説明

接着シート

【課題】接着剤層への巻き跡の転写が抑制され、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生が抑制される接着シートを提供する。
【解決手段】長尺の剥離基材1と、前記剥離基材上に、分散配置され、部分的に形成された接着剤層2と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着剤層3とを有する接着シートであって、前記接着剤層が分散配置されていない剥離基材上に、接着剤層と同じ厚み、もしくはそれ以上の厚みを持つ支持層を有した接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと半導体チップ搭載用支持部材の接合には、接着剤層として銀ペーストが主に使用されていた。近年の半導体チップの小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化、細密化が要求されるようになってきた。さらに、携帯機器等の小型化、高密度化の要求に伴って、内部に複数の半導体チップを積層した半導体装置が開発、量産されている。このような状況において、前記銀ペーストでは、はみ出しや半導体チップの傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、接着剤層の膜厚の制御困難性、および接着剤層のボイド発生などにより前記要求に対処しきれなくなってきている。そのため、近年、フィルム状の接着剤が使用されるようになってきた。
【0003】
このフィルム状接着剤の代表的な使用方法の一つにウェハ裏面貼付方式がある。これは、まず半導体ウェハの裏面にフィルム状接着剤を貼り付け、さらにフィルム状接着剤の他面にダイシング用基材シートを貼り合わせ、その後前記半導体ウェハからダイシングによって、個片化したフィルム状接着剤層付き半導体素子をピックアップし、それを支持部材に接合し、その後の加熱、硬化、ワイヤボンド、モールドなどの工程を経ることにより半導体装置が得られることになる。また、このフィルム状接着剤層と前記ダイシング用基材シートを一体化した接着シート(ダイボンドダイシング一体型積層シート)なるものがあり、その形状は、長尺の剥離シートに、ウェハ径よりも大きく真円形状にプリカットされたフィルム状接着剤層と、そのフィルム状接着剤層よりも更に大きく真円形状にプリカットされたダイシング用基材シートを積層したものが一般的である(例えば特許文献1〜3参照)。
【0004】
上記プリカット加工が施された接着シート220は、通常、例えば図1に示すような外径が一定な円筒状の巻き芯211に巻きつけられ、図1(a)に示すように、ロール状の接着シートロール230として提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−226796号公報
【特許文献2】特開2002−158276号公報
【特許文献3】特開平2−32181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、図1に示すようなプリカット加工が施された接着シート220を、図1(a)に示す巻き芯等の外径が一定な円筒状の巻き芯211に巻きつけた接着シートロール230では、以下のような不具合が生じることを見出した。
【0007】
上記プリカット加工が施された接着シートにおいては、図1に示すように、部分的に接着剤層2と、粘着剤層3とを積層するため、接着剤層2の積層部分が他の部分よりも厚くなる。そのため、接着シートロール230の直径が大きくなったり、巻き取り時の張力が高くなったりした場合、図2に示すように、接着剤層の部分に他の接着剤層の巻き跡12が転写され、端面図である図2(b)に示すように、接着シートの平滑性が損なわれることがある。また、接着剤層の厚みが厚くなった場合、巻き跡12が更に転写されやすくなる。これら巻き跡12の転写により接着シートに平滑性の欠陥があると、接着シートを半導体ウェハへ貼り付けた時に半導体ウェハと接着剤層との間に空気を巻き込み、半導体装置組み立て方法上、不具合が生じることがある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、接着剤層への巻き跡の転写が抑制され、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生が抑制される接着シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の通りである。
(1) 長尺の剥離基材と、前記剥離基材上に、分散配置され、部分的に形成された接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着剤層とを有する接着シートであって、前記接着剤層が分散配置されていない剥離基材上に、接着剤層と同じ厚み、もしくはそれ以上の厚みを持つ支持層を有した接着シート。
(2) 接着剤層、又は、粘着剤層が打ち抜き加工によって形成された(1)に記載の接着シート。
(3) 剥離基材上に接着剤層を形成し、その後、前記接着剤層に打ち抜き加工を施し、さらに、前記接着剤層に粘着剤層を積層し、その後、前記粘着剤層に打ち抜き加工を施し、さらに、前記接着剤層が形成されていない剥離基材上に支持層を積層してなる、(1)に記載の接着シート。
