説明

接着剤、配線端子の接続方法及び配線構造体

【課題】 電気・電子用に適し、特に配線端子を支持する基板が絶縁性有機物又はガラスからなる配線部材や、表面の少なくとも一部に窒化シリコン、シリコーン樹脂及び/又はポリイミド樹脂を備える配線部材を接着する場合であっても高い接着強度を得ることができる接着剤と、それを用いた配線端子の接続方法及び配線構造体とを提供すること。
【解決手段】 加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、ラジカル重合性物質と、25℃での弾性率が0.1〜100MPaであり、平均粒径が0.1〜20μmであるシリコーン粒子とを含有する、配線端子接続用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線接続用の接着剤と、それを用いた配線端子の接続方法及び配線構造体とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精密電子機器の分野では配線の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔がきわめて狭くなっているため、配線の脱落、剥離や位置ずれが生じる恐れがある。この問題を解決するため、低温速硬化性に優れ、かつ、可使時間を有する電気・電子用の接着剤組成物が開発されている(例えば特開平11−97825号公報)。
【0003】
しかし、これら従来の配線接続部材は、接続する配線を構成する材料の種類により接着強度が異なるという問題があった。特に、配線端子を支持する基板がポリイミド樹脂等の絶縁性有機物やガラスの場合、又は、配線部材表面に窒化シリコン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂がコーティングされ若しくは付着している場合、著しく接着強度が低下するという問題があった。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、電気・電子用に適し、特に配線端子を支持する基板が絶縁性有機物又はガラスからなる配線部材や、表面の少なくとも一部に窒化シリコン、シリコーン樹脂及び/又はポリイミド樹脂を備える配線部材を接着する場合であっても高い接着強度を得ることができる接着剤と、それを用いた配線端子の接続方法及び配線構造体とを提供することを目的とする。
【0005】
本発明では、(1)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、(2)ラジカル重合性物質と、(3)シリコーン粒子とを含有する配線端子接続用の接着剤が提供される。本発明の接着剤は、表面に設けられた配線端子が対向するように配置された配線基板の間に介在させ、この配線基板を加圧しつつ加熱することにより、端子間を電気的に接続するのに用いることができる。なお、本明細書において、端子は電極であってもよい。
【0006】
本発明の接着剤は、(4)フィルム形成材をさらに含んでいてもよい。フィルム形成材としては、フェノキシ樹脂が好適である。
【0007】
また、本発明の接着剤は、(5)導電性粒子をさらに含んでいてもよい。導電性粒子は、少なくともその表面が、金、銀及び白金族金属のうちの少なくともいずれかを含むことが好ましく、これらの金属のいずれかにより表面が覆われていることが望ましい。
【0008】
本発明の接着剤におけるシリコーン粒子の含有量は、ラジカル重合性物質100重量部に対し(フィルム形成材を含む場合は、ラジカル重合性物質とフィルム形成材との合計100重量部に対し)、5〜200重量部であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の接着剤に用いられるシリコーン粒子は、25℃(室温)での弾性率が0.1〜100MPaであることが望ましい。
【0010】
また、本発明では、(1)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、(2)ラジカル重合性物質及び(3)シリコーン粒子を含有する組成物からなる第1の層と、(5)導電性粒子、(2)ラジカル重合性物質及び(3)シリコーン粒子を含有する組成物からなる第2の層とが積層されている、配線端子接続用接着フィルムが提供される。
【0011】
さらに、本発明では、二以上の配線部材にそれぞれ設けられた接続端子の間を、本発明の接着剤を用いて電気的に接続する配線端子の接続方法が提供される。
【0012】
本発明の接続方法は、間に本発明の接着剤を介在させた状態で互いに端子が対向するように配置された第一の接続端子を有する第一の配線部材と第二の接続端子を有する第二の配線部材とを、接着方向に加圧しつつ加熱して、第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させるものである。
【0013】
本発明の接続方法は、特に、接続端子の少なくとも一つが、表面が金、銀、錫、白金族の金属、及び/又は、インジュウム−錫酸化物(ITO)からなる場合に好適である。また、本発明の接続方法は、配線部材のうちの少なくとも一つが、絶縁性有機物及び/又はガラスを含む基板を備える場合に好適である。さらに、本発明の接続方法は、配線部材の少なくとも一つが、表面に、窒化シリコン、シリコーン化合物及びポリイミド樹脂のうちの少なくともいずれかを備える場合であっても、優れた接着強度を得ることができる。
【0014】
さらに、本発明では、それぞれ接続端子を有する二以上の配線部材を備え、配線部材の接続端子間が本発明の接着剤を用いて電気的に接続されている配線構造体が提供される。
【0015】
本発明の配線構造体は、例えば、間に本発明の接着剤の硬化物を介在させた状態で、第一の接続端子を有する第一の配線部材と、第二の接続端子を有する第二の配線部材とが、第一の接続端子と第二の接続端子が対向配置され、第一の接続端子と第二の接続端子が電気的に接続されているという構造を有する。
