説明

接着剤封入組成物及びそれを用いて作製される電子デバイス

有機電気発光デバイス、タッチスクリーン、光起電デバイス、及び薄膜トランジスタに用いるための接着性封入用組成物が本明細書に開示される。接着性封入用組成物は、任意の多官能性(メタ)アクリレートモノマー及び/又は任意の粘着付与剤と組み合わせられる、1種以上のポリイソブチレン樹脂を含む感圧性接着剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子デバイスに使用するための封入接着剤組成物を開示する。より具体的には、有機電気発光デバイス、タッチスクリーン、光起電デバイス、及び薄膜トランジスタ等の電子デバイスに使用するためのポリイソブチレンを含む感圧性接着剤組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
有機電気発光デバイスは、アノードとカソードとの間に有機電荷輸送層及び有機発光層を配置することにより有機層(以後「発光ユニット」と称する場合もある)を含む。電気発光デバイスは、多くの場合高強度の発光を提供するが、直流及び低い電圧で駆動することが可能である。電気発光デバイスの全ての構成要素は固形材料から形成され、フレキシブルディスプレイとして使用される可能性がある。
【0003】
一部の電気発光デバイスの性能は時間の経過とともに劣化し得る。例えば、発光強度、発光効率、及び発光均一度のような発光特性は時間とともに減少する可能性がある。発光特性の劣化は、有機電気発光デバイスに浸透する酸素による電極の酸化、素子の駆動による熱の発生による有機材料の酸化分解、有機電気発光デバイスに浸透する空気中の水分による電極の腐食、又は有機材料の破壊によって引き起こされる可能性がある。更に、構造の界面剥離もまた発光特性の劣化を引き起こす場合がある。界面剥離は、例えば、酸素又は水分の影響、及び素子駆動の間の熱生成の影響に起因することがある。熱は、隣接した層の間の熱膨張係数の相違に起因する応力の生成により、界面剥離を誘引し得る。
【0004】
有機電気発光デバイスは、デバイスを水分及び/又は酸素との接触から保護するためにポリマー材料で封入される場合がある。しかし、ポリマー材料の気密封止特性、水分耐性、防湿特性等のために、多くのポリマー材料は不適切である。熱硬化性ポリマー材料を用いる場合、熱を用いて材料を硬化させるが、これにより有機発光層及び/若しくは電荷輸送層が劣化する恐れがある、又は結晶化のためにデバイスの発光特性が劣化する恐れがある。光硬化性ポリマー材料を用いる場合、紫外線を用いて材料を硬化させることが多いが、これにより有機発光層及び/又は電荷輸送層が劣化する恐れがあるポリマー材料を硬化させた後、装置を使用するときに受ける恐れのある衝撃、屈曲、又は振動によりポリマー材料に亀裂が入る恐れがあり、それはまたデバイスの性能特性の劣化を導く恐れもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂と、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、を含む、電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、粘着付与剤を実質的に含まない接着性封入用組成物が、本明細書に開示される。
【0006】
別の態様では、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂と、約100,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、を含む、電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、粘着付与剤を実質的に含まない接着性封入用組成物が、本明細書に開示される。
【0007】
別の態様では、約300,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、粘着付与剤と、を含む、電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂を実質的に含まない接着性封入用組成物が、本明細書に開示される。
【0008】
別の態様では、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂であって、接着性封入用組成物の総重量の20重量%以下含まれる第1のポリイソブチレン樹脂と、約300,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、粘着付与剤とを含む接着性封入用組成物が、本明細書に開示される。
【0009】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される接着性封入用組成物は、光重合性であってもよく、又は熱重合性であってもよい。幾つかの実施形態では、接着性封入用組成物は、それぞれ基材上に配置された接着層の形態で提供することができる。
【0010】
一般に、接着性封入用組成物は感圧性接着剤である。接着性封入用組成物は、有機発光デバイス、光起電デバイス、及び薄膜トランジスタ等の電子デバイスで用いることができる。
【0011】
本発明のこれらの態様及び他の態様について以下の「発明を実施するための形態」に記載する。上記の概要は、いかなる場合にも特許請求される発明の主題を限定するものとして解釈されるべきではなく、発明の主題は本明細書に記載される特許請求の範囲によってのみ定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】例示的な接着剤封入被膜の概略断面図。
【図1B】例示的な接着剤封入被膜の概略断面図。
【図1C】例示的な接着剤封入被膜の概略断面図。
【図1D】例示的な接着剤封入被膜の概略断面図。
【図2】有機発光ダイオードの概略断面図。
【図3A】例示的な光起電力電池の概略断面図。
【図3B】例示的な光起電力電池の概略断面図。
【図3C】例示的な光起電力電池の概略断面図。
【図4A】例示的な薄膜トランジスタの概略断面図。
【図4B】例示的な薄膜トランジスタの概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示される接着性封入用組成物は、1つ以上の利点を提供することができる。接着性封入用組成物は、水を僅かしか含まない又は全く含まないため、電子デバイスに対する水分の悪影響が最低限に抑えられる。別の利点は、水分の透過性が低いため、封入される電子的構成要素の水分への曝露を阻止できる又は最低限に抑えられることである。接着性封入用組成物はまた、酸性成分を僅かしか含まない又は全く含まないよう設計することができるため、デバイス中に電極等の金属構成要素の腐食を阻止できる又は最低限に抑えられる。
【0014】
接着性封入用組成物はまた良好な接着特性を呈する。接着性封入用組成物は十分な流動性を有するため、封入される電子デバイス内の空隙として空気がほとんど捕捉されない又は全く捕捉されない。更に、接着性封入用組成物は、電子用途で用いるための接着剤で問題となることが多いガス放出がほとんど生じない又は全く生じない可能性がある。接着性封入用組成物の取扱性は、基材上に層として組成物を提供し、接着剤封入被膜を形成することにより改善できる。
【0015】
接着性封入用組成物は、電磁スペクトルの可視領域において高い透過率(少なくとも約80%)を有してもよく、該可視領域は約380nm〜約800nmの波長を有する。接着性封入用組成物が可視領域においてかかる高透過率を有する場合、それは光を遮断することなしに電子デバイスの発光又は受光表面の側に配置することができる。
【0016】
加えて、接着性封入用組成物は、多様な電子デバイスで用いることができる。かかるデバイスでは、衝撃又は振動による封入の不具合の発生を最低限に抑えることができる。接着性封入用組成物を用いることができる電子デバイスの1種は、フレキシブルディスプレイである。電子デバイスの他の種類としては、有機発光ダイオード、光起電力電池、薄膜トランジスタ、及びタッチスクリーンが挙げられる。
【0017】
幾つかの実施形態では、接着性封入用組成物は、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂と、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、を含み、前記接着性封入用組成物は粘着付与剤を実質的に含まない。第1のポリイソブチレン樹脂は、約1,000,000g/モル超の重量平均分子量を有してもよい。第1のポリイソブチレン樹脂は、接着性封入用組成物の総重量の少なくとも約50重量%含まれてもよい。
【0018】
幾つかの実施形態では、接着性封入用組成物は、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂と、約100,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、を含み、前記接着性封入用組成物は粘着付与剤を実質的に含まない。この実施形態では、第1のイソブチレン樹脂は、約400,000g/モル超の重量平均分子量を有してもよい。この実施形態では、第1のイソブチレン樹脂はまた、約1,000,000g/モル超の重量平均分子量を有してもよい。第1のポリイソブチレンは、接着性封入用組成物の総重量の少なくとも約50重量%含まれてもよい。また多官能性(メタ)アクリレートモノマーが、この実施形態の接着性封入用組成物に含まれてもよい。かかるモノマーを用いるとき、接着性封入用組成物は、全て接着性封入用組成物の総重量に対して、約50〜約80重量%の第1のポリイソブチレン樹脂と、約10〜約30重量%の第2のポリイソブチレン樹脂と、約10〜約20重量%の多官能性(メタ)アクリレートモノマーとを含んでもよい。
【0019】
