説明

携帯端末

【課題】 録音した音声の明瞭度を向上させるとともに、エンターテインメント性を付加することが可能な携帯端末を提供する。
【解決手段】 マイクロフォンで収音したアナログ音声信号はA/D部9でデジタル音声信号へと変換され、データバッファ31に一時的に蓄積される。オーディオエンコーダ32はデータバッファ31に蓄積されたデジタル音声信号のエンコードを行い、録音データを生成する。録音データは効果付加モジュール33でエフェクト効果を付加された後にファイル生成モジュール34へと出力される。ファイル生成モジュール34は、エフェクト効果付加後の録音データと、ユーザがデータディスク5に記憶された中から選択したMIDIデータ、オーディオデータ、画像データ及びテキストデータを組み合わせてマルチメディアファイルを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声を録音し、再生することが可能な携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯端末には、電話機としての機能の他に音声を録音する機能や静止画を撮影する機能を持つものが開発されている。このような携帯電話機においては、
録音した音声をメールで送信する機能や、撮影した静止画に音声メッセージを合成する機能を持つものが提案されている。
なお、本出願に関する従来技術の参考文献として、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2002−218092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の携帯電話機では、録音した音声をそのまま使用しているため、ユーザにとって単調で味気ないものとなる上に、場合によっては明瞭度が欠落するという課題があった。
【0004】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、録音した音声の明瞭度を向上させるとともに、エンターテインメント性を付加することが可能な携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、音声を収音し音声信号として出力する音声収音手段と、前記音声信号に信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理後の音声信号を音声データとして記憶する記憶手段とを具備することを特徴とする携帯端末である。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記信号処理後の音声信号を再生する再生手段をさらに具備することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、音声を収音し音声信号として出力する音声収音手段と、前記音声信号に信号処理を施すためのパラメータを生成するパラメータ生成手段と、前記音声信号及び前記パラメータを音声データとして記憶する記憶手段とを具備することを特徴とする携帯端末である。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記音声信号に対して前記パラメータに基づいて信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理後の音声信号を再生する再生手段とをさらに具備することを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、音声信号及び前記音声信号に信号処理を施すためのパラメータを音声データとして記憶する記憶手段と、前記音声信号に対して前記パラメータに基づいて信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理後の音声信号を再生する再生手段とを具備する携帯端末である。
【0010】
また、請求項6に記載の発明は、音声を収音し音声信号として出力する音声収音手段と、前記音声信号に信号処理を施す信号処理手段と、前記音声信号に信号処理を施すためのパラメータを生成するパラメータ生成手段とを具備し、前記信号処理後の音声信号と、前記信号処理前の音声信号及び前記パラメータとの何れか一方を選択し、音声データとして記憶することを特徴とする携帯端末である。
【0011】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明において、前記記憶手段は、前記音声データにMIDIデータを付加して記憶することを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明において、前記記憶手段は、前記音声データにオーディオデータを付加して記憶することを特徴とする。
【0013】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明において、前記記憶手段は、前記音声データに画像データまたはテキストデータを付加して記憶することを特徴とする。
【0014】
また、請求項10に記載の発明は、請求項2または請求項4に記載の発明において、通信手段をさらに具備し、前記通信手段への着信時に前記音声データを前記再生手段で再生することを特徴とする。
