説明

撮像装置

【課題】広変倍域すべてにわたって高解像度で高画質の画像を得る。
【解決手段】同一方向を向いた単焦点の第1,第2撮像光学系LN1,LN2を有し、第2撮像光学系LN2の焦点距離が第1撮像光学系LN1の焦点距離よりも長く、第1撮像光学系LN1で得られた画像の切り出しによる電子ズームで広角端から中間焦点距離状態までのズーミングを行い、前記第2撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで中間焦点距離状態から望遠端までのズーミングを行うことにより、全体として広角端から望遠端までのズーミングを行う。第1,第2撮像光学系LN1,LN2のいずれもが、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、を有する4枚以上のレンズから成るとともに、最も像側のレンズが負レンズであり、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離が正であり、条件式:1.0<fFw/fFm<1.5を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関するものである。更に詳しくは、被写体の映像を撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサ,CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の固体撮像素子)で取り込んで、映像の拡大縮小を行うことの可能な電子ズーム機能を有する小型の撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD型イメージセンサやCMOS型イメージセンサ等の固体撮像素子を用いた撮像装置の高性能化・小型化に伴い、撮像装置を備えた携帯電話や携帯情報端末が普及しつつある。また、これらの撮像装置に搭載される撮像光学系には、更なる小型化・高性能化への要求が高まっている。さらに、従来の撮像装置は単焦点であったが、ズーム機能への要求も高まっている。しかしながら、光学ズーム機能を有する撮像光学系を用いると、光学系自体が非常に大きくなってしまうことに加えて、ズーム駆動のアクチュエーターが必要になるため、結果として撮像装置は非常に大きくなってしまう。したがって、携帯電話や携帯情報端末に搭載することは困難であった。
【0003】
そこで、全長の小さな単焦点の撮像光学系を用いて、電子ズーム機能(つまり、画像の切り出しによる擬似ズーム機能)を搭載することが考えられる。ところが、ズーム比の大きな電子ズームの場合、切り出す映像の画素数が望遠端で非常に小さくなってしまうという課題があった。この課題を克服するために、2つ又はそれ以上の異なる焦点距離を有する単焦点の撮像光学系を搭載し、電子ズーム機能を焦点距離ごとに切り替えることによって、画素数低下を防ぐということが特許文献1〜3等で提案されている。例えば特許文献1では、単焦点レンズとズームレンズを有し、焦点距離のギャップは電子ズームで行うデジタルカメラが提案されている。特許文献2や特許文献3では、2個又は3個の単焦点レンズを用いて電子ズームを行う撮像装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−530954号公報
【特許文献2】特開2005−99265号公報
【特許文献3】特開2007−306282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1〜3に記載されているように、複数の撮像光学系を用いて電子ズームを行えば、画素数の大きな高変倍の撮像装置を実現することは可能である。しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれにも薄型化・高画質化を達成するための具体的な撮像光学系の構成に関する記載は無い。そのコンセプトを示しているにすぎず、薄型の実現性の実証は不十分であった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、広変倍域すべてにわたって高解像度で高画質の画像を得ることのできる高性能で薄型・小型の撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明の撮像装置は、同一方向を向いた単焦点の第1,第2撮像光学系を有し、前記第2撮像光学系の焦点距離が前記第1撮像光学系の焦点距離よりも長く、前記第1撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで広角端から中間焦点距離状態までのズーミングを行い、前記第2撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで中間焦点距離状態から望遠端までのズーミングを行うことにより、全体として広角端から望遠端までのズーミングを行う撮像装置であって、前記第1,第2撮像光学系のいずれもが、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、を有する4枚以上のレンズから成るとともに、最も像側のレンズが負レンズであり、前記第1レンズと第2レンズの合成焦点距離が正であり、かつ、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする。
1.0<fFw/fFm<1.5 …(1)
ただし、
fFw:第1撮像光学系における第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、
fFm:第2撮像光学系における第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、
である。
【0008】
第2の発明の撮像装置は、上記第1の発明において、以下の条件式(2A)及び(2B)を満足することを特徴とする。
fFw/fw>1 …(2A)
fFm/fm<1 …(2B)
ただし、
fw:第1撮像光学系全体の焦点距離、
fm:第2撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【0009】
第3の発明の撮像装置は、上記第1又は第2の発明において、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする。
−0.6<fXw/fXm<0.5 …(3)
ただし、
fXw:第1撮像光学系において像側から2番目のレンズの焦点距離、
fXm:第2撮像光学系において像側から2番目のレンズの焦点距離、
である。
【0010】
第4の発明の撮像装置は、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、以下の条件式(4)を満足することを特徴とする。
94>2ωw>72 …(4)
ただし、
2ωw:第1撮像光学系の全画角[deg]、
である。
【0011】
第5の発明の撮像装置は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、の4枚構成から成り、前記第2撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、負パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、の4枚構成から成ることを特徴とする。
