説明

操作者識別装置、車載装置及びナビゲーションシステム

【課題】何れかの乗員が車両のシャーシに触れながら車載装置を操作しても、その装置の操作に関与した乗員を識別できる操作者識別装置を提供する。
【解決手段】操作者識別装置1は、車両のシャーシの電位をグラウンドとする回路と絶縁された電力を供給する電源装置2と、識別部3とを有する。識別部3は、電源装置2から供給された電力により、第1のオペレータに対する第1の識別信号を出力する発振器11と、車載装置の操作部20に配置された電極15を通じて、第1のオペレータが操作部20に接触することにより流れた第1の識別信号を検出することにより、第1のオペレータが操作部20を操作したと判定するコントローラ17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作者識別装置、及び操作者識別装置を用いた車載装置及びナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両走行中の安全性を向上させるために、走行中において、ドライバがナビゲーション装置またはオーディオ装置などの車載装置を操作することを禁止する装置が開発されている。しかし、ドライバが車載装置を操作することを禁止する一方で、利便性の観点から、同乗者が車載装置を操作することを可能とすることが望ましい。そこで、ドライバが車載装置を操作したのか、同乗者が車載装置を操作したのかを判定する装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、「ステアリングホイール5をカバーする導電性被覆材6にセンサ電源部2から微弱電流を印加し、運転者がステアリングホイール5を握った状態で操作スイッチ4に触れると、運転者を通して操作スイッチ4の電位が上昇変化する。走行中、この電圧差に基づいて運転者入力判定部12が運転者による操作であると判定したときは、入力信号制御部14が操作スイッチ4からの入力を受け付けない」ことが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−178471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライバまたは同乗者が窓枠など車両のシャーシに接触しつつ、車載装置を操作することもある。あるいは、ドライバは靴を履かずに運転操作をすることもある。このような場合、操作者を識別するための微弱電流がシャーシを経由してシャーシグラウンドへリークしてしまう。そのため、ドライバまたは同乗者と車載装置の操作スイッチを経由して流れるその微弱電流が減衰し、操作スイッチにおける電位の上昇を検知することが困難となるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、何れかの乗員が車両のシャーシに触れながら車載装置を操作しても、その装置の操作に関与した乗員を識別できる操作者識別装置、その操作者識別装置を用いた車載装置及びナビゲーションシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面によれば、操作部を有する装置の操作者を識別する操作者識別装置が提供される。係る操作者識別装置は、車両のシャーシの電位をグラウンドとする回路と絶縁された電力を供給する電源装置と、操作者を識別する識別部とを有する。その識別部は、電源装置から供給された電力により、第1のオペレータに対する第1の識別信号を出力する第1の発振器と、操作部に配置された電極を通じて、第1のオペレータが操作部に接触することにより流れた第1の識別信号を検出することにより、第1のオペレータが操作部を操作したと判定するコントローラとを有する。
【0007】
本発明の別の側面によれば、車載装置が提供される。係る車載装置は、上記の操作者識別装置と、操作部と、操作部を介して行われた操作に応じた処理を行う制御部とを有する。その制御部は、車両の走行中に操作部が操作された場合において、操作者識別装置から第1のオペレータが操作部を操作したことを示す信号を受信すると、その操作を無効とする。
【0008】
本発明のさらに別の側面によれば、車両に搭載されるナビゲーションシステムが提供される。係るナビゲーションシステムは、車両の現在位置を検出する位置検出部と、地図情報を記憶する地図記憶部と、操作部と、操作部を介して入力された目的地情報と、位置検出部により検出された車両の現在位置と、地図記憶部に記憶された地図情報に基づいて、車両の現在位置から目的地までの経路を決定する経路決定部と、経路を表示する表示部と、車両のシャーシの電位をグラウンドとする回路と絶縁された電力を供給する電源装置と、ドライバまたはパッセンジャの何れが操作部を操作したかを識別する識別部と、車両の走行中に操作部が操作された場合において、識別部からドライバが操作部を操作したことを示す信号を受信すると、その操作を無効とする制御部とを有する。そして識別部は、車両のシャーシを基準とするグラウンドと絶縁されたグラウンドを持つ電源装置から供給された電力により、ドライバまたはパッセンジャに対して識別信号を出力する少なくとも一つの発振器と、操作部に配置された電極を通じて、ドライバまたはパッセンジャが操作部に接触することにより流れた識別信号を検出することにより、ドライバまたはパッセンジャの何れが操作部を操作したかを識別する判定部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、何れかの乗員が車両のシャーシに触れながら車載装置を操作しても、その装置の操作に関与した乗員を識別できる操作者識別装置、その操作者識別装置を用いた車載装置及びナビゲーションシステムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