【0016】
(図面の簡単な説明)図1及び図2は、配線端子の接続工程を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(1)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤
本発明の接着剤に含まれる、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、過酸化物、アゾ化合物などの加熱により分解して遊離ラジカルを発生する物質である。この硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定することができるが、反応性の高さ及びポットライフの長さの点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がより好ましい。
【0018】
接続時間を10秒以下とする場合、硬化剤の配合量は、十分な反応率を得るためにラジカル重合性物質(フィルム形成材が配合されている場合は、ラジカル重合性物質とフィルム形成材との合計)100重量部に対して、0.1〜30重量部とすることが好ましく、1〜20重量部がより好ましい。硬化剤の配合量が0.1重量部未満では、十分な反応率を得ることができず良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。配合量が30重量部を超えると、接着剤の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤のポットライフが短くなる傾向にある。
【0019】
本発明に好適な硬化剤としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0020】
配線部材の接続端子の腐食を押さえるため、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。具体的には、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドなどが好適である。特に、高反応性が得られるパーオキシエステルから硬化剤を選定することが望ましい。硬化剤は、1種類の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を適宜併用してもよい。
【0021】
本発明に好適なパーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0022】
本発明に好適なジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0023】
本発明に好適なハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0024】
本発明に好適なジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4―ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0025】
本発明に好適なパーオキシジカーボネートとしては、ジ(n−プロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(イソプロピル)パーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0026】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1―ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0027】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0028】
これらの加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤は、そのうち1種類の化合物を単独で用いてもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。また、これらの硬化剤に分解促進剤、抑制剤等を併用してもよい。
【0029】
これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系などの高分子化合物等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために本発明に好適である。
【0030】
(2)ラジカル重合性物質
本発明の接着剤に含まれるラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合することのできる官能基を有する物質である。このラジカル重合性物質としては、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等が挙げられ、モノマー及びオリゴマーのいずれの状態でもよい。モノマーとオリゴマーとを併用することもできる。
【0031】
本発明の接着剤に好適なアクリレート及びメタクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート等、及びこれらに相当するメタクリレートが挙げられる。
【0032】
