説明

接着剤組成物及びそれを用いた半導体装置

【課題】加重をかけることなく300℃以下の硬化温度で接合した場合であっても、高い電気伝導性及び熱伝導率を有し、かつ大気雰囲気で接合した場合であっても、卑金属面への十分な接着強度を有する接着剤組成物及びこれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明の接着剤組成物は、X線光電子分光法で測定される銀酸化物由来の酸素の状態比率が15%未満である片状の銀粒子(A)、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸(B)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及びそれを用いた半導体装置に関する。さらに詳しくはパワーIC、LSI、発光ダイオード(LED)等の半導体素子をリードフレーム、セラミック配線板、ガラスエポキシ配線板、ポリイミド配線板等の基板に接着するのに好適な接着剤組成物及びこれを用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際、半導体素子とリードフレーム(支持部材)とを接着させる方法としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂などの樹脂に銀粉等の充てん剤を分散させてペースト状(例えば、銀ペースト)にして、これを接着剤として使用する方法がある。この方法では、ディスペンサー、印刷機、スタンピングマシン等を用いて、ペースト状接着剤をリードフレームのダイパッドに塗布する。その後、半導体素子をダイボンディングし、加熱硬化により接着させ半導体装置とする。
【0003】
近年、半導体素子の高速化、高集積化が進むに伴い、半導体装置の動作安定性を確保するために高放熱特性が求められている。また、半導体部品のコスト低減のために、高価な貴金属めっき(AuまたはAg等)を採用せずに、表面が卑金属(NiめっきまたはCu等)であるリードフレームの採用が多くなっている。すなわち、上述の要求を満足するためには、高熱伝導性と卑金属面に対する高接着性を兼ね備える接着剤組成物が求められている。
【0004】
従来の金属粒子同士の接触による導電性接着剤よりも高い放熱性を達成する手段として、熱伝導率の高い銀粒子を高充填する組成物(特許文献1〜3)、低融点はんだを含む組成物(特許文献4)、焼結性に優れる平均粒子径0.1μm以下の金属ナノ粒子を用いる組成物(特許文献5)、特殊な表面処理を施したマイクロサイズの銀粒子を用いることで、100℃以上400℃以下での加熱により銀粒子同士が焼結されるような接着剤組成物(特許文献6)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−73811号公報
【特許文献2】特開2006−302834号公報
【特許文献3】特開平11−66953号公報
【特許文献4】特開2005−93996号公報
【特許文献5】特開2006−83377号公報
【特許文献6】特許第4353380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の熱伝導率の高い銀粒子を高充てんする方法では、近年のパワーIC、LEDで必要とされる20W/m・K以上の熱伝導率を確保するためには、銀粒子充てん量が95質量%以上と非常に多量の銀粒子が必要である。
【0007】
銀粒子充てん量が多くなった場合、粘度が上昇することでディスペンス時に糸引きなどが発生し、作業性が確保できなくなることが問題となる。作業性確保のために溶剤を多量に添加すると、ボイド発生又は残存溶媒による接着強度の低下が問題となる。
【0008】
また、低融点はんだを含む組成物を用いて、金属結合で熱伝導パスの形成及び被着体とメタライズさせる方法では、パワーIC又はLEDなどのパッケージ(PKG)を基板に実装する場合、リフロー炉内で260℃にさらされる。その熱履歴により、接合部が再溶融し接続信頼性が得られないという問題がある。
【0009】
さらに、金属ナノ粒子を用いた方法では、接合部の再溶融の問題を避けることができるものの、ナノサイズの金属粒子を作製するために多くのコストがかかってしまう懸念がある。また、接着剤組成物中のナノ粒子の含有量が少ない場合には、高熱伝導性の発現が困難になるといった課題がある。
【0010】
さらにまた、銀粒子に特定の表面処理を施す方法では、焼結が促進され、電気伝導性及び熱伝導性の優れた固体状銀が得られるものの、半導体実装部品に多く採用されている卑金属面(Ni、Cu等)への接着強度が弱いという課題がある。
【0011】
