説明

撮影装置

【課題】色や明るさのバランスが良好なストロボ撮影を行うことができる撮影装置を提供する。
【解決手段】デジタルカメラには、顔抽出部74,色温度検出部76及びLEDを光源とするストロボ装置86が設けられている。シャッタボタンを半押し操作すると、顔抽出部74は、メモリ60に格納されたスルー画の画像データを読み出し、この画像から被写体の顔の抽出処理を行う。CPU64は、顔領域と各分割領域の輝度値からシーン判別を行い、例えば逆光シーンに対応する露光パターンに従って顔近辺領域を設定する。シャッタボタン18を全押し操作すると、CPU64はLED制御回路87にストロボ発光のコマンドを送り、顔近辺領域に対応するLEDのみが発光され、通常の撮影では黒く潰れてしまう被写体の顔及びそのやや下方部がストロボ光で適正に照明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストロボ装置のストロボ光源として発光ダイオードを用いたデジタルカメラやカメラ付き携帯電話等の撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮影装置としては、フイルムカメラ(銀塩フイルムを用いる旧来のカメラ)やデジタルカメラやカメラ付き携帯電話等が周知である。これらの撮影装置の多くは、輝度が低い撮影条件下でも被写体を照明して綺麗に撮影できるようにストロボ装置を備えている。
【0003】
従来のストロボ装置はストロボ光源としてキセノン(Xe)管を用いてきたが、最近では、ノイズが少なく小型化が容易、かつローコストであるところから、発光ダイオード(以下LEDという)を用いたものが提案されている(例えば特許文献1,2)。
【0004】
特許文献1には、ストロボ光源としてR,G,BのLEDを用い、被写界の色温度に応じてR,G,Bの各LEDの発光量の比を制御するストロボ装置及びこれを用いたデジタルカメラが開示されている。また、特許文献2には、照射角の比較的狭い白色LEDを複数個用い、分割測光による測光領域毎の測光結果と基準輝度情報との比較による判定結果に基づいて、前記LEDを選択的に発光させることにより、撮影範囲全体にわたってバランスのよい明るさで撮影できるカメラが開示されている。
【特許文献1】特開2002−116481号公報
【特許文献2】特開2002−148686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストロボ撮影においては種々のトラブルが知られている。例えば、薄暗い室内等でストロボ撮影を行うと、ストロボ光が眩しくて被写体が目をつぶってしまう。また、中心に明るいものがあると、オートストロボの機能により、ストロボ光の発光時間が極端に短くなって、肝心な被写体の顔の部分が暗く写る。また、タングステンライトによる照明等で演出されたシーンでストロボ光を当てて撮影すると、そのようなシーンの雰囲気が壊れてしまう。
【0006】
本発明は、被写体にとって眩し過ぎず色や明るさのバランスが良好なストロボ撮影を行うことができる撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の撮影装置は、被写体を撮像して画像を生成する撮像部と、前記画像から被写体の顔の位置と大きさを検出する顔検出部と、ストロボ光源として複数個の発光ダイオードを用いるストロボ装置と、前記顔検出部の検出結果に基づいてストロボ装置を制御し、前記発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲を変更する制御部とを設けたことを特徴とする。
【0008】
また、被写体を撮像して画像を生成する撮像部と、前記画像から被写体の顔の位置と大きさを検出する顔検出部と、被写体を分割測光する測光部と、ストロボ光源として複数個の発光ダイオードを用いるストロボ装置と、前記顔検出部の検出結果と測光部の測光結果とに基づいてストロボ装置を制御し、前記発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲及び照射光量を変更する制御部とを設けたことを特徴とする。また、前記ストロボ光の照射範囲は、前記被写体の顔の範囲であることを特徴とする。また、前記ストロボ光の照射範囲は、前記被写体の顔を除く範囲であることを特徴とする。
【0009】
