説明

摩耗検出装置

【課題】 本発明は、ディスクやドラムなど押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体の摩耗の確認を容易にすることを目的とする。
【解決手段】 ディスクブレーキのディスク30は、ブレーキパッド34が押しつけることにより制動力を発生し、ブレーキパッド34が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部32および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する。摩耗判断手段は、摩耗センサ16の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗を判断する。報知手段は、摩耗判断手段の判断結果に応じてディスク30の摩耗を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の制動装置の摩耗を検知する摩耗検知装置に関し、例えば、押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体の摩耗を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車やバイクなどでは車輪を制動するためのブレーキは不可欠なものである。車やバイクでは、ディスクブレーキやドラムブレーキが採用され、ディスクブレーキではブレーキパッドをディスクに押しつけることにより制動力を得ることができ、ドラムブレーキではライニングをドラムに押しつけることにより制動力を得ることができる。しかし、ディスクブレーキにおいてはブレーキパッドだけでなくディスクも摩耗し、ドラムブレーキではライニングだけでなくドラムも摩耗するため、ある程度摩耗がすすんだときにディスクまたはドラムを交換する必要が生じる。
【0003】
このため、例えば特許文献1では、ブレーキライニング内またはブレーキライニング上に電気抵抗を配置することによりブレーキライニングの厚さの測定と同時に温度測定も行うことができるセンサの技術が提案されている。また、例えば特許文献2では、ブレーキディスクに圧痕、隙間、孔、切込みなどの視認型制御手段を設けることにより、ブレーキ部の摩耗の定期的な制御を単純かつ経済的な方法で実施することができるブレーキディスクの技術が提案されている。また、例えば特許文献3では、複数本の導電路をライニングの厚さ方向にずらせて設け、これらがライニングの摩耗に伴い順次切断されることによりライニングの摩耗を多段階で測定できるブレーキ素子用ウェアインジケータの技術が提案されている。また例えば特許文献4では、ブレーキディスクのパッド摺接面に許容摩耗代に相当する深さの凹部を形成して成るブレーキディスクの使用限界表示装置の技術が提案されている。また、例えば特許文献5では、摩耗パッドを押圧するディスクの摺動面にその面の許容摩耗寸法と同じ深さの溝を設けたディスクロータの技術が提案されている。
【特許文献1】特開平6−193660号公報
【特許文献2】特開2000−88018号公報
【特許文献3】特開2003−14020号公報
【特許文献4】特開昭59−117926号公報
【特許文献5】実開昭61−32836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライニングなどに抵抗を配設することによりライニングの摩耗量を検出する技術などが提案されているが、ディスクブレーキのディスクやドラムブレーキのドラムなどは、金属により形成され、鋳造や鍛造または切削などの機械加工によって金属により成型されることから抵抗を配設するなどは困難である。また、摺動面に凹部を形成したディスクなどが提案されているが、ディスクを目視により確認しなければ摩耗しているかを判断することができず煩雑である。
【0005】
そこで、本発明は、上述の事情を鑑みてなされたものであり、ディスクやドラムなど押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体の摩耗の確認を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の摩耗検出装置は、押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する回転体と、回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、摩耗検知手段の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗を判断する摩耗判断手段と、摩耗判断手段の判断結果に応じて回転体の摩耗を報知する報知手段と、を備える。この態様によると、ディスクやドラムなど押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体の摩耗を容易に確認することができる。
【0007】
本発明の別の態様もまた、摩耗検出装置である。この装置は、押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に異なる深さの複数種の凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する回転体と、回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、摩耗検知手段の検知結果により摩耗レベルを判断する摩耗レベル判断手段と、摩耗レベル判断手段が判断した摩耗レベルに応じて異なる報知を行う報知手段と、を備える。この態様によると、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗について、運転者に摩耗レベルに応じた報知を行うことができる。
【0008】
異なる深さの複数種の凹部のうち、同一種の凹部は、円周方向に所定間隔ごとに設けられていてもよい。この態様によると、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗について、同一種の凹部が摩耗により消滅することにより、所定間隔ごとの凹部が摩耗検知手段により検知されなくなることから、同一種の凹部が摩耗により消滅した時点で摩耗検知手段により周期的な検知結果を得ることができ、同一種の凹部まで摩耗したことを容易に確認することができる。
【0009】
