説明

揚水装置

【課題】水ポンプが傾斜した状態で使用される場合であっても、確実に呼び水を供給し且つ揚水を検出することができる揚水装置の提供。水ポンプが寒冷地で使用された場合であっても、呼び水配管内の凍結を防止することができる揚水装置の提供。構造が簡素化された安価な揚水装置の提供。
【解決手段】この揚水装置10は、水ポンプ11に呼び水を供給するためのエゼクタ13を有する。エゼクタ13と水ポンプ11とが呼び水配管14により接続されている。呼び水配管14にダイヤフラム式止水弁15及び逆止弁16が設けられている。揚水装置10は、エゼクタ13に圧縮空気を送給するコンプレッサ17と、コンプレッサ17とエゼクタ13とを接続する圧縮空気配管18とを備える。水ポンプ11に圧力センサ20が設けられている。圧力センサ20の出力信号に基づいて開閉バルブ19を開閉する制御装置21が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防ポンプその他の水ポンプに揚水する装置の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、消防ポンプに代表される水ポンプは、揚水するためにいわゆる呼び水を必要としている。水ポンプに呼び水を供給するために、従来から揚水装置が採用されている。たとえば消防ポンプへの呼び水の供給には、伝統的に機械式真空ポンプを備えた揚水装置が使用されていた。この機械式真空ポンプを備えた揚水装置は、機械式真空ポンプを駆動するための動力の確保に加えて動力伝達装置も必要であり、構造が複雑で高価であった。
【0003】
ところで、消防自動車のなかでもCAFS(Compressed Air Form System)装置を搭載したものでは、車両にコンプレッサ(圧縮空気供給装置)が備えられている。本願出願人は、このコンプレッサが供給する圧縮空気を利用する揚水装置を発明した(たとえば特許文献1参照)。この揚水装置は、コンプレッサの吸気力によって呼び水を消防ポンプに供給するようになっている。ところが、この揚水装置では、呼び水がコンプレッサの吸気側に浸入するおそれがあるため、これを回避するための気水分離装置が必要である。したがって、機械式真空ポンプを備えた揚水装置にくらべて大幅なコストダウンが実現されていなかった。
【0004】
この問題が解決されるため、エゼクタを備えた揚水装置が提案されている(たとえば特許文献2参照)。この揚水装置は、工場内に設置されたコンプレッサにより生成される圧縮空気を用い、エゼクタが発生する負圧を利用して呼び水を水ポンプに供給する。この揚水装置はレベルセンサを備えており、呼び水がレベルセンサに引き込まれることによって揚水が完了したことが検知される(特許文献の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−325696号公報
【特許文献2】特許第2754137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載された揚水装置は、工場内に安定的に設置された水ポンプを対象としている。ところが、特に水ポンプが消防自動車その他の緊急車両に搭載される場合には、水ポンプの使用環境が工場に安定的に設置される場合にくらべて大きく異なる。すなわち、緊急車両は道路を走行し、傾斜地に駐車される場合がある。その場合には水ポンプも傾斜するため、揚水を検出するために従来のようなレベルセンサが採用されると、正確に揚水が検出されない。また、緊急車両は寒冷地等でも使用されるから、揚水後の呼び水配管内の水が凍結しないように確実に排出される必要がある。加えて、揚水装置のさらなるコストダウンも要請されているところである。
【0007】
本発明はかかる背景の下になされたものであって、その第1の目的は、揚水の対象となる水ポンプが傾斜した状態で使用される場合であっても、確実に呼び水を供給し且つ揚水を検出することができる揚水装置を提供することである。また、本発明の第2の目的は、水ポンプが寒冷地で使用された場合であっても、呼び水配管内の凍結を防止することができる揚水装置を提供することである。さらに、本発明の第3の目的は、構造が簡素化されたコスト安価な揚水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記第1の目的が達成されるため、本発明に係る揚水装置は、吸水ポート及び吐出ポートを有し、所定の駆動源により駆動されることによって水源から吸水ポートへ水を吸い上げて加圧すると共に高圧の水を吐出ポートから排出する水ポンプに呼び水を供給するための揚水装置である。この揚水装置は、上記駆動源により駆動されることによって圧縮空気を生成するコンプレッサと、圧縮空気が供給される第1ポート、当該圧縮空気が排出される第2ポート及び上記水ポンプの吸水ポート近傍に接続され、上記供給された圧縮空気によって負圧が生じる吸込ポートを有するエゼクタと、上記水ポンプの吐出ポート近傍に配置され、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力を検出する圧力センサとを備えている。
【0009】
駆動源により駆動されたコンプレッサは、圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、エゼクタの第1ポートに供給され、第2ポートから排出される。これにより、エゼクタの吸込ポートに負圧が生じる。この吸込ポートと水ポンプの吸水ポート近傍とが接続されていることから、当該吸込ポートに負圧が生じることによって、水が水源から当該吸込ポート側に引き込まれる。すなわち、この水が水ポンプの吸水ポートに達し、いわゆる「呼び水」が水ポンプに供給されることになる。水ポンプは上記駆動源により駆動されるので、水が水ポンプの吸水ポートに到達すると、当該水は当該水ポンプによって加圧され、高圧の水が水ポンプの吐出ポートから排出される。この水ポンプが稼働すると、上記水源から水が連続して吸い上げられるから、高圧の水が水ポンプの吐出ポートから連続して排出されることになる。なお、上記水ポンプは、たとえば工場内に設置されても良いし、消防自動車等に搭載されてもよい。
【0010】
加えて、圧力センサが水ポンプの吐出ポートの近傍に配置されている。これにより、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力が検出される。つまり、上記呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が吐出ポートから排出されるので、呼び水の完了の前後において上記圧力センサが検出する圧力が大きく変化する。換言すれば、この圧力変化は、上記呼び水が水ポンプに供給されたことを示す信号となる。したがって、この信号に基づいて上記圧縮空気の供給が停止されることが可能であり、これにより、上記呼び水がエゼクタ側へ流れることが抑えられる。その結果、浸水することによるエゼクタの故障等が抑えられる。
【0011】
また、上記圧力センサが上記吐出ポートの近傍に配置されているので、上記水ポンプの設置姿勢に関わらず、たとえば上記水ポンプが傾いて設置されている場合であっても、上記呼び水が水ポンプに供給された直後に上記圧力変化が検知される。したがって、水ポンプが消防自動車に搭載された場合であって、しかも傾斜地に駐車した状態で消火活動が行われる場合であっても、水ポンプへの呼び水の供給が確実に検知される。その結果、エゼクタその他の水ポンプ周辺の補器類に浸水することが抑えられる。
【0012】
(2) 上記水ポンプの吸水ポート近傍と上記エゼクタの吸込ポートとが呼び水配管により接続されており、当該呼び水配管を開閉する第1開閉バルブと、上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに上記第1開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記第1開閉バルブを開く制御装置とがさらに備えられていてもよい。
【0013】
この構成では、第1開閉バルブが開かれることによって、呼び水配管を介して上記水ポンプへの上記呼び水の供給が許容される。また、第1開閉バルブが閉じられることによって上記水ポンプへの上記呼び水の供給が規制される。この第1開閉バルブの開閉は、上記圧力センサの検出圧力に基づいて制御装置によって自動的に行われる。
【0014】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)、すなわち、上記圧力センサが一定圧力に満たない圧力を検出したときは、上記制御装置が上記第1開閉バルブを開く。これにより、エゼクタによって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプに供給される。前述のように、呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに上記圧力センサが上記一定圧力以上の圧力を検出する。制御装置は、この圧力を検出したときに上記第1開閉バルブを閉じる。これにより、水ポンプへ呼び水が供給された直後に自動的に上記第1開閉バルブが閉じられ、エゼクタへの浸水が防止される。
【0015】
(3) 上記呼び水配管に接続され、常時開状態であり且つ上記吸込ポートに生じた負圧によって閉状態に変化する逆止弁がさらに設けられているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、エゼクタの吸込ポートに負圧が発生すると、上記呼び水配管内も負圧状態となる。したがって、水ポンプに水が到達していないとき、すなわち、水ポンプが呼び水を必要とするときは、エゼクタの作用により逆止弁が閉じる。これにより、呼び水配管の負圧状態が維持され、確実に呼び水が水ポンプ側へ引き込まれる。また、呼び水が水ポンプに供給されると、前述のように上記圧縮空気の供給が停止され得るので、上記呼び水配管内が大気圧まで上昇して上記逆止弁が開く。これにより、仮に呼び水配管及びエゼクタに浸水したとしても、確実に排水される。
【0017】
(4) 上記コンプレッサと上記エゼクタの第1ポートとが圧縮空気配管により接続され、当該圧縮空気配管を開閉する第2開閉バルブが設けられていてもよい。そして、上記制御装置は、上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに上記第2開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記第2開閉バルブを開くように構成されているのが好ましい。
【0018】
この構成では、上記制御装置によって第2開閉バルブが自動的に開閉される。第2開閉バルブが開かれることによって圧縮空気配管を通じて圧縮空気がエゼクタへ供給され、第2開閉バルブが閉じられることによって圧縮空気の供給が絶たれる。
【0019】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)、すなわち、上記圧力センサが一定圧力に満たない圧力を検出したときは、上記制御装置が上記第1開閉バルブを開くと共に上記第2開閉バルブを開く。これにより、エゼクタに圧縮空気が自動的に供給され、当該エゼクタによって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプに供給される。前述のように、呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに上記圧力センサが上記一定圧力以上の圧力を検出する。制御装置は、この圧力を検出したときに上記第1開閉バルブを閉じると共に上記第2開閉バルブも閉じる。これにより、水ポンプへ呼び水が供給された直後に自動的に上記第2開閉バルブが閉じられてエゼクタが停止すると共に上記第1開閉バルブも閉じられてエゼクタへの浸水が確実に防止される。
【0020】
(5) 圧縮空気ボンベが接続され得る継ぎ手が上記圧縮空気配管に設けられているのが好ましい。
【0021】