また、被写体を撮像して画像を生成する撮像部と、前記画像から被写体の顔の位置と大きさを検出する顔検出部と、被写体環境の色温度を検知する色温度検知部と、ストロボ光源として複数個の発光ダイオードを用いるストロボ装置と、前記顔検出部の検出結果と色温度検知部の検知結果とに基づいてストロボ装置を制御し、複数の照射範囲にそれぞれ異なる色温度のストロボ光を照射する制御部とを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記制御部は、前記被写体の顔を含む照射範囲へは、顔の肌色が正常な色に見えるように、ストロボ光の色温度を変更して照射することを特徴とする。また、前記制御部は、前記被写体の顔を除く照射範囲へは、被写体環境の雰囲気を残しつつ明るくなるように、前記照射範囲と同じ色温度のストロボ光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の撮影装置によれば、被写体を撮像して生成された画像から被写体の顔の位置と大きさを検出し、この検出結果に基づいて発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲を変更するので、被写体にとって眩し過ぎず色や明るさのバランスが良好なストロボ撮影を行うことができる。
【0012】
また、被写体を撮像して生成された画像から被写体の顔の位置と大きさを検出し、この検出結果と被写体を分割測光する測光部からの測光結果とに基づいて、発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲及び照射光量を変更するので、被写体にとって眩し過ぎず色や明るさのバランスが良好なストロボ撮影を行うことができる。また、ストロボ光の照射範囲は、被写体の顔の範囲としてもよく、また被写体の顔を除く範囲としてもよい。
【0013】
また、被写体を撮像して生成された画像から被写体の顔の位置と大きさを検出し、この検出結果と被写体環境の色温度を検知する色温度検知部の検知結果とに基づいて、発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲を変更するので、被写体にとって眩し過ぎず色や明るさのバランスが良好なストロボ撮影を行うことができる。
【0014】
また、被写体の顔を含む照射範囲へは、顔の肌色が正常な色に見えるように、ストロボ光の色温度を変更して照射することが好ましい。また、被写体の顔を除く照射範囲へは、被写体環境の雰囲気を残しつつ明るくなるように、前記照射範囲と同じ色温度のストロボ光を照射することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明が適用された撮影装置としてのデジタルカメラを示す図1において、デジタルカメラ10の前面には、撮影レンズ12、ファインダ窓14、ストロボ発光部16が設けられ、カメラ上面には、シャッタボタン18及び電源スイッチ20が配設されている。また、左手側のカメラ側面には、メモリカード22を装着するためのカードスロット23が設けられている。このカードスロット23は、防塵用の蓋24によって開閉自在に閉じられる。
【0016】
撮影レンズ12はズームレンズであり、この後方にCCDイメージセンサ(以下CCDという)27(図5参照)が配置されている。シャッタボタン18は2段階式に構成され、シャッタボタン18を軽く押して止める「半押し」の状態で、後述する顔抽出,色温度検出,シーン判別等が行われるとともに、AF及び自動露出制御(AE)が作動してAFとAEをロックし、「半押し」から更に押し込む「全押し」の状態で撮影が実行される。
【0017】
電源スイッチ20は、モード切換スイッチと兼用されており、電源OFFとなる「OFF位置」、静止画撮影モードで電源ONとなる「撮影ON位置」、及び再生モードで電源ONとなる「再生ON位置」の3ポジションを切り換えることができる。
【0018】
デジタルカメラ10の背面側の外観を示す図2において、デジタルカメラ10の背面には、ファインダ28、液晶モニタ30、ズームスイッチ32、多機能の十字ボタン34、AEロックボタン36、メニューキー38、実行キー40及びキャンセルキー42が設けられている。液晶モニタ30は、撮影時に画角確認用の電子ファインダとして使用できるとともに、撮影した画像のプレビュー画やメモリカード22から読み出した再生画像等を表示可能な表示手段である。また、十字ボタン34を使用したメニューの選択や各メニューにおける各種項目の設定なども液晶モニタ30の表示画面を用いて行われる。
【0019】
ズームスイッチ32は、上下方向に操作可能なレバースイッチで構成され、これを上方向に操作することで望遠(TELE)方向にズーミングを行い、下方向に操作することで広角(WIDE)方向にズーミングを行う。十字ボタン34は、上下左右のいずれかの縁部を押圧することによって、対応する4方向(上、下、左、右)の指示を入力できるようにしたもので、メニュー画面における各種設定項目の選択や設定内容の変更を指示する操作ボタンとして使用されるとともに、電子ズームの倍率調整や再生コマの送り/戻しを指示する手段として用いられる。
