携帯型RFIDタグ読取器
【課題】通信エリア内に複数のRFIDタグが存在しても、所望のRFIDタグと通信可能で、しかも、大型化を回避することができる携帯型RFIDタグ読取器を提供する。
【解決手段】送信アンテナ7と受信アンテナ8が交差角を変化可能になっており、その交差角を変化させることによって、それら両アンテナ7,8の指向性が交差し、且つ、交差する指向性の範囲が変化するので、情報読み取りを行いたいRFIDタグを両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲内に入るようにアンテナを動かせば、そのRFIDタグと通信することができる。
【解決手段】送信アンテナ7と受信アンテナ8が交差角を変化可能になっており、その交差角を変化させることによって、それら両アンテナ7,8の指向性が交差し、且つ、交差する指向性の範囲が変化するので、情報読み取りを行いたいRFIDタグを両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲内に入るようにアンテナを動かせば、そのRFIDタグと通信することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグと電波による無線通信を行ってRFIDタグから情報を読み取る携帯型RFIDタグ読取器に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグの通信システムでは、読取器から質問波を発すると、RFIDタグは質問波を受信して電力供給を受け、十分な電力が得られると動作を開始して応答波を返信する。最近の読取器、特にUHF帯(950MHz帯)の電波を用いる読取器では、数m先のRFIDタグと通信可能で、その通信エリアは、遠方、広範囲となっている。
ところが、RFIDタグが読取器の通信エリア内に複数存在すると、通信エリア内の複数のRFIDタグが質問波を受信して応答波を返信するため、読取器が思いもよらないRFIDタグの情報を読み取ってしまうという不具合を生ずる。
【0003】
このような問題を解消するために、特許文献1では、質問器に2つの送信アンテナと、1つの受信アンテナを設け、2つの送信アンテナのうちの一方の送信アンテナから、周波数f1の搬送波を送信データで変調した質問波を第1質問波として送信し、他方の送信アンテナから、周波数f2の無変調の搬送波を第2質問波として送信するようにし、且つそれら2つの送信アンテナの指向性を可変制御することによって、第1質問波と第2質問波が重なる地点に存在するRFIDタグだけが応答波を返信するように構成している。
【特許文献1】特開2006−121156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の質問器では、2つの送信アンテナと1つの受信アンテナを必要とし、しかも、2つの送信アンテナからは、互いに異なる周波数f1,f2の電波を送信しなければならないため、異なる周波数f1,f2の電波を送信する回路装置が複雑になる。このため、質問器全体として大型になり勝ちで、携帯型RFIDタグ読取器には適用が難しい。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、通信エリア内に複数のRFIDタグが存在しても、所望のRFIDタグと通信可能で、しかも、大型化を回避することができる携帯型RFIDタグ読取器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、送信アンテナと受信アンテナのうちの少なくとも一方が可動で、その一方のアンテナを動かすことにより、それら両アンテナの指向性が交差し、且つ、交差する指向性の範囲が変化するので、情報読み取りを行いたいRFIDタグを両アンテナの指向性が交差する範囲内に入るようにアンテナを動かせば、そのRFIDタグと通信することができる。
【0007】
請求項2の発明では、送信アンテナと受信アンテナの指向性が交差する範囲を変化させたとき、交信したRFIDタグを、交差する指向性の範囲を変化させた領域との関係で表示するので、情報読み取りを行いたいRFIDタグと通信する際に、そのRFIDタグが両アンテナの指向性の交差する範囲内に入るようにアンテナを動かし易くなる。
請求項3の発明では、送信アンテナから送信される電波の強さを変更することができるので、電波強度を大きくすることによって遠方のRFIDタグであっても正常な交信を行うことができる。
請求項4の発明では、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方が偏波面を変更可能になっているので、RFIDタグの姿勢のいかんにかかわらず、RFIDタグとの通信が可能となる。また、偏波面を所望に設定すれば、設定した偏波面に合った特定の姿勢のRFIDタグとだけ通信することができる。
【0008】
請求項5の発明では、送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、パッチアンテナから構成され、そのアンテナ面の縦および横は、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められ、請求項5の発明では、送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、八木アンテナから構成され、そのアンテナ素子の長さは、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められているので、送受信性能の良いアンテナとすることができる。
送信アンテナと受信アンテナとは、請求項7の発明のように、送信アンテナをパッチアンテナにて構成し、受信アンテナを八木アンテナにて構成し、または送信アンテナを八木アンテナで構成し、受信アンテナをパッチアンテナで構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図11に基づき説明する。図1、図4に示すように、携帯型RFIDタグ読取器(以下、単に携帯型読取器)1は、手持部2の前部(図で上部)に本体部3を設けてなる。手持部2の上面側には、操作手段としての各種のキースイッチ4が設けられ、本体部3の上面側には、例えば液晶ディスプレイからなる表示器5が設けられている。この表示器5の表示画面の表面には、タッチパネル6(図7参照)が貼り付けられている。
【0010】
本体部3の前面部には、送信アンテナ7と受信アンテナ8とが設けられている。これら両アンテナ7,8は、例えばパッチアンテナからなる。パッチアンテナは、図5に示すように、プリント基板9の表裏両面に、アンテナ面である導電体層10aと設置電極層10bを設けてなる。なお、10cは給電線を接続するための給電点である。このパッチアンテナにおいて、導電体層10aの縦寸法aと横寸法bは、共にRFIDタグとの通信に用いる電波の波長の1/2〜1/32、この実施例では1/2に定め、送受信性能が良好となるようにしてある。
【0011】
このような送信アンテナ7および受信アンテナ8は、本体部3に可動、例えば図6に示すように軸12を中心にして回動可能に設けられている。これら両アンテナ7および8には、ガイド孔13aを有した揺動リンク13が夫々連結されている。揺動リンク13の一端部には、支持孔13bが形成されており、この支持孔13aにロッド14がスライド可能に挿通されている。そして、ガイド孔13aに突出したロッド14の一端部には、当該ガイド孔13aにガイドされて往復移動するスライド子15が取着されている。なお、揺動リンク13、ロッド14は本体部3内に収容されている。