この構成によれば、上記継ぎ手を介して上記圧縮空気配管に圧縮空気ボンベが接続され得る。この圧縮空気ボンベは、たとえば消火活動に供される空気呼吸器のボンベが採用され得る。したがって、当該揚水装置が消防自動車に搭載された場合に、上記継ぎ手が設けられることにより、万一上記コンプレッサが故障した場合であっても、圧縮空気源として空気呼吸器のボンベが使用される。
【0022】
(6) また、上記第2の目的が達成されるため、本発明に係る揚水装置は、吸水ポート及び吐出ポートを有し、所定の駆動源によって駆動されることによって水源から吸水ポートへ水を吸い上げて加圧すると共に高圧の水を吐出ポートから排出する水ポンプに呼び水を供給するための揚水装置である。この揚水装置は、上記駆動源によって駆動されることによって圧縮空気を生成するコンプレッサと、圧縮空気が供給される第1ポート、当該圧縮空気が排出される第2ポート及び上記水ポンプの吸水ポート近傍に接続され、上記供給された圧縮空気によって負圧が生じる吸込ポートを有するエゼクタと、上記水ポンプの吸水ポート近傍と上記エゼクタの吸込ポートとを接続する呼び水配管と、当該呼び水配管に設けられ、上記水ポンプの吸水ポート側と接続されるポンプポート、上記エゼクタの吸込ポート側と接続されるエゼクタポート及び大気側と連通する大気ポートを有し、少なくとも当該ポンプポート及びエゼクタポートを接続する第1接続パターンと当該エゼクタポート及び大気ポートを接続する第2接続パターンとの間で切換可能な切換バルブとを備えている。
【0023】
駆動源により駆動されたコンプレッサは、圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、エゼクタの第1ポートに供給され、第2ポートから排出される。これにより、エゼクタの吸込ポートに負圧が生じる。この吸込ポートと水ポンプの吸水ポート近傍とが呼び水配管により接続されているから、当該吸込ポートに負圧が生じることによって、当該呼び水配管を介して水が水源から当該吸込ポート側に引き込まれる。すなわち、この水が水ポンプの吸水ポートに達し、いわゆる「呼び水」が水ポンプに供給されることになる。水ポンプは上記駆動源により駆動されるので、水が水ポンプの吸水ポートに到達すると、当該水は当該水ポンプによって加圧され、高圧の水が水ポンプの吐出ポートから排出される。この水ポンプが稼働すると、上記水源から水が連続して吸い上げられるから、高圧の水が水ポンプの吐出ポートから連続して排出されることになる。なお、上記水ポンプは、たとえば工場内に設置されても良いし、消防自動車等に搭載されてもよい。
【0024】
上記切換バルブが上記呼び水配管に設けられている。この切換バルブは、少なくとも第1接続パターンと第2接続パターンとの間で切り換えられる。この切換バルブが第1接続パターンに切り換えられると、切換バルブのポンプポートとエゼクタの吸込ポートとが接続される。また、上記切換バルブが第2接続パターンに切り換えられると、切換バルブのエゼクタポートと大気ポートとが接続される。
【0025】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)は、上記切換バルブが第1接続パターンに切り換えられる。これにより、エゼクタによって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプに供給される。また、呼び水が水ポンプに供給されると、切換バルブは第2接続パターンに切り換えられる。これにより、エゼクタと水ポンプとの接続が絶たれるから、エゼクタへの浸水が防止される。しかも、このとき、エゼクタの吸込ポートは、切換バルブを介して大気側と接続されるから、大気側から空気がエゼクタの吸込ポートに吸い込まれ、エゼクタの第2ポートから排気される。これにより、エゼクタ内に水が留まることがなく、空気と共に確実に排水される。
【0026】
(7) 上記水ポンプの吐出ポート近傍に配置され、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力を検出する圧力センサが設けられているのが好ましい。
【0027】
この構成では、上記圧力センサが水ポンプの吐出ポートの近傍に配置されているので、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力が検出される。つまり、上記呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が吐出ポートから排出されるので、呼び水の完了の前後において上記圧力センサが検出する圧力が大きく変化する。すなわち、この圧力変化は、上記呼び水が水ポンプに供給されたことを示す信号となる。したがって、この信号に基づいて上記圧縮空気の供給が停止されることが可能であり、上記呼び水が水ポンプへ供給された場合に、当該エゼクタからの排水の後にコンプレッサ及びエゼクタの無駄な作動が抑制される。
【0028】
さらに、上記圧力センサが水ポンプの吐出ポートの近傍に配置されているので、上記水ポンプの設置姿勢に関わらず、たとえば上記水ポンプが傾いて設置されている場合であっても、上記呼び水が水ポンプに供給された直後に上記圧力変化が検知される。したがって、水ポンプが消防自動車に搭載された場合であって、しかも傾斜地に駐車した状態で消火活動が行われる場合であっても、水ポンプへの呼び水の供給が確実に検知される。その結果、水ポンプへの呼び水の供給完了の後、コンプレッサ及びエゼクタの無駄な作動が確実に防止される。
【0029】
(8) 上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに上記切換バルブを第2接続パターンに切り換えると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記切換バルブを第1接続パターンに切り換える制御装置がさらに備えられているのが好ましい。
【0030】
この構成では、切換バルブの切り換えは、上記圧力センサの検出圧力に基づいて制御装置によって自動的に行われる。
【0031】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)、すなわち、上記圧力センサが一定圧力に満たない圧力を検出したときは、上記制御装置が上記切換バルブを自動的に第1接続パターンに切り換える。これにより、エゼクタによって吸い込まれた水が呼び水配管を介して呼び水として水ポンプに供給される。前述のように、呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに上記圧力センサが上記一定圧力以上の圧力を検出する。制御装置は、この圧力を検出したときに上記切換バルブを第2接続パターンに切り換える。これにより、水ポンプへ呼び水が供給された直後に自動的に上記呼び水配管が遮断され、エゼクタから排水される。
【0032】
(9) 上記コンプレッサと上記エゼクタの第1ポートとが圧縮空気配管により接続され、当該圧縮空気配管を開閉する開閉バルブが設けられていてもよい。そして、上記制御装置は、上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに一定時間経過後に上記開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記開閉バルブを開くように構成されているのが好ましい。
【0033】
この構成では、上記制御装置によって開閉バルブが自動的に開閉される。開閉バルブが開かれることによって圧縮空気配管を介して圧縮空気がエゼクタへ供給され、開閉バルブが閉じられることによって圧縮空気の供給が絶たれる。
【0034】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)、すなわち、上記圧力センサが一定圧力に満たない圧力を検出したときは、上記制御装置が上記切換バルブを第1接続パターンに切り換えると共に上記開閉バルブを開く。これにより、エゼクタに圧縮空気が自動的に供給され、当該エゼクタによって吸い込まれた水が呼び水配管を介して呼び水として水ポンプに供給される。前述のように、呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに上記圧力センサが上記一定圧力以上の圧力を検出する。制御装置は、この圧力を検出したときに上記切換バルブを第2接続パターンに切り換えると共に一定時間経過後に上記第2開閉バルブを閉じる。これにより、水ポンプへ呼び水が供給された直後にさらなる呼び水の供給が停止されると共にエゼクタからの排水が自動的に且つ確実に行われる。
【0035】
(10)圧縮空気ボンベが接続され得る継ぎ手が上記圧縮空気配管に設けられているのが好ましい。
【0036】
この構成によれば、上記継ぎ手を介して上記圧縮空気配管に圧縮空気ボンベが接続され得る。この圧縮空気ボンベは、たとえば消火活動に供される空気呼吸器のボンベが採用され得る。したがって、当該揚水装置が消防自動車に搭載された場合に、上記継ぎ手が設けられることにより、万一上記コンプレッサが故障した場合であっても、圧縮空気源として空気呼吸器のボンベが使用される。
【0037】
(11)上記第3の目的が達成されるため、本発明に係る揚水装置は、吸水ポート及び吐出ポートを有し、所定の駆動源によって駆動されることによって水源から吸水ポートへ水を吸い上げて加圧すると共に高圧の水を吐出ポートから排出する水ポンプに呼び水を供給するための揚水装置である。この揚水装置は、上記駆動源によって駆動されることによって圧縮空気を生成するコンプレッサと、圧縮空気が供給される第1ポート、当該圧縮空気が排出される第2ポート及び上記水ポンプの吸水ポート近傍に接続され、上記供給された圧縮空気によって負圧が生じる吸込ポートを有するエゼクタと、上記水ポンプの吸水ポート近傍と上記エゼクタの吸込ポートとを接続する呼び水配管と、当該呼び水配管の上記水ポンプ側に設けられたダイヤフラム式止水弁と、上記呼び水配管の上記エゼクタ側に設けられ、常時閉状態であり且つ上記吸込ポートに生じた負圧によって開状態に変化する第1逆止弁とを備えている。
【0038】
駆動源により駆動されたコンプレッサは、圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、エゼクタの第1ポートに供給され、第2ポートから排出される。これにより、エゼクタの吸込ポートに負圧が生じる。この吸込ポートと水ポンプの吸水ポート近傍とが接続されていることから、当該吸込ポートに負圧が生じることによって、水が水源から呼び水配管を介して当該吸込ポート側に引き込まれる。すなわち、この水が水ポンプの吸水ポートに達し、いわゆる「呼び水」が水ポンプに供給されることになる。水ポンプは上記駆動源により駆動されるので、水が水ポンプの吸水ポートに到達すると、当該水は当該水ポンプによって加圧され、高圧の水が水ポンプの吐出ポートから排出される。この水ポンプが稼働すると、上記水源から水が連続して吸い上げられるから、高圧の水が水ポンプの吐出ポートから連続して排出されることになる。なお、上記水ポンプは、たとえば工場内に設置されても良いし、消防自動車等に搭載されてもよい。
【0039】
上記呼び水配管にダイヤフラム式止水弁が設けられている。このダイヤフラム式止水弁は、通常において上記呼び水配管を閉鎖しており、当該呼び水配管内が負圧状態となることによって当該呼び水配管を開放する。また、この呼び水配管に第1逆止弁が設けられている。この第1逆止弁は、通常において上記呼び水配管を閉鎖しており、当該呼び水配管内が負圧状態となることによって当該呼び水配管を開放する。
【0040】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)は、エゼクタが作動して上記呼び水配管内が負圧状態となる。これにより、ダイヤフラム式止水弁及び第1逆止弁が開いて上記呼び水配管が開放され、エゼクタによって吸い込まれた水が上記呼び水配管を介して呼び水として水ポンプに供給される。また、呼び水が水ポンプに供給された後に上記コンプレッサが停止されると、上記エゼクタの作動が停止して上記第1逆止弁が上記呼び水配管を閉鎖する。
【0041】