摩耗レベル判断手段は、摩耗検知手段の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗レベルを判断してもよい。この態様によると、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗を容易に確認することができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様もまた、摩耗検出装置である。この装置は、押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に段階的な深さを持つ凹部を有する回転体と、回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、摩耗検知手段の検知結果により摩耗レベルを判断する摩耗レベル判断手段と、摩耗レベル判断手段が判断した摩耗レベルに応じて異なる報知を行う報知手段と、を備える。この態様によると、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗について、運転者に摩耗レベルに応じた報知を行うことができる。
【0011】
摩耗レベル判断手段は、摩耗検知手段の検知結果により判断した凹部または非凹部の幅に応じて摩耗レベルを判断してもよい。この態様によると、摩耗検知手段の検知信号の幅などにより、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗について、運転者に摩耗レベルに応じた報知を行うことができる。
【0012】
摩耗レベル判断手段は、摩耗検知手段の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗レベルを判断してもよい。この態様によると、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗を容易に確認することができる。
【0013】
、nおよびkを1以上の自然数とした場合、凹部の数がnであり、回転検知手段は、車輪が1回転することにより生じるn周期の信号を検知するものである場合に、kn=nであってもよい。この態様によると、回転検知手段の検知結果を有効に利用して、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗を容易に確認することができる。
【0014】
本発明のさらに別の態様もまた、摩耗検出装置である。この装置は、押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する回転体と、回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、摩耗検知手段の検知結果により判断した凹部または非凹部の幅に応じて摩耗レベルを判断する判断する摩耗判断手段と、摩耗判断手段の判断結果に応じて回転体の摩耗を報知する報知手段と、を備える。この態様によると、容易に回転体が摩耗しているかを判断することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ディスクやドラムなど押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体の摩耗の確認を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる車両10の概念構成図である。車両10は、左前輪12FL、右前輪12FR、左後輪12RL、右後輪12RR(以下必要に応じて、「車輪12」と呼ぶ。)を有し、それぞれの車輪12には、左前輪ABSセンサ14FL、右前輪ABSセンサ14FR、左後輪ABSセンサ14RL、右後輪ABSセンサ14RR(以下必要に応じて、「ABSセンサ14」と呼ぶ。)および、左前輪摩耗センサ16FL、右前輪摩耗センサ16FR、左後輪摩耗センサ16RL、右後輪摩耗センサ16RR(以下必要に応じて、「摩耗センサ16」と呼ぶ。)を備えている。また、車輪12のABSセンサ14や摩耗センサ16の検知結果から車両を制御する車両制御装置(以下「ECU」と呼ぶ。)100を備えている。
【0018】
車両10は、車両の走行状況に応じて最適な制動力を左前輪12FL、右前輪12FR、左後輪12RL、右後輪12RRの各車輪に与える電子制御ブレーキシステムが採用されている。ECU100は、ABSセンサ14に各車輪の回転状況を検知させ、この検知結果に応じて、各車輪にぞれぞれ最適な制動力を与える。このため、左前輪12FL、右前輪12FR、左後輪12RL、右後輪12RRは独立に制動力が与えられるように、車輪12に制動力を与える油圧システムにおいて、ECU100がそれぞれの車輪の増圧弁などの電磁弁を制御できるようになっている。
【0019】
また、車両10には、ブレーキ摩耗ランプ20が、車両のインジケータまたはセンターパネルなどに設けられており、ブレーキのディスクやドラムの摩耗の程度に応じて点灯するように制御される。ブレーキ摩耗ランプ20には、必要に応じてブレーキ摩耗警告ランプ20aおよびブレーキ摩耗予告ランプ20bが設けられており、ブレーキのディスクまたはドラムの摩耗の程度に応じてこれらのランプが点灯するように制御される。
【0020】
また、車両10のブレーキペダルには、ブレーキセンサ18が接続されており、運転者がブレーキペダルを操作することにより、制動信号を出力し、ECU100はこの制動信号があった場合に車両後側外観部に設けられたフットランプを点灯などする。また、ECU100は、ブレーキセンサ18が出力する制動信号を利用して、車両の制御を行うことができる。
【0021】
ABSセンサ14は、車輪の回転を検知するものであり、ホイールハブの車両側など、車輪とともに回転する部材の周上に凹凸部が設けられ、この凹凸部をホール素子などにより検知する。ホイールハブに設けられた凹凸部は円周方向に均等な間隔で設けられていることから、ホール素子などによりこの凹凸部を検知した結果、周期的な信号を得ることができる。
【0022】
ABSセンサ14により検知された車輪の回転信号は、車両のECU100に送られる。ECU100は、ABSセンサ14により検知された車輪の回転信号により、左前輪12FL、右前輪12FR、左後輪12RL、右後輪12RRのそれぞれの車輪の回転状況を把握する。ホイールハブに設けられた凹凸部は円周方向に複数設けられているため、ECU100は、車輪が1回転する間に複数の周期の回転信号を得ることができる。このため、ECU100は車輪12の回転状況を正確に把握することができる。ECU100は、検知された左前輪12FL、右前輪12FR、左後輪12RL、右後輪12RRの回転状況に応じて、車輪に制動力を与えるための油圧システムにおいて、電磁弁を制御するなどにより、各車輪に最適の制動力を与える。
【0023】
摩耗センサ16は、ディスクブレーキであればディスクの摩耗の検知を行い、ドラムブレーキであればドラムの摩耗の検知を行う。ECU100は、摩耗センサ16にディスクまたはドラムの摩耗を検知させ、この検知データからディスクまたはドラムの摩耗の程度を判断し、ディスクまたはドラムの摩耗量が所定の値を超えていると判断した場合には、ブレーキ摩耗ランプ20を点灯し、ディスクまたはドラムの摩耗量が所定の値を超えている旨を運転者に報知する。
【0024】
図2は、第1の実施形態にかかる摩耗センサ16を示す図である。本図は、ディスクブレーキにおける摩耗センサ16の構成を示す。ディスク30を有するディスクロータは、車輪のハブに固定されており、この車輪のハブにホイールが固定される。これにより、ディスク30は、車輪が回転するとともに回転するように構成される。
