説明

攪拌容器及びこの攪拌容器を用いた分析装置

【課題】液体の滞留部の発生を抑え、液体を均一に攪拌することが可能な攪拌容器及び分析装置を提供すること。
【解決手段】保持した微量の液体を音波を利用して攪拌すると共に、保持した前記液体の特性に関する測定を行う分析装置のための攪拌容器7及び分析装置。攪拌容器7は、液体Lsが気体に接触する気液界面を形成するように液体の形状を規制して保持する凹部PLと、凹部を規定し、所定の肉厚を有する側壁7b及び底壁7aを含む壁部と、壁部の外側に設けられ、凹部に保持される液体を攪拌する表面弾性波を発生させる表面弾性波素子21とを具備し、表面弾性波素子が出射する表面弾性波によって発生させられる液体中の流れの方向において、液体に接触する凹部に対応する壁部は、隣り合う面が曲面で接続されている、または隣り合う面が鈍角を成して接している、もしくは曲面で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持した液体を音波によって非接触で攪拌する攪拌容器及びこの攪拌容器を用いた分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、反応容器の小型化と検体間の汚染を回避するため、外部から反応容器に超音波を照射し、反応容器が保持している液体試料中に音響流を発生させて液体試料を非接触で攪拌混合するものが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第10325307号明細書
【特許文献2】特許第3168886号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、微量試料,微量試薬の要請が強くなっており、数μLオーダーの液体をも対象とした反応容器の更なる小型化や、そのための非接触攪拌手段における音波の一層の高周波化が必要となっている。この要請に応じるため、例えば、反応容器の深さをそのままにして底面積を小さくすることによって容積を小さくすると、反応容器は、保持する液体全体の容積に対する底部隅部分の容積の比率が相対的に高くなることが予想される。このとき、反応容器は、この底部隅部分の液体の攪拌を行えないと、反応容器に分注される試料及び試薬の比率と、実際に化学反応を起こす試料及び試薬の比率とが無視できない程に相違するようになる。このため、このようにして小型化した反応容器を用いると、分析装置は、試料の正確な分析が困難になることがあり得る。
【0005】
また、微量液体に対して非接触攪拌を行うために、より高周波である数十〜数百MHz以上の周波数の超音波を利用する場合、反応容器に保持される液体内で発生する流れは音響流によるものが支配的になる。このため、反応容器は、底部隅部分への音響流の回り込みによる当該部分の液体と他の部分の液体との十分な攪拌が期待できない。具体的には、図18に示すように、例えば、音波を発する表面弾性波素子Dsを直方体形状の容器の底壁Wbの外面に設けた場合、表面弾性波素子Dsが発生し、液体試料中に漏れ出した音波Waによって生じた音響流Fsが回り込まず、液体試料が攪拌されない滞留部Psが底部の四隅に生じてしまう。このような滞留部Psは、表面弾性波素子Dsを側壁外面に設けた場合でも同様に生じ、液体試料がμLオーダーのような微量な反応容器に滞留部Psが生ずると、滞留部Psにおける液体試料の攪拌が阻害される。このため、例えば、試薬の一部が検体と攪拌されずに残ってしまう等、検体の正確な測定を妨げる要因となる。このため、特に数十〜数μL以下の液体を攪拌対象として扱う分析装置の反応容器においては、このような滞留部Psの発生またはその大きさを抑制することが重要となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液体の滞留部の発生を抑え、液体を均一に攪拌することが可能な攪拌容器及び分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る攪拌容器は、保持した微量の液体を音波を利用して攪拌すると共に、保持した前記液体の特性に関する測定を行う分析装置のための攪拌容器であって、前記液体が気体に接触する気液界面を形成するように前記液体の形状を規制して保持する凹部と、前記凹部を規定し、所定の肉厚を有する側壁及び底壁を含む壁部と、前記壁部の外側に設けられ、前記凹部に保持される前記液体を攪拌する表面弾性波を発生させる音波発生手段と、を具備し、前記音波発生手段が出射する前記表面弾性波によって発生させられる前記液体中の流れの方向において、前記液体に接触する前記凹部に対応する前記壁部は、隣り合う面が曲面で接続されている、または当該隣り合う面が鈍角を成して接している、もしくは曲面で構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記壁部外側の平面部分に接触して配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記壁部外側の平面部分に固定されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、当該音波発生手段の音波を発生する部分に対応する前記壁部の肉厚が一定となる位置に配置されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記壁部の側壁または底壁に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、圧電基板と、当該圧電基板上に形成される櫛歯電極とを有する表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記凹部の水平面への投影像は、前記気液界面より前記底壁側における当該凹部の水平方向の総ての断面を含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記気液界面が形成される部分より少なくとも前記底壁側の前記側壁は、前記底壁に向かって水平方向における前記凹部の断面積が単調減少するように構成されている部分を有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記凹部は、前記気液界面が形成される部分よりも前記底壁側の部分が占める空間が、当該空間に含まれる任意の2点を結ぶ総ての線分を含む凸形状であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項10に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記壁部は、その外形が直方体または角柱であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項11に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記壁部は、その外形が直方体または角柱になるように、その肉厚が異なる部分を有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項12に係る攪拌容器は、上記の発明において、さらに、前記気液界面よりも前記底壁側に設けられ、互いに平行な一組の側壁と、前記平行な一組の側壁の一部に設けられると共に、前記平行な一組の側壁に対して垂直な方向から前記凹部に保持された前記液体の特性を測定する所定波長の光が入射される測光部と、を有することを特徴とする。
