説明

操舵角検出装置および操舵角検出方法

【課題】測定作業の容易化およびコストダウンを図る上で有利な操舵角検出装置および操舵角検出方法を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール2の非円形部2Dは、ステアリングシャフト方向、すなわち、回転軸方向から見て回転軸の周りに非円形を呈している。操舵角検出装置10は、ステアリングホイール2の非円形部2Dの回転軸の半径方向における変位量と、ステアリングホイール2の回転方向とを検出すると共に、変位量と操舵角とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定して出力すると共に、操舵角の特定は、検出された変位量と、直近の操舵角と、ステアリングホイール2の回転方向とに基づいて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置および操舵角検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されるタイヤの性能評価を行うための評価項目として操縦安定性や車両の運動特性があり、これら操縦安定性や運動特性を評価する上でステアリングホイールの操舵角は重要な測定項目である。
従来は、専用の操舵角計や操舵角力計が組み込まれ車種毎に開発されたステアリングホイールを用意し、測定対象となる車両に設けられているステアリングホイールをいったん取り外したのち、前記の専用のステアリングホイールを車両に取り付けて使用している。
また、特許文献1に示すような回転角度を測定する角度測定器を操舵機構に組み込んで操舵角を検出することが考えられる。
あるいは、特許文献2に示すように初めから操舵機構に組み込まれた回転角度検出装置を使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−166821号公報
【特許文献2】特開2000−065562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した操舵角計や操舵角力計が組み込まれた専用のステアリングホイールを用いる場合には、車両への装着作業が煩雑となり手間が掛かることは無論のこと、車種毎に開発された高価な専用のステアリングホイールを用意しなくてはならず、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で不利がある。
また、特許文献1、2に示される装置を用いる場合であっても、それら装置を車両に装着する作業が煩雑となり手間が掛かることから、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で不利がある。
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、その目的は、測定作業の容易化およびコストダウンを図る上で有利な操舵角検出装置および操舵角検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は、回転軸方向から見て前記回転軸の周りに非円形を呈する非円形部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置であって、前記ステアリングホイールの回転に伴って変化する前記非円形部の前記回転軸の半径方向における変位量を検出する変位量検出手段と、前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記変位量検出手段で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルを記憶するデータテーブル手段と、前記データテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出手段と、前記操舵角検出手段によって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持手段とを備え、前記操舵角検出手段による前記操舵角の特定は、前記変位量検出手段で検出された変位量と、前記回転方向検出手段で検出された回転方向と、前記直近の操舵角とに基づいてなされることを特徴とする。
また本発明は、回転軸方向から見て前記回転軸の周りに非円形を呈する非円形部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出方法であって、前記ステアリングホイールの回転に伴って変化する前記非円形部の前記回転軸の半径方向における変位量を検出する変位量検出ステップと、前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出ステップと、前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記変位量検出手段で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出ステップと、前記操舵角検出ステップによって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持ステップとを含み、前記操舵角検出ステップによる前記操舵角の特定は、前記変位量検出ステップで検出された変位量と、前記回転方向検出ステップで検出された回転方向と、前記直近の操舵角とに基づいてなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