【0025】
ディスクブレーキのディスク30は鉄などの金属からなる円盤状に形成された部材からなる。ディスク30は、ブレーキパッド34が押しつけられる被押圧面を有しており、ブレーキパッド34がディスク30の被押圧面に押しつけられることによりディスク30の回転が制動され、車輪に制動力が与えられる。ディスク30は車両側と車両外側の2枚により構成され、車両側のディスク30と車両外側のディスク30の間には、ディスク30を冷却するためのフィン40が設けられている。ブレーキパッド34は、車両側のディスク30被押圧面と車両外側のディスク30の被押圧面のそれぞれに対向して1つずつ設けられ、この2つのブレーキパッド34は、ブレーキキャリパによりディスク30を挟持する方向に油圧が与えられ、ディスク30の被押圧面にブレーキパッド34を押しつける。
【0026】
ディスク30の被押圧面には、円周方向に断続的に所定間隔ごとに凹部32が設けられている。本図は車両外側のディスク30を示すが、車両側のディスク30にも同様の凹部が設けられている。ディスク30の被押圧面に形成される凹部32は、フライスなどの切削加工により形成してもよく、鋳造や鍛造などにより形成してもよく、またプレス加工などによって形成してもよい。
【0027】
ブレーキパッド34には、摩耗センサ16が設けられている。摩耗センサ16は、ブレーキパッド34に貫通して設けられた孔であるセンサ部に、銅線などの導電体を2本挿入して固定することにより構成される。導電体が挿入されるセンサ部は、ディスク30の被押圧面に設けられた凹部32の径方向の長さの範囲にくるように配設される。
【0028】
また、ブレーキパッド34のパッド部34aは、一般的にディスクロータのディスク30よりも柔らかい部材で形成されており、ブレーキパッド34を短い周期で交換するようになっている。そのため、ブレーキパッド34が摩耗してもセンサ部がディスク30の被押圧面に設けられた凹部32の径方向の長さの範囲にくるように、ディスク30の被押圧面に対して垂直にブレーキパッド34に挿入される。
【0029】
ディスク30は導電体である鉄などの金属により形成されるため、1対の摩耗センサ16の間に凹部がなければ、1対の摩耗センサの間が電気的に導通する。したがって、例えば1対の摩耗センサ16に電圧を付与しておけば、摩耗センサ16の箇所に凹部が位置すれば電流が流れず、摩耗センサ16の箇所に凹部が位置しなければ電流が流れる。この電流を検知することによって、車輪12が回転することによって周期的な検知信号を得ることができる。
【0030】
図3は、第1の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。ディスクロータのディスク30は車両外側のディスク30aと車両側のディスク30b、ディスク30aとディスク30bの間に配設される、ディスク30を冷却するためのフィン40から構成される。本実施形態においてはディスク30は厚さ25mmで程度の厚さを有しており、ディスク30aおよび30bは7〜8mm程度の厚さを有している。
【0031】
ディスク30aには、ブレーキパッド34が押しつけられる被押圧面を有しており、このディスク30aの被押圧面にブレーキパッド34が押しつけられることにより、ディスク30に制動力が与えられる。なお、図示しないが、ディスク30bにもブレーキパッド34が押しつけられる被押圧面を有しており、同様に被押圧面にブレーキパッド34が押しつけられることにより、ディスク30に制動力が与えれれる。車両外側のディスク30aおよび車両側のディスク30bは、ブレーキキャリパがブレーキパッド34に車両外側のディスク30aおよび車両側のディスク30bを挟持する方向に油圧をかけることによって、ブレーキパッド34が車両外側のディスク30aおよび車両側のディスク30bのそれぞれの被押圧面に同時に押しつけられる。
【0032】
ディスク30aには、被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する。凹部の深さは、ディスク30の交換をした方が良い摩耗深さであり、1mm〜1.5mm程度の深さとなっている。また、凹部の長さと凹部間の間隔は同一の幅となっている。ディスクブレーキのディスクロータのディスクの片面に被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部を設けることにより、例えば、加工コストを低減することができ、または摩耗を検知する摩耗センサを設けるコストを低減することができる。また、片面に前記凹部を設ける場合、凹部を車両外側に設けることにより、ディスク30の摩耗の程度を目視でも確認することが容易になる。
【0033】
ブレーキパッド34は、パッド部34aおよび支持部材34bにより構成される。このパッド部34aおよび支持部材34bに2本の銅線などの導電体により形成される摩耗センサ16が挿通されている。摩耗センサ16は微少な間隔が設けられて相互に平行に配設され、ディスク30aに垂直に配設される。摩耗センサ16は、ブレーキパッド34が摩耗しても抜けることがないように、ブレーキパッド34に圧入され、またはブレーキパッド34に設けられた孔に挿入後接着などされ、もしくは分割されたブレーキパッド34の間に挟持されるなどにより、ブレーキパッド34に固定される。
【0034】
車両が走行し、車輪12が回転することにより、ディスク30aも回転する。これにより、摩耗センサ16の先端がディスク30aの非押圧面に接触した状態と、摩耗センサ16の先端にディスク30aの被押圧面に設けられた凹部がくることにより、摩耗センサ16の先端が何も接触しない状態とに交互に変化する。2本の摩耗センサ16の両方がディスク30aの被押圧面に接触すると、ディスク30aが導電体である鉄などにより形成されていることから、2本の摩耗センサ16が電気的に導通する。2本の摩耗センサ16の少なくとも一方が凹部に対向することによりディスク30aの被押圧面に接触しないと、2本の摩耗センサ16は電気的に絶縁される。これにより、2本の摩耗センサ16に電圧を印加しておき電流を検知すれば、車輪12が回転することによって周期的な検知信号を得ることができる。
【0035】
図4は、第1の実施形態にかかるABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(a)はABSセンサ14の検知信号を示す図であり、(b)はディスク30が摩耗していない状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(c)はディスク30が摩耗した状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図である。
【0036】
