説明

携帯端末装置、サーバ装置およびランキング通知システム

【課題】通信トラフィックを増加させること無く、地理的に分散している物理的事象をセンサで検出し、ユーザに対して、センサで検出したデータのランキングを提供する。
【解決手段】センサ11aが、検出時刻情報を含む検出結果情報を出力する度に、検出結果情報を記録する記録部12と、過去の検出結果情報を用いて、経過時間と検出結果情報との関係を一次式で近似した回帰直線および回帰直線に基づく検出結果情報の変化予測範囲を設定し、最新の検出結果情報が変化予測範囲を逸脱した時刻を、サーバ装置への送信タイミングと決定する送信タイミング決定部13と、その決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置へ送信する送受信部14と、検出時刻が同一である前記他の携帯端末装置の検出結果情報に対する自機の検出結果情報のランキングを決定するランキング決定部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の物理量を検出するセンサを備えた複数の携帯端末装置の検出結果情報のランキングを決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話機に取り付けたセンサ(歩数計、GPS、加速度センサ)を利用して、ジョギング履歴を記録するサービス等が提供されている(非特許文献1参照)。センサデータ、具体的には、物体や物質の物理量(地理的な位置や加速度、速度、温度、気圧等)を検出することが可能なセンサを具備した携帯端末装置が普及している。例えば、市販の携帯電話機には、地理的な位置情報を取得するセンサ(GPSモジュール)、加速度、地磁気を検出するセンサが装備されているものがある。これらの携帯電話機は、インターネット等の広域網と接続するための無線通信インターフェースを装備している。このため、携帯電話機が取得したセンサデータを広域網に送信し、サーバ装置にセンサデータを蓄積できる技術は、既に確立しているといえる。
【0003】
特許文献1には、競技の途中経過およびゴール地点で勝者が決定する瞬間の情報をCTI(Computer Telephony Integration)技術を介して、携帯電話機などのモバイル機器にリアルタイムに提供する技術が開示されている。この技術では、競技場のコースに設置された位置特定センサ部と、位置特定センサ部からの位置特定信号を処理し、競技者の順位データを生成するデータ処理部とを設け、データ処理部で生成した順位データを携帯電話機に送信する。
【0004】
また、特許文献2には、外部から検出した匂いや味を反映させたゲームシステムが開示されている。このゲームシステムでは、携帯端末装置が備える匂いセンサまたは味覚センサによって検出された匂い情報または味情報をゲーム上のデータとして使用する。また、匂いセンサまたは味覚センサによって検出された複数の匂い情報または味情報を、所定の基準に基づいて比較し、ランク付けを行なう。そして、ランク付けの結果に基づきランキング表示を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−118018号公報
【特許文献2】特開2003−024622号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://run.auone.jp/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、今後、携帯電話機と広域網間をつなぐアクセスネットワークの通信トラフィックが増加することが予想されることから、アクセスネットワークの輻輳を回避するためには、携帯電話機上で動作するアプリケーションに通信トラフィックを抑制する工夫が必要となっている。
【0008】
また、従来、現実世界において、地理的に分散している物理的事象をセンサで検出した場合、データのランキングを把握するシステムが存在していなかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、通信トラフィックを増加させること無く、地理的に分散している物理的事象をセンサで検出し、ユーザに対して、センサで検出したデータのランキングを提供することができる携帯端末装置、サーバ装置およびランキング通知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の携帯端末装置は、特定の物理量を検出するセンサを備えた携帯端末装置であって、前記センサが、検出時刻情報を含む検出結果情報を出力する度に、前記検出結果情報を記録する記録部と、前記記録された過去の検出結果情報を用いて、経過時間と検出結果情報との関係を一次式で近似した回帰直線および前記回帰直線に基づく