…カバー部材、15…熱回収路、16…迂回路、18…熱回収器、22、52…基部、23…(迂回路の)軸、24、51…板状部材、28…流路閉じ面、35…サーモアクチュエータ、39…通し穴、41…第1開口部、42…第2開口部、45…延長部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの熱で冷却水を温める熱回収器と、この熱回収器に繋げられ前記熱回収器内に前記排気ガスを導く熱回収路と、この熱回収路を迂回するように設けられる迂回路と、これらの迂回路及び熱回収路の上流に回動可能に設けられ前記迂回路又は熱回収路を閉じることで前記排気ガスの流路を切替えるバルブと、このバルブを回動させる回動軸に接続され前記冷却水の温度が所定の温度に達することで作動するサーモアクチュエータとからなる排熱回収装置であって、
前記バルブは、前記迂回路の入口又は前記熱回収路の入口を閉じる流路閉じ面が、断面視で球面であることを特徴とする排熱回収装置。
【請求項2】
前記バルブの回動する軌跡に沿って前記バルブの下流側にカバー部材が設けられ、
このカバー部材に、前記迂回路に向かって開けられる第1開口部及び前記熱回収路に向かって開けられる第2開口部が備えられ、
前記第1開口部を前記迂回路の入口とし、前記第2開口部を前記熱回収路の入口としたことを特徴とする請求項1記載の排熱回収装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記熱回収路側の先端部から前記軌跡を延長するようにして延ばされる延長部を、一体的に備えていることを特徴とする請求項2記載の排熱回収装置。
【請求項4】
前記回動軸に基部が取付けられると共に、前記バルブが前記迂回路を閉じている場合に、前記迂回路の軸に対して略垂直に設けられ、前記排気ガスを通すための通し穴が空けられている板状部材を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の排熱回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−31795(P2012−31795A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172493(P2010−172493)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000138521)株式会社ユタカ技研 (134)
【Fターム(参考)】