本発明の一つの実施形態による操作者識別装置は、例えば車両に搭載され、ナビゲーションシステムなど、複数の乗員の何れかが操作可能な車載装置を操作した乗員を識別する。そのために、この操作者識別装置は、運転席と助手席に対して、識別信号を出力する。そしてこの操作者識別装置は、車載装置の操作部に設けた電極に操作者が触れると、その電極に触れた乗員と電極を通じて流れたその識別信号を検出器により検出して、車載装置を操作した乗員を識別する。さらにこの操作者識別装置は、操作者識別装置の電源系統を、車両のシャーシグラウンドを基準とする車載の他のシステムが使用する電源系統と絶縁することにより、識別信号が車両のシャーシを通じてリークすることを防止して、乗員が車両のシャーシに触れながら車載装置を操作しても、識別信号を検出器により容易に検知できることを可能とする。
【0011】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る操作者識別装置1の概略構成図である。図1に示すように、操作者識別装置1は、絶縁型直流電圧変換器2と、識別部3とを有する。
絶縁型直流電圧変換器2は、車両100に搭載されたバッテリ4と接続され、バッテリ4から供給された第1の所定電圧(例えば、12V)の電力を、第2の所定電圧(例えば、5V)に変換する。そして絶縁型直流電圧変換器2は、その第2の所定電圧の電力を識別部3に供給する。また第2の所定電圧は、車両100のシャーシ101の電位とは異なる基準電位のグラウンドを持つ。すなわち、絶縁型直流電圧変換器2は、バッテリ4から電力供給され、かつ車両100のシャーシ101の電位をグラウンドとする他の装置102の電源系統と、識別部3の電源系統を絶縁する。なお、本明細書において、車両100のシャーシ101とは、バッテリ4のマイナス極と電気的に導通している車両の部分をいう。また、他の装置102には、操作者識別装置1が操作者を識別しようとする車載装置も含まれる。例えば、他の装置102は、空調装置、ナビゲーションシステム、またはオーディオシステムである。また、第1の所定電圧と第2の所定電圧は異なる必要はなく、絶縁型直流電圧変換器2は、バッテリ4から絶縁型直流電圧変換器2に供給される、シャーシ101の電位をグラウンドとする電源系統と、絶縁型直流電圧変換器2により電力供給される識別部3の電源系統を絶縁するものであればよい。また、本明細書において、「絶縁」という用語の意味は、識別部3を構成する回路と、シャーシ101の電位をグラウンドとする回路とを接続する線の抵抗値が無限大となることだけでなく、識別部3を流れる電流がシャーシ101にリークすることを実質的に防止できる程度の抵抗値を有することも含む。したがって、絶縁型直流電圧変換器2は、識別部3を構成する回路と、シャーシ101の電位をグラウンドとする回路との間の抵抗値として通常は1MΩ〜10GΩ程度の抵抗値を有するが、そのリークを防止できる限り1MΩよりも小さい抵抗値を有していてもよい。絶縁型直流電圧変換器2は、例えば、公知の様々な絶縁型直流電圧変換器の何れかとすることができるので、絶縁型直流電圧変換器2の詳細な説明は省略する。
【0012】
図2は、操作者識別装置1の識別部3の構成の一例を示す図である。図2に示すように、識別部3は、二つの発振器11及び12と、二つのシート電極13及び14と、電極15と、検出器16と、コントローラ17を有する。なお、識別部3の構成は、図2に示すものに限られず、識別部3は、微弱電流を発振器により発生させ、乗員が車載装置の操作部を操作したときに、乗員を介して流れるその微弱電流を検出器により検知することにより、操作者を識別する構成を有していればよい。例えば、識別部3は、特開2005−178471号公報に開示されたシステムにおいて操作者を識別するために使用される構成と同様の構成を有していてもよい。
【0013】
発振器11は、運転席21に配置されたシート電極13と電気的に接続され、シート電極13に対してドライバ用識別信号Dを出力する。ドライバ用識別信号Dは、所定の周波数で振動する信号波であり、例えば、矩形波、サイン波または鋸波とすることができる。その所定の周波数は、車載装置が1回操作されるときに、ドライバが車載装置の操作部20に触れる期間中に、複数個の信号波が出力される周波数、例えば、1kHzあるいは2kHzに設定することができる。
一方、発振器12は、助手席22に配置されたシート電極14と電気的に接続される。そして発振器12は、パッセンジャ用識別信号Pを出力する。パッセンジャ用識別信号Pは、ドライバ用識別信号Dと略同一の周波数及び略同一の振幅を有する信号波である。
発振器11及び12は、コントローラ17により同期制御され、ドライバ用識別信号Dの位相は、パッセンジャ用識別信号Pの位相に対して反転される。また、発振器11及び12は、例えば、公知の様々な発振回路の何れかとすることができるので、その構成の詳細については説明を省略する。
【0014】
電極15は、例えば透明導電膜で形成され、操作者を識別しようとする車載装置の操作部20、例えばタッチパネルディスプレイなどに設けられている。電極15は、検出器16と電気的に接続される。そして電極15は、ドライバが車載装置の操作部20に触れたときに、ドライバ用識別信号Dを検出器16へ伝達する。同様に、電極15は、パッセンジャがその操作部20に触れたときに、パッセンジャ用識別信号Pを検出器16へ伝達する。
【0015】
なお、電極15は、車載装置の操作部20が、抵抗膜方式のタッチパネルなど、操作されたことを検出するための導電膜を有している場合、その導電膜としてもよい。また車載装置の操作部20が静電容量方式のタッチパネルの場合には、電極15を、導電膜と、タッチパネル周辺部に配置され、パネル表面の容量変化を検出するための電極とで構成してもよい。また車載装置の操作部20が、ボタンスイッチのように導電膜を有さない場合、電極15は、金属板などの不透明な電極で形成され、操作部20の表面に配置されてもよい。また電極15が、上記のように静電容量方式のタッチパネルの部品などで構成される場合、そのタッチパネルは、同時にタッチパネルに触れた者同士の通電が生じない多点同時検出可能なタッチパネルであってもよい。また操作部20は、絶縁体で構成されたハウジングの内部に電極を設け、操作者と電極との静電容量結合で操作を検知するスイッチであってもよい。