幾つかの実施形態では、接着性封入用組成物は、約300,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、粘着付与剤と、を含み、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレンを実質的に含まない。第2のイソブチレン樹脂は、約100,000g/モル未満の重量平均分子量を有してもよい。この実施形態の接着性封入用組成物は、全て接着性封入用組成物の総重量に対して、約10〜約50重量%の第2のポリイソブチレン樹脂と、約10〜約40重量%の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、約0〜約60重量%、又は約30〜約60重量%の粘着付与剤と、を含んでもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、接着性封入用組成物は、約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂であって、接着性封入用組成物の総重量の20重量%未満含まれる第1のポリイソブチレン樹脂と、約300,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、粘着付与剤とを含む。この実施形態では、第1のイソブチレン樹脂は、約1,000,000g/モル超の重量平均分子量を有してもよい。接着性封入用組成物は、全て接着性封入用組成物の総重量に対して、約10〜約30重量%の第2のポリイソブチレン樹脂と、約10〜約30重量%の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、約0〜約60重量%、又は約40〜約60重量%の粘着付与剤と、を含んでもよい。
【0021】
第1及び第2のポリイソブチレン樹脂は、一般に主鎖又は側鎖にポリイソブチレン樹脂骨格を有する樹脂である。幾つかの実施形態では、第1及び第2のポリイソブチレン樹脂は、イソブチレンの実質的ホモポリマー、例えば商品名OPPANOL(BASF AG)及びGLISSOPAL(BASF AG)として入手可能なポリイソブチレン樹脂である。幾つかの実施形態では、第1及び第2のポリイソブチレン樹脂は、イソブチレンのコポリマー、例えばイソブチレンが別のモノマーと共重合している合成ゴムを含む。合成ゴムとしては、大部分のイソブチレンと少量のイソプレンのコポリマーであるブチルゴム、例えば商品名VISTANEX(Exxon Chemical Co.)及びJSR BUTYL(Japan Butyl Co.,Ltd.)として入手可能なブチルゴムが挙げられる。合成ゴムはまた、大部分のイソブチレンとn−ブタン又はブタジエンとのコポリマーを含む。幾つかの実施形態では、イソブチレンホモポリマーとブチルゴムとのI混合物を用いてもよく、即ち第1のポリイソブチレンはイソブチレンのホモポリマーを含み、第2のポリイソブチレンはブチルゴムを含む、又は第1のポリイソブチレンはブチルゴムを含み、第2のポリイソブチレンはイソブチレンのホモポリマーを含む。第1及び第2のポリイソブチレン樹脂は、それぞれ1種超の樹脂を含んでもよい。
【0022】
ポリイソブチレン樹脂は、一般に透明な被膜を形成できるように、水素化脂環式炭化水素樹脂に類似する溶解度パラメータ(SP値)(化合物の極性を特徴付けるための指数である)を有し、用いられる場合、水素化脂環式炭化水素樹脂と良好な適合性(即ち混和性)を呈する。更に、ポリイソブチレン樹脂は、低表面エネルギーを有するため、被接着体(adherent)上への接着剤の展延(spreadability)を可能にし、界面における空隙の発生が最低限に抑えることができる。更に、ガラス転移温度及び水分透過性が低く、したがってポリイソブチレン樹脂は接着性封入用組成物の基樹脂として好適である。
【0023】
ポリイソブチレン樹脂は、一般に接着性封入用組成物に所望の程度の流動性を付与するために用いることができる所望の粘弾特性を有してもよい。ひずみレオメータ(strain rheometer)を用いて、種々の温度における弾性率(貯蔵弾性率)G’及び粘性率(損失率)G”を測定することができる。次いでG’及びG”を用いて比tan(δ)=G”/Gを決定することができる。一般に、tan(δ)値が高くなるにつれて、材料はより粘性材料様になり、tan(δ)値が低くなるにつれて、材料はより弾性固体様になる。幾つかの実施形態では、ポリイソブチレン樹脂は、組成物の温度が約70℃〜約110℃であるとき、接着性封入用組成物が少なくとも約0.5の比較的低度数のtan(δ)値を有するように選択してもよい。このように、組成物は、ほとんど又は全く空気が捕捉されていない非平坦表面上で十分に流動することができる。
【0024】
接着性封入用組成物の所望の粘弾特性は、粘着付与剤を全く用いることなしに(メタ)アクリレートモノマーと組み合わせたとき、約300,000g/モル超、又は約1,000,000超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂を用いて得ることができる。更に、接着性封入用組成物の所望の粘弾特性は、接着性封入用組成物の総重量に対して約50重量%超の第1のポリイソブチレンを用いて得ることができる。
【0025】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、飽和であっても不飽和であってもよく、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式、及び/又はエポキシ官能基を含んでもよい。幾つかの実施形態では、ポリイソブチレン樹脂及び任意の粘着付与剤の混和性を高めることができるため、飽和長鎖アルキル(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート/エポキシモノマー、又はこれらの組み合わせをモノマーとして利用することができる。多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、非置換であってもよく、ヒドロキシ又はアルコキシ基等の種々の基で置換されてもよい。
【0026】
代表的な長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオルジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオルジ(メタ)アクリレート、及び水素添加ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な脂環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジイルメタクリレート、ペンタメチルピペリジイルメタクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリレート化エポキシが挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
幾つかの実施形態では、2、3、4、又は4超の(メタ)アクリレート基を有する多官能性(メタ)アクリレートモノマーを利用してもよい。多官能性(メタ)アクリレートの混合物を利用できることも当業者には理解される。
【0028】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、ポリイソブチレン樹脂について上述したように、被接着体に対する接着性封入用組成物の接着力及び湿潤性を最適化するよう選択することができる。モノマーが硬化されて樹脂を形成するため、多官能性(メタ)アクリレートモノマーは、接着性封入用組成物の接着力及び保持強度を高めることができる。
【0029】
上記のように、幾つかの実施形態では、粘着付与剤を用いてもよい。一般に、粘着付与剤は、接着性封入用組成物の粘着性を高める任意の化合物又は化合物の混合物であってもよい。所望なことに、粘着付与剤は、水分透過性を高めない。粘着付与剤は、水素化脂環式炭化水素樹脂、部分的水素化脂環式炭化水素樹脂、非水素化脂環式炭化水素樹脂、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
粘着付与剤の例としては、水素添加テルペン系樹脂(例えば、商標表記CLEARON P,M及びK(Yasuhara Chemical)としてで市販されている樹脂)、水素化樹脂又は水素化エステル系樹脂(例えば、商標表記FORAL AX(Hercules Inc.)、FORAL 105(Hercules Inc.)、PENCEL A(Arakawa Chemical Industries.Co.,Ltd.)、ESTERGUM H(Arakawa Chemical Industries Co.,Ltd.)、及びSUPER ESTER A(Arakawa Chemical Industries.Co.,Ltd.)、不均化樹脂又は不均化エステルベース樹脂(例えば、商標表記PINECRYSTAL(Arakawa Chemical Industries Co.)として市販されている樹脂、石油ナフサの熱分解により生成されたペンテン、イソプレン、ピペリン及び1,3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られたC5系石油樹脂の水素化樹脂である水素化ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、商標表記ESCOREZ 5300及び5400シリーズ(Exxon Chemical Co.)、EASTOTAC H(Eastman Chemical Co.)として市販されている樹脂)、部分水素化芳香族修飾ジシクロペンタジエン系樹脂(例えば、商標表記ESCOREZ 5600(Exxon Chemical Co.)として市販されている樹脂)、石油ナフサの熱分解により生成されたインデン、ビニルトルエン及びα−又はβ−メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られたC9系石油樹脂の水素化から生じる樹脂(例えば、商標表記ARCON P又はARCON M(Arakawa Chemical Industries Co.)として市販されている樹脂)、上述したC5留分及びC9留分の共重合石油樹脂の水素化から生じた樹脂(例えば、商標表記IMARV(Idemitsu Petrochemical Co.)として市販されている樹脂)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