ステアリングホイールの非円形部の回転軸の半径方向における変位量と、ステアリングホイールの回転方向とを検出すると共に、変位量と操舵角とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定して出力すると共に、操舵角の特定は、検出された変位量と、直近の操舵角と、ステアリングホイールの回転方向とに基づいて行うようにした。
したがって、高価な専用のステアリングホイールを用意する必要がなく、また、専用のステアリングホイールの交換作業や車両の操舵機構に専用の測定装置を組み込むといった煩雑な作業が不要となるため、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の構成を示す説明図である。
【図2】第1の実施の形態に係る操舵角検出装置10の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】変位量検出手段12による非円形部2Dの変位量dの検出動作を説明する説明図である。
【図4】変位量検出手段12によって検出された非円形部2Dの変位量dと操舵角θとの関係を示す説明図である。
【図5】第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40におけるデータテーブルの作成処理を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の動作フローチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の構成を示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の制御系の構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の動作フローチャートである。
【図10】車両の振動に起因するノイズが変位量検出手段12で検出された変位量dに重畳した状態を示す図である。
【図11】振動検出手段42で検出された振動量vの図である。
【図12】誤差抑制手段44によって変位量dのノイズが抑制された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明による車両の操舵角検出装置および操舵角検出方法の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して本実施の形態の操舵角検出装置10によって操舵角が検出されるステアリングホイール2について説明する。
ステアリングホイール2は、運転者により操作される円環状のリム部2Aと、リム部2Aの内側の中央に配置された中央ケース部2Bと、リム部2Aと中央ケース部2Bとを接続する複数のスポーク部2Cとを備えている。
中央ケース部2Bの背面に非円形部2Dが一体的に設けられ、非円形部2Dの背面にボス部2Eが一体的に設けられ、このボス部2Eは不図示のステアリングシャフトに結合されている。
非円形部2Dは、ステアリングシャフト方向、すなわち、回転軸方向から見て回転軸の周りに非円形を呈している。
なお、非円形部2Dは、ステアリングホイール2を構成する部材としてステアリングホイール2と一体的に形成されたものであってもよいし、あるいは、予め、ステアリングホイール2とは別体に形成された非円形部2Dをステアリングホイール2に取着してもよい。
【0009】
次に、本実施の形態の操舵角検出装置10について説明する。
図1に示すように、操舵角検出装置10は、変位量検出手段12と、回転方向検出手段14と、操作部16と、ECU18とを含んで構成されている。
【0010】
変位量検出手段12は、ステアリングホイール2の回転に伴って変化する非円形部2Dの回転軸の半径方向における変位量dを検出し、変位量dに対応する検出信号をECU18に供給するものである。
変位量検出手段12は、変位量dを検出できるものであれば良く、従来公知のさまざまな接触式の変位量センサあるいは非接触式の変位量センサが使用可能である。
本実施の形態では、変位量検出手段12は非円形部2Dに対向する車室内の箇所に固定された非接触式の変位量センサで構成されている。
変位量検出手段12として非接触式の変位量センサを用いると、接触式の変位量センサと異なり、非円形部2Dに接触しないため、変位量検出手段12の設置作業の容易化を図る上で有利となることは無論のこと、変位量検出手段12の耐久性の向上を図る上で有利となる。