【0015】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の発明において、前記記憶手段で記憶する音声データをメールに添付して送信する機能と、他の端末から前記音声データが添付されたメールを受信する機能とを有するメール送受信手段をさらに具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、ユーザが録音した音声に対して様々なエフェクト効果を付与する等の信号処理が可能であるため、録音した音声の明瞭度を向上させるとともに、エンターテインメント性を付加することができる。また、信号処理後のデータを音声データとして保持することで、エフェクト等の信号処理手段を具備しない携帯端末でも当該音声データを再生することができる。
【0017】
また、請求項3から請求項5に記載の発明によれば、ユーザが録音した音声に対してエフェクト効果等の信号処理を施すためのパラメータを生成することが可能であるため、当該パラメータを解釈可能な携帯端末でエフェクト効果をリアルに再現できる。また、音声データを再生する側の携帯端末でパラメータを調整することも可能となる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1から請求項5に記載の発明の効果に加え、ユーザの携帯端末で生成した音声データを送信する相手側の携帯端末で具備する機能に応じて、信号処理後の音声を記憶するか信号処理前の音声と信号処理のパラメータを記憶するかを選択することが可能である。
【0019】
また、請求項7から請求項9に記載の発明によれば、MIDIデータやオーディオデータ、画像データまたはテキストデータを音声データに付加することで、さらにエンターテインメント性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項10に記載の発明によれば、ユーザは信号処理を施した音声データを着信音に割り当てることが可能であり、さらにエンターテインメント性が向上する。
【0021】
また、請求項11に記載の発明によれば、それぞれの携帯端末で録音し、信号処理を行った音声データをユーザ同士でメール交換することが可能であり、さらにエンターテインメント性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機(携帯端末)の構成を示す構成図である。図1において、CPU1は携帯電話機内の各部を制御するCPU(Central Processing Unit)である。
【0023】
ROM2は、CPU1が実行するプログラム等を保持するROM(Read Only Memory)である。RAM3は、CPU1が使用するメモリ領域を提供するRAM(Random Access Memory)である。
【0024】
通信インタフェース4は、シリアル通信またはパラレル通信によりデータディスク5と接続するためのインタフェースである。データディスク5(記憶手段)は、マルチメディアファイル(音声データ)を格納するディスクであり、CPU1は通信インタフェース4を介してデータディスク5内のマルチメディアファイルを読み取る。ここで、マルチメディアファイルとは、オーディオデータに画像データ、テキストデータ、MIDIデータ等を合わせたファイルを指す。また、データディスク5には、MIDIデータやオーディオデータ、画像データ、テキストデータがライブラリとして蓄積されている。
【0025】
図2は、マルチメディアファイルのフォーマット構造の一例を示した図である。図2において、フォーマット構造内のデータはChunk単位で管理される。Contents Info Chunkには、コンテンツの種別やコンテンツ複製許可等の、ファイル管理用のデータが格納される。Optional Data Chunkには、楽曲データの固有情報が含まれる。
【0026】
MIDI Track Chunkには、音源7によって再生されるシーケンスデータ等が格納される。Setup Data Chunkには、MIDI Track Chunk全体における設定パラメータや音色パラメータ、エフェクトデータ等が格納される。Sequence Data Chunkには、音源7によって再生されるシーケンスデータが格納される。
【0027】
ここで、シーケンスデータとは、時間情報を持つMIDIイベントの集合体である。MIDIイベントは、例えば、発音イベント(ノートオン/オフ)や音色イベント(プログラムチェンジ)、音量変更やパンポット変更のためのイベント(コントロールチェンジ)、ピッチ変更イベント(ピッチチェンジ)等である。
【0028】
Audio Track Chunkには、サンプリングされたオーディオデータと実際の発音を行うためのシーケンスデータが格納される。Setup Data Chunkには、Audio Track Chunk全体における設定パラメータや、エフェクトを加える際に用いるパラメータが格納される。Sequence Data Chunkには、オーディオデータを発音するためのシーケンスデータが格納される。
【0029】
ここで、シーケンスデータは、時間に同期して発音、消音するためにオーディオデータと結び付けられたイベントと、タイミングを指定するためのDurationからなる。また、音量変更やパンポット変更のためのイベント等もシーケンスデータに含まれる。
【0030】
Wave Data Chunkには、実際のオーディオデータが特定の圧縮オーディオフォーマットで圧縮されて格納される。Wave Data Chunkのヘッダーには、オーディオデータの種類やサンプリング周波数、ビット等の情報が格納される。