ABSセンサ14は、ホイールハブの車両側など、車輪とともに回転する部材の周上に均等に設けられた凹凸部をホール素子などにより検知することにより、(a)のような周期的な信号を得ることができる。本実施形態においては、ABSセンサ14が検知する凹凸部は車輪とともに回転する部材の周上にn箇所設けられている。したがって、ABSセンサ14は、車輪12が1回転するごとにn周期の信号を検知することができる。図において、凸部が車輪とともに回転する部材の周上に均等に設けられた凸部を検知したもので、凹部が回転する部材の周上に均等に設けられた凸部を検知したものである。
【0037】
ディスク30は、被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられたn箇所の凹部を有している。車輪が回転している際に、摩耗センサ16により被押圧面および凹部が検知されることにより、(b)のような周期的な信号を得ることができる。図において、凸部がディスク30の被押圧面を検知したもので、凹部がディスク30の被押圧部に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部を検知したものである。本実施形態においては、nが48である場合にnも48であるように、n=nとなっている。これにより、摩耗の検知をより簡易なものとすることができる。また、ABSセンサ14における車輪とともに回転する部材の周上に設けられた凹部と、ディスク30に設けられた凹部が同一の位相で検知されるように、ディスク30の凹部が配設される。これにより、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号を同一位相にすることができ、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号の比較を容易なものにすることができる。
【0038】
ディスク30が摩耗すると、被押圧面に設けられた凹部の深さが徐々に減少し、ディスク30の部品精度やブレーキパッド34がディスク30を押圧する押圧状態によって偏摩耗が生じ、最初にいずれかの凹部が摩耗により消滅し、徐々にいくつかの凹部が摩耗によって消滅していく。(c)は、例えば2箇所の凹部が摩耗により消滅した状態を示している。例えばディスク30に偏摩耗が生じても、偏摩耗の仕方によっては摩耗センサ16の検知信号における凸部が均等に検知されてしまう場合が生じる可能性がある。この場合、摩耗センサ16の検知結果のみでディスク30に摩耗の程度を判断する場合、ECU100は、摩耗センサ16の検知信号の入力を受けても、車輪が遅く回転しているだけでディスク30に摩耗が生じていると判断できない場合が生ずる可能性がある。また、ディスク30の摩耗により、ディスク30に設けられたすべての凹部が消滅してしまった場合は、摩耗センサ16の検知信号の入力がなく、車両が停止中との相違がないため、ディスク30に摩耗が生じていると判断できない場合が生ずる可能性がある。
【0039】
本実施形態においては、ABSセンサの検知信号において凹部から凸部に移行するタイミングと摩耗センサ16の検知信号において凹部から被押圧面に移行するタイミングとを比較することにより、ディスク30の摩耗の程度を判断している。具体的には、ABSセンサの検知信号の位相よりも摩耗センサ16の検知信号の位相を微小に遅らせ、ABSセンサの検知信号がゼロ以上に立ち上がる時点で摩耗センサ16の検知信号がゼロかゼロ以外かを判断する。摩耗センサ16の検知信号がゼロであれば凹部は摩耗していないと判断でき、摩耗センサ16の検知信号がゼロ以外であれば凹部が摩耗していると判断することができる。以下、この摩耗判断方法をエッジ判断法という。
【0040】
これにより、新たに摩耗センサ16の他にセンサを追加することなく簡易に摩耗の程度を判断することができ、またディスク30の被押圧面に設けられた凹部がすべて摩耗により消滅する前に、ディスク30の被押圧面に設けられた凹部のいずれかが摩耗により消滅することによりディスク30の摩耗を検知することができることから、ディスク30の摩耗の検知の精度を向上することができる。
【0041】
なお、ECU100が摩耗センサ16の検知信号を積分回路により積分し、得られた値が所定の値よりも大きければディスク30が摩耗したと判断することもできる。以下この摩耗判断方法を積分判断法という。これにより、容易にディスク30が摩耗しているかを判断することができる。
【0042】
図5は、第1の実施形態にかかる摩耗検出装置の動作フローを示した図である。本フローは所定時間ごとに開始することができる。
【0043】
ECU100は、ブレーキセンサ18から入力を受けた検知信号により、ブレーキが操作されたか、すなわち制動信号がONになったか否かを判断する(S11)。制動信号がONになっていないと判断した場合は(S11のN)、本フローを終了する。
【0044】
制動信号がONになったと判断した場合は(S11のY)、ABSセンサ14から入力を受けた検知信号と、摩耗センサ16から入力を受けた検知信号が同期しているか否かを判断する(S12)。具体的には、ABSセンサ14の検知信号がゼロ以上に立ち上がるタイミングと、摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上に立ち上がるタイミングとが一致しているか否かを判断する。ABSセンサ14の検知信号と、摩耗センサ16の検知信号が同期している場合は(S12のY)、所定のレベルまでディスク30は摩耗していないと判断し、本フローを終了する。
【0045】
ABSセンサ14の検知信号と、摩耗センサ16の検知信号が同期していないと判断した場合は(S12のN)、ディスク30の被押圧面に形成された凹部のうち、少なくとも1以上の凹部が摩耗に消滅したと判断し、所定のレベルまで摩耗していると判断して、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗ランプ20を点灯する(S13)。これにより、運転者にディスク30の交換時期を容易に報知することができる。ブレーキ摩耗ランプ20を点灯すると、本フローを終了する。
【0046】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。なお、第1の実施形態と同一の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
ディスク30aには、深さaの第1凹部32aと、第1凹部よりも深さの深い、深さbの第2凹部32bが交互に、ディスク30の被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられている。深さaは、ディスク30の交換をした方が良い摩耗深さであり、1mm〜1.5mm程度の深さとなっている。深さbは、ディスク30を交換した方がよい摩耗深さまで達していないが、このまましばらく走行すると、ディスク30を交換した方がよい摩耗深さに達する摩耗深さなどをいう。深さbは、深さaの70%以上80%以下程度であることが好ましく、例えば深さaが1mmである場合は、深さbは0.7mmから0.8mm程度であることが好ましい。