【0020】
メニューキー38は、各モードの通常画面からメニュー画面へ遷移させる時に使用される。実行キー40は、選択内容の確定、処理の実行(確認)指示の時などに使用される。キャンセルキー42は、メニューから選んだ項目の取消(キャンセル)や一つ前の操作状態に戻る時などに使用される。
【0021】
撮影者は、ファインダ28又は液晶モニタ30に映し出されるリアルタイム画像(スルー画)を確認しながら、ズームスイッチ32を操作して画角を決定し、シャッタボタン18を押し下げて撮影を行う。
【0022】
ストロボ発光部16は、図3に示すように、R、G、BのLED45R、45G、45Bがマトリクス状に多数配設されたLED群45から構成されている。そして、二点鎖線で囲んだ範囲46内の隣接する6個(2個ずつのLED45R、45G、45B)が、図4に示すように、撮影画面P0を仮想的にマトリクス状に分割した矩形状をした1個の分割照射領域P1に照射する。
【0023】
前記分割照射領域P1は矩形状をしているが、6個のLED45R、45G、45Bが同時にフル発光した場合の実際の照射範囲P2は矩形状ではなく、前記分割照射領域P1の4辺をはみ出したほぼ楕円形になる。しかしながら、はみ出した部分の光量は小さいので、撮影上問題にならない。また、6個のLED45R、45G、45Bの全部を同じ光量で同時に発光した場合には、そのストロボ光は白色になる。また、R、G、Bの色毎に発光する個数を変更したり、発光光量を変更することにより、ストロボ光の色温度を変えることができる。
【0024】
デジタルカメラ10の電気的構成を示す図5において、撮影レンズ12は、固定レンズ50、変倍レンズ51a、補正レンズ51b及びフォーカスレンズ52の4群型インナーフォーカス式ズームレンズで構成されている。
【0025】
変倍レンズ51aと補正レンズ51bは、図示せぬカム機構によって両者の位置関係が規制されながら光軸に沿って移動し、焦点距離を変更する。なお、説明の便宜上、変倍レンズ51aと補正レンズ51bから成る変倍光学系を「ズームレンズ51」と呼ぶ。
【0026】
撮影レンズ12を通過した光は、絞り53により光量が調節された後、CCD27に入射する。CCD27には、その光電面上に赤色(R),緑色(G),青色(B)の微小なマイクロカラーフィルタがマトリクス状に配列され、その背後にそれぞれMOSダイオード(MOSキャパシタ)が配置されている。
【0027】
各MOSダイオードに蓄積された信号電荷は、CCDドライバ54から与えられるパルスに基づいて信号電荷に応じたRGB各色の輝度情報を有する電圧信号(画像信号)として順次読み出される。なお、CCD27は、シャッタゲートパルスのタイミングによって各MOSダイオードの電荷蓄積時間(シャッタスピード)を制御する、いわゆる電子シャッタ機能を有している。
【0028】
CCD27から出力された画像信号は、アナログ処理部56に送られる。アナログ処理部56は、サンプリングホールド回路、色分離回路、ゲイン調整回路等の信号処理回路を含み、このアナログ処理部56において、相関二重サンプリング(CDS)処理並びにR,G,Bの各色信号に色分離処理され、各色信号の信号レベルの調整(プリホワイトバランス処理)が行われる。
【0029】
アナログ処理部56から出力された信号は、A/D変換器58によりデジタル信号に変換された後、メモリ60に格納される。タイミングジェネレータ(TG)62は、CPU64の指令に従ってCCDドライバ54、アナログ処理部56及びA/D変換器58に対してタイミング信号を与えており、このタイミング信号によって各回路の同期がとられている。
【0030】
前記CPU64は、デジタルカメラ10全体の各回路を統括制御する制御部である。CPU64は、電源スイッチ20、シャッタボタン18、ズームスイッチ32等から構成される操作部65から受入する入力信号に基づき、対応する回路の動作を制御するとともに、ストロボ制御、液晶モニタ30における表示制御、AF制御及び自動露出(AE)制御等を行う。
【0031】
メモリ60に格納されたデータは、バス66を介して画像信号処理部68に送られる。画像信号処理部68は、輝度・色差信号生成回路、ガンマ補正回路、シャープネス補正回路、コントラスト補正回路、ホワイトバランス補正回路等を含むデジタルシグナルプロセッサ(DSP)で構成された画像処理手段であり、CPU64からのコマンドに従って画像信号を処理する。
【0032】