このような非接触式の変位量センサとして、レーザ光を検出光として対象物に照射することにより対象物で反射された反射光を受光し、該受光した反射光の入射角度に基づいて変位量センサと対象物との間の距離を検出し、その距離に基づいて変位量を検出するレーザ式変位量センサなど従来公知のさまざまな変位量センサが使用可能である。
変位量検出手段12の車室内への固定は、例えば、不図示の取り付け部材を介して運転席前方に位置するインスツルメントパネルに固定すればよく、変位量検出手段12を固定する箇所や固定手段は任意である。
【0011】
図3は変位量検出手段12による非円形部2Dの変位量dの検出動作を説明する説明図、図4は変位量検出手段12によって検出された非円形部2Dの変位量dと操舵角θとの関係を示す説明図である。
図3に示すように、ステアリングホイール2を回転操作すると、非円形部2Dは回転軸Oを中心として回転される。
図中、θは非円形部2Dの回転角度、すなわち、ステアリングホイール2の操舵角を示す。また、dは変位量検出手段12によって検出された非円形部2Dの変位量を示す。
【0012】
図4は、ステアリングホイール2を1回転させた場合に、言い換えると、ステアリングホイール2を中立位置である0度から例えば時計回り方向に360度回転させた場合に、変位量検出手段12によって検出される変位量dを示している。
なお、ステアリングホイール2の中立位置とは、車両を直進させる場合に対応している。
すなわち、操舵角θを0度から360度にわたって変化させた場合の変位量dを示している。
変位量dは、操舵角θの変化に対して非円形部2Dの形状に応じた振幅と周期を有する繰り返し波形を呈している。
したがって、同一の変位量dに対して複数の操舵角θが対応することになる。
【0013】
回転方向検出手段14は、ステアリングホイール2の回転方向を検出し、回転方向に対応する検出信号をECU18に供給するものである。
回転方向検出手段14は、ステアリングホイール2の回転方向を検出できるものであれば良く、従来公知のさまざまなセンサが使用可能である。
本実施の形態では、回転方向検出手段14は、ステアリングホイール2に設けられステアリングホイール2の回転方向の加速度を検出する加速度センサで構成されている。
この場合、回転方向検出手段14から出力される検出信号は、ステアリングホイール2が時計回りに回転するときと、反時計回りに回転するときとで異なる値、あるいは、異なる極性(正負)を有したものとなる。
このような加速度センサとして従来公知のさまざまな加速度センサが使用可能である。
また、加速度センサは、検出した加速度を示すデータをデータ線を介してECU18に供給するが、この際、データ線が無線回線で構成されているものがステアリング操作を邪魔しないため好ましい。
回転方向検出手段14として加速度センサを用いると、ステアリングホイール2の回転操作に伴い確実にステアリングホイール2の回転方向を検出でき有利となる。
【0014】
操作部16は、使用者の操作に応じて生成した信号を操舵角検出装置10に供給するものである。
本実施の形態では、操作部16は、基準角度設定スイッチ20を含んで構成されている。
基準角度設定スイッチ20の機能については後述する。
【0015】
ECU18は、CPU18Aと、制御プログラムなどを格納する第1のROM18Bと、データの再書き込みが可能な第2のROM18Cと、ワーキングエリアを提供するRAM18Dと、インターフェース部18Eなどがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されている。
インターフェース部18Eは、変位量検出手段12、回転方向検出手段14、操作部16との間でインターフェースをとるものである。
ECU18は、図2に示すように、データテーブル手段24と、データテーブル作成手段26と、操舵角検出手段28と、直近操舵角保持手段30とを含んで構成されている。
データテーブル手段24は、第2のROM18Cによって構成される。
データテーブル作成手段26と、操舵角検出手段28と、直近操舵角保持手段30とは、CPU18Aが前記制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
【0016】
データテーブル手段24は、ステアリングホイール2の1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して変位量検出手段12で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルを記憶するものである。
【0017】
データテーブル作成手段26は、前記データテーブルを作成してデータテーブル手段24に格納するものである。
【0018】
操舵角検出手段28は、データテーブル手段24のデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力するものである。