このように、上記呼び水配管の開閉が上記ダイヤフラム式止水弁及び第1逆止弁によって機械的に行われるから、上記呼び水配管を開閉する機構がきわめて簡単且つ安価なものとなる。なお、上記ダイヤフラム式止水弁が採用されることにより、上記水ポンプが消防自動車に搭載され、消火活動において高圧の水が他の水ポンプから送られた場合(いわゆる中継車からの水が供給された場合)であっても、当該高圧の水が上記呼び水配管を通じて上記エゼクタ側へ流れることが防止される。
【0042】
(12)上記水ポンプの吐出ポート近傍に配置され、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力を検出する圧力センサがさらに備えられていてもよい。
【0043】
この構成では、上記圧力センサが水ポンプの吐出ポートの近傍に配置されているので、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力が検出される。つまり、上記呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が吐出ポートから排出されるので、呼び水の完了の前後において上記圧力センサが検出する圧力が大きく変化する。すなわち、この圧力変化は、上記呼び水が水ポンプに供給されたことを示す信号となる。したがって、この信号に基づいて上記圧縮空気の供給が停止されることが可能であり、上記呼び水が水ポンプへ供給された場合に、当該エゼクタからの排水の後にコンプレッサ及びエゼクタの無駄な作動が抑制される。
【0044】
さらに、上記圧力センサが水ポンプの吐出ポートの近傍に配置されているので、上記水ポンプの設置姿勢に関わらず、たとえば上記水ポンプが傾いて設置されている場合であっても、上記呼び水が水ポンプに供給された直後に上記圧力変化が検知される。したがって、水ポンプが消防自動車に搭載された場合であって、しかも傾斜地に駐車した状態で消火活動が行われる場合であっても、水ポンプへの呼び水の供給が確実に検知される。その結果、水ポンプへの呼び水の供給完了の後、コンプレッサ及びエゼクタの無駄な作動が確実に防止される。
【0045】
(13)上記呼び水配管の上記第1逆止弁と上記エゼクタとの間に接続され、常時開状態であり且つ上記吸込ポートに生じた負圧によって閉状態に変化する第2逆止弁がさらに備えられているのが好ましい。
【0046】
この構成によれば、エゼクタの吸込ポートに負圧が発生すると、上記呼び水配管内も負圧状態となる。したがって、水ポンプに水が到達していないとき、すなわち、水ポンプが呼び水を必要とするときは、エゼクタの作用により第2逆止弁が閉じる。これにより、呼び水配管の負圧状態が維持され、確実に呼び水が水ポンプ側へ引き込まれる。また、呼び水が水ポンプに供給されると、前述のように上記圧縮空気の供給が停止され得るので、上記呼び水配管内が大気圧まで上昇して上記第2逆止弁が開く。これにより、仮にエゼクタに浸水したとしても、確実に排水される。
【0047】
(14)上記コンプレッサと上記エゼクタの第1ポートとが圧縮空気配管により接続され、当該圧縮空気配管を開閉する開閉バルブが設けられていてもよい。そして、上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときは上記開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときは上記開閉バルブを開く制御装置が設けられているのが好ましい。
【0048】
この構成では、上記制御装置によって開閉バルブが自動的に開閉される。開閉バルブが開かれることによって圧縮空気配管を通じて圧縮空気がエゼクタへ供給され、開閉バルブが閉じられることによって圧縮空気の供給が絶たれる。
【0049】
具体的には、水ポンプに水が到達していないとき(水ポンプが呼び水を必要とするとき)、すなわち、上記圧力センサが一定圧力に満たない圧力を検出したときは、上記制御装置が上記開閉バルブを開く。これにより、エゼクタに圧縮空気が自動的に供給され、当該エゼクタによって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプに供給される。前述のように、呼び水が水ポンプに供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに上記圧力センサが上記一定圧力以上の圧力を検出する。制御装置は、この圧力を検出したときに上記開閉バルブを閉じる。これにより、水ポンプへ呼び水が供給された直後に自動的に上記開閉バルブが閉じられてエゼクタが停止し、当該エゼクタへの浸水が確実に防止される。
【0050】
(15)圧縮空気ボンベが接続され得る継ぎ手が上記圧縮空気配管に設けられているのが好ましい。
【0051】
この構成によれば、上記継ぎ手を介して上記圧縮空気配管に圧縮空気ボンベが接続され得る。この圧縮空気ボンベは、たとえば消火活動に供される空気呼吸器のボンベが採用され得る。したがって、当該揚水装置が消防自動車に搭載された場合に、上記継ぎ手が設けられることにより、万一上記コンプレッサが故障した場合であっても、圧縮空気源として空気呼吸器のボンベが使用される。
【発明の効果】
【0052】
以上のように本発明によれば、揚水の対象となる水ポンプの姿勢にかかわらず呼び水の供給が確実に検知されるから、たとえば水ポンプが消防自動車に搭載された場合であっても、エゼクタへの浸水が防止され且つ確実に揚水が検知される。また、上記切換バルブが切り換えられることによってエゼクタから確実に排水されるので、水ポンプが寒冷地で使用された場合であっても、呼び水配管内の凍結を確実に防止することができる。さらに、上記呼び水配管にダイヤフラム式止水弁が設けられることにより、構造が簡素化されたコスト安価な揚水装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態の変形例に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6は、本発明の第2の実施形態の変形例に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明の第3の実施形態に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【図8】図8は、本発明の第3の実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0055】
<第1の実施形態>
【0056】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【0057】
この揚水装置10は、水ポンプ11に呼び水を供給するための装置である。本実施形態では、水ポンプ11及び揚水装置10は、たとえば消防自動車に搭載される。すなわち、水ポンプ11は典型的には消防ポンプであり、PTO12(Power Take Off : 所定の駆動源)により駆動される。PTO12は、シャシーに搭載されたエンジンに連結されている。このPTO12は、車内からスイッチによりON/OFF操作され、エンジンから動力を生み出すことができる。もっとも、水ポンプ11及び揚水装置10は、消防自動車等に搭載される場合に限定されるものではなく、たとえば工場内に設置される場合もある。
【0058】
本実施形態に係る揚水装置10の特徴とするところは、水ポンプ11に呼び水を供給するためにエゼクタ13が使用されている点、及びエゼクタ13と水ポンプ11とが呼び水配管14により接続されており、この呼び水配管14にダイヤフラム式止水弁15及び逆止弁16(第1逆止弁)が設けられている点である。後に詳述されるが、上記呼び水配14にダイヤフラム式止水弁15及び逆止弁16が設けられることにより、揚水装置10の構造が簡素化され、メンテナンスが容易となることに加えて当該揚水装置10の製造コストが低減される。
【0059】
この揚水装置10は、上記呼び水配管14並びに上記ダイヤフラム式止水弁15及び逆止弁16と、上記呼び水配管14に接続されたエゼクタ13とを備えている。また、揚水装置10は、エゼクタ13に送給する圧縮空気を生成するコンプレッサ17と、コンプレッサ17とエゼクタ13とを接続する圧縮空気配管18とを備えている。この圧縮空気配管18に開閉バルブ19が設けられている。さらに、上記水ポンプ11に圧力センサ20が設けられており、この圧力センサ20の出力信号に基づいて上記開閉バルブ19を開閉する制御装置21が備えられている。加えて、本実施形態では、上記呼び水配管14に逆止弁22(第2逆止弁)が設けられており、この呼び水配管14からの排水が行われるようになっている。以下、この揚水装置10について詳述される。
【0060】
上記水ポンプ11は、遠心加圧式ポンプであり、ガイドベーンが設けられたケーシングと、このケーシング内に配置されたインペラとを有する。このインペラはケーシング内で回転可能に支持されており、PTO12から伝達される動力によって回転されるようになっている。上記ケーシングに吸水ポート23及び吐出ポート24が設けられている。PTO12により駆動された水ポンプ11は、水源25から吸水ポート23へ水(典型的には消火用水)を吸い上げる。吸い上げられた水は、上記インペラにより加速加圧され、吐出ポート24から高圧水として排出される。ただし、この水ポンプ11は、その構造上、連続して水を加速加圧するために、水源25から水ポンプ11への揚水が必要である。すなわち、いわゆる呼び水が必要であって、この呼び水が水ポンプ11に供給されることによって、水ポンプ11は、連続して水を水源25から吸い上げて高圧水を吐出することができる。
【0061】
上記コンプレッサ17は、外気(大気)を吸い込んで圧縮し、圧縮空気を生成する。本実施形態では、このコンプレッサ17は車載タイプのものである。もっとも、水ポンプ11が工場内に設置される場合は、コンプレッサ17も汎用コンプレッサが採用され得る。コンプレッサ17の形式は特に限定されるものではないが、スクリュー式、斜板式、ベーン式又はスクロール式のものが採用され得る。コンプレッサ17は駆動装置26により駆動される。この駆動装置26は既知の機構により構成され得る。この機構としては、上記PTO12に接続されたプーリー及びベルトのほかギアボックスも採用され得る。したがって、PTO12が出力する動力は駆動装置26を介してコンプレッサ17に伝達され、この動力によってコンプレッサ17が作動するようになっている。もっとも、別の駆動手段によってコンプレッサ17が駆動されてもよい。
【0062】
上記エゼクタ13は、第1ポート27、第2ポート28及び吸込ポート29を備えている。第1ポート27に上記コンプレッサ17により生成された圧縮空気が供給され、この圧縮空気は第2ポート28を通過して大気側へ放出される。このように圧縮空気が流れることにより、吸込ポート29に負圧が生じる。つまり、圧縮空気の速度エネルギが吸込ポート29における圧力エネルギに変換される。なお、エゼクタ13は、汎用品が採用され得る。
【0063】
上記圧縮空気配管18は、コンプレッサ17とエゼクタ13の第1ポート27とを接続している。この圧縮空気配管18は鋼管により構成され得る。したがって、コンプレッサ17が作動すると、圧縮空気は、圧縮空気配管18を通じてエゼクタ13に供給される。
【0064】
上記呼び水配管14は、たとえば鋼管により構成され得る。この呼び水配管14は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍とエゼクタ13の吸込ポート29とを接続している。したがって、エゼクタ13が作動すれば、吸込ポート29及び呼び水配管14内の圧力が負圧となる。
【0065】