そこで本発明は、荷重をかけることなく300℃以下の硬化温度で接合した場合であっても、高い電気伝導性及び熱伝導率を有し、かつ大気雰囲気で接合した場合であっても、卑金属面への十分な接着強度を有する接着剤組成物及びこれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記事情に鑑み、本発明の接着剤組成物は、X線光電子分光法で測定される銀酸化物由来の酸素の状態比率が15%未満である片状の銀粒子(A)、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸(B)を含む。なお、本発明における沸点とは、1気圧下での沸点をいう。
【0013】
上記接着剤組成物は、沸点が100℃以上300℃未満である揮発性成分(C)をさらに含むことが好ましい。
【0014】
上記銀粒子は、その酸化膜を除去する処理、及び表面保護材による表面処理を施した銀粒子であることが好ましい。
【0015】
銀粒子は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下である銀粒子を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の接着剤組成物を熱硬化してなる硬化物の体積抵抗率及び熱伝導率は、それぞれ1×10−4Ω・cm以下、30W/m・K以上であることが好ましい。
【0017】
上記接着剤組成物は100〜300℃で5秒〜10時間、より好ましくは150〜300℃で30分〜5時間、さらに好ましくは200〜300℃で1〜2時間、特に好ましくは250℃で1時間の条件で硬化させることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明は、上記本発明の接着剤組成物を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材が接着された構造を有する半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加重をかけることなく300℃以下の硬化温度で接合した場合であっても、高い電気伝導性及び熱伝導率を有し、かつ大気雰囲気で接合した場合であっても、卑金属面への十分な接着強度を有する接着剤組成物及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。このような接着剤組成物は、導電性接続材料、導電性接着剤又はダイボンディング材として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】表面の酸化膜が少ない銀粒子に、表面保護材による表面処理が施された銀粒子の模式図である。
【図2】図1に示した銀粒子の表面保護材が脱離し、銀粒子同士が焼結した状態を示す模式図である。
【図3】表面の酸化膜が多い銀粒子に、表面保護材による表面処理が施された銀粒子の模式図である。
【図4】図3で示した銀粒子の表面保護材は脱離するものの、銀粒子同士が焼結できない状態を示す模式図である。
【図5】酸化膜が多い銀粒子について、表面酸化膜を除去する処理及び表面保護材による表面処理を施した銀粒子の模式図である。
【図6】図5で示した銀粒子の表面保護材が脱離し、銀粒子同士が焼結した状態を示す模式図である。
【図7】本実施形態に係る半導体装置の一例を示す模式断面図である。
【図8】本実施形態に係る半導体装置の他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本実施形態の接着剤組成物は、X線光電子分光法で測定される銀酸化物由来の酸素の状態比率が15%未満である片状の銀粒子(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)を必須成分とする。以下それぞれの成分について詳細に述べる。
【0023】
((A)成分)
本実施形態の接着剤組成物に用いられる銀粒子は、銀酸化物由来の酸素の状態比率が15%未満である。銀酸化物由来の酸素の状態比率が15%以上であると、300℃以下の温度または酸化膜の除去を促す還元剤のない環境では、酸化膜が銀粒子の表面を広く覆ったまま銀粒子同士の焼結が阻害され、銀粒子同士の金属結合のパスが十分に形成されないために、その銀粒子を用いた接着剤組成物は熱伝導率が低下する。なお、銀酸化物由来の酸素の状態比率は、10%未満であると好ましく、高接着力を達成するために、銀粒子同士または被着体との金属結合のパスをさらに密に形成させるには、5%未満であるとより好ましい。
【0024】
銀粒子表面上の酸化膜の量は、X線光電子分光法で測定したデータから算出した状態比率を基準とする。X線光電子分光法の分析装置はSurface Science Instrument社のS−Probe ESCA Model 2803を用い、照射X線にはAl Kα線を使用した。銀酸化膜由来の酸素は531±1eVにピークを持つ成分とし、表面保護剤等その他の成分由来の酸素とは区別した。「状態比率」とは測定サンプル中の特定の元素の濃度であり、元素の強度から装置付属の相対感度係数を用いて算出した値で示している。