本発明の接着剤に好適なマレイミド化合物は、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するものである。このようなマレイミド化合物としては、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチル−ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{3−s−ブチル−4,8−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル}プロパン、1,1−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル}デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス{1−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル}−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0033】
これらのラジカル重合性物質のうち、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基及びトリアジン環のうちの少なくとも一つ以上を有する化合物は、接着剤硬化物の耐熱性が向上するため好ましい。
【0034】
なお、これらのラジカル重合性物質は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。
【0035】
また、上述のラジカル重合性物質に、下記化学式(I)で表わされるリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を併用すると、金属等の無機物表面での接着強度が向上するので好ましい。
【0036】
【化1】


(ただし、nは1,2又は3である)
【0037】
このようなリン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られ、具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等が挙げられる。これらは1種類の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質の配合量は、ラジカル重合性物質の全量(フィルム形成材を含む場合は、フィルム形成材とラジカル重合性物質との合計)100重量部に対し、0.01〜50重量部用いるのが好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。0.01重量部未満では、金属等の無機物表面との接着強度の向上が得られにくく、50重量部を超えると期待される硬化特性が得られなくなる場合がある。
【0039】
(3)シリコーン粒子
シリコーン粒子は、例えば、水酸化ナトリウムやアンモニア等の塩基性物質によりpHを9より大きく調整したアルコール水溶液に、シラン化合物(メチルトリアルコキシシラン、その部分加水分解縮合物など)を添加し、これを加水分解して重縮合させる方法や、オルガノシロキサンの共重合等により得ることができる。
【0040】
本発明の接着剤には、フィルム形成材やラジカル重合性物質への分散性が向上するため、分子末端又は分子内側鎖に水酸基、エポキシ基、ケチミン、カルボキシル基、メルカプト基などの官能基を有するシリコーン粒子が好ましい。
【0041】
本発明では、接着剤にシリコーン粒子を含有させることで、接続端子を支持する基板が絶縁性有機物又はガラスからなる配線部材であっても、また、表面が窒化シリコン、シリコーン化合物又はポリイミド樹脂を含む配線部材であっても、非常に高い接着強度が得られる。また、フィルム形成材を用いてフィルム状にした場合、支持材との剥離性が向上するため、このフィルム状接着剤を用いて接続する電子材料に対する転写性が向上する。
【0042】
本発明では、シリコーン粒子として球状又は不定形の微粒子を用いることができ、粒子の平均粒径が0.1μm〜20μmの微粒子を使用することが好ましい。また、平均粒径以下の粒子が微粒子の粒径分布の80重量%以上を占めるシリコーン粒子が好ましく、樹脂に対する分散性が向上するため、粒子表面をシランカップリング剤で処理したものが特に好ましい。
【0043】
本発明の接着剤におけるシリコーン粒子の室温(25℃)における弾性率は0.1〜100MPaが好ましく、粒子の分散性や接続時の界面応力の低減のためには、1〜30MPaとすることがより好ましい。なお、ここで規定した弾性率は、シリコーン粒子の原料であるシラン化合物(アルコキシシラン化合物、その部分加水分解縮合物など)を重合させたシリコーンゴムの弾性率であり、動的広域粘弾性測定により測定される。
【0044】
シリコーン粒子は、ラジカル重合性物質、加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、フィルム形成材に直接混合することもできるが、フィルム形成材やラジカル重合性物質に容易に分散できるため、有機溶剤に分散させた後にこれらと混合することが好ましい。
【0045】
シリコーン粒子の配合量は、ラジカル重合性物質の総量(フィルム形成材が含まれる場合には、ラジカル重合性物質とフィルム形成材との合計)100重量部に対し、5〜200重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましい。5重量部未満であると、接続端子を支持する基板や配線部材表面に対する良好な接着強度や支持材との剥離性が劣るようになる。また、200重量部を超えると、接着剤の凝集力が低下するため良好な接着が得られない恐れがある。
【0046】
(4)フィルム形成材
本発明に好適なフィルム形成材としては、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0047】
フィルム形成材とは、液状の組成物を固形化してフィルム形状とした場合に、通常の状態でフィルムとしての取扱いができるようにするもの、すなわち、フィルムとしての良好な機械特性(形成されるフィルムの取扱いが容易であり、フィルムが容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしないなどの特性)を形成されるフィルムに付与するものである。フィルムとしての取扱いの容易さから、特に自己支持性フィルムを形成することができるものが好ましい。