【0012】
第6の発明の撮像装置は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、正パワーの第4レンズと、負パワーの第5レンズと、の5枚構成から成り、前記第2撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、負パワーの第5レンズと、の5枚構成から成ることを特徴とする。
【0013】
第7の発明の撮像装置は、上記第1〜第6のいずれか1つの発明において、以下の条件式(5)を満足することを特徴とする。
0.6<FNOw/FNOm<1.3 …(5)
ただし、
FNOw:第1撮像光学系のFナンバー、
FNOm:第2撮像光学系のFナンバー、
である。
【0014】
第8の発明の撮像装置は、上記第1〜第7のいずれか1つの発明において、以下の条件式(6)を満足することを特徴とする。
0.7<TLm/fm<1.0 …(6)
ただし、
TLm:第2撮像光学系のレンズ全長(最も物体側の面から像面までの距離)、
fm:第2撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【0015】
第9の発明の撮像装置は、上記第1〜第8のいずれか1つの発明において、以下の条件式(7)を満足することを特徴とする。
1.0<TLw/fw<1.4 …(7)
ただし、
TLw:第1撮像光学系のレンズ全長(最も物体側の面から像面までの距離)、
fw:第1撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【0016】
第10の発明の撮像装置は、上記第1〜第9のいずれか1つの発明において、前記第1,第2撮像光学系で形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子を備え、その撮像素子で得られた信号を用いて前記電子ズームが行われ、以下の条件式(8)を満足することを特徴とする。
3<PX/ZR<6 …(8)
ただし、
PX:撮像素子の画素数(メガピクセル)、
ZR:広角端から望遠端までの全体の電子ズーム比(倍)、
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成を採用することにより、広変倍域すべてにわたって高解像度で高画質の画像を得ることのできる高性能で薄型・小型の撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態(実施例1)の第1撮像光学系の光学構成を示す断面図。
【図2】実施例1の第1撮像光学系の物体距離無限遠での縦収差図。
【図3】実施例1の第1撮像光学系の物体距離10cmでの縦収差図。
【図4】実施例1の第1撮像光学系の物体距離無限遠での横収差図。
【図5】実施例1の第1撮像光学系の物体距離10cmでの横収差図。
【図6】第1の実施の形態(実施例1)の第2撮像光学系の光学構成を示す断面図。
【図7】実施例1の第2撮像光学系の物体距離無限遠での縦収差図。
【図8】実施例1の第2撮像光学系の物体距離10cmでの縦収差図。
【図9】実施例1の第2撮像光学系の物体距離無限遠での横収差図。
【図10】実施例1の第2撮像光学系の物体距離10cmでの横収差図。
【図11】第2の実施の形態(実施例2)の第1撮像光学系の光学構成を示す断面図。
【図12】実施例2の第1撮像光学系の物体距離無限遠での縦収差図。
【図13】実施例2の第1撮像光学系の物体距離10cmでの縦収差図。
【図14】実施例2の第1撮像光学系の物体距離無限遠での横収差図。
【図15】実施例2の第1撮像光学系の物体距離10cmでの横収差図。
【図16】第2の実施の形態(実施例2)の第2撮像光学系の光学構成を示す断面図。
【図17】実施例2の第2撮像光学系の物体距離無限遠での縦収差図。
【図18】実施例2の第2撮像光学系の物体距離10cmでの縦収差図。
【図19】実施例2の第2撮像光学系の物体距離無限遠での横収差図。
【図20】実施例2の第2撮像光学系の物体距離10cmでの横収差図。
【図21】第1,第2撮像光学ユニットを搭載したデジタル機器の概略構成例を示す模式図。
【図22】第1,第2撮像光学系を搭載した第1,第2撮像光学ユニットの概略構成例を示す外観図。
【図23】第1,第2撮像光学ユニットを搭載したデジタル機器の概略構成例を示す外観図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る撮像装置等を説明する。本発明に係る撮像装置は、同一方向を向いた単焦点の第1,第2撮像光学系を有し、前記第2撮像光学系の焦点距離fmが前記第1撮像光学系の焦点距離fwよりも長く、前記第1撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで広角端から中間焦点距離状態までのズーミング(fw〜fm)を行い、前記第2撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで中間焦点距離状態から望遠端までのズーミング(fm〜ft)を行うことにより、全体として広角端から望遠端までのズーミング(fw〜ft)を行う撮像装置である。そして、前記第1,第2撮像光学系のいずれもが、物体側から順に、正パワー(パワー:焦点距離の逆数で定義される量)の第1レンズと、負パワーの第2レンズと、を有する4枚以上のレンズから成るとともに、最も像側のレンズが負レンズであり、前記第1レンズと第2レンズの合成焦点距離が正であり、かつ、以下の条件式(1)を満足することを特徴としている。なお、第1,第2撮像光学系間での切り替え点となる中間焦点距離状態では、第2撮像光学系で得られた画像を用いることが好ましいが、必要に応じて第1撮像光学系で得られた画像を用いてもよい。
1.0<fFw/fFm<1.5 …(1)
ただし、
fFw:第1撮像光学系における第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、
fFm:第2撮像光学系における第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、
である。
【0020】
光学ズーム機能を有する撮像光学系は、メカ機構等が大きくなるため、携帯機器に適していない。一方、電子ズームという考え方もあるが、1つの撮像光学系で電子ズームを行う場合、大きな変倍比を得る際に望遠端の画素数が小さすぎて良好な画像を得ることができない、という問題がある。したがって、大きな変倍比を得ることができ、かつ、良好な画像を得るために、また、ズーム駆動機構等の大きな部品が無く小型の携帯機器に組み込みやすい大きさを満足するために、2眼の電子ズーム機能を採用することが好ましい。
【0021】
良好な画像を得るためには、電子ズームを行っても十分な画素数が必要である。したがって、電子ズーム前の画素数は十分大きくなければならない。例えば、望ましい画素数は3百万画素(3メガピクセル)以上であり、電子ズームを行ってもその画素数を得るためには、10メガピクセル等の大きな画素数をもつ撮像素子(つまり大型のセンサー)を有する必要がある。したがって、大きな画素数でも良好な性能を有することが必要であり、その条件として少なくとも4枚のレンズが必要である。
【0022】
