説明

搬送順序管理方法、搬送装置、生産ライン、及びシミュレーション装置

【課題】搬送カセットの搬送を複数の処理工程に対して行う搬送装置において、適切に搬送順序を定める方法を提案する。
【解決手段】各処理工程のそれぞれから投入情報、回収情報、入庫要求及び出庫要求を取得する取得ステップS1、S4、S7、S9と、投入情報が取得された場合には投入予約数以下であるか否かを判断し、回収庫待ち情報が取得された場合には回収予約数以下であるか否かを判断する判断ステップS2、S5と、投入予約数以下及び回収予約数以下の場合に、搬送予約を登録する予約登録ステップS3、S6と、搬送装置の搬送準備が整ったときS13に、入庫要求及び出庫要求の中から登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定ステップS14とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおける処理対象の搬送に関し、特に、複数の工程に対する処理対象の投入及び回収を効率良く行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な生産ラインにおいて、各処理工程間における処理対象の搬送を効率的に行うための工夫が成されてきた。
ここで、従来の生産ラインの一例として、6つの処理工程A〜Fと、各処理工程に対する処理対象の投入及び回収を時間をずらしながら行う1つの搬送装置Gとを備える生産ラインを想定する。
【0003】
上記従来の生産ラインにおいて、搬送装置Gは1つなので、処理工程A〜Fからの複数の投入及び回収の要求(以下「搬送要求」という)が頻繁に重なって発生する。
そこで、複数の搬送要求が重なって発生した場合に、順番を決める為の搬送ルールを定めておかなければならない。
特に、この搬送ルールの定め方いかんによって、生産ライン全体の処理効率が変わってくる場合があるので、前もってシミュレーション装置によりシミュレーションを行い適切な搬送ルールを定める必要がある。
【0004】
例えば自動倉庫の走行レールの延長上に特定品専用のステーションを設けた搬送システムが特許文献1に開示されており、物品間で搬送の順序を変えることができ、特急品等の搬送が容易になると記載されている。
【特許文献1】特開2002−60007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10は、上記従来の生産ラインにおける各処理工程に対する搬送に関する優先度設定の一例を示す図である。
上記従来の生産ラインにおいては、図10に示された優先度設定に基づいて、優先度設定値が小さい処理工程ほど優先度が高く、また、優先度設定値が同じ値の処理工程間においては、POS No.が小さい程、位置優先度が高いという搬送ルールが定められており、最終的な優先順位は、図中最下段に示したように固定的なものになる。
【0006】
このような搬送ルールでは、優先順位が固定的であるため、搬送要求が重なって発生する頻度が有る程度以上に多くなると、優先順位が低い処理工程には搬送の順番がほとんど回ってこない事になるので、生産ライン全体の処理効率が著しく低下する。
本発明は、複数の処理工程又は処理装置に対する処理対象の投入及び回収を効率良く行う為に、適切に処理対象の搬送順序を定めることができる搬送順序管理方法を提案し、また、当該搬送順序管理方法を実行する搬送装置、生産ライン、及び、シミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る搬送順序管理方法は、複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を複数の処理工程に対して時間をずらしながら行う際の搬送順序管理方法であって、前記複数の処理工程のそれぞれから、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を取得する取得ステップと、入庫待ち情報が取得された場合には当該入庫待ち情報により特定される数が予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には当該出庫待ち情報により特定される数が予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断ステップと、入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する処理工程を示す搬送予約を判断された順に登録する予約登録ステップと、搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から予約登録ステップにより登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る搬送装置は、複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を複数の処理工程に対して時間をずらしながら行う搬送装置であって、前記複数の処理工程のそれぞれから、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を取得する取得手段と、入庫待ち情報が取得された場合には当該入庫待ち情報により特定される数が予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には当該出庫待ち情報により特定される数が予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断手段と、入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する処理工程を示す搬送予約を判断された順に登録する予約登録手段と、搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求及び出庫要求の中から予約登録手段により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る生産ラインは、複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を複数の処理装置に対して時間をずらしながら行う搬送装置と当該複数の処理装置とにより構成される生産ラインであって、前記複数の処理装置は、それぞれ、前記搬送装置へ、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を出力する出力手段を備え、前記搬送装置は、前記複数の処理装置のそれぞれから、前記入庫要求、前記出庫要求、前記入庫待ち情報、及び、前記出庫待ち情報を取得する取得手段と、入庫待ち情報が取得された場合には当該入庫待ち情報により特定される数が予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には当該出庫待ち情報により特定される数が予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断手段と、入