【0048】
このような特性を付与することのできる化合物の中でも、接着性、相溶性、耐熱性、機械強度に優れることから、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子量まで反応させるか、又は、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加させることにより得られる。
【0049】
具体的には、例えば、二官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015モルとを、アルカリ金属水酸化物の存在下、非反応性溶媒中で40〜120℃で反応させることにより得ることができる。
【0050】
樹脂の機械的特性や熱的特性の点からは、特に、二官能性エポキシ樹脂と二官能性フェノール類との配合等量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下で、沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で、反応固形分を50重量部以下とし、50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0051】
二官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などが挙げられる。二官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基を持つ化合物であり、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS等のビスフェノール類などが挙げられる。フェノキシ樹脂はラジカル重合性の官能基により変性されていてもよい。
【0052】
(5)導電性粒子
本発明の接着剤は、接続する配線端子の直接接触により導通が得られるため、特に導電性粒子を含んでいる必要はないが、導電性粒子を含有すると、より安定した接続が得られるため好ましい。
【0053】
本発明に好適な導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子や、カーボン粒子等が挙げられる。十分なポットライフを得るためには、Ni、Cu等の遷移金属類ではなくAu、Ag、白金属の貴金属類が表層であることが好ましく、特に表面がAuであることが好ましい。また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆した粒子も、本発明に好適である。
【0054】
また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等の粒子表面に、上述の金属からなる導通層を形成することにより、最外層を貴金属類とした複合粒子や、熱溶融金属粒子は、加熱加圧による変形性を有するので、接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上することから、本発明に適している。
【0055】
なお、表面に貴金属類の被覆層を備える複合粒子を用いる場合、良好な抵抗を得るため、当該被覆層の厚さは100オングストローム以上とすることが好ましい。特に、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の層をもうける場合、導電性粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損等により生じる酸化還元作用で遊離ラジカルが発生し保存性低下を引き起こすことを回避するため、貴金属類による被覆層の厚さは300オングストローム以上とすることが好ましい。ただし、1μmより厚くしても、効果が厚さに比例して改善されるものではないため、通常、被覆層の厚さは1μm以下にすることが望ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0056】
導電性粒子は、接着剤樹脂成分100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接配線の短絡等を防止するためには0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0057】
なお、導電性粒子が硬化剤と接触しない構造とすると、さらにポットライフを向上させることができる。すなわち、導電性粒子を含まない本発明の接着剤からなる第1の層と、硬化剤に代えて導電性粒子を配合した接着剤からなる第2の層とを積層させた2層以上の多層構造のフィルム状接着剤は、さらにポットライフが長いため好ましい。
【0058】
(6)その他の添加剤
本発明の接着剤には、接着強度改善のため、必要に応じてアリルアクリレート及び/又はアリルメタクリレートを配合してもよい。その配合量は、ラジカル重合性物質の総量(フィルム形成材を含有する場合は、フィルム形成材とラジカル重合性物質との合計)100重量部に対し、0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.5〜5重量部とすることがより好ましい。0.1重量部未満であると接着強度改善の効果が十分発揮されず、10重量部を超えるとラジカル重合反応性が低いために反応不足が生じて良好な接着強度が得られにくくなる。
【0059】
また、本発明の接着剤には、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルのうち少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体を配合することができる。特に、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレート及び/又はグリシジルメタクリレートモノマーを含む共重合体系アクリルゴムは、応力緩和に優れるため、配合することが好ましい。これらアクリルゴムの重量平均分子量は、接着剤の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。