【0016】
なお、電極15が操作部20の導電膜である場合のように、電極15が操作部20と一体に形成される場合、識別部3のコントローラ17を経由して、シャーシ101をグラウンドとする他の装置102の一つである車載装置本体が操作部20により行われた操作を表す信号を取得することができる。そのため、このような場合、コントローラ17と車載装置本体を接続する導線を通じてドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pがリークすることを防止することが好ましい。そこでこの場合には、コントローラ17と車載装置本体を接続する導線の途中に、フォトカプラのような、信号のみを伝達して、コントローラ17側と車載装置本体側との間を電流が流れることを防止する素子を設けることが好ましい。
【0017】
検出器16は、電極15を経由して伝達されたドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pを検出する。本実施形態では、検出器16は電圧計を有する。そして検出器16は、ドライバが車載装置の操作部20を操作することにより、発振器11、シート電極13、ドライバ、電極15により形成される回路において、電極15から伝達された信号の電圧を測定する。また検出器16は、パッセンジャが車載装置の操作部20を操作することにより、発振器12、シート電極14、パッセンジャ、電極15により形成される回路において、電極15から伝達された信号の電圧を測定する。あるいは、検出器16は、電流計を有し、ドライバまたはパッセンジャが車載装置の操作部20に触れるか、ドライバとパッセンジャが触れることにより形成される閉回路に流れる電流値を測定してもよい。
【0018】
ここで再度図1を参照すると、識別部3の発振器11と、シート電極13と、ドライバと、電極15と検出器16により形成される識別用回路が、バッテリ4から電源供給され、シャーシ101の電位をグラウンドとする他の装置102の電源系統と絶縁されている。そのため、例えば、ドライバがシャーシ101に接触しつつ車載装置の操作部20に触れても、発振器11から出力され、ドライバを経由したドライバ用識別信号Dは、シャーシ101を通じてシャーシグラウンドへ実質的に流れることはない。そのため、検出器16は、ドライバがシャーシ101に接触しつつ車載装置の操作部20に触れても、ドライバを経由したドライバ用識別信号Dを容易に検出できる。
【0019】
このことを、上記の識別用回路を流れる電流に関して説明する。ここで、発振器11から出力されるドライバ用識別信号Dの電圧をVとし、ドライバが操作部20に触れているときの対地インピーダンスをZoperator、ドライバからシャーシ101を経由する経路に対する対地インピーダンスをZleak、絶縁型直流電圧変換器2のインピーダンスをZisoとする。この場合、発振器11から出力され、ドライバを経由したドライバ用識別信号Dについて、シャーシ101を通じてシャーシグラウンドへ流れる電流Ileakは、次式で表される。
【数1】

(1)式から明らかなように、絶縁型直流電圧変換器2のインピーダンスZisoが大きくなるほど、Ileakは0に近づく。そして本実施形態では、絶縁型直流電圧変換器2が、識別部3をバッテリ4から電源供給され、シャーシグラウンドを基準とする他の装置102の電源系統と絶縁しているため、Zisoは非常に大きな値となる。そのため、Ileakは実質的に0となる。
【0020】
同様に、発振器12と、シート電極14と、パッセンジャと、電極15と検出器16により形成される回路が、バッテリ4から電源供給され、シャーシグラウンドを基準とする他の装置102の電源系統と絶縁されている。そのため、パッセンジャが車両100のシャーシ101に接触しつつ車載装置の操作部20に触れても、パッセンジャ用識別信号Pがシャーシ101を通じてリークすることはないので、検出器16はパッセンジャを経由したパッセンジャ用識別信号Pを容易に検出できる。
【0021】
検出器16は、信号波形の測定結果(例えば、測定された電圧の最大値及び最小値)を、コントローラ17へ送信する。
【0022】
コントローラ17は、組み込み型の制御ユニット、ROM,RAM等の半導体メモリ、通信インターフェース及びその周辺回路を有する。コントローラ17は、発振器11、12を制御する。またコントローラ17は、検出器16から得た信号波形の測定結果に基づいて、車載装置を操作した操作者がドライバかパッセンジャかを識別する。さらにコントローラ17は、ドライバとパッセンジャの双方が車載装置の操作に関与しているか否かを判定してもよい。なお、ドライバとパッセンジャの双方が車載装置の操作に関与することには、ドライバとパッセンジャが接触しつつ車載装置の操作部に触れること、及びドライバとパッセンジャが互いに接触しているか否かにかかわらず、同時に操作部に触れることが含まれる。
【0023】
図3(a)〜(d)のタイミングチャートを参照しつつ、コントローラ17による、車載装置の操作者の識別処理について説明する。図3(a)は、ドライバ用識別信号Dの信号波形301及びパッセンジャ用識別信号Pの信号波形302を示す。また図3(b)は、ドライバが車載装置の操作部20に触れたときに、検出器16で検出される信号波形303を示す。また、図3(c)は、パッセンジャが車載装置の操作部20に触れたときに、検出器16で検出される信号波形304を示す。さらに、図3(d)は、ドライバとパッセンジャが接触しつつ、車載装置の操作部20に触れたときに、検出器16で検出される信号波形305を示す。なお、図3(a)〜(d)において、横軸は経過時間を表す。また図3(a)〜(d)において、縦軸は電圧を表し、Aは基準電圧である。そして検出器16により測定された電圧の最大値または最小値と基準電圧Aとの差が、検出器16により検出された信号の最大振幅となる。
