説明

接着剤の膜厚測定装置

【課題】ガラス基板と接着剤の屈折率差の大小に依存することなく、接着剤の膜厚を算出することを可能とする。
【解決手段】膜厚測定装置1は、基台11上に設けられるとともに被検物4を載置させるための加熱器12と、被検物4の加熱温度を制御するための加熱制御部14と、被検物4の上方に配置されていて加熱された被検物4の膨張による高さ方向の変化量を測定するためのレーザー変位計13と、被検物4の接着剤3の線膨張係数を入力するための入力部15と、レーザー変位計13により測定した被検物4の高さ方向の変化量、加熱温度、入力部15で入力した接着剤3の線膨張係数に基づいて接着剤3の膜厚を算出する演算部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二枚のガラス基板の間に介在する接着剤の膜厚を測定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学製品の分野では、重ね合わせた二枚の光学ガラス基板の間に膜状の接着剤を介在させることで、それら二枚の光学ガラス基板を固定した光学部品が広く用いられている。このような光学部品の性能を決定する要素として、光学ガラス基板の間に介在する接着剤の膜厚寸法が挙げられるが、所定の膜厚を評価、管理することによって性能を確保するためには、高い精度で膜厚寸法の測定ができる膜厚測定装置が必要となっている。
【0003】
ところで、膜厚寸法を測定する方法としては、例えば特許文献1で開示されている透明フィルムの厚み測定方法を用いることができる。図5、図6、及び図7は特許文献1に示された透明フィルムの厚み測定方法の概要を説明するための図である。
図5に示すように、白色の平行光線101をフィルム102に照射すると、反射光としては直接反射していく光1の他に、フィルム102の両表面の間を何回か反射した後、出て行く光2、光3、…(図ではローマ数字で示している、以下同様)が存在するが、この二種類の光2、3は互いに干渉し合い、その結果、特定の波長の光が強く、また特定の波長の光が弱くなる。つまり、フィルム102に入る前の光の放射エネルギーの波長強度分布(以下、「光のスペクトル」という)は、フィルム102によって反射されることにより変化する。この変化は、光線の入射角θが一定ならば、フィルム102の厚さdおよび屈折率nに依存する。したがって、フィルム102に白色の平行光線101を照射し、フィルム102により反射された光のスペクトルを測定することで、これと予め測定したフィルム102の屈折率nからフィルム102の厚さdを求めることを可能としたものである。
【0004】
以下、数式を用いて原理を説明すると、白色の平行光線101をフィルム102に角度θで入射させると、フィルム102に入射せず反射した光1と、フィルム102に入射して屈折した後にフィルム102と空気103との界面で反射を繰り返してフィルム102外に出る光2、光3、…とが存在する。図5において、光3以後の光の強度は非常に弱くなるので、この表面で反射した光1と、一回反射した後にフィルム102外へ出る光(すなわちフィルム102の片面で反射し更に他面より外へ出る光2)とを考えると、その光学的距離の差(光路差)Δは、屈折角をθ´とすると、次式で示される。
Δ=2ndcosθ´ (101)
θ´=sin−1{(sinθ)/n} (102)
【0005】
つまり、光1、光2が干渉することにより、Δが次式(103)で示される条件を満たすような波長の光について反射光は極大となり、また(104)式で示されるような条件を満たす波長については反射光が極小となる。
Δ=mλ(ただし、m=1/2、3/2、5/2、…) (103)
Δ=mλ(ただし、m=1、2、3、…) (104)
(ただし、mは干渉の次数、λは波長である。)
したがって、反射光のスペクトルは(103)式を満たす波長で極大を示し、(104)式を満たす波長で極小を示して図6のようになる。
図6において、k番目の極小を示す波長をλkとし、波長が短い方向へ順に極小へはk、k+1、k+2、…、極大にはk+1/2、k+3/2、k+5/2、…という番号を付け、その波長をそれぞれλk、λk+1/2、λk+1、λk+3/2、…とすれば、光強度Iが二つの極大または極小を示す波長λj、λl(j<1、j=1/2、1、3/2、2、…、l=1/2、1、3/2、2、…)について、λjの干渉次数は次の(105)式のようになる。
m=(l−j)λl/(λj−λl) (105)
従ってフィルム102の厚さdは、(103)式または(104)式より次の(106)式で表すことができる。
d=mλj/(2ncosθ´) (106)