非水素化脂環式炭化水素樹脂としては、C5、C9、C5/C9炭化水素樹脂、ポリテルペン樹脂、芳香族修飾ポリテルペン樹脂、又はロジン誘導体が挙げられる。非水素化脂環式炭化水素樹脂を用いる場合、典型的には別の水素化又は部分的水素化粘着付与剤と併用される。非水素化脂環式炭化水素樹脂は、接着性封入用組成物の総重量に対して約30重量%未満の量で用いてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、具体的には水素化脂環式炭化水素樹脂を含む。水素化脂環式炭化水素樹脂の具体例としては、ESCOREZ 5340(Exxon Chemical)が挙げられる。幾つかの実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂は、その水分透過性及び透明性が低いため、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂である。接着性封入用組成物で使用可能な水素化脂環式炭化水素樹脂の重量平均分子量は、典型的には約200〜5,000g/モルである。別の実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂の重量平均分子量は約500〜3,000g/モルである。重量平均分子量が5,000g/モルを超えた場合、粘着性が乏しくなるか、又はポリイソブチレン樹脂との適合性が低下する場合がある。
【0033】
粘着付与剤は、組成物の接着性、使用温度、生産の容易性等に少なくとも部分的に依存して変化し得る軟化温度又は軟化点(環球法軟化温度)を有する場合がある。環球法軟化温度は一般に約50℃〜200℃であり得る。幾つかの実施形態では、環球法軟化温度は約80℃〜150℃である。環球法軟化温度が80℃未満の場合、粘着付与剤は、電子デバイスによる光の放射の際に発生する熱により分離及び液状化する場合がある。これは、有機電気発光デバイスが接着性封入用組成物で直接封入されている場合、発光層などの有機層の変質を引き起こし得る。一方、環球法軟化温度が150℃を超えると、添加される粘着付与剤の量が低すぎて関連特性の十分な改善が得られない場合がある。
【0034】
幾つかの実施形態では、粘着付与剤は、水素化炭化水素樹脂、具体的には水素化脂環式炭化水素樹脂を含む。水素化脂環式炭化水素樹脂の具体例としては、ESCOREZ 5340(Exxon Chemical)が挙げられる。幾つかの実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂は、その水分透過性及び透明性が低いため、水素化ジシクロペンタジエン系樹脂である。接着性封入用組成物で使用可能な水素化脂環式炭化水素樹脂の重量平均分子量は、典型的には約200〜5,000g/モルである。別の実施形態では、水素化脂環式炭化水素樹脂の重量平均分子量は約500〜3,000g/モルである。重量平均分子量が5,000g/モルを超えた場合、粘着性が乏しくなるか、又はポリイソブチレン樹脂との適合性が低下する場合がある。
【0035】
熱反応開始剤及び/又は光開始剤は、用いられる場合、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合を開始させるために接着性封入用組成物中で用いることができる。一般に、反応開始剤の選択は、接着性封入用組成物で用いられる具体的な成分、及び所望の硬化速度に少なくとも部分的に依存する。
【0036】
熱反応開始剤の例としては、アゾ化合物、キニーネ、ニトロ化合物、アシルハロゲン化物、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノン、並びにジラウロイルペルオキシド及びNOF Co.からPERHEXA TMHとして入手可能な1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機ペルオキシドが挙げられる。熱反応開始剤は、接着性封入用組成物の総重量に対して約0.01〜約10重量%又は約0.01〜約5重量%の濃度で用いられることが多い。熱反応開始剤の混合物を用いてもよい。
【0037】
光開始剤の例としては、フェニル及びジフェニルホスフィンオキシド、ケトン、及びアクリジン等の、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾイル化合物、アントラキノン、チオキサントン、ホスフィンオキシドが挙げられる。また光開始剤の例としては、商品名DAROCUR(Ciba Specialty Chemicals)、IRGACURE(Ciba Specialty Chemicals)及びLUCIRIN TPOとして入手可能なエチル2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート等のLUCIRIN(BASF)として入手可能な光開始剤が挙げられる。光開始剤はまた、UVI(Union Carbide Corp.)、SP(Adeka Corp.)、SI(Sanshin Chemical Co.)、KI(Degussa AG)、PHOTOINITIATOR(Rodia Inc.)、CI(Nippon Soda Co.,Ltd.)、及びESACURE(Lamberdi SpA Chemical Specitalies)という名称で入手可能なカチオン性光開始剤を含んでもよい。光開始剤は、接着性封入用組成物の総重量に基づいて約0.01〜約10重量%、又は約0.01〜約5重量%の濃度で用いられることが多い。光開始剤の混合物を用いてもよい。
【0038】
熱反応開始剤を用いる場合、有機電気発光デバイスは、1対の対向する電極を提供することと、少なくとも有機発光層を有し、対向する電極対間に配置される発光ユニットを提供することと、発光ユニットの上、上方、又は周囲に、接着性封入用組成物であって、本明細書に開示されるもののうちいずれかと熱反応開始剤とを含む接着性封入用組成物を提供することと、接着性封入用組成物を加熱して重合接着性封入用組成物を形成することにより作製することができる。幾つかの実施形態では、接着性封入用組成物の加熱は、組成物を約110℃未満の温度に加熱することを含む。
【0039】
光開始剤を用いる場合、有機電気発光デバイスは、1対の対向する電極を提供することと、少なくとも有機発光層を有し、対向する電極対間に配置される発光ユニットを提供することと、発光ユニットの上、上方、又は周囲に接着性封入用組成物であって、本明細書に開示されるもののうちいずれかとUV開始剤とを含む接着性封入用組成物を提供することと、接着性封入用組成物にUVを適用して重合接着性封入用組成物を形成することにより作製することができる。
【0040】
1つの実施形態において、オニウム塩が、その金属イオン混入レベルの低さから使用可能である。オニウム塩にはヨードニウム、スルホニウム、及びホスホニウム錯体塩類が挙げられるがこれらに限定されない。一般に有用なオニウム塩は、一般式Yを有してもよい。Yは、アリールジアルキルスルホニウム、アルキルジアリールスルホニウム、トリアリールスルホニウム、ジアリールヨードニウム及びテトラアリールホスホニウムカチオン類であり、各アルキル基及びアリール基は置換されていてもよい。XはPF、SbF、CFSO、(CFSO、(CFSO、(Cアニオンを含んでもよい。
【0041】
上記構成要素に加えて、接着性封入用組成物は任意の添加剤を含有してもよい。例えば、接着性封入用組成物は柔軟化剤を含有しても良い。柔軟化剤は、例えば、加工性を向上させるために組成物の粘度を調節する(例えば、組成物を押出成形に適するようにする)ため、組成物のガラス転移温度の低下により低温での初期付着性を高めるため、又は凝集性と接着性との間の受容可能なバランスを提供するために有用であり得る。一実施形態において、柔軟化剤は、低揮発性を有し、透明であり、着色及び/又は臭気がないように選択する。
【0042】
使用可能な柔軟化剤の例としては、芳香族型、パラフィン型、及びナフテン型などの石油系炭化水素、液状ポリイソブチレン樹脂、液状ポリブテン、及び水素添加液状ポリイソプレン等の液状ゴム又はその誘導体、ワセリン、及び石油系アスファルトが挙げられるが、これらに限定されない。柔軟化剤を使用する実施形態において、1種類の柔軟化剤又は複数の柔軟化剤の組み合わせを使用することができる。
【0043】
柔軟化剤の具体的な例としては、商品名NAPVIS(BP Chemicals)、CALSOL 5120(ナフテン系オイル、Calumet Lubricants Co.)、KAYDOL(パラフィン系、白色鉱油、Witco Co.)、TETRAX(Nippon Oil Co.)、PARAPOL 1300(Exxon Chemical Co.)、及びINDOPOL H−300(BPO Amoco Co.)が挙げられるが、これらに限定されない。柔軟化剤のその他の特定な例には、その他のポリイソブチレン樹脂ホモポリマー、Idemitsu Kosan Co.,Ltd.から市販されている材料等のポリブチレン、Nihon Yushi Co.,Ltd.から市販されている材料等のポリブチレン、及びその他の液状ポリブチレンポリマーが挙げられる。更にその他の柔軟化剤の具体例としては、商品名ESCOREZ 2520(液状芳香族石油炭化水素樹脂、Exxon Chemical Co.、REGALREZ 1018(液状芳香族石油炭化水素樹脂、Hercules Inc.、SYLVATAC 5N(変性ロジンエステルの液体樹脂、Arizona Chemical Co.)が挙げられる。