【0012】
読取器1内には、ラック16が前後方向に直線移動可能に配設されている。このラック16の前端部に前記ロッド14の他端部が回動可能に連結されている。また、読取器1内にはモータ17が配設されており、その回転軸に取着されたピニオン18がラック16に噛合している。従って、ラック16はモータ17の正逆回転によって前後方向に直線的に往復移動し、図6(a),(b)に示すように、このラック16の前後方向の直線移動によってスライド子15付きのロッド14が揺動リンク13を揺動させて送信アンテナ7と受信アンテナ8の交差角αを変化させる。
【0013】
このように両アンテナ7,8の交差角αを変化させるために、ラック16の直線移動を揺動リンク13の揺動運動に変換する機構を揺動リンク機構と称し、この揺動リンク機構を、モータ17の回転をラック16の直線移動に変換する機構(回転‐直線移動変換機構)を含めて交差角調整機構と称することとする。なお、交差角αとは、この実施形態では、両アンテナ7,8のアンテナ面と直交する線の交差角をいう。
【0014】
送信アンテナ7は、搬送波を送信データで変調させた質問波を読取器1の前方に送信する。RFIDタグは、送信アンテナ7から送信された質問波を受信すると、その質問波から動作電力を得て応答波を返信し、受信アンテナ8は、読取器1の前方から来るRFIDタグからの応答波を受信する。この場合、送信アンテナ7および受信アンテナ8を構成するパッチアンテナは、例えば図1に破線で示すような指向性を有しており、送信アンテナ7の質問波は、送信アンテナ7の指向性の範囲内にあるRFIDタグだけが受信する。送信アンテナ7の質問波を受信したRFIDタグは、応答波を返信するが、受信アンテナ8は、その指向性の範囲内にあるRFIDタグからの応答波を受信する。従って、読取器1の前方に複数のRFIDタグが存在する場合、読取器1が交信できるRFIDタグは、送信アンテナ7の指向性と受信アンテナ8の指向性とが交差する範囲となる。そして、この両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲は、両アンテナ7,8の交差角αを変化させることによって変化する。
【0015】
図7は読取器1の電気的構成を示すブロック図である。図7に示されている通り、読取器1は、読取器1の全体を統括制御する機器制御部19とRFIDタグとの通信を制御する通信制御部20とを備えている。これら両制御部19,20は、いずれもマイコンを主体とするもので、CPU21、ROM22、RAM23、これらを接続するバス(図示せず)を備えている。
【0016】
機器制御部19には、前記各種キースイッチ4の操作に応じた信号を出力するキー入力部24、前記表示器5およびタッチパネル6が接続されている。一方、通信制御部20には、前記モータ17を運転制御するドライバ25、RFIDタグとの通信を制御する送受信部26が接続されている。そして、両制御部19,20は、互いに通信部27,28を介して接続されていて、相互にデータを送受できるようになっている。
【0017】
送受信部26には前記送信アンテナ7および受信アンテナ8が接続されている。そして、送受信部26は、送信時には通信制御部20から与えられた送信データにて変調させた搬送波を送信アンテナ7に出力し受信時には、RFIDタグから受信した電波を復調してデータを抽出し、抽出したデータを通信制御部20に与える。この送受信時において、両アンテナ7,8の交差角αが小さくなるに従って、つまり両アンテナ7,8の指向性の重なり範囲が遠方になるほど、搬送波の電力を大きくして遠方のRFIDタグでも十分な動作電力が得られるようにしている。また、通信制御部20は、受信アンテナ8が応答波を受信した時、その時点での両アンテナ7,8の交差角αと送信アンテナ7からの搬送波の出力を取得して機器制御部19に送る。機器制御部19は、両アンテナ7,8の交差角αと出力電力値とから通信したRFIDタグの位置を演算する。
【0018】
次に上記構成の作用を図8ないし図11のフローチャートをも参照しながら説明する。RFIDタグ29を貼り付けた物品30が図3に示すように点在していた場合、使用者の要求は概ね次の2つである。第1は、多くの物品30の中から所望の位置にある物品30aを選択してそのRFIDタグからデータを取得しようとする場合である。第2は、多くの物品30の中から特定のRFIDタグが付けられた物品を探し出そうとする場合である。
【0019】
まず、所望の位置にある物品のRFIDタグからデータを取得する場合の概略は、読取器1が両アンテナ7,8の交差角αを変化させてRFIDタグ29と通信し、通信したRFIDタグの分布マップを作成して当該マップを表示器5に表示する。使用者は、この表示器5の表示に基づいてデータ取得したい位置にあるRFIDタグ(物品30a)を指定する。すると、読取器1は、指定されたRFIDタグと通信してデータを取得するというものである。
【0020】
即ち、キースイッチ4群の中からモード設定スイッチを操作して位置指定モードに設定し、読取器1を所望する物品30aの在る方向に向けた状態に保持してスタートスイッチを操作する。すると、機器制御部19から位置指定モードでの読取指令が通信制御部20に送られるので、通信制御部20は、まず、両アンテナ7,8の交差角α(以下、アンテナ角度と簡略する。)、送信出力の初期値を設定する(図8のステップS1)。
【0021】
次いで、通信制御部20は、ドライバ25を介してモータ17を駆動制御して両アンテナ7,8のアンテナ角度を初期設定された角度にする。なお、この時の所期設定角度は、読取器1のごく近くに存在するRFIDタグと通信できる大きな角度である。そして、送信アンテナ7から質問波を初期設定された出力にて送信し、受信アンテナ8が応答波を受信するのを待つ。
【0022】
通信制御部20は、応答波を受信すると、そのときのアンテナ角度と質問波(搬送波)の送信出力を機器制御部19に送る(以上、ステップS2の読み取り処理)。機器制御部19は、送られてきたアンテナ角度と送信出力値とを例えば自身のRAM(記憶手段)23に格納する。なお、読み取り処理は、応答波の受信の有無に関係なく、質問波の送信から所定の短時間経過した時点で終了する。
【0023】
読み取り処置を終了すると、通信制御部20は、送信出力を1段階上げると共に、アンテナ角度を1段階上げ(ステップS3〜S6)、再び、読み取りを行う(ステップS2)。その後、送信出力を1段階ずつ上げると共に、アンテナ角度を1段階ずつ下げて読み取り処置を実行する動作を複数回繰り返すと、通信制御部20は、分布マップ作成のための読み取り動作を終了し、終了通知を機器制御部19に送信する。
【0024】
機器制御部19は、分布マップ作成の読み取り動作終了通知を受けると、応答波を受信したときのアンテナ角度から当該応答波を送信したRFIDタグ29の位置を演算し(ステップS7)、演算した位置を図2に示すように表示器5に表示する(ステップS8)。この時のRFIDタグ29の位置は、両アンテナ7,8の指向性の交差範囲の例えば中心点としている。以上により、RFIDタグ29(物品30)の分布マップの作成表示が終了する。このマップにおいて、各RFIDタグ29の位置は、両アンテナ7,8の指向性の交差範囲が変化する領域との関係で表示されたこととなる。
【0025】