【0031】
なお、一つのWave Data Chunkが一つのオーディオデータに対応しており、Audio Track Chunk内に複数のWave Data Chunk(すなわち、複数のオーディオデータ)を格納することも可能である。Audio Track Chunk内では、各Wave Data Chunkに対してIDを割り当てることで管理され、このIDによってSequence Data Chunkの発音イベントと関連付けられる。
【0032】
Graphics Track Chunkには、ディスプレイ13に表示を行うための描画シーケンスデータ、画像データ、テキストデータ等が格納される。Setup Data Chunkには、Graphics Track Chunk全体における設定パラメータが格納される。Sequence Data Chunkには、ディスプレイ13に描画するためのシーケンスデータが格納される。Font Data Chunkには、テキストデータが、Image Data Chunkには画像データが格納される。
【0033】
ここで、シーケンスデータは、座標を指定するための数値表現(Coordinates)と表示タイミングや表示時間長等を指定するための数値表現(Duration)で表され、テキストや画像を時間に同期して表示、消去するためのシーケンスが記述される。
【0034】
Graphics Track Chunkは複数の仮想プレーンを持つ表示デバイスを想定しており、Graphics Track Chunkには各仮想プレーンに対応したSequence Data Chunkを複数格納することができる。この場合、実際の表示デバイス(ディスプレイ13)には仮想プレーンを合成した結果が表示される。
【0035】
図1に戻って、入力部6は、ユーザの指示を入力する操作キー等を有する入力部である。音源7は、図2のMIDI Track Chunk内に格納されたMIDI形式のメロディデータを解釈し、FM(Frequency Modulation)方式やWT(Wave Table)方式によってデジタル楽音データを生成する音源である。音源7の実装方法は、CPU1によるソフトウェア方式でも、専用のハードウェアを設ける方法でもよい。
【0036】
DSP部8は、図2のAudio Track Chunk内に格納されたオーディオデータのファイル形式に対してリアルタイムでデコード処理を行い、また、リニアなサンプリングデータからMP3形式やAAC形式といった特定の圧縮オーディオフォーマットにエンコードする処理を行うDSP(Digital Signal Processor)である。さらにまた、DSP部8は、オーディオデータに対して様々なエフェクト効果を付加する処理を行うものである。
【0037】
A/D部9は、マイクロフォン(音声収音手段、図示なし)で収音したアナログ音声信号をデジタル音声データへ変換するADC(Analog-to-Digital Converter)である。なお、ここで使用するマイクロフォンは、携帯電話機の備える通話用のマイクロフォンを用いてもよいし、これに代えて専用のマイクロフォンを設けてもよい。
【0038】
D/A部10は、DSP部8でデコードされたオーディオデータまたは、音源7で生成されたデジタル楽音データをアナログ音声信号に変換するDAC(Digital-to-Analog Converter)である。スピーカ11(再生手段)は、D/A部10で変換されたアナログ音声信号を発音するスピーカである。
【0039】
描画モジュール12は、マルチメディアファイル内の画像データおよびテキストデータに基づいて、ディスプレイ13への表示を制御するものである。ディスプレイ13は、描画モジュール12の出力を表示する表示器である。バスライン14は、携帯電話機内の各部を相互に接続するバスラインである。
【0040】
なお、本発明の携帯電話機は図1に示した機能以外に電話機能(通信手段)を備えているほか、電子メールによりファイルを送受信する機能(メール送受信手段)およびインターネットを介してファイルをアップロード・ダウンロードする機能を備えている。
【0041】
次に、上述した実施形態の動作を、図3から図6を参照して説明する。図3は、図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを生成する際の機能を示した機能構成図であり、図4は、図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを生成する手順を示す図である。
【0042】
ユーザが入力部6から所定の操作を行うと(ステップS401)、録音が開始され(ステップS402)、ユーザがマイクロフォンから音声等を入力することにより、マイクロフォンからA/D部9へアナログ音声信号が出力される。A/D部9は、入力したアナログ音声信号のサンプリングを行い、リニアなサンプリングデータをデータバッファ31に一時的に蓄積する。なお、データバッファ31とは、RAM3内に確保されるメモリ領域である。
【0043】
データバッファ31に蓄積されたリニアなサンプリングデータは、DSP部8の一機能であるオーディオエンコーダ32でMP3形式やAAC形式といった特定の圧縮オーディオデータフォーマットに変換され、オーディオデータ(録音データ)が生成される(ステップS403)。
【0044】