【0044】
1つの実施形態において、柔軟化剤は飽和炭化水素化合物である。別の実施形態において、柔軟化剤は液状ポリイソブチレン樹脂又は液状ポリブテンである。末端に炭素−炭素二重結合及び変性ポリイソブチレンを有するポリイソブチレン樹脂及びポリイソブテンを利用することができる。変性ポリイソブチレン樹脂は、水素添加、マレイン化、エポキシ化、アミノ化、又は類似の方法により修飾された二重結合を有する。
【0045】
有機電気発光デバイスを接着性封入用組成物で直接封入するので、柔軟化剤が接着性封入用組成物と分離すること、及び電極と発光ユニットとの間の界面に浸透すること、を防止するために比較的高い粘度を有する柔軟化剤を使用することが可能である。例えば、100℃で500〜5,000,000mm/秒の動粘度を有する柔軟化剤を用いることができる。別の実施形態では10,000〜1,000,000mm/秒の動粘度を有する柔軟化剤を用いることができる。柔軟化剤は様々な分子量を有し得るが、有機電気発光デバイスを接着性封入用組成物で直接封入するので、柔軟化剤の重量平均分子量は約1,000〜500,000g/モルであり得る。更に別の実施形態において、柔軟化剤が接着性封入用組成物と分離し、有機発光ユニット等の有機材料に溶解するのを防ぐために、重量平均分子量は約3,000〜100,000g/モルであり得る。
【0046】
使用する柔軟化剤の量は一般に制限されないが、接着性封入用組成物の望ましい接着力、熱抵抗性、及び剛性の見地から、柔軟化剤は、全接着性封入用組成物に対して約50重量%未満の量で典型的には使用することが可能である。別の実施形態において、接着性封入用組成物は約5重量%〜40重量%の柔軟化剤を含有する。使用する柔軟化剤の量が50重量%を超えると過度の可塑化が起こる可能性があり、熱抵抗性及び剛性に影響を与える可能性がある。
【0047】
充填剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、安定剤、又はこれらの幾つかの組み合わせを接着性封入用組成物に添加してもよい。添加剤の量は、典型的には、多官能性(メタ)アクリレートモノマーの硬化速度に悪影響を与えないように、又は接着性封入用組成物の接着剤の物理的特性に悪影響を与えないように選択される。
【0048】
使用可能な充填剤の例としては、カルシウム又はマグネシウムの炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びドロマイト)、ケイ酸塩(例えば、カオリン、焼成粘土、葉蝋石、ベントナイト、絹雲母、ゼオライト、タルク、アタパルジャイト、及び珪灰石)、ケイ酸(例えば、珪藻土、及びシリカ)、水酸化アルミニウム、パーライト、硫酸バリウム(例えば、沈降硫酸バリウム)、硫酸カルシウム(例えば、石こう)、亜硫酸カルシウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、が含まれるが、乾燥剤(例えば、酸化カルシウム及び酸化バリウム)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
充填剤は異なる粒径を有してもよい。例えば、可視域において高透過率を有する接着性封入用組成物を提供することが望ましい場合、充填剤の平均一次粒径は1〜100nmの範囲であってもよい。別の実施形態において、充填剤の平均一次粒径は5nm〜50nmの範囲内であり得る。更に、低水分透過性を改善するためにプレート又は鱗状の形態の充填剤を使用する場合は、これらの平均一次粒径は0.1〜5μmの範囲内であり得る。更に、充填剤の接着性封入用組成物への分散可能性の観点から、疎水性表面処理親水性充填剤を用いることが可能である。任意の従来の親水性充填剤を疎水処理によって変性することが可能である。例えば、親水性充填剤の表面を、n−オクチルトリアルコキシシランなどの疎水基を含有するアルキル、アルキル又はアルキルシラン結合剤、ジメチルジクロロシラン及びヘキサメチルジシラザンなどのシリル化剤、ヒドロキシル末端を有するポリジメチルシロキサン、ステアリルアルコールなどの高級アルコール、又はステアリン酸などの高級脂肪酸で処理することが可能である。
【0050】
シリカ充填剤の例としては、ジメチルジクロロシランで処理された製品、例えば、商標表記AEROSIL−R972、R974又はR9768(Nippon Aerosil Co.,Ltd.)として市販されているもの、ヘキサメチルジシラザンで処理された製品、例えば、商標表記AEROSIL−RX50、NAX50、NX90、RX200又はRX300(Nippon Aerosil Co.,Ltd.)で市販、オクチルシランで処理された製品、例えば、商標表記AEROSIL−R805(Nippon Aerosil Co.,Ltd.)として市販されているもの、ジメチルシリコーン油で処理された製品、例えば、商品表記AEROSIL−RY50、NY50、RY200S、R202、RY200又はRY300(Nippon Aerosil Co.,Ltd.)として市販されているもの、及び商標表記CAB ASIL TS−720(Cabot Co.,Ltd.)として市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
充填剤は単独で又は組み合わせて使用してもよい。充填剤を含む実施形態において、添加される充填剤の量は接着性封入用組成物の総量に対して一般に0.01〜20重量%である。
【0052】
粒子の表面改質剤として用いられないカップリング剤を添加して、封入用組成物の接着を改善してもよい。カップリング剤は、典型的には、有機成分と反応又は相互作用する部分及び無機成分と反応又は相互作用する部分を有する。接着性封入用組成物に添加するとき、カップリング剤はポリマー、及び基材上に配置される任意の導電性金属、例えばITO等の無機表面と反応又は相互作用してもよい。これは、ポリマーと基材との間の接着性を改善することができる。有用なカップリング剤の例としては、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(Shinestsu Chemical Co.,Ltd.製KBM502)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(Shinestsu Chemical Co.,Ltd.製KBM802)、及びグリシジルプロピルトリメトキシシラン(Shinestsu Chemical Co.,Ltd.製KBM403)が挙げられる。
【0053】
紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリック酸アミド系化合物、及びベンゾフェノン系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用する場合、紫外線吸収剤は接着性封入用組成物の全体量に対して約0.01重量%〜3重量%の量で用いることが可能である。
【0054】
使用可能な酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール系化合物及びリン酸エステル系化合物が挙げられるが、これらに限定されない。使用する場合、かかる化合物は接着性封入用組成物の全体量に対して約0.01重量%〜2重量%の量で用いることが可能である。
【0055】
使用可能な安定剤の例としては、フェノール系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、イミダゾール系安定剤、ジチオカルバメート系安定剤、リン系安定剤、硫黄エステル系安定剤、及びフェノチアジンが挙げられるがこれらに限定されない。使用する場合、かかる化合物は接着性封入用組成物の総量に対して約0.001重量%〜3重量%の量で用いることが可能である。
【0056】
接着性封入用組成物は当業者に既知の様々な方法により調製することができる。例えば、接着性封入用組成物は上記化合物を完全に混合することにより調製できる。組成物を混合するためにニーダー又は押出成形機などの任意の混合器を使用することができる。得られる組成物は、接着性封入用組成物として用いることができる、又は他の成分と組み合わせて接着性封入用組成物を形成することができる。
【0057】
接着性封入用組成物は多様な形状で使用可能である。たとえば、接着性封入用組成物を、スクリーン印刷法又は類似の方法を用いて直接デバイス基材又はその任意の構成要素等に適用することができる。接着性封入用組成物はまた、適切な基材上にコーティングされて、接着性封入用組成物を形成することができる。図1Aは、基材110及び接着性封入用層120を含む例示的な接着性封入用被膜100Aの断面構造を示す。基材は成形のために一時的に使用してもよく、又は基材は接着性封入用組成物を使用するまで一体化されていてもよい。いずれの場合も、基材の表面を、例えばシリコーン樹脂で放出処理することが可能である。接着性封入用組成物のコーティングは、当業者に既知の方法、例えばダイコーティング、スピンコーティング、ドクターブレードコーティング、カレンダリング、押出成形等を用いて実施することができる。
【0058】
接着性封入用被膜で用いられる支持体は、裏材であって、例えば紙、プラスチック、及び/又は金属箔の被膜又はシートを含む裏材を備えてもよい。上記基材の表面と同様に、例えばシリコーン樹脂等の剥離剤で処理されるように、裏材は剥離ライナであってもよい。
【0059】