使用者は、この表示器5に表示されたRFIDタグ29の分布マップから所望の位置にある物品30aのRFIDタグ29aを指定する(ステップS9)。この指定は、表示器5に表示されているRFIDタグ29のうち、読み取りたいRFIDタグ29aをタッチペンなどでタッチすることにより行う。すると、機器制御部20は、指定された位置からRFIDタグ29aの応答波を受信したときのアンテナ角度と送信出力値をRAM23から取得し、このアンテナ角度と送信出力値を通信制御部20に与える(ステップS10)。
【0026】
通信制御部20は、両アンテナ7,8のアンテナ角度を、機器制御部19から与えられた交差角度となるようにモータ17を駆動する。そして、通信制御部20は、両アンテナ7,8の交差角度が機器制御部19から与えられたアンテナ角度となったところでモータ17を停止し(ステップS11)、機器制御部19から与えられた出力で送信アンテナ7から質問波を送信する(ステップS12)。この時の送信アンテナ7と受信アンテナ8との指向性の交差範囲と送信出力は、先のマップ作成時の交差範囲と送信出力と同じであるから、読取器1は、物品30aのRFIDタグ29aと通信してデータを取得することができる(ステップS13)。
【0027】
タグ分布マップに基づいて別の物品のRFIDタグからデータを取得したい場合には、キースイッチ4群の中から繰り返しスイッチを操作する。すると、機器制御部19は、上述のようにして作成したタグ分布マップを表示器5に表示する(図9のステップA1)。使用者は、そのタグ分布マップにおいて、読み取りたいRFIDタグをタッチペンなどでタッチする(ステップA2)。すると、前述と同様にして、両アンテナ7,8が指定されたRFIDタグに対応したアンテナ角度に制御されると共に、送信アンテナ7から指定されたRFIDタグに対応した送信出力にて質問波が送信され、当該RFIDタグから応答波を受信する(ステップA3〜ステップA6)。
【0028】
次に、図3のように点在している物品30のうちから、特定のID番号のRFIDタグ29bを付着した物品を探し出す場合の作用を図10および図11のフローチャートを参照しながら説明する。この場合、概略的には、まず、読取器1が前述したと同様にしてRFIDタグの分布マップを作成する。次に、使用者が探索したいRFIDタグのID番号を入力すると、読取器1が再び物品30のRFIDタグ29と通信し、探索対象のID番号を持ったRFIDタグが存在する場合、前記分布マップ上にそのID番号を持ったRFIDタグを特殊な表示形態によって表示する。
【0029】
即ち、キースイッチ4群のモード設定スイッチを操作して探索モードに設定し、読取器1を点在する物品30群に向けた状態に保持してスタートスイッチを操作する。すると、機器制御部19から探索モードでの読取指令が通信制御部20に送られるので、通信制御部20は、まず、前述したと同様にしてタグ分布マップを作成し、表示器5に表示する(図10のステップB1〜ステップB8)。
【0030】
タグ分布マップを表示器5に表示すると、次に、通信制御部20は、アンテナ角度、送信出力の初期値を設定する(ステップB9)。また、機器制御部19は、表示器5に探索したいRFIDタグのID番号を入力することを促す表示を行い、これに応じて使用者がID番号を入力すると(ステップB10)、そのID番号を通信制御部20に与える。これにより、通信制御部20は、前述したと同様にしてアンテナ角度および送信出力を初期値に設定して読み取り処理を行う(ステップB11)。
【0031】
通信制御部20は、読み取り処理を行った後、前記指定されたID番号のRFIDタグを読み取ったか否かを判断する(ステップB12)。通信できたRFIDタグがなかったり、通信できても指定されたID番号のRFIDタグでなかったりした場合、通信制御部20は、送信出力を1段階上げると共に、アンテナ角度を1段階ずつ変えて送信処理を行う(ステップB12で「NO」、ステップB13で「NO」、ステップB14、ステップB15で「NO」、ステップB16、ステップB11、ステップB12で「NO」の繰り返し)。
【0032】
前記指定されたID番号と一致するID番号のRFIDタグ29bと通信できた場合(ステップB12で「YES」)、通信制御部20は、そのときのアンテナ角度と送信出力値とを機器制御部19に送る。機器制御部19は、通信制御部20から送られてアンテナ角度と送信出力値とからRFIDタグ29bの位置を演算し(ステップB17)、先に求めておいた分布マップを表示器5に表示し、この分布マップ上に表示されたRFIDタグのうち、指定されたRFIDタグタグの位置を例えば点滅させて表示する(ステップB18)。使用者は、この表示器5を見ることによって探索するRFIDタグ29bの位置を知ることができるので、その表示から目的とする物品30bを探索することができる。
【0033】
アンテナ角度と送信出力を1段階ずつ変えていっても、指定されたID番号のRFIDタグと通信できなかった場合(ステップB15で「NO」)、通信制御部20は、その旨を機器制御部19に送信する。そして、機器制御部19は、表示器5に指定されたRFIDタグが存在しないことを表示する(ステップB19)。従って、使用者は、この表示を見て目的とする物品30bの情報と共に、当該物品30b自体を探し出して手に入れることができるようになる。
【0034】
このように本実施形態によれば、RFIDタグを付けた多くの物品の中から特定の物品のRFIDタグから情報を得たい場合、表示器5に物品の分布マップが表示され、そのマップから所望の物品を指定すると、読取器1が指定された物品のRFIDタグと通信して情報を取得するので、思いもよらないRFIDタグの情報を読み取ってしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【0035】
この場合、送信アンテナ7と受信アンテナ8とは夫々1個ずつで良く、質問波も1つの周波数で済むので、安価に構成することができる。
<第2の実施形態>
図12〜図14は本発明の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態との相違は、送信アンテナ7と受信アンテナ8とを八木アンテナによって構成したところにある。八木アンテナは、図14に示すように、給電素子31の前側に複数本の導波素子32を配置し、後側に1本の反射素子33を配置して構成され、アンテナ素子としての給電素子31の長さL1は質問波の1/2波長、導波素子32の長さL2は質問波の1/2波長−α、反射素子33の長さL3は質問波の1/2波長+αに定められている。なお、給電素子31は、最小でも1/32波長が好ましい。
【0036】
このような八木アンテナでは、パッチアンテナに比較して小型に構成することができる。また、パッチアンテナに比べて指向性が高い、つまり通信領域が狭くなるので、送信アンテナ7と受信アンテナ8との指向性の交差範囲がパッチアンテナで構成する場合に比べて狭くなり、特定の1つのRFIDタグと通信する場合に好都合となる(選択性の向上)。
【0037】
<第3の実施形態>
図15および図16は本発明の第3の実施形態を示す。この実施形態が上記の第1の実施形態と異なるところは、送信アンテナ7にパッチアンテナを用い、受信アンテナ8に八木アンテナを用いたところにある。
【0038】
<第4の実施形態>
図17および図18は本発明の第4の実施形態を示す。この実施形態が上記の第1の実施形態と異なるところは、送信アンテナ7に八木アンテナを用い、受信アンテナ8にパッチアンテナを用いたところにある。
【0039】
<第5の実施形態>