【0048】
図7は、第2の実施形態にかかるABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(a)はABSセンサ14の検知信号を示す図であり、(b)はディスク30が摩耗していない状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(c)はディスク30が深さaまで摩耗した状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(d)はディスク30が深さbまで摩耗した状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図である。
【0049】
本実施形態においては、ABSセンサ14が検知する凹凸部は車輪とともに回転する部材の周上にn箇所設けられている。したがって、ABSセンサ14は、車輪12が1回転するごとにn周期の信号を検知することができる。
【0050】
ディスク30は、第1凹部32aと第2凹部32bを合計して、被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられたn箇所の凹部を有している。車輪が回転している際に、摩耗センサ16により被押圧面および凹部が検知されることにより、(b)のような周期的な信号を得ることができる。本実施形態においては、nが48である場合にnも48であるように、n=nとなっている。また、ABSセンサ14における車輪とともに回転する部材の周上に設けられた凹部と、ディスク30に設けられた凹部が同一の位相で検知されるように、ディスク30の凹部が配設される。本実施形態においては、第1凹部32aと第2凹部32bが同数であり、交互に配置されている。
【0051】
ディスク30の摩耗が進行すると、ディスク30の被押圧面に設けられた深さの浅い第1凹部32aは消滅しはじめ、第1凹部32aがすべて摩耗により消滅すると、深さの深い第2凹部32bのみ存在する状態となる。この場合、第1凹部32aと第2凹部32bは同数であることから、摩耗センサ16から得られる検知信号は、(c)のように、消滅した第1凹部32aの分の検知信号の凹部が消滅した形となる。このため、1秒間にABSセンサ14の検知信号がゼロ以上に立ち上がる回数fは、1秒間に摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上に立ち上がる回数fの2倍となり、f=2fの関係となる。ECU100は、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期しなくなってから、すなわち第1凹部32aが摩耗により消滅し始めてから、第1凹部32aがすべて消滅してf=2fの関係が成立するようになるまでの間か否か、すなわちf≦2fの関係が成立するか否かを判断することにより、ディスク30が第1凹部32aの深さaまで摩耗しているか否かを判断することができる。ECU100は、f≦2fの関係が成立していると判断した場合には、ディスク30の交換時期が近づいていることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯する。これにより、運転者にディスクの交換時期以前に、ディスクの交換時期が近づいていることを報知することができる。
【0052】
なお、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期しているか否か、および摩耗センサ16の検出信号がゼロ以上に立ち上がる回数は、前述のエッジ検出法によって判断することができる。
【0053】
なお、本実施形態においても、前述の積分判断法により摩耗センサ16の摩耗レベルを判断してもよい。この場合、ECU100は、積分した値が所定以上になった場合に、ディスク30の交換時期が近づいていることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯し、積分した値が前記所定の値より大きい別の所定の値以上になった場合に、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗警告ランプ20aを点灯する。
【0054】
さらにディスク30の摩耗が進行すると、ディスク30の被押圧面に設けられた深さの深い第2凹部32bも偏摩耗により消滅し始める。この場合、(d)のように、検知信号の凹部が消滅していき、f>2fの関係が成立するようになる。ECU100は、f>2fの関係が成立しているかを判断することにより、ディスク30が第2凹部32bの深さbまで摩耗しているか否かを判断することができる。ECU100は、f>2fの関係が成立していると判断した場合には、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗警告ランプ20aを点灯する。
【0055】
図8は、第2の実施形態にかかる摩耗検出装置の動作フローを示した図である。本フローは所定時間ごとに開始することができる。なお、第1の実施形態と同一箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
ECU100は、制動信号がONの場合(S11のY)、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期しているか否かを判断する(S12)。制動信号がONでない場合(S11のN)、およびABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期している場合は(S12のY)、本フローを終了する。
【0057】
ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期していない場合は(S12のN)、ECU100は、1秒間にABSセンサ14の検知信号がゼロ以上に立ち上がる回数をf、1秒間に摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上に立ち上がる回数をfとした場合に、f≦2fの関係が成立しているか否かを判断する(S21)。f≦2fの関係が成立していると判断した場合には(S21のY)、ECU100は、ディスク30の交換時期が近づいていることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯する(S22)。f≦2fの関係が成立していないと判断した場合、すなわちf>2fの関係が成立していると判断した場合は(S21のN)、ECU100は、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗警告ランプ20aを点灯する(S13)。ブレーキ摩耗ランプ20を点灯すると、本フローを終了する。