ここで屈折率nを予め他の方法で測定しておいて、何らかの方法でフィルム102より反射された光のスペクトルを測定することにより、(106)式よりフィルム102の厚さdを計算することができる。
【0006】
さらに、図7において、光源111より出た光はレンズ系112により平行光線になった後、照射部123に至りフィルム102により反射される。このフィルム102の裏面には反射鏡あるいはローラーのような反射部材122が設けられている。更にレンズ系113、114で十分に拡がった平行光線になった後、プリズム115を通り分光され、レンズ116により波長によって異なった位置へ集光され、受光素子117の上にスペクトルを写し出す。受光素子117により得られる電気信号は各波長に対応した集光位置における光強度であるので、これを波長−光強度に変換すればスペクトルが得られる。かくして得られたスペクトルより極大または極小を示す波長を見出し、フィルム102の厚さdを計算することが可能となっている。
なお、フィルム反射前の光をハーフミラー121等のようなもので分割し、分割した光をプリズム(または回折格子)118、レンズ119、受光素子120でスペクトルの測定を行い、光源111の持っているスペクトルおよび光源の変動を監視すれば、よりノイズの少ないきれいなスペクトルが得られ、より精度よくフィルム102の厚さdを測定することが可能となっている。
【特許文献1】特開昭56−115905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示されている従来技術では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1ではフィルムの厚さ(膜厚寸法)の測定に反射光を利用しているが、反射光量を決定する反射率と光が通過する媒質の関係は、フレネルの公式によって定義されている。フレネルの公式によると、図8において、媒質131の屈折率をn、媒質132の屈折率をnとすると、反射率は以下の式で表すことができる。
R={(n−n)/(n+n)} (107)
この式によると、n値とnの値の差が小さいときには、反射率Rの値が小さくなり、反射光の量が少なくなる。
つまり、重ね合わせた二枚の光学ガラス基板どうしが接着剤によって接着された構成をなし、光の透過と反射が可能な被検物において、その接着剤の膜厚寸法を従来技術を用いて測定すると、接着剤と光学ガラスの屈折率差が小さい場合に、反射光の量が不足して測定することができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ガラス基板と接着剤の屈折率差の大小に依存することなく、接着剤の膜厚を算出することが可能な接着剤の膜厚測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る接着剤の膜厚測定装置では、二枚のガラス基板の間に接着剤を介在させてなる被検物における接着剤の膜厚を計測するための接着剤の膜厚測定装置であって、被検物の加熱温度を制御する加熱制御手段と、加熱された被検物の膨張による高さ方向の変化量を測定するための変位測定手段と、接着剤の線膨張係数を入力するための入力手段と、変位測定手段により測定した被検物の高さ方向の変化量、加熱温度、及び接着剤の線膨張係数に基づいて、接着剤の膜厚を算出する演算手段とを備えていることを特徴としている。
【0010】
本発明では、被検物を所定の加熱温度dTで加熱して膨張させることによって生じる変形量(高さ方向の変化量Δh)を測定し、演算手段において、測定した被検物の変化量Δhと加熱温度dTと接着剤の線膨張係数ρとに基づいて、接着剤の膜厚tを算出することができる。例えばガラスの線膨張係数が接着剤の線膨張係数ρに比べて1/1000程度となり、十分に小さい値であることから、ガラス基板の厚さ寸法を考慮せずに、被検物の高さ方向の変化量Δhを接着剤の膨張(高さ方向の変化量)とすることが可能であり、接着剤の膜厚tをt≒Δh/(ρ×dT)の式を用いて算出することができる。そして、この場合には、接着前のガラス基板の厚さを予め測定することが不要となる。このように、本膜厚測定装置では、ガラス基板と接着剤の屈折率差のが小さい場合であっても接着剤の膜厚を測定することができる。
【0011】
また、本発明に係る接着剤の膜厚測定装置では、変位測定手段を被検物に対して高さ方向に近接離反させるための移動手段が設けられていてもよい。
【0012】