図19および図20は本発明の第5の実施形態を示す。この実施形態は、送信アンテナ7および受信アンテナ8のうちの少なくとも一方を八木アンテナで構成し、この八木アンテナンを読取器1に回転可能に設けたところにある。この構成において、八木アンテナを図19および図20のように互いに90度異ならせると、八木アンテナの偏波面を90度異ならせることができる。
【0040】
偏波面を垂直にした図19の例では、送受信アンテナが垂直になっているRFIDタグとは通信可能であるが、送受信アンテナが水平になっているRFIDタグとは通信できない。逆に、偏波面を水平にした図20の例では、送受信アンテナが水平になっているRFIDタグとは通信可能であるが、送受信アンテナが垂直になっているRFIDタグとは通信できない。
【0041】
このため、情報を得たいRFIDタグの状態が予め分かっている場合には、アンテナを回転させることによって偏波面をRFIDタグタグに合わせることによって情報を取得したいRFIDタグとより確実に通信できるようになる。
また、八木アンテナを回転させることにより、RFIDタグの向きにかかわらず、全てのRFIDタグと通信が可能となる。
<第6の実施形態>
図21および図22は本発明の第6の実施形態を示す。この実施形態が上述の第1の実施形態と異なるところは、一方のアンテナの角度を一定にしたまま、他方のアンテナの角度を変えることができるように構成したものである。
即ち、送信アンテナ7と受信アンテナ8とは、夫々専用の交差角調整機構によって独立に角度を変化させることができるように構成されている。そして、送信アンテナ7を初期設定角に保ったまま、受信アンテナ8をその可動範囲内で角度を変化させてゆくと、両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲は、図21(a)に斜線を付した範囲となる。次に、送信アンテナ7を1ステップ角度変化させて、そして、送信アンテナ7をその角度に保ったまま受信アンテナ8をその可動範囲内で角度を変化させてゆくと、両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲は、図21(b)に斜線を付した範囲となる。
【0042】
このように順次送信アンテナ7の角度を1ステップずつ変化させ、送信アンテナ7を変化した角度に保ったままで受信アンテナ8を可動範囲内で角度変化させることにより、結果として、両アンテナ7,8の指向性が重なる領域が左右方向に広い範囲に及ぶ。このため、RFIDタグの分布マップを図22に示すように広い範囲にわたって表示することができるようになる。
【0043】
<その他の実施形態>
本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
読取器1は、読み取り専用のものに限られず、書き込み可能なものであっても良い。
第5の実施形態において、偏波面を変えるアンテナに八木アンテナを選択したが、パッチアンテナであっても良い。
送信アンテナ7と受信アンテナ8とは、パッチアンテナや八木アンテナに限られない。
送信アンテナ7と受信アンテナ8とは、本体部3内に収容するようにしても良い。
RFIDタグから情報を読み取る読み取り専用に限られず、RFIDタグへの情報の書き込みもできるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、送信アンテナと受信アンテナの指向性の重なり範囲を示す図
【図2】RFIDタグの分布マップを表示した状態で示す読取器の頭部の平面図
【図3】RFIDタグを付した物品の点在の状態を示す斜視図
【図4】読取器の斜視図
【図5】パッチアンテナの斜視図
【図6】送信アンテナと受信アンテナの交差角を変えるための機構を示す平面図
【図7】読取器の電気的構成を示すブロック図
【図8】分布マップを作成し、分布マップから選択したRFIDタグと通信するためのフローチャート
【図9】作成済みの分布マップから選択されたRFIDタグと通信するためのフローチャート
【図10】分布マップを作成するためのフローチャート
【図11】指定されたID番号を持つRFIDタグと通信するためのフローチャート
【図12】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図13】読取器の斜視図
【図14】八木アンテナの構成を示す平面図
【図15】本発明の第3の実施形態を示す図13相当図
【図16】図1相当図
【図17】本発明の第4の実施形態を示す図13相当図
【図18】図1相当図
【図19】本発明の第5の実施形態を示し、偏波面が垂直の状態で示す図13相当図
【図20】偏波面が水平の状態で示す図13相当図
【図21】本発明の第6の実施形態を示し、送信アンテナと受信アンテナの指向性の交差範囲が変化する状態を示す平面図
【図22】図2相当図
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は携帯型RFIDタグ読取器、7は送信アンテナ、8は受信アンテナ、12は軸、13は揺動リンク、16はラック、17はモータ、18はピニオン、19は機器制御部、20は通信制御部、29はRFIDタグ、30は物品である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグと電波による無線通信を行ってRFIDタグから情報を読み取る携帯型RFIDタグ読取器に関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグの通信システムでは、読取器から質問波を発すると、RFIDタグは質問波を受信して電力供給を受け、十分な電力が得られると動作を開始して応答波を返信する。最近の読取器、特にUHF帯(950MHz帯)の電波を用いる読取器では、数m先のRFIDタグと通信可能で、その通信エリアは、遠方、広範囲となっている。
ところが、RFIDタグが読取器の通信エリア内に複数存在すると、通信エリア内の複数のRFIDタグが質問波を受信して応答波を返信するため、読取器が思いもよらないRFIDタグの情報を読み取ってしまうという不具合を生ずる。
【0003】
このような問題を解消するために、特許文献1では、質問器に2つの送信アンテナと、1つの受信アンテナを設け、2つの送信アンテナのうちの一方の送信アンテナから、周波数f1の搬送波を送信データで変調した質問波を第1質問波として送信し、他方の送信アンテナから、周波数f2の無変調の搬送波を第2質問波として送信するようにし、且つそれら2つの送信アンテナの指向性を可変制御することによって、第1質問波と第2質問波が重なる地点に存在するRFIDタグだけが応答波を返信するように構成している。
【特許文献1】特開2006−121156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の質問器では、2つの送信アンテナと1つの受信アンテナを必要とし、しかも、2つの送信アンテナからは、互いに異なる周波数f1,f2の電波を送信しなければならないため、異なる周波数f1,f2の電波を送信する回路装置が複雑になる。このため、質問器全体として大型になり勝ちで、携帯型RFIDタグ読取器には適用が難しい。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、通信エリア内に複数のRFIDタグが存在しても、所望のRFIDタグと通信可能で、しかも、大型化を回避することができる携帯型RFIDタグ読取器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、送信アンテナと受信アンテナのうちの少なくとも一方が可動で、その一方のアンテナを動かすことにより、それら両アンテナの指向性が交差し、且つ、交差する指向性の範囲が変化するので、情報読み取りを行いたいRFIDタグを両アンテナの指向性が交差する範囲内に入るようにアンテナを動かせば、そのRFIDタグと通信することができる。
