説明

搬送用ロボットの制御方法

【課題】基板を載せる搬送用ハンドのズレ量を検出して、搬送用ハンドが基板を収納するカセット等の他の周辺機器に衝突したり、搬送用ハンド自身が破損することを未然に防止する搬送用ロボットを提供すること。
【解決手段】本発明の搬送用ロボットは、ワークを搬送するための搬送用ロボットの制御方法において、前記搬送用ロボットのアーム先端に配置される搬送用ハンドを備え、前記搬送用ハンドに取り付けられた加速度センサと、前記加速度センサに接続されたコントローラとからなり、所望の位置にワークを搬送するために、前記搬送用ハンドを移動させるときの加速度の設定値を前記コントローラに予め記憶させておき、実際に前記搬送用ハンドがワークを搬送するときの加速度と前記初期状態のときの加速度とを比較して、前記比較したときの加速度の差分をリアルタイムで検出して搬送用ハンドの位置を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ロボットを駆動制御する際に搬送用ハンドの先端部のズレ量を検出してそのズレ量を補正する搬送用ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体や液晶の製造工程において、材料となる板状のワーク(以下、「基板」とも言う)の搬送には、搬送用ロボットが使用されている。そして、ロボットの手先(例えばアームの先端)には、基板と直接接触するハンドと呼ばれる部分が備えられている。この搬送用ハンドは、フォーク状の形状をしており、片持ち梁のように柄の部分(基部)がロボット本体(例えばアームの先端)に固定され、この搬送用ハンド上面に基板を載せるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−289664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、基板のサイズの大型化に対応するため、搬送用ハンドも大型化しているが、この大型化にともない搬送用ハンドの重量も大きくなり、そのため自重によって搬送用ハンド先端部が撓みを起こしていた。従来では、この撓みを抑制するために高硬度の材料を用いたり、ハンドの板材を厚くしたりすることで高剛性化を図ることが行われてきた。ところが、このような材料力学的、かつパッシブな方法を用いた場合には、撓み防止に限界があり、また、この撓み量(ズレ量)が大きくなってくると搬送用ハンドが基板を収納するカセット等の周辺機器に衝突したり、搬送用ハンド自身が破損するという問題も発生する。
【0005】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、基板を載せる搬送用ハンドのズレ量を検出して、搬送用ハンドが基板を収納するカセット等の他の周辺機器に衝突したり、搬送用ハンド自身が破損することを未然に防止する搬送用ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1に記載の搬送用ロボットは、ワークを搬送するための搬送用ロボットの制御方法において、前記搬送用ロボットのアーム先端に配置される搬送用ハンドを備え、前記搬送用ハンドに取り付けられた加速度センサと、前記加速度センサに接続されたコントローラとからなり、所望の位置にワークを搬送するために、前記搬送用ハンドを移動させるときの加速度の所定値を前記コントローラに予め記憶させておき、実際に前記搬送用ハンドがワークを搬送するときの加速度の値と前記加速度の所定値とを比較して、前記比較したときの加速度の差分をリアルタイムで検出して搬送用ハンドの位置を補正することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の搬送用ロボットの制御方法は、請求項1記載の搬送用ロボットの制御方法において、搬送用ロボットの前記加速度センサが、前記搬送用ハンドの基部側上面に備えられたことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の搬送用ロボットの制御方法は、請求項1記載の搬送用ロボットの制御方法において、搬送用ロボットの前記加速度センサが、ジャイロセンサからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
コントローラが搬送用ロボットの作動時に、搬送用ハンドに備えた加速度センサからの情報と予めコントローラに記憶させている加速度の所定値とを比較して、その加速度の値の差分から搬送用ハンドの位置を補正することで、搬送用ハンドのズレ量を補正する。このような補正を行うことで、搬送用ハンドが基板を収納するカセット等の他の周辺機器に衝突したり、搬送用ハンド自身が破損することを未然に防止することができる。
【0011】
また、搬送用ハンドに備えた加速度センサが、ハンドの基部側上面に備えられているために、基板を搬送用ハンドに載置するときに障害とはならない。
【0012】
