説明

撮像装置および撮像素子駆動方法

【課題】撮影動作中に暗電流を簡略な構成で高精度に検出する。
【解決手段】CCD15における第1画面の読み出しにおいて、フォトダイオード30の電荷を垂直CCD31に転送し(図3(a))、黒丸で示される上部垂直オプティカルブラック領域の電荷信号を残して垂直転送を停止する(図3(c))。第2画面の撮影を行い、フォトダイオード30の電荷を垂直CCD31に転送することにより、黒丸で示される下部垂直オプティカルブラック領域の電荷信号を、第1画面の読み出しにおいて残され、斜線が施された丸で示される上部垂直オプティカルブラック領域の電荷信号に加算する(図3(d))。加算された電荷信号からCCD15の暗電流を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に発生する暗電流を計測するための装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置において、挿入部先端に設けられたCCDのオプティカルブラック領域の画素信号レベルとダミー領域の画素信号レベルを検出し、これらの差から挿入部先端の温度を推定する構成が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−151929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、オプティカルブラック領域の信号レベルは極めて低いため暗電流のレベルを高い精度で検出することは困難である。
【0005】
本発明は、撮影動作中に暗電流を簡略な構成で高精度に検出することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、CCDの1画面の読み出しにおいて、垂直オプティカルブラック領域に対応する水平ラインの1ライン以上を残して垂直転送を停止し、順時次画面の読み出しを行うことを特徴としている。
【0007】
また撮像装置は、前画面の読み出しにおいて読み出しが行われず、次画面の読み出しにおいて読み出された水平ラインの電荷信号に基づいてCCDの暗電流の値を検出する。また撮像装置は、前画面の読み出しにおいて読み出しが行われず、次画面の読み出しにおいて読み出された水平ラインの電荷信号に基づいてCCDの温度を推定してもよい。
【0008】
本発明の電子内視鏡装置は、上記撮像装置を搭載した電子内視鏡装置であって、温度が所定値よりも高いときにライトガイドに供給される光量を低減することを特徴とする。
【0009】
また、別の本発明の電子内視鏡装置は、上記撮像装置を搭載した電子内視鏡装置であって、温度が所定値よりも高いときに警告を行う警告手段を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の撮像素子駆動方法は、CCDの1画面の読み出しにおいて、垂直オプティカルブラック領域に対応する水平ラインの1ライン以上を残して垂直転送を停止し、順時次画面の読み出しを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影動作中に暗電流を簡略な構成で高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の撮像装置の電気的な構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の撮像装置で用いられるCCDの構成を示す平面図である。
【図3】本実施形態のCCDの電荷読み出し動作の原理を説明するための模式図である。
【図4】従来のCCD電荷読み出し動作と、本実施形態のCCD電荷読み出し動作における垂直駆動信号とCCD出力の関係を示すタイミングチャートである。
【図5】従来および本実施形態でのCCD出力で得られる暗電流と温度の関係を示すグラフである。
【図6】本実施形態のCCD電荷読み出し動作を電子内視鏡挿入部先端の温度推定に応用した処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態である撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
撮像装置10は例えば電子内視鏡装置であり、可撓管からなる挿入部11を備えるスコープ12と、スコープ12が着脱自在に接続されるプロセッサ装置13と、プロセッサ装置13に着脱自在に接続されるモニタ14から主に構成される。
【0015】
挿入部11の先端にはCCD15が設けられ、その駆動は例えばプロセッサ装置13内に設けられた駆動回路16によって制御される。また、CCD15で生成されたアナログの画像信号は、アンプを介してプロセッサ装置13に設けられたアナログ信号処理回路17へと送られ、所定のアナログ画像処理が施される。その後、画像信号は前段信号処理回路18においてA/D変換され、所定のデジタル画像処理が施された後、1フレーム毎に画像メモリ19に一時的に保存される。