撮像装置を薄型のモジュールで構成するには、第1撮像光学系も第2撮像光学系も小型である必要がある。したがって、別々の光学系というより、両方の関係が重要となる。小型で高性能を達成するためには、どちらの光学系も、最も物体側のレンズが正レンズ、その像側に負レンズを配置し、第1レンズと第2レンズの合成焦点距離fFw,fFmは正、さらに最も像側に負レンズを配置することが好ましい。
【0023】
全体的には、小型に適したテレフォトタイプ(物体側が正パワーで像側が負パワー)である必要がある。その際には、前群を構成する第1レンズと第2レンズが正レンズと負レンズであることが、色収差やペッツバール和の補正という観点からも好ましい。また、最も像側が負レンズであることが、テレフォトタイプを構成するための条件となる。その際に、第1,第2レンズから成る前群の焦点距離の比を、前記条件式(1)を満たすようにすることが好ましい。
【0024】
条件式(1)の下限を上回ることは、第2撮像光学系の前群の焦点距離が第1撮像光学系の前群の焦点距離よりも短い(つまりパワーが強い)ことを意味する。つまり、第2撮像光学系は全系の焦点距離が相対的に長いので、全体としては正のパワーが弱くなるが、それに反して、全系の焦点距離の短い第1撮像光学系の前群よりもパワーを強くする条件を下限で規定している。この条件式(1)を満足することにより、第2撮像光学系のテレフォト傾向を強くすることができるため、装置としての全長を小さくする効果が得られる。逆に、条件式(1)の上限を上回ると、第2撮像光学系の前群を強くしすぎることで性能や誤差感度が悪化し、結果として良好な画質が得られなくなる。
【0025】
上記特徴的構成によると、広変倍域すべてにわたって高解像度で高画質の画像を得ることのできる高性能で薄型・小型の撮像装置(例えば、デジタルカメラ,携帯電話,携帯情報端末等のデジタル機器)を実現することが可能である。こういった効果をバランス良く得るとともに、更に高い光学性能,薄型・小型化等を達成するための条件等を以下に説明する。
【0026】
以下の条件式(2A)及び(2B)を満足することが望ましい。
fFw/fw>1 …(2A)
fFm/fm<1 …(2B)
ただし、
fw:第1撮像光学系全体の焦点距離、
fm:第2撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【0027】
前群の焦点距離と全系の焦点距離との比は、テレフォト性を示す重要なパラメータである。条件式(2A)及び(2B)を満たすということは、第1撮像光学系の前群のパワーは全体のパワーよりも小さいが、第2撮像光学系の前群のパワーは全体のパワーよりも大きいということである。条件式(2A)及び(2B)を満たすことで、広角端の性能を確保しつつ、中間焦点距離状態の全長を小さくするという条件を満足することができる。
【0028】
以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
−0.6<fXw/fXm<0.5 …(3)
ただし、
fXw:第1撮像光学系において像側から2番目のレンズの焦点距離、
fXm:第2撮像光学系において像側から2番目のレンズの焦点距離、
である。なお、像側から2番目のレンズは、最も像側のレンズの物体側にあるレンズであり、4枚構成では3枚目のレンズ、5枚構成では3枚目のレンズである。
【0029】
第2撮像光学系では、全系の焦点距離が長いにも関わらず、全長を小さくする必要がある。テレフォト性の観点では前述の条件式(1),(2A)及び(2B)を満たすことが有効であるが、後群のパワーを特定することも重要である。最も像側のレンズは像付近に位置するので、その焦点距離によるバック変動や全長への影響があまり大きくない。しかし、その物体側に位置するレンズの焦点距離は、全長と性能に対して重要な役割を果たすことになる。
【0030】
条件式(3)の上限は、第2撮像光学系の該レンズパワーが第1撮像光学系の該レンズパワーよりも小さい(又は負である)ということを示しており、その程度を表している。この条件式(3)を満足することで、第1撮像光学系の性能を満足しつつ、第2撮像光学系の全長を小型にすることができる。条件式(3)の下限を越えた場合、第2撮像光学系の性能の要求から後群に大きな負のパワーを有すると、全体のレンズ構成が大きく変化してしまい、高性能で薄型という条件から外れてしまうおそれがある。
【0031】
以下の条件式(3a)を満たすことが望ましい。
−0.6<fXw/fXm<0 …(3a)
この条件式(3a)は、前記条件式(3)が規定している条件範囲のなかでも、前記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定しており、符号反転していることに特徴がある。つまり、第1撮像光学系が正レンズであり、第2撮像光学系が負レンズである。テレフォト性が顕著に出ているが、この数値範囲であれば、更なる小型化と高性能化を達成することができる。したがって、好ましくは条件式(3a)を満たすことにより、上記効果をより一層大きくすることができる。
【0032】
以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
94>2ωw>72 …(4)
ただし、
2ωw:第1撮像光学系の全画角[deg]、
である。
【0033】
条件式(4)の上限を越えると、ズームレンズとしての広角度合いが強くなりすぎてしまい、条件式(4)の下限を越えると、全体的な焦点距離が望遠側になって大型化を招くおそれがある。また、広角端での画角が狭くなると、中間ポジションでの焦点距離及びレンズ全長の増大を招くおそれがある。
【0034】
以下の条件式(4a)を満足することが更に望ましい。
90>2ωw>75 …(4a)
この条件式(4a)は、前記条件式(4)が規定している条件範囲のなかでも、前記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。したがって、好ましくは条件式(4a)を満たすことにより、上記効果をより一層大きくすることができる。
【0035】
前記第1撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、の4枚構成から成り、前記第2撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、負パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、の4枚構成から成ることが望ましい。また、前記第1撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、正パワーの第4レンズと、負パワーの第5レンズと、の5枚構成から成り、前記第2撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、負パワーの第5レンズと、の5枚構成から成ることが望ましい。
【0036】
上記のように、第1撮像光学系を正負正負の4枚構成とし、第2撮像光学系を正負負負の4枚構成としたり、第1撮像光学系を正負正正負の5枚構成とし、第2撮像光学系を正負正負負の5枚構成としたりすれば、第1撮像光学系では像面湾曲,色収差等を補正するのに有利な構成となり、第2撮像光学系ではテレフォト性を強くして全長の短縮に有利な構成となる。