画像信号処理部68に入力された画像データは、輝度・色差信号生成回路により輝度信号(Y信号)及び色差信号(Cr,Cb 信号)に変換されるとともに、ガンマ補正等の所定の処理が施された後、メモリ60に格納される。
【0033】
CPU64は、メモリ60に格納された1画面分の画像S0をマトリクス状に分割し、各分割領域S1(図6参照)毎の輝度信号の積算値(輝度値)をそれぞれ求める。この分割領域S1毎の輝度値は、シーン判別やシャッタ速度,絞り値の決定に用いられる。なお、前記1画面分の画像S0の分割方法は、前記撮影画面P0の分割方法と同じであり、分割領域S1と分割照射領域P1とは一対一に対応している。
【0034】
また、前記メモリ60には、輝度や色温度の組み合わせによってシーン判別を行う多数のシーンパターンと、各シーンパターンに対応して最適な露光を行う露光パターン(ストロボ光の配光パターンも含む)が記憶されている。
【0035】
撮影画像を表示出力する場合、メモリ60から画像データが読み出され、表示用メモリ70に転送される。表示用メモリ70に記憶されたデータは、表示用の所定方式の信号(例えば、NTSC方式のカラー複合映像信号)に変換された後、D/A変換器72を介して液晶モニタ(LCD)30に出力される。こうして、前記画像データの画像内容が液晶モニタ30の画面上に表示される。
【0036】
CCD27から出力される画像信号によって表示用メモリ70内の画像データが定期的に書き換えられ、その画像データから生成される映像信号が液晶モニタ30に供給されることにより、CCD27を介して入力する画像がリアルタイムに液晶モニタ30に表示される。撮影者は、液晶モニタ30に映し出される画像(スルー画)、或いは光学式のファインダ28によって撮影画角を確認することができる。
【0037】
シャッタボタン18の半押し操作により、メモリ60からスルー画の画像データが読み出され、顔抽出部74に取り込まれる。この顔抽出部74は、画像データから被写体の両眼を抽出することによって被写体の顔を抽出する。
【0038】
被写体の両眼を抽出する際には、図6に示すように、前記分割領域S1に含まれるR,G,Bの各色信号の信号レベルから、皮膚と推定される肌色の画素を多く含む斜線部で示す分割領域S1が選び出される。さらに、肌色の画素を多く含む領域から眼部の白色の画素と瞳と推定される色の画素を有する領域を選び出す処理が行われる。選び出された領域から、画像上における被写体75の両眼の位置座標が求められ、両眼の位置座標の中点を代表点として顔の位置が求められる。
【0039】
顔抽出部74は、抽出された被写体75の両眼の位置座標から、その周囲の肌色の画素を多く含む斜線で示す領域を顔領域A1(破線で矩形状に囲んだ領域)と見なす。例えば、図6に示す逆光シーンでは、顔領域A1よりも下方に広い顔近辺領域A2(二点鎖線で矩形状に囲んだ領域)を設定し(図7参照)、これをストロボ照射の対象領域とする。なお、本実施形態では、顔領域A1は分割領域S1の4個分の面積、顔近辺領域A2は分割領域S1の6個分の面積を有する。
【0040】
また、バス66を介して色温度検出部76が接続されている。この色温度検出部76は、メモリ60に記憶された1画面分の画像S0のR、G、B信号から、前記分割領域S1毎にR、G、B信号の色別の平均積算値を求める。そして、分割領域S1毎のR、G、B信号の平均積算値に基づいてデーライト(晴れ)、日陰−曇り、蛍光灯、タングステン電球等の光源種すなわち色温度の判別を行う。
【0041】
この色温度の判別は、前記分割領域S1ごとにR、G、B信号の色別の平均積算値の比R/G、B/Gを求め、続いて横軸をR/G、縦軸をB/Gとするグラフ上で、各色温度に対応する色分布の範囲を示す検出枠を設定する。そして、前記求めた各分割領域S1ごとの比R/G、B/Gに基づいて前記検出枠に入るエリアの個数を求め、被写体75の輝度レベル及び検出枠に入る分割領域S1の個数に基づいて色温度を判別する。
【0042】
撮影者がズームスイッチ32を操作すると、その指示信号がCPU64に入力され、CPU64はズームスイッチ32からの信号に基づいてズーム駆動部80を制御してズームレンズ51をテレ(TELE)方向又はワイド(WIDE)方向に移動させる。ズーム駆動部80は図示せぬモータを含み、このモータの駆動力によってズームレンズ51が駆動される。ズームレンズ51の位置(ズーム位置)は、ズーム位置センサ81によって検出され、この検出信号はCPU64に入力される。
【0043】
同様に、フォーカス駆動部82は図示せぬモータを含み、このモータの駆動力によってフォーカスレンズ52が光軸に沿って前後動する。フォーカスレンズ52の位置(フォーカス位置)は、フォーカス位置センサ83によって検出され、このセンサ83の検出信号はCPU64に入力される。