上記呼び水配管14に上記ダイヤフラム式止水弁15が設けられている。ダイヤフラム式止水弁15は、本実施形態では汎用品が採用されており、後に詳述される逆止弁16よりも水ポンプ11側に配置されている。このダイヤフラム式止水弁15は、入力ポート30及び出力ポート31を備えている。入力ポート30は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍と接続されており、出力ポート31は、エゼクタ13の吸込ポート29側(具体的には、後述される逆止弁16の入力ポート32)と接続されている。ダイヤフラム式止水弁15は、常時において水が入力ポート30から出力ポート31へ流れることを規制するが、出力ポート31側の圧力が負圧になった場合は、入力ポート30と出力ポート31との間で水が流通することを許容する。したがって、エゼクタ13が作動した場合は、上記出力ポート31側の圧力が負圧となるため、水は、ダイヤフラム式止水弁15の入力ポート30から出力ポート31へ流れる。
【0066】
上記呼び水配管14に上記逆止弁16が設けられている。逆止弁16は、本実施形態では汎用品が採用されており、上記ダイヤフラム式止水弁15よりもエゼクタ13側に配置されている。この逆止弁16は、入力ポート32及び出力ポート33を備えている。逆止弁16の入力ポート32は、ダイヤフラム式止水弁15の出力ポート31と接続されている。また、逆止弁16の出力ポート33は、エゼクタ13の吸込ポート29と接続されている。この逆止弁16は、出力ポート33から入力ポート32への水の流通を規制している。常時において逆止弁16は閉状態となっている。ただし、逆止弁16の構造上、入力ポート32から出力ポート33への水の流通は、一定条件下で可能である。この逆止弁16は、出力ポート33の圧力が負圧となったときは、開状態に変化する。つまり、入力ポート32から出力ポート33への水の自由な流通が許容される。
【0067】
上記開閉バルブ19は、圧縮空気配管18に設けられている。この開閉バルブ19は、圧縮空気配管18を開閉するものである。本実施形態では、開閉バルブ19は汎用の電動バルブであって、後に詳述される制御装置21により開閉が制御されるようになっている。
【0068】
上記圧力センサ20は、汎用のものが採用され得る。圧力センサ20は、水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されている。たとえば、圧力センサ20は、水ポンプ11の上記ケーシングに取付ボスを介して固定され得る。その場合、この取付ボスに上記ケーシング内に連通するねじ穴が設けられ、このねじ穴に圧力センサ20が螺合されてもよい。圧力センサ20の取付態様は特に限定されるものではなく、たとえば上記吐出ポート24にチェック弁が取り付けられる場合には、このチェック弁に圧力センサ20が設けられてもよい。要するに、圧力センサ20は、水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に位置するように取り付けられていればよい。なお、圧力センサ20が上記チェック弁に設けられる場合は、上記吐出ポート24に連続する吐出配管の仕様が異なる場合であっても、圧力センサ20が容易に配置され得るという利点がある。
【0069】
上記逆止弁22は、上記呼び水配管14に設けられている。逆止弁22は、本実施形態では汎用品が採用されており、エゼクタ13と逆止弁16との間に接続されている。この逆止弁22は、入力ポート34及び出力ポート35を備えている。逆止弁22の入力ポート34は呼び水配管14に接続されており、逆止弁22の出力ポート35は大気側に連通している。この逆止弁22は、開閉自在となっている。常時において、逆止弁22は開状態となっており、入力ポート34から出力ポート35への水の流通が許容されている。ただし、この逆止弁22は、入力ポート34の圧力が負圧となったときは、閉状態に変化し、水の流通を規制する。
【0070】
図2は、上記制御装置21の構成例を示すブロック図である。
【0071】
制御装置21の制御部71は、開閉バルブ19の開閉を制御するものである。制御部71は、CPU72、ROM73、RAM74及びEEPROM75を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部71は、バス76を介して入力部77及び出力部78と通信可能に接続されている。
【0072】
ROM73は、CPU72が制御装置21の動作を制御するためのプログラム等を記憶している。RAM74は、CPU72が上記プログラムを実行する際に用いるデータを一時的に格納する記憶領域又は作業領域として使用される。
【0073】
EEPROM75は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を格納する。このEEPROM75は、開閉バルブ19のドライバ79を格納している。このドライバ79は、開閉バルブ19を動作させるためのプログラムである。
【0074】
入力部77は、制御装置21に対する信号の入力を受け付けるものである。上記圧力センサ20は、この入力部77に接続されている。本実施形態では、上記圧力センサ20により出力される圧力信号が入力部77に入力される。
【0075】
上記開閉バルブ19は、出力部78に接続されている。上記開閉バルブ19を作動させるための信号が制御部71から出力部78に入力される。出力部78は、入力された信号を開閉バルブ19へ出力する。このとき、制御部71は、入力部77から送信された上記圧力信号に基づいて上記開閉バルブ19を作動させるための信号を生成する。具体的には、制御部71は、上記圧力信号によって水ポンプ11の吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上かどうかを判断する。そして、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力に満たない場合には、制御部71は開閉バルブ19を開く信号を出力し、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上である場合には、制御部71は開閉バルブ19を閉じる信号を出力する。つまり、圧力センサ20が検出した圧力の大きさに基づいて開閉バルブ19が開閉される。本実施形態では、上記一定の圧力とは、0.13MPaに設定されているが、この閾値は、適宜変更され得るものである。
【0076】
本実施形態に係る揚水装置10は、次の要領で水ポンプ11に呼び水を供給する。
【0077】
図1が示すように、コンプレッサ17は、駆動装置26を介してPTO12により駆動され、圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、エゼクタ13の第1ポート27に供給され、第2ポート28から大気側へ排出される。これにより、エゼクタ13の吸込ポート29に負圧が生じる。吸込ポート29は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍に接続されているので、吸込ポート29に負圧が生じると、水が水源25から呼び水配管14を介して吸込ポート29側に引き込まれる。この水が水ポンプ11の吸水ポート23に達すると、呼び水が水ポンプ11に供給されたことになる。水が水ポンプ11の吸水ポート23に到達すると、当該水は水ポンプ11によって加圧され、高圧の水が水ポンプ11の吐出ポート24から排出される。このように水ポンプ11が稼働すると、上記水源から水が連続して吸い上げられるから、高圧の水が水ポンプ11の吐出ポート24から連続して排出されることになる。
【0078】
水ポンプ11が稼働し始めた時点、つまり、水ポンプ11に水が到達していないときは、水ポンプ11は、呼び水を必要とする。このとき、エゼクタ13が作動して呼び水配管14内が負圧状態となる。これにより、ダイヤフラム式止水弁15及び逆止弁16が開いて呼び水配管14が開放される。エゼクタ13によって吸い込まれた水は、呼び水として水ポンプ11に供給される。また、呼び水が水ポンプ11に供給された後にコンプレッサ17が停止されると、エゼクタ13の作動が停止して逆止弁16が呼び水配管14を閉鎖する。
【0079】
このように、本実施形態では、呼び水配管14の開閉がダイヤフラム式止水弁15及び逆止弁16によって機械的に行われるから、呼び水配管14を開閉する機構がきわめて簡単であり、しかも安価なものとなる。したがって、コスト安価な揚水装置10が提供され得る。
【0080】
なお、ダイヤフラム式止水弁15が採用されることにより、水ポンプ11が消防自動車に搭載され、消火活動において高圧の水が他の水ポンプから送られる場合(いわゆる中継車からの水が供給される場合)であっても、当該高圧の水が呼び水配管14を通じてエゼクタ13側へ流れることが防止される。詳述すれば、いわゆる中継車が存在する場合、中継車から高圧の水が水ポンプ11の吸水ポート23に供給される。この高圧の水は、その一部が上記呼び水配管14側へも流れることになるが、呼び水配管14にダイヤフラム式止水弁15が配置されているために当該高圧の水がエゼクタ13側へ流れることはない。加えて、水ポンプ11もPTO12により駆動されるから、コンプレッサ17の作動に合わせて水ポンプ11も回転される。したがって、呼び水が水ポンプ11に到達する前に水ポンプ11が回転するから、呼び水の到着とほぼ同時に高圧放水が可能となる。つまり、揚水動作から高圧放水までに要する時間が短くなり、火災現場において迅速且つ効果的な初期消火が実現されるという利点もある。
【0081】
本実施形態では、圧力センサ20が水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されている。呼び水が水ポンプ11に供給されると、直ちに高圧の水が吐出ポート24から排出されるので、呼び水の完了の前後において圧力センサ20が検出する圧力が大きく変化する。この圧力変化は、呼び水が水ポンプ11に供給されたことを示す信号となる。そして、この信号に基づいて圧縮空気の供給が停止され得る。
【0082】
本実施形態では、制御装置21によって開閉バルブ19が自動的に開閉される。具体的には、水ポンプ11に水が到達していないとき、すなわち、水ポンプ11が呼び水を必要とするときは、圧力センサ20が一定圧力に満たない圧力を検出する。この圧力信号が入力部77を介して制御部71へ入力される。制御部71は、この入力された圧力信号に基づいて所定の演算を行う。制御装置21は、出力部78から開閉バルブ19を開く信号を出力し、これに基づいて開閉バルブ19が開く。これにより、エゼクタ13に圧縮空気が自動的に供給され、エゼクタ13によって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプ11に供給される。
【0083】
また、呼び水が水ポンプ11に供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに圧力センサ20が上記一定圧力以上の圧力を検出する。この圧力信号が入力部77を介して制御部71へ入力される。制御部71は、この入力された圧力信号に基づいて所定の演算を行う。制御装置21は、出力部78から開閉バルブ19を閉じる信号を出力し、これに基づいて開閉バルブ19が閉じる。このように、水ポンプ11へ呼び水が供給された直後に自動的に開閉バルブ19が閉じられてエゼクタ13が停止するので、コンプレッサ17及びエゼクタ13の無駄な作動が抑制されると共にエゼクタ13への浸水が確実に防止される。
【0084】
さらに、圧力センサ20が水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されているので、水ポンプ11の設置姿勢に関わらず、呼び水の供給が確実に検知され得る。たとえば水ポンプ11が消防自動車に搭載された場合であって、しかも傾斜地に駐車した状態で消火活動が行われる場合であっても、呼び水が水ポンプ11に供給された直後に上記圧力変化が検出されるから、水ポンプ11への呼び水の供給が確実に検知される。したがって、水ポンプ11への呼び水の供給が完了した後、コンプレッサ17及びエゼクタ13の無駄な作動が確実に防止される。
【0085】