検出結果情報の変化予測範囲を設定し、最新の検出結果情報が前記変化予測範囲を逸脱した時刻を、前記サーバ装置への送信タイミングと決定する送信タイミング決定部と、前記決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置へ送信する送信部と、前記サーバ装置から、前記特定の物理量を検出するセンサを備えた少なくとも一つの他の携帯端末装置の検出時刻情報を含む検出結果情報を受信する受信部と、検出時刻が同一である前記他の携帯端末装置の検出結果情報に対する前記自機の検出結果情報のランキングを決定するランキング決定部と、前記決定されたランキングを画面に表示する表示部と、を備えることを特徴としている。
【0011】
このように、最新の検出結果情報が変化予測範囲を逸脱した時刻を、サーバ装置への送信タイミングと決定し、その決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置へ送信するので、通信トラフィックを増加させること、およびサーバ装置の処理負荷の増大を回避することができる。また、ユーザが、地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。
【0012】
(2)また、本発明の携帯端末装置は、イベントに対応付けられたグループに登録する旨の情報を出力すると共に、前記サーバ装置から送信された前記グループの識別情報を管理するグループ管理部をさらに備え、前記送信部は、前記グループに登録する旨の情報を前記サーバ装置へ送信し、前記受信部は、前記サーバ装置から送信された前記グループの識別情報を受信すると共に、前記サーバ装置から、前記グループに登録されている他の携帯端末装置の前記検出結果情報を受信し、前記ランキング決定部は、前記グループに登録されている他の携帯端末装置の検出結果情報に対する前記自機の検出結果情報のランキングを決定することを特徴としている。
【0013】
このように、グループに登録されている他の携帯端末装置の検出結果情報に対する前記自機の検出結果情報のランキングを決定するので、ユーザが、地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。また、大規模な競技大会を容易に企画・開催することができる。例えば、東京都の企画・運営で開催されている東京マラソン大会と同様のマラソン大会を、一人のユーザの企画・運営で容易に開催することができる。
【0014】
(3)また、本発明のサーバ装置は、特定の物理量を検出するセンサを備えた複数の携帯端末装置と無線通信を行なうサーバ装置であって、前記各携帯端末装置から受信した検出時刻情報を含む検出結果情報を格納する格納部と、前記各携帯端末装置の同一時刻における検出結果情報のランキングを決定するサーバ側ランキング決定部と、いずれか一つの前記携帯端末装置から検出結果情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、いずれか他の前記携帯端末装置から受信した検出結果情報および前記ランキングを送信する送受信部と、を備えることを特徴としている。
【0015】
このように、各携帯端末装置の同一時刻における検出結果情報のランキングを決定し、いずれか一つの携帯端末装置から検出結果情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、いずれか他の携帯端末装置から受信した検出結果情報およびランキングを送信するので、ユーザが、地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。
【0016】
(4)また、本発明のサーバ装置は、イベントに対応付けられたグループへの登録およびそのグループの識別情報を管理するサーバ側グループ管理部をさらに備え、前記サーバ側ランキング決定部は、前記グループに登録されている各携帯端末装置の同一時刻における検出結果情報のグループ内のランキングを決定し、前記送受信部は、いずれかの前記携帯端末装置から、前記グループに登録する旨の情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、前記サーバ側グループ管理部から出力された前記グループの識別情報を送信し、前記グループに登録されているいずれか一つの前記携帯端末装置から検出結果情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、前記グループに登録されているいずれか他の前記携帯端末装置から受信した検出結果情報および前記グループ内のランキングを送信することを特徴としている。
【0017】