【0025】
また、本実施形態の接着剤組成物に用いられる銀粒子は形状が片状の粒子を含む。銀粒子の形状は、走査型電子顕微鏡(Scannig Electron Microscope;SEM)観察から解析した際の形状とし、SEMの観察装置としては、philipsXL30を用いることができる。本実施形態では、SEM観察の結果から解析を行い、平均厚さtが0.1μm〜15μm、アスペクト比(平均粒子径a/平均厚さt)が2〜1000の範囲を片状とする。ここでいう平均粒子径aは、片状の銀粒子を平面視したときの面積Sの平方根を、ランダムに選んだ5個の銀粒子について求めた平均値と定義する。
【0026】
片状の粒子の一例としては、板状、皿状、鱗片状、フレーク状と呼ばれる形状の粒子が含まれる。片状の銀粒子同士を接触させた場合、粒状の銀粒子同士を接触させた場合に比べて接触面積が増える。このため、片状の銀粒子を含む接着剤組成物を熱硬化させると、銀粒子同士の焼結の緻密性が増加する結果、接着剤組成物の硬化物の熱伝導率及び電気伝導率に加え、卑金属面への接着強度が向上すると考えられる。
【0027】
また、球状の銀粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって得られる粒度分布における積算値(体積)50%での粒径とする。球状の銀粒子の平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。粒子の製造コストを考慮すると0.1μm以上が好ましく、熱伝導率を向上させるために粒子の充填率を向上させることを考慮すると50μm以下が好ましい。
【0028】
上記銀粒子の接着剤組成物中の割合は熱伝導率向上のために、接着剤組成物100質量部中、80質量部以上が好ましく、高温はんだと同等以上の熱伝導率を達成するためには87質量部以上がより好ましい。また、接着剤組成物をペースト状にするためには銀粒子の割合は99質量部以下が好ましく、ディスペンサーや印刷機での作業性向上のために、95質量部以下であることがより好ましい。
【0029】
このような銀粒子を用いることにより、上記効果が得られる理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らの考察を図1及び図2の模式図に基づいて説明する。
【0030】
まず、表面の酸化膜が少ない片状の銀粒子に、表面保護材による表面処理を施した場合には、図1に示すような状態となっているものと考えられる。すなわち、片状の銀粒子3上に、わずかに残った酸化膜2が存在するとともに、酸化膜2を避けるようにして、表面保護材1が銀粒子3を覆っている状態(3’)となっていると考えられる。
【0031】
この場合には、300℃以下で加熱することにより、図2に示すように表面保護材1が脱離し、銀粒子3の活性表面が露出する。この活性表面が他の銀粒子の活性表面と接触することにより焼結が促進され、銀粒子同士の金属結合のパスが形成される。さらに、各銀粒子3は、片状をしているため、銀粒子同士が接触した際の接触面積が大きい。以上の事項に起因して、銀粒子を含有する接着剤組成物は、300℃以下で加熱して硬化させた場合であっても、高い熱伝導率及び電気伝導率を有し、かつ、卑金属面への接着強度が向上すると本発明者らは推察している。
【0032】
銀粒子は、その酸化膜を除去する処理、及び表面保護材による表面処理を施した銀粒子であることが好ましい。これにより、再酸化や銀粒子の凝集を防ぐことができる。酸化膜を除去する処理、及び表面保護材による表面処理については、例えば以下に示す方法により行うことができる。
【0033】
まず、表面保護材を溶解、分散させた酸性溶液中に銀粒子を添加し、攪拌しながら酸化膜を除去しつつ、表面保護を行う。このとき、酸性溶液100質量部に対する銀粒子の添加量は、1〜50質量部が好ましい。
【0034】
次に、溶液をろ過して銀粒子を取り出した後、銀粒子表面に物理的に吸着した表面保護材や酸成分を溶媒で洗浄する。その後、銀粒子を減圧乾燥させることで余分な溶媒を除去し、乾燥状態の表面処理された銀粒子を得る。
【0035】
なお、酸化膜除去のプロセスでは表面保護材を含まない酸性溶液中で酸化膜処理を行った場合、銀粒子同士が凝集し、酸化膜処理前の粒子と同等の平均粒子径を有する粉体状の銀粒子が得られないおそれがある。銀粒子の凝集を防ぐために酸性溶液中に表面保護材を添加し、酸化膜除去と表面処理を同時に行うことが好ましい。
【0036】