接着性封入用層は、例えば約5〜200μm、約10〜100μm、又は約25〜100μm等の種々の厚さを有してもよい。接着性フィルムは、当該フィルムを裏材から分離することにより封入剤として使用してもよい。1つの実施形態において、接着性封入用層の外表面を剥離ライナ等の手段により保護してもよい。
【0060】
図1Aに示される構造の他に、接着性封入用被膜は様々な形状で提供され得る。例えば、接着性封入用組成物が電子デバイスの封入剤として使用される場合には、接着性封入用被膜は電子デバイスの構成要素と組み合わされることにより使用され得る。
【0061】
例えば、接着性封入用被膜は、図1Bに示すように基材110の反対側の接着性封入用層120上に配置される気体遮断被膜130を更に備えてもよい。気体遮断被膜130は、水蒸気、酸素、又はそれら両方に対する遮断特性を有するフィルムである。任意の好適な材料及び構造を気体遮断被膜130に使用することが可能である。気体遮断層は、SiO、SiN、DLF(ダイヤモンド様被膜)、又はDLG(ダイヤモンド様ガラス)等の無機材料を含んでもよい。気体遮断層はまた、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、フルオロカーボン、及びポリマーと無機層とを交互に含む多層被膜から成る群から選択されるポリマーを含んでもよい。ポリマーと無機層とを交互に含む多層被膜は、一般に可撓性光透過性基材上に配置され、これら多層被膜は米国特許第7,018,713 B2号(Padiyathら)に記載されている。
【0062】
また接着性封入用被膜は、図1C及び1Dに示すように捕捉剤140を更に備えてもよい。図1Cでは、捕捉剤は、気体遮断被膜130と接着性封入用組成物120との間に配置される。図1Dでは、捕捉剤は、接着性封入用組成物と基材110との間に配置される。捕捉剤は、水吸収剤又は乾燥剤として機能する材料を含んでもよい。捕捉剤には任意の好適な材料及び構成体を用いてもよい。捕捉層は、金属、又は例えばCa、Ba、CaO、又はBaO等の金属酸化物のような無機材料を含んでもよい。幾つかの実施形態では、形状は、一般に被膜様又はシート様形態である。図1Dに示すように、各層の領域及び形状は、接着性封入用層の少なくとも一部が直接基材に接着するように調整することができる。
【0063】
接着性封入用被膜は、気体遮断被膜及び捕捉剤の両方を含んでもよい。このように、電子デバイスの封入を強化することができ、同時に封入プロセスを単純化することができる。
【0064】
接着性被封入被膜は、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、ドクターブレード法、カレンダー法、回転ダイ、T−ダイ等を用いる押出成形法が挙げられるが、これらに限定されない種々の方法により作製することができる。
【0065】
いくつかの方法において、裏材110上に剥離被膜として機能する接着性封入用被膜を形成し、次いで接着性被膜を電気発光デバイスの構成要素に移す積層方法を使用する。これらの方法を用いて、気体遮断被膜及び捕捉剤を形成することもできる。
【0066】
有機電気発光デバイスも本明細書に開示される。有機電気発光デバイスは、1対の対向する電極と、少なくとも有機発光層を有する発光ユニットであって、対向する電極対の間に配置される発光ユニットと、発光ユニットの上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、本明細書に記載される接着性封入用組成物のうちの任意の1種を含む接着性封入用組成物と、を含んでもよい。
【0067】
有機電気発光デバイスでは、電極及び発光ユニットを積重ね体と称することもある。積重ね体は、種々の構成を有してもよく、例えば、積重ね体は、組み込まれている1つの発光ユニット、又は2つ以上の発光ユニットの組み合わせを含んでもよい。積重ね体の構造を以下に説明する。
【0068】
幾つかの実施形態では、積重ね体は装置の基材上に担時される。図2は、基材201上に配置された積重ね体205を含む例示的な有機電気発光デバイス200を示す。積重ね体は、接着性封入用層206、並びに任意構成要素207及び208に封入される。積重ね体205は、アノード202、発光ユニット203、及びカソード204を含む。
【0069】
デバイスの基材は、剛性又は硬質(容易に屈曲しない)であってもよく、可撓性であってもよい。硬質基材は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス、及び金属等の無機材料を含んでもよく、又は硬質基材は、ポリエステル、ポリイミド、及びポリカーボネート等の樹脂材料を含んでもよい。可撓性材料は樹脂材料は、例えば、フッ素含有ポリマー(例えば、三フッ化ポリエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン(VDF)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマー)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式ポリオレフィン、又はエチレン−ビニルアルコールコポリマーを含んでもよい。
【0070】
デバイスの形状、構造、寸法等は限定されない。デバイスの基材は、プレート形状を有することが多い。デバイスは透明、無色、半透明、又は不透明であってもよい。基材は、SiO、SiN、DLF(ダイヤモンド様被膜)、又はDLG(ダイヤモンド様ガラス)等の無機材料を含む気体遮断層でコーティングしてもよい。気体遮断層被膜はまた、その上にポリマーと無機層が交互に配置される可撓性可視光透過性基材を含んでもよく、これらの被膜は米国特許第7,018,713 B2号(Padiyath et al.)に記載されている。気体遮断層は、真空蒸着、物理蒸着、及びプラズマCVD(化学蒸着)等の方法を用いて形成してもよい。
【0071】
任意構成要素207は、色フィルタ層を含んでもよい。任意構成要素208は、可撓性材料であっても剛性材料であってもよい。例えば、任意構成要素208は、硬質材料、典型的にはガラス又は金属を含む封止キャップ(時に封止プレート等とも呼ばれる)を含んでもよい。任意構成要素207はまた、気体遮断層を含んでもよい。
【0072】
積重ね体25は、1対の対向する電極202及び204(即ちアノードとカソード)と、電極間に配置される発光ユニット203を含む。発光ユニットは、有機発光層を包含する様々な層構造を有してよく、当該構造は以下に記載される。
【0073】
アノードは一般に有機発光層にホールを供給する働きをする。任意の既知のアノード材料を使用することができる。アノード材料の仕事関数は一般に4.0eV以上であり、アノード材料の好適な例としては、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム及びインジウム酸化スズ(ITO)などの半導体金属酸化物、金、銀、クロム及びニッケルのような金属、及びポリアニリン及びポリチオフェンなどの有機電気導電性材料が挙げられるがこれらに限定されない。アノードは、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンめっき、CVD又はプラズマCVDによって形成されるフィルムを通常含む。いくつかの用途において、アノードはエッチング等でパターニングされてもよい。アノードの厚さは広範囲にわたって異なってもよく、一般に約10nm〜50μmであってよい。
【0074】
アノードとともに用いるカソードは、一般に、電子を有機発光層中に注入する働きをする。任意の既知のカソード材料を使用することができる。カソード材料の仕事関数は通常4.5eV以下であり、カソード材料の好適な例としては、Li、Na、K及びCs等のアルカリ金属、LiF/Al等の複合体材料、Mg及びCa等のアルカリ土類金属、金、銀、インジウム及びイッテリビウム等の希土類金属、並びにMgAg等の合金が挙げられるがこれらに限定されない。カソードは、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンめっき、CVD又はプラズマCVDによって形成されるフィルムを通常含む。いくつかの用途において、カソードはエッチング等でパターニングされてもよい。カソードの厚さは広範囲にわたって異なってもよく、一般に約10nm〜50μmであってよい。
【0075】
アノードとカソードとの間に配置される発光ユニットは様々な層構造を有してもよい。例えば、発光ユニットは有機発光層のみを含む単層構造であってもよく、又は次のような多層構造であってもよい。有機発光層/電子輸送層、ホール輸送層/有機発光層、ホール輸送層/有機発光層、ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層有機発光層/電子輸送層/電子注入層、及び電子注入層/ホール輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層。これらの層のそれぞれを以下に説明する。
【0076】
有機発光層は少なくとも1つの発光材料を含むことができ、任意でホール輸送材料、電子輸送材料等を含んでもよい。発光材料は特に限定されず、有機電気発光デバイスの製造で通常使用される発光材料を使用することができる。発光材料としては、金属錯体、低分子量蛍光性着色材料、蛍光性ポリマー化合物、又はリン光材料を挙げることができる。金属錯体の好適な例としては、トリス(8−キノリノレート)アルミニウム錯体(Alq3)、ビス(ベンゾキノリノレート)ベリリウム錯体(BeBq2)、ビス(8−キノリノレート)亜鉛錯体(Znq2)、及びフェナントロリン系ユーロピウム錯体(Eu(TTA)3(フェン))が挙げられるがこれらに限定されない。低分子量蛍光性着色材料の好適な例は、ペリレン、キナクリドン、クマリン及び2−チオフェンカルボン酸(DCJTB)を含むがこれらに限定されない。蛍光性ポリマー化合物の好適な例としては、ポリ(p−フェニレンビニレン)(PPV)、9−クロロメチルアントラセン(MEH−PPV)、及びポリフルオレン(PF)が挙げられるがこれらに限定されない。リン光材料の好適な例としては、プラチナオクタエチルポルフィリン、及びシクロメタル化イリジウム化合物が挙げられる。