加えて、本実施形態では、上記逆止弁22が別途設けられている。エゼクタ13の吸込ポート29に負圧が発生すると、呼び水配管14内も負圧状態となる。したがって、水ポンプ11に水が到達していないとき、すなわち、水ポンプ11が呼び水を必要とするときは、エゼクタ13の作用により逆止弁22が閉じる。これにより、呼び水配管14の負圧状態が維持され、確実に呼び水が水ポンプ11側へ引き込まれる。そして、呼び水が水ポンプ11に供給されると、前述のように圧縮空気の供給が停止される。これにより、呼び水配管14内が大気圧まで上昇して逆止弁22が開く。その結果、仮にエゼクタ13に浸水したとしても、確実に排水されるという利点がある。
【0086】
次に、本実施形態の変形例が説明される。
【0087】
図3は、本実施形態の変形例に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【0088】
この揚水装置36が上記揚水装置10と異なるところは、上記圧縮空気配管18に継ぎ手37が設けられており、この継ぎ手37を介して圧縮空気配管18に圧縮空気ボンベ38が接続されるようになっている点、及び逆止弁22の入力ポート34側にフィルタ39が設けられている点である。なお、当該揚水装置36のその他の構成については、上記揚水装置10と同様である。
【0089】
上記継ぎ手37は、汎用の空圧用ワンタッチ式ツールが採用され得る。これにより、圧縮空気ボンベ38が圧縮空気配管18に容易に着脱される。ところで、エゼクタ13が呼び水を吸い上げるために十分な負圧を発生させるためには、一般的には、流量が800L/min以上の圧縮空気が30秒以上エゼクタ13に供給されることが望ましい。たとえば、消防自動車に搭載される空気呼吸器は圧縮空気を充填したボンベを備えており、このボンベは、上記負圧を発生させるために十分な量の圧縮空気を供給することができる。したがって、上記継ぎ手37を介して空気呼吸器のボンベが圧縮空気配管18に接続され得る。その結果、万一コンプレッサ17が故障した場合であっても、圧縮空気源として空気呼吸器のボンベが使用されるという利点もある。
【0090】
また、上記フィルタ39は、汎用の空圧用フィルタが採用され得る。このフィルタ39は、図3が示すように、呼び水配管14に配置されている。このフィルタ39が設けられることにより、当該フィルタ39を通過する水及び空気がフィルタリングされる。したがって、エゼクタ13に異物が侵入することが防止されるという利点がある。
【0091】
<第2の実施形態>
【0092】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【0093】
この揚水装置40は、水ポンプ11に呼び水を供給するための装置である。本実施形態では、水ポンプ11及び揚水装置40は、たとえば消防自動車に搭載される。すなわち、水ポンプ11は典型的には消防ポンプであり、PTO12(Power Take Off : 所定の駆動源)により駆動される。PTO12は、シャシーに搭載されたエンジンに連結されている。このPTO12は、車内からスイッチによりON/OFF操作され、エンジンから動力を生み出すことができる。もっとも、水ポンプ11及び揚水装置10は、消防自動車等に搭載される場合に限定されるものではなく、たとえば工場内に設置される場合もある。
【0094】
本実施形態に係る揚水装置40の特徴とするところは、水ポンプ11に呼び水を供給するためにエゼクタ13が使用されている点、及び水ポンプ11に圧力センサ20が設けられている点である。後に詳述されるが、この圧力センサ20が設けられることにより、水ポンプ11の設置状況にかかわらず、水ポンプ11への揚水が確実に検出されるようになっている。
【0095】
この揚水装置40は、エゼクタ13と水ポンプ11とを接続する呼び水配管14が設けられており、この呼び水配管14に第1開閉バルブ41が設けられている。上記エゼクタ13は、呼び水配管14に接続されている。また、揚水装置40は、エゼクタ13に送給する圧縮空気を生成するコンプレッサ17と、コンプレッサ17とエゼクタ13とを接続する圧縮空気配管18とを備えている。この圧縮空気配管18に第2開閉バルブ42が設けられている。さらに、上記水ポンプ11に設けられた圧力センサ20の出力信号に基づいて上記第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42を開閉する制御装置43が備えられている。加えて、本実施形態では、上記呼び水配管14に逆止弁44が設けられており、この呼び水配管14からの排水が行われるようになっている。以下、この揚水装置40について詳述される。
【0096】
上記水ポンプ11は、遠心加圧式ポンプであり、ガイドベーンが設けられたケーシングと、このケーシング内に配置されたインペラとを有する。このインペラはケーシング内で回転可能に支持されており、PTO12から伝達される動力によって回転されるようになっている。上記ケーシングに吸水ポート23及び吐出ポート24が設けられている。PTO12により駆動された水ポンプ11は、水源25から吸水ポート23へ水(典型的には消火用水)を吸い上げる。吸い上げられた水は、上記インペラにより加速加圧され、吐出ポート24から高圧水として排出される。ただし、この水ポンプ11は、その構造上、連続して水を加速加圧するために、水源25から水ポンプ11への揚水が必要である。すなわち、いわゆる呼び水が必要であって、この呼び水が水ポンプ11に供給されることによって、水ポンプ11は、連続して水を水源25から吸い上げて高圧水を吐出することができる。
【0097】
上記コンプレッサ17は、外気(大気)を吸い込んで圧縮し、圧縮空気を生成する。本実施形態では、このコンプレッサ17は車載タイプのものである。もっとも、水ポンプ11が工場内に設置される場合は、コンプレッサ17も汎用コンプレッサが採用され得る。コンプレッサ17の形式は特に限定されるものではないが、スクリュー式、斜板式、ベーン式又はスクロール式のものが採用され得る。コンプレッサ17は駆動装置26により駆動される。この駆動装置26は既知の機構により構成され得る。この機構としては、上記PTO12に接続されたプーリー及びベルトのほかギアボックスも採用され得る。したがって、PTO12が出力する動力は駆動装置26を介してコンプレッサ17に伝達され、この動力によってコンプレッサ17が作動するようになっている。もっとも、別の駆動手段によってコンプレッサ17が駆動されてもよい。
【0098】
上記エゼクタ13は、第1ポート27、第2ポート28及び吸込ポート29を備えている。第1ポート27に上記コンプレッサ17により生成された圧縮空気が供給され、この圧縮空気は第2ポート28を通過して大気側へ放出される。このように圧縮空気が流れることにより、吸込ポート29に負圧が生じる。つまり、圧縮空気の速度エネルギが吸込ポート29における圧力エネルギに変換される。なお、エゼクタ13は、汎用品が採用され得る。
【0099】
上記圧縮空気配管18は、コンプレッサ17とエゼクタ13の第1ポート27とを接続している。この圧縮空気配管18は鋼管により構成され得る。したがって、コンプレッサ17が作動すると、圧縮空気は、圧縮空気配管18を通じてエゼクタ13に供給される。
【0100】
上記呼び水配管14は、たとえば鋼管により構成され得る。この呼び水配管14は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍とエゼクタ13の吸込ポート29とを接続している。したがって、エゼクタ13が作動すれば、吸込ポート29及び呼び水配管14内の圧力が負圧となる。
【0101】
上記呼び水配管14に第1開閉バルブ41が設けられている。この第1開閉バルブ41は、呼び水配管14を開閉するものである。本実施形態では、第1開閉バルブ41は汎用の電動バルブであって、後に詳述される制御装置43により開閉が制御されるようになっている。
【0102】
上記第2開閉バルブ42は、圧縮空気配管18に設けられている。この第2開閉バルブ42は、圧縮空気配管18を開閉するものである。本実施形態では、第2開閉バルブ42は汎用の電動バルブであって、後に詳述される制御装置43により開閉が制御されるようになっている。
【0103】
上記圧力センサ20は、汎用のものが採用され得る。圧力センサ20は、水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されている。たとえば、圧力センサ20は、水ポンプ11の上記ケーシングに取付ボスを介して固定され得る。その場合、この取付ボスに上記ケーシング内に連通するねじ穴が設けられ、このねじ穴に圧力センサ20が螺合されてもよい。圧力センサ20の取付態様は特に限定されるものではなく、たとえば上記吐出ポート24にチェック弁が取り付けられる場合には、このチェック弁に圧力センサ20が設けられてもよい。要するに、圧力センサ20は、水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に位置するように取り付けられていればよい。なお、圧力センサ20が上記チェック弁に設けられる場合は、上記吐出ポート24に連続する吐出配管の仕様が異なる場合であっても、圧力センサ20が容易に配置され得るという利点がある。
【0104】
上記逆止弁44は、上記呼び水配管14に設けられている。逆止弁44は、本実施形態では汎用品が採用されており、エゼクタ13と第1開閉バルブ41との間に接続されている。この逆止弁44は、入力ポート34及び出力ポート35を備えている。逆止弁44の入力ポート34は呼び水配管14に接続されており、逆止弁44の出力ポート35は大気側に連通している。この逆止弁44は、開閉自在となっている。常時において、逆止弁44は開状態となっており、入力ポート34から出力ポート35への水の流通が許容されている。ただし、この逆止弁44は、入力ポート34の圧力が負圧となったときは、閉状態に変化し、水の流通を規制する。
【0105】
図5は、上記制御装置43の構成例を示すブロック図である。
【0106】
制御装置43の制御部71は、第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42の開閉を制御するものである。制御部71は、CPU72、ROM73、RAM74及びEEPROM75を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部71は、バス76を介して入力部77及び出力部78と通信可能に接続されている。
【0107】
ROM73は、CPU72が制御装置43の動作を制御するためのプログラム等を記憶している。RAM74は、CPU72が上記プログラムを実行する際に用いるデータを一時的に格納する記憶領域又は作業領域として使用される。
【0108】
EEPROM75は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を格納する。このEEPROM75は、第1開閉バルブ41のドライバ45及び第2開閉バルブ42のドライバ46を格納している。このドライバ45は、第1開閉バルブ41を動作させるためのプログラムであり、ドライバ46は、第2開閉バルブ42を動作させるためのプログラムである。
【0109】
入力部77は、制御装置43に対する信号の入力を受け付けるものである。上記圧力センサ20は、この入力部77に接続されている。本実施形態では、上記圧力センサ20により出力される圧力信号が入力部77に入力される。
【0110】
上記第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42は、出力部78に接続されている。上記第1開閉バルブ41を作動させるための信号が制御部71から出力部78に入力される。出力部78は、入力された信号を第1開閉バルブ41へ出力する。このとき、制御部71は、入力部77から送信された上記圧力信号に基づいて上記第1開閉バルブ41を作動させるための信号を生成する。具体的には、制御部71は、上記圧力信号によって水ポンプ11の吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上かどうかを判断する。そして、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力に満たない場合には、制御部71は第1開閉バルブ41を開く信号を出力し、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上である場合には、制御部71は第1開閉バルブ41を閉じる信号を出力する。つまり、圧力センサ20が検出した圧力の大きさに基づいて第1開閉バルブ41が開閉される。