酸性溶液に制限はないが、酸として、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、リン酸等を用いることができる。酸の希釈溶媒も制限はないが、酸との相溶性が良好であり、かつ表面保護材の溶解性、分散性に優れる溶媒が好ましい。
【0037】
酸性溶液の酸の濃度は、酸化膜を除去するために、酸性溶液全体を100質量部としたとき、1質量部以上が好ましく、酸化膜の厚い銀粒子を含む場合は、5質量部以上がより好ましい。
【0038】
また、酸の濃度が濃すぎると金属が多量に溶液に溶けてしまうため、50質量部以下が好ましく、粒子同士が凝集を防ぐためには40質量部以下がより好ましい。
【0039】
表面保護材は、銀粒子表面への吸着が良好な末端官能基を有する化合物が好ましい。その具体例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、ジスルフィド基を有する化合物が挙げられる。また銀粒子の再酸化や余分な有機物の吸着汚染をさらに高度に防止するために、化合物の主骨格は表面保護材が密に充填されるような直鎖アルカン骨格を持つものが好ましい。
【0040】
直鎖アルカン骨格は炭素数4個以上であるとより好ましい。このような直鎖アルカン骨格を有する表面保護剤は、炭素鎖同士の分子間力によってより密に充填される。
【0041】
また、直鎖アルカン骨格は炭素数18個以上であるとより好ましい。このような直鎖アルカン骨格を有する表面保護剤は、表面保護材の金属表面からの脱離温度が300℃より低いので、300℃以下の低い温度で銀粒子を焼結させることができる。
【0042】
酸性溶液中の表面保護材の濃度は、酸性溶液全体を100質量部としたとき、銀粒子同士の凝集を防ぐために0.0001質量部以上が好ましく、表面保護材の銀粒子への過剰な物理吸着を防ぐために0.1質量部以下が好ましい。
【0043】
ここで、酸化膜が多い銀粒子を用いた場合においても本実施形態の効果が得られる理由についての本発明者らの考察を図3〜6の模式図に基づいて説明する。
【0044】
図3に示すような酸化膜5が多い銀粒子6の場合には、300℃以下で加熱すると、図4に示すように表面保護材4は脱離するものの、銀粒子6の表面が広く酸化膜5により覆われているため、銀粒子6同士の焼結が起こり難いと考えられる。
【0045】
これに対して、酸化膜が多い銀粒子を用いた場合であっても、表面の酸化膜5を除去する処理及び表面保護材による表面処理を施した場合には、図5に示すように、酸化膜5が存在せず、表面全体が表面保護材7で覆われた状態の銀粒子8’が得られる。
【0046】
この場合には、図1に示した銀粒子3と同様に、300℃以下で加熱することにより、表面保護材7が離脱し、銀粒子8の活性表面が露出する。この活性表面が他の銀粒子の活性表面と接触することにより焼結が促進され、銀粒子同士の金属結合のパスが形成される。この際、図1の銀粒子と比較して銀粒子8の活性表面が露出している面積が広いので、焼結はより促進されるものと考えられ、さらに高い熱伝導率が得られるものと考えられる。
【0047】
((B)成分)
300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸としては、銀粒子の焼結を妨げるものでなければ特に制限はない。
【0048】
(B)成分の一例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、テレフタル酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸、ピロメリット酸、o−フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸、セチルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール、p−フェニルフェノール等の芳香族アルコールが挙げられる。その中でも、これらのアルコールまたはカルボン酸の融点が熱履歴をかけた際の温度より低いことが好ましい。これは、加熱時に固体よりも液体の方が被着体及び銀粒子との濡れ性が向上し反応性が高くなるため、被着体への接着強度を向上できるからである。その中でも特に、炭素数が6〜20の脂肪族のアルコールまたはカルボン酸がより好ましい。これらのカルボン酸またはアルコールを含む接着剤組成物は、銀粒子の焼結性が良好なだけでなく、銀粒子の分散性向上及び沈降防止による接着剤組成物のディスペンサーや印刷機での塗布作業性に優れるからである。
【0049】
(B)成分は、1種又は必要に応じて2種以上の化合物を混合して使用できる。接着剤組成物全量を100質量部としたとき、(B)成分は0.1質量部〜20質量部であることが好ましい。(B)成分が20質量部よりも多い場合、所定の熱履歴をかけた際に残存の(B)成分が銀粒子の凝集または焼結を阻害し、各銀粒子間の焼結の緻密性が損なわれることで電気伝導性、熱伝導性または卑金属面への接着強度が損なわれるおそれがあり、0.1質量部未満の場合は銀粒子の焼結促進効果が十分に得られず、接着強度が低下するおそれがある。