【0077】
有機発光層は上述の材料などの発光材料から任意の好適な方法を用いて形成することができる。例えば、有機発光層は、真空蒸着又は物理蒸着等のフィルム形成法を用いて形成することができる。有機発光層の厚さは特に限定されないが、一般に約5nm〜100nmであり得る。
【0078】
有機発光ユニットはホール輸送材料を含んでもよい。ホール輸送材料は、一般に、アノードからホールを噴射し、ホールを輸送し、又はカソードから噴射される電子をブロックする働きをする。ホール輸送材料の好適な例としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラキス(m−トリル)−1,3−フェニレンジアミン(PDA)、1,1−ビス[N,N−ジ(p−トリル)アミノ]フェニル]シクロヘキサン(TPAC)、及び4,4’,4”−トリス[N,N’,N”−トリフェニル−N,N’,N”−トリ(m−トリル)アミノ]−フェニレン(m−MTDATA)が挙げられるがこれらに限定されない。ホール輸送層及びホール注入層はそれぞれ真空蒸着及び物理蒸着等のフィルム形成法を用いて形成され得る。これら層の厚さは特に限定されないが、一般に5nm〜100nmであり得る。
【0079】
有機発光ユニットは電子輸送材料を含むことができる。電子輸送材料は電子を輸送する、又はアノードから噴射されるホールをブロックする働きをする。電子輸送材料の好適な例としては、2−(4−第三級−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、及び3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)AIQが挙げられるがこれらに限定されない。電子輸送層及び電子注入層はそれぞれ真空蒸着及び物理蒸着等のフィルム形成法を用いて形成され得る。これら層の厚さは特に限定されないが、一般に5nm〜100nmであり得る。
【0080】
本明細書に開示される有機電気発光デバイスでは、上記積重ね体を接着性封入用組成物又は接着性封入用被膜に封入することができる。いずれの場合も、それらはデバイス基材上に配置される積重ね体の露出面全体を覆う層の形態で用いることができる。
【0081】
有機電気発光デバイスでは、接着性封入用組成物又は接着性封入用被膜は、単独で接着特性を有する。例えば、被膜を積層するために追加の接着層は必要ない。即ち、更に接着剤を積層することが省略され、製造プロセスの簡易化及び信頼性が強化され得る。更に、従来技術と異なり、積層体が接着性封入用組成物で覆われるのでデバイスに封入スペースが残らない。封入スペースがないと水分透過が減少し、それによりデバイス特性の劣化を防ぎコンパクトで薄いデバイスを維持する。封入スペースがあることが望ましい場合、デバイスを取り囲む接着剤のガスケットを用いてもよい。
【0082】
更に、接着性封入用組成物又は封入用被膜はスペクトラムの可視領域(380nm〜800nm)で透明であり得る。封入用フィルムの平均透過性は、典型的には80%未満又は90%未満であるので、封入用被膜が有機電気発光デバイスの発光効率を実質的に劣化させることはない。これは、上方発光OLEDで特に有益であり得る。
【0083】
積層体の外側には、積層体の上部及び底部を保護するための不動態フィルムを設けてもよい。不動態フィルムは、SiO、SiN、DLG、又はDLF等の無機材料から、例えば、真空蒸着及びスパッタリング等の被膜形成法を用いて形成することができる。不動態フィルムの厚さは特に限定されないが、一般に約5nm〜100nmであり得る。
【0084】
積重ね体の外側には、水分及び/又は酸素を吸収することのできる材料又はその層を配置することもできる。かかる層は所望の効果を得られる限りいずれの場所に配置されてもよい。かかる材料又は層は、場合によって、乾燥剤、水分吸収剤、乾燥層等と呼ばれるが、本明細書では「捕捉剤」又は「捕捉層」と呼ぶ。捕捉剤の例としては、米国特許出願公開第2006/0063015号(McCormick et al.)によると、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化バリウム等の金属酸化物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸ニッケル等の硫酸塩、アルミニウムオキシドオクチレート等の有機金属化合物、及びBが挙げられるが、これらに限定されない。特願第2005−057523号に記載されているようにポリシロキサンを利用してもよい。捕捉層は、捕捉剤の種類を基に当業者に既知の任意の方法によって形成することができる。例えば、捕捉層はその中に、感圧性接着剤、スピンコーティング、捕捉剤溶液、又は真空気相堆積又はスパッタリングのようなフィルム形成法によって、捕捉剤を分散したフィルムを取り付けることにより形成され得る。捕捉層の厚さに制限はないが、一般に約5nm〜500μmである。
【0085】
上記の構成要素に加えて、有機電気発光デバイスは当業者には既知の様々な構成要素を追加的に含むことができる。
【0086】
フルカラー装置が所望の場合は、白色発光部分を有する有機電気発光デバイスを色フィルタと組み合わせて使用することができる。かかる組み合わせは3色発光法では不要である。更に、色変換法(CCM)、色純度を補正する色フィルタを採用している有機電気発光デバイスを組み合わせて使用することが可能である。
【0087】
代替的方法によると、有機電気発光デバイスは最外層として保護被膜を有してもよい。この保護被膜は、水蒸気遮断又は酸素遮断特性を有する保護被膜を含んでもよく、場合によって「気体遮断被膜」又は「気体遮断層」と呼ぶ。気体遮断層は水蒸気遮断特性を有する様々な材料で形成され得る。好適な材料には、フッ素含有ポリマー(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレントリフルオライド、ポリクロロトリフルオエチレン(PCTEF)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、脂環式ポリオレフィン及びエチレン−ビニルアルコールコポリマー)を含むポリマー層が挙げられるがこれらに限定されない。かかるポリマー層、又はかかるポリマー層を無機薄膜(例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、DLG、又はDLF)で、フィルム形成法(例えば、スパッタリング)を用いてコーティングして得る層の積重ね体が使用可能である。気体遮断層被膜はまた、その上に交互に配置されるポリマーと無機層を有する可撓性可視光透過性基材を含んでもよく、これらの被膜は米国特許第7,018,713 B2号(Padiyath et al.)に記載されている。ガスバリアフィルム層の厚さは広範囲にわたって異なってもよく、一般に約10nm〜500μmであってもよい。
【0088】
本明細書に開示される有機電気発光デバイスは、種々の分野における照明又はディスプレイ手段として利用することができる。用途の例には次が挙げられる。蛍光ランプの代わりに使用される照明装置、コンピュータ装置、テレビ受信機、DVD(デジタルビデオディスク)、オーディオ機器、測定機械設備、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、パネル等の表示装置、バックライト、及びプリンタ等の光源アレイ。
【0089】
接着性封入用組成物はまた、基材上に配置される金属及び金属酸化物構成要素を封入するために用いてもよい。例えば、接着性封入用組成物は、酸化インジウムスズ(ITO)等の実質的に透明な導電性金属がガラス等の基材上に、又は三酢酸セルロース等のポリマー被膜上に沈着しているタッチスクリーンに用いてもよい。接着性封入用組成物は、金属及び/又は基材を腐食させる恐れのある酸性要素を少量しか含まなくてもよく、又は全く含まなくてもよい。
【0090】
光起電力電池又は光起電力電池のアレイ(相互接続されている一連の光起電力電池)と、光起電力電池の上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、有機電気発光デバイスで用いるための上記組成物のいずれかを含む接着性封入用組成物と、を備える光起電力電池も本明細書に開示される。
【0091】
一般に、光起電力電池は、光を電気に変換するために用いられる半導体デバイスであり、太陽電池と呼ばれる場合もある。光に曝露されると、光起電力電池は、端子を超えて電圧を発生させ、結果として電子を流し、その大きさは電池の表面に形成される光起電ジャンクションに対して光が衝突する強度に比例する。典型的には、一連の太陽電池モジュールは相互接続されて、単一電気発生ユニットとして機能する太陽電池アレイを形成し、前記電池及びモジュールは、装置の一部に電力を供給する、又は貯蔵用電池を供給するため等に好適な電圧を生じさせるように相互接続される。
【0092】
光起電力電池で用いられる半導体材料は、結晶質又は多結晶質シリコン又は薄膜シリコン、例えば非晶質、半結晶質シリコン、ガリウムヒ素、二セレン化銅インジウム、有機半導体、CIG等を含む。2種の光起電力電池、ウェファ及び薄膜が存在する。ウェファは、単一結晶又は多結晶インゴットから機械的に鋸引きする、又は鋳造することにより作製される半導体材料の薄いシートである。薄膜に基づく光起電力電池は、スパッタリング又は化学蒸着プロセス等を用いて基材又は超基材(supersubstrate)上に典型的に配置される半導体材料の連続層である。
【0093】