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する処理装置を示す搬送予約を判断された順に登録する予約登録手段と、搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から予約登録手段により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るシミュレーション装置は、複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を複数の処理装置に対して時間をずらしながら行う搬送装置と当該複数の処理装置とにより構成される生産ラインにおける動作をシミュレーションするシミュレーション装置であって、前記複数の処理装置をそれぞれシミュレーションする複数の疑似処理装置と、前記搬送装置の動作をシミュレーションする疑似搬送装置とから構成され、前記複数の疑似処理装置は、それぞれ、前記疑似搬送装置へ、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を疑似的に出力する出力手段と、順次処理対象を所定の時間かけて仮想的に加工して、前記入庫要求、前記出庫要求、前記入庫待ち情報、及び、前記出庫待ち情報の内容及び出力タイミングを管理する仮想加工手段とを備え、前記疑似搬送装置は前記複数の疑似処理装置のそれぞれから、前記入庫要求、前記出庫要求、前記入庫待ち情報、及び、前記出庫待ち情報を取得する取得手段と、入庫待ち情報が取得された場合には当該入庫待ち情報により特定される数が予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には当該出庫待ち情報により特定される数が予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断手段と、入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する疑似処理装置を示す搬送予約を判断された順に登録する予約登録手段と、搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から予約登録手段により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定手段と、搬送カセットを所定の時間かけて仮想的に搬送し各搬送のタイミングを管理する仮想搬送手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
課題を解決するための手段に記載した構成により、入庫予約、及び出庫予約を登録することにより優先順位が固定的でなくなるので、特定の処理工程や処理装置に搬送の順番がほとんど回ってこないといった事態が生じない。要は、本構成による入庫予約数や出庫予約数の設定は、従来の優先順位の設定のように、絶対的な優先順位を決めるものではなく、いわば優先される程度を設定するものであるので細やかな設定が可能である。また入庫予約数や出庫予約数が同程度の処理工程間や処理装置間においては、処理が遅い方が遅い程度に応じて優先的に搬送されることになるので好都合である。さらには事後的に処理能力の差が生じた場合でも設定を変更することなく自動的に、処理が遅くなった方が遅くなった程度に応じて優先的に搬送され、又は、処理が早くなった方が早くなった程度に応じて反優先的に搬送される。また、シミュレーション装置においては、設定の自由度が高いので、従来よりも適切な搬送ルールを定めることができる。
【0012】
従って、複数の処理工程や処理装置に対して適切に搬送カセットの搬送順序を定めることができ、処理対象の投入及び回収を効率良く行うことができる。
ここで、搬送順序管理方法において、前記取得ステップは、前記入庫待ち情報として各処理工程のそれぞれに入庫された搬送カセットにおける前記処理対象の投入残数を取得し、前記出庫待ち情報として各処理工程のそれぞれから出庫されるべき搬送カセットにおける前記処理対象の回収残数を取得し、前記判断ステップは、前記投入残数が前記入庫予約数以下であるか否かを判断し、前記回収残数が前記出庫予約数以下であるか否かを判断することを特徴とすることもできる。
【0013】
これにより、処理対象の投入残数を取得して入庫予約数とそのまま比較することができ、また、処理対象の回収残数を取得して出庫予約数とそのまま比較することができるので、判断処理が容易である。また、各搬送カセットにセットする処理対象の数が違っても優先度を同じにすることができる。
ここで、搬送順序管理方法において、前記取得ステップは、前記入庫待ち情報として各処理工程のそれぞれに入庫された搬送カセットにおける前記処理対象の投入数を取得し、前記出庫待ち情報として各処理工程のそれぞれから出庫されるべき搬送カセットにおける前記処理対象の回収数を取得し、前記判断ステップは、前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から前記投入数を差し引いた値が前記入庫予約数以下であるか否かを判断し、前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から前記完成数を差し引いた値が前記出庫予約数以下であるか否かを判断することを特徴とすることもできる。
【0014】
これにより、処理対象の投入数を取得し、これを搬送カセットの搬送数から差し引いた値と入庫予約数とを比較することができ、また、処理対象の回収数を取得し、これを搬送カセットの搬送数から差し引いた値と出庫予約数とを比較することができるので、各処理工程毎に演算をさせなくてもよくなり、また、標準よりも搬送数が多い搬送カセットを使用した場合には、当該搬送カセットを標準の搬送カセットよりも、搬送数の多さに応じて優先的に搬送させることもできる。また、各搬送カセットにセットする処理対象の数を変えることにより搬送カセット毎に優先度を変えることもできる。
【0015】
ここで、搬送順序管理方法において、前記取得ステップは、前記入庫待ち情報として各処理工程のそれぞれに入庫された搬送カセットから前記処理対象が1個投入されたことを当該処理対象が1個投入される毎に取得し、前記出庫待ち情報として各処理工程のそれぞれから出庫されるべき搬送カセットへ前記処理対象が1個回収されたことを当該処理対象が1個回収される毎に取得し、前記判断ステップは処理工程毎に、前記入庫待ち情報の取得回数をカウントし当該取得回数を前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から差し引いた値が前記入庫予約数以下であるか否かを判断し、前記出庫待ち情報の取得回数をカウントし当該取得回数を前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から差し引いた値が前記出庫予約数以下であるか否かを判断することを特徴とすることもできる。
【0016】