【0007】
請求項2の発明では、送信アンテナと受信アンテナの指向性が交差する範囲を変化させたとき、交信したRFIDタグを、交差する指向性の範囲を変化させた領域との関係で表示するので、情報読み取りを行いたいRFIDタグと通信する際に、そのRFIDタグが両アンテナの指向性の交差する範囲内に入るようにアンテナを動かし易くなる。
請求項3の発明では、送信アンテナから送信される電波の強さを変更することができるので、電波強度を大きくすることによって遠方のRFIDタグであっても正常な交信を行うことができる。
請求項4の発明では、送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方が偏波面を変更可能になっているので、RFIDタグの姿勢のいかんにかかわらず、RFIDタグとの通信が可能となる。また、偏波面を所望に設定すれば、設定した偏波面に合った特定の姿勢のRFIDタグとだけ通信することができる。
【0008】
請求項5の発明では、送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、パッチアンテナから構成され、そのアンテナ面の縦および横は、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められ、請求項5の発明では、送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、八木アンテナから構成され、そのアンテナ素子の長さは、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められているので、送受信性能の良いアンテナとすることができる。
送信アンテナと受信アンテナとは、請求項7の発明のように、送信アンテナをパッチアンテナにて構成し、受信アンテナを八木アンテナにて構成し、または送信アンテナを八木アンテナで構成し、受信アンテナをパッチアンテナで構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図11に基づき説明する。図1、図4に示すように、携帯型RFIDタグ読取器(以下、単に携帯型読取器)1は、手持部2の前部(図で上部)に本体部3を設けてなる。手持部2の上面側には、操作手段としての各種のキースイッチ4が設けられ、本体部3の上面側には、例えば液晶ディスプレイからなる表示器5が設けられている。この表示器5の表示画面の表面には、タッチパネル6(図7参照)が貼り付けられている。
【0010】
本体部3の前面部には、送信アンテナ7と受信アンテナ8とが設けられている。これら両アンテナ7,8は、例えばパッチアンテナからなる。パッチアンテナは、図5に示すように、プリント基板9の表裏両面に、アンテナ面である導電体層10aと設置電極層10bを設けてなる。なお、10cは給電線を接続するための給電点である。このパッチアンテナにおいて、導電体層10aの縦寸法aと横寸法bは、共にRFIDタグとの通信に用いる電波の波長の1/2〜1/32、この実施例では1/2に定め、送受信性能が良好となるようにしてある。
【0011】
このような送信アンテナ7および受信アンテナ8は、本体部3に可動、例えば図6に示すように軸12を中心にして回動可能に設けられている。これら両アンテナ7および8には、ガイド孔13aを有した揺動リンク13が夫々連結されている。揺動リンク13の一端部には、支持孔13bが形成されており、この支持孔13aにロッド14がスライド可能に挿通されている。そして、ガイド孔13aに突出したロッド14の一端部には、当該ガイド孔13aにガイドされて往復移動するスライド子15が取着されている。なお、揺動リンク13、ロッド14は本体部3内に収容されている。
【0012】
読取器1内には、ラック16が前後方向に直線移動可能に配設されている。このラック16の前端部に前記ロッド14の他端部が回動可能に連結されている。また、読取器1内にはモータ17が配設されており、その回転軸に取着されたピニオン18がラック16に噛合している。従って、ラック16はモータ17の正逆回転によって前後方向に直線的に往復移動し、図6(a),(b)に示すように、このラック16の前後方向の直線移動によってスライド子15付きのロッド14が揺動リンク13を揺動させて送信アンテナ7と受信アンテナ8の交差角αを変化させる。
【0013】
このように両アンテナ7,8の交差角αを変化させるために、ラック16の直線移動を揺動リンク13の揺動運動に変換する機構を揺動リンク機構と称し、この揺動リンク機構を、モータ17の回転をラック16の直線移動に変換する機構(回転‐直線移動変換機構)を含めて交差角調整機構と称することとする。なお、交差角αとは、この実施形態では、両アンテナ7,8のアンテナ面と直交する線の交差角をいう。
【0014】
送信アンテナ7は、搬送波を送信データで変調させた質問波を読取器1の前方に送信する。RFIDタグは、送信アンテナ7から送信された質問波を受信すると、その質問波から動作電力を得て応答波を返信し、受信アンテナ8は、読取器1の前方から来るRFIDタグからの応答波を受信する。この場合、送信アンテナ7および受信アンテナ8を構成するパッチアンテナは、例えば図1に破線で示すような指向性を有しており、送信アンテナ7の質問波は、送信アンテナ7の指向性の範囲内にあるRFIDタグだけが受信する。送信アンテナ7の質問波を受信したRFIDタグは、応答波を返信するが、受信アンテナ8は、その指向性の範囲内にあるRFIDタグからの応答波を受信する。従って、読取器1の前方に複数のRFIDタグが存在する場合、読取器1が交信できるRFIDタグは、送信アンテナ7の指向性と受信アンテナ8の指向性とが交差する範囲となる。そして、この両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲は、両アンテナ7,8の交差角αを変化させることによって変化する。
【0015】
図7は読取器1の電気的構成を示すブロック図である。図7に示されている通り、読取器1は、読取器1の全体を統括制御する機器制御部19とRFIDタグとの通信を制御する通信制御部20とを備えている。これら両制御部19,20は、いずれもマイコンを主体とするもので、CPU21、ROM22、RAM23、これらを接続するバス(図示せず)を備えている。
【0016】
機器制御部19には、前記各種キースイッチ4の操作に応じた信号を出力するキー入力部24、前記表示器5およびタッチパネル6が接続されている。一方、通信制御部20には、前記モータ17を運転制御するドライバ25、RFIDタグとの通信を制御する送受信部26が接続されている。そして、両制御部19,20は、互いに通信部27,28を介して接続されていて、相互にデータを送受できるようになっている。
【0017】