(4) 剥離基材上に接着剤層を形成し、その後、前記接着剤層に打ち抜き加工を施し、さらに、予め打ち抜き加工を施した粘着剤層を前記接着剤層に積層し、さらに、前記接着剤層が形成されていない剥離基材上に支持層を積層してなる、(1)に記載の接着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、接着剤層に巻き跡が転写されることを抑制し、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生を抑制することが可能な接着シートを提供することができる。本発明において、プリカット形状の転写が要因となる、顧客使用時のボイド発生抑制に対して効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、従来の接着シートの一例を示す平面図であり、(b)は(a)のZ−Z断面の一例である。
【図2】(a)は、巻き跡が転写された、従来の接着シートの一例を示す平面図であり、(b)は(a)のY−Y断面の一例である。
【図3】(a)、(b)は、本発明の接着シートの一例を示す平面図であり、(c)は、(a)、(b)のX−X断面の一例である。
【図4】本発明の接着シートの支持層の形状の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の接着シートについて説明するが、これに限定されるものではない。
本発明の接着シートは、長尺の剥離基材と、前記剥離基材上に、分散配置され、部分的に形成された接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着剤層とを有する接着シートであって、前記接着剤層が分散配置されていない剥離基材上に、接着剤層と同じ厚み、もしくはそれ以上の厚みを持つ支持層を有した接着シートである。
すなわち、本発明は、剥離基材上の長手方向に、部分的に形成された接着剤層が分散配置され、さらに部分的に形成された粘着剤層が、接着剤層を覆い、且つ、接着剤層の周囲で剥離基材に接するように形成された接着シートであって、前記接着剤層が分散配置されていない粘着剤層の一部分上に、接着剤層と同じ、もしくはそれ以上の厚みを持つ支持層を有しており、ロール状に巻いた場合に支持層と接着剤層が重ならない様に配置している。
【0013】
本発明の接着シートは、所定の平面形状に形成された接着剤層を有する接着シートであるが、剥離基材上の、半導体装置を製造する場合等に必要とされる接着剤層及び粘着剤層以外の部分に、これらの積層部分と同等又はそれ以上の膜厚を有する支持層が形成されていることにより、接着シートをロール状に巻き取った際に、接着剤層に他の接着剤層の巻き跡が転写されることを十分に抑制することができる。従来の接着シートでは、接着剤層と粘着剤層との積層部分のみが他の部分に比べて厚くなるため、ロール状に巻き取ると、この積層部分に巻き取りの圧力が集中していた。そのため、この積層部分と粘着剤層のみの部分との段差が巻き取りの圧力により他の接着剤層に転写されることとなる。これに対して本発明の接着シートは、支持層を積層部分の直近に備えることで、プリカット加工が施された接着シートにかかっていた巻き取りの圧力を分散すると同時に、上記段差の影響を最小限に抑えることが可能となる。結果、上記積層部分と粘着剤層のみの部分との段差が他の接着剤層に転写されることを抑制することが可能となる。そして、接着剤層への巻き跡の転写が抑制されることにより、半導体ウェハ等の被着体に接着剤層を貼り付ける際に、空気の巻き込みによるボイド等の発生を十分に抑制することができる。
【0014】
また、粘着剤層は、基材フィルム付き粘着剤層でもよく、例えば、基材フィルムと粘着剤層の両方が、接着シートの接着剤層を覆っていてもよい。
また、上記支持層は、接着剤層が部分配置されていない粘着剤層上に積層され、且つ、粘着剤層の一部が剥離基材と接することが好ましい。支持層が粘着剤層上ではなく、剥離基材上に積層されても(剥離基材表面に粘着剤層がない場合)、接着剤層への巻き跡の転写を抑制することは可能ではあるが、ラミネート工程等においての作業性を考慮すると、好ましくない。すなわち、支持層は、接着剤層が部分配置されていない箇所において、粘着剤層と剥離基材の層間に形成されることが好ましい。
【0015】
このように、粘着剤層の一部が剥離基材に接していることにより、粘着剤層が剥離基材に貼り付けられた状態を十分に維持することができ、接着シートとして必要な特性を維持することができる。
【0016】
また、本発明の接着シートにおいて、接着剤層は、特に制限されないが、例えば、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、熱可塑性接着剤、及び、酸素反応性接着剤等により構成される。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着剤として半導体素子の固定に使用されることを考慮すると、接着剤層は熱硬化性接着剤により構成されていることが好ましい。また、接着剤層の厚みは、通常、1〜100μmである。
【0017】
