説明

摩擦低減テクスチャ表面を有する金属シート及びプレート並びにそれらの製造方法

【解決手段】
摩擦低減テクスチャ表面を有する金属シート及びプレート並びにこれらの金属シート及びプレートを製造する方法を開示する。一実施例において、少なくとも1つの表面に溝が刻設された少なくとも1つの金属製品を含む輸送容器が提供され、溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する少なくとも1つの金属製品を含んでおり、溝が刻設された表面はリブレット形体を形成し、該リブレット形体は、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットが表面の少なくとも一部に沿って延びており、リブレット形体は、該リブレット形体を保護するために構成された少なくとも1つのコーティングでコートされている。一実施例において、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、摩擦低減テクスチャ表面となる。一実施例において、金属製品は航空機の少なくとも一部分を製造するのに用いられる。一実施例において、金属製品はロータブレードの少なくとも一部分を製造するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗力(drag)とは、流体(液体又はガス)の中を移動する固体により発生される機械力である。流体が空気のようなガスであるとき、それは空気力学的抗力(または空気抵抗)と称される。流体が水のような液体であるとき、それを水力力学的抗力という。ある例では、空気力学的ドラッグ源は、空気分子と翼または機体(例えば航空機の機体)の固体表面との間での表面摩擦である。別の例では、空気力学的ドラッグ源は、空気分子とロータブレードの固体表面(例えば、風力タービンにあるような)との間での表面摩擦である。表面摩擦(skin friction)は、固体とガスとの間での相互作用であるため、表面摩擦の大きさは、固体とガスの両方の特性に依存する。固体の場合、なめらかな、ワックス塗りの表面は、粗い表面と比べて生じる表面摩擦は小さい。ガスの場合、その大きさは、空気の粘性及び流れの運動に対する粘性の相対的大きさに依存し、レイノルズ数で表される。固体表面に沿って、低いエネルギー流の境界層が生成され、表面摩擦の大きさは、境界層の状況に依存する。
【発明の概要】
【0002】
摩擦を低減するテクスチャ表面を有する金属のシート及びプレート並びにそれらの製造方法をここに開示する。
【0003】
本発明の一実施例において開示する輸送容器は、実質的な溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する少なくとも1つの金属製品を含み、実質的な溝が刻設された表面は、リブレット形体(riblet topography)を形成し、前記リブレット形体は、表面の少なくとも一部分に沿って延びる複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを含み、前記リブレット形体は、リブレット形体を十分維持できるように構成された少なくとも1つのコーティング又はコート層で被覆される。一実施例において、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットにより、摩擦を低減するテクスチャ表面が形成される。一実施例において、金属製品は、航空機の少なくとも一部分を製造するのに用いられる。一実施例において、金属製品は、ローターブレードの少なくとも一部分を製造するのに用いられる。一実施例において、金属製品は、アルミニウム合金のシート又はプレートである。一実施例において、金属製品はスチールのシート又はプレートである。
【0004】
本発明の一実施例において開示する金属製品の製造方法は、ほぼ平らな金属シート又はプレートを準備すること、ほぼ平らな金属シート又はプレートをローリングミルを通過させることを含み、前記ローリングミルは、外表面にリブレット形体が刻設されたロールであって、該リブレット形体は複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを含む少なくとも1つのロールと、変化のないほぼ平らな外表面を有する少なくとも1つのロールとを含むものであり、表面の少なくとも一部分に沿って延びる複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを含む実質的な溝が刻設された金属シート又はプレートを作ること、実質的な溝が刻設された金属シート又はプレートを、リブレット形体を十分保護できるように構成された少なくとも1つのコート層で被覆すること、金属製品を得ること、を含んでいる。
【0005】
一実施例において、少なくとも1つのコート層は、プライマー(下地層)、トップコート及びイージー/セルフクリーニングコート層からなる群から選択される。一実施例において、イージー/セルフクリーニングコート層は超疎水性コート層である。一実施例において、疎水性化学添加剤はトップコートに加えられる。一実施例において、超疎水性化学添加剤は、官能化されたシロキサン系である。
【0006】
一実施例において、本発明の金属製品は、輸送容器を製造するのに用いられ、該輸送容器として、限定するものでないが、航空機又は飛行体(例えば、エアプレイン、ヘリコプター、ミサイル、グライダー、バルーン及び小型飛行船)、陸上乗物(例えば、車及び列車)、海上乗物(例えば、潜水艦、ヨット、無人水上乗物、自律的水中乗物等)及びパイプライン壁などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明を、添付の図面を参照してさらに詳細に説明する。なお、幾つかの図において、同様な構造については同じ符号を付している。図面は、必ずしも縮尺とおりではなく、本発明の原理を示すものは強調して示されている。
【0008】
【図1A】図1A〜1Dは、摩擦低減テクスチャ表面を有する金属のシート及びプレートを製造するのに用いられることができる異なるロールの実施例であって、図1Aは、リブレット高さが約125μmのV形溝が形成されたリブレット形体を有するロールを示す図である。
【図1B】図1Bは、リブレット高さが約125μmのV形溝が形成されたリブレット形体を有するロールを示す図である。
【図1C】図1Cは、リブレット高さが約50μmのV形溝が形成されたリブレット形体を有するロールを示す図である。
【図1D】図1Dは、リブレット高さが約50μmのV形溝が形成されたリブレット形体を有するロールを示す図である。
【0009】
【図2A】図2A〜2Dは、ロールの外周面に形成されることができる様々なリブレット形体の例であって、図2AはV形リブレットを示す図である。
【図2B】図2Bは、矩形リブレットを示す図である。
【図2C】図2Cは、鮫鱗形リブレットを示す図である。
【図2D】図2Dは、変形鮫鱗形リブレットを示す図である。
【0010】
【図3】図2A−2Dに示されるリブレット形状の様々なパラメータ(間隔、高さ、半径R、半径r及び角度)のリスト表である。
【0011】
【図4A】アルミニウム合金シートを、ローリングミルの中を異なる圧延率で通過させることにより、0.270インチゲージのアルミニウムAlクラッド合金シート上に得られたリブレット形体の断面光学金属組織像を示しており、図4Aが圧延率が最も大きく、前記ローリングミルは、外面が“V”形リブレット形体に形成された少なくとも1つのロールを含み、ロール上のリブレット形体は、高さ約250μmで隣りどうしの間隔が約500μmである多数の隣接長手リブレットを含んでいる。
【図4B】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図4Aのアルミニウム合金シートの次である。
【図4C】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図4Bのアルミニウム合金シートの次である。
【図4D】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図4Cのアルミニウム合金シートの次である。
【図4E】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図4Dのアルミニウム合金シートの次である。
【図4F】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図4Eのアルミニウム合金シートの次である。
【図4G】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図4Fのアルミニウム合金シートの次である。
【図4H】図4Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさは図4Hのアルミニウム合金シートが最も小さい。
【0012】
【図5】図5は、図4A−4Hの試料について、ローリングミルのロールギャップ(インチ)と、ローリング後のアルミニウムAlクラッド合金シート上のリブレットの高さ(μm)と、ローリング後のアルミニウム合金シート上の残存クラッド(インチ)と、ローリング後のアルミニウム合金シートのゲージにおける圧延率(%)との関係を示すグラフである。
【0013】
【図6A】アルミニウム合金シートを、ローリングミルの中を異なる圧延率で通過させることにより、0.270インチゲージのアルミニウムAlクラッド合金シート上に得られたリブレット形体の断面光学金属組織像を示しており、図6Aが圧延率が最も大きく、前記ローリングミルは、外面が鮫鱗形リブレット形体に形成された少なくとも1つのロールを含み、ロール上のリブレット形体は、高さ約250μmで隣りどうしの間隔が約500μmである多数の隣接長手リブレットを含んでいる。
【図6B】図6Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図6Aのアルミニウム合金シートの次である。
【図6C】図6Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図6Bのアルミニウム合金シートの次である。
【図6D】図6Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図6Cのアルミニウム合金シートの次である。
【図6E】図6Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさが図6Dのアルミニウム合金シートの次である。
【図6F】図6Aと同様の光学金属組織像であり、圧延率の大きさは図6Fのアルミニウム合金シートが最も小さい。
【0014】
【図7】図7は、図6A−6F試料について、ローリングミルのロールギャップ(インチ)と、ローリング後のアルミニウムAlクラッド合金シート上のリブレットの高さ(μm)と、ローリング後のアルミニウム合金シート上の残存クラッド(インチ)と、ローリング後のアルミニウム合金シートのゲージにおける圧延率(%)との関係を示すグラフである。
【0015】
【図8】図8は、本発明の摩擦低減テクスチャ表面から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する流れ経路の一実施例を示す
【0016】
【図9】図9は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する一実施例について、時間に対する温度の関係を示している。
【0017】
【図10】図10は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する流れ経路の一実施例を示す。
【0018】
【図11】図11は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する一実施例について、時間に対する温度の関係を示している。リブレットは、溶体化熱処理ステップの後でローリングされた。
【0019】