【0024】
発振器11がドライバ用識別信号Dを出力している間に、運転席21に座ったドライバが、車載装置を操作しようとしてその操作部20に触れると、ドライバ用識別信号Dが、シート電極13、ドライバ及び電極15を通じて検出器16へ流れる。そのため、図3(b)に示すように、検出器16は、ドライバ用識別信号Dと同じ周期で振動する、比較的振幅の大きな信号を検出することができる。
【0025】
また、発振器12がパッセンジャ用識別信号Pを出力している間に、助手席22に座ったパッセンジャが車載装置の操作部20に触れると、発振器12から出力されたパッセンジャ用識別信号Pが、シート電極14、パッセンジャ及び電極15を経由して検出器16へ流れる。そのため、図3(c)に示すように、検出器16は、パッセンジャ用識別信号Pと同じ周期で振動する、比較的振幅の大きな信号を検出することができる。
【0026】
さらに、ドライバとパッセンジャが接触しつつ、どちらか一方が車載装置の操作部20に触れた場合、あるいは、、ドライバとパッセンジャが相互に接触したか否かにかかわらず、ドライバとパッセンジャが同時に操作部20に触れた場合、ドライバ用識別信号Dとパッセンジャ用識別信号Pの両方が、電極15を経由して検出器16に伝達される。ここで、上記のように、ドライバ用識別信号Dとパッセンジャ用識別信号Pは、同じ振幅及び同じ周波数を持ち、位相が互いに対して反転している。そのため、検出器16において、ドライバ用識別信号Dとパッセンジャ用識別信号Pは、互いに打ち消し合う。従って、検出器16で検出される識別信号の振幅は、ドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pの何れか一方のみが検出器16に伝達される場合において検出器16により検出される識別信号の振幅よりも小さくなる。
【0027】
以下、図4に示したフローチャートを参照しつつ、コントローラ17による操作者識別処理の動作手順を説明する。
まず、車載装置が、その操作部20が接触されたことを検出して、操作者識別装置1に対して操作者識別処理の開始を指示すると、コントローラ17は、発振器11からシート電極13へドライバ用識別信号Dを出力させる。またコントローラ17は、発振器12からシート電極14へ、ドライバ用識別信号Dと同じ振幅及び周波数を有し、ドライバ用識別信号Dに対して位相が反転したパッセンジャ用識別信号Pを出力させる(ステップS101)。
【0028】
次に、コントローラ17は、検出器16により検出された信号の最大振幅の絶対値が、所定の閾値Thcを超えるか否か判定する(ステップS102)。ステップS102において、検出信号の最大振幅の絶対値が、閾値Thcを超える場合、コントローラ17は、ドライバ用識別信号Dか、パッセンジャ用識別信号Pの何れかが検出されたと判定する。そしてコントローラ17は、その検出信号がドライバ用識別信号Dか、パッセンジャ用識別信号Pか判定する(ステップS103)。
【0029】
ステップS103において、コントローラ17は、ドライバ用識別信号Dの振幅が正の値を持つときに、検出器16で検出された信号の振幅が所定の閾値Thcを超える場合、ドライバ用識別信号Dが検出されたと判定する。同様に、コントローラ17は、ドライバ用識別信号Dの振幅が負の値を持つときに、その検出信号の振幅が閾値-Thcを下回る場合、ドライバ用識別信号Dが検出されたと判定してもよい。
逆に、コントローラ17は、パッセンジャ用識別信号Pの振幅が正の値を持つときに、検出器16で検出された信号の振幅が閾値Thcを超える場合、パッセンジャ用識別信号Pが検出されたと判定する。同様に、コントローラ17は、パッセンジャ用識別信号Pの振幅が負の値を持つときに、検出器16で検出された信号の振幅が閾値-Thcを下回る場合、パッセンジャ用識別信号Pが検出されたと判定してもよい。
【0030】
なお、コントローラ17は、ノイズ等による誤検出を防止するために、検出信号と閾値Thcとの比較を複数回実行してもよい。例えば、コントローラ17は、ドライバ用識別信号Dの振幅が正の値を持つときに検出信号の振幅が閾値Thcを超えたこと、またはドライバ用識別信号Dの振幅が負の値を持つときに検出信号の振幅が閾値-Thcを下回ることが、複数回検出されると、ドライバ用識別信号Dが検出されたと判定してもよい。また、パッセンジャ用識別信号Pの位相は、ドライバ用識別信号Dの位相に対して反転しているので、検出器16において、両方の識別信号が同時に正の振幅を有したり、同時に負の振幅を有することはないことは明らかである。
【0031】
ステップS103において、検出信号がドライバ用識別信号Dと判定された場合、コントローラ17は、ドライバが操作部20を操作したと判定する(ステップS104)。一方、検出信号がパッセンジャ用識別信号Pと判定された場合、コントローラ17は、パッセンジャが操作部20を操作したと判定する(ステップS105)。
【0032】
一方、ステップS102において、検出器16にて検出された信号の最大振幅の絶対値が、閾値Thc以下のとき、コントローラ17は、ドライバとパッセンジャの双方が車載装置の操作に関与していると判定する(ステップS106)。
コントローラ17は、上記の処理を終了した後、操作者の識別結果を示す操作者識別信号を、車載装置に通知する。
【0033】
なお、所定の閾値Thcは、以下の条件を満たすように決定される。
【数2】