【0060】
本発明の接着剤には、さらに、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤、樹脂類(フェノール樹脂やメラミン樹脂など)、及び、イソシアネート類等を配合してもよい。
【0061】
充填剤の配合は、接続信頼性等が向上するため好ましい。充填剤を用いる場合、その粒子の最大径は、導電性粒子の粒径未満とする。また、その配合量は、接着剤における樹脂成分100体積部に対して5〜60体積部とすることが好ましい。60体積部を超えると信頼性向上の効果が飽和することがあり、5体積部未満では添加の効果が少ない。
【0062】
カップリング剤としてはケチミン、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から本発明に好適である。
【0063】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
ケチミンを有するシランカップリング剤としては、上述のアミノ基を有するシランカップリング剤に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物を反応させて得られたものが挙げられる。
【0065】
(7)用途
本発明の接着剤は、IC(集積回路)チップとチップ搭載基板との接着や、電気配線相互の接着用のフィルム状接着剤として使用することもできる。すなわち、接続端子が互いに対向するようにして配置された第一の接続端子を有する第一の配線部材と第二の接続端子を有する第二の配線部材との間に、フィルム状に成形した本発明の接着剤(フィルム状接着剤)を介在させ、加熱加圧して第一の接続端子と第二の接続端子とを電気的に接続させることができる。
【0066】
本発明による接続の対象として好適な配線部材としては、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップといったチップ部品や、プリント基板等の基板などが挙げられる。これらの配線部材には、接続端子が通常は多数(場合によっては一つでもよい)設けられている。この配線部材の少なくとも1組を、それらに設けられた接続端子の少なくとも一部が対向するように、間に本発明の接着剤を介在させて配置し、加熱しつつ加圧して対向する接続端子間を電気的に接続することにより、2以上の配線部材を備える配線構造体(配線板など)を製造することができる。なお、これにより形成される配線端子の導通は、配線端子の直接接触により実現されてもよく、接着剤中の導電性粒子を介して実現されてもよい。
【0067】
本発明の配線端子の接続は、例えば、第1の接続端子(回路電極)表面に接着剤層を形成し、この表面に、第2の接続端子(回路電極)を、接続端子どうしが対向するように位置合わせして配置し、加熱及び加圧することにより行うことができる。接着剤層の形成は、液状接着剤の塗布等により行ってもよく、また、フィルム状接着剤を載置することにより行ってもよい。
【0068】
(8)接着剤の物性
本発明の接着剤は、接続時に溶融流動して相対向する配線端子を接続させた後、硬化してその接続を保持するものである。このため、接着剤の流動性は重要な因子である。本発明の接着剤は、厚さ0.7mm、15mm×15mmのガラス2枚の間に、厚さ35μm、5mm×5mmの本発明の接着剤を挟み、150℃、2MPa、10秒の条件で加熱及び加圧を行った場合に、初期の面積(A)と加熱加圧後の面積(B)を用いて表される流動性(B)/(A)の値が1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。1.3未満では流動性が悪く、良好な接続が得られない場合があり、3.0を超える場合は、気泡が発生しやすく信頼性に劣る場合がある。
【0069】
また、本発明の接着剤は、硬化後の25℃での弾性率が100〜3000MPaであることが好ましく、300〜2000MPaであることがより好ましい。この範囲に弾性率がある場合、接続後の樹脂の内部応力が低減されるため接着力の向上に有利であり、かつ、良好な導通特性が得られる。
【0070】
本発明の接着剤は、示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での測定において、発熱量の立ち上がり温度(Ta)が70℃〜110℃であり、ピーク温度(Tp)がTa+5〜30℃であり、かつ、終了温度(Te)が160℃以下であることが好ましい。
【実施例】
【0071】
A.接着剤の調製
<実施例1>
(1)ウレタンアクリレートの合成
平均分子量800のポリカプロラクトンジオール400重量部と、2−ヒドロキシプロピルアクリレート131重量部と、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.5重量部と、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.0重量部とを、撹拌しながら50℃に加熱して混合した。次いで、イソホロンジイソシアネート222重量部を滴下し、さらに撹拌しながら80℃に昇温してウレタン化反応を行った。イソシアネート基の反応率が99%以上になったことを確認後、反応温度を下げてウレタンアクリレートAを得た。
【0072】
(2)シリコーン粒子の合成
シリコーン粒子は、20℃に保持したpH12のアルコール水溶液を300rpmで撹拌しつつ、これにメチルトリメトキシシランを添加して、加水分解及び縮合させることにより得た。得られたシリコーン粒子の25℃における弾性率は8MPa、平均粒径は2μmであった。