【0050】
((C)成分)
本実施形態の接着剤組成物は、さらに、揮発性成分(C)(以下、場合により「(C)成分」ともいう)を含んでいてもよい。揮発性成分としては、沸点が100℃以上300℃未満であり、銀粒子との混合物に所定の熱履歴をかけた際、銀粒子が焼結するものであれば特に制限はない。
【0051】
このような揮発性成分としては、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α―テルピネオール等の一価及び多価アルコール類、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ―ブチロラクトン等のエステル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド、シクロヘキサノン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、適当なメルカプタンは1ないし18の炭素原子を含む、例えばエチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル及びドデシルメルカプタンのようなメルカプタン、あるいはシクロアルキルメルカプタンは5ないし7の炭素原子を含む、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルメルカプタンのようなメルカプタン類が挙げられる。その中でも、沸点が150℃以上の揮発性成分が好ましい。沸点が150℃以上の揮発性成分を含む接着剤組成物は実装作業中の粘度の上昇が極めて少なく、ディスペンス等の半導体装置の作製時の塗布作業安定性に優れるからである。その中でも特に、炭素数が4〜12のアルコール、エステル、エーテル類がより好ましい。それらの揮発性成分は酸化膜除去及び表面処理を施した銀粒子の分散性に優れ、銀粒子の沈降等によるディスペンスの詰まりといった懸念が少ないからである。
【0052】
揮発性成分は1種又は必要に応じて2種以上の成分を混合して使用でき、熱伝導性向上のために、接着性組成物100質量部中、20質量部以下であることが好ましい。
【0053】
本実施形態の接着剤組成物には、作業性向上のための希釈剤、濡れ性向上剤及び消泡剤の一つ以上を含んでもよい。なお、本実施形態の接着剤組成物は、ここに列挙した以外の成分を含んでいても構わない。
【0054】
本実施形態の接着剤組成物には、必要に応じてさらに、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤等の接着力向上剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤、シリコーン油等の消泡剤、無機イオン交換体等のイオントラップ剤、重合禁止剤等を適宜添加することができる。
【0055】
ここで、シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4,5−ジヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロイルオキシエトキシ)シラン、メチルトリ(グリシジルオキシ)シラン、2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホネート、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルジイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、エトキシシラントリイソシアネートが挙げられる。
【0056】
上記チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロポキシビス(2,4−ペンタジオネート)チタニウム(IV)、ジイソプロピルビストリエタノールアミノチタネート、チタニウムラクテート、アセトアセティックエステルチタネート、ジ−i−プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジヒドロキシビス(ラクタト)チタン、チタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレート、チタニウムステアレート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネートが挙げられる。
【0057】
本実施形態の接着剤組成物には、必要に応じてさらに、ブリード抑制剤を添加することができる。ブリード抑制剤としては、例えば、パーフロロオクタン酸、オクタン酸アミド、オレイン酸等の脂肪酸、パーフロロオクチルエチルアクリレート、シリコーンがある。