ここで、Noise floorは、ノイズフロアである。Vsmallerは、ドライバとパッセンジャが接触していないときにおいて、ドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pが、ドライバかパッセンジャの何れか一方のみを経由して検出器16へ伝達されたときの、その識別信号の振幅に相当する電圧のうちの低い方の電圧値に対応する。Voperatorは、ドライバとパッセンジャが接触しているときにおいて、ドライバとパッセンジャのうちの操作部20に触れている方のみを経由して検出器16へ伝達されたドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pの振幅に相当する電圧値である。さらに、Vtoucherは、ドライバとパッセンジャの両方を経由して、検出器16へ伝達されたドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pの振幅に相当する電圧値である。またVm1、Vm2は、誤検出を防止するためのマージン値である。また、α、βは、それぞれVoperator、Vtoucherの減衰率である。
【0034】
(2)式に示すように、閾値Thcは、Voperator、Vtoucherをそれぞれ減衰率α、βで除した値の絶対値の差にマージン値Vm2を加えた値よりも大きい値に設定される。なぜなら、ドライバ用識別信号Dの位相とパッセンジャ識別信号Pの位相は反転されており、ドライバとパッセンジャが接触しているときには、検出器16では、ドライバ用識別信号Dとパッセンジャ識別信号Pは打ち消しあうためである。なお、減衰率α、βは、それぞれ下記のように表される。
【数3】

ここで、Zoperatorは、ドライバとパッセンジャが接触しているときにおいて、ドライバとパッセンジャのうちの操作部20に触れている方の対地インピーダンスである。また、Ztoucherは、ドライバとパッセンジャが接触しているときにおいて、ドライバとパッセンジャのうちの操作部20に触れていない方の対地インピーダンスである。ドライバとパッセンジャが接触することは、ドライバとパッセンジャのうちの操作部20に触れた方及び操作部20に触れていない方ともに接地インピーダンスが追加されたとみなすことができる。そのため、検出器16の入力インピーダンスが十分に大きいと仮定すると、ZoperatorとZtoucherの分圧比の逆数が減衰率α、βとなる。
【0035】
また(2)式に示すように、閾値Thcは、Vsmallerはからマージン値Vm1を引いた値以下に設定される。これにより、ドライバとパッセンジャが接触していないときに、それらのどちらか一方のみを経由して検出器16に伝達された識別信号の最大振幅が、Thc以下となることを防止できる。そのため、コントローラ17は、ドライバとパッセンジャが接触せず、ドライバとパッセンジャの何れかが操作部20を操作したことを容易に検出できる。
【0036】
なお、識別部3は、パッセンジャ用識別信号Pがシート電極14に供給されない休止期間を設け、その休止期間中に、ドライバとパッセンジャの両方を通るドライバ用識別信号Dを検出することにより、ドライバとパッセンジャの双方が操作に関与していることを検知してもよい。あるいは、識別部3は、検出器16の他にもう一つ検出器を有し、例えば、スイッチにより、発振器11とそのもう一つの検出器とが、選択的にシート電極13に接続されるように構成されてもよい。この場合、発振器11と発振器12は異なるタイミングで交互にドライバ用識別信号Dとパッセンジャ用識別信号Pを出力する。そして、発振器12がパッセンジャ用識別信号Pを出力している間、シート電極13は上記のもう一つの検出器に接続され、発振器11がドライバ用識別信号Dを出力している間、発振器11とシート電極13が接続される。そして識別部3は、検出器16がドライバ用識別信号Dを検知するとドライバが操作部20を操作したと判定し、検出器16がパッセンジャ用識別信号Pを検知するとパッセンジャが操作部20を操作したと判定できる。さらに識別部3は、上記のもう一つの検出器が、パッセンジャ、ドライバ及びシート電極13を経由したパッセンジャ用識別信号Pを検出することにより、ドライバとパッセンジャの双方が操作に関与していることを検知できる。
【0037】
また、識別部3に対して、ドライバとパッセンジャの両方が操作に関与したことを検知することは必要でなく、単にドライバかパッセンジャの何れが操作部20を操作したかを検知することが必要とされる場合、発振器11と発振器12は、異なるタイミングで交互にドライバ用識別信号Dとパッセンジャ用識別信号Pを出力してもよい。この場合、ドライバ用識別信号Dが出力されている間に検出器16が識別信号を検知すれば、コントローラ17はドライバが操作部20を操作したと判定できる。一方、パッセンジャ用識別信号Pが出力されている間に検出器16が識別信号を検知すれば、コントローラ17はパッセンジャが操作部20を操作したと判定できる。さらに、識別部3は、一つの発振器のみを有し、その一つの発振器から出力される識別信号を、周期的に切り替えられるスイッチにて何れか一方のシート電極13または14に供給するようにしてもよい。この場合、識別信号が運転席に設置されたシート電極13に供給されている間に検出器16が識別信号を検知すれば、コントローラ17はドライバが操作部20を操作したと判定できる。一方、識別信号が助手席に設置されたシート電極14に供給されている間に検出器16が識別信号を検知すれば、コントローラ17はパッセンジャが操作部20を操作したと判定できる。
【0038】
さらに、識別部3に対して、ドライバか操作部20を操作したことのみを検知することが必要とされる場合、発振器12及びシート電極14は省略されてもよい。この場合、検出器16が識別信号を検知すれば、コントローラ17はドライバが操作部20を操作したと判定できる。逆に、識別部3に対して、パッセンジャか操作部20を操作したことのみを検知することが必要とされる場合、発振器11及びシート電極13は省略されてもよい。この場合、検出器16が識別信号を検知すれば、コントローラ17はパッセンジャが操作部20を操作したと判定できる。