熱硬化性接着剤としては、熱により硬化するものであれば特に制限はなく、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソジアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ熱重合性成分を含むものが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着シートとしての耐熱性及び熱硬化による接着力を考慮すると、前記の熱重合性成分と熱可塑性樹脂とを含有してなる熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明の接着シートにおいて、粘着剤層は、高エネルギー線又は熱によって硬化する(すなわち、粘着力を制御できる)ものが好ましく、高エネルギー線によって硬化するものがより好ましく、紫外線によって硬化するものが特に好ましい。
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来から種々のタイプが知られている。それらの中から、高エネルギー線の照射によって、接着剤層に対する粘着力が低下するものを適宜選んで用いることが好ましい。
また、粘着剤層の厚みは、通常、1〜200μmである。
【0019】
上記粘着剤としては、特に制限されないが、例えば、ジオール基を有する化合物、イソシアネート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ジアミン化合物、尿素メタクリレート化合物、側鎖にエチレン性不飽和基を有する高エネルギー線重合性共重合体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
また、本発明の接着シートにおいて、剥離基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポイエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。また、剥離基材の厚みは、通常、1〜100μmである。
【0021】
また、本発明の接着シートとしては、例えば、ダイシングダイボンディング一体型フィルム:FH−4026T−60(日立化成工業株式会社製、型番)等が使用できる。
【0022】
また、本発明の接着シートにおいて、剥離基材は長尺のものであり、支持層は少なくとも剥離基材の長手方向に分散配置された接着剤層の間に形成されており、接着剤層と支持層が重ならない様に配置されている。
また、支持層4は、図3(a)に示したように、剥離基材1の短手方向端部に、前記長手方向に沿って2列に等間隔に配置されることが好ましい。また、接着剤層2の間には、少なくとも1対の支持層4が配置されることが好ましいが、図3(b)に示したように、2対の支持層4が配置されていてもよく、さらに3対以上配置されていてもよい。
また、図3(c)に示したように、支持層4は、剥離基材1と粘着剤層3の層間に形成されることが好ましい。
【0023】
また、本発明の接着シートの支持層として使用できるものは、特に限定しないが、例えば、粘着力を有するシールやテープ等が好ましい。なお、支持層として用いられるシールやテープは、粘着剤層の粘着力により貼り付けることが可能な場合は、支持層自体に粘着力を必要としない。しかし、粘着剤層から剥離してしまう場合は、支持層の粘着剤層が積層される面に、粘着剤が塗布されたものを用いることが好ましい。
【0024】
支持層として用いられるシールやテープは、接着剤層が積層されている部分と粘着剤層のみが積層される部分の段差を埋める高さが必要である。よって、支持層の厚みは、接着剤層と同じ厚み、もしくはそれ以上の厚みである。
本発明の接着シートにおいて、接着剤層の厚みは、1〜100μmが好ましく、5〜60μmがより好ましい。従って、支持層の厚みは、接着剤層と同じ膜厚、例えば1〜100μmが好ましく、5〜60μmがより好ましく、更には接着剤層の膜厚の1.0〜1.2倍であることが特に好ましい。
【0025】
支持層として用いられるシールやテープの材質は、特に制限はないが、接着シートはクリーンルーム内で使用されることから、プラスチック材であることが好ましい。
例えば、市販品としては、支持層として、両面粘着テープ:S7760HBK(主成分アクリル、厚み60μm、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)等が使用できる。
【0026】
支持層として用いられるシールやテープの形状としては、特に制限はなく、支持層が積層された粘着剤層の一部が剥離基材と接していれば良い。形状としては、円形、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、星型、ドーナツ型などが挙げられるが、支持層を粘着剤層上に積層するのに容易な形状であることを考慮すると、複雑な形でないものの方が好ましい。なお、図4に、支持層の形状の例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0027】
支持層が積層される位置としては、連続する接着シートの中にあって、接着シートをロール状に巻き取った際に接着剤層に重ならなく、更に接着シートの短手方向端部から1mm以上内側に存在することが好ましく、更に好ましくは3mm以上内側に、最も好ましくは5mm以上内側に位置することが好ましい。配置される場所が1mm未満の場合、粘着剤層と剥離基材との接着面積が十分でないため、半導体ウェハと接着シートをラミネートする工程にて支持層と剥離基材の間で剥離が発生する不具合が生じる可能性がある。そのため、上記範囲内であれば支持層の位置は特に規定されるものではない。