【0037】
以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
0.6<FNOw/FNOm<1.3 …(5)
ただし、
FNOw:第1撮像光学系のFナンバー、
FNOm:第2撮像光学系のFナンバー、
である。
【0038】
切り替えの時にFナンバーが大きく異なると、ボケの印象が大きく変わることになり、使用者にとっては不自然になるので、Fナンバーは条件式(5)を満たすように第1,第2撮像光学系で近い方が好ましい。第1撮像光学系よりも第2撮像光学系の方を暗くする方が全体の小型化を達成する上で有利になる。
【0039】
以下の条件式(5a)を満足することが更に望ましい。
0.7<FNOw/FNOm<1.1 …(5a)
この条件式(5a)は、前記条件式(5)が規定している条件範囲のなかでも、前記観点等に基づいた更に好ましい条件範囲を規定している。したがって、好ましくは条件式(5a)を満たすことにより、上記効果をより一層大きくすることができる。
【0040】
以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
0.7<TLm/fm<1.0 …(6)
ただし、
TLm:第2撮像光学系のレンズ全長(最も物体側の面(第1面)から像面までの距離)、
fm:第2撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【0041】
第2撮像光学系を薄型にするために望遠比を小さくする必要があるが、性能との良好なバランスをとる上で、条件式(6)を満たすことが好ましい。条件式(6)の下限を越えると、パワーが強くなって収差劣化を招くおそれがある。また、第1,第2撮像光学系の性能差が大きくなって、切り替え時の映像劣化が生じるおそれがある。
【0042】
以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
1.0<TLw/fw<1.4 …(7)
ただし、
TLw:第1撮像光学系のレンズ全長(最も物体側の面から像面までの距離)、
fw:第1撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【0043】
第1撮像光学系は薄型にできるが、あまり薄すぎると性能が悪くなる。性能をとりつつ第2撮像光学系の厚みとのバランスを考えた場合、条件式(7)を満たすことが好ましい。
【0044】
前記第1,第2撮像光学系で形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子を備え、その撮像素子で得られた信号を用いて前記電子ズームが行われ、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
3<PX/ZR<6 …(8)
ただし、
PX:撮像素子の画素数(メガピクセル)、
ZR:広角端から望遠端までの全体の電子ズーム比(倍)、
である。
【0045】
条件式(8)は、全体のズーム比と画素数との好適なバランスを規定している。一般的に、300万画素〜400万画素程度の画質が求められている。電子ズームで良好な画質を得るには、条件式(8)を満足することが望ましい。条件式(8)の上限を越えると、センサー画素数に対して十分な変倍比を確保することが困難になり、広い変倍範囲が得られなくなる。条件式(8)の下限を越えると、最低画素が小さくなりすぎるため十分な高画質を得ることができなくなる。なおここでは、第1撮像光学系の電子ズームと第2撮像光学系の電子ズームとでズーム比は同じであり、共通の1つの撮像素子又は同じ画素数の2つの撮像素子を用いることを前提としている。
【0046】
本発明に係る第1,第2撮像光学系は、画像入力機能付きデジタル機器(例えば、カメラ付き携帯電話,デジタルカメラ等の撮像装置)に適しており、これを撮像素子等と組み合わせることにより、被写体の映像を光学的に取り込んで電気的な信号として出力する撮像光学ユニットを構成することができる。撮像光学ユニットは、被写体の静止画撮影や動画撮影に用いられるカメラの主たる構成要素を成す光学装置であり、例えば、物体(すなわち被写体)側から順に、物体の光学像を形成する第1,第2撮像光学系と、その第1,第2撮像光学系により形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子と、を備えることにより構成される。そして、撮像素子の受光面(すなわち撮像面)上に被写体の光学像が形成されるように、前述した特徴的構成を有する第1,第2撮像光学系が配置されることにより、薄型・小型・低コストで高変倍・高性能の撮像光学ユニットやそれを備えたデジタル機器を実現することができる。
【0047】
画像入力機能付きデジタル機器の例としては、デジタルカメラ,ビデオカメラ,監視カメラ,車載カメラ,テレビ電話用カメラ等のカメラが挙げられ、また、パーソナルコンピュータ,携帯端末(例えば、携帯電話,モバイルコンピュータ等の小型で携帯可能な情報機器端末),これらの周辺機器(スキャナー,プリンター等),その他のデジタル機器等に内蔵又は外付けされるカメラが挙げられる。これらの例から分かるように、撮像光学ユニットを用いることによりカメラを構成することができるだけでなく、各種機器に撮像光学ユニットを搭載することによりカメラ機能を付加することが可能である。例えば、カメラ付き携帯電話等の画像入力機能付きデジタル機器を構成することが可能である。
【0048】
図21に、画像入力機能付きデジタル機器の一例として、デジタル機器DUの概略構成例を模式的断面で示し、図22に、第1,第2撮像光学系LN1,LN2を搭載した第1,第2撮像光学ユニットLU1,LU2の概略構成例の外観を示す。デジタル機器DUに搭載されている撮像光学ユニットLU1,LU2は、図21に示すように、物体(すなわち被写体)側から順に、物体の光学像(像面)IM1,IM2を形成する単焦点の第1,第2撮像光学系LN1,LN2(AX1,AX2:光軸)と、平行平板PT1,PT2(撮像素子SR1,SR2のカバーガラス;必要に応じて配置される光学的ローパスフィルタ,赤外カットフィルタ等の光学フィルタ等に相当する。)と、第1,第2撮像光学系LN1,LN2により長方形状の受光面(撮像面)SS1,SS2上に形成された光学像IM1,IM2を電気的な信号に変換する第1,第2撮像素子SR1,SR2と、を備えている。この撮像光学ユニットLU1,LU2で画像入力機能付きデジタル機器DUを構成する場合、通常そのボディ内部に撮像光学ユニットLU1,LU2を配置することになるが、カメラ機能を実現する際には必要に応じた形態を採用することが可能である。例えば、撮像光学ユニットLU1,LU2をデジタル機器DUの本体に対して着脱自在又は回動自在に構成することが可能である。
【0049】
第1,第2撮像光学系LN1,LN2は、前述したように同一方向を向いた単焦点レンズであり、撮像素子SR1,SR2の撮像面SS1,SS2上に光学像IM1,IM2を形成する構成になっている。そして、第2撮像光学系LN2の焦点距離fmが第1撮像光学系LN1の焦点距離fwよりも長く、第1撮像光学系LN1で得られた画像(光学像IM1)の切り出しによる電子ズームで広角端から中間焦点距離状態までのズーミング(fw以上fm未満)を行い、第2撮像光学系LN2で得られた画像(光学像IM2)の切り出しによる電子ズームで中間焦点距離状態から望遠端までのズーミング(fm以上ft以下)を行うことにより、全体として広角端から望遠端までのズーミング(fw〜ft)を行う構成になっている。なお、必要に応じて少なくとも一方の撮像光学系に光学ズーム機能を持たせてもよい。
