説明

掘進機

【課題】 先導体及び保持体を埋設管から引き抜く際に、保持体と埋設管との間に介装されているシール部材が破損等することがない掘進機を提供する。
【解決手段】 泥水圧を加えながら地盤を掘進して埋設管を圧入することにより、該地盤に該埋設管による管路を構築する掘進機であって、前記埋設管45内に設けられるとともに、推進方向の先端に回転盤が回転可能に設けられ、かつ、該回転盤に該回転盤と一体に回転可能に少なくとも1つの掘削ビットが設けられる先導体と、該先導体を前記埋設管に保持する保持体15とからなる掘削装置と、該掘削装置に推進力を付与する推進装置とを備え、前記先導体又は前記保持体15と前記埋設管45との間に、それらの間をシールし又はシール状態を解除するシール手段20を設けた掘進機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘進機に関し、特に、泥水圧を加えながら地盤を掘進して埋設管を圧入することにより、地盤に埋設管による管路を構築するのに有効な掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に埋設管を圧入して管路を構築する工法には種々のタイプのものがあり、例えば、管路の始端に対応する地盤の部分に発進立坑を設け、終端に対応する地盤の部分に到達立坑を設け、発進立坑内に掘進機を設置し、掘進機の作動により地盤を発進立坑から到達立坑に向けて掘進しながら推進管(埋設管)を圧入し、地盤に発進立坑と到達立坑との間を連通する一連の管路を構築するように構成した工法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
このような工法に用いられる掘進機は、例えば、油圧シリンダ等からなる推進装置と、推進装置によって推進されるとともに、推進方向の先端に掘削ビットが設けられる掘削装置とを備えており、この掘進機の推進装置を発進立坑の内部に設置し、推進装置に推進管の基端を連結し、泥水圧を地盤に加えながら推進装置と掘削装置との協働によって地盤を発進立坑から到達立坑に向けて掘進して埋設管を圧入することで、地盤に発進立坑と到達立坑との間を連通する一連の管路を構築することができる。
【0004】
この場合、掘削装置は、先導体と先導体を埋設管に保持する保持体とを備え、先導体は、先導体ケーシングと、先導体ケーシングの推進方向の先端に回転可能に設けられる回転盤と、回転盤に設けられる少なくとも一つの掘削ビットと、先導体ケーシングの内部に設けられて、回転盤を回転駆動させる駆動源とを備え、保持体及び先導体の内部を介して地上の泥水循環装置から地盤の切羽に泥水圧が加えられるようになっている。
【0005】
また、先導体ケーシングと埋設管との間にはゴム等の弾性体からなるシール部材が介装され、このシール部材によって先導体ケーシングと埋設管との間がシールされ、地盤の掘削により生じた土砂や破砕粉等が埋設管と先導体ケーシングとの間を介して発進立坑側に浸入するのを防止している。
【非特許文献1】「SHスーパー工法(鋼管さや管方式)」カタログ;SHスーパー工法協会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような工法に用いられる掘進機にあっては、回転盤の掘削ビットを他の種類の掘削ビットに交換する場合等に、保持体及び先導体を埋設管から発進立坑側に引き抜き、この状態で回転盤の掘削ビットの交換作業を行っているが、保持体及び先導体を埋設管から引き抜く際に、地盤の掘削によって生じた土砂や破砕粉等がシール部材に作用し、シール部材が傷付いたり破損したりすることがあり、掘削ビットの交換作業の他にシール部材の交換作業が必要になり、その作業に時間と手間と費用がかかることになる。