【0058】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。なお、前述の実施形態と同一の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
ディスク30には、深さaの箇所と深さbの箇所を有する同一形状の複数の第3凹部32cが、ディスク30の被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられている。本図において、車輪12が回転することにより、ディスク30は右から左に移動するものとする。深さaは、ディスク30の交換をした方が良い摩耗深さであり、1mm〜1.5mm程度の深さとなっている。深さbは、ディスク30を交換した方がよい摩耗深さまで達していないが、このまましばらく走行すると、ディスク30を交換した方がよい摩耗深さに達する摩耗深さなどをいう。深さbは、深さaの70%以上80%以下程度であることが好ましく、例えば深さaが1mmである場合は、深さbは0.7mmから0.8mm程度であることが好ましい。1箇所の第3凹部32cにおいて、深さaの部分の円周方向の長さは、深さb部分の円周方向の長さと等しくなっている。
【0060】
図10は、第3の実施形態にかかるABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(a)はABSセンサ14の検知信号を示す図であり、(b)はディスク30が摩耗していない状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(c)はディスク30が深さaまで摩耗した状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図であり、(d)はディスク30が深さbまで摩耗した状態の摩耗センサ16の検知信号を示す図である。
【0061】
本実施形態においては、ABSセンサ14が検知する凹凸部は車輪とともに回転する部材の周上にn箇所設けられている。したがって、ABSセンサ14は、車輪12が1回転するごとにn周期の信号を検知することができる。
【0062】
ディスク30は、被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられたn箇所の第3凹部32cを有している。車輪が回転している際に、摩耗センサ16により被押圧面および凹部が検知されることにより、(b)のような周期的な信号を得ることができる。本実施形態においては、nが48である場合にnも48であるように、n=nとなっている。また、ABSセンサ14における車輪とともに回転する部材の周上に設けられた凹部と、ディスク30に設けられた第3凹部32cが同一の位相で検知されるように、ディスク30の凹部が配設される。ABSセンサ14の検知信号がゼロ以上に立ち上がっている時間をW、摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上に立ち上がっている時間をWとすると、ディスク30が摩耗していない状態ではW=Wとなっている。
【0063】
ディスク30の摩耗が進行すると、ディスク30の被押圧面に設けられた第3凹部32cのうち、深さの浅い深さaの部分は消滅しはじめ、第3凹部32cの深さaの部分がすべて摩耗により消滅すると、深さbの部分のみ存在する状態となる。この場合、検知信号がゼロからプラスに立ち上がるタイミングはABSセンサ14の検知信号と同時であることから、この場合も摩耗センサ16の検知信号とABSセンサ14の検知信号は同期している。
【0064】
しかし、第3凹部32cのうち深さaの部分は消滅していることから、ディスク30の凹部と凹部の間の被押圧面の円周方向の長さは長くなり、これによって、Wも大きくなる。したがって、例えば車輪12が1回転する場合の平均のWおよびWがW=Wの関係が成立すれば、ECU100はディスク30は深さaまで摩耗していないと判断することができる。車輪12が1回転する場合の平均のWおよびWは、ABSセンサ14の検知信号および摩耗センサ16の検知信号をECU100が積分回路で積分することにより算出することができる。W<Wの関係が成立すれば、ECU100はディスク30は深さaまで摩耗していると判断することができる。ECU100は、W=Wの関係が成立しないと判断した場合、すなわちW<Wの関係が成立していると判断した場合には、ディスク30は深さaまで摩耗していると判断し、ディスク30の交換時期が近づいていることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯する。
【0065】
さらにディスク30の摩耗が進行すると、ディスク30の被押圧面に設けられた第3凹部32cのうち深さの深い深さbの部分も偏摩耗により消滅し始める。この場合、(d)のように、検知信号の凹部が消滅していき、ABSセンサ14の検知信号がゼロ以上に立ち上がるタイミングに摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上に立ち上がらず、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期しなくなる。ECU100は、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期していないか否かを判断することにより、ディスク30深さbまで摩耗しているか否かを判断することができる。ECU100は、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期していないと判断した場合には、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗警告ランプ20aを点灯する。
【0066】
図11は、第3の実施形態にかかる摩耗検出装置の動作フローを示した図である。本フローは所定時間ごとに開始することができる。なお、前述の実施形態と同一箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
ECU100は、制動信号がONの場合(S11のY)、ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期しているか否かを判断する(S12)。制動信号がONでない場合は(S11のN)、本フローを終了する。
【0068】
ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期していると判断した場合には(S12のY)、ECU100は、ABSセンサ14の検知信号がゼロ以上に立ち上がっている時間の車輪12の1回転分の平均をW、摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上に立ち上がっている時間の車輪12の1回転分の平均をWとして、W=Wとなっているか否かを判断する(S31)。
【0069】