【0044】
電源スイッチ20によって静止画撮影モードが設定され、シャッタボタン18が押し下げられると、撮影開始指示(レリーズON)信号が発せられる。CPU64は、レリーズON信号を検知して記録用の撮像動作を実行する。また、CPU64は必要に応じてストロボ装置86のLED制御回路87にコマンドを送り、ストロボ発光部16のLED群45を駆動してストロボ光を発光する。
【0045】
LED制御回路87には、電源電池の電圧を昇圧する電圧アップコンバータ,この昇圧された電圧により充電されるコンデンサ等が設けられており、CPU64からのコマンドによって、LED群45のうち選択されたLEDに、コンデンサから高圧の電流が所定時間流され、LEDが発光する。
【0046】
シャッタボタン18の全押し操作に応動して、記録用の画像データの取り込みが開始される。画像データを圧縮記録するモードが選択されている場合、CPU64は圧縮伸張回路88にコマンドを送る。圧縮伸張回路88は、メモリ60に取り込まれた画像データをJPEGその他の所定の形式に従って圧縮する。
【0047】
圧縮された画像データは、カードインターフェース89を介してメモリカード22に記録される。非圧縮の画像データを記録するモード(非圧縮モード)が選択されている場合には、圧縮伸張回路88による圧縮処理は省略され、非圧縮のまま画像データがメモリカード22に記録される。
【0048】
電源スイッチ20によって再生モードが設定されると、メモリカード22から画像ファイルが読み出される。読み出された画像データは、必要に応じて圧縮伸張回路88によって伸張処理され、表示用メモリ70を介して液晶モニタ30に出力される。
【0049】
このように構成されたデジタルカメラ10を用いて静止画を撮影するには、まず電源スイッチ20を撮影ON位置に移動させて静止画撮影モードにセットする。これにより、LED制御回路87に内蔵されたコンデンサの充電が開始される。撮影レンズ12を被写体に向けてシャッタボタン18を半押し操作すると、CPU64は、顔抽出,色温度検出,シーン判別等のシーケンスを実行する。
【0050】
図8のフローチャートに示すように、顔抽出部74は、メモリ60に格納されたスルー画の画像データを読み出し、この画像S0から被写体75の顔の抽出処理を行う。顔抽出部74は、分割領域S1の中から肌色の画素を多く含む分割領域S1を選び出してから、この分割領域S1から被写体75の両眼が存在する分割領域S1を選び出し(st1)、両眼の位置座標を求め、顔の位置を両眼の中点位置として求める。そして、顔抽出部74は、顔の位置と肌色の画素を多く含む分割領域S1とから顔領域A1を特定する(st2)。
【0051】
CPU64は、顔領域A1と各分割領域S1の輝度値からシーン判別を行う(st3)。図6及び図7に示すシーンでは、顔領域A1を除く領域A3に高輝度部(太陽)91が検出されるから、CPU64は逆光シーンであると判断し、メモリ60から逆光シーンに対応する露光パターンを読み出す。この露光パターンに従って、CPU64は顔領域A1を下方に広げた顔近辺領域A2を設定する(st4)。
【0052】
シャッタボタン18を全押し操作すると、CPU64はLED制御回路87にストロボ発光のコマンドを送り、顔近辺領域A2に対応するLED45R、45G、45Bのみが発光される(st5)。この場合、顔近辺領域A2に対応する全てのLED45R、45G、45Bが同時にフル発光し、白色光が顔近辺に照射される。これにより、通常の撮影では黒く潰れてしまう被写体75の顔及びそのやや下方部がストロボ光で適正に照明されるとともに、周辺領域A3に対応する多数のLED45R、45G、45Bは発光されないから、電源電池の無駄な消耗が防止される。
【0053】
CCD27から出力された画像信号がアナログ信号処理部56,A/D変換器58を経て、画像データとしてメモリ60に取り込まれ、圧縮伸張回路88で所定の形式に圧縮された後、カードインターフェース89を介してメモリカード22に記録される。
【0054】
次に、図9及び図10に示すようなシーンを撮影する場合には、図11のフローチャートに示すように、シャッタボタン18の半押し操作により、顔抽出部74が被写体92の両眼抽出を行い(st11)、顔領域B1(破線で矩形状に囲んだ領域)を抽出した後(st12)、CPU64がシーン判別を行う(st13)。顔領域B1の近くのみに比較的輝度の低い光源であるローソク94があり、画面周辺の輝度がきわめて低いから、CPU64は、キャンドルライトシーンであると判断し、これに対応する露光パターンをメモリ60から読み出す。なお、本実施形態では、顔領域B1は分割領域S1の6個分の面積を有する。