【0019】
また、請求項13に係る攪拌容器は、上記の発明において、前記測光部が設けられた前記平行な一組の側壁と、前記液体中に発生させられる流れの方向において前記隣り合う面が曲面で接続されている壁部または前記隣り合う面が鈍角で接続されている壁部もしくは前記曲面で構成される壁部とは、直交することを特徴とする。
【0020】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項14に係る分析装置は、検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させ、反応させた反応液を分析する分析装置であって、前記攪拌容器を用いて検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させ、その反応させた反応液を分析することを特徴とする。
【0021】
また、請求項15に係る分析装置は、上記の発明において、前記攪拌容器を複数個並べて前記液体試料の分析を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる攪拌容器及びこの攪拌容器を用いた分析装置は、攪拌容器に保持される液体の滞留部となり得る部分の容積を抑制または低減するため、より微量な液体に対しても均一に攪拌することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌容器及びこの攪拌容器を用いた分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の分析装置の実施の形態1を示す自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で用いる本発明の攪拌容器に係る反応容器の斜視図である。図3は、図2に示す反応容器の平面図である。図4は、反応容器が保持した液体を攪拌する攪拌装置を図3の反応容器をC−C線に沿って破断して示す概略構成図である。
【0024】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応テーブル6及び試薬テーブル15が互いに離間してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられている。また、自動分析装置1は、検体テーブル3と反応テーブル6との間に検体分注機構5が設けられ、反応テーブル6と試薬テーブル15との間には試薬分注機構13が設けられている。
【0025】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0026】
検体分注機構5は、検体を後述する反応容器7に分注する手段であり、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次後述する反応容器7に分注する。
【0027】
反応テーブル6は、図1に示すように、駆動手段(図示せず)によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室6aが複数設けられている。各収納室6aは、攪拌容器として検体を試薬と反応させる反応容器7が着脱自在に収納される。また、反応テーブル6には、光源8及び排出装置11が設けられている。光源8は、試薬と検体とが反応した反応容器7内の液体試料を分析するための分析光(340〜800nm)を出射する。光源8から出射された分析用の光ビームは、反応容器7内の液体試料を透過し、光源8と対向する位置に設けた受光素子9によって受光される。受光素子9は、判断部18を介して分析部19に接続されている。分析部19は、反応容器7内の液体試料の吸光度に基づいて検体の成分や濃度等を分析する。一方、排出装置11は、図示しない排出ノズルを備えており、反応容器7から反応終了後の液体試料を前記排出ノズルによって吸引し、排出容器(図示せず)に排出する。ここで、排出装置11を通過した反応容器7は、図示しない洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0028】
試薬分注機構13は、試薬を反応容器7に分注する手段であり、後述する試薬テーブル15の所定の試薬容器16から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0029】
試薬テーブル15は、図1に示すように、図示しない駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室15aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室15aは、試薬容器16が着脱自在に収納される。複数の試薬容器16は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0030】
ここで、試薬テーブル15の外周部には、試薬容器16に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、判断部18へ出力する読取装置17が設置されている。判断部18は、受光素子9,排出装置11及び読取装置17と接続され、例えば、マイクロコンピュータ等が使用される。
【0031】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転する反応テーブル6によって周方向に沿って搬送されてくる反応容器7に検体分注機構5が検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次分注する。検体が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって試薬分注機構13の近傍へ搬送されて所定の試薬容器16から試薬が分注される。そして、試薬が分注された反応容器7は、反応テーブル6によって周方向に沿って搬送される間に試薬と検体とが攪拌されて反応し、光源8と受光素子9との間を通過する。このとき、反応容器7内の液体試料は、受光素子9によって測光され、分析部19によって成分や濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、排出装置11によって反応終了後の液体試料が排出されて図示しない洗浄装置によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。従って、自動分析装置1は、反応容器7を反応テーブル6に複数個並べて液体試料の分析を行う。