このように、グループに登録されているいずれか一つの携帯端末装置から検出結果情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、グループに登録されているいずれか他の携帯端末装置から受信した検出結果情報およびグループ内のランキングを送信するので、ユーザが、地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。また、大規模な競技大会を容易に企画・開催することができる。例えば、東京都の企画・運営で開催されている東京マラソン大会と同様のマラソン大会を、一人のユーザの企画・運営で容易に開催することができる。
【0018】
(5)また、本発明のランキング通知システムは、上記(1)記載の携帯端末装置と、上記(3)記載のサーバ装置と、から構成されることを特徴としている。
【0019】
この構成により、最新の検出結果情報が変化予測範囲を逸脱した時刻を、サーバ装置への送信タイミングと決定し、その決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置へ送信するので、通信トラフィックを増加させること、およびサーバ装置の処理負荷の増大を回避することができる。また、ユーザが、地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、最新の検出結果情報が変化予測範囲を逸脱した時刻を、サーバ装置への送信タイミングと決定し、その決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置へ送信するので、通信トラフィックを増加させること、およびサーバ装置の処理負荷の増大を回避することができる。また、ユーザが、地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るランキング通知システムの概略構成を示す図である。
【図2】携帯電話機10の概略構成を示すブロック図である。
【図3】サーバ装置20の概略構成を示すブロック図である。
【図4】携帯電話機10における送信タイミング決定部13の動作概念を示す図である。
【図5】携帯電話機10における送信タイミング決定部13の動作概念を示す図である。
【図6】本実施形態に係るランキング通知システムを構成する携帯電話機とサーバ装置とのデータのやり取りを示すシーケンスチャートである。
【図7】イベントとしてのマラソン大会と参加者のランキングを示す図である。
【図8A】携帯電話機における画面表示例を示す図である。
【図8B】携帯電話機における画面表示例を示す図である。
【図8C】携帯電話機における画面表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るランキング通知システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、このランキング通知システムは、携帯電話機10と、サーバ装置20とが、ネットワークを介して通信を行なうことができるように構成されている。携帯電話基地局30は、携帯電話機10とサーバ装置20との無線通信を中継する。以下、携帯端末装置として、携帯電話機10を例にとって説明する。
【0023】
次に、このように構成されたランキング通知システムが提供するサービスについて説明する。このサービスは、以下の手順で提供される。
【0024】
(手順1)ランキングを同時に競い合う端末が所属するグループへの参加
携帯電話機10は、自身がデータの取得を開始することを、サーバ装置20に通知する。ここでは、ユーザが携帯電話機10を手に持って、または体に装着して、マラソンを行なう場合を考える。サーバ装置20は、その携帯電話機10が所属するグループの識別子を携帯電話機10に通知する。例えば、イベントが、マラソン大会である場合、グループの識別子は、「2009/2/6 10:00から開始される10 Kmマラソン大会」の識別子である。携帯電話機10は、そのマラソン大会に参加し、ランキングを他の携帯電話機10と競うこととなる。
【0025】
(手順2)データの時系列的な挙動の観察とデータの共有
携帯電話機10は、自身のデータの時系列的な挙動とその変化を観察する。データの時系列的な挙動の変化を認知する条件は、携帯電話機10に予め与えられ、または、手順1でサーバ装置20からから与えられることができる。データの時系列的な挙動に変化あると、携帯電話機10は、自身のデータをサーバ装置20(または他の携帯電話機)に通知する。携帯電話機10は、その応答として、サーバ装置20(またはは他の携帯電話機)から他の携帯電話機10のデータを取得する。
【0026】
例えば、イベントがマラソン大会である場合、自身の単位時間当たりの移動距離の挙動(平均移動距離:3 m/sec)を観察し、移動距離が5m/secに変化すると、携帯電話機Aは、自身のスタート地点からの移動距離のデータ(携帯電話機A:100 m)を、サーバ装置20に通知する。その応答として、その時点でサーバ装置20が知っている他の携帯電話機Bのデータ(携帯電話機B:80m)を携帯電話機に通知する。