操舵角検出手段28による操舵角の特定は、変位量検出手段12で検出された変位量dと、回転方向検出手段14で検出された回転方向と、以下に説明する直近操舵角保持手段30で保持される直近の(直前の)操舵角θとに基づいてなされる。
出力された操舵角データは、ECU18のインターフェース部18Eを介して接続された不図示の外部装置、例えば、データロガーに供給され、データロガーに蓄積され、さまざまな評価に供される。
出力される操舵角データの形態は、デジタル信号であっても、あるいは、アナログ信号であってもよい。
【0019】
直近操舵角保持手段30は、操舵角検出手段28によって新たな操舵角θが特定される毎に、該操舵角θを直近の操舵角θとして更新して保持するものである。
【0020】
次に、操舵角検出装置10の動作について図5、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、図5に示すように、操舵角検出装置10による操舵角θの検出を行うに先立って、予めデータテーブルを作成してデータテーブル手段24に格納する処理を実行する。
すなわち、使用者は、ステアリングホイール2の操舵角θを実測できるようにステアリングホイール2に分度器を取着する(ステップS10)。
次に、使用者は、データ入力用の外部装置としてのパーソナルコンピュータをインターフェース部18Eに接続する(ステップS12)。
そして、使用者は、分度器を用いてステアリングホイール2を中立位置から例えば時計回り方向に向かって所定角度、例えば10度回転させる毎に、前記パーソナルコンピュータを操作する。これにより、実測された操舵角θは、前記パーソナルコンピュータを介してデータテーブル作成手段26に供給される(ステップS14)。
【0021】
データテーブル作成手段26は、前記の実測された操舵角θを受け付ける毎に、該実測された操舵角θと、そのとき変位量検出手段12で検出された変位量dとを対応付けたデータをデータテーブル手段24に格納することで中間データテーブルを作成する(ステップS16)。具体的には、中間データテーブルの操舵角θは、所定角度の整数倍となっており、本例では、操舵角θ=0度、10度、20度、30度、…、360度と離散的な値となっている。
【0022】
次に、データテーブル作成手段26は、前記パーソナルコンピュータから供給される前記の実測された操舵角θが360度に到達したか否かを判定する(ステップS18)。
ステップS18の判定結果が否定であれば、データテーブル作成手段26はステップS14に戻る。
ステップS18の判定結果が肯定であれば、データテーブル作成手段26は中間データテーブルの作成を終了する。
中間データテーブルでは、操舵角θが離散的な値、本例では操舵角θが10度毎であるため、操舵角θの分解能が低いものに留まっている。
そこで、より分解能の高い操舵角θの検出を行うため、データテーブル作成手段26は、中間データテーブルの操舵角θおよび変位量dについて補間処理を行うことにより操舵角θおよび変位量dの分解能をより高くした、例えば、操舵角θの分解能を1度としたデータテーブルを作成する(ステップS20)。なお、前記の補間処理としては従来公知のさまざまな補間方法が使用可能である。
【0023】
次に、補間された操舵角θおよび変位量dに基づいて以下のようにデータテーブルを作成する(ステップS22)。
すなわち、通常、ステアリングホイール2は中立位置に対して時計回りに1回転以上しかつ中立位置に対して反時計回りにも1回転以上回転する。
したがって、中立位置に対応する操舵角θを0度とし、時計回り方向における操舵角θを正の値、反時計回り方向における操舵角θを負の値とすると、操舵角θは−180度〜180度の範囲を超えてに変化する。
そのため、データテーブルを構成する操舵角θおよび変位量dは、ステアリングホイール2の回転範囲の全域に対応したものとする必要がある。
前述したように変位量dは操舵角θ=360度を1つの周期として繰り返しの波形となるので、操舵角θが0度を下回る範囲および360度を上回る範囲については、操舵角θ=0度〜360度に対応する変位量dのデータを繰り返して使用してデータテーブルを作成すればよい。
ステアリングホイール2の回転範囲の全域に対応したデータテーブルが作成されたならば、データテーブルをデータテーブル手段24に格納する(ステップS24)。
以上でデータテーブルを作成してデータテーブル手段24に格納する処理が終了する。
【0024】
次に、操舵角検出装置10による操舵角θの検出動作について説明する。
予めステアリングホイール2がほぼ中立位置に位置し、したがって、操舵角θは0度近傍の値であるものとする。
この状態で、使用者が基準角度設定スイッチ20を操作することで、基準角度設定信号が操舵角検出手段28に供給される(ステップS30)。
【0025】
操舵角検出手段28は、基準角度設定信号を受け付けると、データテーブル手段24のデータテーブルを参照し、操舵角θ=0度近傍で、変位量検出手段12から供給される変位量dと合致するデータテーブル上の変位量dを特定する。そして、特定した変位量dに対応する操舵角θをデータテーブルから特定し、この特定した操舵角θ(基準角度)を示す操舵角データを出力する(ステップS32)。