送受信部26には前記送信アンテナ7および受信アンテナ8が接続されている。そして、送受信部26は、送信時には通信制御部20から与えられた送信データにて変調させた搬送波を送信アンテナ7に出力し受信時には、RFIDタグから受信した電波を復調してデータを抽出し、抽出したデータを通信制御部20に与える。この送受信時において、両アンテナ7,8の交差角αが小さくなるに従って、つまり両アンテナ7,8の指向性の重なり範囲が遠方になるほど、搬送波の電力を大きくして遠方のRFIDタグでも十分な動作電力が得られるようにしている。また、通信制御部20は、受信アンテナ8が応答波を受信した時、その時点での両アンテナ7,8の交差角αと送信アンテナ7からの搬送波の出力を取得して機器制御部19に送る。機器制御部19は、両アンテナ7,8の交差角αと出力電力値とから通信したRFIDタグの位置を演算する。
【0018】
次に上記構成の作用を図8ないし図11のフローチャートをも参照しながら説明する。RFIDタグ29を貼り付けた物品30が図3に示すように点在していた場合、使用者の要求は概ね次の2つである。第1は、多くの物品30の中から所望の位置にある物品30aを選択してそのRFIDタグからデータを取得しようとする場合である。第2は、多くの物品30の中から特定のRFIDタグが付けられた物品を探し出そうとする場合である。
【0019】
まず、所望の位置にある物品のRFIDタグからデータを取得する場合の概略は、読取器1が両アンテナ7,8の交差角αを変化させてRFIDタグ29と通信し、通信したRFIDタグの分布マップを作成して当該マップを表示器5に表示する。使用者は、この表示器5の表示に基づいてデータ取得したい位置にあるRFIDタグ(物品30a)を指定する。すると、読取器1は、指定されたRFIDタグと通信してデータを取得するというものである。
【0020】
即ち、キースイッチ4群の中からモード設定スイッチを操作して位置指定モードに設定し、読取器1を所望する物品30aの在る方向に向けた状態に保持してスタートスイッチを操作する。すると、機器制御部19から位置指定モードでの読取指令が通信制御部20に送られるので、通信制御部20は、まず、両アンテナ7,8の交差角α(以下、アンテナ角度と簡略する。)、送信出力の初期値を設定する(図8のステップS1)。
【0021】
次いで、通信制御部20は、ドライバ25を介してモータ17を駆動制御して両アンテナ7,8のアンテナ角度を初期設定された角度にする。なお、この時の所期設定角度は、読取器1のごく近くに存在するRFIDタグと通信できる大きな角度である。そして、送信アンテナ7から質問波を初期設定された出力にて送信し、受信アンテナ8が応答波を受信するのを待つ。
【0022】
通信制御部20は、応答波を受信すると、そのときのアンテナ角度と質問波(搬送波)の送信出力を機器制御部19に送る(以上、ステップS2の読み取り処理)。機器制御部19は、送られてきたアンテナ角度と送信出力値とを例えば自身のRAM(記憶手段)23に格納する。なお、読み取り処理は、応答波の受信の有無に関係なく、質問波の送信から所定の短時間経過した時点で終了する。
【0023】
読み取り処置を終了すると、通信制御部20は、送信出力を1段階上げると共に、アンテナ角度を1段階上げ(ステップS3〜S6)、再び、読み取りを行う(ステップS2)。その後、送信出力を1段階ずつ上げると共に、アンテナ角度を1段階ずつ下げて読み取り処置を実行する動作を複数回繰り返すと、通信制御部20は、分布マップ作成のための読み取り動作を終了し、終了通知を機器制御部19に送信する。
【0024】
機器制御部19は、分布マップ作成の読み取り動作終了通知を受けると、応答波を受信したときのアンテナ角度から当該応答波を送信したRFIDタグ29の位置を演算し(ステップS7)、演算した位置を図2に示すように表示器5に表示する(ステップS8)。この時のRFIDタグ29の位置は、両アンテナ7,8の指向性の交差範囲の例えば中心点としている。以上により、RFIDタグ29(物品30)の分布マップの作成表示が終了する。このマップにおいて、各RFIDタグ29の位置は、両アンテナ7,8の指向性の交差範囲が変化する領域との関係で表示されたこととなる。
【0025】
使用者は、この表示器5に表示されたRFIDタグ29の分布マップから所望の位置にある物品30aのRFIDタグ29aを指定する(ステップS9)。この指定は、表示器5に表示されているRFIDタグ29のうち、読み取りたいRFIDタグ29aをタッチペンなどでタッチすることにより行う。すると、機器制御部20は、指定された位置からRFIDタグ29aの応答波を受信したときのアンテナ角度と送信出力値をRAM23から取得し、このアンテナ角度と送信出力値を通信制御部20に与える(ステップS10)。
【0026】
通信制御部20は、両アンテナ7,8のアンテナ角度を、機器制御部19から与えられた交差角度となるようにモータ17を駆動する。そして、通信制御部20は、両アンテナ7,8の交差角度が機器制御部19から与えられたアンテナ角度となったところでモータ17を停止し(ステップS11)、機器制御部19から与えられた出力で送信アンテナ7から質問波を送信する(ステップS12)。この時の送信アンテナ7と受信アンテナ8との指向性の交差範囲と送信出力は、先のマップ作成時の交差範囲と送信出力と同じであるから、読取器1は、物品30aのRFIDタグ29aと通信してデータを取得することができる(ステップS13)。
【0027】
タグ分布マップに基づいて別の物品のRFIDタグからデータを取得したい場合には、キースイッチ4群の中から繰り返しスイッチを操作する。すると、機器制御部19は、上述のようにして作成したタグ分布マップを表示器5に表示する(図9のステップA1)。使用者は、そのタグ分布マップにおいて、読み取りたいRFIDタグをタッチペンなどでタッチする(ステップA2)。すると、前述と同様にして、両アンテナ7,8が指定されたRFIDタグに対応したアンテナ角度に制御されると共に、送信アンテナ7から指定されたRFIDタグに対応した送信出力にて質問波が送信され、当該RFIDタグから応答波を受信する(ステップA3〜ステップA6)。
【0028】
次に、図3のように点在している物品30のうちから、特定のID番号のRFIDタグ29bを付着した物品を探し出す場合の作用を図10および図11のフローチャートを参照しながら説明する。この場合、概略的には、まず、読取器1が前述したと同様にしてRFIDタグの分布マップを作成する。次に、使用者が探索したいRFIDタグのID番号を入力すると、読取器1が再び物品30のRFIDタグ29と通信し、探索対象のID番号を持ったRFIDタグが存在する場合、前記分布マップ上にそのID番号を持ったRFIDタグを特殊な表示形態によって表示する。
【0029】
即ち、キースイッチ4群のモード設定スイッチを操作して探索モードに設定し、読取器1を点在する物品30群に向けた状態に保持してスタートスイッチを操作する。すると、機器制御部19から探索モードでの読取指令が通信制御部20に送られるので、通信制御部20は、まず、前述したと同様にしてタグ分布マップを作成し、表示器5に表示する(図10のステップB1〜ステップB8)。
【0030】
タグ分布マップを表示器5に表示すると、次に、通信制御部20は、アンテナ角度、送信出力の初期値を設定する(ステップB9)。また、機器制御部19は、表示器5に探索したいRFIDタグのID番号を入力することを促す表示を行い、これに応じて使用者がID番号を入力すると(ステップB10)、そのID番号を通信制御部20に与える。これにより、通信制御部20は、前述したと同様にしてアンテナ角度および送信出力を初期値に設定して読み取り処理を行う(ステップB11)。
【0031】