【0027】
(手順3)ランキングの計算
携帯電話機は、手順2で得た、他の携帯電話機のデータと自身のデータを比較し、ランキングを計算する。例えば、携帯電話機Aは、自身のデータ(携帯電話機A:100 m) と他の携帯電話機Bのデータ(携帯電話機B:80m)を比較し、
ランキング1位・・・携帯電話機A、
ランキング2位・・・携帯電話機B
を求める。なお、サーバ装置20も同様にランキングを計算する。
【0028】
(手順4)ランキングを競い合う時間(またはデータの閾値等)になるまで手順2と3を繰り返す。そして、ランキングを競い合う時間(またはデータの閾値等)になったら、最終的なランキングを決定し、ユーザに報知(通知)する。
【0029】
図2は、携帯電話機10の概略構成を示すブロック図である。携帯電話機10は、センサ11aを備えている。このセンサ11aは、歩数計、GPS(Global Positioning System)モジュール、加速度センサなどの特定の物理量を検出する。本実施形態では、携帯電話機10は、少なくとも、現在位置および時刻を検出可能なセンサを備えているものとする。ただし、本発明はこれに限定されるわけではない。センサデータ取得部11bは、センサ11aが検出した検出結果情報を取得し、取得した検出結果情報を記録部12に出力する。この検出結果情報は、具体的には、現在位置の情報と、現在時刻の情報である。
【0030】
記録部12は、センサデータ取得部11bから検出時刻情報を含む検出結果情報が入力される度に、検出結果情報を記録する。送信タイミング決定部13は、記録部12に記録された過去の検出結果情報を用いて、経過時間と検出結果情報との関係を一次式で近似した回帰直線を算出する。また、その回帰直線に基づく検出結果情報の変化予測範囲を算出する。そして、これらを、送信タイミングを決定する基準として設定する。送信タイミング決定部13は、最新の検出結果情報が、上記変化予測範囲を逸脱した時刻を、サーバ装置20への送信タイミングと決定する。
【0031】
送受信部14は、送信タイミング決定部13によって決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置20へ送信する。また、送受信部14は、サーバ装置20から、上記センサ11aと同一のセンサを備えた少なくとも一つの他の携帯電話機の検出時刻情報を含む検出結果情報を受信する。ランキング決定部15は、検出時刻が同一である他の携帯電話機の検出結果情報に対する自機の検出結果情報のランキングを決定する。表示部16は、ランキング決定部15によって決定されたランキングを画面に表示する。グループ管理部17は、イベントに対応付けられたグループに登録する旨の情報を出力すると共に、サーバ装置20から送信されたグループの識別情報を管理する。上記各構成要素は、制御バス18を介して相互に接続され、データの送受信が可能となっている。
【0032】
図3は、サーバ装置20の概略構成を示すブロック図である。サーバ装置20は、複数の携帯電話機と無線通信を行なう。格納部21は、各携帯電話機から受信した検出時刻情報を含む検出結果情報を格納する。サーバ側ランキング決定部22は、各携帯電話機の同一時刻における検出結果情報のランキングを決定する。サーバ側送受信部23は、いずれか一つの携帯電話機から検出結果情報を受信したときに、その携帯電話機に対して、いずれか他の携帯電話機から受信した検出結果情報およびランキングを送信する。また、サーバ側グループ管理部24は、イベントに対応付けられたグループへの登録およびそのグループの識別情報を管理する。上記各構成要素は、制御バス25を介して相互に接続され、データの送受信が可能となっている。
【0033】
図4は、携帯電話機10における送信タイミング決定部13の動作概念を示す図である。ここでは、「自身判定」として、自機が取得したセンサ情報に基づいて、サーバ装置20への送信タイミングを決定する手法を説明する。本実施形態に係る携帯電話機10は、アクセスネットワークの輻輳を回避するため、常にデータをサーバ装置20へ送信するのではなく、サーバ装置20へデータを送信するタイミングを決定し、その決定したタイミングでデータをサーバ装置20へ送信する。図4において、横軸は時間(X)、縦軸は走行距離(Y)を示す。図4中、黒丸で示す点A、点B、点Cは、サーバ装置へデータを送信するタイミングを示している。
【0034】
まず、原点からスタートし、センサ11aが時間と走行距離を検出する。そして、点Aにおいて、サーバ装置20へデータを送信する。次に、送信タイミング決定部13は、期間L1において、データ数N個をサンプリングし、回帰直線を計算する。回帰直線Yは、点Bにおいて確定し、Asを傾き、Bsを切片とすると、