【0026】
直近操舵角保持手段30は、ステップS32で特定された操舵角θを直近の操舵角θとして更新して保持する(ステップS34)。
変位量検出手段12は変位量dを検出する(ステップS36)。
回転方向検出手段14が回転方向を検出すると(ステップS38)、操舵角検出手段28は、検出された変位量dと、検出された回転方向と、直近の操舵角θとに基づいてデータテーブルを参照して現時点での操舵角dを特定し、該特定した操舵角dに対応する操舵角データを出力する(ステップS40)。
以下、ステップS34に戻って同様の処理を繰り返して行う。
【0027】
なお、ステアリングホイール2が回転されていない場合は、ステップS38において回転方向検出手段14で回転方向が検出されない。
この場合、ステップS40で特定される操舵角θは直近(直前)の値から変化しないため、同一の値の操舵角θが特定されることになる。
【0028】
ステップS40についてさらに説明する。
図4に示すように、データテーブル上において、1つの変位量dに対して複数の操舵角θが対応する。
したがって、本実施の形態では、直近の操舵角θを参照することで、複数の操舵角θの中から直近の操舵角θに近い操舵角θを的確に特定することができる。
また、操舵角θと変位量dとの関係を示す波形のピークに直近の操舵角θが対応する場合は、直近の操舵角θに対して操舵角θの正方向側と負方向側とに位置する2つの操舵角θA、θBのうちの何れを真の操舵角θとして特定すればよいかが問題となる。
本実施の形態では、回転方向検出手段14で検出される回転方向に基づいて2つの操舵角θA、θBのうちの一方を真の操舵角θとして的確に特定することができる。
【0029】
以上説明したように本実施の形態によれば、ステアリングホイール2の非円形部2Dの回転軸の半径方向における変位量dと、ステアリングホイール2の回転方向とを検出すると共に、変位量dと操舵角θとを対応付けたデータテーブルから操舵角θを特定して出力すると共に、操舵角θの特定は、検出された変位量dと、直近の操舵角θと、ステアリングホイール2の回転方向とに基づいて行うようにした。
したがって、非円形部2Dの変位量を検出する変位量検出手段12と、ステアリングホイール2の回転方向を検出する回転方向検出手段14とを、例えば車室内やステアリングホイール2に装着すれば足りるため、測定作業の容易化、コストダウンを図る上で有利となる。
すなわち、従来は、車両のステアリングホイールを操舵角計や操舵角力計を有する専用のステアリングホイールに交換したり、あるいは、車両の操舵機構に専用の測定装置を組み込んだりする必要がある。
そのため、前者の場合は、ステアリングの交換作業が煩雑なものとなることは無論のこと、高価な専用のステアリングホイールを用意するためにコストが掛かる不都合がある。また、後者の場合も、煩雑でコストがかかる作業が必要となる不都合がある。これに対して本実施の形態では、作業の容易化およびコストダウンを図る上で極めて有利となる。
【0030】
また、ステアリングホイール2が非円形部2Dを有していれば、どのような車両であっても煩雑な作業を行うことなく的確に操舵角データを得ることができるため、さまざまな車両を用いた評価試験を行う上で有利となる。
また、本実施の形態の装置および方法で得られる操舵角データの分解能と精度は、変位量検出手段12が検出する変位量の分解能と精度に依存する。
したがって、変位量検出手段12を適宜選択することにより必要な分解能と精度を有する操舵角データを得ることができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の変形例であり、車両の振動が変位量検出手段12で検出される変位量dに及ぼす影響を抑制するようにしたものである。
図7は第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の構成を示す説明図、図8は第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の制御系の構成を示すブロック図、図9は第2の実施の形態に係る操舵角検出装置40の動作フローチャートである。
なお、以下の実施の形態において第1の実施の形態と同一または同様の部分、部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図7、図8に示すように、操舵角検出装置40は、変位量検出手段12と、回転方向検出手段14と、操作部16と、データテーブル手段24と、データテーブル作成手段26と、操舵角検出手段28と、直近操舵角保持手段30とに加え、さらに、振動検出手段42と、誤差抑制手段44とを備える点が第1の実施の形態と異なっている。
【0033】
振動検出手段42は、車両の振動量を検出するものであり、インターフェース18Eに接続されている。