【0028】
支持層の面積は、接着シートの端部からの距離が適正である範囲で設置することができる。支持層が、接着シートの端部の粘着剤層と同一の大きさ、もしくは、はみ出すような面積となった場合、半導体ウエハと接着シートをラミネートする際に支持層と剥離基材の間で剥離が発生する不具合が生じる可能性がある。
支持層は、圧力を分散させ巻き跡の転写をより低減する観点から、幅広く形成されていることが好ましいが、いくつかに分けて配置する事も可能である。支持層の大きさとしては面積が0.03cm以上が好ましく、より好ましくは0.19cm以上であり、更に好ましくは0.78cm以上であり、最も好ましくは3.14cm以上である。支持層の面積が0.03cm未満の場合は、ロール状に巻き取った際の応力分散効果が得られないため、期待する効果を得ることができない。
【0029】
支持層は、その形状、大きさ、位置について特に制限されるものではない。支持層の形状は、断続的でも連続的でもよいが、作製工程の観点から連続的に配置されているほうが好ましい。
【0030】
支持層は、圧力を分散させ巻き跡の転写をより低減する観点から、接着剤層に重ならない部分において、剥離基材の短手方向についてもより幅広く形成されていることが好ましい。
【0031】
接着シートは、剥離基材上に接着剤層が何らかの形で形成されており、その形状とは無関係に粘着剤層が何らかの形に形成されており、半導体素子のピックアップ工程を考慮すると形成された接着剤層が、粘着剤層に覆われている。上記の覆われた状態としては、接着剤層と粘着剤層が同じ大きさで、接着剤層上に粘着剤層が存在している状態などが考えられるが、ウェハリングと半導体素子の大きさの関係上、一部は粘着剤層が接着剤層よりも大きく、その部分は、剥離基材と、接着剤層と、粘着剤層とがこの順に備えた形状である。さらに接着剤層よりも粘着剤層が大きく、接着剤層が包み込まれており、接着剤層の周囲が、剥離基材や粘着剤層と直接接している状態である。
【0032】
部分的に形成された接着剤層の形状としては特に制限はなく、半導体素子への貼付けが容易な形が好ましい。半導体素子への貼付けが容易な形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などが挙げられるが、現在のダイシング工程前の半導体素子の形状を考慮すると円形もしくは円形に順ずる形状が好ましい。
さらに部分的に形成された粘着剤層の形状としては特に制限はなく、ウェハリングと密着が取れる形であれば良い。ウェハリングとの密着を取る形としては、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形、星型などが挙げられるが、現在のウェハリングの形状と半導体素子の形状を考慮すると円形もしくは円形に順ずる形状が好ましい。さらに半導体素子との貼付けを考慮すると接着剤層の形状と似た形がより好ましい。
【0033】
本発明の接着シートの製造法の部分的に層を形成する方法としては、特に制限がなく、剥離基材に部分的に層を形成するのが容易な方法が好ましい。部分的に接着剤層を形成するために容易な方法としては、接着剤層を剥離基材に塗布する際にあらかじめ部分的にワニス等の原材料を分布させておく方法や剥離基材に何らかのコーティングをしてワニス等の原材料をコーティング部から妨げるようにし接着剤層を塗布するなどの方法が挙げられるが、作業の簡便さを考慮すると、あらかじめ剥離基材の全面に接着剤層を塗布法により形成し、打ち抜き加工を施して不要部分を取り除く方法がより好ましい。粘着剤層を部分的に形成する方法も同様に打ち抜き加工を施して不要部分を取り除く方法が好ましい。
なお、打ち抜き加工は、一般的な精密プレス機を使用した、ハーフカットなどにて行うことが可能である。
【0034】
部分的に形成された接着剤層と接着剤層とは無関係に部分的に形成された粘着剤層を有する接着シートを製造する方法としては、特に制限はなく、上記の部分的に層を形成する方法を用いて製造する方法が好ましいが、技術的にかつ作業的に容易な方法としては、打ち抜き加工を行った剥離基材上の接着剤層と別の剥離基材上に打ち抜き加工を行った粘着剤層を貼り合わせる方法と、打ち抜き加工により接着剤層が部分的に形成されている剥離基材に粘着剤層を貼り合わせ、その後に粘着剤層に打ち抜き加工を施し不要部分を除去する方法が挙げられる。どちらも位置合わせの必要があり、位置合わせ工程を削除する方法としてあらかじめ必要な幅に形成され打ち抜き加工前の剥離基材上の接着剤層に粘着剤層を貼り合わせ、粘着剤層と接着剤層を同時に打ち抜く方法がより好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0036】
接着シートとして、ダイシングダイボンディング一体型フィルム(日立化成工業株式会社製、型番:FH−4026T−60、剥離基材の厚さ:38μm、剥離基材の短手方向における幅:39cm、接着剤層の厚さ:60μm、接着剤層の形状:円形、接着剤層の直径:32cm、粘着剤層の厚さ:100μm、粘着剤層の形状:円形、粘着剤層の直径:37cm、粘着剤層及び接着剤層の間隔は、粘着剤層の中心とその隣に位置する粘着剤層の中心との距離:37.8cm)を用いた。すなわち、上記ダイシングダイボンディング一体型フィルムにおいては、剥離基材の前記短手方向中心部に、前記長手方向に沿って1列に、等間隔に接着剤層及び粘着剤層が形成されている。