【0111】
同様に、上記第2開閉バルブ42を作動させるための信号が制御部71から出力部78に入力される。出力部78は、入力された信号を第2開閉バルブ42へ出力する。このとき、制御部71は、入力部77から送信された上記圧力信号に基づいて上記第2開閉バルブ42を作動させるための信号を生成する。具体的には、制御部71は、上記圧力信号によって水ポンプ11の吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上かどうかを判断する。そして、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力に満たない場合には、制御部71は第2開閉バルブ42を開く信号を出力し、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上である場合には、制御部71は第2開閉バルブ42を閉じる信号を出力する。つまり、圧力センサ20が検出した圧力の大きさに基づいて第2開閉バルブ42が開閉される。本実施形態では、上記一定の圧力とは、0.13MPaに設定されているが、この閾値は、適宜変更され得るものである。
【0112】
本実施形態に係る揚水装置40は、次の要領で水ポンプ11に呼び水を供給する。
【0113】
図4が示すように、コンプレッサ17は、駆動装置26を介してPTO12により駆動され、圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、エゼクタ13の第1ポート27に供給され、第2ポート28から大気側へ排出される。これにより、エゼクタ13の吸込ポート29に負圧が生じる。吸込ポート29は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍に接続されているので、吸込ポート29に負圧が生じると、水が水源25から呼び水配管14を介して吸込ポート29側に引き込まれる。この水が水ポンプ11の吸水ポート23に達すると、呼び水が水ポンプ11に供給されたことになる。水が水ポンプ11の吸水ポート23に到達すると、当該水は水ポンプ11によって加圧され、高圧の水が水ポンプ11の吐出ポート24から排出される。このように水ポンプ11が稼働すると、上記水源から水が連続して吸い上げられるから、高圧の水が水ポンプ11の吐出ポート24から連続して排出されることになる。
【0114】
上記圧力センサ20が水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されているから、吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が検出される。前述のように、呼び水が水ポンプ11に供給されると直ちに高圧の水が吐出ポート24から排出されるので、呼び水の完了の前後において圧力センサ20が検出する圧力が大きく変化する。この圧力変化は、呼び水が水ポンプ11に供給されたことを示す信号となる。したがって、この信号に基づいてエゼクタ13への圧縮空気の供給が停止されることが可能である。これにより、呼び水がエゼクタ13側へ流れることが抑えられ、その結果、浸水することによるエゼクタ13の故障等が抑えられる。
【0115】
また、圧力センサ20が上記吐出ポート24の近傍に配置されているので、水ポンプ11の設置姿勢に関わらず呼び水が水ポンプ11に供給された直後に上記圧力変化が検出される。たとえば上記水ポンプ11が傾いて設置されている場合、典型的には、水ポンプ11が消防自動車に搭載された場合であって、しかも傾斜地に駐車した状態で消火活動が行われる場合であっても、水ポンプ11への呼び水の供給が確実に検知される。その結果、エゼクタ13その他の水ポンプ周辺の補器類に浸水することが抑えられる。加えて、水ポンプ11もPTO12により駆動されるから、コンプレッサ17の作動に合わせて水ポンプ11も回転される。したがって、呼び水が水ポンプ11に到達する前に水ポンプ11が回転するから、呼び水の到着とほぼ同時に高圧放水が可能となる。つまり、揚水動作から高圧放水までに要する時間が短くなり、火災現場において迅速且つ効果的な初期消火が実現されるという利点もある。
【0116】
本実施形態では、制御装置43によって第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42が自動的に開閉される。第1開閉バルブ41が開かれることによって、呼び水配管14を介して水ポンプ11への呼び水の供給が許容される。また、第1開閉バルブ41が閉じられることによって水ポンプ11への呼び水の供給が規制される。他方、第2開閉バルブ42が開かれることによって、圧縮空気配管18を介してエゼクタ13への圧縮空気の供給が許容される。また、第2開閉バルブ42が閉じられることによってエゼクタ13への圧縮空気の供給が規制される。
【0117】
具体的には、水ポンプ11に水が到達していないとき、すなわち、水ポンプ11が呼び水を必要とするときは、圧力センサ20が上記一定圧力に満たない圧力を検出する。図5が示すように、この圧力信号が入力部77を介して制御部71へ入力される。制御部71は、この入力された圧力信号に基づいて所定の演算を行う。制御装置43は、出力部78から第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42を開く信号を出力し、これに基づいて第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42が開く。これにより、エゼクタ13に圧縮空気が自動的に供給され、エゼクタ13によって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプ11に供給される。
【0118】
また、呼び水が水ポンプ11に供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに圧力センサ20が上記一定圧力以上の圧力を検出する。この圧力信号が入力部77を介して制御部71へ入力される。制御部71は、この入力された圧力信号に基づいて所定の演算を行う。制御装置43は、出力部78から第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42を閉じる信号を出力し、これに基づいて第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42が閉じる。このように、水ポンプ11へ呼び水が供給された直後に自動的に第1開閉バルブ41及び第2開閉バルブ42が閉じられてエゼクタ13が停止するので、コンプレッサ17及びエゼクタ13の無駄な作動が抑制されると共にエゼクタ13への浸水が確実に防止される。
【0119】
さらに、本実施形態では、上記逆止弁44が別途設けられている。エゼクタ13の吸込ポート29に負圧が発生すると、呼び水配管14内も負圧状態となる。したがって、水ポンプ11に水が到達していないとき、すなわち、水ポンプ11が呼び水を必要とするときは、エゼクタ13の作用により逆止弁44が閉じる。これにより、呼び水配管14の負圧状態が維持され、確実に呼び水が水ポンプ11側へ引き込まれる。そして、呼び水が水ポンプ11に供給されると、前述のように圧縮空気の供給が停止される。これにより、呼び水配管14内が大気圧まで上昇して逆止弁44が開く。その結果、仮にエゼクタ13に浸水したとしても、確実に排水される。
【0120】
次に、本実施形態の変形例が説明される。
【0121】
図6は、本実施形態の変形例に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【0122】
この揚水装置47が上記揚水装置40と異なるところは、上記揚水装置40では呼び水配管14を開閉する第1開閉バルブ41が電動バルブから構成されていたのに対して、本変形例では、空圧式開閉バルブ48が採用されている点である。なお、当該揚水装置47のその他の構成については、上記揚水装置40と同様である。
【0123】
この空圧式開閉バルブ48は、空圧が導かれるパイロットポート49を有する。空圧式開閉バルブ48は、いわゆるノーマルクローズ(NC)タイプであって、常時は閉じ状態となっている。上記パイロットポート49に一定の空圧が作用した場合に、空圧式開閉バルブ48は開状態となり、呼び水配管14を開く。上記パイロットポート49は、圧縮空気配管18と接続されている。したがって、コンプレッサ17が作動して圧縮空気がエゼクタ13に供給されたときに、上記パイロットポート49に一定の空圧が作用して呼び水配管14が開く。
【0124】
本変形例では、圧縮空気配管18内の圧力をパイロット圧として空圧式開閉バルブ48が開閉するので、制御装置43によって開閉が制御される第1開閉バルブ(電動バルブ)が採用される場合に比べてコストダウンが図られる。また、制御装置43による制御が簡単になるため、揚水装置40全体の製造コストも低減され得る。
【0125】
なお、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の変形例が採用され得る。すなわち、第1の変形例として、上記圧縮空気配管18に継ぎ手37(図3参照)が設けられ、この継ぎ手37を介して圧縮空気配管18に圧縮空気ボンベ38が接続されるようになっていてもよい。これにより、万一コンプレッサ17が故障した場合であっても、圧縮空気源として空気呼吸器のボンベが使用されるという利点がある。また、第2の変形例として、逆止弁44の入力ポート34側にフィルタ39が設けられていてもよい。このようなフィルタ39が設けられることにより、エゼクタ13に異物が侵入することが防止されるという利点がある。
【0126】
<第3の実施形態>
【0127】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る揚水装置の構造を示す模式図である。
【0128】
この揚水装置50は、水ポンプ11に呼び水を供給するための装置である。本実施形態では、水ポンプ11及び揚水装置50は、たとえば消防自動車に搭載される。すなわち、水ポンプ11は典型的には消防ポンプであり、PTO12(Power Take Off : 所定の駆動源)により駆動される。PTO12は、シャシーに搭載されたエンジンに連結されている。このPTO12は、車内からスイッチによりON/OFF操作され、エンジンから動力を生み出すことができる。もっとも、水ポンプ11及び揚水装置50は、消防自動車等に搭載される場合に限定されるものではなく、たとえば工場内に設置される場合もある。
【0129】
本実施形態に係る揚水装置50の特徴とするところは、水ポンプ11に呼び水を供給するためにエゼクタ13が使用されている点、及びエゼクタ13と水ポンプ11とが呼び水配管14により接続されており、この呼び水配管14に方向切換バルブ51が設けられている点である。後に詳述されるが、上記呼び水配管14に方向切換バルブ51が設けられることにより、エゼクタ13から確実に排水され、揚水装置10がたとえば寒冷地で運転される場合であっても凍結による故障が防止される。
【0130】
この揚水装置50は、上記呼び水配管14及び上記方向切換バルブ51と、上記呼び水配管14に接続されたエゼクタ13とを備えている。また、揚水装置50は、エゼクタ13に送給する圧縮空気を生成するコンプレッサ17と、コンプレッサ17とエゼクタ13とを接続する圧縮空気配管18とを備えている。この圧縮空気配管18に開閉バルブ52が設けられている。さらに、上記水ポンプ11に圧力センサ20が設けられており、この圧力センサ20の出力信号に基づいて上記方向切換バルブ51及び開閉バルブ52を操作する制御装置53が備えられている。以下、この揚水装置50について詳述される。
【0131】