【図12】図12は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する一実施例について、時間に対する温度の関係を示している。リブレットは、アニーリングステップの後、溶体化熱処理ステップの前にローリングされた。
【0020】
【図13】図13は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有するアルミニウム合金スキンシート又はプレートを製造する流れ経路の一実施例を示す。
【0021】
【図14】図14は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する一実施例について、時間に対する温度の関係を示している。
【0022】
【図15】図15は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有するアルミニウム合金シート又はプレートを製造する流れ経路の一実施例を示す。
【0023】
【図16】図16は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有する機体アルミニウム合金スキンシートを製造する一実施例について、時間に対する温度の関係を示している
【0024】
【図17】図17は、本発明のリブレット形体から形成された溝付き表面を有するアルミニウム合金翼スキンシート又はプレートを製造する流れ経路の一実施例を示す。
【0025】
【図18A】図18Aは、本発明の方法を用いて、Alクラッドアルミニウム合金シートに永久的ローリングされたリブレットパターン断面の光学金属組織像である。
【図18B】図18Bは、本発明の方法を用いて、Alクラッドアルミニウム合金シートに永久的ローリングされた異なるリブレットパターン断面の光学金属組織像である。
【0026】
【図19】図19は、本発明のアルミニウム合金の作製に際し、リブレット形体を有するアルミニウム合金シート又はプレートの表面調製及びペインティングを実行する流れ経路の一実施例である。
【0027】
【図20】図20Aは、本発明のアルミニウム合金の作製に際し、リブレット形体を有するアルミニウム合金シート又はプレートについて、プライマー及びトップコートの両方に手動サクションカップを用いて、プライマー/トップコート複合体を施すための構成の一実施例を示している。図20Bは、一実施例の表に基づくプライマー/トップコート複合体で被覆されたV形リブレットを有するアルミニウム合金製品の断面の光学金属組織像である。
【0028】
【図21】図21Aは、本発明のアルミニウム合金の作製に際し、リブレット形体を有するアルミニウム合金シート又はプレートについて、プライマー及びトップコートの両方に手動サクションカップを用いて、プライマー/トップコート複合体を施すための構成の一実施例を示している。図21Bは、一実施例の表に基づくプライマー/トップコート複合体で被覆されたV形リブレットを有するアルミニウム合金製品の断面の光学金属組織像である。
【0029】
【図22】図22Aは、本発明のアルミニウム合金の作製に際し、リブレット形体を有するアルミニウム合金シート又はプレートについて、プライマーに手動サクションカップ、トップコートにロボット式回転静電法を用いて、プライマー/トップコート複合体を施すための構成の一実施例を示している。図22Bは、一実施例の表に基づくプライマー/トップコート複合体で被覆されたV形リブレットを有するアルミニウム合金製品の断面の光学金属組織像である。
【0030】
【図23】図23Aは、本発明のアルミニウム合金の作製に際し、リブレット形体を有するアルミニウム合金シート又はプレートについて、プライマー及びトップコートの両方に手動静電圧力ポットを用いて、プライマー/トップコート複合体を施すための構成の一実施例を示している。図23Bは、一実施例の表に基づくプライマー/トップコート複合体で被覆された修正正弦波リブレットを有するアルミニウム合金製品の断面の光学金属組織像である。
【0031】
【図24】図24Aは、本発明のアルミニウム合金の作製に際し、リブレット形体を有するアルミニウム合金シート又はプレートについて、プライマーに静電浸漬E-コート、トップコートに手動サクションカップを用いて、プライマー/トップコート複合体を施すための構成の一実施例を示している。図24Bは、一実施例の表に基づくプライマー/トップコート複合体で被覆されたV形リブレットを有するアルミニウム合金製品の断面の光学金属組織像である。
【0032】
【図25A】本発明の永久的ローリングされたリブレット形体を有するアルミニウム合金製品の汚れを防止する方法の実施例である。
【図25B】本発明の永久的ローリングされたリブレット形体を有するアルミニウム合金製品の汚れを防止する方法の他の実施例である。
【0033】
【図26A】イージー/自己清浄成分で強化された本発明の一実施例の摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品が、イージー/自己清浄成分無しのペイントされた形体に比べて清浄度を改善させることができることを示している。
【図26B】イージー/自己清浄成分で強化された本発明の一実施例の摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品が、イージー/自己清浄成分無しのペイントされた形体に比べて清浄度を改善させることができることを示している。
【図26C】イージー/自己清浄成分で強化された本発明の一実施例の摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品が、イージー/自己清浄成分無しのペイントされた形体に比べて清浄度を改善させることができることを示している。
【0034】
【図27】図26A−26Cの摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品について、ペイント及びイージー/自己清浄剤の条件を表に示したものである。
【0035】
【図28】図28Aは、ローリングされたリブレット形体の一実施例の概略図であり、ホウ酸−硫酸又は硫酸陽極酸化の使用を可能にする含浸シール化合物の表面処理が施されている。 図28Bは、ローリングされたリブレット形体の一実施例の概略図であり、ホウ酸−硫酸又は硫酸陽極酸化の使用を可能にする含浸シール化合物の表面処理を施されている。
【0036】
【図29】図29Aは、ローリングされたリブレット形体の一実施例の概略図であり、手動静電法を用いて表面処理が施されている。リブレット形体は、深い“V”形で正弦波の形体を含んでいる。
【0037】
【図30A】図30A〜30Dは、本発明の一実施例を示しており、含浸シール化合物は、イージー/自己清浄系と共に、イージー/自己清浄系がペインティングされた標準のもの又はイージー/自己清浄系なしてペインティングされた標準のものよりもすぐれた清浄度を有している。図30Aは、ホウ酸−硫酸で陽極酸化されシールされた(イージー/自己清浄成分は無し)標準のプライマーと標準のトップコーを有する本発明の一実施例に係るアルミニウム合金製品を示している。
【図30B】図30Bは、ホウ酸−硫酸で陽極酸化されシールされた標準のプライマーと標準のトップコートに、アナターセ型二酸化チタン(TOTO)を含む光活性化系の超親水性コーティングの2つの層を有する本発明の一実施例に係るアルミニウム合金製品を示している。
【図30C】図30Cは、ホウ酸−硫酸で陽極酸化された標準のプライマー(シーリングは無し)に、2%TOTOが混合されたSDC MP101ポリシロキサンでコートされた本発明の一実施例に係るアルミニウム合金製品を示している。
【図30D】図30Dは、ホウ酸−硫酸で陽極酸化された標準のプライマー(シーリングは無し)に、2%TOTOが混合されたKion 1067Aポリシラザンでコートされた本発明の一実施例に係るアルミニウム合金製品を示している。
【0038】
上記図面は、本発明の実施例に関するものであるが、以下に記載されるように他の実施態様も意図されている。この開示は、例示的な実施態様であり、限定するものでない。当該分野の専門家であれば、本開示の原理の範囲及び精神の範囲内で、他の様々な変形及び実施態様が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<詳細な説明>
一実施例において、本発明は、リブレット形体(滑らかな表面に形成されたテクスチャ)から形成され永久的ローリングされた溝付き表面を有する金属のシート(典型的には約0.001インチより大きく、約0.30インチよりも小さい)及びプレート(典型的には約0.30インチよりも大きい)並びにこれらを製造する方法を提供する。リブレット形体は、表面の少なくとも一部分に沿って延びる複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを含んでいる。一実施例において、摩擦を低減するテクスチャ表面は、抗力を約5%〜約15%低下させることができる。一実施例において、金属シート及びプレートは、リブレット形体を十分保護できるように構成され施された少なくとも1つのコート層で被覆される。一実施例において、本発明の金属製品は、輸送容器を製造するのに用いられ、該輸送容器として、限定するものでないが、航空機又は飛行体(例えば、エアプレイン、ヘリコプター、ミサイル、グライダー、バルーン及び小型飛行船)、陸上乗物(例えば、車及び列車)、海上乗物(例えば、潜水艦、ヨット、無人水上乗物、自律的水中乗物等)及びパイプライン壁などが挙げられる。
【0040】
一実施例において、本発明の金属製品は、航空機の少なくとも一部分(例えば、翼(wing)、機体(fuselage)のテールコーン又は尾部、スタビライザー等)を製造するのに用いられる。一実施例において、本発明の金属製品は、風力タービンの少なくとも1つのロータブレードを製造するのに用いられる。一実施例において、本発明の金属製品は、パイプラインの少なくとも壁を作るのに用いられる。航空機は、燃料経済性が良好であらねばならず、風力タービンはのロータブレードは効率的運転のためにチップ速度が高速であらねばならない。これらの要件を達成するには、航空機の翼やロータブレードは、、空気力学的抗力が小さいものでなければならない。
【0041】
抗力を小さくすることは、燃料効率の向上に直接関係し、抗力が5%低下すると、燃料効率は約11%向上し、抗力がさらに低下すると、燃料効率は更に向上する。本発明のテクスチャ表面による摩擦(抗力)の低下は、例えば、平均スキン摩擦、スキン摩擦抗力係数(Cdf)、表面又は壁の剪断応力、プレストン圧力、境界層フェンス前後の圧力、リブレット形体下流の速度分布、壁の乱流強度等のパラメータの1又は2以上を測定することによって定量化される。一実施例において、摩擦の減少は、スキン摩擦抗力の減少である。本発明の金属シート及びプレートによってもたらされる抗力低下を測定するための実験は、限定するものでないが、回流水槽試験、風洞試験及びチャンネルフロー試験(例えば、油又は水)等の1又は複数の方法を用いて行なうことができる。滑らかな表面を有する金属シート及びプレートについては、本発明の金属シート及びプレートと同時に試験を行ない、1対1で比較することができる。
【0042】
この明細書で用いられる「アルミニウム合金」とは、アルミニウム及びアルミニウムと他の金属との合金を含む材料を言うものとし、例えば、アルミニウム協会の1XXX、2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、7XXX及び8XXX系合金並びにそれらの類似合金の一種又は複数種を挙げることができる。一実施例において、本発明のアルミニウム合金は、「Alクラッド」又は「クラッド」であり、これは、片面又は両面に、純アルミニウム又はアルミニウム合金の薄層がコーティングされた鋳造アルミニウム合金として定義される。コアとクラッド合金の組合せが選択される場合、クラッド合金はコアに対してアノードである。
【0043】
この明細書で用いられる「アルミニウム合金製品(aluminum alloy product)」とは、リブレット形体から形成された溝付き表面を少なくとも1つ有するアルミニウム合金のシート又はプレートを言うものとし、リブレット形体は、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは表面の少なくとも一部分に沿って延びている。