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、保持体及び先導体を埋設管から引き抜く作業を行っても、先導体ケーシングと埋設管との間をシールしているシール部材が傷付いたり破損したりすることがなく、掘削ビットの交換等の作業を短時間で容易に行うことができる掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、泥水圧を加えながら地盤を掘進して埋設管を圧入することにより、該地盤に該埋設管による管路を構築する掘進機であって、前記埋設管内に設けられるとともに、推進方向の先端に回転盤が回転可能に設けられ、かつ、該回転盤に該回転盤と一体に回転可能に少なくとも1つの掘削ビットが設けられる先導体と、該先導体を前記埋設管に保持する保持体とからなる掘削装置と、該掘削装置に推進力を付与する推進装置とを備え、前記先導体又は前記保持体と前記埋設管との間に、それらの間をシールし又はシール状態を解除するシール手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明による掘進機によれば、シール手段によって先導体又は保持体と埋設管との間がシールされ、又はシール状態が解除されることになるので、地盤の掘削の際には、シール手段によって先導体又は保持体と埋設管との間をシールすることにより、それらの間を介して掘削により生じた土砂や破砕粉が発進立坑側に浸入するのを防止できる。また、保持体及び先導体を埋設管から引き抜く場合には、シール手段による先導体又は保持体と埋設管との間のシール状態を解除することにより、シール手段が掘削により生じた土砂や破砕粉等によって傷付いたり損傷したりすることなく、保持体及び先導体を埋設管から引き抜くことが可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の掘進機であって、前記シール手段は、前記先導体又は前記保持体に設けられて、前記先導体又は前記保持体から前記埋設管の方向に拡縮可能なシール部材と、該シール部材を拡縮させる拡縮手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明による掘進機によれば、拡縮手段によりシール部材が先導体又は保持体から埋設管の方向に拡縮され、シール部材が埋設管に当接して先導体又は保持体と埋設管との間がシールされ、又はシール部材が埋設管から離間して先導体又は保持体と埋設管との間のシール状態が解除されることになる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の掘進機であって、前記拡縮手段は、前記先導体又は前記保持体に設けられるとともに、前記先導体又は前記保持体の軸線方向に進退可能なロッドを有するアクチュエータと、該アクチュエータのロッドの進退に追従して前記先導体又は前記保持体の半径方向に拡縮可能な支持部材とを備え、該支持部材によって前記シール部材が前記先導体又は前記保持体の半径方向に拡縮可能に支持されていることを特徴とする。
【0013】
本発明による掘進機によれば、アクチュエータの作動によってロッドを先導体又は保持体の軸線方向に進退させることにより、ロッドの進退に追従して支持部材が先導体又は保持体の半径方向に拡縮し、支持部材によって支持されているシール部材が先導体又は保持体の半径方向に拡縮し、シール部材が埋設管に当接して先導体又は保持体と埋設管との間がシールされ、又はシール部材が埋設管から離間して先導体又は保持体と埋設管との間のシール状態が解除されることになる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の掘進機であって、前記支持部材は、前記ロッドに連結されて前記ロッドと一体に前記先導体又は前記保持体の軸線方向に進退可能な押圧部材と、前記先導体又は前記保持体に設けられるとともに、一部が前記押圧部材の一部と係合して前記押圧部材の進退に追従して前記先導体又は前記保持体の半径方向に拡縮可能なホルダとを備え、該ホルダに前記シール部材が支持されていることを特徴とする。
【0015】