【0016】
画像メモリ19に保存された画像データは、フレーム毎に所定のタイミングで後段信号処理回路20に出力され、例えば所定の規格の映像信号に変換されモニタ14やプリンタ(図示せず)などの外部装置や記録装置に出力される。なお、駆動回路16、アナログ信号処理回路17、前段信号処理回路18、画像メモリ19、後段信号処理回路20の駆動タイミングは、タイミングコントローラ21によって制御される。
【0017】
また、前段信号処理回路18は、CCD15のオプティカルブラック(OB)領域の画像信号を温度処理回路35に出力する。温度処理回路35では、入力された画像信号に基づいて撮像素子15、すなわち挿入部11の先端の温度が推定され、その結果はシステムコントローラ22へと送られる。
【0018】
システムコントローラ22は、光源電源23やモータドライバ24を制御し、モータドライバ24は、調光絞り25を動かすモータ26の駆動を制御する。また、システムコントローラ22には、各種操作キーや表示部を備えたフロントパネル36も接続される。
【0019】
光源電源23は、光源27に電力を供給し、光源27からの光は集光レンズ28によりスコープ12に設けられたライトガイド29の入射端に集光され入射される。光源27からライトガイド29の入射端に至る光路上には、調光絞り25が配置され、その駆動によりライトガイド29へ入射される光量が制御される。ライトガイド29へ入射された光は、ライトガイド29内を伝送され、挿入部11の先端に配置された出射端から照明光として照射される。
【0020】
図2は、CCD15の一般的な構成を模式的に示す平面図である。図2において格子状の領域として示される矩形領域15Aは、撮像に用いられる有効画素領域であり、その周囲には金属膜等で遮光されるオプティカルブラック(OB)領域が設けられる。有効画素領域15Aの垂直ライン方向上側には、上部垂直オプティカルブラック領域15B、下側には下部垂直オプティカルブラック領域15Cが設けられる。また、有効画素領域15Aの水平ライン方向右側にはペデスタルレベルの決定に用いられる後段水平オプティカルブラック領域15Dが設けられる。
【0021】
次に図3を参照して、本実施形態のCCD読み出し処理の原理について説明する。図3(a)〜(d)には、フォトダイオード30と、垂直方向に整列されるフォトダイオード30の各列に隣接して配置される垂直CCD31、および各垂直CCD31の下端部に沿って水平ライン方向に配置される水平CCD32の配置が模式的に示される。
【0022】
図3(a)は、各フォトダイオード30に蓄積された電荷が垂直CCD31に転送される様子を示すもので、最上段(n行目)のフォトダイオード30は、上部垂直オプティカルブラック領域15Bの画素を代表し、最下段(1行目)のフォトダイオード30は、下部垂直オプティカルブラック領域15Cの画素を代表する。また、図中黒丸はオプティカルブラック領域15B、15Cに蓄積された電荷、すなわち暗電流に対応する電荷を示し、白丸は有効画素領域15Aに蓄積された電荷、すなわち画像データに対応する電荷を示す。
【0023】
図3(b)は、垂直CCD31に転送された電荷が、垂直CCD31の垂直転送により順次水平CCD32へと転送され、水平CCD32の水平転送により順次CCD15の外へと出力される様子を示す。図3(c)は、最上段にあった上部垂直オプティカルブラック領域15Bの電荷が、下部垂直オプティカルブラック領域15Cに対応する垂直CCD31の最下段(1行目)まで転送された状態を示す。
【0024】
従来の各フレームの読み出しでは、全水平ラインの電荷がCCD15から出力されるので、図3(c)に示される最下段(1行目目)の電荷も他の電荷とともに出力されていた。しかし、本実施形態では、上部垂直オプティカルブラック領域31で検出された電荷(最上段の電荷)が、下部垂直オプティカルブラック領域32の垂直CCD31(最下段)まで転送された状態で、そのフレームの読み出しを終了する。
【0025】
図3(d)は、次フレームの撮像が終了し、各フォトダイオード30に蓄積された電荷が垂直CCD31へ転送される様子を示す。このとき、最下段の垂直CCD31には、前フレームの最上段の電荷(上部垂直オプティカルブラック領域15Bの電荷)が残されている。すなわち、図3(d)において斜線でハッチングされた白丸は、前フレームの最上段の電荷である。各フォトダイオード30の電荷が垂直CCD31に転送されると、下部垂直オプティカルブラック領域15Cに対応する最下段のフォトダイオード30に蓄積された電荷は、前フレームの上部垂直オプティカルブラック領域15Bで検出された電荷に加算にされ、最下段の垂直CCD31の電荷量は略倍となる。