【0044】
開示の都合上、永久的ローリングされた形体を有する金属シート及びプレートについては、アルミニウムと特に好ましい合金の使用例について説明するが、本発明はそれらに限定されるものでない。他のアルミニウム合金及び他の金属を用いることもできる。例えば、スチール、銅、鉄、チタン及びこれらの組合せを用いることもできる。
【0045】
一実施例において、永久的ローリングされたリブレット形体を有する金属シート及びプレートは、アルミニウム合金構造から作られる。一実施例において、アルミニウム合金構造は、クラッドアルミニウム合金であり、例えばAlクラッドアルミニウム合金である。一実施例において、Alクラッドアルミニウム合金構造は、Alクラッド2524シートである。一実施例において、アルミニウム合金構造は、非クラッド又はベア(bare)のアルミニウム合金構造である。一実施例において、ベアアルミニウム合金構造はAl−Liシートである。一実施例において、ベアアルミニウム合金構造は、5XXX系合金である。アルミニウム合金構造は、熱処理適用(heat-treatable)アルミニウム合金又は熱処理非適用(non-heat-treatable)アルミニウム合金である。熱処理非適用合金は、それらの強度特性のために、冷間加工及び固溶化に依存する合金グループを構成する。熱処理非適用合金は、強度向上のために第2相析出に依存しない点において、熱処理適用合金と異なる。
【0046】
アルミニウム合金構造は、適当なあらゆるアルミニウム合金であってよく、鍛錬(wrought)アルミニウム合金の場合、例えば、アルミニウム協会の1XXX、2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、7XXX及び8XXX系合金並びにそれらの類似合金の一種又は複数種を挙げることができる。一実施例において、アルミニウム合金構造は、2XXX系合金である。一実施例において、2XXX系合金は2524系合金である。一実施例において、アルミニウム合金構造は、アルミニウム−リチウム合金である。
【0047】
この明細書で用いられる「スキン摩擦抗力(skin friction drag)」という語は、流体(液体又は気体)と表面との粘性相互作用で生ずる抗力を言うものとする。例えば、スキン摩擦抗力は、航空機の表面に対して空気粒子が実際に接触することにより生ずる。スキン摩擦抗力は、固体(例えば、航空機の表面)と流体(例えば、空気)との相互作用であるから、スキン摩擦抗力の大きさは、固体と流体の両方の特性に依存する。固体の航空機の場合、スキン摩擦抗力は低下するが、航空機の表面を磨き清浄に維持することにより、対気速度(airspeed)は幾分上昇する。流体の場合、抗力ほ大きさは、固体表面に接触する空気又は液体の粘性に依存する。低エネルギーの流れの境界層は航空機の固体表面に沿って発生する。
【0048】
この明細書で用いられる「リブレット形体(riblet topography)」という語は、シート又はプレート等のアルミニウム合金構造に永久的ローリングされた摩擦低減テクスチャ(friction-reducing texture)を言うものとする。本発明の一実施例において、リブレット形体は、アルミニウム合金構造に永久的ローリングされた複数の隣接する長手リブレットを含み、摩擦低減テクスチャ表面を有する金属シート又はプレートがもたらされる。一実施例において、摩擦低減テクスチャ表面は、本発明の金属シート又はプレートが組み込まれた物体のスキン摩擦抗力を低下させる表面である。一実施例において、本発明の金属シート又はプレートは、航空機の製造に用いられ、航空機は、商業用航空機、軍用航空機又は宇宙航空機を問わない。一実施例において、本発明の金属シート及びプレートは船舶の製造に用いられる。船舶は、水上船であるか、水面下で運転される船であるかを問わない。一実施例において、本発明の金属シート及びプレートは、高速列車等の列車を製造するのに用いられる。一実施例において、本発明の金属シート及びプレートは、例えば、ヘリコプターや風力タービン等で使用されるロータブレードを製造するのに用いられる。一実施例において、本発明のシート及びプレートは、パイプラインの壁を製造するのに用いられる。
【0049】
一実施例において、本発明の金属製品を製造する方法は、ほぼ平らな金属シート又はプレートを準備すること、ほぼ平らな金属シート又はプレートをローリングミルを通過させることを含み、前記ローリングミルは、外表面にリブレット形体が刻設されたロールであって、該リブレット形体は複数の隣接する長手リブレットと、変化のないほぼ平らな外表面を有する少なくとも1つのロールとを含むものであり、表面の少なくとも一部分に沿って延びる複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを含むほぼ溝付きの金属シート又はプレートを作ること、ほぼ溝付きの金属シート又はプレートを、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを十分保護できるように構成され施された少なくとも1つのコート層で被覆すること、及び、金属製品を得ること、を含んでいる。
【0050】
一実施例において、リブレット形体の各リブレットは、同じであるか又は一様な高さを有している。リブレット形体におけるリブレットの幾何学的形状は、多くの形状が可能であり、限定するものでないが、例えば、V形(V-shaped)リブレット、矩形(rectangle)リブレット、鮫鱗(shark scale; SS)形リブレット、変形(modified)鮫鱗形リブレットがある。V形リブレット、鮫鱗形リブレット等の様々な形状のリブレットは、典型的には、典型的には、山部と谷部とが溝状に連なっている。一実施例において、リブレット形体の各リブレットは一様な高さではなく、また同じ高さではない。高さの範囲は、約0.001インチ(約25μm)〜約0.20インチ(約5.0mm)である。一実施例において、リブレット形体の各リブレットは、等間隔で離間している。一実施例において、リブレット形体の各リブレットの間隔は一様ではなく、また等しくない。間隔の範囲は、約0.001インチ(約25μm)〜約0.20インチ(約5.0mm)である。リブレットの高さと間隔の値は、典型的には、約25μm〜約2.0mmである。
【0051】
アルミニウム合金のシート又はプレートは、互いに離間した対ロールの中を通過させられる。この明細書で用いられる「ロールギャップ(roll gap)」という語は、変化のない略平らな外表面ロールから、刻設されたロール上のリブレットのピークを言うものとする。一実施例において、ロールギャップの範囲は、約0.22インチ〜約0.27インチである。ロールギャップは、アルミニウム合金シート又はプレートの圧延率(reduction)に影響があり、アルミニウム合金製品のリブレット形体の各リブレットの圧延率に影響がある。これらについては、図4、図5、図6及び図7を参照して以下に詳細に説明する。一実施例において、ローリングの圧延率は、Alクラッドスキンシートの場合、最大約10%である。一実施例において、ローリングの圧延率は、ベア(非クラッド)アルミニウムシート又はプレートの場合、最大約70%である。
【0052】
本発明の一実施例において、ロール、例えばスチールロールの外周面は、複数の隣接する長手リブレットが刻設されている。これは様々な方法を用いて達成されることができ、その方法の例として、限定するものでないが、精密リブレット、レーザ彫刻、ローレット加工(knurling)、放電加工テクスチャリング(EDT)、ショットブラスティング、3Dエックス線リトグラフ及びフィルムマスキングを挙げることができる。例えば、レーザ彫刻において、コンピュータで作られたパターンは、レーザモジュレータ、及び、対応するレーザビームのパルス列がロール表面に投射され、所望の投射及びリブレット形体の凹凸生成が実現される。一実施例において、複数の隣接する長手リブレットの形成に用いられる切削ツールは、多結晶の立方晶窒化ホウ素(PCBN)材料である。一実施例において、ロールの外周面は、放電テクスチャリング機を用いて複数の隣接する長手リブレットが刻設される。一実施例において、ロールの外周面は、ワイヤ放電加工機をを用いて複数の隣接する長手リブレットが刻設される。本発明の刻設されたロールを、例えば、冷間ローリングされた(cold-rolled)又は熱間ローリングされた(hot-rolled)アルミニウム合金のプレート又はシート上に、2段階で又は同時にローリングすることにより、同じリブレット形体がアルミニウム合金プレート又はシートの上に永久的ローリングされる。
【0053】
一実施例において、刻設されたリブレット形体は、直径が約3インチ〜約40インチである。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、直径が約10インチ〜約40インチである。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、直径が約2分の1インチである。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、面長さが約5インチ〜約220インチである。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、面長さが約20インチ〜約200インチである。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、面長さが約2分の1インチである。リブレットローリングに用いられることができるロールは、広範囲の特性及び寸法範囲を有することができる。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、ロックウエル硬度が約50HRC〜約80HRCである。一実施例において、刻設されたリブレット形体を有するロールは、ロックウエル硬度が約20HRCである。
【0054】
一実施例において、Alクラッドスキンシートのリブレットローリングにおけるローリング速度は、約10フィート/分〜約500フィート/分である。一実施例において、Alクラッドスキンシートのリブレットローリングにおけるローリング温度は、常温から約300°Fである。一実施例において、Alクラッドスキンシートのリブレットローリングにおける分離力は、Alクラッドスキンシートコア合金の幅及び特性に応じて、約数千ポンド〜約1千万ポンドの範囲である。一実施例において、Alクラッドスキンシートのリブレットローリングにおける圧延率は、0〜10パーセントである。一実施例において、リブレットが低塑性バニシング仕上げ(low plasticity burnishing; LPB)であるロールは、表面の局部的冷間変形を用いた表面増強技術であり、金属部材の表面又はその近傍に圧縮残留応力が生成される。本発明のリブレットローリングプロセスでは、リブレット表面の近傍で材料の冷間変形が生じる。表面の冷間変形の大きさは、リブレット形状により局部的に変動する。リブレットローリングで生じる変形の局部変形はLPBと同じであり、これが表面近傍の圧縮残留応力をもたらすものと考えられる。圧縮残留応力の生成をLPB、ショットピーニング又はリブレットローリングのどれで行なった場合も、クラック発生特性に有意の向上が認められた。有孔疲労試験の初期シリーズにおいて、本発明の方法により異なるリブレット形状に形成された2つのAlクラッド2524-T3材は、リブレットが疲労寿命を有意に低下させるものでないこと、低応力レベルでは疲労寿命はさらに向上することを示した。これらの効果は、リブレット幾何学的形状ロールのローリングによってもたらされる圧縮応力によるものと考えられる。
【0055】
図1A−1Dは、ロールの外側周面上に精密機械加工されたリブレット形体について2つの実施形態を示している。一実施形態(図1A)では、ロールの外側周面(100)に、約125μmの高さを有するV形溝(105)が刻設されており、約125μmの間隔があけられている。一実施形態(図1C)では、ロールの外側周面(150)に、約50μmの高さを有するV形溝(155)が設けられており、約50μmの間隔があけられている。図1Bは、図1Aのロール表面を示す図で、リブレット形体を示しており、図1Dは、図1Cのロール表面を示す図で、リブレット形体を示している。