これにより、移動手段により、被検物の高さに応じて、その被検物の上面が変位測定手段の測定範囲に収まるように位置を調整することが可能となることから、変位測定手段の測定範囲を超える、様々な厚さ寸法の被検物を測定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着剤の膜厚測定装置によれば、ガラス基板と接着剤の屈折率差の大小に依存することなく、測定した被検物の変化量と加熱温度と接着剤の線膨張係数とに基づいて、計算式により接着剤の膜厚を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態による接着剤の膜厚測定装置について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態による接着剤の膜厚測定装置の概略構成を示す図、図2は図1に示す膜厚測定装置で測定する被検物の詳細構成を示す側面図、図3は被検物の加熱による変化の状態を説明するための図である。
【0015】
図1に示すように、本第1の実施の形態による膜厚測定装置1は、二枚のガラス基板(光学ガラス基板2A、2B)を接着剤3を介して貼り合せた被検物4において、その接着剤3の膜厚寸法(膜厚t)を算出するためのものである。
ここで、図2に示すように、被検物4は、第1光学ガラス基板2Aの上板面2aと第2光学ガラス基板2Bの下板面2dとを対向させて重ね合わせ、第1光学ガラス基板2Aと第2光学ガラス基板2Bとの間において、全面にわたって膜状に広がった接着剤3を介在させた構造となっている。なお、本実施の形態では、上下方向で下側(後述する加熱器12に載置する側)を第1光学ガラス基板2Aとし、上側を第2光学ガラス基板2Aとする。
【0016】
図1に示すように、膜厚測定装置1は、基台11上に設けられるとともに被検物4を載置させるための加熱器12と、被検物4の加熱温度dTを制御するための加熱制御部14(加熱制御手段)と、被検物4の上方に配置されていて加熱された被検物4の膨張による高さ方向の変化量を測定するためのレーザー変位計13(変位測定手段)と、被検物4の接着剤3の線膨張係数ρを入力するための入力部15(入力手段)と、レーザー変位計13により測定した被検物4の高さ方向の変化量Δh、加熱温度dT、入力部15で入力した接着剤3の線膨張係数ρに基づいて接着剤3の膜厚tを算出する演算部16(演算手段)とから概略構成されている。
【0017】
加熱器12は、被検物4を載置させるための載置面12aにおいて、第1光学ガラス基板2Aを下板面2bが接するようにして載置させるものである。
レーザー変位計13は、基台11上に立設された支持部材17によって支持されており、被検物4の上方位置であって、被検物4の第2光学ガラス基板2Aの上板面2cの高さ位置を計測することが可能な位置に配置されている。そして、レーザー変位計13は、演算部16に接続され、検出した被検物4の高さ方向の変化量Δhを演算部16へ送る機能を有している。
【0018】
加熱器12を制御する加熱制御部14は、被検物4の接着剤3に取り付けられた熱伝対18を接続させるとともに、演算部16に接続している。つまり、その熱伝対18の温度(接着剤温度)が所定温度となるように加熱器12を温度調整する制御を行うとともに、熱伝対18で検知した接着剤3の温度を演算部16へ送る機能を有している。
入力部15は、加熱器12上に載せられる被検物4の接着剤3の線膨張係数ρを入力し、演算部16に送るものである。
【0019】
演算部16は、上述したように、レーザー変位計13、加熱制御部14、および入力部15に接続されており、それらから取り込んだ情報、すなわち加熱器12によって加熱された被検物4の高さ方向の変化量Δhと、そのときの加熱された接着剤3の加熱温度dTと、接着剤3の線膨張係数ρとに基づいて接着剤3の膜厚tを算出し、モニター等の表示部19へ出力する構成となっている。
【0020】
次に、このように構成される膜厚測定装置1を用いて被検物4の接着剤3の膜厚tを算出する方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
先ず、図3に示すように、加熱による第1光学ガラス基板2Aの厚さ寸法をt1とし、加熱による第2光学ガラス基板2Bの厚さ寸法をt2とし、第2光学ガラス基板2Bの上板面2c(被検物4の上面)の高さの変化量をΔh、第1光学ガラス基板2Aの線膨張係数をρ1、第2光学ガラス基板2Bの線膨張係数をρ2、接着剤3の線膨張係数をρ、加熱温度をdTとすると、接着剤3の膜厚tは以下の式で表すことができる。
【0021】
【数1】

【0022】
(1)式において、ガラスの線膨張係数は接着剤の線膨張係数に比べて十分に小さいため、第1光学ガラス基板2Aの線膨張係数ρ1と、第2光学ガラス基板2Bの線膨張係数ρ2とは、接着剤3の線膨張係数ρに対して無視することが可能であり、(2)式のように近似することができる
