説明

接着フィルム及びこれを備える積層体

【課題】 接合時の変形等を極力抑制しながら優れた導電性を得ることができる接着フィルムを提供すること。
【解決手段】 接着フィルム10は、接着性を有するシート状の基材1と、この基材1中に配された導電性粒子2とを含むものである。そして、導電性粒子2として、基材1の厚さよりも大きい直径を有するものを含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着フィルム、例えば、ICやLSI等の電気素子を、リードフレームや有機基板等の支持部材に接着するのに好適な接着フィルム、及び、これを備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSI等の電気素子(半導体素子や半導体PKG等)及びこれらを搭載するリードフレームや基板等の支持部材を備えるチップ状の電子部品において、電気素子と支持部材との接合には、Au−Si共晶合金、半田、銀ペースト等が用いられている。Au−Si共晶合金は、耐熱性及び耐湿性に優れるものの、弾性率が過度に大きいため、大型のチップへ適用した場合に割れやすいという欠点を有するほか、高価であるという難点も有している。また、半田は、比較的安価であるものの、耐熱性に劣るという欠点を有するほか、弾性率がAu−Si共晶合金と同様に高いため、大型のチップへの適用が困難であるという問題を有している。
【0003】
これらに対し、銀ペーストは、比較的安価であり、また、耐湿性が高く、弾性率も上記3者の中で最も低く、更に350℃の熱圧着型ワイヤボンダーに適用できる程の耐熱性も有している。このため、銀ペーストが電気素子と支持部材の接着用材料として用いることが多い。
【0004】
しかしながら、近年では、ICやLSI等の電気素子の高集積化が急速に進み、それに伴ってこれらを搭載するチップが大型化してきている。そして、電気素子と支持部材とを上述した銀ペーストを用いて接合する場合には、かかる大型化に対応する大型の支持部材の全面に対して、均質に銀ペーストを塗布する必要があることから、チップの製造が極めて困難となっていた。
【0005】
このような電気素子と支持部材等との接合に関して、下記非特許文献1には、導電性フィラーを熱可塑性樹脂中に充填してなるダイボンド用の接着フィルムが報告されている。この接着フィルムは、例えば、支持部材の全面に貼り付けるようにして用いられる。そして、かかる接着フィルム上の所望の位置に電気素子を載置した後、熱可塑性樹脂の融点付近まで加熱するとともにこれらを加圧することによって、ICやLSI等の電気素子とリードフレーム等の支持部材との接着を行うことができる。このような接着フィルムによれば、上述したような塗布等を行う必要がないため、接合を容易に行うことが可能となる。
【0006】
また、より優れた接着強度が得られる接着フィルムとして、特定のポリイミド樹脂を用いた接着フィルム(例えば、特許文献1参照)に導電性フィラーを含有させた導電性接着フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【非特許文献1】「マイクロエレクトロニックマニュファクチャリングアンドテスティング(Microelectronic Manufacturing And Testing)」、1985年10月
【特許文献1】特開平7−228697
【特許文献2】特開平6−145639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近では、上述したようなICやLSI等の高集積化が更に進んでいることから、これらを搭載するチップ等の電子部品は、従来にも増して寸法精度良く製造し得ることが求められている。そして、接合に際して上記従来の接着フィルムを用いる場合、十分な寸法精度を確保するためには、かかる接着フィルムからの樹脂等のはみ出しやフィルムの厚み変化等が極力生じないような圧力で、電気素子と支持部材とを加圧することが必要となる。
【0008】
ところが、上記従来技術による接着フィルムでは、上述のような樹脂のはみ出しや厚み変化が生じない程度に加圧を行うと、樹脂中の導電性フィラー同士の接触が極端に少なくなり、これに起因して、電気素子と支持部材等との電気的な接続が不十分となる場合が多かった。
【0009】
接着フィルムの導電性を向上させるためには、樹脂中の導電性フィラーの含有量を多くすればよいが、十分な導電性が得られる程度に導電性フィラーの含有量を増加させると、今度は接着フィルムによる接着強度が極端に低下する傾向にあった。そして、このようにして得られた電子部品は、例えばHAST試験等の高温高湿環境下における信頼性試験を行った場合に、十分な耐性が得られ難いものであった。
【0010】
そこで、本発明はこのような事情にかんがみてなされたものであり、接合の際の変形等を極力抑制した場合であっても、優れた導電性を得ることができる接着フィルムを提供することを目的とする。本発明はまた、かかる接着フィルムを用いて得られた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の接着フィルムは、接着性を有するシート状の基材と、この基材中に配され、かかる基材の厚さよりも大きい直径を有する導電性粒子とを含有することを特徴とする。
【0012】
このように、本発明の接着フィルムは、基材の厚さよりも大きな直径を有する導電性粒子を含むものである。このため、かかる接着フィルムを用いて接合を行った場合、電気素子と支持部材との間には、このように大きな直径を有する導電性粒子によって、導電経路が十分に形成されることになる。したがって、接合時における加圧を、上述したように接着フィルムの変形等が極力生じない程度に行う場合であっても、導電性粒子の添加量を増大させずに電気素子と支持部材との電気的な接続を十分に図ることが可能となる。
【0013】
上記構成を有する接着フィルムにおいては、導電性粒子が、基材の厚さの1.5倍未満の直径を有していることが好ましい。導電性粒子の直径が基材の厚さの1.5倍未満であれば、接合時に比較的弱い力で加圧を行った場合であっても、ICやLSI及びリードフレーム等を、接着性を有する基材に対して十分に接触させることができる。その結果、良好な接着強度が得られるようになる。
【0014】
また、導電性粒子の含有量は、接着フィルムの総質量に対して0.001質量%以上であると好ましい。かかる構成とすることによって、接着フィルム中には、電気素子と支持部材との電気的な接続を更に良好に得ることが可能となる。
【0015】
さらに、導電性粒子は、有機物の表面に金属層が形成された構成を有するものであるとより好ましい。かかる構造を有する導電性粒子は、内部の有機物が比較的柔軟であることから、接合の際に加圧を行った場合に容易に変形することができる。このため、導電性粒子は、接合の際の加圧により押しつぶされ、電気素子及び支持部材に対して密着した構造となり得る。その結果、一層良好な導電性が得られるようになる。かかる変形を適度に生じさせるようにする観点からは、上記有機物の室温における弾性率は、2000MPa以下であるとより好ましい。