これにより、処理対象が1個投入される毎に取得される入庫待ち情報の取得回数をカウントし、これを搬送カセットの搬送数から差し引いた値と入庫予約数とを比較することができ、また、処理対象が1個回収される毎に取得される出庫待ち情報の取得回数をカウントし、これを搬送カセットの搬送数から差し引いた値と出庫予約数とを比較することができるので、各処理工程における出力処理を極めて単純にすることができ、また、標準よりも搬送数が多い搬送カセットを使用した場合には、当該搬送カセットを標準の搬送カセットよりも、搬送数の多さに応じて優先的に搬送させることもできる。また、各搬送カセットにセットする処理対象の数を変えることにより搬送カセット毎に優先度を変えることもできる。
【0017】
ここで、搬送順序管理方法において、前記搬送順序管理方法は、さらに、予め処理工程別に、前記入庫予約数、及、び前記出庫予約数の設定を受け付ける設定ステップを含み、前記判断ステップは、ある処理工程から出力された入庫待ち情報により特定される数が当該処理工程に対して設定された入庫予約数以下であるか否かを判断し、ある処理工程から出力された出庫待ち情報により特定される数が当該処理工程に対して設定された出庫予約数以下であるか否かを判断することを特徴とすることもできる。
【0018】
これにより、処理工程別に、入庫予約数と出庫予約数とを設定することができるので設定の自由度が高く、より適切な搬送ルールを定めることができる。
ここで、搬送順序管理方法において、前記設定ステップは、処理工程毎に実質的に前記出庫予約数が前記入庫予約数以上である設定のみを受け付けることを特徴とすることもできる。
【0019】
これにより、処理工程毎に、実質的に出庫予約数が入庫予約数以上となるので、各処理工程において入庫よりも出庫の方を優先させることができ、各処理工程に搬送カセットが溜まりにくくなるので好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1は、処理工程又は処理装置毎に処理待ち数を設定し、処理待ち数に応じたタイミングで搬送予約を行うことにより、従来よりも適切に処理対象の搬送順序を定めることができる搬送順序管理方法を提案する。
<構成>
図1は、本発明の実施の形態1における生産ライン100の物理的な構成の概要を示す図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施の形態1における生産ライン100は、例えば、液晶パネルを生産する生産ラインであり、処理工程110A〜110F、カセット棚120、及びストッカ130から構成される。
図2(a)は、処理対象1を示す図である。ここでは、処理対象1は例えば液晶パネルである。
【0022】
図2(b)は、所定数の処理対象1を収納し搬送することができる搬送カセット2を示す図である。ここでは一例として、搬送カセット2には20枚の処理対象1を収納し搬送することができるものとする。
処理工程110A〜110Fは、処理対象1を加工処理する処理場所又は処理装置であり、それぞれ、搬入口111A〜111F、加工部112A〜112F、搬出口113A〜113Fを備える。
【0023】
搬入口111A〜111Fにはそれぞれ、処理対象1が収納された搬送カセット2が入庫され、1つずつ処理対象1が取り出され、空の搬送カセット2が出庫される。

加工部112A〜112Fはそれぞれ、搬送カセット2から1つずつ取り出された処理対象1を加工する。
【0024】
搬出口113A〜113Fにはそれぞれ、空の搬送カセット2が入庫され、加工済みの処理対象1が搬送カセット2に1つずつ収納されて出庫される。
カセット棚120は、各処理途中の処理対象1が収納された搬送カセット2や空の搬送カセット2を一時待機させる複数の待機場所からなり、ストッカ130により、各処理途中の処理対象1が収納された搬送カセット2や空の搬送カセット2が各処理工程110A〜110Fから入庫され、各処理途中の処理対象1が収納された搬送カセット2や空の搬送カセット2が各処理工程110A〜110Fへ出庫される。
【0025】
ストッカ130は、各処理途中の処理対象1が収納された搬送カセット2や空の搬送カセット2を、各処理工程110A〜110Fとカセット棚120との間で搬送する搬送装置である。
例えば、処理工程110Aとカセット棚120との間においては、各処理途中の処理対象1が収納された搬送カセット2と空の搬送カセット2とが、以下のようにストッカ130により搬送される。
【0026】
(1)処理工程110Aによる加工前の処理対象1が収納された搬送カセット2が、カセット棚120から搬入口111Aへ搬送される。
(2)処理工程110Aにおいて空になった搬送カセット2が、搬入口111Aからカセット棚120へ搬送される。
(3)空の搬送カセット2が、カセット棚120から搬出口113Aへ搬送される。
【0027】
(4)加工部112Aによる加工後の処理対象1が収納された搬送カセット2が、搬出口113Aからカセット棚120へ搬送される。
同様に、他の処理工程110B〜110Fのそれぞれとカセット棚120との間においても、各処理途中の処理対象1が収納された搬送カセット2と空の搬送カセット2とがストッカ130により搬送される。
【0028】
以上のような複数の搬送処理が非同期に発生するので、本発明においては搬送順序を管理している。
以下に、本発明の搬送順序の管理方法について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における生産ライン200の機能的な構成の概要を示す図である。
【0029】
図3に示すように、本発明の生産ライン200は、処理部210A〜210F、カセット棚部220、及びストッカ部230から構成される。
処理部210A〜210Fはそれぞれ、処理工程110A〜110Fに対応しており、出力部211A〜211F、及び加工部212A〜212Fを含む。
カセット棚部220は、カセット棚120に対応しており、許可部221、要求受付部222、及び棚223を含む。
【0030】
ストッカ部230は、ストッカ130に対応しており、設定部231、取得部232、判断部233、予約登録部234、及び順序決定部235、及び搬送部236を含む。
出力部211A〜211Fはそれぞれ、ストッカ部230へ、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセットにおける処理対象1の投入待ちの数を特定させる投入情報、及び、搬送カセットにおける処理対象1の回収待ちの数を特定させる回収情報を出力する。
【0031】
ここで、入庫要求には、加工前の処理対象1が収納された搬送カセット2の入庫要求Aと、加工後の処理対象1を収納するための空の搬送カセット2の入庫要求Bとがある。
入庫要求Aは、各処理部において作業開始時や搬送カセット2に収納された加工前の処理対象1が全て取り出された時等のように、加工待ちの処理対象1が不足しているときに出力され、入庫要求Bは、各処理部において加工後の処理対象1が収納された搬送カセット2が搬出された後等のように、空の搬送カセット2が不足しているときに出力される。
【0032】
また、出庫要求には、加工前の処理対象1が全て投入されたために空になった搬送カセット2の出庫要求Aと、加工後の処理対象1が収納された搬送カセット2の出庫要求Bとがある。