本発明による掘進機によれば、アクチュエータの作動によってロッドと一体に押圧部材を先導体又は保持体の軸線方向に進退させると、一部が押圧部材の一部と係合しているホルダが押圧部材の進退に追従して先導体又は保持体の半径方向に拡縮し、ホルダに支持されているシール部材が先導体又は保持体の半径方向に拡縮し、シール部材が埋設管に当接して先導体又は保持体と埋設管との間がシールされ、又はシール部材が埋設管から離間して先導体又は保持体と埋設管との間のシール状態が解除されることになる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように、本発明の掘進機によれば、掘削装置の先導体又は保持体と埋設管との間にシール手段を設け、このシール手段によって先導体又は保持体と埋設管との間をシールし、又はシール状態を解除するように構成したので、地盤を掘削する際には、シール手段によって先導体又は保持体と埋設管との間をシールすることにより、掘削により生じた土砂や破砕粉等が先導体又は保持体と埋設管との間を介して発進立坑側に浸入するのが阻止される。また、掘削ビットの交換等のために、先導体及び保持体を埋設管から引き抜く際には、シール手段による先導体又は保持体と埋設管との間のシール状態を解除することにより、掘削によって生じた土砂や破砕粉等によってシール手段が傷付けられたり損傷させられたりすることはなく、先導体及び保持体を埋設管から容易に引き抜くことができる。従って、掘削ビットの交換等のために先導体及び保持体を埋設管から引き抜く場合に、シール手段の損傷等によってシール手段を交換する必要がないので、シール手段の交換に要する時間と手間と費用を削減することができ、掘削ビットの交換等の作業を短時間で容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図8には、本発明による掘進機の一実施の形態が示されていて、この掘進機1は、泥水圧を加えながら地盤を掘進して埋設管45を圧入し、地盤に埋設管45による一連の管路を構築するのに有効なものであって、地盤を掘削する掘削装置2と、掘削装置2及び埋設管45を推進させる推進装置(図示せず)とを備えている。
【0018】
推進装置は、埋設管45及び掘削装置2を推進させる機能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、推進架台と、推進架台に設けられる推進ジャッキと、推進ジャッキを駆動させる駆動源とを備えたものを使用することができる。
【0019】
推進装置は、地盤に設けた発進立坑(図示せず)の底部に設置され、この状態で推進架台に埋設管45及び掘削装置2をセットし、掘削装置2を作動させた状態で推進ジャッキにより埋設管45及び掘削装置2に推進力を付与することにより、地盤に設けた到達立坑(図示せず)に向けて地盤を掘削しながら地盤に埋設管45を圧入し、地盤に発進立坑と到達立坑との間を連通する一連の管路を構築する。
【0020】
掘削装置2は、図1に示すように、埋設管45内の推進方向の先端側に設けられる先導体3と、先導体3の推進方向の後端側に一体に連結されるとともに、先導体3を埋設管45の内面側に保持し、先導体3の推進方向の先端に設けられる後述する回転盤5の回転時の反力をとる保持体15とから構成されている。
【0021】
先導体3は、図1〜図4に示すように、円筒状の先導体ケーシング4と、先導体ケーシング4の推進方向の先端に回転可能に設けられる回転盤5と、先導体ケーシング4内に設けられて、回転盤5を回転駆動させる駆動手段6と、回転盤5に設けられて回転盤5と一体に回転可能な固定掘削ビット10と拡縮掘削ビット11とを備えている。
【0022】
回転盤5は、先導体ケーシング4の外径と略同一径の円盤状をなすものであって、先導体ケーシング4の内部に設けられている駆動手段6に連結されて、駆動手段6の作動によって先導体ケーシング4の軸線周りに回転駆動するように構成されており、この回転盤5と後述する固定掘削ビット10及び拡縮掘削ビット11とが一体に回転駆動するように構成されている。
【0023】
駆動手段6は、先導体ケーシング4の内部に設けられるモータ7と、モータ7の出力軸に接続される減速機8とを備え、減速機8の出力軸にロータリージョイント9を介して回転盤5が連結され、モータ7の駆動により減速機8を介して回転盤5と一体に固定掘削ビット10及び拡縮掘削ビット11が回転駆動される。