【0016】
接着性を有する基材は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から構成されるものであると好ましい。このように、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の両方を含むことで、基材は、接着強度に優れるようになるとともに、優れた耐熱性及び強度を有するものとなる。
【0017】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む場合、この樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含むことが好ましい。このように硬化促進剤を含むことで、接合に用いる際の加熱等により熱硬化性樹脂の硬化が促進され、これによって接着フィルムによる接着強度等が更に良好となる。
【0018】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物においては、熱可塑性樹脂として、ポリイミド樹脂を含むことがより好ましい。ポリイミドを含む樹脂組成物は、接着強度及び耐熱性の双方に優れるものとなる。
【0019】
また、本発明の接着フィルムは、上述した成分に加えて、フィラーを更に含むものであるとより好ましい。フィラーを含む接着フィルムは、強度(例えば靭性等)に優れるものとなり、接合等の際に過度の力が加わったとしても破断等を生じ難いものとなる。
【0020】
上記本発明の接着フィルムは、上述の如く、電気素子と支持部材とを接合する、いわゆるダイボンドに用いるのに好適なものである。そして、本発明の電子部品は、上記本発明の接着フィルムをダイボンドに用いて好適なものであり、支持部材と、この支持部材に対向して配置された電気素子と、支持部材と電気素子との間にこれらと接するように配置され、支持部材と電気素子とを接着する上記本発明の接着フィルムとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接合時の変形を極力抑制した場合であっても優れた導電性を得ることができる接着フィルムを提供することが可能となる。また、かかる接着フィルムをダイボンドに用いてなり、ICやLSI等の電気素子とリードフレームや基板等の支持部材とが良好に接着されるとともに、電気的に良好に接続された状態の電子部品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、全図を通じ、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
図1は、実施形態に係る接着フィルムの断面構造を模式的に示す図である。接着フィルム10は、基材1と、この基材1中に配された導電性粒子2とを備えた構造を有している。このような導電性粒子2を含む接着フィルム10は、ICやLSIの電気素子とリードフレーム等の支持部材との間に挟まれてこれらを接合する、いわゆるダイボンド用途に好適に用い得るものである。
【0024】
まず、導電性粒子2について説明する。
【0025】
図示されるように、接着フィルム10における導電性粒子2は、その直径が、基材1の厚さよりも大きいものである。基材1の厚さ及び導電性粒子2の直径は、例えば、接着フィルム10における所定の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより測定することができる。なお、本明細書において、「導電性粒子の直径」とは、当該導電性粒子表面の任意の2点を結ぶ直線の距離のうちの最大値をいうものとする。すなわち、例えば、導電性粒子が球状ではなく、その中心を通る断面が楕円状であるような形状を有している場合、この楕円の長径が当該「導電性粒子の直径」に該当する。
【0026】
接着フィルム10において、導電性粒子2は、電気素子と支持部材等とを接合する際にこれらを加圧することによって押しつぶされ、この変形した方向の径が接合後の基材1の厚さとほぼ同等となる。
【0027】
導電性粒子2は、前述の如く、その直径が基材1の厚さよりも大きいものであるが、かかる直径の最大値は、基材1の厚さの1.5倍よりも小さいことが好ましく、1.3倍以下であることがより好ましい。すなわち、導電性粒子2の直径をR、基材1の厚さをTとしたとき、導電性粒子2の直径Rは下記式(1)の条件を満たすことが好ましい。
T<R<1.5T …(1)
【0028】
導電性粒子2の直径が基材1の厚さT未満である場合、接着フィルム10を、電気素子と支持部材等との接合に用いた場合に、これらの電気的な接続が十分に得られ難くなる場合がある。一方、導電性粒子2の直径が1.5T以上であると、接合時に当該粒子2が基材1の厚さまで変形するのが極めて困難となり、これにより電気素子と支持部材とが基材1に対して十分に接触できなくなり、接着フィルム10による接着強度が十分に得られなくなる傾向にある。
【0029】
なお、上述したように、導電性粒子2は接合によって変形を生じ得るものであるから、導電性粒子2がとり得る直径の最大値は、上記の条件を満たす範囲(すなわち、1.5T未満)で導電性粒子2の弾性率に応じて変化する。例えば、導電性粒子2の弾性率が低い場合、上述した接合時の変形が十分に生じ得ることから、当該粒子2の直径は大きく(例えば1.5Tに近い値)てもよい。反対に、弾性率が大きい場合、かかる変形が生じ難くなることから、当該粒子2の直径は基材1の厚さに近いことが好ましい。
【0030】
導電性粒子2は、導電性の材料から構成されるものである。上述したような接合時の変形を容易に生じるためには、導電性粒子2は、ある程度柔軟であることが望ましく、このような観点からは、導電性粒子2は、圧力により変形が可能な核材と、この核材の表面を覆うように付着した導電性物質とからなる構成を有するものであると好ましい。この導電性物質は、少なくとも接着フィルム2の厚さ方向の導電性を確保し得るように核材の表面上に設けられていればよい。すなわち、導電性物質は、核材の全面を覆っていてもよく、一部のみを覆っていてもよい。核材としては、無機物、有機物を特に制限なく用いることができる。また、核材の表面に付着される導電性物質としては、金属めっきが例示できる。なお、導電性粒子2としては、このような構造を有するもの以外に、金属やカーボン等の導電性を有する材料の粒子を更に含んでいてもよい。
【0031】