Y=As*X+Bs
と表すことができる。
【0035】
また、図4中、変化予測範囲としての判定の厚みは、Rsを回帰直線の偏差とすると、
(判定の厚み)=Rs*Ua+Ub
と表すことができる。
【0036】
図4において、点Bから再度実測値を取得し、点Cに到達したとする。点Cは、現在時刻Xcにおける走行距離を表す。
【0037】
点Dは、現在時刻Xcにおける回帰直線上の点であり、現在時刻における推定位置を示す。従って、点Dの位置は、
Y=As*Xc+Bs
と表すことができる。
【0038】
また、図4において、点Eは、自身判定の範囲の上限値を示す。この自身判定の範囲の上限値は、
(上限値)=(現在時刻の推定位置:As*Xc+Bs)+(判定範囲の厚み)
として求めることができる。
【0039】
また、図4において、点Fは、自身判定の範囲の下限値を示す。この自身判定の範囲の下限値は、
(下限値)=(現在時刻の推定位置:As*Xc+Bs)−(判定範囲の厚み)
として求めることができる。
【0040】
このように、回帰直線と、変化予測範囲を設定し、自身判定を行なう。具体的には、現在時刻Xcの実測値である点Cが、変化予測範囲を逸脱したときに、サーバ装置20に対して、データを送信する(アップロード)。具体的には、自身判定におけるサーバ装置への次回アップロード時刻は、
(アップロード時刻)=現在時刻(実測値が変化予測範囲を逸脱した時刻)
=無限大(実測値が変化予測範囲内にあるとき)
なお、上記のように、無限大と判定される場合があるため、予めアップロード周期を定めておき、その周期毎にデータをアップロードするようにしても良い。
【0041】
図5は、携帯電話機10における送信タイミング決定部13の動作概念を示す図である。ここでは、「他者判定」として、他の携帯電話機の挙動から、サーバ装置20への送信タイミングを決定する手法を説明する。図5において、横軸は時間(X)、縦軸は走行距離(Y)を示す。図5中、黒丸で示す点G、点H、点Mは、サーバ装置へデータを送信するタイミングを示している。
【0042】
まず、点Gは、他の携帯電話機が、サーバ装置20と通信したときの時刻と走行距離(Xt,Yt)を示す。そして、送信タイミング決定部13は、期間L2において、データ数N個をサンプリングし、回帰直線を計算する。回帰直線Yは、点Gにおいて確定し、Aoを傾き、Boを切片とすると、
Y=Ao*X+Bo
と表すことができる。
【0043】
点Hは、現在時刻Xcにおける回帰直線上の点であり、現在時刻における推定位置を示す。従って、点Hの位置は、
Y=Ao*Xc+Bo
と表すことができる。
【0044】
また、図5において、点Iは、他者判定の範囲の上限値を示す。この他者判定の範囲の上限値を、時間の関数としてY=f(x)とおく。このY=f(x)は、世界的なマラソン選手の速さを想定したものとすると、
f(x)=a*u+b*u+cと表すことができる。
ここで、
u=x−Xt
a=0.5*(補正偏差)*Da
b=Ao
c=(補正偏差)*Db+Dc+Yt
補正偏差は、MAX(回帰直線の偏差、Ds)
速さが世界的なマラソン選手の速さになる時間をXproとすると、以降は等速なので、
f(x)=f(Xpro)+Ao*(x−Xpro)と表すことができる。
【0045】
速度をvf(x)とおくと、世界的なマラソン選手の速さになるまでは、
vf(x)=(d/dx)f(x)=(補正偏差)*Da*(x−Xt)+Ao、より、
Xpro=((世界的なマラソン選手の速さ)−Ao)/(補正偏差)/Da+Xtとなる。
以上より、現在時刻Xcでの変化予測範囲の上限値は、
[速さが世界的なマラソン選手の速さ以下のとき、つまりXc≦Xproのとき]
0.5*(補正偏差)*Da*(Xc−Xt)+Ao*(Xc−Xt)+(補正偏差)*Db+Dc+Yt、
[速さが世界的なマラソン選手の速さになったとき、つまりXc>Xproのとき]
0.5*(補正偏差)*Da*(Xpro−Xt)+Ao*(Xpro−Xt)+(補正偏差)*Db+Dc+Yt+Ao*(Xc−Xpro)、と表すことができる。
【0046】
次に、図5において、点Kは、他者判定の範囲の下限値を示す。この他者判定の範囲の下限値を、時間の関数としてY=g(x)とおくと、
g(x)=a*u+b*u+cと表すことができる。
ここで、
u=x−Xt
a=0.5*(補正偏差)*Da
b=Ao
c=(補正偏差)*Db+Dc+Yt
補正偏差は、MAX(回帰直線の偏差、Ds)
速さが0になる時間をXzeroとすると、以降は等速なので、
g(x)=g(Xzero)と表すことができる。
【0047】
速度をvg(x)とおくと、速さが0になるまでは、