【0058】
上記接着剤組成物を製造するには、(A)成分及び(B)成分を、必要に応じて添加される(C)成分等とともに、一括又は分割して撹拌器、らいかい機、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせ、必要に応じて加熱して混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすればよい。
【0059】
図7は、本実施形態の接着剤組成物を用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。図7に示す半導体装置は、3つのリードフレーム(放熱体)12a,12b,12cと、リードフレーム12a上に、本実施形態の接着剤組成物13を介して接続されたチップ(発熱体)11と、これらをモールドするモールドレジン15とからなる。チップ11は、2本のワイヤ14を介してリードフレーム12b,12cにそれぞれ接続されている。
【0060】
図8は、本実施形態の接着剤組成物を用いて製造される半導体装置の他の例を示す模式断面図である。図8に示す半導体装置は、基板16と、基板16を囲むように形成された2つのリードフレーム17と、リードフレーム17上に、本実施形態の接着剤組成物13を介して接続されたLEDチップ18と、これらを封止する透光性樹脂19とからなる。LEDチップ18は、ワイヤ14を介してリードフレーム17に接続されている。
【0061】
本実施形態の半導体装置は、本実施形態の接着剤組成物を用いて半導体素子を支持部材に接着することにより得られる。半導体素子を支持部材に接着した後、必要に応じ、ワイヤボンド工程、封止工程を行う。
【0062】
支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム、パラジウムPPFリードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【0063】
本実施形態の接着剤組成物を用いて半導体素子をリードフレームなどの支持部材に接着させるには、まず支持部材上に接着剤組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等により塗布した後、半導体素子を搭載し、その後オーブン又はヒートブロック等の加熱装置を用いて加熱硬化することにより行うことができる。加熱硬化は、通常、100〜300℃で、5秒〜10時間加熱することにより行われる。さらに、ワイヤボンド工程を経た後、通常の方法により封止することにより完成された半導体装置とすることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。実施例及び参考例で用いた材料は以下のようにして作製したもの、あるいは入手したものである。
【0065】
(1)300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸:ステアリン酸(沸点;376℃、和光純薬工業(株))、パルミチン酸(沸点;390℃、和光純薬工業(株))、イソボルニルシクロヘキサノール(沸点;308℃、以下、MTPHと略す)
【0066】
(2)揮発性成分:ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点;175℃、以下、DMMと略す、ダイセル化学(株))、γ−ブチロラクトン(沸点;204℃、以下、GBLと略す、三協化学(株))、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(沸点;261℃、以下、BTMと略す、東邦化学工業(株))、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点;231℃、以下、BDGと略す、ダイセル化学(株))
【0067】
(3)銀粒子:AgF10S(徳力化学研究所(株)、商品名、銀粉、平均粒子径10μm、球状、酸素状態比率15%)、AgC−212D(福田金属箔粉(株)、商品名、銀粉、平均粒子径3.1μm、片状、酸素状態比率5%)
【0068】
(4)表面処理銀粒子:
(i)表面処理球状銀粉
塩酸(関東化学(株))28質量部をエタノール(関東化学(株))で希釈し、80質量部の酸性溶液を調製した。この酸性溶液に表面保護材としてステアリルメルカプタン(東京化成工業(株))0.29質量部を添加し表面処理液を調製した。この表面処理液に上記のAgF10Sを、20質量部添加し、40℃に保ったまま1時間攪拌することで酸化膜除去及び表面処理を行った。その後、ろ過によって表面処理液を取り除き、40℃のエタノールを加えて表面処理銀粉を洗浄した。更にエタノールの洗浄液をろ過によって取り除き、その洗浄、ろ過の工程を10回程度繰り返すことで、表面処理銀粉表面上に物理的に吸着しているステアリルメルカプタン及び塩酸を除去した。最後に洗浄後の表面処理銀粉を減圧乾燥させることでエタノールを除去し、乾燥状態の表面処理銀粉を得た。得られた表面処理銀粉の酸素の状態比率は0%であり、酸化膜が除去されていることを確認した。