【0055】
キャンドルライトシーンでは、画面周辺が暗いため、被写体92の瞳孔は開いた状態になっており、大光量のストロボ光を発光すると、被写体92の目に悪影響を与えるおそれがあるとともに、瞳が赤く写る赤目現象が発生する。このため、シャッタボタン18が全押し操作されると、前記顔領域B1よりも広く設定した顔近辺領域B2(二点鎖線で矩形状に囲んだ領域)(st14)の平均輝度値が所定の閾値よりも高い(明るい)場合には(st15)、顔近辺領域B2に対応するLED45R、45G、45Bは発光されずに、顔近辺領域B2よりも外側の周辺領域B3に対応するLED45R、45G、45Bのみが発光する(st16)。
【0056】
この時の発光光量は、周辺領域B3にいる友人96等の様子が明瞭に分かるように、周辺領域B3の輝度値が前記閾値よりも高くなるような光量とする(強発光)。なお、前記閾値は、その場の雰囲気を壊さずに被写体92の顔が分かる程度の輝度値である。また、本実施形態では、顔近辺領域B2は分割領域S1の24個分の面積を有する。
【0057】
顔近辺領域B2の平均輝度値が前記閾値よりも低い(暗い)場合には(st15)、顔近辺領域B2に対応するLED45R、45G、45Bは顔近辺領域B2の平均輝度値が前記閾値と同じになるような光量で発光する(弱発光)と同時に、周辺領域B3に対応するLED45R、45G、45Bは周辺領域B3の輝度値が前記閾値よりも高くなるような光量で発光する(強発光)(st17)。
【0058】
次に、図12及び図13に示すようなシーンを撮影する場合には、図14のフローチャートに示すように、シャッタボタン18の半押し操作により、顔抽出部74が被写体98の両眼抽出を行い(st21)、顔領域C1(破線で矩形状に囲んだ領域)を抽出した後(st22)、CPU64がシーン判別を行う(st23)。被写体98の上方に複数個の点光源(タングステン電球99)があり、画像S0全体の輝度は低めであるところから、CPU64はタングステン電球又はボール型蛍光灯で照明された屋内又は夜の屋外であると判断する。
【0059】
この後、CPU64は、色温度検出部76が分割領域S1毎に行った色温度検知の結果に基づいて、顔領域C1の色温度測定(st24)と、顔領域C1を除く周辺領域C2の色温度測定(st25)とを行う。これにより、CPU64は、顔領域C1及び周辺領域C2は、ともにタングステンライトによって赤っぽく(アンバーに)照明されていると判定する。
【0060】
シャッタボタン18の全押し操作により、被写体98の顔が正常な肌色に補正されるように、顔領域C1に対応するLED45R、45Gは弱く(小さな光量で)発光されるか発光されず、LED45Bは強く(大きな光量で)発光される。また、これと同時に、周辺領域C2は色合いは変えずにやや明るく写るように、周辺領域C2に対応するLED45Rは強く(大きな光量で)発光され、LED45G,45Bは弱く発光されるか発光されない(st26)。なお、LEDを弱く発光するか発光しないかの判断は、領域C1,C2の各輝度値と所定の閾値との比較によって決定される。
【0061】
これにより、全体の雰囲気を壊すことなく、被写体98の顔を正常な色で写すことができる。また、被写体全体にストロボ光を当てているため、手ブレを防止できる。なお、被写体の平均輝度値が所定の閾値よりも高い(比較的明るい)場合には、顔領域C1の色温度を補正するためのストロボ発光のみが行われ、周辺領域C2へのストロボ発光は行われない。
【0062】
以上説明した実施形態では、ストロボ光の発光光量,発光領域,発光色温度等の設定はデジタルカメラが自動で行ったが、撮影の度毎にユーザが自分で判断してマニュアルで設定を行ってもよい。また、上記実施形態では、その場の雰囲気を壊さないようなストロボ発光を行ったが、意図的に被写体環境の色温度とは異なる色温度でストロボ発光を行って、異なった雰囲気を演出するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、ストロボ光源として発光ダイオード(LED)を用いたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば小型ランプやEL(エレクトロルミネッセンス)などの自発光型の半導体素子を用いてもよく、また液晶パネルを複数個に分割して用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を適用したデジタルカメラの外観を正面側から示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラの外観を背面側から示す斜視図である。