【0023】
【数2】

【0024】
また、図3に示すように、加熱前の被検物4の上面(第2光学ガラス基板2Bの上板面2c)の高さをhbとし、加熱後の第2光学ガラス基板2Bの上板面2cの高さをhaとすると、上板面2cの高さの変化量Δhは以下の式で表すことができる。
【0025】
【数3】

【0026】
また、加熱前の被検物4の温度をTbとし、加熱温度をdTとすると、加熱後の被検物4の温度Taは以下の式で表すことができる。
【0027】
【数4】

【0028】
次に、具体的に膜厚測定装置1を用いて接着剤3の膜厚tを算出する方法について、図1等に基づいて説明する。
先ず、接着剤3の線膨張係数ρ、および加熱温度dTを、入力部15に入力する。そして、被検物4を第1光学ガラス基板2Aの下板面2bが載置面12aに接するようにして加熱器12に載せてから、レーザー変位計13によって加熱前の第2光学ガラス基板2Bの上板面2cの高さhb(図3参照)が測定され、得られた測定値が演算部16に送られる。さらに、熱伝対18によって加熱前の被検物4の温度Tbが測定され、その得られた測定値が演算部16に送られる。これにより、演算部16において、加熱温度dTと加熱前の被検物4の温度Tbとに基づいて、上記(4)式より加熱後の被検物4の温度Taが算出され、加熱制御部14に送られる。
【0029】
次いで、加熱器12で被検物4を加熱し、被検物4の温度が加熱後の被検物4の温度Taで平衡状態になったことを熱伝対18で検知した時点で、レーザー変位計13によって加熱後の第2光学ガラス基板2Bの上板面2cの高さha(図3参照)が測定され、得られた測定値が演算部16に送られる。
そして、演算部16において、加熱前の第2光学ガラス基板2Bの上板面2cの高さhbと加熱後の高さhaを(3)式に代入して、第2光学ガラス基板2Bの上板面2cの高さの変化量Δhが求められる。さらに、その上板面2cの高さの変化量Δhと、接着剤3の線膨張係数ρと、加熱温度dTとを(2)式に代入することにより、接着剤3の膜厚tが算出される。なお、表示器19には、演算部16によって算出された接着剤3の膜厚tが表示されることになる。
【0030】
(実施例)
次に、上述した本実施の形態の膜厚測定装置1による被検物4の接着剤3の膜厚tの算出方法を裏付けるため、具体例の一例について以下に説明する。なお、以下の符号は、図1乃至図3に基づくものとする。
本実施例では、第1及び第2光学ガラス基板2A、2Bとして、基板の厚さ寸法t1、t2が共に0.2mmであり、線膨張係数ρ1、ρ2が共に3.2×10−6/℃のパイレックス(登録商標)ガラスを使用するとともに、線膨張係数ρが3×10−3/℃の接着剤3を使用し、本膜厚測定装置1により加熱温度dTを20℃として接着剤3の膜厚tを算出した。そして、レーザー変位計13で測定した被検物4の膨張による第2光学ガラス基板2Bの上板面2cの高さの変化量Δhは5μmであった。
そして、光学ガラス基板2A、2Bの線膨張係数ρ1、ρ2と厚さ寸法t1、t2を考慮した上記(1)式より接着剤3の膜厚t´を算出すると、82.91μmとなる。
一方、光学ガラス基板2A、2Bの線膨張係数ρ1、ρ2と、厚さ寸法t1、t2を無視した上記(2)式より算出した接着剤3の膜厚tは、83.33μmとなる。
【0031】
つまり、光学ガラス基板2A、2Bの線膨張係数ρ1、ρ2が接着剤3の線膨張係数ρに比べて1/1000程度となり、十分に小さい値であり、上述の算出結果のとおり、光学ガラス基板2A、2Bを考慮して算出した接着剤3の膜厚t´と、光学ガラス基板2A、2Bを考慮せずに無視して算出した膜厚tとの差は0.427μmとなり、その誤差はレーザー変位計13による測定値(5μm)に対して1/10程度となる。そのため、ガラス基板の線膨張係数ρ1、ρ2と、厚さ寸法t1、t2を無視した上記(2)式で算出することが可能であり、すなわち、被検物4の高さ方向の変化量Δhを接着剤3の膜厚tの変化量として算出することが可能であることが確認できる。
【0032】
上述のように本第1の実施の形態による接着剤の膜厚測定装置では、光学ガラス基板2A、2Bと接着剤3の屈折率差の大小に依存することなく、測定した被検物4の変化量と加熱温度と接着剤3の線膨張係数とに基づいて、計算式により接着剤3の膜厚を算出することができる。
【0033】
次に、他の実施の形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1の実施の形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1の実施の形態と異なる構成について説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態による接着剤の膜厚測定装置の概略構成を示す図である。