ステップS401〜ステップS403で録音データを生成する録音処理は複数回に分けて行うことが可能であり、複数回に分けて録音された録音データは、後述のファイル生成モジュール34による処理において、図2に示すマルチメディアファイルのAudio Track Chunk内のWave Data Chunk #1〜Wave Data Chunk #nにそれぞれ保存される。
【0045】
ステップS403で生成された録音データは、続いてDSP部8の一機能である効果付加モジュール33(信号処理手段、パラメータ生成手段)でエフェクトを加える処理が行われる。効果付加モジュール33で付加されるエフェクトの種類としては、例えば、録音データに対してボイスチェンジのエフェクト機能を設け、元の音声とは違った声質に変更することが挙げられる。
【0046】
また、イントネーションなど音声の特徴をデフォルメする機能を設け、元の音声の特徴を強調した新たな録音データを作り出すことが可能である。さらにまた、音声に含まれる耳障りな高周波の成分を抑えるディエッサー等の機能を設け、元の音声を聞きやすくした新たな録音データを作り出すことが可能である。さらにまた、話速変換のエフェクト機能を設け、元の音声を聞きやすくした新たな録音データを作り出すことが可能である。
【0047】
ユーザが入力部6から効果を付加する指示を入力し(ステップS404、ステップS405:Yes)、さらに付加する効果の選択を行うと(ステップS406)、効果付加モジュール33は録音データに対してユーザから指定された効果を付加する処理を行う(ステップS407)。一方、ユーザから効果を付加する指示がない場合には(ステップS405:No)、ステップS409へと進む。
【0048】
なお、ステップS401〜ステップS403で複数回に分けて録音を行い、複数の録音データが生成されている場合には、それぞれの録音データに関して個別に効果付加の処理が可能である。
【0049】
また、ステップS406における効果の選択では、効果付加モジュール33で行う処理の方法として、ユーザが選択した効果を録音データに付加して新たな録音データを生成する方法と、ユーザが録音データを再生する際に、効果付加モジュール33等の信号処理手段に与えられるエフェクト効果のパラメータ(例えば、図2のAudio Track ChunkのSetup Data Chunkに保存され、再生の際に参照される)を生成し録音データと共に保持する方法との何れかを選択可能とする。
【0050】
ユーザが選択した効果を録音データに付加して新たな録音データを生成する方法では、録音データを再生する相手側端末にエフェクト機能がない場合でも再生可能である。一方、エフェクト効果のパラメータを生成し録音データと共に保持する方法では、録音データを再生する相手側端末で信号処理を行うことで、相手側端末ではリアルなエフェクト効果を再現することができる。また、相手側端末でそのパラメータを変更することでエフェクト効果を調整するといった利用形態も可能となる。さらに、上記二つの方法を選択可能とすることで、録音データを再生する相手側端末の機能に応じたデータを生成することができる。
【0051】
効果が付加された録音データは、CPU1の一機能であるファイル生成モジュール34へ入力される。続いて、ユーザが入力部6からMIDIデータを付加する指示を行い(ステップS408、ステップS409:Yes)、さらにデータディスク5から付加するMIDIデータを選択すると(ステップS410)、選択されたMIDIデータがファイル生成モジュール34へ入力される(ステップS411)。
【0052】
同様に、ユーザが入力部6からオーディオデータを付加する指示を行い(ステップS412、ステップS413:Yes)、さらにデータディスク5から付加するオーディオデータを選択すると(ステップS414)、選択されたオーディオデータがファイル生成モジュール34へ入力される(ステップS415)。
【0053】
さらに、ユーザが入力部6から画像データまたはテキストデータを付加する指示を行い(ステップS416、ステップS417:Yes)、さらにデータディスク5から付加する画像データまたはテキストデータを選択すると(ステップS418)、選択された画像データまたはテキストデータがファイル生成モジュール34へ入力される。こうして、各データが入力されたファイル生成モジュール34は、図2に示すフォーマットのマルチメディアファイルを生成する(ステップS419)。
【0054】
以上でマルチメディアファイルの生成手順は終了するが、入力した録音データとMIDIデータ、オーディオデータ、画像データおよびテキストデータの各データに対して各データを再生するタイミングを指定する機能があってもよい。なお、入力されたMIDIデータは、図2のMIDI Track ChunkのSequence Data Chunkへ、オーディオデータはAudio Track Chunkへ、画像データはGraphics Track ChunkのImage Data Chunkへ、テキストデータは、Graphics Track ChunkのFont Data Chunkへ格納されてマルチメディアファイルが生成される。
【0055】
続いて、図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを再生する際の手順について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを再生する際の機能を示した機能構成図であり、図6は、図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを再生する手順を示す図である。