vg(x)=(d/dx)g(x)=−(補正偏差)*Da*(x−Xt)+Ao、より、
Xzero=Ao/(補正偏差)/Da+Xtとなる。
以上より、現在時刻Xcでの変化予測範囲の下限値は、
[速さが0以上のとき、つまりXc≦Xzeroのとき]
−0.5*(補正偏差)*Da*(Xc−Xt)+Ao*(Xc−Xt)−(補正偏差)*Db−Dc+Yt、
[速さが0になったとき、つまりXc>Xzeroのとき]
−0.5*(補正偏差)*Da*(Xzero−Xt)+Ao*(Xzero−Xt)−(補正偏差)*Db−Dc+Yt、と表すことができる。
【0048】
このように、回帰直線と、変化予測範囲を設定し、他の携帯電話機の挙動による判定(他者判定)を行なう。具体的には、現在時刻Xcの自身の実測値である点Kが、変化予測範囲を逸脱したときに、サーバ装置20に対して、データを送信する(アップロード)。具体的には、他者判定におけるサーバ装置への次回アップロード時刻は、
(アップロード時刻)=現在時刻(実測値が変化予測範囲を逸脱した時刻)
=無限大(実測値が変化予測範囲内にあるとき)となる。
【0049】
次に、本実施形態に係るランキング通知システムの具体的動作について説明する。図6は、本実施形態に係るランキング通知システムを構成する携帯電話機とサーバ装置とのデータのやり取りを示すシーケンスチャートであり、図7は、イベントとしてのマラソン大会と参加者のランキングを示す図である。また、図8A〜図8Cは、携帯電話機における画面表示例を示す図である。
【0050】
図7に示すように、本実施形態では、ユーザが地理的に分散している場合に、ネットワーク上で競技大会(例えば、マラソン)を企画し、ユーザが実際に運動(走行)し、ランキングを競いあう競技大会を行なう。なお、本発明は、マラソン大会のみならず、ランキングを競うものであれば、どんなものでも適用することが可能である。例えば、競泳大会などに適用することができる。
【0051】
図6において、まず携帯電話機が、ログインを行なう(1)。次に、サーバ装置が、そのイベントであるマラソン大会と、その識別情報(データ)を携帯電話機に返送する(2)。このとき、携帯電話機には、図8Bに示すような画面が表示される。図8Bに示すように、参加可能なイベントとして、「今日のマラソン大会」が複数種類表示され、ユーザは、いずれかを選択することができる。ユーザがいずれかのマラソン大会を選択すると、図6において、参加マラソンを選択して、参加要求を行なうこととなる(3)。次に、サーバ装置は、その参加要求に対して応答を行なう(4)。
【0052】
大会開始時間になると、マラソン大会が開始される。各ユーザが携帯電話機を携帯しながら、地理的に離れた場所で走行を行なう。各携帯電話機は、走行距離と経過時間をセンサで取得する。そして、送信タイミング決定部13が、センサから取得したデータを、サーバ装置へ送信するタイミングを決定すると、取得したデータのアップロードが行なわれる(5−1)。サーバ装置は、図7に示すようなランキングデータを携帯電話機へ送信する(5−2)。このランキングデータを取得すると、携帯電話機は、図8Aに示すような画面が表示される。図8Aに示すように、例えば、「現在32位」で、31位のユーザが前方500mに位置し、また、33位のユーザが公報300mに位置することが表示される。
【0053】
携帯電話機では、最適な更新間隔、すなわち、サーバ装置へのアップロードのタイミングを計算し、最適なアップロードタイミングが決定されたら、データをサーバ装置へ送信する(5−3)。そして、サーバ装置は、図7に示すようなランキングデータを携帯電話機へ送信する(5−4)。最終的に、予め設定されたゴールに相当する距離を走行すると、そのユーザはゴールとなり、最終順位が表示される(6)。このとき、携帯電話機では、図8Cに示すような画面が表示される。図8Cに示すように、例えば、「GOAL!!」、「あなたは20位でした。」と表示される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係るランキング通知システムによれば、ユーザが地理的に同一の場所に集まっておらず、地理的に分散していても、ランキングを競いあう競技大会等を企画・開催することができる。また、大規模な競技大会を、容易に企画・開催することができる。例えば、東京都の企画・運営で開催されている東京マラソン大会と同様のマラソン大会を、一人のユーザの企画・運営で容易に開催することができる。また、各地の物理的な事象(例えば最高気温や交通渋滞)等のランキングをリアルタイムに把握し、Web等で情報提供することができる。さらに、地理的に分散している箇所で測定される事象の値のラインキングを計算するにあたって、通信トラフィック量とランキング計算サーバの負荷量を低減することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 携帯電話機