通信制御部20は、読み取り処理を行った後、前記指定されたID番号のRFIDタグを読み取ったか否かを判断する(ステップB12)。通信できたRFIDタグがなかったり、通信できても指定されたID番号のRFIDタグでなかったりした場合、通信制御部20は、送信出力を1段階上げると共に、アンテナ角度を1段階ずつ変えて送信処理を行う(ステップB12で「NO」、ステップB13で「NO」、ステップB14、ステップB15で「NO」、ステップB16、ステップB11、ステップB12で「NO」の繰り返し)。
【0032】
前記指定されたID番号と一致するID番号のRFIDタグ29bと通信できた場合(ステップB12で「YES」)、通信制御部20は、そのときのアンテナ角度と送信出力値とを機器制御部19に送る。機器制御部19は、通信制御部20から送られてアンテナ角度と送信出力値とからRFIDタグ29bの位置を演算し(ステップB17)、先に求めておいた分布マップを表示器5に表示し、この分布マップ上に表示されたRFIDタグのうち、指定されたRFIDタグタグの位置を例えば点滅させて表示する(ステップB18)。使用者は、この表示器5を見ることによって探索するRFIDタグ29bの位置を知ることができるので、その表示から目的とする物品30bを探索することができる。
【0033】
アンテナ角度と送信出力を1段階ずつ変えていっても、指定されたID番号のRFIDタグと通信できなかった場合(ステップB15で「NO」)、通信制御部20は、その旨を機器制御部19に送信する。そして、機器制御部19は、表示器5に指定されたRFIDタグが存在しないことを表示する(ステップB19)。従って、使用者は、この表示を見て目的とする物品30bの情報と共に、当該物品30b自体を探し出して手に入れることができるようになる。
【0034】
このように本実施形態によれば、RFIDタグを付けた多くの物品の中から特定の物品のRFIDタグから情報を得たい場合、表示器5に物品の分布マップが表示され、そのマップから所望の物品を指定すると、読取器1が指定された物品のRFIDタグと通信して情報を取得するので、思いもよらないRFIDタグの情報を読み取ってしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【0035】
この場合、送信アンテナ7と受信アンテナ8とは夫々1個ずつで良く、質問波も1つの周波数で済むので、安価に構成することができる。
<第2の実施形態>
図12〜図14は本発明の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態との相違は、送信アンテナ7と受信アンテナ8とを八木アンテナによって構成したところにある。八木アンテナは、図14に示すように、給電素子31の前側に複数本の導波素子32を配置し、後側に1本の反射素子33を配置して構成され、アンテナ素子としての給電素子31の長さL1は質問波の1/2波長、導波素子32の長さL2は質問波の1/2波長−α、反射素子33の長さL3は質問波の1/2波長+αに定められている。なお、給電素子31は、最小でも1/32波長が好ましい。
【0036】
このような八木アンテナでは、パッチアンテナに比較して小型に構成することができる。また、パッチアンテナに比べて指向性が高い、つまり通信領域が狭くなるので、送信アンテナ7と受信アンテナ8との指向性の交差範囲がパッチアンテナで構成する場合に比べて狭くなり、特定の1つのRFIDタグと通信する場合に好都合となる(選択性の向上)。
【0037】
<第3の実施形態>
図15および図16は本発明の第3の実施形態を示す。この実施形態が上記の第1の実施形態と異なるところは、送信アンテナ7にパッチアンテナを用い、受信アンテナ8に八木アンテナを用いたところにある。
【0038】
<第4の実施形態>
図17および図18は本発明の第4の実施形態を示す。この実施形態が上記の第1の実施形態と異なるところは、送信アンテナ7に八木アンテナを用い、受信アンテナ8にパッチアンテナを用いたところにある。
【0039】
<第5の実施形態>
図19および図20は本発明の第5の実施形態を示す。この実施形態は、送信アンテナ7および受信アンテナ8のうちの少なくとも一方を八木アンテナで構成し、この八木アンテナンを読取器1に回転可能に設けたところにある。この構成において、八木アンテナを図19および図20のように互いに90度異ならせると、八木アンテナの偏波面を90度異ならせることができる。
【0040】
偏波面を垂直にした図19の例では、送受信アンテナが垂直になっているRFIDタグとは通信可能であるが、送受信アンテナが水平になっているRFIDタグとは通信できない。逆に、偏波面を水平にした図20の例では、送受信アンテナが水平になっているRFIDタグとは通信可能であるが、送受信アンテナが垂直になっているRFIDタグとは通信できない。
【0041】
このため、情報を得たいRFIDタグの状態が予め分かっている場合には、アンテナを回転させることによって偏波面をRFIDタグタグに合わせることによって情報を取得したいRFIDタグとより確実に通信できるようになる。
また、八木アンテナを回転させることにより、RFIDタグの向きにかかわらず、全てのRFIDタグと通信が可能となる。
<第6の実施形態>
図21および図22は本発明の第6の実施形態を示す。この実施形態が上述の第1の実施形態と異なるところは、一方のアンテナの角度を一定にしたまま、他方のアンテナの角度を変えることができるように構成したものである。
即ち、送信アンテナ7と受信アンテナ8とは、夫々専用の交差角調整機構によって独立に角度を変化させることができるように構成されている。そして、送信アンテナ7を初期設定角に保ったまま、受信アンテナ8をその可動範囲内で角度を変化させてゆくと、両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲は、図21(a)に斜線を付した範囲となる。次に、送信アンテナ7を1ステップ角度変化させて、そして、送信アンテナ7をその角度に保ったまま受信アンテナ8をその可動範囲内で角度を変化させてゆくと、両アンテナ7,8の指向性が交差する範囲は、図21(b)に斜線を付した範囲となる。
【0042】
このように順次送信アンテナ7の角度を1ステップずつ変化させ、送信アンテナ7を変化した角度に保ったままで受信アンテナ8を可動範囲内で角度変化させることにより、結果として、両アンテナ7,8の指向性が重なる領域が左右方向に広い範囲に及ぶ。このため、RFIDタグの分布マップを図22に示すように広い範囲にわたって表示することができるようになる。
【0043】
<その他の実施形態>
本発明は上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
読取器1は、読み取り専用のものに限られず、書き込み可能なものであっても良い。
第5の実施形態において、偏波面を変えるアンテナに八木アンテナを選択したが、パッチアンテナであっても良い。
送信アンテナ7と受信アンテナ8とは、パッチアンテナや八木アンテナに限られない。
送信アンテナ7と受信アンテナ8とは、本体部3内に収容するようにしても良い。
RFIDタグから情報を読み取る読み取り専用に限られず、RFIDタグへの情報の書き込みもできるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、送信アンテナと受信アンテナの指向性の重なり範囲を示す図
【図2】RFIDタグの分布マップを表示した状態で示す読取器の頭部の平面図