出庫要求Aは、各処理部において搬送カセット2に収納された加工前の処理対象1が全て取り出された時等のように、空の搬送カセット2が余ったときに出力され、搬出要求Bは、各処理部において空の搬送カセット2に加工後の処理対象1が規定数収納された時等のように、加工後の処理対象1の出庫が可能となったときに出力される。
【0033】
実施の形態1の例では、投入情報は処理対象1の投入残数を示し、入庫要求A及び出庫要求Aに至るまでの処理対象1の処理待ち数に該当し、回収情報は処理対象1の回収残数を示し、入庫要求B及び出庫要求Bに至るまでの処理対象1の処理待ち数に該当する。
加工部212A〜212Fにはそれぞれ、搬送カセット2が入庫されると、順次処理対象を投入し、加工し、回収する。
【0034】
許可部221は、出力部211A〜211Fのそれぞれから、入庫要求を受け付けた場合には、該当する搬送カセットを供給可能なときにはすぐにその旨を取得部232へ連絡し、供給可能でないときには供給可能となるのを待ってその旨を取得部232へ連絡し、また、搬出要求を受け付けた場合には、該当する搬送カセットを収納可能なときにはすぐにその旨を取得部232へ連絡し、収納可能でないときには収納可能となるのを待ってその旨を取得部232へ連絡する。
【0035】
要求受付部222は、入庫指示を受け付けた場合に、該当する搬送カセットの供給場所を連絡し、出庫要求を受け付けた場合に、該当する搬送カセットの格納場所を連絡する。
棚223は、複数の搬送カセット2の保管場所であり、それぞれ搬送カセット2を1個入庫することができる。
設定部231は、予め、処理部別に、入庫用の投入予約数A、出庫用の投入予約数B、入庫用の回収予約数A、及び出庫用の回収予約数Bの設定を受け付ける。
【0036】
ここで、投入予約数A、及び投入予約数Bは、投入情報により特定される投入残数の敷居値を示し、回収予約数A、及び回収予約数Bは、回収情報により特定される回収残数の敷居値を示す。
また、投入予約数Aは入庫要求Aの優先度を決定し、投入予約数Bは出庫要求Aの優先度を決定し、回収予約数Aは入庫要求Bの優先度を決定し、回収予約数Bは出庫要求Bの優先度を決定する。
【0037】
図4は、本発明の生産ライン200における各処理部に対する搬送に関する優先度設定の一例を示す図である。
例えば、図4のような優先度設定用の画面がモニターに表示され、ユーザがこの画面を見ながら、画面内の投入予約数A、投入予約数B、回収予約数A、及び回収予約数Bを入力及び変更することによって、優先度設定が行われる。
【0038】
なお、各処理部別に、投入よりも回収の方を優先させると、処理対象1が溜まりにくくなり好都合なので、設定部231において、処理部毎に、実質的に回収予約数が投入予約数以上である設定のみを受け付けるようにしてもよい。
この様な場合には、ユーザが回収予約数が投入予約数未満である設定を行おうとした際に、単に入力を受け付けない様にしてもよいし、ユーザに対して警告メッセージ等を表示してもよいし、自動的に設定値を変更してもよい。
【0039】
また、各処理部別に、入庫よりも出庫の方を優先させると、搬送カセット2が溜まりにくくなり好都合なので、設定部231において、処理部毎に、実質的に出庫用の各予約数が入庫用の各予約数以上である設定のみを受け付けるようにしてもよい。
この様な場合には、ユーザが出庫用の予約数が入庫用の予約数未満である設定を行おうとした際に、単に入力を受け付けない様にしてもよいし、ユーザに対して警告メッセージ等を表示してもよいし、自動的に設定値を変更してもよい。
【0040】
取得部232は、出力部211A〜211Fのそれぞれから、入庫要求、出庫要求、投入情報、及び回収情報を取得し、また許可部221から、入庫要求された搬送カセットを供給可能である旨の連絡、及び、出庫要求された搬送カセットを格納可能である旨の連絡を取得する。
判断部233は、ある処理部から投入情報が取得された場合に、当該投入情報により特定される数が、当該処理部に対して設定部231により予め設定された投入予約数以下であるか否かを判断し、またある処理部から回収待ち情報が取得された場合には、当該回収待ち情報により特定される数が、当該処理部に対して設定部231により予め設定された回収予約数以下であるか否かを判断する。
【0041】
実施の形態1の例では、処理部別に、投入情報が取得された場合に、投入情報により特定される投入残数が、投入予約数A以下であるか否か、及び、投入予約数B以下であるか否か判断し、また、回収情報が取得された場合に、回収情報により特定される回収残数が、回収予約数A以下であるか否か、及び、回収予約数B以下であるか否か判断する。
予約登録部234は、判断部233により投入予約数以下であると判断された場合、及び、回収予約数以下であると判断された場合に、対応する処理部と対応する搬送要求とを示す搬送予約を、判断された順に登録する。
【0042】
実施の形態1の例では、投入予約数A以下であると判断された場合には入庫要求Aを、投入予約数B以下であると判断された場合には出庫要求Aを、回収予約数A以下であると判断された場合には入庫要求Bを、回収予約数B以下であると判断された場合には出庫要求Bを登録する。
順序決定部235は、1つの搬送動作が終了した時等のストッカ部230の搬送準備が整ったときに、取得された入庫要求であってかつ供給可能である旨の連絡を受けた未搬送のもの、及び、取得された出庫要求であってかつ格納可能である旨の連絡を受けた未搬送のものの中から、予約登録部234により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる。
【0043】
搬送部236は、順序決定部235により指示される順序で、搬送カセットを搬送する。
<動作>
図5は、本発明の実施の形態1における生産ライン200による搬送カセット2の搬送順序を管理し決定する処理の手順を示す図である。
【0044】
以下に図5を用いて、搬送カセット2の搬送順序を管理し決定する処理の手順を説明する。
(1)取得部232が、出力部211A〜211Fのいずれかから、投入情報を取得するまで待つ(ステップS1)。
ここでは例えば、処理部210Aの出力部211Aから投入情報を取得する。
【0045】
(2)投入情報が取得された場合には、判断部233が、投入情報により特定される数が、予め定められた投入予約数以下であるか否かを判断する(ステップS2)。
ここでは例えば、出力部211Aから取得した投入情報により特定される投入残数が、図4に示す処理部210Aの投入予約数Aの欄に設定されている「8」以下であるか否か、及び、処理部210Aの投入予約数Bの欄に設定されている「7」以下であるか否かを判断する。
【0046】
(3)投入予約数以下である場合は、予約登録部234が、搬送予約を判断順に登録する(ステップS3)。
ここでは例えば、出力部211Aから取得した投入情報により特定される投入残数が、投入予約数「8」以下である場合に処理部210Aの入庫要求Aの搬送予約を登録し、また、投入予約数「7」以下である場合に処理部210Aの出庫要求Aの搬送予約を登録する。
【0047】
(4)取得部232が、出力部211A〜211Fのいずれかから、回収情報を取得するまで待つ(ステップS4)。