導電性粒子2の変形のし易さの観点からは、核材は、有機物からなるものであると好ましく、なかでも、樹脂からなるものが好ましい。このように有機物からなる核材を有する導電性粒子2は、接合時に変形する特性に優れるばかりでなく、変形後にもとの形状に戻ろうとする特性にも優れている。このため、接合後には、導電性粒子2と、これと接触している電気素子及び支持部材とが、導電性粒子2のもとの形状に戻ろうとする力によって互いに強く押し付けられることとなる。その結果、これらの電気的な接続が一層安定化される。
【0032】
核材を構成する有機物としては、ジビニルベンゼンが特に好ましい。核材として用い得る有機物からなる粒子としては、例えば、ミクロパールAU、ミクロパールSOL(以上、積水化学社製)が商業的に入手可能である。また、導電性物質である金属めっきとしては、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、鉛、スズ等の金属や、スズ/鉛、スズ/銀等の合金等のめっきが挙げられる。核材表面の金属めっきは、これらの金属又は合金からなる単層構造であってもよく、複数の材料からなる多層構造であってもよい。金属めっきとしては、これらのなかでも、Niめっき、Auめっき又ははんだめっきが好ましい。なお、接着フィルム10中には、導電性粒子2として、上述した構成を有するものが複数種含まれていてもよい。
【0033】
導電性粒子2が、上記のような、有機物からなる核材の表面に金属めっきされたものである場合、核材を構成する有機物(例えば樹脂)の弾性率は、室温で10〜2000MPaであると好ましく、100〜2000MPaであるとより好ましく、300〜1000MPaであると更に好ましい。ここで、弾性率とは、貯蔵弾性率をいうものとする。貯蔵弾性率としては、例えば、核材を構成する有機物と同じ材料を用いて16mmφ×48mmの円柱状の試料を作製し、これをテンシロンを用いて長さ方向に圧縮する(10mm/min)ことにより得られた値を採用することができる。
【0034】
核材を構成する有機物の弾性率が10〜2000MPaであると、接合時における導電性粒子2の変形が良好に生じる傾向にある。この弾性率が2000MPaを超えると、かかる変形が不十分となって、導電性粒子2と、電子機器やリードフレーム等との接続が安定しなくなるおそれがある。一方、有機物の弾性率が10MPa未満であると、接合の際、導電性粒子2表面に付着している基材1の構成材料(例えば、樹脂等)が十分に排除されずに残存してしまい、これにより電子機器やリードフレーム等との接続が不十分となる場合がある。
【0035】
また、核材を構成する有機物は、260℃以上の温度に耐え得る耐熱性を有していることが好ましく、300℃以上の温度に耐え得る耐熱性を有しているとより好ましい。有機物がこのような耐熱性を有するものであると、接着フィルム10は、これを備える電子部品をリフロー等に供する場合に、一般的なリフロー温度である260℃以下の温度に十分耐え得るものとなる。これにより、リフロー時に核材が分解され、導電性粒子2が過度に変形すること等によって生じる導電性の低下が抑制され得る。
【0036】
接着フィルム10中の導電性粒子2の含有量は、必要とされる導電性に応じて適宜変更可能であるが、接着フィルム10全体の質量に対して、0.001〜60質量%であることが好ましく、0.01〜20質量%であることがより好ましい。導電性粒子の含有量が0.001質量%未満であると、導電性が十分に得られなくなる傾向にあり、60質量%を超えると、接着フィルム10の接着性が低下する傾向にある。
【0037】
また、接着フィルム10における導電性粒子2は、十分な導電性を得る観点から、当該接着フィルム2が電気素子及びリードフレーム等と接触する領域内に少なくとも一粒子以上が含まれるようにすることが好ましい。さらに良好な導電性を得る観点からは、上述した接触領域1mmあたり4粒子以上が含まれるようにすることが好ましく、16粒子以上が含まれるようにすることが特に好ましい。
【0038】
次に、基材1について説明する。
【0039】
基材1は、接着性を有する材料から構成されるものであり、例えば、樹脂組成物からなるものが挙げられる。基材1を構成する樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられ、熱可塑性樹脂をベースポリマーとする樹脂組成物が接着性に優れることから好ましい。
【0040】
樹脂組成物としては、特に、熱可塑性樹脂をベースポリマーとして含み、熱硬化性樹脂を更に含む材料が好ましい。ここで、熱硬化性樹脂とは、加熱により3次元的網目構造を形成して硬化する樹脂のことをいう。このように熱硬化性樹脂を含むことで、かかる樹脂組成物からなる基材1を備える接着フィルム10は、熱時のせん断接着力が高いものとなる。なお、熱硬化性樹脂の添加量が多くなりすぎると、熱時のピール接着力が低下する傾向にあることから、使用目的に応じて、熱硬化性樹脂の添加の有無、又は、その添加量を調整することが好ましい。以下、このような樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0041】
まず、ベースポリマーである熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、上述したリフロー時の耐熱性の観点から、300℃以上の耐熱性を有するものが好ましく、特に接着性及び耐熱性の両特性に優れるポリイミド樹脂が好ましい。
【0042】
ベースポリマーである熱可塑性樹脂に添加する熱硬化性樹脂としては、特に制限は無いが、入手の容易さや反応性制御の容易さ等の観点から、エポキシ樹脂や、分子中に2つ以上のイミド基を有するイミド化合物が好適である。
【0043】
熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂は、分子内に少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物である。また、熱硬化性樹脂は、かかるエポキシ樹脂と、当該化合物を硬化させるエポキシ樹脂硬化剤とを組み合わせて含むものであってもよい。前者の化合物としては、ビスフェノール型のエポキシ樹脂やノボラック型のエポキシ樹脂が例示できる。
【0044】
ビスフェノール型のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ハロゲン化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物等が例示できる。また、ノボラック型のエポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等が挙げられる。後者のノボラック型のエポキシ樹脂は、硬化物の架橋密度が高く、フィルムの熱時の接着強度を高くすることができる傾向にあり、より好ましい。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