【0069】
(ii)表面処理片状銀粉
塩酸(関東化学(株))4質量部をエタノール(関東化学(株))で希釈し、80質量部の酸性溶液を調製した。この酸性溶液に表面保護材としてステアリン酸(和光純薬工業(株))0.28質量部を添加し表面処理液を調製した。この表面処理液に上記のAgC−212Dを、20質量部添加し、40℃に保ったまま1時間攪拌することで酸化膜除去及び表面処理を行った。その後、ろ過によって表面処理液を取り除き、40℃のエタノールを加えて表面処理銀粉を洗浄した。更にエタノールの洗浄液をろ過によって取り除き、その洗浄、ろ過の工程を10回程度繰り返すことで、表面処理銀粉表面上に物理的に吸着しているステアリン酸及び塩酸を除去した。最後に洗浄後の表面処理銀粉を減圧乾燥させることでエタノールを除去し、乾燥状態の表面処理銀粉を得た。得られた表面処理銀粉の酸素の状態比率は1%であり、酸化膜が除去されていることを確認した。
【0070】
(実施例1〜7及び参考例1〜6)
表1または2に示す配合割合にて、材料(1)及び(2)をらいかい機にて10分間混練し液状成分を得た。さらに、表面処理または未処理の銀粒子(3)または(4)を加えてらいかい機にて15分間混練し、接着剤組成物を得た。
接着剤組成物の特性を下記に示す方法で調べ、測定結果を表1及び表2に示す。
【0071】
ダイシェア強度:接着剤組成物をAgめっきCuリードフレーム(ランド部:10×5mm)上に約0.2mgを塗布し、この上に2mm×2mmのNiめっきCuチップ(Niめっき厚;1μm、チップ厚;150μm)を接着し、これをクリーンオーブン(TABAI ESPEC CORP.製、PVHC−210)で250℃、1時間熱処理した。これを万能型ボンドテスタ(デイジ社製、4000シリーズ)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ100μmでシェア強度(MPa)を測定した。
【0072】
接着剤組成物硬化物の熱伝導率:上記接着剤組成物をクリーンオーブン(TABAI ESPEC CORP.製、PVHC−210)で250℃、1時間加熱処理し、10×10×1mmの試験片を得た。この試験片の熱拡散率をレーザーフラッシュ法(ネッチ社製、LFA 447、25℃)で測定し、さらにこの熱拡散率と、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製 Pyris1)で得られた比熱容量とアルキメデス法で得られた比重の積より、25℃における接着剤組成物の硬化物熱伝導率(W/m・K)を算出した。
【0073】
体積抵抗率:上記接着剤組成物をクリーンオーブン(TABAI ESPEC CORP.製、PVHC−210)で250℃、1時間加熱処理し、ガラス板上に1×50×0.03mmの試験片を得た。この試験片を25℃で4端子法(アドバンテスト(株)製、R687E DIGITAL MULTIMETER)により体積抵抗率の値を測定した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表1及び表2に示されるように、実施例1〜4から酸素の状態比率が15%未満の片状銀粉(表面処理片状銀粉)、揮発性成分、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸を含む組成物を250℃、1時間熱処理することで、5.2×10−6Ω・cm以下の体積抵抗率、167W/m・K以上の高熱伝導率及び26MPa以上の高シェア強度を達成した。
【0077】
実施例5から酸素の状態比率が15%未満の片状銀粉(表面処理片状銀粉)及び酸素の状態比率が15%未満の球状銀粉(表面処理球状銀粉)、揮発性成分、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸を含む組成物を250℃、1時間熱処理することで、4.2×10−6Ω・cmの体積抵抗率、179W/m・Kの高熱伝導率及び25MPaの高シェア強度を達成することが分かった。
【0078】
実施例6、7から酸素の状態比率が15%未満の片状銀粉(表面処理片状銀粉)、揮発性成分、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸を含む組成物を250℃、1時間熱処理することで、4.8×10−6Ω・cm以下の体積抵抗率、166W/m・K以上の高熱伝導率及び23MPa以上の高シェア強度を達成した。