【0056】
リブレット形体の幾何学的形状は、多くの形状が可能であり、図2A−2Dで描かれたものが含まれるが、これらに限定されるものではない。図2Aは、V形溝(200)(鮫歯リブレットとしても知られる)を示し、図2Bは矩形リブレット(220)を示し、図2Cは鮫鱗形リブレット(240)を示し、図2Dは変形鮫鱗形リブレット(260)を示す。図2Aで示されるように、V形横断面(200)は、典型的には、山(205)と谷(210)とが溝状に連なっている。図3は、図2A−2Dに図示されたリブレット形体の様々なパラメータ(間隔、高さ、半径R、半径r及び角度)をリストにした表である。
【0057】
図4A−4Hは、本発明の一実施例であり、アルミニウム合金シートを、ローリングミルの中を通過させることにより、0.270インチゲージのアルミニウムAlクラッド合金シート上に得られたリブレット形体の断面光学金属組織像を示しており、前記ローリングミルは、外面が深い“V”形リブレット形体に形成された少なくとも1つのロールを含み、ロール上のリブレット形体は、高さ約250μmで隣りどうしの間隔が約500μmである多数の隣接長手リブレットを含んでいる。図4Aは、約0.221インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Bは、約0.230インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Cは、約0.241インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Dは、約0.249インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Eは、約0.251インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Fは、約0.257インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Gは、約0.260インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図4Hは、約0.264インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。
【0058】
図5は、図4A−4Hの試料について、ローリングミルのロールギャップ(インチ)と、ローリング後の厚さが0.270インチゲージのアルミニウムAlクラッド合金シート上のリブレットの高さ(μm)と、ローリング後のアルミニウム合金シート上の残存クラッド(インチ)と、ローリング後のアルミニウム合金シートのゲージにおける圧延率(%)との関係を示すグラフである。
【0059】
図6A−6Fは、本発明の一実施例であり、アルミニウム合金シートを、ローリングミルの中を通過させることにより、0.270インチゲージのアルミニウムAlクラッド合金シート上に得られたリブレット形体の断面光学金属組織像を示しており、前記ローリングミルは、外面が鮫歯(SS)リブレット形体に形成された少なくとも1つのロールを含み、ロール上のリブレット形体は、高さ約260μmで隣りどうしの間隔が約500μmである多数の隣接長手リブレットを含んでいる。図4Aは、約0.239インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図6Bは、約0.249インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図6Cは、約0.254インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図6Dは、約0.259インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図6Eは、約0.263インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。図6Fは、約0.266インチのロールギャップを有するローリングミルを使用して得られたリブレット形体を示している。
【0060】
図7は、図6A−6Fの試料について、ローリングミルのロールギャップ(インチ)と、ローリング後の厚さが0.270インチゲージのアルミニウムAlクラッド合金シート上のリブレットの高さ(μm)と、ローリング後のアルミニウム合金シート上の残存クラッド(インチ)と、ローリング後のアルミニウム合金シートのゲージ減少率(%)との関係を示すグラフである。
【0061】
この明細書に開示される金属シート及びプレートは、商業的航空機産業に関して主に述べるが、この発明の中で述べた前記方法、プロセス、及び製品は、軍用航空機、超音波航空機、宇宙航空機、トラックや乗用車のような地上車、電車、高速電車、船及び船舶、また風力タービン用に関して使用されることが出来る。
【0062】
一実施例において、ここに開示された金属シート及びプレートは、航空機、地上車、電車、船及び船舶、風力タービン及びパイプラインの構造表面に接着接合するリブレット膜というよりむしろ、航空機、地上車、電車、船及び船舶、風力タービン並びにパイプラインの構造の一体化された部分である。
【0063】
一実施例において、リブレットローリングの製造流れ経路は、平坦さ、表面品質及び取扱時の損傷を考慮するために、製造過程の終わりでの冷間ローリングである。一実施例として、Alクラッドスキンシートのリブレットローリングの場合、図8及び図9の製造流れ経路に示されるように、冷間ローリングの速度は毎分約10フィートから約500フィートの範囲、ローリング温度はほぼ室温から約300°Fの範囲、分離力はAlクラッドスキンシートコア合金の幅及び特性により数千ポンドから約1千万ポンドの範囲である。一実施例において、Alクラッドスキンシート上のローリングリブレットに対する冷間ローリングの減少範囲は、約0%から約10%である。
【0064】
<摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品を熱処理適用Alクラッド構造(heat-treatable Alclad structure)から製造する方法>
図8は、摩擦低減テクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有するアルミニウム合金製品を製造する流れ経路の一実施例を示す。一実施例において、アルミニウム合金製品は機体スキンシートである。図8に示された実施例において、得られた機体スキンシートは、Alクラッドすることにより加工された熱処理適用Alクラッド構造から製造される。Alクラッドの実用化は今日行われているので、合金化されるアルミニウムの鋳造コアインゴットは、片面又は両面が高純度アルミニウム又はアルミニウム合金の鋳造ライナーインゴットで覆われている。図8に概要が示されるように、コアインゴット(302)及び一対のライナーインゴット(301)は、夫々、均質化(Homo)(304)及び(303)が行われる。一実施例において、均質化の実施は、金属温度が、約900°F又は約910°F又は約920°F又は約945°F又は約950°F又は約960°Fまで、場合によっては約1050°Fの高温にまで加熱され、加熱時間が、典型的には少なくとも約1時間から約8時間まで又はそれ以上で行われ、可溶成分が溶解され、金属の内部組織が均質化される。適当な加熱時間は、均質化温度範囲において約4時間以上である。一実施例において、均質化は選択的なステップである。均質化の後、コアインゴット(302)及びライナーインゴット(301)は、それぞれ、スカルピングされ(scalped)(306)及び(307)て、あらゆる表面欠陥が除去される。表面欠陥が一旦除去されると、鋳造ライナーインゴット(301)は、再加熱される(307)。再加熱により、金属組織全体に亘って合金成分の適切な分配は確実に行われる。前記再加熱により、金属は、熱間ローリング(309)に適切な温度に達する(309)。スカルピングされたコアインゴットは、清浄される(308)。ライナーとコアのサンドイッチは、組み立てられる(310)。互いに繋がるライナーとコアのサンドイッチは、予熱され、熱間ローリングされ(312)、スラブ又は一体のAlクラッド構造が作成される。コア材料は、機体スキンシート製品に必要とされる強度及び所望の材料特性をもたらし、ライナーは耐食性をもたらす。ステップの幾つかは省かれることができるが、一方で他のステップが追加されることもあり、それらは本発明の範囲及び精神に含まれることに留意するべきである。
【0065】
Alクラッド構造が熱間ローリング(312)された後、得られた機体スキンシートがコイルか又は平らなシートの形態であるかにより、前記方法は、ステップ(312)を経て、それぞれ、経路A又は経路Bの何れかに続く。経路Aでは、熱処理適用Alクラッド構造は、上述したように複数の隣接長手リブレットで溝が刻設されたロール表面を有する少なくとも1つのロールを含むローリングミルを用いて溶体化熱処理され(322)、冷間ローリングされる(324)。Alクラッド構造が溝を刻設された複数の隣接長手リブレットの中を通過するとき、Alクラッド構造の表面は、複数の隣接長手リブレットで永久的ローリングされることになる。得られた機体スキンシートは、摩擦を低減するテクスチャ表面を含む。機体スキンシートは、次にコイル状にされる。或いはまた、経路Bに示されるように、熱処理適用Alクラッド構造は、冷間ローリング及び永久的ローリングされる前又は後に延伸(stretched)され、あらゆる内部応力が除去され、スキンシートは平らにされ、及び/又は得られる機体スキンシートの機械特性が改善される。機体スキンシート(幅広シート)は、次に、平らなロールシート又はプレートに形成される。
【0066】
図9は、摩擦を低減するテクスチャ表面をもたらす溝が刻設されている少なくとも1つの表面を有する機体スキンシートを製造する流れ経路の一実施例について、時間に対する温度の表を示している。 図9に示された実施例において、得られる機体スキンシートは、Alクラッドすることにより作製された熱処理適用Alクラッド構造から製造される。図9に概要が示されるように、インゴットは鋳造され、スカルピングされ、組み立てられて、ライナー・コア・ライナーのサンドイッチが生成される。鋳造後、応力除去が選択的に実施されることが出来る。ライナー・コア・ライナーのサンドイッチが組み立てられた後、組立体は均質化処理される。ここでは、均質化ステップは、ローリングステップへの加熱としての役割を果たす。一実施例において、均質化の実施は、金属温度が、約900°F又は約910°F又は約920°F又は約945°F又は約950°F又は約960°Fまで、場合によっては約1050°Fの高温にまで加熱され、加熱時間が、典型的には少なくとも約1時間から約8時間まで又はそれ以上で行われ、可溶成分が溶解され、金属の内部組織が均質化される。適当な加熱時間は、均質化温度範囲において約4時間以上である。一実施例において、均質化は行われず、合金はローリングステップへの加熱が行われるのみである。いくつかの実施例において、熱間ローリング後、再加熱ステップ及び熱間ローリングステップがある。選択的ステップは、図9においてアスタリスクが付されている。
【0067】
Alクラッド組立体が熱間ローリングされた後、前記組立体は、最終厚さに冷間ローリングされるか、又は熱間ローリングされる。熱処理適用Alクラッド構造は、冷間ローリング及び永久的ローリングされる前又は後に延伸され、あらゆる内部応力が除去されるか、又は得られる機体スキンシートの機械特性が改善される。機体スキンシート(幅広シート)は、平らなロールシート又はプレートに形成される。選択的な時効ステップが、流れ経路の中で、特にアルミニウム合金T6,T7又はT8型製品に対して使用されることが出来る。
【0068】
<摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品を熱処理適用非Alクラッド材料から製造する方法>
図10−図12に関して記載された前記実施例は、図8及び図9の中で記載され示されたものと同様であるが、違う点は、熱処理適用ベア(非クラッド)アルミニウム合金構造が使用されていることである。一実施例において、熱処理適用ベア(bare)アルミニウム合金、Al−Li構造である。図10に概要が示されているように、鋳造インゴット(402)は、均質化され(404)、スカルピングされ(406)、再加熱され(408)、熱間ローリング(410)される。アルミニウム合金構造が熱間ローリング(410)された後、前記方法は経路A又は経路Bのどちらかに移行する。これは、図8、図11及び図12について上述したものと同じであり、摩擦低減テクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する機体スキンシートを製造するために、流れ経路の様々な実施例について温度と時間の関係を示している。図11に示される実施例において、得られた機体スキンシートは、熱処理適用ベア構造から製造され、リブレットローリングステップは溶体化熱処理ステップの後で行われる。図11に示されるように、インゴット鋳造後の処理として、応力除去ステップ(選択的)、スカルピングステップ、均質化ステップ(ローリングステップへの加熱として供される)、及び熱間ローリングステップを含む。典型的には、再加熱及び第2熱間ローリングステップが行われるが、これは選択的なステップである。前記構造が熱間ローリングされた後、前記構造は、最終的な厚さに冷間ローリング又は熱間ローリングされる。熱処理適用ベア構造は、冷間ローリング及び永久的ローリングの前及び後に溶体化熱処理及び延伸が行われ、あらゆる内部応力が除去され、平坦化され、及び/又は、得られる機体スキンシートの機械的特性が改善される。機体スキンシート(幅広シート)は平らなロールシート又はプレートへと生成される。選択的な人工時効ステップは、T6、T7又はT8型製品用の流れ経路で使用されることが出来る。
【0069】
もし、有意の自然時効が起こり、材料の強度が大きくなりすぎると、溶体化熱処理後にリブレットのローリングを行なうことが困難になる。他の処理の選択選択肢として、溶体化熱処理前にシートをアニーリングしてリブレットをローリングすることがある。図12に示された熱処理適用ベアシートに対する処理では、リブレットローリングが溶体化熱処理ステップの前に行われる。冷間ローリング前に行なう処理は、図11について上述されたものと同じである。前記処理は、1又は2以上のアニーリング及び冷間ローリング処理(選択的)の後、アニーリング及びその次にリブレットローリングを含むことが出来る。前記シートは、次に、図10に示される経路Aまたは経路Bのどちらかの経路によって処理されることが出来る。経路Aの場合、リブレットローリングステップがなく、経路Bの場合、リブレットローリング又は第2延伸ステップがない。
【0070】
<摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品を熱処理非適用Alクラッド構造(non-heat-treatable Alclad structure)から製造する方法>
図13は、摩擦低減テクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する機体スキンシートを製造する流れ経路の一実施例を示している。一実施例において、アルミニウム合金製品は、機体スキンシートである。例えば、前記スキンシートは、水力発電用に使用される。図13に示された実施例において、得られたスキンシートは、図8のついて上述したように、Alクラッディングにより製造された熱処理非適用Alクラッド構造から製造される。前記方法は、スキンシートがコイル状にされるか又は平らなシート/プレートに成形されるかどうかにより、それぞれ、経路A又は経路Bのどちらかの経路に移行する。図13における経路A及び経路Bが、図8及び図10に記載された経路A及び経路Bと違う点は、熱処理非適用Alクラッド構造が使用され、溶体化熱処理ステップが除かれていることであり、それ以外の他のステップは、図8及び図10について上述されたものと同じである。
【0071】
図14は、摩擦低減テクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する機体スキンシートを製造する流れ経路の一実施例について温度と時間の関係を示している。図14に示される実施例において、得られた機体スキンシートは、Alクラッディングにより製造された熱処理非適用Alクラッド構造から製造される。図14に概要が説明されるように、インゴットは鋳造され、スカルピングされ、組み立てられて、ライナー/コア/ライナーのサンドイッチが生成される。鋳造後、必要に応じて、応力除去ステップが行われることができる。ライナー/コア/ライナーのサンドイッが組み立てられた後、組立体は均質化される。この均質化ステップはローリングステップの加熱として機能し、次に熱間ローリングされる。一実施例において、均質化の実施は、金属温度を、約900°F又は約910°F又は約920°F又は約945°F又は約950°F又は約960°Fまで、場合によっては約1000°Fの高温にまで加熱することによって行われ、加熱時間は、典型的には少なくとも約1時間から約8時間まで又はそれ以上で行われ、可溶成分が溶解され、金属の内部組織が均質化される。適当な加熱時間は、均質化温度範囲において約4時間以上である。一実施例では、均質化は行われず、合金はローリングステップで加熱が行われるのみである。いくつかの実施例において、熱間ローリング後、再加熱ステップと第2熱間ローリングステップがある。選択的ステップは、図14においてアスタリスクが付されている。一実施例において、コア材料は機体スキンシート製品に必要とされる強度及び機械特性を具え、ライナーは腐食抵抗性を有する。ステップのいくつかを削除することが可能であり、一方、他のステップが加えられることも可能であり、それらも発明の範囲及び精神の範囲内であることに留意されるべきである。
【0072】
一実施例において、Alクラッド組立体が熱間ローリングされた後、前記組立体は、最終的な厚さに冷間ローリングされる。熱処理適用Alクラッド構造は、リブレットローリングの前及び後に延伸される。延伸により、内部応力を除去し、シートを平らにし、及び/又は得られる機体スキンシートの機械的特性を改善する。機体スキンシート(幅広シート)は、平らなロールシート又はプレートに形成される。
【0073】
<摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品を熱処理非適用非Alクラッド構造から製造する方法>
図15は、摩擦を低減するテクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有するアルミニウム合金製品を製造する流れ経路の一実施例を示している。一実施例において、前記アルミニウム合金製品は、機体スキンシートである。図15に示される実施例において、得られた機体スキンシートは、図10−図12に関して説明した熱処理非適用ベア(非Alクラッド)構造から製造される。図13に関して説明したように、方法は、経路A又は経路Bの一方に1つに移行する。
【0074】
図16は、摩擦を低減するテクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する機体スキンシートを製造する流れ経路の温度と時間の関係を示している。図16に示された実施例において、得られた機体スキンシートは、熱処理非適用ベア構造から製造され、リブレットローリングステップは、選択的なアニールステップの後に行われる。図16に示されるように、インゴット鋳造後、前記処理は、応力除去ステップ(選択的)、スカルピングステップ、ローリングステップへの加熱として使用される均質化ステップ、熱間ローリングステップを含む。前記組立体が、熱間ローリングされた後、1又は2以上のアニーリング又はローリング工程が行われるが、これらは選択的である。組立体はリブレットローリングの前及び後に延伸される。延伸により、あらゆる内部応力を除去し、平らにし、及び/又は得られる機体スキンシートの機械的特性を改善する。機体スキンシート(幅広シート)は、平らなロールシート又はプレートに形成される。
【0075】
<摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品を熱処理適用非クラッド構造から製造する方法>
図17は、摩擦を低減するテクスチャ表面になる溝が刻設された少なくとも1つの表面を有するアルミニウム合金製品を製造する流れ経路の一実施形態を示す。一実施例において、前記アルミニウム合金製品は、翼(wing)スキンシートである。図17でにされる実施例において、得られた翼スキンシートは、熱処理適用ベア(非Alクラッド)構造から製造され、その製造工程は図10に示されている。方法は、熱処理適用ベア構造が熱間ローリングであるか冷間ローリングであるかにより、経路Aまたは経路Bのどちらかの経路に移行する。経路Aでは、熱処理適用ベア構造は溶体化熱処理され、延伸され、各々が2又は3以上のロールを有する1又は2以上のロールスタンドを含むローリングミルを用いてローリングされる。ロールの少なくとも1つの全体周面は、精密機械加工された隣接する複数の長手リブレットを含んでいる。熱処理適用ベア構造がロールを通過すると、精密機械加工された隣接する複数の長手リブレットは押圧されて熱処理適用ベア構造となり、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットが形成される。長手リブレットは、熱処理適用ベア構造の表面の少なくとも一部分に沿って流線パターンが得られ、抗力低減特性を有する翼スキンシートが得られる。一方、経路Bでは、熱処理適用ベア構造は溶体化熱処理され、各々が2又は3以上のロールを有する1又は2以上のロールスタンドを含むローリングミルを用いてローリングされる。ロールの少なくとも1つの全体周面は、精密機械加工された隣接する複数の長手リブレットを含んでいる。熱処理適用ベア構造がロールを通過すると、精密機械加工された隣接する複数の長手リブレットは押圧されて熱処理適用ベア構造となり、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットが形成される。経路A及び経路Bでは、リブレットローリングは、溶体化熱処理前に行われることは留意されるべきである。
【0076】
ここに開示された実施例では、冷間ローリングにより、リブレットローリングの流れ経路を製造するものである。しかしながら、本発明はまた、常温で高い降伏強度を有する硬質合金及び金属に対しては、金属シート又はプレートへのリブレットローリングを熱間ローリング工程で行なうものである。一実施例において、熱間ローリング中にリブレットのローリングを行なう場合、ロールの硬度は、熱間ローリングで典型的な硬度であってよく、ロックウエル硬度で約40〜70HRCである。ロールのサイズは、熱間ローリングで典型的なサイズであってよく、ロール径は約20〜40インチ、幅は約20〜220インチである。ローリング速度は、毎分約10フィート〜約400フィートであり、ローリング温度は650°F〜約975°Fであり、分離力は、合金、幅及び圧延率に応じて約100万から約1000万ポンドである。圧延率は、例えば、約0%〜約70%である。
【0077】
図18A及び18Bは、本発明の方法を用いて、リブレット形体がAlクラッドアルミニウム構造に永久的にローリングされた本発明のアルミニウム合金製品を製造する2つの実施例を示している。図18は、V形リブレット(800)の断面図を示している。図18Bは、鮫鱗形リブレット(850)の断面図を示している。両実施例とも、リブレットは、ほぼ滑らかな表面を有している。
【0078】