【0073】
(3)導電性粒子の調製
導電性粒子は、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚さ0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に厚さ0.04μmの金層を設けることにより調製した。得られた導電性粒子の平均粒径は10μmであった。
【0074】
(4)接着剤の調製
工程(2)で得られたシリコーン粒子100重量部を、重量比でトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤100重量部に分散した。
【0075】
固形重量比で、工程(1)で得られたウレタンアクリレートAが99g、リン酸エステル型アクリレート(共栄化学株式会社製、商品名:P2M)が1g、シリコーン粒子が30g、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート(遊離ラジカル発生剤)が5gとなるように配合し、さらに工程(3)で得られた導電性粒子を3体積%配合分散させて、液状の接着剤を得た。
【0076】
<実施例2>
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名PKHC、平均分子量45000)50gを、重量比でトルエン(沸点110.6℃、SP値8.90)/酢酸エチル(沸点77.1℃、SP値9.10)=50/50の混合溶剤に溶解して、固形分40重量%の溶液とした。
【0077】
固形重量比で、フェノキシ樹脂が50g、ウレタンアクリレートAが49g、リン酸エステル型アクリレートが1g、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネートが5g、シリコーン粒子が5gとなるように配合し、導電性粒子を3体積%配合分散させ、得られた液体を厚さ80μmの片面を表面処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃の熱風により10分間乾燥させて、厚さ20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0078】
<実施例3〜5>
フェノキシ樹脂/ウレタンアクリレートA/リン酸エステル型アクリレート/シリコーン粒子/t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネートの固形重量比を50g/49g/1g/20g/5g(実施例3)、30g/69g/1g/10g/5g(実施例4)、30g/40g/30g/10g/5g(実施例5)とした他は実施例2と同様にしてフィルム状接着剤を得た。
【0079】
<比較例1>
ウレタンアクリレートA/リン酸エステル型アクリレート/t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネートの固形重量比を99g/1g/5gとし、シリコーン粒子を配合しなかった他は、実施例1の工程(4)と同様にして液状の接着剤を得た。
【0080】
<比較例2>
シリコーン粒子を用いない他は、実施例2と同様にしてフィルム状接着剤を得た。
【0081】
B.接着剤の評価方法
(1)配線構造体の作製
まず、厚さ1.1mmのガラス11表面にインジュウム−錫酸化物(ITO)の配線12を蒸着により形成したITO基板(表面抵抗<20Ω/□)10(図1(a))の配線12が形成された面に、導電性粒子14を含む接着剤13(各実施例及び比較例において調製したもの)からなる接着剤層15を成膜した(図1(b))。
【0082】
なお、接着剤層15の成膜は、接着剤が液状の実施例1及び比較例1では、接着剤を塗布することにより行い、接着剤がフィルム状である実施例2〜5及び比較例2では、接着剤を貼り付け、70℃、0.5MPaで5秒間加熱及び加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離することにより行った。
【0083】
この接着剤層15の表面に、ポリイミド層18と銅箔(厚さ18μm)とを接着剤17により貼り付け、銅箔をパターニングしてライン幅50μm、ピッチ100μmの配線16を形成したフレキシブル配線板(3層FPC)19を載置し(図1(c))、160℃、3MPaで10秒間加熱及び加圧して、幅2mmにわたり接続し、図1(d)に示す配線構造体21を得た。
【0084】
また、3層FPCに代えて、ポリイミドフィルム(厚さ100μm)22の表面にライン幅50μm、ピッチ100μm、厚さ18μmの銅回路23を500本形成したフレキシブル配線板(2層FPC)24を用い(図2(a))、同様にしてITO基板と接続し、配線構造体25を得た(図2(b))。
【0085】
(2)接続抵抗の測定
上述のようにして配線構造体を作製した後、配線接続部を含むFPCの隣接回路間の抵抗値を作製直後にマルチメータで測定し、さらに、配線構造体を85℃、85%RHの高温高湿槽中に500時間保持した後、同様に抵抗値を測定した。なお、抵抗値は隣接回路間の抵抗150点の平均で示した。
【0086】
(3)接着強度の測定
上述のようにして作製した配線構造体につき、剥離速度50mm/分での90度剥離の剥離試験を行い接着強度を測定した。
【0087】
(4)絶縁性の評価
まず、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚さ18μmの銅回路を交互に250本配置した櫛形回路を有するプリント基板の回路が形成された面に、(1)と同様にして接着剤層を成膜した。次に、この接着剤層の表面に、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚さ18μmの銅回路を500本有するフレキシブル配線板(FPC)を載置し、160℃、3MPaで10秒間加熱及び加圧して幅2mmにわたり接続し、配線構造体を得た。この配線構造体の櫛形回路に100Vの電圧を印加して絶縁抵抗値を測定し、さらに、85℃、85%RHの高温高湿試験を500時間実施した後の絶縁抵抗値を測定した。