また、加速度センサにジャイロセンサを備えることで搬送用ハンドの動作において、角速度の変化にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例に係る搬送用ロボットの一例であって、全体的な構成を示す概略構成図である。図2は本発明の搬送用ロボットの搬送用ハンドを水平方向に進退したときの図であって、そのときの搬送用ハンド先端部の撓み量を示す図である。図3は本発明の搬送用ロボットとコントローラとの信号の入出力関係を示す図である。
【0014】
まず、図1を用いて、本発明の実施例の搬送用ロボット1について、簡単に説明する。
搬送用ロボット1は、搬送用ハンド3と、第1アーム21と第2アーム22とからなるアーム2、基台4、および搬送用ハンド3とアーム2とを各々回動するモータ(図示省略)と、基台4上に搬送用ハンド3とアーム2とを昇降駆動するシリンダ(図示省略)とによって構成されている。
搬送用ロボット1において、搬送用ハンド3を適切な位置に移動させることによって搬送用ハンド3上に載置される基板を搬送する。搬送用ハンド3は、水平方向に進退可能、水平方向内で旋回可能、かつ、鉛直方向に昇降可能となっている。
【0015】
搬送用ハンド3は、フォーク状に形成され、その上面に基板10が載置される。搬送用ハンド3の基部31がアーム2の先端側である第2アーム22の一端側に支持されており、搬送用ハンド3は回動支軸51を中心に回動可能となっており、図示しないモータによって回動される。第2アーム22の他端側は第1アーム21の一端側に連結されており、第2アーム22と第1アーム21とによって関節52が形成されている。すなわち、アーム2は、関節52の部分で第1アーム21と第2アーム22とが連結されることによって形成されている。第2アーム22は関節52の部分に設けた図示しないモータによって第1アーム21に対して回動可能となっている。アーム2の基部側である第1アーム21の他端側は基台4の上面に支持されており、第1アーム21は基台4に対して回動支軸53を中心に回動可能となっており、図示しないモータによって回動される。
【0016】
搬送用ハンド3の基部31にはセンサ6が備えられており、このセンサ6によって搬送用ハンド3の動作の変化量を検出している。
本実施例のセンサには、加速度センサが用いられており、例えばジャイロセンサを使用して角速度の変化量を検出することで搬送用ハンドの動作の変化量を検出している。勿論、ジャイロセンサ以外の加速度センサを使用して、又は加速度センサ以外のセンサを使用して搬送用ハンドの動作の変化量を測定しても同様の効果を得ることができる。
【0017】
また、本発明のセンサ6の取付け位置は、搬送用ハンド3の基部31の上端に備えているが、上端に限らず、また基部31に限らず、搬送用ハンド3の動作量の変化を測定できる位置であればいかなる位置でもよい。
【0018】
第1アーム21と第2アーム22とは同じ長さに形成されており、関節52の角度(第1アーム21と第2アーム22のなす角度)が変更されることでアーム2が伸縮する。アーム2が伸縮することで、搬送用ハンド3は進退する。
搬送用ハンド3の進退機能は、このようにアーム2が伸縮することによって、搬送用ハンド3を基台4に対してその向き(姿勢)を保持したまま、図1の矢印Xに示す方向へ搬送用ハンド3を水平移動させる機能である。このとき、第1アーム21と第2アーム22とが回動することでアーム2が伸縮するとともに、搬送用ハンド2が回動することで搬送用ハンド3の基台4に対する向きを保持する。
【0019】
また、搬送用ハンド3の旋回機能は、アーム2が回動支軸53を中心に回動することによって旋回させる機能である。
【0020】
アーム2と搬送用ハンド3とは、基台4に上下に昇降可能に支持されている。基台4内には昇降用電動シリンダ(図示省略)が内蔵されており、この昇降用電動シリンダによってアーム2と搬送用ハンド3とが昇降移動する。
【0021】
以上の搬送用ハンド3の進退機能および旋回機能により、搬送用ハンド3上に載置された基板10の水平面内での位置が調整される。また、昇降機能によって、搬送用ハンド3上に載置された基板の高さ位置が調節される。こうして、搬送用ハンド3上の基板10を適切な位置に搬送するようにしている。なお、回動支軸51の部分、および関節52の部分にそれぞれモータを設置する構成に替えて、回動支軸53の部分に別のモータを設置し、タイミングベルトおよびプーリを用いてアーム2および搬送用ハンド3に動力を伝達することによって、搬送用ハンド3を進退させる構成としてもよい。
【0022】
次に、図2を用いて、搬送用ハンド3の先端のズレについて説明をする。
搬送用ハンド3は、基台4の回転支軸53を回動させることで第1アーム21を回動させ、関節52に連結された第2アーム22を回動させ、第2アームに連結された搬送用ハンド3を回動支軸51を中心に回動する。この一連の駆動によって搬送用ハンド3はX軸方向に進退する。このとき搬送用ハンド3は、図2に示すように、搬送用ハンド3自身の自重によって、破線で示す水平面から距離Lだけ実線で示す位置まで撓むこことなる。この撓み量は搬送用ハンド3が大型化するほど大きくなり、また、搬送用ロボットを長期間可動することで機械的な劣化の影響を受けてこの撓み量は大きくなる。