上述したエポキシ樹脂等と組み合わせて用いられるエポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂硬化剤としては、フェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂硬化剤であるフェノール系化合物のなかでも、ナフトールノボラック樹脂又はトリスフェノールノボラック樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂材料からなる基材1は、電気素子やリードフレーム、或いは製造装置等の汚染を引き起こし難く、また、臭気の原因となるアウトガスの発生が大幅に少ないものとなる。
【0047】
ナフトールノボラック樹脂としては、下記一般式(1a)又は(1b)で表されるような、分子内に芳香環を3個以上有するナフトール系化合物が挙げられる。
【化1】

[式中、R111、R112、R113、R114、R115及びR116(以下、「R111〜R116のように表記する)、R121〜R126、R131〜R136、R141〜R146、並びにR151〜R156は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又は水酸基を示し、p及びqは、それぞれ独立に1〜10の整数であり、X及びZは、それぞれ独立に、2価の有機基を示し、Yは下記式(2a)又は(2b)で表される2価の基を示す。]
【化2】

[式中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又は水酸基を示す。]
【0048】
上記一般式(1a)又は(1b)におけるX又はZで表される2価の有機基としては、具体的には、例えば、下記式(3a)〜(3g)で表される2価の基が例示できる。
【化3】

【0049】
上述したような構造を有するナフトール系化合物としては、より具体的には、下記一般式(4a)又は(4b)で表されるようなキシリレン変性ナフトールノボラックや、下記一般式(4c)で表されるようなp−クレゾールとの縮合により得られたナフトールノボラック等が挙げられる。
【化4】

[式中、r及びsは、それぞれ独立に、1〜10の整数である。]
【0050】
また、エポキシ樹脂硬化剤であるフェノール系化合物のうち、トリスフェノールノボラック樹脂は、分子内に3個のヒドロキシフェニル基を有する化合物であり、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【化5】

[式中、R511〜R514、R521〜R524、R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基又は水酸基を示し、Wは、下記式(6a)〜(6e)で表される4価の基を示す。]
【化6】

【0051】
このようなトリスフェノール系化合物としては、より具体的には、以下に示す化合物が例示できる。すなわち、4,4´,4´´−メチリデントリスフェノール、4,4´−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、4,4´,4´´−エチリジントリス[2−メチルフェノール]、4,4´,4´´−エチリジントリスフェノール、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、4,4´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4´−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3−ジメチルフェノール]、2,2´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、2,2´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,5−トリメチルフェノール]、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4´−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4´−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルフェノール]、4,4´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,6−ジメチルフェノール]、4,4´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2,3,6−トリメチルフェノール]、4−[ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)メチル]−1,2−ベンゼンジオール、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3−メチルフェノール]、4,4´,4´´−(3−メチル−1−プロパニル−3−イリデン)トリスフェノール、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、4,4´−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、4,4´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−メチルエチルフェノール]、2,2´−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、2,2´−[(4−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、4,4´−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4´−[(3−ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、4,4´−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2、6−ジメチルフェノール]、4,4´,4´´−メチリジントリス[2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール]、4,4´−[1−[4−[1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、2,2´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5−ジメチルフェノール]、4,4´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−(メチルエチル)フェノール]、2,2´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6−トリメチルフェノール]、4,4´−[(3,4−ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[2−シクロヘキシルフェノール]、α,α´,α´´−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