腐食を防止または最少にすると共に航空機の装飾性及び審美的な外観をもたらすために、機体及び外側スキンには、通常は1又は複数の保護コート層が施される。複数コート層の場合、第1のベースコート部は、耐食性ウォッシュプライマーであり、第2の中間プライマーは、金属(例えば、アルミニウム又はその合金)への接着または接合を向上させるエンハンサーであり、次に他の層がプライマーの上に施される。これらの層は、装飾的な外観的効果(例えば、航空機の色や光沢外観)をもたらす着色顔料を含むことができる。一般的に、これらの複数のコート層は滑らかで平らな金属表面に適用されるので、平らな表面の形体を維持することが考慮されることはあったとしても殆どない。一般的には、ペイント塗料を、被覆すべき表面に充填して平らにすることが好ましい。
【0079】
一実施例において、この明細書に開示される金属シート及びプレートは、航空機の製造に使用される。金属シート及びプレートを有する航空機が少なくとも1つのペイント層で被覆されることが所望される場合、ペインティングプロセス全体に慎重な注意を払うことが必要とされる。金属シート及びプレートの摩擦低減テクスチャ表面を維持するために、様々な製造ステップ(例えば、クリーニング、前処理及びペインティングプロセス)を通じて、リブレット形体が維持されることは非常に重要である。形状保持について、その目標は、ペイントがリブレット形体の中に完全に充填されないようにすることである。ペイントのレオロジー、粘性及び流れパターン並びに使用される塗装システムを注意深く制御することにより、リブレット形体は維持されることができる。
【0080】
この明細書に開示されるペインティング方法では、ペイント層を通る表面形体伝達のできるだけ多くの部分を保存する。ペイントシステム(paint system)を表面に適用する際、ペインティング作業を画定する多くの変数があり、その変数として、限定するものではないが、ペイントの種類(商標名/化学的性質)、ペイント適用方法(手動/ロボット式)、ペイント送給方法(スプレーガンへの送給)、スプレーガンの種類、スプレーガンのオリフィスサイズ、ペイント粘度、還元溶媒の種類及び量、スプレーガンへ送給される流体の量(流体制御ノブの回転数)、ペインティングの空気圧、スプレーパスの数及びペイントの硬化条件などがある。
【0081】
この明細書で開示される金属シート及びプレートは、それらの摩擦低減テクスチャ表面特性を維持した状態でペイントされることができる。図19の実施例に示されるように、この明細書に記載されたリブレット形体を有するアルミニウム合金製品は、ペインティング(908)の前に、清浄化(902)、脱酸素(904)及び陽極酸化(anodizing)(906)が行われた表面である(図19では、プライマーの生成及びトップコートの生成として示されている)。一実施例において、リブレット形体を有するシート及びプレートは、図8−図17の流れ経路の1つに開示されているように製造され、次に本発明の技術を用いてペインティングされ、リブレット形体が保存される。一実施例において、リブレット形体を有する金属シート及びプレートは、他の方法を用いて、例えばOEM設備の中で製造され、本発明の技術を用いてペインティングされ、リブレット形体が保存される。
【0082】
図20−図24は、プライマー及びトップコートの形成に用いられたペインティング方法の実施例を示している。全ての場合において、表面は、ペインティング前に、Henkel Ridoline 4355 アルカリ洗浄剤で清浄化し、次に、Henkel 6/16クロム化脱酸素システムで脱酸素化し、次に、標準のホウ酸−硫酸陽極酸化物(ホウ酸8g/l、硫酸45g/l)にて15ボルト及び約80°Fにて約20分間陽極酸化を行ない、次に約195°Fで約25分間希釈クロムシールを施した。
【0083】
静電スプレーシステムは、正電荷が荷電された基体(例えば、アルミニウム合金)の近傍に負電荷を与えられるペイント液滴を用いる。液滴は、基体に引きつけられ、均一なコーティングが形成される。このシステムは、円筒形で、丸くて溝付き物体に対してうまく機能するが、その理由は、その取り囲み(wrap-around)効果により、物体を一方側からほとんどコートされることができるからである。ペイントは過剰スプレーで損失することは殆どなく、その移送効率は95%を超えるものである。荷電ペイント液滴のアルミニウム合金表面への広がりは、表面張力と静電引力の少なくとも2つの力によって支配されるため、これら2つの力に対して注意を向ける必要がある。従来の静電スプレーシステムの有効性は、ペイントの粘度の正確なモニタリングに大いに依存する。粘度が大きすぎるとき、ペイントのコーティングは塊状になる。ペイントの伝導性は、ペイント粘度の尺度である。伝導性が大きすぎると、粘度が低くなる。また、伝導性は、液滴がスプレーノズルの中にどれほどうまく生成するかに関係する。伝導性が高いと液滴サイズの制御が向上する。
【0084】
一実施例において、静電スプレーシステムは、テクスチャ表面をペインティングするのに用いられ、ペイントの伝導性/粘度を注意深く制御することは、リブレット形体を維持するのに有用である。典型的には、荷電された微液滴のテクスチャ表面へのパス回数を複数回行なうことで、数多くの長手リブレットの各々の周りに接着して包み込むペイントの薄い層が形成され、リブレットにコーティングが形成される。スプレーノズルの圧力は、所定粘度を有する微細なペイントミストが供給され、テクスチャ表面を被覆するように調節されることができる。ペイントパラメータを修正することにより、リブレット形体の良好なリードスルー(read-through)が可能である。様々なペイントシステムを用いることにより、リブレット形体の有効なリードスルーが可能である。
【0085】
図19を参照して説明したように、一実施例において、アルミニウム合金製品のテクスチャ表面は陽極酸化され(906)、表面は所望の酸化アルミニウム膜で被覆される。所望の酸化アルミニウムコーティングを形成する適当な方法として、限定するものではないが、電気化学的酸化(例えば、陽極酸化)及び化学的浸漬(例えば、アロジン処理)がある。一実施例において、酸化物膜層は、ステップ(907)に示されるように、様々な粒子/成分を加えることにより修正されることができる。一実施例において、耐食性粒子を、酸化アルミニウム膜に加えることができる。一実施例において、シーラント粒子を酸化アルミニウム膜に加えることができる。一実施例において、有機染料を酸化アルミニウム膜に加えることができる。これらの粒子及び染料を酸化アルミニウム膜に加えることで、ペインティングの適用の一部又は全部を省くすることができる。一実施例において、表面は、アナターゼ等の光活性化合物が含まれるように化学的に改質され、酸化アルミニウムにイージー/自己清浄特性が生成される。酸化アルミニウムの改質は、酸化物の化学構造の中に組み込んだり、酸化物層の形態内に物理的に含浸させることにより行われる。
【0086】
図20A、20B及び表は、リブレット形体を有するアルミニウム合金のシート又はプレートに用いるペインティングプロセスの一例を示しており、表面を準備し、プライマー層及びトップコートをペインティングした後、本発明のアルミニウム合金製品が生成される。図20A及び20Bに示された実施例において、両ペイントシステムに対するペイント送給方法は、図20Aに示されるサクションカップである。用いられる具体的なペイント条件は表に示されている。図20Bは、光学金属像の断面図であり、ペイント層を通る形体の伝達(telegraphing)が少ないことを示している。
【0087】
図21A、21B及び表は、リブレット形体を有するアルミニウム合金のシート又はプレートに用いるペインティングプロセスの一例を示しており、表面を準備し、プライマー層及びトップコートをペインティングした後、本発明のアルミニウム合金製品が生成される。図21A及び21Bに示された実施例において、両ペイントシステムに対するペイント送給方法は、図21Aに示されるサクションカップである。最適化されたペイント条件は表に示されている。図21Bは、光学金属像の断面図であり、ペイント層を通る形体の伝達(telegraphing)が改善されていることを示している。
【0088】
図22A、22B及び表は、リブレット形体を有するアルミニウム合金のシート又はプレートに用いるペインティングプロセスの一例を示しており、表面を準備し、プライマー層及びトップコートをペインティングした後、本発明のアルミニウム合金製品が生成される。ここでは、図20A及び20Bのトップコートシステムとは異なるトップコートシステム(Kion 1067Aポリシラザン)を使用した。ロボット式静電ペインティングシステムにおいて、ペイントは静電気電源により電気的に荷電され、図22Aに示されるABBロボットアームに取り付けられたITW Ransburg回転ベルアトマイザーにより塗布される。ITW Ransburg RMA-101 静電制御ユニットはまた、空気の流れ方向をベルアトマイザーに向けて、スプレーパターンを制御する。また、ロボットの動きはコンピュータインターフェースによって制御される。静電気の適用により、表面のコート層の被覆をより緊密にすることができ、形体の伝達が向上する。具体的なペイント条件は表にまとめられている。図22Bは、光学金属像の断面図であり、トップコートにロボット式静電ペインティング方法を行なうことにより、表面形体の伝達が非常に良好であることを示している。
【0089】
図23A、23B及び表は、リブレット形体を有するアルミニウム合金のシート又はプレートに用いるペインティングプロセスの一例を示しており、表面を準備し、プライマー層及びトップコートをペインティングした後、本発明のアルミニウム合金製品が生成される。図23A及び23Bに示される実施例では、手動式制御操作が用いられ、ペイントはガンオリフィスで荷電される。図22Aのロボット式静電操作と同様、両ペイントシステムに対する電荷の印加は、表面形体への付着能力(ability to "attach")を最大化する。サクションカップ送給方法を用いた手動静電操作の概略が図23Aに示されている。プライマーとトップコートの静電ペインティング条件の概要が表に記載されている。図23Bは、光学金属像の断面図であり、プライマー層及びトップコート層に手動式静電ペインティングを行なうことにより、ペイント層を通る下側形体の伝達が非常に優れていることを示している。
【0090】
電気泳動(電着又はE−コート)ペインティングは、アノード分極された(陽極電着塗装)又はカソード分極された(陰極電着塗装)アルミニウム部分を含むプロセスを言うものとする。摩擦低減テクスチャ表面を有する清浄化されたアルミニウム合金製品は、電着ペイントのタンク内に浸漬され、電流がオンされると、対極に対するアルミニウムの分極が引き起こされ、ペイント粒子は表面に引きつけられる。
【0091】
図24A、24B及び表は、リブレット形体を有するアルミニウム合金のシート又はプレートに用いるペインティングプロセスの一例を示しており、表面を準備し、プライマー層及びトップコートをペインティングした後、本発明のアルミニウム合金製品が生成される。図24A及び24Bに示された実施例において、電気泳動プロセスが用いられた。電気泳動プロセスは、負電荷に引き寄せられることにより、電解質を通るペイントの拡散を含んでおり、ペイントの緊密な接着が達成され、該プロセスは図24Aに示されている。ここで用いられるペイント条件は、表に示されている。図24Bは、光学金属像の断面図であり、ペイントシステムの部分伝達は、最初に、プライマーに対して電着されたエポキシペイントシステムを使用し、次にポリウレタンのトップコートのサクションカップを用いることにより達成される。
【0092】
本発明の一実施例において、金属シート及びプレートは、イージー/自己清浄式であるので、汚染物質の摩擦低減テクスチャ表面への蓄積が防止される。図示の2つの実施例は、摩擦低減テクスチャ表面に「イージー/自己清浄(easy/self-cleaning)」能力を付与することができる。本発明の方法の流れ経路は図25A及び25Bに示されている。2つの方法の何れか又は両方に用いられる具体的な化学は、少なくとも一部分は、リブレット形体の形状及び寸法に依存する。一実施例において、リブレット形体を有する金属シート及びプレートは、図10〜図17に開示された流れ経路のうちの1つの流れ経路で製造され、リブレット形体を維持するために、本発明の技術を用いてイージー/自己清浄能力が付与される。一実施例において、リブレット形体を有する金属シート及びプレートは、例えば、他の方法を用いてOEM設備で製造され、リブレット形体を維持するために、本発明の技術を用いてイージー/自己清浄能力が付与される。