上記の結果から、実施例に記載の接着剤組成物はSn95Pbはんだ以上の高電気伝導性、高熱伝導性(30W/m・K)及び高接着強度を有することが分かった。
【0079】
参考例1〜3から酸素の状態比率が15%の銀粉(AgF10S)、揮発性成分及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸を含む組成物は、250℃では銀粒子同士の焼結が起こらないために体積抵抗率及び熱伝導率測定用の試験片が作製できず、被着体とも接続しなかった。
【0080】
参考例4から酸素の状態比率が15%未満の片状銀粉(表面処理片状銀粉)と揮発性成分からなる組成物は250℃、1時間の熱処理で、5.2×10−6Ω・cmの体積抵抗率、182W/m・Kの高熱伝導率を発現したが、被着体のNiめっき部分との接着強度が非常に弱く、シェア強度は2.5MPaであり、Sn95Pbはんだよりも接着強度が劣ることが分かった。
【0081】
参考例5から酸素の状態比率が15%未満の片状銀粉(表面処理片状銀粉)と揮発性成分及び300℃未満の沸点を有するアルコール(BDG)からなる組成物は、250℃、1時間の熱処理で、4.9×10−6Ω・cmの体積抵抗率、174W/m・Kの高熱伝導率を発現したが、被着体のNiめっき部分との接着強度が非常に弱く、シェア強度は3.3MPaであり、接着強度はSn95Pbはんだよりも劣ることが分かった。これは所定の熱履歴をかけた際にBDGの揮発のタイミングが早いため、Ni表面の酸化膜または有機被膜が除去されず、銀粒子とNi表面との間に強固な接着相を形成できなかったため、シェア強度が低下したと推定される。
【0082】
参考例6から酸素の状態比率が15%未満の球状銀粉(表面処理球状銀粉)と揮発性成分及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸(ステアリン酸)からなる組成物は、250℃、1時間の熱処理で、4.2×10−6Ω・cmの体積抵抗率、183W/m・Kの高熱伝導率を発現したが、被着体のNiめっき部分との接着強度が弱く、シェア強度は12MPaであり、接着強度は実施例1〜7に記載の接着剤組成物よりも劣ることが分かった。これは銀粒子の形状が球状であり、片状の銀粒子よりも銀粒子同士またはNi表面との接触面積が小さくなるため、シェア強度が低下したと推定される。
【符号の説明】
【0083】
1,4,7…表面保護材、2,5…酸化膜、3,6,8…銀粒子、3’,8’…表面保護材で覆われた銀粒子、11…チップ、12a,12b,12c…リードフレーム、13…接着剤組成物、14…ワイヤ、15…モールドレジン、16…基板、17…リードフレーム、18…チップ、19…透光性樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光電子分光法で測定される銀酸化物由来の酸素の状態比率が15%未満である片状の銀粒子(A)、及び300℃以上の沸点を有するアルコールまたはカルボン酸(B)を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
沸点が100℃以上300℃未満である揮発性成分(C)をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記銀粒子は、その酸化膜を除去する処理、及び表面保護材による表面処理を施した銀粒子である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記銀粒子は、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下である銀粒子を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記接着剤組成物を熱硬化してなる硬化物の体積抵抗率及び熱伝導率は、それぞれ1×10−4Ω・cm以下、30W/m・K以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物を介して、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材が接着された構造を有する半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−167259(P2012−167259A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12165(P2012−12165)
【出願日】平成24年1月24日(2012.1.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】