【図3】ストロボ発光部を構成するLED群を示す説明図である。
【図4】撮影画面をマトリクス状に分割した分割領域と実際に照射されるストロボ光の照射範囲とを示す説明図である。
【図5】デジタルカメラの電気的な構成を示すブロック図である。
【図6】逆光シーンでの顔領域を示す撮影画面の説明図である。
【図7】逆光シーンでの顔近辺領域を示す撮影画面の説明図である。
【図8】逆光シーンでの撮影シーケンスを示すフローチャートである。
【図9】キャンドルライトシーンでの顔領域を示す撮影画面の説明図である。
【図10】キャンドルライトシーンでの顔近辺領域を示す撮影画面の説明図である。
【図11】キャンドルライトシーンでの撮影シーケンスを示すフローチャートである。
【図12】タングステン照明下のシーンでの顔領域を示す撮影画面の説明図である。
【図13】タングステン照明下のシーンでの顔近辺領域を示す撮影画面の説明図である。
【図14】タングステン照明下のシーンでの撮影シーケンスを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
10 デジタルカメラ
16 ストロボ発光部
45 LED群
45R,45G,45B LED
64 CPU
74 顔抽出部
75,92,98 被写体
76 色温度検出部
86 ストロボ装置
87 LED制御回路
96 友人
99 タングステン電球
A1,B1,C1 顔領域
A2,B2 顔近辺領域
A3,B3,C2 周辺領域
P1 分割照射領域
S1 分割領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像を生成する撮像部と、
前記画像から被写体の顔の位置と大きさを検出する顔検出部と、
ストロボ光源として複数個の発光ダイオードを用いるストロボ装置と、
前記顔検出部の検出結果に基づいてストロボ装置を制御し、前記発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲を変更する制御部と
を設けたことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
被写体を撮像して画像を生成する撮像部と、
前記画像から被写体の顔の位置と大きさを検出する顔検出部と、
被写体を分割測光する測光部と、
ストロボ光源として複数個の発光ダイオードを用いるストロボ装置と、
前記顔検出部の検出結果と測光部の測光結果とに基づいてストロボ装置を制御し、前記発光ダイオードを選択発光してストロボ光の照射範囲及び照射光量を変更する制御部と
を設けたことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
前記ストロボ光の照射範囲は、前記被写体の顔の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記ストロボ光の照射範囲は、前記被写体の顔を除く範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の撮影装置。
【請求項5】
被写体を撮像して画像を生成する撮像部と、
前記画像から被写体の顔の位置と大きさを検出する顔検出部と、
被写体環境の色温度を検知する色温度検知部と、
ストロボ光源として複数個の発光ダイオードを用いるストロボ装置と、
前記顔検出部の検出結果と色温度検知部の検知結果とに基づいてストロボ装置を制御し、複数の照射範囲にそれぞれ異なる色温度のストロボ光を照射する制御部と
を設けたことを特徴とする撮影装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被写体の顔を含む照射範囲へは、顔の肌色が正常な色に見えるように、ストロボ光の色温度を変更して照射することを特徴とする請求項5記載の撮影装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記被写体の顔を除く照射範囲へは、被写体環境の雰囲気を残しつつ明るくなるように、前記照射範囲と同じ色温度のストロボ光を照射することを特徴とする請求項5または6記載の撮影装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−340000(P2006−340000A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161835(P2005−161835)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】