基材1の構成材料である樹脂組成物が、熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含む熱硬化性樹脂とを組み合わせて含有するものである場合、かかる樹脂組成物における熱硬化性樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましく、1〜90質量部であることが更に好ましい。熱硬化性樹脂の配合量が、熱可塑性樹脂に対して200質量部を超えると、これらを含む樹脂組成物からフィルム状の基材1を形成するのが困難となる傾向にある。
【0053】
また、樹脂組成物におけるエポキシ樹脂硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1〜150質量部であることが好ましく、0.1〜120質量部であることがより好ましく、0.1〜100質量部であることが更に好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の含有量が150質量部を超えると、熱硬化性樹脂の硬化が十分に生じ難くなり、その結果、基材の耐熱性や強度等が低下する場合がある。
【0054】
基材1を構成する樹脂組成物中には、上述した熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤に加えて、エポキシ樹脂の硬化を更に促進する硬化促進剤を更に添加してもよい。このように硬化促進剤を添加することで、エポキシ樹脂が更に良好に硬化されるようになり、基材1の耐熱性や強度が更に向上するようになる。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0055】
硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜50質量部であると好ましく、0.01〜20質量部であるとより好ましく、0.1〜10質量部であるとさらに好ましい。この添加量が50質量部を超えると、樹脂材料からなる基材1、ひいては接着フィルム10の保存安定性が悪くなる傾向にある。一方、0.01質量部未満では、硬化促進剤としての効果が十分に得られ難くなる傾向にある。
【0056】
基材1を構成する樹脂組成物中には、更に、フィラーを添加してもよい。フィラーとしては、有機フィラーや無機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラーが挙げられる。無機フィラーの形状は特に制限されず、種々のものが適用可能である。
【0057】
フィラーは、その種類に応じて接着フィルム10に所望の機能を付与することができる。例えば、無機フィラーは、接着フィルム10に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与することができる。また、有機フィラーは、接着フィルム10に靭性を付与することができる。したがって、フィラーは、接着フィルム10の所要の特性に応じて適宜選択して用いることが好ましく、複数種を組み合わせて添加することもできる。
【0058】
フィラーとしては、上述したなかでも無機フィラー、特に優れた電気絶縁性を有する無機フィラーが好ましく、具体的には、樹脂材料中への分散性に優れるほか、基材1の接着強度を向上し得る特性を有する窒化ホウ素が好ましい。
【0059】
樹脂材料中に添加するフィラーの粒子径は、基材1の厚さに応じて適宜変更することが好ましい。接着フィルム10の一般的な厚さを考慮すると、フィラーの平均粒子径が10μm以下であり、且つ、最大粒子径が25μm以下であると好ましい。フィラーの平均粒子径及び最大粒子径が上記値を超えると、フィラーによる靭性向上の効果が十分に得られ難い傾向にある。なお、これらの値の下限値は、フィラーとしての効果を十分に得る観点から、0.1μm以上であることがより好ましい。
【0060】
フィラーの平均粒子径及び最大粒子径は、これらの双方が上述した範囲内であることが好ましい。すなわち、最大粒子径が25μm以下であるが、平均粒子径が10μmを超える場合には、基材1の接着強度が低下する傾向にある。また、平均粒子径が10μm以下であるが、最大粒子径が25μmを超える場合には、フィラーの粒径分布が広くなり過ぎ、接着強度にばらつきが生じ易くなるほか、接着フィルム10を薄型化した場合に、その表面が粗くなって接着性の低下を招く場合がある。
【0061】
なお、フィラーの平均粒子径及び最大粒子径の測定方法としては、接着フィルム10の所定の断面をSEMにより観察し、200個程度のフィラーの粒径を測定してこれらの値を算出する方法が挙げられる。具体的には、接着フィルム10を介して電気素子とリードフレーム等とを張り合わせた後、接着フィルム10を硬化(例えば、150〜200℃で1〜10時間加熱)させたサンプルを作製し、このサンプルの中心部分を通る面で切断した断面をSEMにより観察する方法が挙げられる。
【0062】
樹脂材料中におけるフィラーの配合量は、フィラーの種類、所望とする特性や機能等に応じて適宜変更可能であるが、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜8000質量部とすることが好ましい。フィラーの配合量が熱可塑性樹脂100質量部に対して1質量部未満であると、フィラーの添加による効果を十分に得ることが困難となる傾向にある。一方、8000質量部を超えると、接着フィルム10の接着性が低下する傾向にある。
【0063】
以上のように、本実施形態の接着フィルム10は、基材1と、この基材1中に配された導電性粒子2とを備えており、好適な場合、基材1は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化促進剤及びフィラーを含むものである。以下、このような構成を有する接着フィルム10の製造方法について説明する。
【0064】
まず、基材1の構成材料である熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び硬化促進剤等)並びにフィラー等を有機溶媒に添加し、これらを混合、混錬等することにより、有機溶媒中にこれらの成分を溶解又は分散させて、樹脂ワニスを調製する。その後、所定の基材フィルムの上に、樹脂ワニスを塗布した後、加熱により有機溶媒を除去して、基材フィルム上に接着フィルム10を形成する。