11a センサ
11b センサデータ取得部
12 記録部
13 送信タイミング決定部
14 送受信部
15 ランキング決定部
16 表示部
17 グループ管理部
18 制御バス
20 サーバ装置
21 格納部
22 サーバ側ランキング決定部
23 サーバ側送受信部
24 サーバ側グループ管理部
25 制御バス
30 携帯電話基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の物理量を検出するセンサを備えた携帯端末装置であって、
前記センサが、検出時刻情報を含む検出結果情報を出力する度に、前記検出結果情報を記録する記録部と、
前記記録された過去の検出結果情報を用いて、経過時間と検出結果情報との関係を一次式で近似した回帰直線および前記回帰直線に基づく検出結果情報の変化予測範囲を設定し、最新の検出結果情報が前記変化予測範囲を逸脱した時刻を、前記サーバ装置への送信タイミングと決定する送信タイミング決定部と、
前記決定されたタイミングで、自機の検出結果情報をサーバ装置へ送信する送信部と、
前記サーバ装置から、前記特定の物理量を検出するセンサを備えた少なくとも一つの他の携帯端末装置の検出時刻情報を含む検出結果情報を受信する受信部と、
検出時刻が同一である前記他の携帯端末装置の検出結果情報に対する前記自機の検出結果情報のランキングを決定するランキング決定部と、
前記決定されたランキングを画面に表示する表示部と、を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
イベントに対応付けられたグループに登録する旨の情報を出力すると共に、前記サーバ装置から送信された前記グループの識別情報を管理するグループ管理部をさらに備え、
前記送信部は、前記グループに登録する旨の情報を前記サーバ装置へ送信し、
前記受信部は、前記サーバ装置から送信された前記グループの識別情報を受信すると共に、前記サーバ装置から、前記グループに登録されている他の携帯端末装置の前記検出結果情報を受信し、
前記ランキング決定部は、前記グループに登録されている他の携帯端末装置の検出結果情報に対する前記自機の検出結果情報のランキングを決定することを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
特定の物理量を検出するセンサを備えた複数の携帯端末装置と無線通信を行なうサーバ装置であって、
前記各携帯端末装置から受信した検出時刻情報を含む検出結果情報を格納する格納部と、
前記各携帯端末装置の同一時刻における検出結果情報のランキングを決定するサーバ側ランキング決定部と、
いずれか一つの前記携帯端末装置から検出結果情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、いずれか他の前記携帯端末装置から受信した検出結果情報および前記ランキングを送信する送受信部と、を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項4】
イベントに対応付けられたグループへの登録およびそのグループの識別情報を管理するサーバ側グループ管理部をさらに備え、
前記サーバ側ランキング決定部は、前記グループに登録されている各携帯端末装置の同一時刻における検出結果情報のグループ内のランキングを決定し、
前記送受信部は、いずれかの前記携帯端末装置から、前記グループに登録する旨の情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、前記サーバ側グループ管理部から出力された前記グループの識別情報を送信し、前記グループに登録されているいずれか一つの前記携帯端末装置から検出結果情報を受信したときに、その携帯端末装置に対して、前記グループに登録されているいずれか他の前記携帯端末装置から受信した検出結果情報および前記グループ内のランキングを送信することを特徴とする請求項3記載のサーバ装置。
【請求項5】
請求項1記載の携帯端末装置と、請求項3記載のサーバ装置と、から構成されることを特徴とするランキング通知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公開番号】特開2010−206253(P2010−206253A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46423(P2009−46423)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省「ユビキタスサービスプラットフォーム技術に関わる研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】