【0039】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態による操作者識別装置は、操作者識別装置の電源系統を、車両のシャーシの電位をグラウンドとする車載の他の装置の電源系統と絶縁する。そのため、この操作者識別装置は、ドライバまたはパッセンジャが車両のシャーシに触れながら車載装置を操作しても、発振器から出力されてドライバまたはパッセンジャを経由したドライバ用識別信号またはパッセンジャ用識別信号がシャーシを経由してリークすることを防止できる。したがって、この操作者識別装置は、ドライバまたはパッセンジャ経由したドライバ用識別信号またはパッセンジャ用識別信号を検出器により容易に検知できるので、ドライバとパッセンジャの何れが車載装置を操作したのかを容易に識別することができる。また、この操作者識別装置では、ドライバとパッセンジャが接触しているときには、ドライバ用識別信号とパッセンジャ用識別信号が互いに打ち消しあうことにより、検出器で検出される識別信号の振幅が小さくなる。そこで、この操作者識別装置は、検出器で検出された識別信号の振幅が、何れか一方の識別信号のみが検出器に伝達される場合よりも小さいか否かを調べることにより、ドライバとパッセンジャの双方が車載装置の操作に関与しているか否かを判定することができる。
【0040】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、操作者識別装置は、絶縁型直流電圧変換器の代わりに、車載バッテリから電力供給され、車両のシャーシの電位をグラウンドとする他の装置の電源系統と異なるグラウンドを持つ別個の電源装置を有していてもよい。この場合でも、操作者識別装置は、ドライバまたはパッセンジャがシャーシに触れながら車載装置を操作しても、発振器から出力されてドライバまたはパッセンジャを経由したドライバ用識別信号またはパッセンジャ用識別信号が、シャーシを経由してリークすることを防止できる。なお、このような電源装置は、例えば、アルカリ電池、リチウム電池、オキシライド電池などの一次電池とすることができる。
【0041】
次に、上述した操作者識別装置を利用した車載装置の一例として、ナビゲーションシステムについて説明する。
図5は、上述した操作者識別装置を有するナビゲーションシステム50の機能ブロック図である。ナビゲーションシステム50は、操作者識別装置51と、位置検出部52と、道路情報記憶部53と、操作部54と、記憶部55と、通信部56と、制御部57を有する。
【0042】
操作者識別装置51は、上述した、本発明の実施形態に係る操作者識別装置とすることができる。そして操作者識別装置51は、操作部54を介して何等かの操作が行われたとき、ドライバかパッセンジャの何れが操作部54を操作したか、及びドライバとパッセンジャの双方がナビゲーションシステム50の操作に関与していたか否かを示す操作者識別信号を制御部57へ送信する。なお、ドライバとパッセンジャの双方がナビゲーションシステム50の操作に関与することには、上記のように、ドライバとパッセンジャが接触しつつ操作部54に触れること、及びドライバとパッセンジャが同時に操作部54に触れることが含まれる。
【0043】
位置検出部52は、ナビゲーションシステム50が搭載された車両の現在位置及び進行方向を検出する。そのために、位置検出部52は、センサとして、例えば、地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機を有する。そして、地磁気センサは絶対方位を取得し、ジャイロスコープは相対方位を検出する。また、距離センサは、車速パルス信号に基づいて、出発点からの走行距離を算出する。さらに、GPS受信機は、GPS(全地球測位システム)を構成するGPS衛星からの情報に基づいて、車両の現在位置の緯度及び経度を得る。位置検出部52は、これらの情報を組み合わせて、車両の現在位置及び進行方向を検出する。なお、地磁気センサ、ジャイロスコープ、距離センサ及びGPS受信機は、それぞれ周知のものを用いることができるため、ここではその詳細な説明を省略する。また、それらのセンサからの情報を組み合わせて車両の位置及び進行方向を検出する方法も、周知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
位置検出部52は、一定の距離間隔、あるいは一定の時間間隔に、車両の現在位置及び進行方向を検出し、制御部57へ送信する。
【0044】
道路情報記憶部53は、車両の現在位置周辺の道路情報を含む地図を取得し、制御部57へ送信する。そのために、道路情報記憶部53は、例えば、地図情報を記録したDVD、CDなどの記録媒体と、その記録媒体の読取装置を有する。道路情報は、例えば、各交差点を表すノードと、隣接する交差点間をつなぐ道路を表すリンクを含む。そして、ノードには、そのノード自体の識別情報、位置、ノードに接続されたリンクの識別情報などが関連付けられる。またリンクには、そのリンク自体の識別情報、リンクの位置、長さ、道路の種別(例えば、一般道路か高速道路)、一方通行情報などが関連付けられる。なお、道路情報記憶部53は、無線通信ネットワークを介して、サーバから地図情報を取得するようにしてもよい。
【0045】
操作部54は、ナビゲーションシステム50を操作するためのユーザインタフェースである。そのために、操作部54は、例えば、タッチパネルディスプレイで構成される。そして操作部54は、何等かの操作が行われたことを検出すると、その操作内容を表す信号を制御部57へ送信する。また操作部54には、操作者識別装置51の電極が設けられ、上記のように、ドライバまたはパッセンジャが操作部54に触れて操作すると、その電極を介してドライバ用識別信号Dまたはパッセンジャ用識別信号Pが検出器に伝達されるようになっている。
なお、上記のように、操作部54が、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルのように、ドライバ等の乗員により接触される部分に透明導電膜を有している場合、その透明導電膜を、操作者識別装置51の電極としても機能させてもよい。