【0023】
図2に示すように、搬送用ハンド3をX軸方向に一定の速度と時間で所定の位置まで延伸させたときに、搬送用ハンド3の撓み量が少ないときをL0として、このときの加速度を予めコントローラに記憶しておく。次に、実際に搬送用ハンド3を前述した所定の位置に延伸させたときの加速度を搬送用ハンド3に備えたセンサ6によって検出して、この検出した加速度と予め記憶した加速度とを比較して、そのときの差分から搬送用ハンドの位置を補正する。例えば加速度の変化量が大きいときには撓み量が大きいとコントローラが認識して、搬送用ハンドの撓みを補正する方向に搬送用ロボットを駆動させる。
【0024】
次に、図3を用いて、本発明の搬送用ロボットとコントローラとの信号の入出力関係を説明する。
本発明のコントローラ7は、搬送用ロボット1に信号を送信して搬送用ロボット1が所定の動作を行うように駆動制御する。コントローラ7によって駆動制御される搬送用ロボット1は、搬送用ハンド3を水平方向に回動又は延伸させることができる。この搬送用ロボット1において、基板を所望の位置に搬送するために、搬送用ハンド3を例えばX軸方向に延伸させた場合、図2に示すように、搬送用ハンド3の先端が撓むこととなる。このとき搬送用ハンド3上に備えたセンサによって、搬送用ハンド3の加速度を検出する。通常、搬送用ロボット1を工場内等に設置した時に、予めこの初期状態のときの搬送用ハンド3の加速度をコントローラ7に記憶しておく。コントローラ7は、この記憶した加速度の値とロボットが実際に駆動した時の搬送用ハンド3を延伸したときの加速度とを比較して、その差分から搬送用ハンド3の撓み量を推測して搬送用ハンド3の位置を補正するように搬送用ロボット1に信号を送信する。
【0025】
通常、搬送用ロボット1を駆動制御する際には、予め位置設定をして駆動制御するティーチングプレイバックによって、搬送用ハンド3を所望の搬送位置に駆動させている。このとき、前述した加速度の所定値をティーチングポイント毎にコントローラ7に記憶させておき、実際に搬送用ハンド3を駆動制御させるときに、リアルタイムで加速度の差分を演算して搬送用ハンド3の位置を調整することができる。
【0026】
なお、本実施例において説明した予め記憶させる加速度の所定値は、搬送用ロボット1の大きさ、状態、周辺機器の状況等によって変化するものであり、理論値、予測値、経験値、実測値等から適宜、最適な値を設定する。
【0027】
このように、所定の位置に搬送用ハンド3を延伸するときに、予め記憶させる加速度の所定値と実際に搬送用ハンド3を駆動させたときの加速度の値とを比較してその差分から搬送用ハンド3の撓み量を求め、搬送用ハンド3の位置を補正することで搬送用ハンド3が基板を収納するカセット等の他の周辺機器に衝突したり、搬送用ハンド自身が破損することを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係る搬送用ロボットの概略構成図。
【図2】本発明の搬送用ハンドの撓み量を示す図。
【図3】本発明の搬送用ロボットとコントローラとの信号の入出力関係を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1 搬送用ロボット
2 アーム
3 搬送用ハンド
4 基台
6 センサ
7 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搬送するための搬送用ロボットの制御方法において、前記搬送用ロボットのアーム先端に配置される搬送用ハンドを備え、前記搬送用ハンドに取り付けられた加速度センサと、前記加速度センサに接続されたコントローラとからなり、所望の位置にワークを搬送するために、前記搬送用ハンドを移動させるときの加速度の所定値を前記コントローラに予め記憶させておき、実際に前記搬送用ハンドがワークを搬送するときの加速度の値と前記加速度の所定値とを比較して、前記比較したときの加速度の差分をリアルタイムで検出して前記搬送用ハンドの位置を補正することを特徴とする搬送用ロボットの制御方法。
【請求項2】
前記搬送用ロボットの前記加速度センサが、前記搬送用ハンドの基部側上面に備えられたことを特徴とする請求項1に記載の搬送用ロボットの制御方法。
【請求項3】
前記搬送用ロボットの前記加速度センサが、ジャイロセンサからなる請求項1に記載の搬送用ロボットの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−233789(P2009−233789A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82933(P2008−82933)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】