ここでは例えば、処理部210Aの出力部211Aから回収情報を取得する。
(5)回収情報が取得された場合には、判断部233が、回収情報により特定される数が、予め定められた回収予約数以下であるか否かを判断する(ステップS5)。
【0048】
ここでは例えば、出力部211Aから取得した回収情報により特定される回収残数が、図4に示す処理部210Aの回収予約数Aの欄に設定されている「12」以下であるか否か、及び、処理部210Aの回収予約数Bの欄に設定されている「11」以下であるか否かを判断する。
(6)回収予約数以下である場合は、予約登録部234が、搬送予約を判断順に登録する(ステップS6)。
【0049】
ここでは例えば、出力部211から取得した回収情報により特定される回収残数が、回収予約数「12」以下である場合に処理部210Aの入庫要求Bの搬送予約を登録し、また、回収予約数「11」以下である場合に処理部210Aの出庫要求Bの搬送予約を順に登録する。
(7)許可部221が、出力部211A〜211Fのいずれかから、入庫要求A、及び入庫要求Bを取得するまで待つ(ステップS7)。
【0050】
ここでは、例えば、処理部210Aの出力部211から入庫要求Aを取得する。
(8)入庫要求A、及び入庫要求Bの何れかが取得された場合には、許可部221が、該当する搬送カセット2を供給可能なときにその旨を取得部232へ連絡する。ここで許可部221は、供給可能でないときは供給可能になるまで監視を続け、供給可能になるのを待ってその旨を連絡する(ステップS8)。
【0051】
(9)許可部221が、出力部211A〜211Fのいずれかから、出庫要求A、及び出庫要求Bを取得するまで待つ(ステップS9)。
(10)出庫要求A、及び出庫要求Bの何れかが取得された場合には、許可部221が、該当する搬送カセット2を格納可能なときにその旨を取得部228へ連絡する。ここで許可部221は、格納可能でないときは格納可能になるまで監視を続け、格納可能になるのを待ってその旨を連絡する(ステップS10)。
【0052】
(11)取得部232が、許可部221から、供給可能になった入庫要求A、及び入庫要求Bの連絡、及び格納可能になった出庫要求A、及び出庫要求Bの連絡を取得するまで待つ(ステップS11)。
(12)供給可能になった入庫要求A、及び入庫要求Bの連絡が取得された場合、及び、格納可能になった出庫要求A、及び出庫要求Bの連絡が取得された場合には、順序決定部235が、取得された搬送要求を、搬送待ち対象として順不同に登録する(ステップS12)。
【0053】
(13)順序決定部235が、ストッカ部230の搬送準備が整うまで待つ(ステップS13)。
(14)ストッカ部230の搬送準備が整った場合に、順序決定部235が、搬送待ち対象の中で、予約登録部234により登録された順が最も早い搬送予約に対応する搬送要求に対する搬送を開始させ、当該搬送要求を搬送待ち対象から外す(ステップS14)。
【0054】
<まとめ>
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、処理工程又は処理装置毎に、さらには、搬送要求毎に処理待ち数を設定することができるので、従来よりも適切に処理対象の搬送順序を定めることができる。特に、事後的に処理能力に変動が生じた場合においては、設定を変更することなく自動的に、処理が遅くなった程度に応じて優先度が高くなり、また処理が早くなった程度に応じて優先度が低くなるという自動調整機能が備わっている。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1の生産ライン100において、予め適切な搬送ルールを定める際に使用するシミュレーション装置である。
【0055】
<構成>
図6は、本発明の実施の形態1におけるシミュレーション装置300の機能的な構成の概要を示す図である。
図6に示すように、本発明の実施の形態2におけるシミュレーション装置300は、例えば、液晶パネルを生産する生産ラインの搬送順位の設定値を定める為のシミュレーション装置であり、疑似処理部310A〜310F、疑似カセット棚部320、疑似ストッカ部330、及び表示部340から構成される。
【0056】
なお、実施の形態1と同様の処理を行う構成要素には同一番号を付し、その説明を省略する。
疑似処理部310A〜310Fはそれぞれ、処理部210A〜210Fの仮想モデルであって、例えば汎用のコンピュータで独立に時分割で動作するアプリケーションプログラムであり、出力部211A〜211Fを含み、また加工部212A〜212Fの代わりに仮想加工部311A〜311Fを含む。
【0057】
疑似カセット棚部320は、カセット棚部220の仮想モデルであって、例えば汎用のコンピュータで独立に動作するアプリケーションプログラムあり、許可部221、及び要求受付部222を含み、また棚223の代わりに仮想棚部321を含む。
疑似ストッカ部330は、ストッカ部230の仮想モデルであって、例えば汎用のコンピュータで独立に動作するアプリケーションプログラムあり、設定部231、取得部232、判断部233、予約登録部234、及び順序決定部235を含み、また、搬送部236の代わりに仮想搬送部331を含む。
【0058】
表示部340は、疑似処理部310A〜310F、疑似カセット棚部320、及び疑似ストッカ部330による疑似動作の様子をユーザに対して表示したり、各設定を受け付ける際に用いられる。
仮想加工部311A〜311Fにはそれぞれ、処理対象一枚あたりの仮想投入時間、仮想加工時間、仮想回収時間等を予め設定することができ、仮想的に搬送カセット2が入庫されると、順次処理対象を、仮想投入時間かけて仮想的に投入し、仮想加工時間かけて仮想的に加工し、仮想回収時間かけて仮想的に回収して、入庫要求、出庫要求、投入情報、及び回収情報の内容及び出力タイミングを管理する。
【0059】
また、例えば変動率を設定し、変動率×乱数分を加減算する等の方法により仮想加工時間をランダムに変動させてもよい。
仮想棚部321は、棚の数を設定することができ、設定した数を上限とする各変数にそれぞれ、搬送カセット2を1個、仮想的に入庫することができる。
なお、疑似カセット棚部320による仮想動作は、カセット棚部220による実動作と同様である。
【0060】
仮想搬送部331には、実測等により求めた各移動場所間の仮想搬送時間が予め設定され、仮想搬送部331は、搬送カセット2を対応する仮想搬送時間かけて仮想的に搬送し、各搬送のタイミングを管理する。ここでは疑似処理部310A〜310Fのそれぞれ毎に、入庫要求A、入庫要求B、出庫要求A、及び出庫要求Bがあるので、24種類の搬送要求がある。仮想搬送部331には、この24種類の搬送要求毎に仮想搬送時間が設定されており、ユーザはこの設定を任意に変えることができる。
【0061】
<動作>
図7、図8は、疑似処理部310A〜310Fのうちの1つによる仮想動作の手順を示す図である。
以下に図7、図8を用いて、疑似処理部310A〜310Fのうちの1つによる仮想動作の手順を説明する。
【0062】
(1)全フラグをリセットした後、入庫フラグAをセットし、入庫フラグBをセットし、疑似ストッカ部330へ、入庫要求A、及び入庫要求Bを出力し、加工許可フラグをセットする(ステップS21)。