【0024】
固定掘削ビット10は、回転盤5の推進方向の先端面の中心部に回転盤5の中心を中心として対向配置される一対の内側固定掘削ビット10aと、回転盤5の推進方向の先端面の周縁部に回転盤5の中心を中心として対向配置される一対の外側固定掘削ビット10bとを備え、この内側固定掘削ビット10aと外側固定掘削ビット10bとの協働により、掘削装置2の推進方向の前方側の地盤が掘削される。
【0025】
拡縮掘削ビット11は、回転盤5の外周部の2箇所に回転盤5の中心を中心として対向配置され、回転盤5の内部に設けられている拡縮手段12の作動により回転盤5の半径方向に拡縮するように構成されている。
【0026】
拡縮手段12は、回転盤5の半径方向に往復動可能な駆動部13aを有する拡縮ジャッキ13と、拡縮ジャッキ13の駆動部13aの先端に取り付けられるビット取付け部13bと、拡縮ジャッキ13を駆動させる駆動源(図示せず)とを備え、ビット取付け部13bに拡縮掘削ビット11が取り付けられている。
【0027】
拡縮掘削ビット11は、表面に複数の刃部を有する略円盤状をなすものであって、回転盤5の外周部に設けられている円形状の支持孔5a内に拡縮可能に支持され、この支持孔5a内に全体が収納される収納位置と、この支持孔5aから表面部が突出する突出位置との間を拡縮可能に構成されている。
【0028】
この場合、拡縮掘削ビット11と回転盤5の支持孔5aとの隙間は、拡縮掘削ビット11の拡縮を許容し、土砂や破砕粉等の噛み込みを阻止可能な微少寸法に設定され、この隙間によって土砂や破砕粉等が拡縮ジャッキ13の駆動部13aに噛み込むのが防止される。
【0029】
拡縮ジャッキ13の作動によって拡縮掘削ビット11を突出位置に位置決めし、この状態で回転盤5を回転駆動させることにより回転盤5と拡縮掘削ビット11とが一体に回転駆動し、回転盤5の外周面よりも外方の地盤が掘削され、又は地盤に埋設されている既設の埋設管等の障害物が破砕される。
【0030】
回転盤5には、回転盤5を推進方向(厚み方向)に貫通する貫通孔5bが複数箇所に設けられ、この貫通孔5bを介して固定掘削ビット10(内側固定掘削ビット10a及び外側固定掘削ビット10b)及び拡縮掘削ビット11によって地盤を掘削することによって生じた土砂や破砕された既設の埋設管等の障害物の破砕粉等が先導体ケーシング4の内部に導かれ、先導体ケーシング4の内部に配置されている排出管40を介して真空吸引により発進立坑側に排出され、発進立坑から地上に排出されて回収される。
【0031】
回転盤5の推進方向の後端面と先導体ケーシング4の推進方向の先端面との間には所定の隙間14が設けられ、この隙間14を介して拡縮掘削ビット11によって地盤を掘削することにより生じた土砂や破砕された既設の埋設管等の障害物の破砕粉等が先導体ケーシング4の内部に導かれ、排出管40を介して真空吸引により発進立坑側に排出され、発進立坑から地上に排出されて回収される。
【0032】
この場合、隙間14に臨む先導体ケーシング4の内周面の部分及び回転盤5の後端面の部分には、隙間14を入口側から出口側に向かって順次狭くするクラッシャー部14aが設けられ、このクラッシャー部14aによって土砂や破砕粉等が更に細かく砕かれて先導体ケーシング4の内部に導かれ、排出管40を介して発進立坑側に排出され、発進立坑から地上に排出されて回収される。
【0033】
先導体ケーシング4の内部には、地盤の切羽に泥水を循環させるための送泥管(図示せず)と排泥管(図示せず)とが設けられ、この送泥管及び排泥管を介して地盤の切羽に泥水圧が加えられ、切羽の安定が保たれる。
【0034】
送泥管及び排泥管は、先導体ケーシング4及び後述する保持体ケーシング16の内部を介して発進立坑側に引き出されるとともに、発進立坑を介して地上に引き出され、地上に設置されている泥水循環装置(図示せず)に接続される。泥水循環装置を作動させることにより、送泥管及び排泥管を介して地盤の切羽に所定の泥水圧が加えられ、この泥水圧によって切羽の安定が保たれる。
【0035】