本実施の形態では、振動検出手段42が検出する振動量の方向は変位量検出手段12が検出する変位量の方向と合致している。このようにすることで誤差抑止手段44による変位量dの誤差の抑制をより効果的に行う上で有利となる。
振動検出手段42は、例えば車室内に固定されている。
振動検出手段42の車室内への固定は、変位量検出手段12と同様に、不図示の取り付け部材を介して運転席前方に位置するインスツルメントパネルに固定すればよく、振動検出手段42を固定する箇所や固定手段は任意である。
【0034】
振動検出手段42として従来公知のさまざまな加速度センサが使用可能である。
振動検出手段42として加速度センサを用いた場合は、加速度センサから出力される加速度を積分することにより振動量が得られる。
したがって、加速度センサに加速度を積分する回路を付加することにより振動検出手段42を構成してもよい。
あるいは、加速度センサから供給される加速度をECU18によって積分させることで振動量を検出するようにしてもよく、この場合は、加速度センサとECU18によって振動検出手段42が構成されることになる。
【0035】
誤差抑制手段44は、変位量検出手段12で検出された変位量dを、振動量vに基づいて補正することにより変位量dに含まれる振動量vに起因する誤差を抑制するものである。
誤差抑制手段44は、CPU18Aが前記制御プログラムを実行することにより実現されるものである。
【0036】
図10は車両の振動に起因するノイズが変位量検出手段12で検出された変位量dに重畳した状態を示す図、図11は振動検出手段42で検出された振動量vの図、図12は誤差抑制手段44によって変位量dのノイズが抑制された状態を示す図である。
車両で発生した振動は、車体を介して変位量検出手段12および非円形部2Dに伝達される。
したがって、図10に示すように、変位量検出手段12で検出される変位量dは振動に起因するノイズが重畳されたものとなる。
なお、図10乃至図12では説明をわかりやすくするため、車両振動が発生している環境下において、ステアリングホイール2を回転させて操舵角θを0度から360度に変化させた場合に検出される変位量d、振動量vを示している。
そして、図11に示すように、振動検出手段42では前記のノイズの原因となる振動量vが検出される。
誤差抑制手段44による変位量dに含まれる振動量vに起因する誤差の抑制は例えば次のように行われる。
すなわち、誤差抑制手段44は、図10に示すように変位量dにノイズが重畳した信号と、図11に示すように振動量vの信号とを演算することにより、図12に示すようなノイズが抑制された変位量dの波形を生成する。
前記の演算として具体的にどのような演算を行うかは任意であり、ノイズの抑制を行うための従来公知のさまざまな信号処理で使用される演算が使用可能である。
【0037】
次に、操舵角検出装置40の動作について図9のフローチャートを参照して説明する。
なお、データテーブル手段24に格納されるデータテーブルの作成に関する処理は第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
また、図9のステップS60、S62、S64、S66、S72、S74は、図6のステップS30、S32,S34,S36,S38,S40と同様の処理であるため説明を簡単に行う。
【0038】
予めステアリングホイール2がほぼ中立位置に位置した状態で、使用者が基準角度設定スイッチ20を操作することで、基準角度設定信号が操舵角検出手段28に供給される(ステップS60)。
操舵角検出手段28は、基準角度設定信号を受け付けると、データテーブル手段24のデータテーブルを参照し、操舵角θ=0度近傍で、変位量検出手段12から供給される変位量dと合致するデータテーブル上の変位量dを特定する。そして、特定した変位量dに対応する操舵角θをデータテーブルから特定し、この特定した操舵角θ(基準角度)を示す操舵角データを出力する(ステップS62)。
【0039】
直近操舵角保持手段30は、ステップS32で特定された操舵角θを直近の操舵角θとして更新して保持する(ステップS64)。
変位量検出手段12は変位量dを検出する(ステップS66)。
次いで、振動量検出手段42は振動量vを検出する(ステップS68:振動検出ステップ)。
次いで、誤差抑制手段44は変位量検出手段12で検出された変位量dを、振動量vに基づいて補正することにより変位量dに含まれる振動量vに起因する誤差を抑制する(ステップS70:誤差抑制ステップ)。
【0040】
回転方向検出手段14で回転方向が検出されると(ステップS72)、操舵角検出手段28は、前記の誤差が抑制された変位量dと、検出された回転方向と、直近の操舵角θとに基づいてデータテーブルを参照して現時点での操舵角θを特定し、該特定した操舵角θに対応する操舵角データを出力する(ステップS74)。
以下、ステップS64に戻って同様の処理を繰り返して行う。
【0041】
以上説明したように本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、車両の振動によって発生する変位量dの誤差を抑制するようにしたので、操舵角θの検出精度を向上させる上で有利となる。