(2)入庫フラグAがセットされているか?(ステップS22)。
(3)入庫フラグAがセットされている場合は、疑似ストッカ部330により仮想的に、加工前の処理対象1が収納された搬送カセット2が入庫されるまで待つ(ステップS23)。
【0063】
(4)入庫フラグBがセットされているか?(ステップS24)。
(5)入庫フラグBがセットされている場合は、疑似ストッカ部330により仮想的に、空の搬送カセット2が入庫されるまで待つ(ステップS25)。
(6)出庫フラグAがセットされているか?(ステップS26)。
(7)出庫フラグAがセットされている場合は、疑似ストッカ部330により仮想的に、空の搬送カセット2が出庫されるまで待つ(ステップS27)。

(8)出庫フラグBがセットされているか?(ステップS28)。
【0064】
(9)出庫フラグBがセットされている場合は、疑似ストッカ部330により仮想的に、加工後の処理対象1が収納された搬送カセット2が出庫されるまで待つ(ステップS29)。
(10)投入許可フラグがセットされ、加工許可フラグがセットされているか?(ステップS30)。
【0065】
(11)投入フラグがセットされているか?(ステップS31)。
(12)投入フラグがセットされている場合は、仮想投入時間が経過したか?(ステップS32)。
(13)加工フラグがセットされ、回収許可フラグがセットされているか?(ステップS33)。
【0066】
(14)加工フラグセットされ、回収許可フラグがセットされている場合は、仮想加工時間が経過したか?(ステップS34)。
(15)回収フラグがセットされているか?(ステップS35)。
(16)回収フラグがセットされている場合は、仮想回収時間が経過したか?(ステップS36)。
【0067】
(17)投入ゼロフラグがセットされ、出庫フラグAがリセットか?(ステップS37)。
(18)回収ゼロフラグがセットされ、出庫フラグBがリセットか?(ステップS38)。
(19)仮想的に加工前の処理対象1が収納された搬送カセット2が入庫されると、入庫フラグAをリセットし、投入残数を初期値に設定し、投入許可フラグをセットする。(ステップS39)。
【0068】
ここでは投入残数に初期値「20」を設定する。
(20)仮想的に空の搬送カセット2が入庫されると、入庫フラグBをリセットし、回収残数を初期値に設定し、回収許可フラグをセットする(ステップS40)。
ここでは回収残数に初期値「20」を設定する。
(21)仮想的に空の搬送カセット2が出庫されると、出庫フラグAをリセットする(ステップS41)。
【0069】
(22)仮想的に加工後の処理対象1が収納された搬送カセット2が出庫されると、出庫フラグBをリセットする(ステップS42)。
(23)投入許可フラグがセット、加工許可フラグがセットなら、加工許可フラグをリセットし、投入フラグをセットし、仮想投入時間の計測を開始する(ステップS43)。
(24)仮想投入時間が経過したと判断した場合は、その計測を終了し、投入フラグをリセットし、投入残数をデクリメントし、加工フラグをセットし、仮想加工時間の計測を開始する(ステップS44)。
【0070】
(25)投入残数がゼロか否かを判断する(ステップS45)。
(26)投入残数がゼロでない場合は、投入残数を疑似ストッカ部330へ出力する(ステップS46)。
(27)投入残数がゼロの場合は、投入許可フラグをリセットし、投入ゼロフラグをセットする(ステップS47)。
【0071】
(28)仮想加工時間が経過したと判断した場合は、その計測を終了し、回収フラグをセットし、仮想回収時間の計測を開始し、加工フラグをリセットし、加工許可フラグをセットする(ステップS48)。
(29)仮想回収時間が経過したと判断した場合は、その計測を終了し、回収フラグをリセットし、投回収数をデクリメントする(ステップS49)。
【0072】
(30)回収残数がゼロか否かを判断する(ステップS50)。
(31)回収残数がゼロでない場合は、回収残数を疑似ストッカ部330へ出力する(ステップS51)。
(32)回収残数がゼロの場合は、回収許可フラグをリセットし、回収ゼロフラグをセットする(ステップS52)。
【0073】
(33)投入ゼロフラグがセット、出庫フラグAがリセットなら、投入ゼロフラグをリセット、入庫フラグAをセット、出庫フラグAをセットし、入庫要求A、及び出庫要求Aを出力する(ステップS53)。
(34)回収ゼロフラグがセット、出庫フラグBがリセットなら、回収ゼロフラグをリセット、入庫フラグBをセット、出庫フラグBをセットし、入庫要求B、及び出庫要求Bを出力する(ステップS54)。
【0074】
ここで、疑似ストッカ部330による搬送カセット2の搬送順序を管理し決定する処理の手順は、実施の形態1の図5と同様なのでその説明を省略する。
図9は、仮想搬送部331による仮想動作の手順を示す図である。
以下に図9を用いて、仮想搬送部331による仮想動作の手順を説明する。
(1)仮想搬送部331が、順序決定部235から、搬送開始の指示を受けるまで待つ(ステップS61)。
【0075】
(2)搬送開始の指示を受けると、対応する仮想搬送時間だけ待つ(ステップS62)。
(3)仮想搬送時間が経過したら、順序決定部235へストッカ部230の搬送準備が整った旨を連絡し、搬送要求に対応する疑似処理部へ当該搬送要求に対応する搬送動作が終了した旨を連絡する(ステップS63)。
【0076】
<まとめ>
以上のように、本発明の実施の形態2によれば、実施の形態1の生産ライン100における適切な搬送ルールを、予めシミュレーションにより定めることができる。
(変形例)
なお、各実施の形態においては、投入情報の一例として処理対象1の投入残数を示し、回収情報は処理対象1の回収残数を示したが、それぞれの搬送要求に至るまでの処理待ち数を特定させる値であれば、どの様な値でもよい。
【0077】
例えば投入情報は処理対象1の投入数とし、回収情報は処理対象1の完成数とすることもできる。
このような場合には、判断部233は、投入情報により特定される投入残数が投入予約数A以下であるか否か及び、投入予約数B以下であるか否かを判断するのではなく、搬送カセットが搬送することができる処理対象の数から、投入情報により特定される投入数を差し引いた値が投入予約数A以下であるか否か及び、投入予約数B以下であるか否かを判断することになり、同様に、回収情報により特定される回収残数が、回収予約数A以下であるか否か、及び、回収予約数B以下であるか否か判断するのではなく、搬送カセットが搬送することができる処理対象の数から、回収情報により特定される回収数を差し引いた値が回収予約数A以下であるか否か、及び、回収予約数B以下であるか否か判断することになる。
【0078】
また例えば、投入情報は処理対象が1個投入されたこととし、処理対象が1個投入される度に出力され、回収情報は処理対象が1個回収されたこととし、処理対象が1個回収される度に出力されるものであってもよい。