【0046】
記憶部55は、例えば、書き換え可能な不揮発性の半導体メモリ、または磁気記録媒体及びその読取装置などで構成される。そして記憶部55は、制御部57で実行されるプログラム、そのプログラムが使用する各種設定パラメータなどを記憶する。
【0047】
通信部56は、車両内の他の機器と、車内ネットワークを介して通信するための通信インターフェース及びその周辺回路を有する。そして通信部56は、車内ネットワークを介して、車両に設置された、車速センサなどの各種センサにより検出されたセンサ信号などを取得する。
【0048】
制御部57は、CPU,ROM,RAM等からなる1個もしくは複数個の図示してないマイクロコンピュータ及びその周辺回路で構成される。そして、制御部57は、ナビゲーションシステム50の各部を制御する。例えば、制御部57は、位置検出部52から得た車両の現在位置などに基づいて、道路情報記憶部53から車両の現在位置周辺の道路情報を含む地図を取得する。そして制御部57は、取得した地図上に、車両の現在位置を示す記号を配置した画像データを作成し、その画像データをナビゲーションシステム50のディスプレイに表示する。さらに、制御部57は、制御部57のCPU上で実行されるソフトウェアモジュールとして、経路決定部58を有する。その経路決定部58は、操作部54を介して入力された目的地、車両の現在位置、地図情報などに基づいて、現在位置から目的地までの最短経路を算出する。そして制御部57は、その最短経路にしたがって、車両が交差点に接近すると、ディスプレイに直進、右折、左折などの進行方向情報を表示したり、スピーカを通じて進行方向を表す音声を出力するなどにより、ドライバに対して進行方向を報知する。
【0049】
さらに、制御部57は、操作部54から何等かの操作信号が入力されると、操作者識別装置51に対して、操作者識別処理を実行する命令を送信する。そして操作者識別装置51から操作者識別信号を受信すると、制御部57は、車両が走行中である場合、その操作者識別信号に基づいて、入力された操作を有効とするか無効とするかを判定する。本実施形態では、制御部57は、車両に設置された車速センサ(図示せず)から取得した車速が所定の速度以上、例えば5km/h以上の場合、車両は走行中と判定する。そして操作者識別信号が、ドライバが操作したことまたはドライバとパッセンジャの双方がナビゲーションシステム50の操作に関与していることを示していれば、制御部57は、その操作を無効とする。一方、制御部57は、操作者識別信号が、パッセンジャあるいは第3者が操作したことを示す場合には、その操作を有効とし、その操作に応じた処理を実行する。なお、車速センサから取得した車速が所定の速度未満、例えば5km/h未満である場合、制御部57は、車両は停止中であると判定し、操作者が誰であってもその操作を有効とする。なお、「操作を無効とする」には、ナビゲーションシステム50が操作者により行われた操作に対応する処理を実行せず、かつ何の反応も示さないことだけでなく、その操作に対応する処理を実行せず、かつ操作が無効である旨の警告メッセージを乗員に報知することも含まれる。
【0050】
このように、ナビゲーションシステム50は、走行中において、ドライバの操作を無効とすることにより、ドライバがナビゲーションシステム50に注意を向ける可能性を減らせるので、車両走行中の安全性を向上できる。さらに、ナビゲーションシステム50は、走行中において、ドライバとパッセンジャの双方がナビゲーションシステム50の操作に関与していることを示す操作者識別信号を受け取ったときも、その操作を無効とすることにより、ドライバの不正な操作を禁止できるので、車両走行中の安全性を向上できる。
【0051】
なお、操作者識別装置51は、ドライバか操作部54を操作したことのみを検知してもよい。この場合、パッセンジャシートに設けられるシート電極及びそのシート電極を通じてパッセンジャへ識別信号を出力する発振器は省略されてもよい。この場合、操作者識別装置51の検出器が識別信号を検知すれば、操作者識別装置51はドライバが操作部54を操作したと判定し、検出器が識別信号を検出できない場合には、パッセンジャまたはその他の同乗者が操作部54を操作したと判定できる。
【0052】
さらに、本発明に係る操作者識別装置は、オーディオ装置などの車載装置にも適用し、上記と同様に、走行中のドライバの操作を無効することができる。この場合、それら車載装置の制御部は、上記のナビゲーションシステムと同様に、操作部を介して何等かの操作が行われたとき、操作者識別装置に、その操作者識別処理を実行させる。そして、操作者識別装置から受け取った操作者識別信号に基づいて、その操作を有効とするか、無効とするかを判定する。そして操作が有効であると判定した場合には、操作部は、その操作に応じた処理(例えば、車載装置がオーディオである場合、ボリュームの変更、ラジオの選局、CDプレーヤの再生などの処理)を実行する。また、車両の操作に関係する装置に本発明を適用する場合、その装置は、操作者識別装置から受け取った操作者識別信号が、ドライバが操作したことを示す場合にのみ、その操作を有効としてもよい。さらにまた本発明に係る操作者識別装置は、車両以外にも搭載することができる。本発明に係る操作者識別装置を、車両以外に搭載する場合、上記の運転席に配置されるシート電極及び助手席に配置されるシート電極を、それぞれ、識別対象となる第1のオペレータが接触する領域及び第2のオペレータが接触する領域に配置する。そして第1のオペレータと第2のオペレータの両方が接触する可能性のある部分に、第1のオペレータ用識別信号(上記のドライバ用識別信号に相当)及び第2のオペレータ用識別信号(上記のパッセンジャ用識別信号に相当)を検出器に伝達するための電極を配置すればよい。