保持体15は、図5及び図6に示すように、円筒状の保持体ケーシング16と、保持体ケーシング16の外周部に設けられて、保持体ケーシング16の半径方向に拡縮可能なクランプ17と、保持体ケーシング16の内部に設けられて、クランプ17を拡縮させる拡縮手段18とを備えている。保持体15は、図1に示すように、保持体ケーシング16の掘進方向の先端が先導体ケーシング4の掘進方向の後端にねじによって連結されることで、先導体3に一体に連結されている。
【0036】
クランプ17は、保持体ケーシング16の外周部の複数箇所(本実施の形態では4箇所)に設けられ、表面が保持体ケーシング16の外周面と面一となる収納位置と、表面が保持体ケーシング16の外周面から外方に所定量突出する突出位置との間を拡縮可能に構成されている。
【0037】
クランプ17は、円弧板状をなすものであって、収納位置に位置決めされた状態で表面が保持体ケーシング16の外周面と面一となる曲率の曲面に形成されている。クランプ17の表面にはローレット加工等によって凹凸部が設けられ、この凹凸部によってクランプ17の表面を埋設管45の内面に当接させた際に両者間の摩擦力が高められ、回転盤5を回転させたときに、保持体15及び先導体3が埋設管45に対して相対的に回転するのが阻止される。
【0038】
拡縮手段18は、拡縮ジャッキ(図示せず)と、拡縮ジャッキを駆動させる駆動源とを備え、拡縮ジャッキを駆動させてクランプ17を拡縮させることにより、クランプ17が収納位置と突出位置との間を往復動し、突出位置でクランプ17の表面が埋設管45の内面に当接し、収納位置でクランプ17の表面が埋設管45の内面から離間するように構成されている。
【0039】
保持体ケーシング16の外周部には、図5〜図8に示すように、シール部材35と、シール部材35を拡縮させる拡縮手段21とからなるシール手段20が設けられ、このシール手段20のシール部材35を拡縮させることにより、保持体ケーシング16と埋設管45との間がシールされ、又はシール状態が解除される。
【0040】
なお、本実施の形態においては、シール手段20の拡縮手段21を保持体ケーシング16の周方向に所定の間隔ごと(60度間隔ごと)に6箇所に設けているが、拡縮手段21を保持体ケーシング16の5箇所以下、又は7箇所以上に設けるように構成してもよい。
【0041】
シール部材35は、ゴム等の弾性体からなる断面略三角形状の環状をなすものであって、頂部が後述する支持部材25のホルダ31の外周面から外方向(埋設管45方向)に所定量に突出するように、ホルダ31によって保持体ケーシング16の半径方向に拡縮可能に支持されている。
【0042】
拡縮手段21は、保持体ケーシング16の内面側に設けられる油圧又は空圧(本実施の形態では油圧)のアクチュエータ22と、アクチュエータ22によって保持体ケーシング16の半径方向に拡縮される支持部材25とを備え、支持部材25によってシール部材35が保持体ケーシング16の半径方向に拡縮可能に支持されている。
【0043】
アクチュエータ22は、保持体ケーシング16の内面側に固定されるシリンダ本体22aと、シリンダ本体22aに設けられて、保持体ケーシング16の軸線方向に進退可能なロッド22bとを備え、ロッド22bの先端に連結軸23を介して後述する支持部材25の押圧部材26が連結されている。
【0044】
支持部材25は、アクチュエータ22のロッド22bの先端に連結軸23を介して取り付けられて、ロッド22bと一体に保持体ケーシング16の軸線方向に進退可能な押圧部材26と、一部が押圧部材26の一部と係合して、押圧部材26の保持体ケーシング16の軸線方向への進退に追従して、保持体ケーシング16の半径方向に進退可能なホルダ31とを備え、ホルダ31によってシール部材35が保持体ケーシング16の半径方向に拡縮可能に支持されている。
【0045】
支持部材25の押圧部材26及びホルダ31は、保持体ケーシング16の外周側に設けられている環状の凹部16a内に収納され、押圧部材26が凹部16aの底面側に設けられて、保持体ケーシング16の軸線方向に進退可能に構成され、ホルダ31が押圧部材26の外周側に設けられて、保持体ケーシング16の半径方向に進退可能に構成されている。