【符号の説明】
【0042】
2……ステアリングホイール、2D……非円形部、10……操舵角検出装置、12……変位量検出手段、14……回転方向検出手段、24……データテーブル手段、28……操舵角検出手段、30……直近操舵角保持手段、40……操舵角検出装置、42……振動検出手段、44……誤差抑制手段、θ……操舵角、θ……直近の操舵角、d……変位量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向から見て前記回転軸の周りに非円形を呈する非円形部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出装置であって、
前記ステアリングホイールの回転に伴って変化する前記非円形部の前記回転軸の半径方向における変位量を検出する変位量検出手段と、
前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出手段と、
前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記変位量検出手段で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルを記憶するデータテーブル手段と、
前記データテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出手段と、
前記操舵角検出手段によって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持手段とを備え、
前記操舵角検出手段による前記操舵角の特定は、前記変位量検出手段で検出された変位量と、前記回転方向検出手段で検出された回転方向と、前記直近の操舵角とに基づいてなされる、
ことを特徴とする操舵角検出装置。
【請求項2】
前記変位量検出手段は、前記非円形部に対向する車室内の箇所に固定された非接触式の変位量センサで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の操舵角検出装置。
【請求項3】
前記回転方向検出手段は、前記ステアリングホイールに設けられ前記ステアリングホイールの回転方向の加速度を検出する加速度センサで構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の操舵角検出装置。
【請求項4】
前記車両の振動量を検出する振動検出手段と、
前記変位量検出手段で検出された前記変位量を、前記振動量に基づいて補正することにより前記変位量に含まれる前記振動量に起因する誤差を抑制する誤差抑制手段とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の操舵角検出装置。
【請求項5】
前記振動検出手段が検出する前記振動量の方向は前記変位量検出手段が検出する変位量の方向と合致している、
ことを特徴とする請求項4記載の操舵角検出装置。
【請求項6】
回転軸方向から見て前記回転軸の周りに非円形を呈する非円形部が設けられた車両のステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出方法であって、
前記ステアリングホイールの回転に伴って変化する前記非円形部の前記回転軸の半径方向における変位量を検出する変位量検出ステップと、
前記ステアリングホイールの回転方向を検出する回転方向検出ステップと、
前記ステアリングホイールの1回転にわたって実測された複数の操舵角と、該複数の操舵角のそれぞれに対応して前記変位量検出手段で検出された変位量とを対応付けたデータテーブルから操舵角を特定し該操舵角を示す操舵角データを出力する操舵角検出ステップと、
前記操舵角検出ステップによって新たな操舵角が特定される毎に、該操舵角を直近の操舵角として更新して保持する直近操舵角保持ステップとを含み、
前記操舵角検出ステップによる前記操舵角の特定は、前記変位量検出ステップで検出された変位量と、前記回転方向検出ステップで検出された回転方向と、前記直近の操舵角とに基づいてなされる、
ことを特徴とする操舵角検出方法。
【請求項7】
前記車両の振動量を検出する振動検出ステップと、
前記変位量検出ステップで検出された前記変位量を、前記振動量に基づいて補正することにより前記変位量に含まれる前記振動量に起因する誤差を抑制する誤差抑制ステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項6記載の操舵角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−214883(P2011−214883A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80898(P2010−80898)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】