上記水ポンプ11は、遠心加圧式ポンプであり、ガイドベーンが設けられたケーシングと、このケーシング内に配置されたインペラとを有する。このインペラはケーシング内で回転可能に支持されており、PTO12から伝達される動力によって回転されるようになっている。上記ケーシングに吸水ポート23及び吐出ポート24が設けられている。PTO12により駆動された水ポンプ11は、水源25から吸水ポート23へ水(典型的には消火用水)を吸い上げる。吸い上げられた水は、上記インペラにより加速加圧され、吐出ポート24から高圧水として排出される。ただし、この水ポンプ11は、その構造上、連続して水を加速加圧するために、水源25から水ポンプ11への揚水が必要である。すなわち、いわゆる呼び水が必要であって、この呼び水が水ポンプ11に供給されることによって、水ポンプ11は、連続して水を水源25から吸い上げて高圧水を吐出することができる。
【0132】
上記コンプレッサ17は、外気(大気)を吸い込んで圧縮し、圧縮空気を生成する。本実施形態では、このコンプレッサ17は車載タイプのものである。もっとも、水ポンプ11が工場内に設置される場合は、コンプレッサ17も汎用コンプレッサが採用され得る。コンプレッサ17の形式は特に限定されるものではないが、スクリュー式、斜板式、ベーン式又はスクロール式のものが採用され得る。コンプレッサ17は駆動装置26により駆動される。この駆動装置26は既知の機構により構成され得る。この機構としては、上記PTO12に接続されたプーリー及びベルトのほかギアボックスも採用され得る。したがって、PTO12が出力する動力は駆動装置26を介してコンプレッサ17に伝達され、この動力によってコンプレッサ17が作動するようになっている。もっとも、別の駆動手段によってコンプレッサ17が駆動されてもよい。
【0133】
上記エゼクタ13は、第1ポート27、第2ポート28及び吸込ポート29を備えている。第1ポート27に上記コンプレッサ17により生成された圧縮空気が供給され、この圧縮空気は第2ポート28を通過して大気側へ放出される。このように圧縮空気が流れることにより、吸込ポート29に負圧が生じる。つまり、圧縮空気の速度エネルギが吸込ポート29における圧力エネルギに変換される。なお、エゼクタ13は、汎用品が採用され得る。
【0134】
上記圧縮空気配管18は、コンプレッサ17とエゼクタ13の第1ポート27とを接続している。この圧縮空気配管18は鋼管により構成され得る。したがって、コンプレッサ17が作動すると、圧縮空気は、圧縮空気配管18を通じてエゼクタ13に供給される。
【0135】
上記呼び水配管14は、たとえば鋼管により構成され得る。この呼び水配管14は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍とエゼクタ13の吸込ポート29とを接続している。したがって、エゼクタ13が作動すれば、吸込ポート29及び呼び水配管14内の圧力が負圧となる。
【0136】
上記呼び水配管14に方向切換バルブ51が設けられている。この方向切換バルブ51は、ポンプポート54、エゼクタポート55及び大気ポート56を備えている。ポンプポート54は、水ポンプ11の吸水ポート23の近傍と接続されている。エゼクタポート55は、エゼクタ13の吸込ポート29と接続されている。大気ポート56は、大気側に開放されている。方向切換バルブ51は、第1接続パターンと第2接続パターンとに切り換えることができる。第1接続パターンでは、ポンプポート54とエゼクタポート55とが接続される。第2接続パターンでは、エゼクタポート55と大気ポート56とが接続される。なお、この方向切換バルブ51は、第1接続パターン及び第2接続パターンの2つの接続パターンのほか、たとえばポンプポート54と大気ポート56とを接続する接続パターンを備えていてもよい。要するに、方向切換バルブ51は、少なくとも上記2つの接続パターンの切り換えが可能であればよい。
【0137】
本実施形態では、方向切換バルブ51は電動バルブであって、後に詳述される制御装置53により接続パターンが切り換えられるようになっている。
【0138】
上記開閉バルブ52は、圧縮空気配管18に設けられている。この開閉バルブ52は、圧縮空気配管18を開閉するものである。本実施形態では、開閉バルブ52は汎用の電動バルブであって、後に詳述される制御装置53により開閉が制御されるようになっている。
【0139】
上記圧力センサ20は、汎用のものが採用され得る。圧力センサ20は、水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されている。たとえば、圧力センサ20は、水ポンプ11の上記ケーシングに取付ボスを介して固定され得る。その場合、この取付ボスに上記ケーシング内に連通するねじ穴が設けられ、このねじ穴に圧力センサ20が螺合されてもよい。圧力センサ20の取付態様は特に限定されるものではなく、たとえば上記吐出ポート24にチェック弁が取り付けられる場合には、このチェック弁に圧力センサ20が設けられてもよい。要するに、圧力センサ20は、水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に位置するように取り付けられていればよい。なお、圧力センサ20が上記チェック弁に設けられる場合は、上記吐出ポート24に連続する吐出配管の仕様が異なる場合であっても、圧力センサ20が容易に配置され得るという利点がある。
【0140】
図8は、上記制御装置53の構成例を示すブロック図である。
【0141】
制御装置53の制御部71は、方向切換バルブ51及び開閉バルブ52の開閉を制御するものである。制御部71は、CPU72、ROM73、RAM74及びEEPROM75を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部71は、バス76を介して入力部77及び出力部78と通信可能に接続されている。
【0142】
ROM73は、CPU72が制御装置53の動作を制御するためのプログラム等を記憶している。RAM74は、CPU72が上記プログラムを実行する際に用いるデータを一時的に格納する記憶領域又は作業領域として使用される。
【0143】
EEPROM75は、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等を格納する。このEEPROM75は、方向切換バルブ51のドライバ45及び開閉バルブ52のドライバ46を格納している。このドライバ45は、方向切換バルブ51を動作させるためのプログラムであり、ドライバ46は、開閉バルブ52を動作させるためのプログラムである。
【0144】
入力部77は、制御装置53に対する信号の入力を受け付けるものである。上記圧力センサ20は、この入力部77に接続されている。本実施形態では、上記圧力センサ20により出力される圧力信号が入力部77に入力される。
【0145】
上記方向切換バルブ51及び開閉バルブ52は、出力部78に接続されている。上記方向切換バルブ51を作動させるための信号が制御部71から出力部78に入力される。出力部78は、入力された信号を方向切換バルブ51へ出力する。このとき、制御部71は、入力部77から送信された上記圧力信号に基づいて上記方向切換バルブ51を作動させるための信号を生成する。具体的には、制御部71は、上記圧力信号によって水ポンプ11の吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上かどうかを判断する。そして、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力に満たない場合には、制御部71は、方向切換バルブ51が第1接続パターンに切り換えるように信号を出力し、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上である場合には、制御部71は、方向切換バルブ51が第2接続パターンに切り換えるように信号を出力する。つまり、圧力センサ20が検出した圧力の大きさに基づいて方向切換バルブ51の接続パターンが変更される。
【0146】
同様に、上記開閉バルブ52を作動させるための信号が制御部71から出力部78に入力される。出力部78は、入力された信号を開閉バルブ52へ出力する。このとき、制御部71は、入力部77から送信された上記圧力信号に基づいて上記開閉バルブ52を作動させるための信号を生成する。具体的には、制御部71は、上記圧力信号によって水ポンプ11の吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上かどうかを判断する。そして、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力に満たない場合には、制御部71は開閉バルブ52を開く信号を出力し、上記吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が一定の圧力以上である場合には、制御部71は開閉バルブ52を閉じる信号を出力する。つまり、圧力センサ20が検出した圧力の大きさに基づいて開閉バルブ52が開閉される。本実施形態では、上記一定の圧力とは、0.13MPaに設定されているが、この閾値は、適宜変更され得るものである。
【0147】
本実施形態に係る揚水装置40は、次の要領で水ポンプ11に呼び水を供給する。
【0148】
図7が示すように、コンプレッサ17は、駆動装置26を介してPTO12により駆動され、圧縮空気を生成する。この圧縮空気は、エゼクタ13の第1ポート27に供給され、第2ポート28から大気側へ排出される。これにより、エゼクタ13の吸込ポート29に負圧が生じる。吸込ポート29は、水ポンプ11の吸水ポート23側に接続されているので、吸込ポート29に負圧が生じると、水が水源25から呼び水配管14を介して吸込ポート29側に引き込まれる。この水が水ポンプ11の吸水ポート23に達すると、呼び水が水ポンプ11に供給されたことになる。水が水ポンプ11の吸水ポート23に到達すると、当該水は水ポンプ11によって加圧され、高圧の水が水ポンプ11の吐出ポート24から排出される。このように水ポンプ11が稼働すると、上記水源から水が連続して吸い上げられるから、高圧の水が水ポンプ11の吐出ポート24から連続して排出されることになる。
【0149】
水ポンプ11に水が到達していないとき、すなわち、水ポンプ11が呼び水を必要とするときは、方向切換バルブ51が第1接続パターンに切り換えられる。これにより、エゼクタ13によって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプ11に供給される。また、呼び水が水ポンプ11に供給されると、方向切換バルブ51は第2接続パターンに切り換えられる。これにより、エゼクタ13と水ポンプ11との接続が絶たれるから、エゼクタ13への浸水が防止される。しかも、このとき、エゼクタ13の吸込ポート29は、方向切換バルブ51を介して大気側と接続されるから、大気側から空気がエゼクタ13の吸込ポート29に吸い込まれ、エゼクタ13の第2ポートから排気される。これにより、エゼクタ13内に水が留まることがなく、空気と共に確実に排水される。その結果、水ポンプ11が特に寒冷地で使用される場合であっても、呼び水配管14内の凍結が防止される。
【0150】
上記圧力センサ20が水ポンプ11の吐出ポート24の近傍に配置されているから、吐出ポート24から排出された直後の水の圧力が検出される。前述のように、呼び水が水ポンプ11に供給されると直ちに高圧の水が吐出ポート24から排出されるので、呼び水の完了の前後において圧力センサ20が検出する圧力が大きく変化する。この圧力変化は、呼び水が水ポンプ11に供給されたことを示す信号となる。したがって、この信号に基づいてエゼクタ13への圧縮空気の供給が停止されることが可能であり、コンプレッサ17及びエゼクタ13の無駄な作動が抑制される。
【0151】