【0050】
図22に示すように、第1撮像光学系LN1と第2撮像光学系LN2とは、隣接するように配置されている。このように配置することにより、パララックスをできるだけ小さくすることができる。第1,第2撮像光学系LN1,LN2を隣接配置した場合、フォーカス駆動素子は共通であることが好ましい。その際、フォーカスの移動量が全体繰り出しの場合では異なるので、第1撮像光学系LN1と第2撮像光学系LN2とでフォーカス移動量が揃うように、例えば、第2撮像光学系LN2では一部のレンズ又はレンズ群の駆動によるフォーカスを行う構成にすることが更に好ましい。
【0051】
第1,第2撮像光学系LN1,LN2は同一方向を向いているため、光軸AX1,AX2は互いに平行になっているが、第1,第2撮像光学系LN1,LN2のいずれか一方を若干傾けることにより撮影距離に応じて発生する、第1,第2撮像光学系LN1,LN2間でのパララックスを補正してもよい。したがって、第1,第2撮像光学系LN1,LN2が同一方向を向いていることは、パララックス補正を考慮した上での方向性を意味しているので、厳密な意味で光軸AX1,AX2が互いに平行である必要は無い。また、光学的手ぶれ補正機能で第1,第2撮像光学系LN1,LN2のいずれか一方の、レンズモジュールの全体の傾き又は、少なくとも一部のレンズ移動によりパララックス補正を行うようにしてもよい。手ぶれ補正とパララックス補正とでアクチュエーターを共通化することができるので、撮像装置の薄型化・小型化を効果的に達成することが可能となる。
【0052】
図23に、第1,第2撮像光学ユニットLU1,LU2を搭載したデジタル機器DUの概略構成例の外観を示す。このデジタル機器DUは、画面横方向に視差を発生させて立体視を行う方式の画像入出力機能付き携帯機器(例えば、デジタルカメラ,携帯電話,携帯型情報機器端末等)である。デジタル機器DUの背面側(A)には裸眼立体視可能な表示部5が設けられており、正面側(B)には第1撮像光学系LN1と第2撮像光学系LN2とが画面横方向に所定の間隔をあけて離れて位置するように第1,第2撮像光学ユニットLU1,LU2が配置されている(なお、デジタル機器DUの上面側には操作部4が設けられている。)。このように第1,第2撮像光学系LN1,LN2を離すことにより視差を発生させることができるため、第2撮像光学系LN2の焦点距離fmにおいて、第1撮像光学系LN1で得られる画像と第2撮像光学系LN2で得られる画像を用いて立体映像の表示を行うことができる。
【0053】
撮像素子SR1,SR2としては、例えば複数の画素を有するCCD型イメージセンサ,CMOS型イメージセンサ等の固体撮像素子が用いられる。第1,第2撮像光学系LN1,LN2は、撮像素子SR1,SR2の光電変換部である撮像面SS1,SS2上に被写体の光学像IM1,IM2が形成されるように設けられているので、第1,第2撮像光学系LN1,LN2によって形成された光学像IM1,IM2は、撮像素子SR1,SR2によって電気的な信号に変換される。なお、ここでは2つの撮像素子SR1,SR2を用いているが、第1,第2撮像光学系LN1,LN2に対して1つの撮像素子を共通に用いてもよい。
【0054】
デジタル機器DU(図21)は、第1,第2撮像光学ユニットLU1,LU2の他に、信号処理部1,制御部2,メモリ3,操作部4,表示部5等を備えている。撮像素子SR1,SR2で生成した信号は、信号処理部1で所定のデジタル画像処理や画像圧縮処理等が必要に応じて施され、デジタル映像信号としてメモリ3(半導体メモリ,光ディスク等)に記録されたり、場合によってはケーブルを介したり赤外線信号等に変換されたりして他の機器に伝送される(例えば携帯電話の通信機能)。制御部2はマイクロコンピュータから成っており、電子ズーム機能,撮影機能(静止画撮影機能,動画撮影機能等),画像再生機能等の機能の制御;フォーカシング,手ぶれ補正等のためのレンズ移動機構の制御等を集中的に行う。例えば、被写体の静止画撮影,動画撮影のうちの少なくとも一方を行うように、制御部2により第1,第2撮像光学ユニットLU1,LU2に対する制御が行われる。表示部5は液晶モニター等のディスプレイを含む部分であり、撮像素子SR1,SR2によって変換された画像信号あるいはメモリ3に記録されている画像情報を用いて画像表示を行う。操作部4は、操作ボタン(例えばレリーズボタン),操作ダイヤル(例えば撮影モードダイヤル)等の操作部材を含む部分であり、操作者が操作入力した情報を制御部2に伝達する。
【0055】
次に、第1,第2の実施の形態を挙げて、第1,第2撮像光学系LN1,LN2の具体的な光学構成を説明する。図1は、第1の実施の形態を構成する第1撮像光学系LN1(EX1−w)のレンズ構成,光路等を示す光学断面図であり、図6は、第1の実施の形態を構成する第2撮像光学系LN2(EX1−m)のレンズ構成,光路等を示す光学断面図である。図11は、第2の実施の形態を構成する第1撮像光学系LN1(EX2−w)のレンズ構成,光路等を示す光学断面図であり、図16は、第2の実施の形態を構成する第2撮像光学系LN2(EX2−m)のレンズ構成,光路等を示す光学断面図である。
【0056】
第1の実施の形態では、第1撮像光学系LN1(図1)は正負正負の4枚構成になっており、第2撮像光学系LN2(図6)は正負負負の4枚構成になっている。また第2の実施の形態では、第1撮像光学系LN1(図11)は正負正正負の5枚構成になっており、第2撮像光学系LN2(図16)は正負正負負の5枚構成になっている。なお、撮像面SS1,SS2と隣り合うように第1,第2撮像光学系LN1,LN2の像側に配置されている平行平板PTは、光学的ローパスフィルタ,IRカットフィルタ,固体撮像素子のシールガラス等を想定したものである。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施した撮像装置の光学構成等を、実施例のコンストラクションデータ等を挙げて更に具体的に説明する。ここで挙げる実施例1,2(EX1,2)は、前述した第1,第2の実施の形態にそれぞれ対応する数値実施例であり、第1,第2の実施の形態を表す光学構成図(図1,図6;図11,図16)は、対応する実施例1,2の第1,第2撮像光学系LN1,LN2のレンズ構成をそれぞれ示している。
【0058】
各実施例のコンストラクションデータでは、面データとして、左側の欄から順に、面番号,曲率半径r(mm),軸上面間隔d(mm),d線(波長587.56nm)に関する屈折率nd,d線に関するアッベ数vdを示す。面番号に*が付された面は非球面であり、その面形状は面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(AS)で定義される。非球面データとして、非球面係数等を示す。なお、各実施例の非球面データにおいて表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
z=(c・h2)/[1+√{1−(1+K)・c2・h2}]+Σ(Aj・hj) …(AS)
ただし、