【0093】
図25Aの実施例に示されるように。本発明のペインティング法(908)(図19参照)が用いられた後、スプレー法(909)により、ペイントトップコートの上に、超親水性コート層が施される。或いはまた、超親水性コート層は、プライマー又はトップコート層を必要とすることなく、本発明のアルミニウム合金又はチタン合金製品に直接スプレーされることができる。超親水性コート層は水により完全にかつ瞬間的に濡れ、水と接触すると0.5秒以内に約5度未満の水滴前進接触角を示す。酸化チタン(TiO2)等の光化学活性材料は、UV照射に曝露されたり、適当な化学的改質、可視放射で処理されることにより、超親水性になり得る。一実施例において、超親水性コート層は、アナターセ型二酸化チタン(TOTO系)を含む光活性化系(light-activated system)であり、この材料と光及び水との相互作用に大きく依存し、汚染物質が表面に集まるのを防止する。水は自己清浄化機構におけるキー要素であるが、この種の自己清浄化システムで処理された材料は、水が存在しなくても、ある程度まで汚れを除去することができる固有の能力を有することができる。
【0094】
図25Bの実施例に示されるように。プライマー層(908a)は、まず最初に、図19で説明したリブレット形体を有する表面に施され、次に、トップコート(908b)は、ペイントの濃度範囲全体で使用可能な化学添加剤(910)で強化される。この種の系は、化学的及び形体的(マイクロスケールにおける)疎水性特性をリブレット形体表面に付与するように設計されている。疎水性成分により、水はリブレット形体表面にビード生成される。このビーディング作用(beading action)により、水滴は、表面全体がローリングされるとき、リブレット形体表面から汚れを容易に除去することができる。一実施例において、化学添加剤(910)は、官能化されたシロキサン系(BYK Silclean 3710等)であり、超疎水性(撥水)表面をもたらす。このように処理された材料は、水が存在しなくても、ある程度まで汚れをはじく能力を具備することができる。
【0095】
系と系との間での化学的及び機構的相違に加えて、表面に適用される方法が異なる。図26A〜26Cは、イージー/自己清浄成分で強化された本発明の摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金製品は、イージー/自己清浄成分無しのペイント形体に比べて清浄度(cleanliness)の改善を示すことができる。一実施例において、TOTO系は、図26Bに示されるように、トップコートペイント層の上に数層のTOTO溶液がスプレー又は浸漬される。Silclean系は、図27の表に示されるように、トップコートを形成する前にトップコートのペイント中に混合し、次にトップコートをスプレーすることによって施される。3つの場合は全て、パネルは、最初にアルカリクリーナHenkel Ridoline 4355の中で清浄化され、酸脱酸素剤Henkel Ridoline 6/16で脱酸素され、次に、ホウ酸−硫酸(8 g/lホウ酸、45 g/l 硫酸)で約20分間15ボルトで陽極酸化された後、約25分間195°Fで希釈クロムシールされる。
【0096】
図26A〜26Cに示されるように、「埃りっぽい(dusty)」環境の中で3週間戸外に曝した後、TOTOイージー/自己清浄剤(図26B)を施した摩擦軽減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金は、摩擦低減テクスチャ表面(図26A及び26C)を有する他のアルミニウム合金製品よりも清浄である。Silcleanクリーニング剤(図26C)が施された摩擦低減テクスチャ表面を有するアルミニウム合金もまた、イージー/自己清浄剤(図26A)無しの制御パネルよりも清浄な表面を呈した。イージー/自己清浄向上剤が施された本発明のアルミニウム合金製品は、イージー/自己清浄向上剤無しのアルミニウム合金製品よりも清浄であり、空気抗力性能に対する使用中の埃り及び残留物の潜在的影響を少なくすることができる。
【0097】
陽極酸化物の多孔質構造及び所望組成は、航空宇宙用途における摩擦低減テクスチャ表面の能力をさらに高めるのに利用されることができる。標準の陽極封止及びプライマー/トップコートを用いるのと対照的に、陽極酸化物は封止されない儘であり、含浸シール化合物(impregnating seal compounds; ISC)と称される有機又は無機処理の使用が可能である。ISCとして、標準の航空宇宙コーティング以外のコーティング、例えばシラザン又はシロキサン、図26A〜26Cに示されるイージー/自己清浄処理、又はそれらの組合せを挙げることができる。これらISCの適用方法は、具体的な性能条件に応じて、スプレー又は浸漬である。この方策により、現在、航空宇宙用に使用されているプライマー/トップコートは不要にできるものと考えられる。2つの陽極酸化は、両方とも、ISCの潜在的使用に親和性を有することは以下に示すとおりである。図28A及び28Bに示されるように、陽極酸化物は、ノジュラー構造を作ることができるように特に構成されており、ノジュールは、ホウ酸−硫酸又は硫酸陽極酸化に観察されるコア柱状構造よりも約2桁も薄い。ノジュラー構造は、硫酸、リン酸及びホウ酸からなる他の「混合電解質」陽極酸化法を用いて生成される。ノジュラー構造は、性能能力の向上及び様々なISCに対する親和性を付与することができる。図29A及び29Bにおいて、標準のホウ酸−硫酸又は硫酸陽極酸化は、その後にシーリングステップ無しで用いられることができる。選択されたISCは、これらの陽極酸化法に関連づけられた円柱状陽極構造に導入されることができる。図30A〜30Dにおいて、シールされていない選択された陽極酸化/ISC/イージー/自己清浄の組合せのイージー/自己清浄性能が、イージー/自己清浄成分を有する及び有しない標準のペインティングシナリオとの比較において観察される。この試験では、本発明の金属製品(摩擦低減テクスチャ表面を有する)は、湿った木材灰の低圧での衝突を通じて汚れを進入させた。試料表面は、湿った木材灰を、Q-Panel QGRガルバノメータの中に入れることにより、この衝突を行ない、10psiで供給された空気を約10秒間用いてパネルに発射した。試料は次に、両方とも、汚れ衝突抵抗性に対する固有能力を目視で評価した(図30A−30D)。イージー/自己清浄成分で補強され、ISC(ポリシロキサンおよびポリシラザン)で陽極酸化された系は、イージー/自己清浄成分がある場合もない場合も、標準の航空宇宙用ペイント系よりも木材灰の排除はより効果的であった。
【0098】
他の実施例において、本発明の金属製品は、輸送容器を製造するのに用いられ、該輸送容器として、限定するものでないが、航空機又は飛行体(例えば、エアプレイン、ヘリコプター、ミサイル、グライダー、バルーン及び小型飛行船)、陸上乗物(例えば、車及び列車)、海上乗物(例えば、潜水艦、ヨット、無人水上乗物、自律的水中乗物等)及びパイプライン壁などが挙げられる。翼スキン製造のハンマー成形及び他の作業を行なうために、またリブレットを翼後退角(wing sweep)と位置合わせするため(そうしないと、抗力低減効果は消滅する)に、リブレットを翼スキンのプレート/シートに直接ローリングすることができない。しかしながら、本発明の方法でローリングされたアルミニウム合金製品は、従来の方法で製造された上翼及び下翼スキンに対して、機械的及び/又は接着剤で接合されることができる。本発明に係るローリングされたリブレットアルミニウム合金製品のリブレットは、翼後退角と位置合わせされる。航空機翼用のローリングされたリブレットアルミニウム合金製品の幅、ゲージ及び合金は、製造の容易性及び費用効率、耐食性、航空機メーカ及びモデル、航空機の重量条件及び構造/強度の完全性等により、多種多様である。例えば、ローリングされるリブレット製品として選択される合金が1XXX系合金である場合、製品は良好な耐食性を有することができる。ローリングされたリブレット製品の幅は、約5インチ〜約200インチである。リブレット(溝)の方向は、典型的には、ローリング方向(幅方向に直交)であるが、アルミニウム合金シートから切断片を作成し、リブレットを横断方向又はシートのローリング方向とはある角度を以てにローリングすることも可能である。幾つかの実施例において、合金は、例えば、1XXX、3XXX、5XXX、6XXX、7XXX及び8XXX系合金の他、Al−Li合金である。アルミニウム合金は、熱処理適用合金又は熱処理非適用合金のどちらでもよい。熱処理非適用合金シートの場合、リブレットローリングは、ひずみ硬化状態(Hテンパー)又はアニーリング状態(Oテンパー)で行われることができる。熱処理適用合金シートのリブレットローリングは、溶体化熱処理の前又は後のどちらで行なうこともできる。リブレットローリングが溶体化熱処理の前に行われる場合、リブレットローリングは、圧延状態(Fテンパー)及びアニーリング状態(Oテンパー)で行われることができるし、低温及び高温のどちらでも行われることができる。リブレットローリングの後、シートは、熱処理され、焼入れされ、自然時効又は人工時効による時効が行われる。リブレットローリングが溶体化熱処理後に行われる場合、ローリングは、焼入れ材(Wテンパー)、自然時効材(T3テンパー)又は人工時効材(例えば、T6又はT7テンパー)に行われることができる。ローリングされたシートは、例えば、ベア又はAlクラッドである。ゲージの範囲は、例えば、約0.0010インチ〜約0.300インチである。ローリングされたアルミニウムリブレットシートは、新しいアルミニウム航空機翼又は既存のアルミニウム航空機翼に適用されることができる。
【0099】
さらなる実施例において、この明細書に記載されたリブレット形体は全て、チタンシート又はフォイルにローリングされることができる。ローリングプロセスは、例えば、熱間ローリング又は冷間ローリングであってよい。一実施例において、ローリングプロセスは熱間ローリングである。熱間ローリングの場合、ローリング温度範囲は400℃(752°F)〜約1100℃(2012°F)である。圧延率は、約20%〜約75%である。圧延率が大きい場合、圧延温度が800℃(1472°F)より高いとき、加工硬化は最少である。再結晶温度は約600℃(1112°F)である。冷間ローリングの場合、圧延率は約0.5%〜約20%である。Tiリブレットのシート又はフォイルのゲージは、約0.002インチ〜約0.200インチである。
【0100】
本発明のTiリブレットのシート又はフォイルを製造する他の方法は、彫塑性成形の形態をとることができる。Tiシート又はフォイルに対するリブレット形体のローリング条件は、温度が約840℃(1544°F)〜約870℃(1598°F)でローリング速度は極めて遅く、歪み速度は約0.0001/s〜約0.001/sである。圧延率は約20%〜約300%である。
【0101】
さらに他の実施例において、本発明の金属製品は、海上乗物(例えば、潜水艦、ヨット、無人水上乗物、自律的水中乗物等)の部分の製造に用いられる。一実施例において、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、摩擦低減テクスチャ表面となり、例えば、約5%〜約15%の抗力低減をもたらす。一実施例において、金属製品は、高強度低合金鋼であり、例えば、SAE仕様J410、J1392及びJ1442で規定されたもの、また、ASTM仕様A242、A440、A441、A572、A588、A606、A607、A618、A633、A656、A690、A709、A714、A715、A808、A812、A841、A860及びA871で規定されたものが挙げられる。ローリングプロセスは熱間ローリング又は冷間ローリングのどちらでもよい。熱間ローリングの場合、ローリング温度範囲は720℃(1328°F)〜約1050℃(1922°F)である。圧延率は、広範囲に亘るが、典型的な最終リブレットローリングパスの圧延率は約50%超である。リブレットローリング後の冷却は、約10℃/分〜約300℃/分の範囲で行なうことができる。微細なフェライト結晶粒度、ひいては高強度を得るには、急冷することが望ましい。室温での冷間ローリングの場合、圧延率は約5%〜約80%である。冷間ローリングプロセスに続いて、約400℃(752°F)〜約700℃(1292°F)の温度でアニーリングが行われる。アニーリング時間は、特定されたミクロ組織及び特性要件に応じて異なる。