ウェファ及び薄膜光起電力電池は、モジュールが1つ以上の支持体を必要とすることができるのに十分な程度脆性であることが多い。支持体は剛性、例えばガラスプレート剛性材料であってもよいか、又は可撓性材料、例えばポリイミド又はポリエチレンテレフタレート等の好適なポリマー材料の金属膜及び/又はシートであってもよい。支持体は、最上層であっても基材であってもよく、即ち光起電力電池と光源との間に位置し、光源からの光を通過させる。これに代えて又はこれに加えて、支持体は、光起電力電池の後に位置する底層であってもよい。
【0094】
接着性封入用組成物は、光起電力電池の上、上方、又は周囲に配置することができる。接着性封入用組成物を用いて、光起電力電池を環境から保護することができる、及び/又は電池を支持体に接着させることができる。接着性封入用組成物は、同じ組成又は異なる組成のいずれを有してもよい幾つかの封入用層のうち1つとして適用してもよい。更に、接着性封入用組成物は、電池に直接適用し、次いで硬化してもよく、又は接着性封入用被膜を用いてもよく、この場合接着性封入層を光起電力電池に積層し、次いで層を硬化させる。
【0095】
図3Aは、光起電力電池303を封入する接着性封入用層302及び304を含む例示的な光起電力電池300Aの断片構造を示す。前基材301及び裏基材305も示す。図3Bは、例示的な光起電力電池300Bであって、化学蒸着等の好適な方法により光起電力電池303が前基材301上に配置され、その後例えば取り外し可能な基材を含む接着性封入用被膜を用いて接着性封入用層304が適用される(又は接着剤は305に予め適用されている)光起電力電池300Bの断面構造を示す。図3Bは、別の例示的な光起電力電池300Cであって、化学蒸着等の好適な方法により光起電力電池303が裏基材305上に配置され、その後例えば取り外し可能な基材を含む接着性封入用被膜を用いて接着性封入用層302が適用される光起電力電池300Cの断面構造を示す。必要に応じて前基材を利用してもよい。
【0096】
半導体層と、前記半導体層の上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、本明細書に記載される接着性封入用組成物のうちいずれか1つを含む接着性封入用組成物と、を含む薄膜トランジスタも本明細書に開示される。薄膜トランジスタは、半導体材料の薄膜と、基材に接触する誘電体層及び金属を配置することにより作製される特別な種類の電界効果トランジスタである。薄膜トランジスタを用いて発光デバイスをドライブすることができる。
【0097】
有用な半導体材料としては、光起電力電池について上述したもの及び有機半導体が挙げられる。有機半導体としては、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン等の小分子、及びポリ(3−ヘキシルチオフェン)を含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリジアセチレン、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリマーを含む芳香族又は他のコンジュゲート電子系が挙げられる。無機材料の蒸着は、化学蒸着又は物理蒸着を用いて実施することができる。有機材料の蒸着は、小分子の真空蒸着又はポリマー若しくは小分子の溶液流延により実施することができる。
【0098】
薄膜トランジスタは、一般に、ゲート電極と、ゲート電極上のゲート誘電体と、ゲート誘電体に隣接したソース電極及びドレイン電極と、ゲート誘電体に隣接し、且つソース及びドレイン電極に隣接した半導体層とを含む、例えばS.M.Sze,Physics of Semiconductor Devices,2nd edition,John Wiley and Sons,page 492,New York(1981)参照。これらの構成要素は、様々な構成で組み立てることができる。
【0099】
図4Aは、米国特許第7,279,777 B2号(Bai et al.)に開示されている、基材401と、基材上に配置されるゲート電極402と、ゲート電極上に配置される誘電体材料403と、ゲート電極上に配置される任意の表面改質被膜404と、表面改質被膜に隣接する半導体層405と、半導体層に接触するソース電極406及びドレイン電極407と、を含む例示的な薄膜トランジスタ400Aの断面構造を示す。
【0100】
図4Bは、基材413上に配置されるゲート電極407を含む、米国特許第7,352,038 B2号(Kelley et al.)に開示されている例示的な薄膜トランジスタ400Bの断面構造を示す。ゲート誘電体408は、ゲート電極上に配置される。実質的非フッ素化ポリマー層409は、ゲート誘導体と有機半導体層410との間に介在する。ソース411及びドレイン412電極は、半導体層上に設けられる。
【0101】
本発明は、以下の実施例により更に説明されるが、実施例はいかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0102】
試験方法
水蒸気透過度
実施例1に記載のようにシリコン処理PET上に組成物をコーティングし、硬化させることにより各サンプルを調製した。各硬化接着性層の水分透過性を、JIS Z0208に記載のカップ法により測定した。オーブン条件は、60℃、相対湿度90%で24時間であった。測定は各サンプルにつき2回ずつ行い、平均値を表3に示す。
【0103】
可視光透過性
実施例1に記載のようにシリコン処理PET上に組成物をコーティングし、硬化させることにより各サンプルを調製した。Hitachi製分光光度計U−4100を用いて、400nm〜800nmの範囲の透過性を測定した。結果を表3に示す。
【0104】
動的粘弾性
動的粘弾特性は、−80℃〜150℃の範囲で、1.0Hzの周波数の剪断モードで、ARESレオメータ(Rheometric Scientific Inc.製)で測定した。流動性指数では、80℃及び100℃における損失係数tan(δ)(損失率G”/貯蔵弾性率G’)の値を測定した。結果を表3に示す。
【0105】
材料
市販の材料を表1に示し、購入したものをそのまま用いた。
【0106】
【表1】

【0107】
(実施例1)
以下をヘプタンに溶解させて、45重量%溶液を得た。30gのPIB1、50gのHCR1、20gのモノマー1、5gの充填剤、0.5gの反応開始剤1、及び0.5gのカップリング剤1。ナイフコーターを用いてこの溶液をシリコン処理PET被膜(Teijin−DuPont Co.,Ltd.A31 38μm)上にコーティングした。次いで、それを90℃で30分間乾燥させ、次いでシリコン処理PET被膜(Teijin−DuPont Co.,Ltd.A71 38μm)に積層した。積層体に紫外線を1分間照射し(Fusion Co.,Ltd.製F300S(H弁)、100MJ×20回)、90℃で60分間オーブンを用いて堅固化した。得られた接着性層の厚さは100μmであった。
【0108】
(実施例2〜9)
実施例2〜9は、表2に示す成分を使用したことを除いて、実施例1に関する記載の通りに調製した。
【0109】
(実施例10)
実施例10は、表2に示す成分を使用したことを除いて、実施例1に関する記載の通りに調製した。UV硬化の代わりに、被膜を100℃で60分間オーブン内で熱硬化させた。
【0110】
(実施例11〜13)
実施例11〜13は、表2に示す成分を使用したことを除いて、実施例1に関する記載の通りに調製した。UV硬化の代わりに、被膜を100℃で15分間オーブン内で熱硬化させた。
【0111】
比較例1(C1)
以下をメチルエチルケトンに溶解させて、30重量%溶液を得た。35gのエポキシ樹脂1、35gのエポキシ樹脂2、30gのエポキシ樹脂3、5gの触媒、及び1gのカップリング剤3。UV硬化の代わりに、被膜を100℃で180時間オーブン内で熱硬化させた。
【0112】
比較例2(C2)
C2は、表2に示す成分を使用したことを除いて、実施例1に関する記載の通りに調製した。
【0113】
【表2】

【0114】
【表3】

【0115】
OLEDデバイスの調製
ガラス基材を基材1として用い、ITOフィルムを用いたガラス基材(Sanyo Vacuum Industries Co.,Ltd.製、ITO被膜厚150nm、シート抵抗<14Ω/□、ガラス厚0.7mm、寸法40mm×40mm)をフォトリソグラフィーによりパターン化して、ITO電極パターンを形成した。基材の表面を溶媒洗浄により洗浄し、有機官能及び金属電極層をITO電極上に形成した。金属電極層[アルミニウム(純度99.99%、Kojundo Kasei K.K.製)層100nm]を形成した。
【0116】
次いで、被膜封止材料(厚さ25マイクロメートル)を積層して、ガラス(ガラス厚0.7mm、寸法30mm×30mm)を封止した。封止部材及びOLED基材は互いに対向しており、窒素ガスの不活性雰囲気下でそれから水分及び酸素をできる限り除去し、90℃、1 Nで30分間真空積層機を用いて積層した。次いで封止したデバイスを100mJ20回でF300S(H弁)[Fusion Co.,Ltd.製]により硬化させた。OLEDを、60℃、相対湿度90%にて、空気中で保存試験に供した。発光領域が初期値の75%に低下する時間を記録した。結果を表3に示す。
【0117】
(実施例14〜19)
実施例14を以下のように調製及び試験した。PIB18及びHCR1(重量比70:30)を剥離ライナ上に25μm(1mil)コーティングした。得られた接着性層(露出面)を、その上にポリマーと無機層が交互に配置された可撓性可視光透過性基材を含む被膜に移動させ、これら被膜は米国特許第7,018,713 B2号(Padiyath et al.)に記載されている。次いで接着剤及び基材を、水分が除去されるまで80℃で焼成した。Ca(反射性金属)をガラス基材上にコーティングし、Ca側を接着性層上に配置した。サンドイッチを積層した。濃度計を用いて、初期時間の光学密度を測定した。次いでサンプルを60℃/相対湿度90%の環境チャンバ内で維持した。最初の3日間、1日2回光学密度を測定した。次いで、密度が初期密度の50%になるまで、1日1回光学密度を測定した。