【0065】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス調製の際の混合や混錬等は、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ホモディスパー等を用いて行うことができる。
【0066】
また、基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が例示できる。基材フィルムは、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。なお、基材フィルムから接着フィルム10を容易に剥離するために、基材フィルムの接着フィルム10が形成される側の表面は、シリコーン系やシリカ系の離型剤によって処理されていても構わない。
【0067】
さらに、塗布後の樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の条件は、有機溶媒が十分に揮発する条件とすることが好ましく、具体的には、50〜200℃、0.1〜90分間の加熱を行うことが好ましい。
【0068】
上述したように、基材フィルム上に接着フィルム10を形成した後には、基材フィルムを剥離することで単層の接着フィルム10を形成してもよく、図2に示すような、基材フィルム上に接着フィルム10が積層された積層体の状態のままとしてもよい。
【0069】
図2は、基材フィルム上に接着フィルムが形成された積層体の断面構造を模式的に示す図である。図示されるように、積層体20は、基材フィルム22上に、接着フィルム10が設けられた構造を有している。接着フィルム10は、基材1と、この基材1中に配された導電性粒子2とから構成されている。
【0070】
また、接着フィルム10は、上述したような単層又は積層体とする以外に、接着フィルム10により接着を行うべき対象物(例えば、リードフレームや基板等の支持部材)の表面上に直接形成することもできる。すなわち、例えば、接着フィルム10を電気素子と支持部材との接合に用いる場合には、上述した樹脂ワニスを支持部材上に直接塗布した後、有機溶媒を加熱除去する方法が挙げられる。かかる方法によれば、支持部材上に接着フィルム10が直接形成されることになる。
【0071】
なお、接着フィルム10は、上述した単層又は積層体の形態以外に、基材フィルムと粘着剤層を有するダイシングテープ等と張り合わせた形態としてもよい。このような形態とすることで、電子部品(半導体装置等)を製造する工程を更に簡略化できる。
【0072】
上述した構成を有する接着フィルム10は、ICやLSI等の電気素子と、これらの電気素子を搭載するための基板やリードフレームといった支持部材とを接着するとともに、これらを電気的に接続する用途や、電気素子同士を接着及び接続する用途に用いることができる。以下、電気素子と支持部材とを接着フィルム10により接合して得られた電子部品について説明する。
【0073】
図3は、電気素子と支持部材とを接着フィルムにより接合して得られた電子部品の断面構造を模式的に示す図である。図示されるように、電子部品30は、支持部材32と、支持部材32上に配置された電気素子34と、支持部材32と電気素子34との間に設けられた接着部材36とを備えるものである。接着部材36は、上述した接着フィルム10から形成されたものである。支持部材32と電気素子34とは、この接着部材36を介して接着されるとともに、電気的に接続されている。
【0074】
支持部材32としては、リードフレームや基板が挙げられる。具体的には、リードフレームとしては、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等が例示できる。また、基板としては、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、マレイミド系樹脂等のプラスチックフィルム、ガラス不織布等基材にエポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、マレイミド系樹脂等のプラスチックを含浸・硬化させてなる繊維強化樹脂基板、ガラス基板、アルミナ等のセラミックス基板等が挙げられる。また、電気素子34としては、ICやLSI等が例示できる。
【0075】
このような電子部品は、例えば、上述したような支持部材32と電気素子34との間に接着フィルム10を挟み、得られた積層体を加熱するとともに積層方向に沿って加圧することにより製造することができる。この際の加熱の条件は、60〜300℃、0.1〜300秒とすることができる。
【0076】
特に、接着フィルム10における基材1を構成する樹脂組成物が熱硬化性樹脂を含む場合は、この熱硬化性樹脂を硬化させることで、支持部材32と電気素子34とをより強力に接着することができる。したがって、樹脂組成物中に熱硬化性樹脂を含有させた場合には、接合の際にこの熱硬化性樹脂の硬化を十分に生じさせることが好ましい。かかる観点からは、接合時の加熱条件を60〜220℃、0.1〜600℃とすることが好ましい。なお、得られた電子部品に対して樹脂による封止を行う場合、熱硬化性樹脂の硬化は、封止用の樹脂の硬化と同時に行ってもよい。
【0077】
また、上述したように、接着フィルムとして、基材フィルム22上に接着フィルム10が形成された形態の積層体20を用いる場合には、例えば、以下のようにして電子部品30を製造することができる。すなわち、まず、支持部材32と電気素子34のうちのいずれか一方に対して積層体20における接着フィルム10を貼り付けた後、支持フィルム22を剥離する。それから、この剥離面上に支持部材32と電気素子34のうちの他方を配置し、これらを加熱及び加圧する。こうして、上記構成を有する電子部品30を得ることができる。
【0078】
さらに、上述したように、接着フィルム10を支持部材32上に直接形成した場合には、この接着フィルム10上に電気素子34を配置した後、これらを加熱及び加圧することによって、電子部品30を得ることもできる。
【0079】
以上のように好適な実施形態に係る接着フィルム10は、上述の如く、基材1中に、その厚さよりも大きい直径を有する導電性粒子2を含むものである。
【0080】
従来、電子部品を製造する場合、導電性粒子を含む接着フィルムを接合に用いる際には、接着フィルム中の導電性粒子が、接着フィルムの基材の厚さに比して小さかったため、電気素子や支持部材が導電性粒子に接触するまで接着フィルムを押しつぶす必要があった。しかし、この場合、接着フィルムの膜厚が大きく変化してしまうほか、基材を構成している樹脂が所望の領域外にはみ出してしまうといった弊害が生じ、寸法精度良く電子部品を製造するのが困難となっていた。
【0081】