このような場合には、判断部233は、投入情報により特定される投入残数が投入予約数A以下であるか否か及び、投入予約数B以下であるか否かを判断するのではなく、投入情報の取得回数をカウントし、搬送カセットが搬送することができる処理対象の数からここでカウントした取得回数を差し引いた値が、投入予約数A以下であるか否か及び、投入予約数B以下であるか否かを判断することになり、同様に、回収情報により特定される回収残数が、回収予約数A以下であるか否か、及び、回収予約数B以下であるか否か判断するのではなく、回収情報の取得回数をカウントし、搬送カセットが搬送することができる処理対象の数からここでカウントした取得回数を差し引いた値が、回収予約数A以下であるか否か、及び、回収予約数B以下であるか否か判断することになる。
【0079】
また、各処理工程において、処理対象を全て投入して空になった搬送カセットを出入庫することなく回収用に流用する機構を備える場合や、処理対象を投入している搬送カセットの空いている場所に加工後の処理対象を回収する場合等のように、空の搬送カセットの搬送を必要としない場合もあり、この様な場合には、当然ながら本願のストッカは空の搬送カセットを搬送せず、上記各実施の形態から空の搬送カセットに関する処理を削除した構成及び動作となる。
【0080】
また、コンピュータに、本実施の形態1、実施の形態2、及び変形例のような動作を実行させることができるプログラムがコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、この記録媒体が流通し取り引きの対象となり得る。また、当該プログラムは、例えばネットワーク等を介して流通して取り引きの対象となり得、また、表示装置に表示されたり印刷されて、利用者に提示されることもあり得る。
【0081】
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、MO、DVD、メモリカード等の着脱可能な記録媒体、及び、ハードディスク、半導体メモリ等の固定記録媒体等であり、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、液晶パネルの製造等のように搬送カセットを用いる製造ラインにおいて広く適用することができる。本発明によって、複数の処理工程又は処理装置に対する搬送カセットの投入及び回収を効率良く行い、また適切に搬送カセットの搬送順序を定めることができ、その産業的利用価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態1における生産ライン100の物理的な構成の概要を示す図である。
【図2】図2(a)は、処理対象1を示す図である。ここでは、処理対象1は例えば液晶パネルである。
【0084】
図2(b)は、所定数の処理対象1を収納し搬送することができる搬送カセット2を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における生産ライン200の機能的な構成の概要を示す図である。
【図4】本発明の生産ライン200における各処理部に対する搬送に関する優先度設定の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における生産ライン200による搬送カセット2の搬送順序を管理し決定する処理の手順を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるシミュレーション装置300の機能的な構成の概要を示す図である。
【図7】疑似処理部310A〜310Fのうちの1つによる仮想動作の手順を示す図である。
【図8】疑似処理部310A〜310Fのうちの1つによる仮想動作の手順を示す図である。
【図9】仮想搬送部331による仮想動作の手順を示す図である。
【図10】上記従来の生産ラインにおける各処理工程に対する搬送に関する優先度設定の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
100 生産ライン
110A〜110F 処理工程
111A〜111F 搬入口
112A〜112F 加工部
113A〜113F 搬出口
120 カセット棚
130 ストッカ
200 生産ライン
210A〜210F 処理部
211A〜211F 出力部
212A〜212F 加工部
220 カセット棚部
221 許可部
222 要求受付部
223 棚
230 ストッカ部
231 設定部
232 取得部
233 判断部
234 予約登録部
235 順序決定部
236 搬送部
300 シミュレーション装置
310A〜310F 疑似処理部
311A〜311F 仮想加工部
320 疑似カセット棚部
321 仮想棚部
330 疑似ストッカ部
331 仮想搬送部
340 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を、複数の処理工程に対して、時間をずらしながら行う際の搬送順序管理方法であって、
前記複数の処理工程のそれぞれから、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を取得する取得ステップと、
入庫待ち情報が取得された場合には、当該入庫待ち情報により特定される数が、予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には、当該出庫待ち情報により特定される数が、予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断ステップと、
入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する処理工程を示す搬送予約を、判断された順に登録する予約登録ステップと、
搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から、予約登録ステップにより登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定ステップと
を含むことを特徴とする搬送順序管理方法。
【請求項2】
前記取得ステップは、
前記入庫待ち情報として、各処理工程のそれぞれに入庫された搬送カセットにおける前記処理対象の投入残数を取得し、
前記出庫待ち情報として、各処理工程のそれぞれから出庫されるべき搬送カセットにおける前記処理対象の回収残数を取得し、
前記判断ステップは、
前記投入残数が、前記入庫予約数以下であるか否かを判断し、
前記回収残数が、前記出庫予約数以下であるか否かを判断すること
を特徴とする請求項1に記載の搬送順序管理方法。
【請求項3】
前記取得ステップは、
前記入庫待ち情報として、各処理工程のそれぞれに入庫された搬送カセットにおける前記処理対象の投入数を取得し、
前記出庫待ち情報として、各処理工程のそれぞれから出庫されるべき搬送カセットにおける前記処理対象の回収数を取得し、
前記判断ステップは、
前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から、前記投入数を差し引いた値が、前記入庫予約数以下であるか否かを判断し、
前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から、前記完成数を差し引いた値が、前記出庫予約数以下であるか否かを判断すること