【0046】
保持体ケーシング16の凹部16aの側面には、軸線方向に貫通する孔16bが設けられ、この孔16b内に一端にフランジを有する筒状の軸受24が取り付けられ、この軸受24によってアクチュエータ22のロッド22bの先端の連結軸23が保持体ケーシング16の軸線方向に進退可能に支持されている。
【0047】
押圧部材26の外周面の一部は、保持体ケーシング16の軸線に対して所定の角度をなすテーパ面26aに形成され、このテーパ面26aと後述するホルダ31の第2ホルダ33のテーパ面33aとが相互に係合し、これにより、押圧部材26の保持体ケーシング16の軸線方向への進退に追従して、後述するホルダ31が保持体ケーシング16の半径方向へ進退するように構成されている。
【0048】
保持体ケーシング16の凹部16aの内面には一対の案内プレート30(第1案内プレート30a及び第2案内プレート30b)が設けられ、この一対の案内プレート30(第1案内プレート30a及び第2案内プレート30b)によってホルダ31が保持体ケーシング16の半径方向に進退可能に支持されている。
【0049】
ホルダ31は、第1案内プレート30a側に設けられて、第1案内プレート30a上を保持体ケーシング16の半径方向にスライド可能な第1ホルダ32と、第2案内プレート30b側に設けられて、第2案内プレート30b上を保持体ケーシング16の半径方向にスライド可能な第2ホルダ33とを備えている。
【0050】
第1ホルダ32の第2ホルダ33との対向面、及び第2ホルダ33の第1ホルダ32との対向面には、それぞれ断面略三角形状の凹部32a、33bが設けられ、これらの凹部32a、33b間にシール部材35を介装させた状態で、第1ホルダ32と第2ホルダ32との間をボルト34で一体に連結することにより、第1ホルダ32と第2ホルダ33との間でシール部材35が挟持固定される。
この場合、シール部材35の頂部が第1ホルダ32及び第2ホルダ33の外周面よりも外方に所定量突出するように、シール部材35、第1ホルダ32、及び第2ホルダ33の各部の寸法が設定されている。
【0051】
第2ホルダ33の内周側の押圧部材26のテーパ面26aと対向する部分は、押圧部材26のテーパ面26aと合致するテーパ面33aに形成され、この第2ホルダ33のテーパ面33aが押圧部材26のテーパ面26aと相互に係合するように、押圧部材26の外周側に第1ホルダ32及び第2ホルダ33が設けられている。これにより、押圧部材26の保持体ケーシング16の軸線方向への進退に追従して、第1ホルダ32及び第2ホルダ33が保持体ケーシング16の半径方向へ進退することになる。
【0052】
そして、上記のように構成した本実施の形態による掘進機1を用いて地盤に埋設管45による管路を構築するには、地盤に設けた発進立坑の底部に推進装置を設置し、推進装置の推進架台に掘削装置2及び埋設管45をセットする。
【0053】
この場合、予め埋設管45の内部に掘削装置2の先導体3と保持体15とを組み込んでおく。また、図7に示すように、保持体ケーシング16の外周部に設けられている各シール手段20の拡縮手段21を作動させて、各シール手段20の拡縮手段21によってシール部材35を保持体ケーシング16から突出させて埋設管45の内面に当接させ、保持体ケーシング16と埋設管45との間をシールしておく。
【0054】
そして、保持体15の拡縮ジャッキ13を作動させてクランプ17を埋設管45の内面に当接させ、保持体15を介して先導体3を埋設管45の内面側に保持し、先導体3の回転盤5の回転時に先導体ケーシング4が埋設管45に対して相対的に回転するのを阻止する。
【0055】
そして、地上に設置されている泥水循環装置を作動させて、送泥管及び排泥管を介して地盤の切羽に泥水圧を加え、この状態で先導体3のモータ7を作動させて回転盤5と一体に固定掘削ビット10(内側固定掘削ビット10a及び外側固定掘削ビット10b)及び拡縮掘削ビット11を回転駆動させ、推進装置の推進ジャッキを作動させて埋設管45と一体に掘削装置2を地盤に設けた到達立坑に向けて推進させ、固定掘削ビット10(内側固定掘削ビット10a及び外側固定掘削ビット10b)と拡縮掘削ビット11との協働により地盤を掘進しながら埋設管45を地盤に圧入していく。