さらに、本発明に係る操作者識別装置は、操作者を識別しようとする対象装置と一体に構成されてもよい。操作者識別装置が操作者をその対象装置と一体に構成される場合には、その対象装置の制御部が、操作者識別装置のコントローラの機能を有することができる。
【0053】
上述した本発明に係る操作者識別装置を適用した装置の何れに関しても、操作者識別装置の識別部の電源系統が、他の装置の電源系統と絶縁される。そのため、本発明に係る操作者識別装置を適用した装置は、その識別部において操作者の識別に利用される識別信号が車両のシャーシなどを通じてリークすることを防止できる。したがって、本発明に係る操作者識別装置を適用した装置は、乗員が車両のシャーシなどに接触しつつその装置を操作しても、その操作を行った乗員を容易に識別できる。
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一つの実施形態による操作者識別装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一つの実施形態による操作者識別装置の識別部の概略構成図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の一つの実施形態による操作者識別装置における発振器から出力される識別信号及び検出器で検出される信号のタイミングチャートである。
【図4】本発明の一つの実施形態による操作者識別装置の操作者識別処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る操作者識別装置を有するナビゲーションシステムの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0055】
1 操作者識別装置
2 絶縁型直流電圧変換器
3 識別部
4 バッテリ
11、12 発振器
13、14 シート電極
15 電極
16 検出器
17 コントローラ
20 操作部
50 ナビゲーションシステム
51 操作者識別装置
52 位置検出部
53 道路情報記憶部
54 操作部
55 記憶部
56 通信部
57 制御部
58 経路決定部
100 車両
101 シャーシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を有する装置の操作者を識別する操作者識別装置であって、
車両のシャーシの電位をグラウンドとする回路と絶縁された電力を供給する電源装置と、
操作者を識別する識別部とを有し、
前記識別部は、前記電源装置から供給された電力により、第1のオペレータに対する第1の識別信号を出力する第1の発振器と、
前記操作部に配置された電極を通じて、第1のオペレータが前記操作部に接触することにより流れた前記第1の識別信号を検出することにより、第1のオペレータが前記操作部を操作したと判定するコントローラと、
を有することを特徴とする操作者識別装置。
【請求項2】
前記電源装置は、車両に搭載された他の電圧源から供給された第1の所定電圧を第2の所定電圧に変換する絶縁型直流電圧変換器である、請求項1に記載の操作者識別装置。
【請求項3】
前記識別部は、
前記第1の発振器と接続され、第1のオペレータに前記第1の識別信号を伝達可能に配置される第1のオペレータ電極と、
前記第1の識別信号と同一の周期及び同一の振幅を有し、かつ前記第1の識別信号と位相が反転した前記第2の識別信号を出力する第2の発振器と、
前記第2の発振器と接続され、第2のオペレータに前記第2の識別信号を伝達可能に配置される第2のオペレータ電極と、
前記第1の識別信号または前記第2の識別信号を検出する検出器とをさらに有し、
前記コントローラは、前記検出器と接続され、
前記検出器が前記第1の識別信号を検出したときは第1のオペレータが前記操作部を操作したと判定し、
前記検出器が前記第2の識別信号を検出したときは第2のオペレータが前記操作部を操作したと判定する、
請求項1また2に記載の操作者識別装置。
【請求項4】
車載装置であって、
請求項1〜3の何れか一項に記載の操作者識別装置と、
操作部と、
前記操作部を介して行われた操作に応じた処理を行う制御部とを有し、
前記制御部は、車両の走行中に前記操作部が操作された場合において、前記操作者識別装置から第1のオペレータが前記操作部を操作したことを示す信号を受信すると、該操作を無効とする、
ことを特徴とする車載装置。
【請求項5】
車両に搭載されるナビゲーションシステムであって、
車両の現在位置を検出する位置検出部と、
地図情報を記憶する地図記憶部と、
操作部と、
前記操作部を介して入力された目的地情報と、前記位置検出部により検出された車両の現在位置と、前記地図記憶部に記憶された地図情報に基づいて、車両の現在位置から目的地までの経路を決定する経路決定部と、
前記経路を表示する表示部と、
車両のシャーシの電位をグラウンドとする回路と絶縁された電力を供給する電源装置と、
ドライバまたはパッセンジャの何れが前記操作部を操作したかを識別する識別部と、
車両の走行中に前記操作部が操作された場合において、前記識別部からドライバが前記操作部を操作したことを示す信号を受信すると、該操作を無効とする制御部とを有し、
前記識別部は、
前記電源装置から供給された電力により、ドライバまたはパッセンジャに対して識別信号を出力する少なくとも一つの発振器と、
前記操作部に配置された電極を通じて、ドライバまたはパッセンジャが前記操作部に接触することにより流れた前記識別信号を検出することにより、ドライバまたはパッセンジャの何れが前記操作部を操作したかを識別する判定部と、
を有することを特徴とするナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149617(P2010−149617A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328420(P2008−328420)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】