【0037】
支持層として、両面粘着テープ:S7760HBK(主成分アクリル、厚み60μm、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製)を所定の形状にカットして使用した。
前記支持層及び粘着剤層を、上記接着シートの短手方向端部の剥離基材に貼り付け、支持層が、粘着剤層と剥離基材の層間に積層されるようにし、さらに、前記ダイシングダイボンディング一体型フィルム:FH−4026T−60を、巻き取り装置を使用して、巻取力20Nで接着シート200枚分(すなわち、接着剤層の200枚分に相当する分であり、前記長手方向における接着シートの長さが76m)を、接着剤層の全領域が巻き芯の支持層の非設領域と重なるように巻き、ロール状の接着シートロールを得た。
なお、前記支持層が積層された位置としては、剥離基材の端(接着シートの短手方向端部)から5mm内側であり、かつ、2つの接着剤層の中心から等距離である。また、支持層は、2つの接着剤層の間に1対である。
【0038】
(実施例1)
支持層として、円形にカットされているもの(膜厚60μm、直径10mm)を用いて、剥離基材と粘着剤層の層間に積層した。
【0039】
(実施例2)
支持層として、正三角形にカットされているもの(膜厚60μm、一辺の長さ15mm)を用いて、剥離基材と粘着剤層の層間に積層した。
【0040】
(実施例3)
支持層として、四角形にカットされているもの(膜厚60μm、幅10mm、長さ20mm)を用いて、剥離基材と粘着剤層の層間に積層した。
【0041】
(比較例1)
比較例1は、支持層を剥離基材と粘着剤層の層間に積層していないこと以外は実施例1と同様に作製した接着シートを用いた。
【0042】
評価方法は、得られた接着シートロールを、2週間放置した後、接着シートロールの外側から100枚目以降の接着剤層について、20枚おきに巻き跡の転写を確認し、160枚目以降は10枚おきに確認した。
確認方法としては、確認する接着剤層を粘着剤層とともに剥離基材から剥離し、400μm厚の半導体ウェハ(シリコンウェハ)を熱板温度70℃の条件でラミネートし、ラミネート後のウェハと接着シートの間に空気を巻き込んでいないもの(巻き跡の転写無し)を「○」、空気を巻き込んでいるもの(巻き跡の転写有り)を「×」として評価した。表1に評価結果を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜3では接着剤層の端部の剥離発生が見られず、結果が良好であった。これに対し、比較例1では接着剤層の端部の剥離発生が見られた。また、表1に示されるように、比較例1は、170枚目までは巻き跡の転写は見られなかったが、180枚目以降では巻き跡の転写が見られ、またラミネート後のウェハと接着シートの間に空気の巻き込みが確認できた。これに対し、実施例1〜3は、200枚目まで全ての接着シートで巻き跡の転写は見られず、またラミネート後のウェハと接着シートの間の空気の巻き込みも見られなかった。よって、本発明の接着シートは、従来の支持層無しの接着シートに比較して、巻き跡の転写を抑え、ウェハと接着シートの間の空気の巻き込みを抑えることが確認された。
【符号の説明】
【0045】
1:剥離基材、2:接着剤層、3:粘着剤層、4:支持層、12:巻き跡、211:巻き芯、220:接着シート、230:接着シートロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の剥離基材と、前記剥離基材上に、分散配置され、部分的に形成された接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着剤層とを有する接着シートであって、前記接着剤層が分散配置されていない剥離基材上に、接着剤層と同じ厚み、もしくはそれ以上の厚みを持つ支持層を有した接着シート。
【請求項2】
接着剤層、又は、粘着剤層が打ち抜き加工によって形成された請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
剥離基材上に接着剤層を形成し、その後、前記接着剤層に打ち抜き加工を施し、さらに、前記接着剤層に粘着剤層を積層し、その後、前記粘着剤層に打ち抜き加工を施し、さらに、前記接着剤層が形成されていない剥離基材上に支持層を積層してなる、請求項1に記載の接着シート。
【請求項4】
剥離基材上に接着剤層を形成し、その後、前記接着剤層に打ち抜き加工を施し、さらに、予め打ち抜き加工を施した粘着剤層を前記接着剤層に積層し、さらに、前記接着剤層が形成されていない剥離基材上に支持層を積層してなる、請求項1に記載の接着シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−6925(P2013−6925A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139387(P2011−139387)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】