【0102】
航空機の翼及びプロペラを製作する航空機エンジニアや、ロータブレードを設計する風力タービンエンジニアは、空気力学的抗力に関心がある。航空機は燃費が良好でなければならず、風力タービンのロータブレードは効率的運転のために高先端速度を有していなければならない。それゆえ、航空機翼及びロータブレードは空気力学的抗力を小さくすることが重要である。一実施例において、本発明は、少なくとも1つの表面に溝が刻設された少なくとも1つの金属製品を含むロータブレードを対象とするもので、溝が刻設された表面にはリブレット形体が形成され、該リブレット形体は、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットが表面の少なくとも一部に沿って延びており、リブレット形体は、該リブレット形体を保護するために構成された少なくとも1つのコーティングでコートされている。一実施例において、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、摩擦低減テクスチャ表面となり、例えば、約5%〜約15%の抗力低減をもたらす。一実施例において、抗力が小さくなることで、同じ風速度で発生されることができるエネルギーが増加する。
【0103】
パイプラインシステムにおける摩擦圧力の損失、つまり抗力はエネルギーの無駄であり、パイプラインシステムの操業に経済的に悪影響を及ぼす。液体及びガスパイプライン会社の中には、抗力低減剤(drag-reducing agents; DRA)を使用して、流れ乱流を最少にし、ひいては処理量を増加させて、パイプラインの運転コストを低減している。抗力低減剤は有効な能力向上剤であるが、長期に亘るその使用は費用がかかる。さらに他の実施例において、本発明の金属製品は、パイプラインシステムの製造に用いられることができる。一実施例において、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、摩擦低減テクスチャ表面となり、例えば、約5%〜約30%の抗力低減をもたらす。一実施例において、抗力が小さくなることで、パイプライン壁に沿う摩擦を低減することによりエネルギー損失を少なくなる。
【0104】
上記の特徴及び機能並びに他の特徴及び機能の幾つかは、所望により、他の異なるシステム又は用途に組み込まれることができる。当該分野の専門家であれば、予測又は予想されない様々な代替、変形、変更又は改良も成し得るが、それらも添付の特許請求の範囲によって包含されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝が刻設された少なくとも1つの表面を有する少なくとも1つの金属製品を具える輸送容器であって、
前記溝が刻設された表面はリブレット形体を形成し、該リブレット形体は、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットが前記表面の少なくとも一部に沿って延びており、リブレット形体は、該リブレット形体を十分に保護できるように構成された少なくとも1つのコーティングでコートされている、輸送容器。
【請求項2】
複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、摩擦低減テクスチャ表面となる請求項1の輸送容器。
【請求項3】
金属製品は、アルミニウム合金のシート又はプレートである請求項1の輸送容器。
【請求項4】
シート又はプレートは、Alクラッドアルミニウム合金から製造される請求項3の輸送容器。
【請求項5】
金属製品は、チタンのシート又はプレートである請求項3の輸送容器。
【請求項6】
金属製品は、スチールのシート又はプレートである請求項3の輸送容器。
【請求項7】
リブレット形体は、隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを少なくとも100以上含んでいる請求項1の輸送容器。
【請求項8】
複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、同じ間隔で等距離離間している請求項1の輸送容器。
【請求項9】
距離は約25μm〜約5.0mmの範囲である請求項8の輸送容器。
【請求項10】
複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットの各々は、ピーク高さが約25μm〜約5.0mmである請求項1の輸送容器。
【請求項11】
少なくとも1つのコーティングは、プライマー、トップコート及びイージー/自己清浄コーティングからなる群から選択される請求項1の輸送容器。
【請求項12】
プライマーはエポキシプライマーである請求項8の輸送容器。
【請求項13】
トップコートはポリウレタントップコートである請求項11の輸送容器。
【請求項14】
イージー/自己清浄コーティングは超親水性コーティングである請求項11の輸送容器。
【請求項15】
超親水性コーティングは、アナターセ型二酸化チタンを含む光活性化系である請求項14の輸送容器。
【請求項16】
疎水性化学添加剤がトップコートに加えられる請求項11の輸送容器。
【請求項17】
疎水性化学添加剤は官能化シロキサン系である請求項16の輸送容器。
【請求項18】
金属製品は、航空機の少なくとも一部分を製造するのに用いられる請求項1の輸送容器。
【請求項19】
金属製品は、航空機の翼を製造するのに用いられる請求項18の輸送容器。
【請求項20】
金属製品は、航空機の機体を製造するのに用いられる請求項18の輸送容器。
【請求項21】
金属製品は、航空機のスタビライザーを製造するのに用いられる請求項18の輸送容器。
【請求項22】
金属製品は、ロータブレードの少なくとも一部分を製造するのに用いられる請求項1の輸送容器。
【請求項23】
金属製品を製造する方法であって、
略平らな金属シート又はプレートを準備すること、
外側表面にリブレット形体が刻設され、リブレット形体は複数の隣接する長手リブレットを含む少なくとも1つのロールであって、変化のない略平らな外側表面を有する少なくとも1つのロールを含むローリングミルの中を、略平らな金属シート又はプレートを通過させること、
複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットが前記表面の少なくとも一部分を延びる溝が刻設されたシート又はプレートを作ること、
溝が刻設された金属シート又はプレートを、複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットを十分に保護できるように構成された少なくとも1つのコーティングでコートすること、及び
金属製品を得ること、を含んでいる方法。
【請求項24】
溝が刻設された金属シート又はプレートの複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットは、摩擦低減テクスチャ表面となる請求項23の方法。
【請求項25】
金属シート又はプレートは、アルミニウム合金のシート又はプレートである請求項23の方法。
【請求項26】
アルミニウム合金のシート又はプレートは熱処理適用である請求項25の方法。
【請求項27】
アルミニウム合金のシート又はプレートは熱処理非適用である請求項25の方法。
【請求項28】
アルミニウム合金のシート又はプレートはAlクラッドである請求項25の方法。
【請求項29】
Alクラッドは熱処理適用である請求項28の方法。
【請求項30】
Alクラッドは熱処理非適用である請求項28の方法。
【請求項31】
金属シート又はプレートはチタンのシート又はプレートである請求項23の方法。
【請求項32】
金属製品は、スチールのシート又はプレートである請求項23の方法。
【請求項33】
ロールの長手リブレットの各々は、高さが約25μm〜約5.0mmの範囲であり、ロールの長手リブレットの各々は、同じ間隔で約25μm〜約5.0mm離間している請求項23の方法。
【請求項34】
ローリングミルの圧延率は約0%〜約70%である請求項23の方法。
【請求項35】
圧延率は、金属シート又はプレートを延びる複数の隣接する永久的ローリングされた長手リブレットの高さに影響を及ぼす請求項34の方法。
【請求項36】
ローリングミルの圧延率は約1%〜約5%である請求項28の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのコーティングは、プライマー、トップコート及びイージー/自己清浄コーティングからなる群から選択される請求項23の方法。
【請求項38】
少なくとも1つのコーティングは、手動静電ペインティングガンを用いて、アルミニウム合金のシート又はプレートに施される請求項37の方法。
【請求項39】
少なくとも1つのコーティングは、ガンのオリフィスで供給される請求項38の方法。
【請求項40】
ガンのオリフィスのサイズは、約0.028インチである請求項39の方法。
【請求項41】
手動静電ペインティングガンは、空気圧が約10psi〜約20psiの範囲である請求項38の方法。
【請求項42】
プライマーはエポキシプライマーである請求項37の方法。
【請求項43】
トップコートはポリウレタントップコートである請求項37の方法。
【請求項44】
イージー/自己清浄コーティングは超親水性コーティングである請求項37の方法。
【請求項45】
超親水性コーティングは、アナターセ型二酸化チタンを含む光活性化系である請求項44の方法。
【請求項46】
疎水性化学添加剤がトップコートに加えられる請求項37の方法。
【請求項47】
疎水性化学添加剤は官能化シロキサン系である請求項46の方法。
【請求項48】
金属製品は、航空機の少なくとも一部分を製造するのに用いられる請求項23の方法。
【請求項49】
金属製品は、航空機の翼を製造するのに用いられる請求項48の方法。
【請求項50】
金属製品は、航空機の機体を製造するのに用いられる請求項48の方法。
【請求項51】
金属製品は、航空機のスタビライザーを製造するのに用いられる請求項48の方法。
【請求項52】
金属製品は、ロータブレードの少なくとも一部分を製造するのに用いられる請求項48の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A−4H】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A−6F】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25A】
image rotate

【図25B】
image rotate

【図26A】
image rotate

【図26B】
image rotate

【図26C】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30A】
image rotate

【図30B】
image rotate

【図30C】
image rotate

【図30D】
image rotate


【公表番号】特表2011−530443(P2011−530443A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522214(P2011−522214)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/052841
【国際公開番号】WO2010/017289
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(500277629)アルコア インコーポレイテッド (49)
【Fターム(参考)】