【0056】
ユーザが入力部6を使用してマルチメディアファイルの選択指示を行うと(ステップS601)、CPU1の一機能として実現されるプレイヤー51は、データディスク5から該当するマルチメディアファイルを読み出す(ステップS602)。ここで、マルチメディアファイルは図2に示すフォーマット形式である。
【0057】
続いて、ユーザが入力部6を使用して選択したマルチメディアファイルの再生指示を行うと(ステップS603)、プレイヤー51はステップS602で読み出したマルチメディアファイルの再生処理を開始する(ステップS604)。この後、プレイヤー51は、マルチメディアファイルの各Chunk内に格納されたシーケンスデータに従って各時刻に行う処理を判断し、処理の対象となるデータの種類に応じて、当該データの出力先を振り分ける(ステップS605)。
【0058】
MIDI Track Chunk内のMIDIデータを処理する場合には、プレイヤー51はMIDIデータ内のシーケンスデータの時刻に従い音源7へMIDIイベントを出力する。音源7は、入力したMIDIイベントに従ってデジタル楽音データを生成する。生成されたデジタル楽音データは、効果付加モジュール52へと出力される。
【0059】
Audio Track Chunk内のオーディオデータを処理する場合は、プレイヤー51はDSP部8の一機能であるオーディオデコーダ53へオーディオデータを出力する。オーディオデコーダ53は、入力した特定の圧縮オーディオデータフォーマットであるオーディオデータをリニアなオーディオデータにリアルタイムでデコードする(ステップS607)。
【0060】
効果付加モジュール52(信号処理手段)は、様々なエフェクト機能を備えており、音源7から入力するデジタル楽音データ及びオーディオデコーダ53から入力するオーディオデータに対し、リアルタイムにエフェクト効果を付加することができる。
【0061】
図4のステップS406に関する説明で前述したように、マルチメディアファイルにエフェクト効果のパラメータ(例えば、図2のAudio Track ChunkのSetup Data Chunkに含まれる)が保持されているときには、効果付加モジュール52にパラメータを加える。効果付加モジュール52は、入力したパラメータに従って対応する録音データ(図2のWave Data Chunk内のオーディオデータ)に対しエフェクト効果を付加し、D/A部10へ出力する。
【0062】
エフェクト効果を付加後のデジタル楽音データ及びオーディオデータは、D/A部10でアナログ楽音信号に変換され、アンプ(図示せず)で増幅された後にスピーカ11から再生される。なお、図4のステップS406において、効果を録音データに付加して新たに生成された録音データを持つマルチメディアファイルにおいては、その録音データについては効果付加モジュール52により効果を付加しなくてもエフェクト効果が付加された楽音が再生される。
【0063】
一方、ステップS605においてGraphic Track Chunk内の画像データを処理する場合には、プレイヤー51はCPU1の一機能であるグラフィックデコーダ54へ画像データを出力する。グラフィックデコーダ54は、プレイヤー51から入力した画像データ(例えば、JPEG形式やPNG形式で圧縮されている)をディスプレイ13に表示するための実データにデコードする(ステップS608)。
【0064】
ステップS605においてGraphic Track Chunk内のテキストデータを処理する場合には、プレイヤー51はCPU1の一機能であるテキストデコーダ55へテキストデータを出力する。テキストデコーダ55は、プレイヤー51から入力したテキストデータをフォントに置き換え、ディスプレイ13に表示するための実データにデコードする(ステップS609)。
【0065】
ステップS608、ステップS609でデコードされた画像データおよびテキストデータは描画モジュール12へと出力される。描画モジュール12は、入力した画像データおよびテキストデータを元に、描画の時刻シーケンスに従って、歌詞(テキスト)のワイプや画像の移動、表示切り替え等の処理を施し(ステップS610)、ディスプレイ13に表示する(ステップS611)。
【0066】
一つのデータに関する処理が終了すると、マルチメディアファイルの再生が終了していなければ(ステップS612:No)、ステップS605に戻り、プレイヤー51は次の時刻に行う処理を判断し、処理の対象となるデータの種類に応じて、当該データの出力先を振り分ける。以降、マルチメディアファイルの再生中はステップS605〜ステップS612の処理を繰り返し実行する。
【0067】
このように、本実施形態に係る携帯電話機を用いることで、ユーザは録音した音声に対し様々なエフェクト効果を付加することが可能であり、録音した音声の聞き取り易さが向上すると共に、エンターテインメント性を付加することができる。
【0068】
また、生成したマルチメディアファイルを携帯電話機の着信音として使用することで、ユーザは様々なエフェクト効果を持つ録音データを着信音に割り当てることが可能であり、さらにエンターテインメント性が向上する。さらにまた、生成したマルチメディアファイルをメールに添付し、携帯電話機のメール機能で送受信することにより、ユーザ同士で録音データを交換することも可能である。