=Wとなっていると判断した場合には(S31のY)、ECU100は、ディスク30は、深さaまで摩耗していないため、運転者にディスク30の摩耗について報知する必要はないと判断し、ブレーキ摩耗警告ランプ20aおよびブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯することなく、本フローを終了する。
【0070】
=Wとなっていないと判断した場合には(S31のN)、ECU100は、ディスク30は深さaまで摩耗していると判断し、ディスク30の交換時期が近づいていることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯する(S22)。
【0071】
ABSセンサ14の検知信号と摩耗センサ16の検知信号が同期していないと判断した場合には(S12のN)、ECU100は、ディスク30は深さbまで摩耗していると判断し、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗警告ランプ20aを点灯する(S13)。
【0072】
(第4の実施形態)
図12は、第4の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。前述の実施形態と同一の箇所については、同一の符号を付して説明を省略する。ディスク30aは、被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する。ディスク30aの被押圧面に対向して、ギャップセンサ42指示軸46を介してマウンティング44に支持されて配設されている。
【0073】
マウンティング44は車両側に支持されている。ディスク30aとギャップセンサ42との間には微小な間隔が設けられている。ギャップセンサは光学センサなどにより構成され、対向する物体との間隔を検知する。したがって、ギャップセンサ42はディスク30aの被押圧面との間隔および凹部との間隔を検知することができる。ディスク30aが摩耗していくと、凹部の深さは変化しないが、被押圧面は徐々に摩耗センサから遠ざかる方向に移動していく。ECU100は、ギャップセンサ42から入力を受けた検知データに基づいて凹部の底面から被押圧面までの長さを演算する。この演算結果に応じて、ECU100は、ブレーキ摩耗ランプ20を点灯する。
【0074】
ECU100は、ギャップセンサ42からの入力を受けた検知データから、ディスク30が所定の値まで摩耗したと判断した場合には、ディスク30の交換時期が近づいていることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗予告ランプ20bを点灯してもよい。また、ECU100は、ギャップセンサ42からの入力を受けた検知データから、前述のブレーキ摩耗予告ランプを点灯する場合の所定の値よりも大きな所定の値までディスク30が摩耗したと判断した場合には、ディスク30の交換時期であることを運転者に報知するためにブレーキ摩耗ランプ20を点灯してもよい。これにより、運転者にディスク30の交換時期を容易に報知することができる。
【0075】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。以下、そうした例をあげる。
【0076】
ドラムブレーキのドラムの、ライニングが押しつけられる被押圧面に、第1の実施形態、第2の実施形態、または第3の実施形態のいずれかに記載の円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部を有していてもよい。これにより、ドラムブレーキにおいても、ドラムの摩耗を容易に検知することができる。この場合、摩耗センサ16は、ブレーキシューおよびライニングに挿通され固定される。
【0077】
車両外側のディスク30aおよび車両側のディスク30bの両方、すなわちディスクロータの両面のディスクに被押圧面に円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部を有していてもよい。これにより、いずれかのディスク30に摩耗が生じた場合においても検知することができる。
【0078】
なお、ブレーキのディスクは、ディスク30aとディスク30bの間にフィン40を有しない、ディスク30の1枚のみで構成されるディスクでも構わない。この場合、ディスク30の車両外側の被押圧面または車両側の押圧面のいずれか一方の凹部を有していても良い。また、ディスク30の車両外側および車両側の両方の押圧面に凹部を有していても良い。
【0079】
運転者へのブレーキのディスクやドラムの摩耗の報知は、ブレーキ摩耗ランプ20ではなく、液晶画面などに表示することによって行ってもよい。これにより、より明確なメッセージを運転者へ報知することができる。
【0080】
また、運転者へのブレーキのディスクやドラムの摩耗の報知は、音声によって報知してもよい。これにより、運転者にランプや画面などを確認させる必要がなくなり、運転者に運ブレーキのディスクやドラムの摩耗の報知をより確実に行うことができる。
【0081】
、nおよびkを1以上の自然数とした場合、凹部の数がnであり、回転検知手段は、車輪が1回転することにより生じるn周期の信号を検知するものである場合に、kn=nであってもよい。これにより、回転検知手段の検知結果を有効に利用して、ブレーキのディスクやドラムなどの摩耗を容易に確認することができる。例えば、nが48である場合に、nを16とする。この場合、kは3となり、ECU100は、ABSセンサ14の検知信号がゼロ以上になるタイミングのうち3回に1回が摩耗センサ16の検知信号がゼロ以上になるタイミングと同期しているかを判断すればよく、ブレーキのディスクやドラムの摩耗を容易に確認することができる。
【0082】
ディスクブレーキのディスクやドラムブレーキのドラムなどの回転体に設けられた円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた凹部を検知するホール素子などの回転検知手段を有し、この回転検知手段の検知結果により、車輪の回転を検知してもよい。これにより、簡易な構成で車輪の回転を検知することができ、またディスク30に複数の凹部を設けることができることから、細かく車輪の回転を検知することができ、ABSの制御に利用することができる。
【0083】
なお、回転検知手段は、ディスクブレーキのディスクやドラムブレーキのドラムなどの回転体の被押圧面に設けられた円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた異なる深さの複数種の凹部または非凹部を検知してもよい。これにより、例えば、深さの浅い凹部でディスク30の摩耗を検知することができ、また深さの深い凹部で車輪12の回転を検知するなど、ディスクブレーキのディスクやドラムブレーキのドラムなどの摩耗と、車輪12の回転の検知を、同じ凹部から行うことができる。
【0084】