また、圧力センサ20が上記吐出ポート24の近傍に配置されているので、水ポンプ11の設置姿勢に関わらず呼び水が水ポンプ11に供給された直後に上記圧力変化が検出される。たとえば、上記水ポンプ11が傾いて設置されている場合、典型的には、水ポンプ11が消防自動車に搭載された場合であって、しかも傾斜地に駐車した状態で消火活動が行われる場合であっても、水ポンプ11への呼び水の供給が確実に検知される。その結果、エゼクタ13その他の水ポンプ周辺の補器類に浸水することが抑えられる。加えて、水ポンプ11もPTO12により駆動されるから、コンプレッサ17の作動に合わせて水ポンプ11も回転される。したがって、呼び水が水ポンプ11に到達する前に水ポンプ11が回転するから、呼び水の到着とほぼ同時に高圧放水が可能となる。つまり、揚水動作から高圧放水までに要する時間が短くなり、火災現場において迅速且つ効果的な初期消火が実現されるという利点もある。
【0152】
本実施形態では、制御装置53によって方向切換バルブ51が自動的に切り換えられ、開閉バルブ52が自動的に開閉される。方向切換バルブ51が第1接続パターンに切り換えられることによって、呼び水配管14を介して水ポンプ11への呼び水の供給が許容される。また、方向切換バルブ51が第2接続パターンに切り換えられることによって水ポンプ11への呼び水の供給が規制される共にエゼクタ13から排水される。他方、開閉バルブ52が開かれることによって、圧縮空気配管18を介してエゼクタ13への圧縮空気の供給が許容される。また、開閉バルブ52が閉じられることによってエゼクタ13への圧縮空気の供給が規制される。
【0153】
具体的には、水ポンプ11に水が到達していないとき、すなわち、水ポンプ11が呼び水を必要とするときは、圧力センサ20が上記一定圧力に満たない圧力を検出する。図8が示すように、この圧力信号が入力部77を介して制御部71へ入力される。制御部71は、この入力された圧力信号に基づいて所定の演算を行う。制御装置53は、出力部78から方向切換バルブ51が第1接続パターンに切り換える信号及び開閉バルブ52を開く信号を出力し、これに基づいて方向切換バルブ51が第1接続パターンに切り換わり、開閉バルブ52が開く。これにより、エゼクタ13に圧縮空気が自動的に供給され、エゼクタ13によって吸い込まれた水が呼び水として水ポンプ11に供給される。
【0154】
また、呼び水が水ポンプ11に供給されると直ちに高圧の水が排出されるから、このときに圧力センサ20が上記一定圧力以上の圧力を検出する。この圧力信号が入力部77を介して制御部71へ入力される。制御部71は、この入力された圧力信号に基づいて所定の演算を行う。制御装置53は、出力部78から方向切換バルブ51が第2接続パターンに切り換える信号及び開閉バルブ52を閉じる信号を出力し、これに基づいて方向切換バルブ51が第2接続パターンに切り換わり、開閉バルブ52が閉じる。本実施形態では、方向切換バルブ51が第2接続パターンに切り換える信号は、制御部71が圧力センサ20が上記一定圧力以上の圧力であることを示す圧力信号を入力した後、一定時間経過後に出力されるようにプログラムされている。この一定時間とは、たとえば0.5秒程度である。
【0155】
このように、水ポンプ11へ呼び水が供給された直後に自動的に方向切換バルブ51が切り換わると共に開閉バルブ52が閉じられてエゼクタ13が停止するので、コンプレッサ17及びエゼクタ13の無駄な作動が抑制されると共にエゼクタ13への浸水が確実に防止される。
【0156】
なお、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の変形例が採用され得る。すなわち、第1の変形例として、上記圧縮空気配管18に継ぎ手37(図3参照)が設けられ、この継ぎ手37を介して圧縮空気配管18に圧縮空気ボンベ38が接続されるようになっていてもよい。これにより、万一コンプレッサ17が故障した場合であっても、圧縮空気源として空気呼吸器のボンベが使用されるという利点がある。また、第2の変形例として、方向切換バルブ51とエゼクタ13との間にフィルタ39が設けられていてもよい。これにより、エゼクタ13に異物が侵入することが防止されるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明は、工場に設置され、あるいは消防自動車等に搭載された水ポンプに呼び水を供給する揚水装置に適用され得る。
【符号の説明】
【0158】
10・・・揚水装置
11・・・水ポンプ
12・・・PTO
13・・・エゼクタ
14・・・呼び水配管
15・・・ダイヤフラム式止水弁
16・・・逆止弁
17・・・コンプレッサ
18・・・圧縮空気配管
19・・・開閉バルブ
20・・・圧力センサ
21・・・制御装置
22・・・逆止弁
23・・・吸水ポート
24・・・吐出ポート
25・・・水源
27・・・第1ポート
28・・・第2ポート
29・・・吸込ポート
30・・・入力ポート
31・・・出力ポート
32・・・入力ポート
33・・・出力ポート
34・・・入力ポート
35・・・出力ポート
36・・・揚水装置
37・・・継ぎ手
38・・・圧縮空気ボンベ
40・・・揚水装置
41・・・第1開閉バルブ
42・・・第2開閉バルブ
43・・・制御装置
44・・・逆止弁
47・・・揚水装置
48・・・空圧式開閉バルブ
50・・・揚水装置
51・・・方向切換バルブ
52・・・開閉バルブ
53・・・制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水ポート及び吐出ポートを有し、所定の駆動源により駆動されることによって水源から吸水ポートへ水を吸い上げて加圧すると共に高圧の水を吐出ポートから排出する水ポンプに呼び水を供給するための揚水装置であって、
上記駆動源により駆動されることによって圧縮空気を生成するコンプレッサと、
圧縮空気が供給される第1ポート、当該圧縮空気が排出される第2ポート及び上記水ポンプの吸水ポート近傍に接続され、上記供給された圧縮空気によって負圧が生じる吸込ポートを有するエゼクタと、
上記水ポンプの吐出ポート近傍に配置され、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力を検出する圧力センサとを備えた揚水装置。
【請求項2】
上記水ポンプの吸水ポート近傍と上記エゼクタの吸込ポートとが呼び水配管により接続されており、
当該呼び水配管を開閉する第1開閉バルブと、
上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに上記第1開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記第1開閉バルブを開く制御装置とをさらに備える請求項1に記載の揚水装置。
【請求項3】
上記呼び水配管に接続され、常時開状態であり且つ上記吸込ポートに生じた負圧によって閉状態に変化する逆止弁がさらに設けられている請求項2に記載の揚水装置。
【請求項4】
上記コンプレッサと上記エゼクタの第1ポートとが圧縮空気配管により接続され、
当該圧縮空気配管を開閉する第2開閉バルブが設けられており、
上記制御装置は、上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに上記第2開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記第2開閉バルブを開くように構成されている請求項2又は3に記載の揚水装置。
【請求項5】
圧縮空気ボンベが接続され得る継ぎ手が上記圧縮空気配管に設けられている請求項4に記載の揚水装置。
【請求項6】
吸水ポート及び吐出ポートを有し、所定の駆動源によって駆動されることによって水源から吸水ポートへ水を吸い上げて加圧すると共に高圧の水を吐出ポートから排出する水ポンプに呼び水を供給するための揚水装置であって、
上記駆動源によって駆動されることによって圧縮空気を生成するコンプレッサと、
圧縮空気が供給される第1ポート、当該圧縮空気が排出される第2ポート及び上記水ポンプの吸水ポート近傍に接続され、上記供給された圧縮空気によって負圧が生じる吸込ポートを有するエゼクタと、
上記水ポンプの吸水ポート近傍と上記エゼクタの吸込ポートとを接続する呼び水配管と、
当該呼び水配管に設けられ、上記水ポンプの吸水ポート側と接続されるポンプポート、上記エゼクタの吸込ポート側と接続されるエゼクタポート及び大気側と連通する大気ポートを有し、少なくとも当該ポンプポート及びエゼクタポートを接続する第1接続パターンと当該エゼクタポート及び大気ポートを接続する第2接続パターンとの間で切換可能な切換バルブとを備えた揚水装置。
【請求項7】
上記水ポンプの吐出ポート近傍に配置され、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力を検出する圧力センサをさらに備える請求項6に記載の揚水装置。
【請求項8】
上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに上記切換バルブを第2接続パターンに切り換えると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記切換バルブを第1接続パターンに切り換える制御装置をさらに備える請求項7に記載の揚水装置。
【請求項9】
上記コンプレッサと上記エゼクタの第1ポートとが圧縮空気配管により接続され、
当該圧縮空気配管を開閉する開閉バルブが設けられており、
上記制御装置は、上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときに一定時間経過後に上記開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときに上記開閉バルブを開くように構成されている請求項8に記載の揚水装置。
【請求項10】
圧縮空気ボンベが接続され得る継ぎ手が上記圧縮空気配管に設けられている請求項9に記載の揚水装置。
【請求項11】
吸水ポート及び吐出ポートを有し、所定の駆動源によって駆動されることによって水源から吸水ポートへ水を吸い上げて加圧すると共に高圧の水を吐出ポートから排出する水ポンプに呼び水を供給するための揚水装置であって、
上記駆動源によって駆動されることによって圧縮空気を生成するコンプレッサと、
圧縮空気が供給される第1ポート、当該圧縮空気が排出される第2ポート及び上記水ポンプの吸水ポート近傍に接続され、上記供給された圧縮空気によって負圧が生じる吸込ポートを有するエゼクタと、
上記水ポンプの吸水ポート近傍と上記エゼクタの吸込ポートとを接続する呼び水配管と、
当該呼び水配管の上記水ポンプ側に設けられたダイヤフラム式止水弁と、
上記呼び水配管の上記エゼクタ側に設けられ、常時閉状態であり且つ上記吸込ポートに生じた負圧によって開状態に変化する第1逆止弁とを備えた揚水装置。
【請求項12】
上記水ポンプの吐出ポート近傍に配置され、当該吐出ポートから排出された直後の水の圧力を検出する圧力センサをさらに備える請求項11に記載の揚水装置。
【請求項13】
上記呼び水配管の上記第1逆止弁と上記エゼクタとの間に接続され、常時開状態であり且つ上記吸込ポートに生じた負圧によって閉状態に変化する第2逆止弁をさらに備える請求項11又は12に記載の揚水装置。
【請求項14】
上記コンプレッサと上記エゼクタの第1ポートとが圧縮空気配管により接続され、
当該圧縮空気配管を開閉する開閉バルブが設けられており、
上記圧力センサが一定圧力以上の圧力を検出したときは上記開閉バルブを閉じると共に上記圧力センサが当該一定圧力に満たない圧力を検出したときは上記開閉バルブを開く制御装置が備えられている請求項12又は13に記載の揚水装置。
【請求項15】
圧縮空気ボンベが接続され得る継ぎ手が上記圧縮空気配管に設けられている請求項14に記載の揚水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−163919(P2010−163919A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5729(P2009−5729)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000192073)株式会社モリタホールディングス (80)
【Fターム(参考)】