h:z軸(光軸AX1,AX2)に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2)、
z:高さhの位置での光軸AX1,AX2方向のサグ量(面頂点基準)、
c:面頂点での曲率(曲率半径rの逆数)、
K:円錐定数、
Aj:j次の非球面係数、
である。
【0059】
表1に、各種データとして、全系の焦点距離(fw又はfm,単位:mm),Fナンバー(FNOw又はFNOm),物体距離無限遠時のレンズ全長(TLw又はTLm,単位:mm),撮像素子SR1,SR2の受光面SS1,SS2の対角長2Y’(Y’:像面IM1,IM2における最大像高),全画角(2ωw又は2ωm,°),第iレンズLi(i=1,2,3,…)の焦点距離(fiw又はfim,単位:mm),第1,第2レンズL1,L2の合成焦点距離(fFw又はfFm,単位:mm),像側から2番目のレンズLXの焦点距離(fXw又はfXm,単位:mm),撮像素子SR1,SR2の画素数(PX,メガピクセル),電子ズーム時の切り出しの最小画素数(メガピクセル),電子ズーム時の切り出しの最大焦点距離(mm),電子ズーム比(ZR),及び135換算での焦点距離(mm)を示す。なお、レンズ全長TLw又はTLmは最前面(面番号:1)から像面IM1,IM2までの距離である。また、表2に条件式対応値を各実施例について示す。
【0060】
図2,図3は、実施例1(EX1)の第1撮像光学系LN1の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の縦収差図であり、図7,図8は、実施例1(EX1)の第2撮像光学系LN2の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の縦収差図である。図12,図13は、実施例2(EX2)の第1撮像光学系LN1の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の縦収差図であり、図17,図18は、実施例2(EX2)の第2撮像光学系LN2の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の縦収差図である。なお、有限物体距離時(物体距離:10cm)の性能評価では、フォーカス方式として全体繰り出しを想定している。
【0061】
図2,図3;図7,図8;図12,図13;図17,図18のそれぞれにおいて、(A)は球面収差図、(B)は非点収差図、(C)は歪曲収差図である。球面収差図は、実線で示すd線(波長587.56nm)に対する球面収差量、一点鎖線で示すC線(波長656.28nm)に対する球面収差量、破線で示すg線(波長435.84nm)に対する球面収差量を、それぞれ近軸像面からの光軸AX1,AX2方向のズレ量(単位:mm)で表しており、縦軸は瞳への入射高さをその最大高さで規格化した値(すなわち相対瞳高さ)を表している。非点収差図において、破線Tはd線に対するタンジェンシャル像面、実線Sはd線に対するサジタル像面を、近軸像面からの光軸AX1,AX2方向のズレ量(単位:mm)で表しており、縦軸は像高(IMG HT,単位:mm)を表している。歪曲収差図において、横軸はd線に対する歪曲(単位:%)を表しており、縦軸は像高(IMG HT,単位:mm)を表している。なお、像高IMG HTの最大値は、像面IM1,IM2における最大像高Y’(撮像素子SR1,SR2の受光面SS1,SS2の対角長の半分)に相当する。
【0062】
図4,図5は、実施例1(EX1)の第1撮像光学系LN1の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の横収差図であり、図9,図10は、実施例1(EX1)の第2撮像光学系LN2の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の横収差図である。図14,図15は、実施例2(EX2)の第1撮像光学系LN1の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の横収差図であり、図19,図20は、実施例2(EX2)の第2撮像光学系LN2の無限遠物体距離時(物体距離:∞)と有限物体距離時(物体距離:10cm)の横収差図である。
【0063】
図4,図5;図9,図10;図14,図15;図19,図20のそれぞれにおいて、(A)〜(E)はタンジェンシャル光束での横収差図であり、(F)〜(J)はサジタル光束での横収差図である。各横収差図は、RELATIVE FIELD HEIGHTで表されている像高比(半画角ω°)での横収差(mm)を、実線で示すd線(波長587.56nm)、一点鎖線で示すC線(波長656.28nm)、破線で示すg線(波長435.84nm)のそれぞれについて示している。なお像高比は、像高を最大像高Y’で規格化した相対的な像高である。
【0064】
実施例1の第1撮像光学系LN1(図1,EX1−w)は、物体側から順に、開口絞りSTと、正の第1レンズL1と、負の第2レンズL2と、正の第3レンズL3と、負の第4レンズL4と、から構成されており、レンズ面は全て非球面である。近軸の面形状で各レンズを見た場合、第1レンズL1は物体側に凸の正メニスカスレンズであり、第2レンズL2は両凹の負レンズであり、第3レンズL3は像側に凸の正メニスカスレンズであり、第4レンズL4は両凹の負レンズである。レンズはすべてプラスチックレンズであるが、ガラスレンズを用いてもよい。また、フォーカスは全体繰り出しを想定している。
【0065】
実施例1の第2撮像光学系LN2(図6,EX1−m)は、物体側から順に、開口絞りSTと、正の第1レンズL1と、負の第2レンズL2と、負の第3レンズL3と、負の第4レンズL4と、から構成されており、レンズ面は全て非球面である。近軸の面形状で各レンズを見た場合、第1レンズL1は物体側に凸の正メニスカスレンズであり、第2レンズL2は両凹の負レンズであり、第3レンズL3は物体側に凹の負メニスカスレンズであり、第4レンズL4は両凹の負レンズである。レンズはすべてプラスチックレンズであるが、ガラスレンズを用いてもよい。また、フォーカスは全体繰り出しを想定している。
【0066】
実施例2の第1撮像光学系LN1(図11,EX2−w)は、物体側から順に、開口絞りSTと、正の第1レンズL1と、負の第2レンズL2と、正の第3レンズL3と、正の第4レンズL4と、負の第5レンズL5と、から構成されており、レンズ面は全て非球面である。近軸の面形状で各レンズを見た場合、第1レンズL1は両凸の正レンズであり、第2レンズL2は像側に凹の負メニスカスレンズであり、第3レンズL3は物体側に凸の正メニスカスレンズであり、第4レンズL4は像側に凸の正メニスカスレンズであり、第5レンズL5は両凹の負レンズである。レンズはすべてプラスチックレンズであるが、ガラスレンズを用いてもよい。また、フォーカスは全体繰り出しを想定している。
【0067】
実施例2の第1撮像光学系LN2(図16,EX2−m)は、物体側から順に、開口絞りSTと、正の第1レンズL1と、負の第2レンズL2と、正の第3レンズL3と、負の第4レンズL4と、負の第5レンズL5と、から構成されており、レンズ面は全て非球面である。近軸の面形状で各レンズを見た場合、第1レンズL1は物体側に凸の正メニスカスレンズであり、第2レンズL2は像側に凹の負メニスカスレンズであり、第3レンズL3は物体側に凸の正メニスカスレンズであり、第4レンズL4は物体側に凹の負メニスカスレンズであり、第5レンズL5は両凹の負レンズである。レンズはすべてプラスチックレンズであるが、ガラスレンズを用いてもよい。また、フォーカスは全体繰り出しを想定している。