【0026】
図4(a)、図4(b)は、それぞれ従来のCCD読み出し処理と、図3を参照して説明した本実施形態のCCD読み出し処理における垂直駆動信号とCCD出力の関係を示すタイミングチャートである。
【0027】
上下の垂直オプティカルブラック領域15B、15Cを含めた水平ラインの数が図3のように例えばn行のとき、図4(a)の従来のCCD読み出し処理では、1フレーム(1画面)の画像出力において、駆動回路16(図1)からCCD15(図1)には、n個の垂直駆動信号が出力され、最下段(1行目)の電荷OB11から最上段(n行目)の電荷OB1nまでが全て出力される。
【0028】
一方、本実施形態のCCD読み出し処理では、例えばn行目の垂直駆動信号が出力されない。すなわち、1フレームの画像出力において、駆動回路16からCCD15には、(n−1)個の垂直駆動信号のみが出力される。これにより、1フレーム(1画面)のCCD出力信号には、最上段(n行目)の画素信号(電荷)が含まれず、図3(c)に示されたように、垂直CCD31の最下段(1行目)に保持されたまま、次フレームの撮像が行われる。
【0029】
次フレームの電荷蓄積後、各フォトダイオード30の電荷が垂直CCD31へと転送されると、最下段(1行目)のフォトダイオード30の電荷OB21は、最下段(1行目)の垂直CCD31に保持された電荷OB1nに加算される。そして、次フレーム(次画面)の画像出力のため垂直駆動信号が駆動回路16からCCD15に出力されると、電荷OB1nと電荷OB21が加算された電荷が、次フレームの最下段(1行目)の画素信号として出力される。そして、次々フレーム以降も同様に、最下段(1行目)の画素信号は加算されて出力される。なお、加算された電荷信号(電荷OB1n、OB21)は、出力後、ダミー領域の画素信号との差が取られ、そのレベルが決定される。
【0030】
なお、図4において、オプティカルブラック領域15B、15Cのフォトダイオードで蓄積された電荷は黒塗りの矩形領域として示され、有効画素領域15Aのフォトダイオードで蓄積された電荷は白抜きの矩形領域として示される。また、前フレーム(前画面)のオプティカルブラック領域のフォトダイオードで蓄積された電荷は、斜線でハッチングされた矩形領域として示される。
【0031】
前述したように、遮光されたオプティカルブラック領域15B、15Cで蓄積される電荷は、CCD15の暗電流に対応するが、露光期間中各フォトダイオードで蓄積される電荷量は極めて小さい。そのため、従来のCCD読み出し処理を用いた暗電流の検出では十分な精度が得られなかった。
【0032】
しかし、本実施形態のCCD読み出し処理によれば、例えば最下段(1行目)の垂直CCD31で加算される電荷をモニタすることにより、従来の略2倍の信号電荷を用いて暗電流をモニタすることが可能となる。これにより撮影動作中にも、暗電流を高い精度で検出できる。
【0033】
図5は、温度と暗電流(電圧レベル)の関係を示すグラフである。また、図5には、本実施形態のCCD読み出し処理を用いた場合と、従来のCCD読み出し処理を用いた場合の温度と暗電流(電圧)の関係が対比されている。図示されるように、暗電流(電圧)レベルは、CCD15の温度の上昇とともに増大し、本実施形態では、暗電流に起因する画素信号のレベルが従来の略2倍となるので、高い精度で温度を推定することができる。
【0034】
図6のフローチャートは、本実施形態のCCD読み出し処理を電子内鏡挿入部先端の温度推定に応用するときの一例である。本処理は例えば電子内視鏡装置10において内視鏡観察のための撮影を行っている最中に実行される。以下図1、図6を参照して本処理について説明する。
【0035】
ステップS100では、本実施形態のCCD読み出し処理が駆動回路16により実行され、前段信号処理回路18へCCD15からの出力が入力される。またこのとき、最下段(1行目)の画素信号が温度処理回路35へと出力される。なお、温度処理回路35へ出力される信号は、例えば最下段(1行目)の画素信号の平均値などである。
【0036】
ステップS102では、温度処理回路35において例えば図5の関係を利用して温度推定処理が実行され、現在の暗電流レベルに対応する温度が求められる。そしてこの温度情報は、システムコントローラ22へと送られる。
【0037】
ステップS104では、推定された温度が所定値よりも高いか否か判定される。高くないと判定されると処理はステップS100に戻り同様の処理が繰り返される。一方、推定温度が所定値よりも高いと判断されると、ステップS106において照明光の減光処理が実行される。すなわち、システムコントローラ22はモータドライバ24を通して調光絞り25の駆動を制御し、ライトガイド29に入射される光量を例えば所定値まで低減する。