また、回転検知手段は、ディスクブレーキのディスクやドラムブレーキのドラムなどの回転体の被押圧面に設けられた円周方向に断続的に所定間隔ごとに設けられた段階的な深さを持つ凹部を検知してもよい。これにより、例えば、凹部の深さの浅い部分でディスク30の摩耗を検知することができ、また凹部の深さの深い部分で車輪12の回転を検知するなど、ディスクブレーキのディスクやドラムブレーキのドラムなどの摩耗と、車輪12の回転の検知を、同じ凹部から行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施形態にかかる車両の概念構成図である。
【図2】第1の実施形態にかかる摩耗センサを示す図である。
【図3】第1の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。
【図4】第1の実施形態にかかるABSセンサの検知信号と摩耗センサの検知信号を示す図であり、(a)はABSセンサの検知信号を示す図であり、(b)はディスクが摩耗していない状態の摩耗センサの検知信号を示す図であり、(c)はディスクが摩耗した状態の摩耗センサの検知信号を示す図である。
【図5】第1の実施形態にかかる摩耗検出装置の動作フローを示した図である。
【図6】第2の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。
【図7】第2の実施形態にかかるABSセンサの検知信号と摩耗センサの検知信号を示す図であり、(a)はABSセンサの検知信号を示す図であり、(b)はディスクが摩耗していない状態の摩耗センサの検知信号を示す図であり、(c)はディスクが深さaまで摩耗した状態の摩耗センサの検知信号を示す図であり、(d)はディスクが深さbまで摩耗した状態の摩耗センサの検知信号を示す図である。
【図8】第2の実施形態にかかる摩耗検出装置の動作フローを示した図である。
【図9】第3の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。
【図10】第3の実施形態にかかるABSセンサの検知信号と摩耗センサの検知信号を示す図であり、(a)はABSセンサの検知信号を示す図であり、(b)はディスクが摩耗していない状態の摩耗センサの検知信号を示す図であり、(c)はディスクが深さaまで摩耗した状態の摩耗センサの検知信号を示す図であり、(d)はディスクが深さbまで摩耗した状態の摩耗センサの検知信号を示す図である。
【図11】第3の実施形態にかかる摩耗検出装置の動作フローを示した図である。
【図12】第4の実施形態にかかるブレーキの円周方向の断面図である。
【符号の説明】
【0086】
10 車両、 12 車輪、 14 ABSセンサ、 16 摩耗センサ、 18 ブレーキセンサ、 20 ブレーキ摩耗ランプ、 30 ディスク、 32 凹部、 34 ブレーキパッド、 100 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する回転体と、
前記回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、
前記摩耗検知手段の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗を判断する摩耗判断手段と、
前記摩耗判断手段の判断結果に応じて回転体の摩耗を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする摩耗検出装置。
【請求項2】
押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に異なる深さの複数種の凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する回転体と、
前記回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、
前記摩耗検知手段の検知結果により摩耗レベルを判断する摩耗レベル判断手段と、
前記摩耗レベル判断手段が判断した摩耗レベルに応じて異なる報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする摩耗検出装置。
【請求項3】
前記異なる深さの複数種の凹部のうち、同一種の凹部は、円周方向に所定間隔ごとに設けられたことを特徴とする請求項2に記載の摩耗検出装置。
【請求項4】
前記摩耗レベル判断手段は、前記摩耗検知手段の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗レベルを判断することを特徴とする請求項2または3に記載の摩耗検出装置。
【請求項5】
押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に段階的な深さを持つ凹部を有する回転体と、
前記回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、
前記摩耗検知手段の検知結果により摩耗レベルを判断する摩耗レベル判断手段と、
前記摩耗レベル判断手段が判断した摩耗レベルに応じて異なる報知を行う報知手段と、
を備えることを特徴とする摩耗検出装置。
【請求項6】
前記摩耗レベル判断手段は、前記摩耗検知手段の検知結果により判断した凹部または非凹部の幅に応じて摩耗レベルを判断することを特徴とする請求項5に記載の摩耗検出装置。
【請求項7】
前記摩耗レベル判断手段は、前記摩耗検知手段の検知結果と、車輪の回転を検知する回転検知手段の検知結果を比較することにより摩耗レベルを判断することを特徴とする請求項4または5に記載の摩耗検出装置。
【請求項8】
、nおよびkを1以上の自然数とした場合、前記凹部の数がnであり、前記回転検知手段は、車輪が1回転することにより生じるn周期の信号を検知するものである場合に、kn=nであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の摩耗検出装置。
【請求項9】
押圧体が押しつけることにより制動力を発生する回転体であって、該押圧体が押しつける対象部位である被押圧部に円周方向に断続的に凹部および凹部以外の被押圧部である非凹部を有する回転体と、
前記回転体が回転している場合に凹部および非凹部を検知する摩耗検知手段と、
前記摩耗検知手段の検知結果により判断した凹部または非凹部の幅に応じて摩耗レベルを判断する判断する摩耗判断手段と、
前記摩耗判断手段の判断結果に応じて回転体の摩耗を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする摩耗検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−177399(P2006−177399A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369122(P2004−369122)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】