を特徴とする請求項1に記載の搬送順序管理方法。
【請求項4】
前記取得ステップは、
前記入庫待ち情報として、各処理工程のそれぞれに入庫された搬送カセットから前記処理対象が1個投入されたことを、当該処理対象が1個投入される毎に取得し、
前記出庫待ち情報として、各処理工程のそれぞれから出庫されるべき搬送カセットへ前記処理対象が1個回収されたことを、当該処理対象が1個回収される毎に取得し、
前記判断ステップは、処理工程毎に、
前記入庫待ち情報の取得回数をカウントし、当該取得回数を、前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から差し引いた値が、前記入庫予約数以下であるか否かを判断し、
前記出庫待ち情報の取得回数をカウントし、当該取得回数を、前記搬送カセットが収納することができる処理対象の数から差し引いた値が、前記出庫予約数以下であるか否かを判断すること
を特徴とする請求項1に記載の搬送順序管理方法。
【請求項5】
前記搬送順序管理方法は、さらに、
予め、処理工程別に、前記入庫予約数、及び、前記出庫予約数の設定を受け付ける設定ステップを含み、
前記判断ステップは、
ある処理工程から出力された入庫待ち情報により特定される数が、当該処理工程に対して設定された入庫予約数以下であるか否かを判断し、ある処理工程から出力された出庫待ち情報により特定される数が、当該処理工程に対して設定された出庫予約数以下であるか否かを判断すること
を特徴とする請求項1に記載の搬送順序管理方法。
【請求項6】
前記設定ステップは、
処理工程毎に、実質的に、前記出庫予約数が、前記入庫予約数以上である設定のみを受け付けること
を特徴とする請求項5に記載の搬送順序管理方法。
【請求項7】
複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を、複数の処理工程に対して、時間をずらしながら行う搬送装置であって、
前記複数の処理工程のそれぞれから、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を取得する取得手段と、
入庫待ち情報が取得された場合には、当該入庫待ち情報により特定される数が、予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には、当該出庫待ち情報により特定される数が、予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断手段と、
入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する処理工程を示す搬送予約を、判断された順に登録する予約登録手段と、
搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から、予約登録手段により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定手段と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を、複数の処理装置に対して、時間をずらしながら行う搬送装置と、当該複数の処理装置とにより構成される生産ラインであって、
前記複数の処理装置は、それぞれ、
前記搬送装置へ、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を出力する出力手段を備え、
前記搬送装置は、
前記複数の処理装置のそれぞれから、前記入庫要求、前記出庫要求、前記入庫待ち情報、及び、前記出庫待ち情報を取得する取得手段と、
入庫待ち情報が取得された場合には、当該入庫待ち情報により特定される数が、予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には、当該出庫待ち情報により特定される数が、予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断手段と、
入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する処理装置を示す搬送予約を、判断された順に登録する予約登録手段と、
搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から、予約登録手段により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定手段とを備えること
を特徴とする生産ライン。
【請求項9】
複数の処理対象を収納することができる搬送カセットの搬送を、複数の処理装置に対して、時間をずらしながら行う搬送装置と、当該複数の処理装置とにより構成される生産ラインにおける動作をシミュレーションするシミュレーション装置であって、
前記複数の処理装置をそれぞれシミュレーションする複数の疑似処理装置と、
前記搬送装置の動作をシミュレーションする疑似搬送装置とから構成され、
前記複数の疑似処理装置は、それぞれ、
前記疑似搬送装置へ、搬送カセットの入庫要求、搬送カセットの出庫要求、搬送カセット単位で当該入庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる入庫待ち情報、及び、搬送カセット単位で当該出庫要求に至るまでの処理対象の処理待ち数を特定させる出庫待ち情報を疑似的に出力する出力手段と、
順次処理対象を、所定の時間かけて仮想的に加工して、前記入庫要求、前記出庫要求、前記入庫待ち情報、及び、前記出庫待ち情報の内容及び出力タイミングを管理する仮想加工手段とを備え、
前記疑似搬送装置は、
前記複数の疑似処理装置のそれぞれから、前記入庫要求、前記出庫要求、前記入庫待ち情報、及び、前記出庫待ち情報を取得する取得手段と、
入庫待ち情報が取得された場合には、当該入庫待ち情報により特定される数が、予め定められた入庫予約数以下であるか否かを判断し、出庫待ち情報が取得された場合には、当該出庫待ち情報により特定される数が、予め定められた出庫予約数以下であるか否かを判断する判断手段と、
入庫予約数以下であると判断された場合、及び、出庫予約数以下であると判断された場合に、入庫、出庫のいずれであるか、及び、対応する疑似処理装置を示す搬送予約を、判断された順に登録する予約登録手段と、
搬送準備が整ったときに、取得されている入庫要求、及び、出庫要求の中から、予約登録手段により登録された順が最も早い搬送予約に対応する要求に対する搬送を開始させる順序決定手段と、
搬送カセットを所定の時間かけて仮想的に搬送し、各搬送のタイミングを管理する仮想搬送手段とを備えること
を特徴とするシミュレーション装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−160487(P2006−160487A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356782(P2004−356782)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】