【0056】
この場合、地盤の切羽には地上の泥水循環装置によって泥水圧が加えられているので、切羽の安定を保った状態で地盤の掘削作業を行うことができる。また、掘削装置2の推進方向の前方側の地盤を掘削することによって生じた土砂等は回転盤5の貫通孔5bを介して先導体ケーシング4の内部に導かれ、排出管40を介して真空吸引により発進立坑側に排出され、発進立坑から地上に排出されて回収される。又は、回転盤5と先導体ケーシング4との間の隙間14を介して先導体ケーシング4内に導かれ、排出管40を介して真空吸引により発進立坑側に排出され、発進立坑から地上に排出されて回収される。
【0057】
また、地盤の状況に応じて拡縮掘削ビット11を拡縮ジャッキ13の作動により拡縮させ、回転盤5の外周面よりも半径方向の外方の地盤を掘削し、又はその地盤に埋設されている既設の埋設管等の障害物を破砕する。この際に生じる土砂や破砕粉等は回転盤5と先導体ケーシング4との間の隙間14を介して先導体ケーシング4の内部に導かれ、排出管40を介して真空吸引により発進立坑側に排出され、発進立坑から地上に排出されて回収される。
【0058】
なお、掘削によって生じた土砂や破砕粉等が埋設管45と先導体ケーシング4及び保持体ケーシング16との間に浸入し、それらの間を介して発進立坑側に浸入しようとするが、図7に示すように、保持体ケーシング16と埋設管45との間にはシール手段20が設けられ、シール手段20のシール部材35によってそれらの間がシールされているので、それらの間を介して発進立坑側に土砂や破砕粉等が浸入するのが防止される。
【0059】
そして、上記のように掘削装置2により地盤を掘進しながら、埋設管45を順次継ぎ足して地盤に圧入していくことにより、発進立坑と到達立坑との間の地盤に全長に亘って埋設管45を埋設することができ、その部分に一連の管路を構築することができる。
【0060】
上記のように構成した本実施の形態による掘進機1にあっては、掘削装置2の保持体15の保持体ケーシング16の外周部に拡縮手段21とシール部材35とからなるシール手段20を設け、図7及び図8に示すように、シール手段20のシール部材35によって保持体ケーシング16と埋設管45との間をシールし、又はシール状態を解除するように構成したので、地盤を掘削する際には、シール手段20のシール部材35によって保持体ケーシング16と埋設管45との間をシールすることにより、掘削によって生じた土砂や破砕粉等が埋設管45と先導体ケーシング4及び保持体ケーシング16との間を介して発進立坑側に浸入するのを防止できる。また、回転盤5の掘削ビット10、11を交換等するために、先導体3及び保持体15を埋設管45から引き抜く場合には、シール手段20のシール部材35による保持体ケーシング16と埋設管45との間のシール状態を解除することにより、シール手段20のシール部材35が掘削により生じた土砂や破砕粉等によって傷付いたり損傷したりすることなく、先導体3及び保持体15を埋設管45から容易に引き抜くことができる。
【0061】
従って、回転盤5の掘削ビット10、11の交換等のために先導体3及び保持体15を埋設管45から引き抜く場合に、シール手段20のシール部材35が損傷等することはないので、シール部材35を新しいものと交換する必要はなく、シール部材35の交換に要する時間と手間と費用を削減することができ、掘削ビット10、11の交換等の作業を短時間で容易に行うことができる。
【0062】
なお、上記の説明においては、シール手段20を保持体15の保持体ケーシング16の外周部に設けたが、シール手段20を先導体3の先導体ケーシング4の外周部に設けてもよいものであり、また、シール手段20を保持体ケーシング16と先導体ケーシング4の両方に設けてもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による掘進機の一実施の形態を示した概略図であって、掘削装置の先導体の縦断面図である。