【0068】
実施例1の第1撮像光学系LN1
単位:mm
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞ ∞
1(絞り) ∞ 0.000
2* 1.135 0.455 1.54470 56.15
3* 4.929 0.106
4* -13.457 0.300 1.63469 23.87
5* 8.084 0.242
6* -21893.628 0.397 1.54470 56.15
7* -1.708 0.725
8* -2.118 0.400 1.54470 56.15
9* 1.712 0.106
10 ∞ 0.110 1.51633 64.14
11 ∞ 0.200
像面 ∞
【0069】
非球面データ
面番号 K A4 A6 A8 A10 A12 A14
2 1.132 -1.01E-01 -4.36E-01 1.01E+00 -3.63E+00 0.00E+00 0.00E+00
3 -50 -3.04E-01 -3.41E-01 -5.62E-01 -1.59E+00 0.00E+00 0.00E+00
4 46.321 -4.39E-01 -3.45E-01 1.49E+00 -2.08E+00 -2.01E-01 0.00E+00
5 -50 -1.06E-01 1.38E-01 3.63E-01 1.34E+00 -1.19E+00 0.00E+00
6 50 7.51E-02 -1.73E-01 4.42E-02 1.16E-01 -1.70E-01 0.00E+00
7 -12.577 -1.36E-01 3.68E-01 -3.45E-01 2.00E-01 -6.20E-02 0.00E+00
8 0 -3.14E-01 1.22E-01 1.41E-02 2.68E-03 -9.50E-04 -1.27E-03
9 -27.755 -9.32E-02 3.04E-02 -2.11E-02 4.91E-03 4.96E-04 -2.50E-04
【0070】
実施例1の第2撮像光学系LN2
単位:mm
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞ ∞
1(絞り) ∞ 0.000
2* 1.001 0.548 1.54470 56.15
3* 6.361 0.050
4* -10.735 0.300 1.63469 23.87
5* 5.243 0.457
6* -1.751 0.300 1.54470 56.15
7* -2.426 1.021
8* -3.987 0.400 1.54470 56.15
9* 3.008 0.262
10 ∞ 0.110 1.51633 64.14
11 ∞ 0.200
像面 ∞
【0071】
非球面データ
面番号 K A4 A6 A8 A10 A12 A14
2 0.222 -7.13E-03 -2.33E-01 5.01E-01 -9.32E-01 0.00E+00 0.00E+00
3 -1.95E+01 -1.81E-01 -2.57E-01 2.18E-01 -6.66E-02 0.00E+00 0.00E+00
4 -8.218 -5.94E-02 -2.10E-01 1.26E+00 -1.65E+00 7.66E-01 0.00E+00
5 18.999 1.58E-01 6.91E-01 -1.08E+00 3.38E+00 8.27E-01 0.00E+00
6 -50 -7.63E-01 1.63E+00 -2.67E+00 2.02E+00 -3.48E-01 0.00E+00
7 -50 -2.13E-01 4.09E-01 -2.19E-01 7.14E-02 -4.63E-02 0.00E+00
8 0 -2.33E-01 1.27E-01 -1.65E-02 -2.95E-03 1.02E-03 -8.08E-05
9 -50 -1.56E-01 2.81E-02 5.81E-03 -2.63E-03 -2.09E-04 1.08E-04
【0072】
実施例2の第1撮像光学系LN1
単位:mm
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞ ∞
1(絞り) ∞ 0.100
2* 1.583 0.535 1.54470 56.15
3* -7.954 0.050
4* 86.727 0.300 1.63469 23.87
5* 2.182 0.334
6* 7.448 0.300 1.63469 23.87
7* 57.053 0.539
8* -5.230 0.556 1.54470 56.15
9* -1.093 0.280
10* -6.245 0.400 1.53048 55.72
11* 1.182 0.516
12 ∞ 0.300 1.51633 64.14
13 ∞ 0.250
像面 ∞
【0073】
非球面データ
面番号 K A4 A6 A8 A10 A12 A14
2 -0.044 -3.30E-04 -6.93E-03 -1.27E-02 -1.13E-02 0.00E+00 0.00E+00
3 41.478 2.10E-02 4.82E-02 -1.22E-01 3.74E-02 0.00E+00 0.00E+00
4 -50 -6.95E-02 1.87E-01 -2.49E-01 1.63E-01 -3.57E-02 0.00E+00
5 -9.645 9.23E-03 1.01E-01 -9.27E-02 5.26E-02 0.00E+00 0.00E+00
6 -10 -1.14E-01 9.59E-03 5.60E-02 1.32E-02 -3.15E-02 2.39E-03
7 -10 -9.96E-02 3.49E-02 1.17E-02 3.44E-02 -1.00E-02 -1.64E-03
8 6.135 -1.59E-02 2.85E-02 -3.90E-03 -2.50E-04 4.73E-05 0.00E+00
9 -4.282 -3.60E-02 5.02E-02 -1.18E-02 4.81E-04 9.17E-05 0.00E+00
10 6.752 -6.15E-02 7.9236E-03 1.6618E-03 -1.87E-04 9.66E-07 3.77E-06
11 -8.272 -6.71E-02 1.5803E-02 -3.38E-03 4.65E-04 -2.76E-05 -1.31E-06
【0074】
実施例2の第2撮像光学系LN2
単位:mm
面データ
面番号 r d nd vd
物面 ∞ ∞
1(絞り) ∞ 0.050
2* 1.364 0.530 1.54470 56.15
3* 88.751 0.071
4* 21.096 0.300 1.63469 23.87
5* 2.261 0.181
6* 4.669 0.500 1.63469 23.87
7* 6.586 1.592
8* -2.380 0.800 1.54470 56.15
9* -9.846 0.050
10* -5.628 0.300 1.53048 55.72
11* 15.370 0.111