【0038】
また、ステップS108では、挿入部11の先端の温度が高いことをユーザに告知する警告処理が実行される。警告処理は、例えばモニタ14あるいはフロントパネル36の表示部に警告メッセージを表示してもよいし、警告ランプの点灯、あるいは警告音を発生させるなどしてもよい。警告処理が実行されると、処理はステップS100に戻り、同様の処理、すなわち次のフレームの読み出し処理が開始される。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、新たな構成を加えることなく撮影動作中に暗電流を高精度に検出することができる。また、これにより撮影動作中のCCDの温度、すなわち内視鏡などの挿入部先端の温度を高い精度で推定することができる。
【0040】
更に、本実施形態の電子内視鏡装置によれば、推定温度が所定値よりも高いときに、ライトガイドに供給される光量を制限し、挿入部先端の温度上昇を抑えることができ、かつ挿入部先端での温度上昇を警告することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、垂直オプティカルブラック領域の1水平ラインの電荷を加算する場合を例に説明したが、例えば垂直オプティカルブラック領域の複数の水平ライン(例えば1〜5ライン分)を残して読み出しを停止することで複数の水平ラインに対して2フレーム分の電荷を加算し、これに基づき暗電流の検出、温度の推定を行ってもよい。
【0042】
例えば、上下垂直オプティカルブラック領域にそれぞれn水平ライン含まれる場合、第1のフレームの読み出しにおいてn行分の水平ラインの読み出しを行わないことによりn行分の電荷を2倍にし、これらの平均値を暗電流の検出、温度の推定に用いることができる。すなわち、上下垂直オプティカルブラック領域のうち水平ラインの数が少ない方のライン数まで本実施形態の電荷加算を適用することができる。
【0043】
なお、本実施形態ではフレーム毎の読み出しを例に説明を行ったが、フィールド毎の読み出しにこれを応用することもできる。また、本実施形態では、温度処理回路を独立した回路として説明したが、温度の算出はシステムコントローラ内で行ってもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 撮像装置
11 挿入部
12 スコープ
15 CCD
15A 有効画素領域
15B 上部垂直オプティカルブラック領域
15C 下部垂直オプティカルブラック領域
16 駆動回路
18 前段信号処理回路
22 システムコントローラ
24 モータドライバ 24
25 調光絞り
26 モータ
27 光源
29 ライトガイド
35 温度処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCDの1画面の読み出しにおいて、垂直オプティカルブラック領域に対応する水平ラインの1ライン以上を残して垂直転送を停止し、順時次画面の読み出しを行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前画面の読み出しにおいて読み出しが行われず、次画面の読み出しにおいて読み出された水平ラインの電荷信号に基づいて前記CCDの暗電流の値を検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前画面の読み出しにおいて読み出しが行われず、次画面の読み出しにおいて読み出された水平ラインの電荷信号に基づいて前記CCDの温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置を搭載した電子内視鏡装置であって、前記温度が所定値よりも高いときにライトガイドに供給される光量を低減することを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項5】
請求項3に記載の撮像装置を搭載した電子内視鏡装置であって、前記温度が所定値よりも高いときに警告を行う警告手段を備えることを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項6】
CCDの1画面の読み出しにおいて、垂直オプティカルブラック領域に対応する水平ラインの1ライン以上を残して垂直転送を停止し、順時次画面の読み出しを行うことを特徴とする撮像素子駆動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−85191(P2013−85191A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225145(P2011−225145)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】