【0069】
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成は本実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、オーディオデータは特定の形式で圧縮されている必要はなく、圧縮されていないオーディオデータに対しても本発明を適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、音声を録音し、再生することが可能な携帯端末に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の構成を示す構成図である。
【図2】マルチメディアファイルのフォーマット構造の一例を示した図である。
【図3】図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを生成する際の機能を示した機能構成図である。
【図4】図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを生成する手順を示す図である。
【図5】図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを再生する際の機能を示した機能構成図である。
【図6】図1の携帯電話機でマルチメディアファイルを再生する手順を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4…通信インタフェース、5…データディスク(記憶手段)、6…入力部、7…音源、8…DSP、9…A/D部、10…D/A部、11…スピーカ(再生手段)、12…描画モジュール、13…ディスプレイ、14…バスライン、33…効果付加モジュール(信号処理手段、パラメータ生成手段)、52…効果モジュール(信号処理手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を収音し音声信号として出力する音声収音手段と、
前記音声信号に信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理後の音声信号を音声データとして記憶する記憶手段と
を具備することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記信号処理後の音声信号を再生する再生手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
音声を収音し音声信号として出力する音声収音手段と、
前記音声信号に信号処理を施すためのパラメータを生成するパラメータ生成手段と、
前記音声信号及び前記パラメータを音声データとして記憶する記憶手段と
を具備することを特徴とする携帯端末。
【請求項4】
前記音声信号に対して前記パラメータに基づいて信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理後の音声信号を再生する再生手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載の携帯端末。
【請求項5】
音声信号及び前記音声信号に信号処理を施すためのパラメータを音声データとして記憶する記憶手段と、
前記音声信号に対して前記パラメータに基づいて信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理後の音声信号を再生する再生手段と
を具備する携帯端末。
【請求項6】
音声を収音し音声信号として出力する音声収音手段と、
前記音声信号に信号処理を施す信号処理手段と、
前記音声信号に信号処理を施すためのパラメータを生成するパラメータ生成手段と
を具備し、
前記信号処理後の音声信号と、前記信号処理前の音声信号及び前記パラメータとの何れか一方を選択し、音声データとして記憶することを特徴とする携帯端末。
【請求項7】
前記記憶手段は、前記音声データにMIDIデータを付加して記憶することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項8】
前記記憶手段は、前記音声データにオーディオデータを付加して記憶することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項9】
前記記憶手段は、前記音声データに画像データまたはテキストデータを付加して記憶することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の携帯端末。
【請求項10】
通信手段をさらに具備し、
前記通信手段への着信時に前記音声データを前記再生手段で再生することを特徴とする請求項2または請求項4に記載の携帯端末。
【請求項11】
前記記憶手段で記憶する音声データをメールに添付して送信する機能と、他の端末から前記音声データが添付されたメールを受信する機能とを有するメール送受信手段をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−108382(P2007−108382A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298499(P2005−298499)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】