12 ∞ 0.300 1.51633 64.14
13 ∞ 0.121
像面 ∞
【0075】
非球面データ
面番号 K A4 A6 A8 A10 A12 A14
2 0.153 1.38E-02 -7.55E-03 2.15E-02 -1.49E-02 0.00E+00 0.00E+00
3 -50 3.82E-02 5.46E-02 -1.31E-01 4.19E-02 0.00E+00 0.00E+00
4 40.974 -8.78E-02 1.97E-01 -2.34E-01 1.50E-01 -5.70E-02 0.00E+00
5 -20.224 5.40E-02 1.33E-01 1.46E-02 1.40E-01 0.00E+00 0.00E+00
6 -10 2.21E-02 1.16E-01 3.89E-02 -1.37E-02 -3.27E-02 8.28E-03
7 -10 1.05E-01 9.54E-02 -4.58E-02 4.26E-02 5.53E-03 -1.91E-02
8 -0.226 -4.11E-02 -5.66E-02 5.73E-02 -2.77E-02 1.12E-03 0.00E+00
9 30.588 -1.09E-01 8.44E-03 -6.32E-03 3.35E-03 -8.67E-04 0.00E+00
10 6.752 -1.54E-01 3.00E-02 -8.96E-04 -4.30E-04 1.43E-04 -3.32E-06
11 -8.272 -1.29E-01 3.68E-02 -4.67E-03 2.52E-04 -3.73E-05 3.70E-06
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【符号の説明】
【0078】
DU デジタル機器(撮像装置)
LU1,LU2 第1,第2撮像光学ユニット
LN1,LN2 第1,第2撮像光学系
L1〜L5 第1〜第5レンズ
ST 開口絞り(絞り)
SR1,SR2 撮像素子
SS1,SS2 受光面(撮像面)
IM1,IM2 像面(光学像)
AX1,AX2 光軸
1 信号処理部
2 制御部
3 メモリ
4 操作部
5 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向を向いた単焦点の第1,第2撮像光学系を有し、前記第2撮像光学系の焦点距離が前記第1撮像光学系の焦点距離よりも長く、前記第1撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで広角端から中間焦点距離状態までのズーミングを行い、前記第2撮像光学系で得られた画像の切り出しによる電子ズームで中間焦点距離状態から望遠端までのズーミングを行うことにより、全体として広角端から望遠端までのズーミングを行う撮像装置であって、
前記第1,第2撮像光学系のいずれもが、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、を有する4枚以上のレンズから成るとともに、最も像側のレンズが負レンズであり、
前記第1レンズと第2レンズの合成焦点距離が正であり、かつ、以下の条件式(1)を満足することを特徴とする撮像装置;
1.0<fFw/fFm<1.5 …(1)
ただし、
fFw:第1撮像光学系における第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、
fFm:第2撮像光学系における第1レンズと第2レンズの合成焦点距離、
である。
【請求項2】
以下の条件式(2A)及び(2B)を満足することを特徴とする請求項1記載の撮像装置;
fFw/fw>1 …(2A)
fFm/fm<1 …(2B)
ただし、
fw:第1撮像光学系全体の焦点距離、
fm:第2撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【請求項3】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置;
−0.6<fXw/fXm<0.5 …(3)
ただし、
fXw:第1撮像光学系において像側から2番目のレンズの焦点距離、
fXm:第2撮像光学系において像側から2番目のレンズの焦点距離、
である。
【請求項4】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像装置;
94>2ωw>72 …(4)
ただし、
2ωw:第1撮像光学系の全画角[deg]、
である。
【請求項5】
前記第1撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、の4枚構成から成り、前記第2撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、負パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、の4枚構成から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、正パワーの第4レンズと、負パワーの第5レンズと、の5枚構成から成り、前記第2撮像光学系が、物体側から順に、正パワーの第1レンズと、負パワーの第2レンズと、正パワーの第3レンズと、負パワーの第4レンズと、負パワーの第5レンズと、の5枚構成から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮像装置;
0.6<FNOw/FNOm<1.3 …(5)
ただし、
FNOw:第1撮像光学系のFナンバー、
FNOm:第2撮像光学系のFナンバー、
である。
【請求項8】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の撮像装置;
0.7<TLm/fm<1.0 …(6)
ただし、
TLm:第2撮像光学系のレンズ全長(最も物体側の面から像面までの距離)、
fm:第2撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【請求項9】
以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の撮像装置;
1.0<TLw/fw<1.4 …(7)
ただし、
TLw:第1撮像光学系のレンズ全長(最も物体側の面から像面までの距離)、
fw:第1撮像光学系全体の焦点距離、
である。
【請求項10】
前記第1,第2撮像光学系で形成された光学像を電気的な信号に変換する撮像素子を備え、その撮像素子で得られた信号を用いて前記電子ズームが行われ、以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の撮像装置;
3<PX/ZR<6 …(8)
ただし、
PX:撮像素子の画素数(メガピクセル)、
ZR:広角端から望遠端までの全体の電子ズーム比(倍)、
である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−106289(P2013−106289A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250322(P2011−250322)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】