【図3】RFIDタグを付した物品の点在の状態を示す斜視図
【図4】読取器の斜視図
【図5】パッチアンテナの斜視図
【図6】送信アンテナと受信アンテナの交差角を変えるための機構を示す平面図
【図7】読取器の電気的構成を示すブロック図
【図8】分布マップを作成し、分布マップから選択したRFIDタグと通信するためのフローチャート
【図9】作成済みの分布マップから選択されたRFIDタグと通信するためのフローチャート
【図10】分布マップを作成するためのフローチャート
【図11】指定されたID番号を持つRFIDタグと通信するためのフローチャート
【図12】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図13】読取器の斜視図
【図14】八木アンテナの構成を示す平面図
【図15】本発明の第3の実施形態を示す図13相当図
【図16】図1相当図
【図17】本発明の第4の実施形態を示す図13相当図
【図18】図1相当図
【図19】本発明の第5の実施形態を示し、偏波面が垂直の状態で示す図13相当図
【図20】偏波面が水平の状態で示す図13相当図
【図21】本発明の第6の実施形態を示し、送信アンテナと受信アンテナの指向性の交差範囲が変化する状態を示す平面図
【図22】図2相当図
【符号の説明】
【0045】
図面中、1は携帯型RFIDタグ読取器、7は送信アンテナ、8は受信アンテナ、12は軸、13は揺動リンク、16はラック、17はモータ、18はピニオン、19は機器制御部、20は通信制御部、29はRFIDタグ、30は物品である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に、質問波を送信する送信アンテナと、前記質問波を受信したRFIDタグが返信する応答波を受信する受信アンテナとを設け、それら送信アンテナと受信アンテナとによる前記RFIDタグとの通信によって当該RFIDタグに記録された情報を読み取る携帯型RFIDタグ読取器において、
前記送信アンテナおよび受信アンテナは、前記本体を保持する操作者の前方となる方向に指向性を有し、
前記送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナが他方のアンテナに対し、互いの指向性が交差し、且つ交差する指向性の範囲が変化するように前記本体に可動に設けられていることを特徴とする携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項2】
前記本体に表示器を設け、前記送信アンテナと受信アンテナの交差する指向性の範囲を変化させたとき、前記表示器に、交信したRFIDタグを、前記交差する指向性の範囲を変化させた領域との関係で表示することを特徴とする請求項1記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項3】
前記送信アンテナから送信される電波の強さを変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項4】
前記送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方は、偏波面を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項5】
前記送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、パッチアンテナから構成され、そのアンテナ面の縦および横は、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項6】
前記送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、八木アンテナから構成され、そのアンテナ素子の長さは、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項7】
前記送信アンテナはパッチアンテナから構成され、前記受信アンテナは八木アンテナで構成され、または前記送信アンテナは八木アンテナから構成され、前記受信アンテナはパッチアンテナで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項1】
本体に、質問波を送信する送信アンテナと、前記質問波を受信したRFIDタグが返信する応答波を受信する受信アンテナとを設け、それら送信アンテナと受信アンテナとによる前記RFIDタグとの通信によって当該RFIDタグに記録された情報を読み取る携帯型RFIDタグ読取器において、
前記送信アンテナおよび受信アンテナは、前記本体を保持する操作者の前方となる方向に指向性を有し、
前記送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナが他方のアンテナに対し、互いの指向性が交差し、且つ交差する指向性の範囲が変化するように前記本体に可動に設けられていることを特徴とする携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項2】
前記本体に表示器を設け、前記送信アンテナと受信アンテナの交差する指向性の範囲を変化させたとき、前記表示器に、交信したRFIDタグを、前記交差する指向性の範囲を変化させた領域との関係で表示することを特徴とする請求項1記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項3】
前記送信アンテナから送信される電波の強さを変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項4】
前記送信アンテナおよび受信アンテナの少なくとも一方は、偏波面を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項5】
前記送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、パッチアンテナから構成され、そのアンテナ面の縦および横は、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項6】
前記送信アンテナおよび受信アンテナのうちの少なくとも一方のアンテナは、八木アンテナから構成され、そのアンテナ素子の長さは、送受信電波の波長の1/2〜1/32の寸法に定められていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【請求項7】
前記送信アンテナはパッチアンテナから構成され、前記受信アンテナは八木アンテナで構成され、または前記送信アンテナは八木アンテナから構成され、前記受信アンテナはパッチアンテナで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型RFIDタグ読取器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−44647(P2009−44647A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209800(P2007−209800)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
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