近年ではICやLSI等の高集積化に伴って電子部品も大型化しており、従来にも増して寸法精度良く電子部品を製造する必要性が増してきている。このような状況下、電気素子と支持部材との接合時には、可能な限り接着フィルムの形状を変化させないことが望まれている。しかしながら、このように加圧を行うと、電気素子や支持部材と導電性粒子との接触が不足してしまい、これらの電気的な接続が不十分となる。接着フィルムの導電性を向上させるには、導電性粒子の含有量を増加させるのが有効であるが、この場合、接着フィルムの接着強度が極端に低下してしまう。
【0082】
これに対し、本実施形態の接着フィルム10は、上述の如く、基材1の厚さよりも大きい直径を有する導電性粒子2を含んでいることから、接着フィルム10には、加圧しなくてもこの導電性粒子2によって厚さ方向の導電経路が形成されることになる。したがって、接合の際に、接着フィルム10の厚さが殆ど変化しない程度に加圧を行ったとしても、この接着フィルム10は、その厚さ方向において優れた導電性を有するものとなる。よって、かかる接着フィルム10を用いて得られた電子部品においては、電気素子と支持部材とが電気的に良好に接続されるようになる。また、接着フィルム10は、上述の如く優れた導電性を有しているため、導電性粒子2の含有量を少なくした場合であっても十分な導電性を確保することができる。このため、接合の際に優れた接着強度をも発現し得るものとなる。
【0083】
また、従来、表面にバンプとよばれる突起を有する回路基板間の接続等に用いられてきた異方導電性フィルムにおいては、導電性粒子としてフィルム厚よりも大きいものを用いると、かかる導電性粒子が上記バンプ間に挟まれることから、基板同士の接着を十分に行うことが困難となっていた。このため、導電性粒子としては、フィルム厚よりも小さいものが用いられていた。これに対し、本実施形態の接着フィルム10は、例えば、ダイボンド用として上述したバンプ等の突起を有していないもの同士を接合させることから、導電性粒子2として基材1よりも大きいものを用いたとしても、十分な接着強度を確保することができる。また、このような用途においては、異方導電性を得る必要がないことから、大きな導電性粒子2を採用しても、ショート等の不都合を生じる心配もない。
【0084】
なお、本発明の接着フィルムは、上述した実施形態のものに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0085】
例えば、接着フィルム10に含まれる導電性粒子2は、必ずしも全てが基材1の厚さよりも大きい直径を有している必要はなく、少なくとも一部がかかる条件を満たすものであればよい。図4は、基材の厚さよりも小さい直径を有する導電性粒子を含む接着フィルムの断面構造を模式的に示す図である。図示されるように、接着フィルム40は、基材1中に導電性粒子2が配された構造を有しているが、導電性粒子2の中には、基材1の厚さよりも小さい直径を有する導電性粒子2aが含まれている。
【0086】
ただし、このような導電性粒子2aを含む接着フィルム40を電気素子と支持部材との接合に用いる場合には、十分な導電性を確保するために、基材1の厚さよりも大きい直径を有する導電性粒子2が、電気素子や支持部材と接触している領域に一つ以上含まれるようにすることが好ましく、接触領域1mmあたり4粒子以上含まれるようにすることがより好ましく、16粒子以上含まれるようにすることが更に好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[接着フィルムの製造]
【0088】
(実施例1)
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた500mlの四つ口フラスコに、ジアミンとして0.05モルの2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及び0.05モルの3、3´−(ブタン−1、4−ジイルビス(オキシ)ビスプロパンジアミン、溶剤として150gのN−メチル−2−ピロリドンを入れ、60℃で攪拌することにより、溶剤中にジアミンを溶解させた。ジアミンの溶解後、得られた溶液中にテトラカルボン酸無水物として0.1モルの4,4´−[デカン−1,10ジイルビス(オキシカルボニル)]ジフタル酸無水物を少量ずつ添加した。添加後、60℃で3時間反応させたのち、Nガスを吹き込みながら170℃、3時間の加熱を行い、水を溶剤の一部とともに共沸除去した。得られた反応液を、ポリイミド樹脂の溶液とした。
【0089】
上述した反応により得られたポリイミド樹脂100部(N−メチル−2−ピロリドン溶液の固形分)に対し、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成社製)6部、4,4´−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学製)3部、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート(東京化成製)0.5部、窒化硼素フィラー(水島合金鉄製)10部、導電性粒子(18μm)1部(ミクロパールAU、積水化学製)を加えて十分に混錬し、樹脂ワニスを得た。
【0090】
次に、この樹脂ワニスを、剥離処理済みのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、80℃で30分加熱した後、120℃で30分加熱した。その後、室温まで冷却し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離除去して、厚さ15μmの接着フィルムを得た。なお、接着フィルムの厚さは、フィルムを切断した断面を顕微鏡で拡大することにより測定した。
【0091】
(実施例2)
実施例1と同様にして得たポリイミド樹脂100部(N−メチル−2−ピロリドン溶液の固形分)に対し、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成製)6部、4,4´−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(本州化学製)3部、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート(東京化成製)0.5部、窒化硼素フィラー(水島合金鉄製)10部、導電性粒子(30μm)1部(ミクロパールAU、積水化学製)を加えて十分に混錬し、樹脂ワニスを得た。
【0092】
次に、この樹脂ワニスを、剥離処理済みのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、80℃で30分加熱した後、120℃で30分加熱した。その後、室温まで冷却し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離除去して、厚さ15μmの接着フィルムを得た。