【0088】
(5)流動性の評価
15mm×15mm、厚さ0.7mmのガラス2枚の間に、5mm×5mm、厚さ35μmの評価対象接着剤を挟み、150℃、2MPaで10秒間加熱及び加圧し、初期の面積(A)と加熱加圧後の面積(B)とを用いて流動性(B)/(A)の値を求めた。
【0089】
(6)硬化後の弾性率
液状の接着剤(実施例1、比較例1)は、金型に流し込み、160℃で1分間加熱し、硬化させて棒状の硬化物を得た。フィルム状の接着剤(実施例2〜5、比較例2)は、160℃のオイル中に1分間浸漬し、硬化させフィルム状の硬化物を得た。これらの硬化物の貯蔵弾性率を、動的粘弾性測定装置を用いて測定(昇温速度5℃/分、10Hz)し、25℃の弾性率を求めた。
【0090】
(7)DSCの測定
各実施例及び比較例で得られた接着剤を用い、示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント社製、商品名910型)で発熱反応の立ち上がり温度(Ta)、ピーク温度(Tp)、終了温度(Te)を求めた。なお、測定における昇温速度は10℃/分とした。
【0091】
C.結果
上述の各評価方法による結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
比較例1、2の接着剤にはシリコーン粒子が配合されていない。これに対して、シリコーン粒子を配合した実施例1〜5は、接続端子を支持する基板表面にポリイミド樹脂が露出した2層FPC、接着剤が露出した3層FPCであっても、比較例に比べて接着力が大幅に向上した。また、吸湿後の接着力も大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
上述のように、本発明によれば、接続端子を支持する基板がポリイミド樹脂等の絶縁性有機物又はガラスからなる配線部材であっても、また、表面にシリコーン樹脂又はポリイミド樹脂を有する配線部材であっても、良好な接着強度を得ることができ、接続信頼性の高い配線構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】配線端子の接続工程を示す説明図である。
【図2】配線端子の接続工程を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤と、
ラジカル重合性物質と、
25℃での弾性率が0.1〜100MPaであり、平均粒径が0.1〜20μmであるシリコーン粒子とを含有する、配線端子接続用接着剤。
【請求項2】
上記シリコーン粒子の含有量は、
上記ラジカル重合性物質100重量部に対し、5〜200重量部である、請求項1に記載の配線端子接続用接着剤。
【請求項3】
フィルム形成材をさらに含有する、請求項1に記載の配線端子接続用接着剤。
【請求項4】
上記フィルム形成材がフェノキシ樹脂である、請求項3記載の配線端子接続用接着剤。
【請求項5】
上記シリコーン粒子の含有量は、
上記ラジカル重合性物質と上記フィルム形成材との合計100重量部に対し、5〜200重量部である、請求項3又は4に記載の配線端子接続用接着剤。
【請求項6】
導電性粒子をさらに含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の配線端子接続用接着剤。
【請求項7】
加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、ラジカル重合性物質、及び、25℃での弾性率が0.1〜100MPaであり、平均粒径が0.1〜20μmであるシリコーン粒子を含有する組成物からなる第1の層と、
導電性粒子、ラジカル重合性物質、及び、25℃での弾性率が0.1〜100MPaであり、平均粒径が0.1〜20μmであるシリコーン粒子を含有する組成物からなる第2の層とが積層されている、配線端子接続用フィルム状接着剤。
【請求項8】
二以上の配線部材にそれぞれ設けられた接続端子の間を、請求項1〜7のいずれかに記載の配線端子接続用接着剤を用いて電気的に接続する、配線端子の接続方法。
【請求項9】
上記接続端子の少なくとも一つは、
表面が金、銀、錫、白金族の金属、及び、インジュウム−錫酸化物から選ばれる少なくとも一種からなる、請求項8記載の配線端子の接続方法。
【請求項10】
上記配線部材のうちの少なくとも一つは、
絶縁性有機物及びガラスのうちの少なくともいずれかを含む基板を備える、請求項8又は9記載の配線端子の接続方法。
【請求項11】
上記配線部材の少なくとも一つは、
表面に、窒化シリコン、シリコーン化合物及びポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種を備える、請求項8〜10のいずれかに記載の配線端子の接続方法。
【請求項12】
それぞれ接続端子を有する二以上の配線部材を備え、上記配線部材の上記接続端子間が、請求項1〜7のいずれかに記載の配線端子接続用接着剤を用いて電気的に接続されている配線構造体。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−12804(P2006−12804A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162975(P2005−162975)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【分割の表示】特願2001−518803(P2001−518803)の分割
【原出願日】平成12年8月25日(2000.8.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】