【図2】図1に示すものの左側面図である。
【図3】図1のA矢視図である。
【図4】図3の左側面図である。
【図5】掘削装置の保持体の断面図である。
【図6】図5のB矢視図である。
【図7】図5の部分拡大図であって、シール部材を埋設管の内面に当接させた状態を示した説明図である。
【図8】図5の部分拡大図であって、シール部材を埋設管の内面から離間させた状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 掘進機
2 掘削装置
3 先導体
4 先導体ケーシング
5 回転盤
5a 支持孔
5b 貫通孔
6 駆動手段
7 モータ
8 減速機
9 ロータリージョイント
10 固定掘削ビット
10a 内側固定掘削ビット
10b 外側固定掘削ビット
11 拡縮掘削ビット
12 拡縮手段
13 拡縮ジャッキ
13a 駆動部
13b ビット取付け部
14 隙間
14a クラッシャー部
15 保持体
16 保持体ケーシング
16a 凹部
16b 孔
17 クランプ
18 拡縮手段
20 シール手段
21 拡縮手段
22 アクチュエータ
22a シリンダ本体
22b ロッド
23 連結軸
24 軸受
25 支持部材
26 押圧部材
26a テーパ面
30 案内プレート
30a 第1の案内プレート
30b 第2案内プレート
31 ホルダ
32 第1ホルダ
32a 凹部
33 第2ホルダ
33a テーパ面
33b 凹部
34 ボルト
35 シール部材
40 排出管
45 埋設管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥水圧を加えながら地盤を掘進して埋設管を圧入することにより、該地盤に該埋設管による管路を構築する掘進機であって、
前記埋設管内に設けられるとともに、推進方向の先端に回転盤が回転可能に設けられ、かつ、該回転盤に該回転盤と一体に回転可能に少なくとも1つの掘削ビットが設けられる先導体と、該先導体を前記埋設管に保持する保持体とからなる掘削装置と、
該掘削装置に推進力を付与する推進装置とを備え、
前記先導体又は前記保持体と前記埋設管との間に、それらの間をシールし又はシール状態を解除するシール手段を設けたことを特徴とする掘進機。
【請求項2】
前記シール手段は、前記先導体又は前記保持体に設けられて、前記先導体又は前記保持体から前記埋設管の方向に拡縮可能なシール部材と、該シール部材を拡縮させる拡縮手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の掘進機。
【請求項3】
前記拡縮手段は、前記先導体又は前記保持体に設けられるとともに、前記先導体又は前記保持体の軸線方向に進退可能なロッドを有するアクチュエータと、該アクチュエータのロッドの進退に追従して前記先導体又は前記保持体の半径方向に拡縮可能な支持部材とを備え、該支持部材によって前記シール部材が前記先導体又は前記保持体の半径方向に拡縮可能に支持されていることを特徴とする請求項2に記載の掘進機。
【請求項4】
前記支持部材は、前記ロッドに連結されて前記ロッドと一体に前記先導体又は前記保持体の軸線方向に進退可能な押圧部材と、前記先導体又は前記保持体に設けられるとともに、一部が前記押圧部材の一部と係合して前記押圧部材の進退に追従して前記先導体又は前記保持体の半径方向に拡縮可能なホルダとを備え、該ホルダに前記シール部材が支持されていることを特徴とする請求項3に記載の掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−249896(P2009−249896A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98417(P2008−98417)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(504428751)株式会社トッケン (8)
【出願人】(507273297)トラストテック株式会社 (4)
【出願人】(599070743)株式会社日晃機械商会 (2)
【Fターム(参考)】