【0093】
(実施例3)
接着フィルムの厚さを20μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして接着フィルムを得た。
【0094】
(比較例1)
接着フィルムの厚さを20μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0095】
(比較例2)
接着フィルムの厚さを25μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして接着フィルムを得た。
【0096】
(比較例3)
導電性粒子を添加しなかったこと、及び、接着フィルムの厚さを25μmとしたこと以外は、実施例2と同様にして接着フィルムを得た。
[接着フィルムの抵抗値及びピール強度の測定]
【0097】
実施例1〜6で得られた接着フィルムの抵抗値及びピール強度を、以下に示す方法にしたがってそれぞれ測定した。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0098】
(抵抗値の測定)
接着フィルムを7mm×7mmの大きさに切断した後、これを42アロイ(8mm×10mm)とアルミニウム箔(5mm×5mm、厚み:12μm;三菱アルミニウム社製)との間に挟み、温度180℃、時間5秒、荷重400gの条件で加熱及び加圧して、これらを接着させた。その後、180℃で1時間加熱して接着フィルムを硬化させ、42アロイとアルミニウム箔が接着フィルムからなる接着部材を介して接合された積層体を得た。得られた積層体における42アロイとアルミニウム箔間の抵抗値を、デジタルマイクロメータ(アドバンテスト製 TR6846)を用いて測定した。
【0099】
(ピール強度の測定)
接着フィルムを5mm×5mmの大きさに切断し、これを5mm×5mm×0.4mmのシリコンチップと42アロイリードフレームの間に挟み、400gの荷重をかけて180℃で5秒間圧着させた。その後、180℃で60分間加熱することにより接着フィルムを硬化させて積層体(42アロイリードフレーム、接着フィルムからなる接着部材及びシリコンチップをこの順に備える積層体)を得た。この積層体に対し、240℃、20秒加熱の加熱を行った際のシリコンチップの引剥し強さ(ピール強度)を測定した。
【0100】
なお、引き剥がし強さの測定は、プッシュプルゲージを改良した図5に示すピール強度測定装置50を用いて行った。すなわち、基台52上に積層体60(42アロイリードフレーム62、接着フィルム64及びシリコンチップ66をこの順に備える積層体)を載置し、これを固定部材54で固定した後、シリコンチップの端部にゲージ56の先端を引っ掛け、このゲージ56を後方(図中の矢印方向)に0.5mm/秒の条件で引っ張った。そして、ゲージ56を引っ張る強さを徐々に強くしていき、シリコンチップが接着フィルムから剥がれた時点における引っ張り強さを、ピール強度とした。
【表1】

【0101】
表1より、接着フィルムの厚さよりも大きい直径を有する導電性粒子を含む実施例1〜3の接着フィルムを接合に用いた場合、優れた抵抗値及びピール強度の両方が得られることが確認された。
【0102】
これに対し、導電性粒子の直径が接着フィルムの厚さよりも小さい比較例1及び2並びに導電性粒子を含まない比較例3の接着フィルムを用いた場合、上記実施例の条件では、実施例1〜3の接着フィルムに比して抵抗値が大きくなり、大幅に導電性に劣ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施形態に係る接着フィルムの断面構造を模式的に示す図である。
【図2】基材フィルム上に接着フィルムが形成された積層体の断面構造を模式的に示す図である。
【図3】電気素子と支持部材とを接着フィルムにより接合して得られた電子部品の断面構造を模式的に示す図である。
【図4】基材の厚さよりも小さい直径を有する導電性粒子を含む接着フィルムの断面構造を模式的に示す図である。
【図5】ピール強度の測定に用いたピール強度測定装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0104】
1…基材、2…導電性粒子、10…接着フィルム、20…積層体、30…電子部品、32…支持部材、34…電気素子、40…接着フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性を有するシート状の基材と、
前記基材中に配され、前記基材の厚さよりも大きい直径を有する導電性粒子と、
を備える接着フィルム。
【請求項2】
前記導電性粒子は、前記基材の厚さの1.5倍未満の直径を有している、請求項1記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記導電性粒子の含有量は、総質量に対して0.001質量%以上である、請求項1又は2記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記導電性粒子は、有機物の表面に金属層が形成された構成を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記有機物の室温における弾性率は、2000MPa以下である、請求項4記載の接着フィルム。
【請求項6】
前記基材は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含む、請求項6記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂として、ポリイミド樹脂を含む、請求項6又は7記載の接着フィルム。
【請求項9】
フィラーを更に含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項10】
ダイボンドに用いる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の接着フィルム。
【請求項11】
支持部材と、
前記支持部材に対向して配置された電気素子と、
前記支持部材と前記電気素子との間にこれらと接するように配置された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の接着フィルムからなる接着部材と、
を備える電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−206843(P2006−206843A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24434(P2005−24434)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】