図4に示すように、第2の実施の形態による膜厚測定装置5は、上述した第1の実施の形態による膜厚測定装置1(図1参照)と同一構成品には同じ符号を付し、説明を省略または簡略する。
図4に示すように、第2の実施の形態による膜厚測定装置5では、基台11には上下方向(高さ方向、矢印Z方向)に移動可能なZステージ20(移動手段)が取り付けられ、このZステージ20に支持部材17が立設されている。
つまり、本第2の実施の形態では、被検物4を加熱器12上に設置する際に、Zステージ20を駆動してレーザー変位計13を高さ方向に移動させることによって、被検物4の高さに応じて、その被検物4の上板面2cがレーザー変位計13の測定範囲に収まる位置に調整することができる。これにより、レーザー変位計13の測定範囲を超える、様々な厚さ寸法の被検物を測定することが可能である。
なお、Zステージ20は、支持部材17に取り付け、レーザー変位計13は、Zステージ20に取り付けてもよい。
【0034】
以上、本発明による接着剤の膜厚測定装置の第1及び第2の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では被検物4の高さ方向の変化量Δhを接着剤3の膨張による変化量とし、光学ガラス基板2A、2Bを考慮しないで接着剤3の膜厚tを算出しているが、これに限定されることはなく、光学ガラス基板2A、2Bの厚さ寸法や線膨張係数を考慮して上述した(1)式により接着剤3の膜厚tを算出するようにしてもかまわない。
また、本第1の実施の形態における実施例では光学ガラス基板としてパイレックス(登録商標)ガラスを採用しているが、これに限らず、他の種類のガラス基板であってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態による接着剤の膜厚測定装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す膜厚測定装置で測定する被検物の詳細構成を示す側面図である。
【図3】被検物の加熱による変化の状態を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態による接着剤の膜厚測定装置の概略構成を示す図である。
【図5】従来の厚み測定方法の概要を説明するための図である。
【図6】従来の厚み測定方法の概要を説明するための図である。
【図7】従来の厚み測定方法の概要を説明するための図である。
【図8】従来の厚み測定方法の概要を説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1、5 膜厚測定装置
2A 第1光学ガラス基板
2B 第1光学ガラス基板
2c 上板面
3 接着剤
4 被検物
11 基台
12 加熱器
13 レーザー変位計(変位測定手段)
14 加熱制御部(加熱制御手段)
15 入力部(入力手段)
16 演算部(演算手段)
18 熱伝対
19 表示部
20 Zステージ(移動手段)
Δh 被検物の高さ方向の変化量
t 接着剤の膜厚
ρ 接着剤の線膨張係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚のガラス基板の間に接着剤を介在させてなる被検物における前記接着剤の膜厚を計測するための接着剤の膜厚測定装置であって、
前記被検物の加熱温度を制御する加熱制御手段と、
加熱された前記被検物の膨張による高さ方向の変化量を測定するための変位測定手段と、
前記接着剤の線膨張係数を入力するための入力手段と、
前記変位測定手段により測定した前記被検物の高さ方向の変化量、前記加熱温度、及び前記接着剤の線膨張係数に基づいて、前記接着剤の膜厚を算出する演算手段と、
を備えていることを特徴とする接着剤の膜厚測定装置
【請求項2】
前記変位測定手段を前記被検物に対して高さ方向に近接離反させるための移動手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の接着剤の膜厚測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−151743(P2010−151743A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332648(P2008−332648)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】