【0118】
実施例15〜17は、表4に示す成分を使用したことを除いて、実施例14に関する記載の通りに調製し、試験した。
【0119】
実施例18及び19は、表4に示す成分を使用したことを除いて、実施例14に関する記載の通りに調製し、試験した。接着剤は、積層後UV硬化させた(3000mJ/cm)。
【0120】
【表4】

【0121】
(実施例20〜27)
実施例20〜23は、表5に示す成分を使用したことを除いて、実施例14に関する記載の通りに調製し、試験した。
【0122】
実施例24〜28は、表5に示す成分を使用したことを除いて、実施例14に関する記載の通りに調製し、試験した。積層後接着剤をUV硬化(3000mJ/cm)させた。
【0123】
【表5】

【0124】
(実施例29〜30)
実施例29は、表6に示す成分を使用したことを除いて、実施例14に関する記載の通りに調製し、試験した。積層後接着剤をUV硬化(3000mJ/cm)させた。
【0125】
実施例30は、表6に示す成分を使用したことを除いて、実施例14に関する記載の通りに調製し、試験した。積層後、60℃で30分間加熱することにより、接着剤を熱硬化させた。
【0126】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、
約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂と、
多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
を含み、粘着付与剤を実質的に含まない、接着性封入用組成物。
【請求項2】
前記第1のイソブチレン樹脂が、約1,000,000g/モル超の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の接着性封入用組成物。
【請求項3】
前記第1のポリイソブチレンが、前記接着性封入用組成物の総重量の少なくとも約50重量%含まれる、請求項1に記載の接着性封入用組成物。
【請求項4】
電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、
約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレン樹脂と、
約100,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、
を含み、
粘着付与剤を実質的に含まない、
接着性封入用組成物。
【請求項5】
前記第1のイソブチレン樹脂が、約400,000g/モル超の重量平均分子量を有する、請求項4に記載の接着性封入用組成物。
【請求項6】
前記第1のポリイソブチレンが、前記接着性封入用組成物の総重量の少なくとも約50重量%含まれる、請求項4に記載の接着性封入用組成物。
【請求項7】
多官能性(メタ)アクリレートモノマーを更に含む、請求項4に記載の接着性封入用組成物。
【請求項8】
全て前記接着性封入用組成物の総重量に対して、
約50〜約80重量%の前記第1のポリイソブチレン樹脂と、
約10〜約30重量%の前記第2のポリイソブチレン樹脂と、
約10〜約20重量%の前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
を含む、請求項7に記載の接着性封入用組成物。
【請求項9】
電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、
約300,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、
多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
粘着付与剤と、
を含み、
約300,000g/モル超の重量平均分子量を有する第1のポリイソブチレンを含まない、
接着性封入用組成物。
【請求項10】
前記第2のイソブチレン樹脂が、約100,000g/モル未満の重量平均分子量を有する、請求項9に記載の接着性封入用組成物。
【請求項11】
全て前記接着性封入用組成物の総重量に対して、
約10〜約50重量%の前記第2のポリイソブチレン樹脂と、
約10〜約40重量%の前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
約30〜約60重量%の前記粘着付与剤と、
を含む、請求項9に記載の接着性封入用組成物。
【請求項12】
電子デバイスで用いるための接着性封入用組成物であって、
約300,000g/モル超の重量平均分子量を有し、前記接着性封入用組成物の総重量の20重量%以下含まれる、第1のポリイソブチレン樹脂と、
約300,000g/モル未満の重量平均分子量を有する第2のポリイソブチレン樹脂と、
多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
粘着付与剤と、
を含む、接着性封入用組成物。
【請求項13】
前記第1のイソブチレン樹脂が、約1,000,000g/モル超の重量平均分子量を有する、請求項12に記載の接着性封入用組成物。
【請求項14】
全て前記接着性封入用組成物の総重量に対して、
約10〜約30重量%の前記第2のポリイソブチレン樹脂と、
約10〜約30重量%の前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、
約40〜約60重量%の前記粘着付与剤と、
を含む、請求項12に記載の接着性封入用組成物。
【請求項15】
前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーが脂肪族ジ(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3及び7〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物。
【請求項16】
前記多官能性(メタ)アクリレートモノマーが多官能性(メタ)アクリレート/エポキシモノマーを含む、請求項1〜3及び7〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物。
【請求項17】
前記接着性封入用組成物が光重合性であり、光開始剤を含む、請求項1〜3及び7〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物。
【請求項18】
前記接着性封入用組成物が熱重合性であり、熱反応開始剤を含む、請求項1〜3及び7〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物。
【請求項19】
粒子を更に含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物。
【請求項20】
基材上に配置される接着性層を含む接着性封入用被膜であって、前記接着性層が請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用被膜。
【請求項21】
基材上に配置される接着性層と、前記基材の反対側の前記接着性層上に配置される気体遮断被膜と、を含む接着性封入用被膜であって、前記接着性層が請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用被膜。
【請求項22】
基材上に配置される接着性層と、前記基材の反対側の前記接着性層上又は前記接着性層と前記基材との間に配置される、捕捉層と、を含む接着性封入用被膜であって、前記接着性層が請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用被膜。
【請求項23】
有機電気発光デバイスであって、
1対の対向する電極と、
少なくとも有機発光層を有し、前記対向する電極対の間に配置される発光ユニットと、
前記発光ユニットの上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用組成物と、
を含む、有機電気発光デバイス。
【請求項24】
前記デバイスが可撓性である、請求項23に記載の有機電気発光デバイス。
【請求項25】
タッチスクリーンであって、
ガラス又はポリマー基材と、
前記基材上に配置される実質的に透明な導電性金属と、
前記金属の上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用組成物と、
を含む、タッチスクリーン。
【請求項26】
光起電デバイスであって、
光起電力電池又は光起電力電池のアレイと、
前記光起電力電池又は前記光起電力電池のアレイの光起電力電池のうち任意の1つの上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用組成物と、
を含む、光起電デバイス。
【請求項27】
薄膜トランジスタであって、
半導体層と、
前記半導体層の上、上方、又は周囲に配置される接着性封入用組成物であって、請求項1〜14のいずれか一項に記載の接着性封入用組成物を含む、接着性封入用組成物と、
を含む、薄膜トランジスタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2011−526629(P2011−526629A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512496(P2011−512496)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/041918
【国際公開番号】WO2009/148722
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】