【0032】
このとき、自動分析装置1は、反応テーブル6によって周方向に沿って搬送される反応容器7内の液体試料を攪拌装置によって攪拌し、試薬と検体とを反応させる。この液体試料の攪拌に用いる反応容器7を攪拌装置と共に以下に説明する。
【0033】
反応容器7は、光源8から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過し、液体との親和性、例えば、親水性が高い素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラスが使用される。反応容器7は、図2に示すように、底壁7aと側壁7bとによって水平断面の外形が四角形からなり、上部に液体注入用の開口7cを有する四角柱状に成形された容器であり、底壁7aの内面と側壁7bの内面とによって囲まれる液体保持部PLの内面上部には所定量の液体試料によって下に凸のメニスカスが接する液面接触領域AMを有している。本明細書において、液体保持部PLは、液体試料が気体に接触する気液界面を形成するように液体試料の形状を規制して保持する凹部であり、気液界面以下の部分をいう。また、壁部は、液体保持部PLを規定する部分をいい、所定の肉厚を有する底壁7aと側壁7bとを含んでいる。底壁7aと側壁7bの内面は、音波によって液体中に発生する音響流の流線と略並行に形成されている。側壁7bは、内面の液面接触領域AMが水平方向(液体保持部PLの深さ方向に直交する方向)に湾曲する曲面FCと鉛直面FPからなり、曲面FCと鉛直面FPが交互に接している。このため、壁部、即ち、側壁7bは、図2及び図3に示すように、肉厚の異なる部分が存在し、底壁7aを含めた外形が直方体である。また、反応容器7は、液面接触領域AMの下部に形成される凹部Pdの内底面7dが測光部ALを透過する分析用の光ビームの断面形状に対応した形に湾曲している。ここで、互いに平行な一組の側壁7bは、液面接触領域AM下部の互いに対向する1点鎖線で示す部分が、光源8から出射された分析用の光ビームが透過し、液体試料を光学測定する測光部ALとして利用される。このため、反応容器7は、測光部ALが設けられた平行な一組の側壁7bと、隣り合う面が曲面FCで接続されている鉛直面FPとは直交している。
【0034】
このとき、反応容器7は、水平方向の断面積が鉛直方向に沿って大きく変化することがないように、液体保持部PLの水平面への投影像が、気液界面より底壁7a側における液体保持部PLの水平方向の総ての断面を含むように成形されている。このため、液体保持部PLは、気液界面が形成される部分よりも底壁7a側の部分が占める空間が、この空間に含まれる任意の2点を結ぶ総ての線分を含む凸形状となる。また、測光部ALは、水平方向の断面積が液面接触領域AM内の水平方向の断面積に比べて小さくなるように設定されている。そして、液面接触領域AMは、水平方向に湾曲する曲面FCの曲率が、測光部ALの水平方向の断面における曲率に比べて小さく設定されている。このため、液面接触領域AMは、側壁7bが90°で接する従来の反応容器に比べ、液体試料のメニスカスが接する四隅の部分が水平方向に湾曲していることから、この湾曲した曲面FCにおけるメニスカスの急峻な立ち上がりが抑えられる。
【0035】
攪拌装置20は、試薬分注機構13が反応容器7に試薬を分注する位置と互いに対向配置される光源8,受光素子9との間の収納室6a下部に配置されており、図4に示すように、表面弾性波素子21、電源22、コントローラ23及び音響整合層24を有している。
【0036】
表面弾性波素子21は、音波発生手段であり、図4及び図5に示すように、ニオブ酸リチウム等の圧電基板21aの表面に金等の櫛型電極(IDT)からなる振動子21bが設けられている。振動子21bは、電源22から送電された電力を表面弾性波(音波)に変換し、図4に示すように、音響整合層24を介して側壁7b外側の平面部分に取り付けられる。このとき、表面弾性波素子21は、音波を発生する部分である振動子21bに対応する側壁7bの肉厚が一定となる位置に配置される。また、振動子21bは、図5に示すように、電気端子21cとの間が導体回路21dによって接続されている。表面弾性波素子21は、振動子21bとして櫛型電極(IDT)を使用するので、構造が簡単で小型な構成とすることができる。ここで、表面弾性波素子21は、図4に点線で示すように、反応容器7の底壁7aの外面や、実線で示す表面弾性波素子21を取り付けた側壁7bと対向する側壁7bの外面に取り付けてもよい。
【0037】
電源22は、図4に示すように、電気端子21cとの間が配線25によって接続され、数MHz〜数百MHz程度の高周波の交流を表面弾性波素子21に供給する。コントローラ23は、電源22を制御して表面弾性波素子21が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。音響整合層24は、反応容器7と表面弾性波素子21との間の音響インピーダンスを最適化する手段で、エポキシ樹脂等の接着剤やシェラック等の他、ジェルや液体等を使用することができる。音響整合層24は、音波の伝達効率を上げるため、表面弾性波素子21が発する周波数の波長λに対して厚みがλ/4となるように調整する。または、音響整合層24は、できるだけ薄くなるように調整する。
【0038】
従って、反応容器7は、保持した液体試料が攪拌装置20によって以下のように攪拌される。先ず、攪拌装置20は、コントローラ23による制御の下に電源22から供給される電力によって表面弾性波素子21を駆動する。これにより、図5の表面弾性波素子21において、振動子21bが音波を誘起する。誘起された音波は、圧電基板21a内部及び音響整合層24を通って反応容器7の側壁7bへと伝搬し、図4に示すように、音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ矢印で示す音波Waが側壁7bの内面から斜め上方及び下方に漏れ出してゆく。
【0039】
この結果、液体試料Lsには、図4に示すように、音波Waによって反時計方向の音響流Fccと時計方向の音響流Fcwとが生じる。このとき、反応容器7は、凹部Pdが内底面7dに亘って音響流Fcwの流線と略並行に形成されているため、底部の四隅に滞留部が発生することがないので、保持した液体試料Lsを残らず攪拌することができる。しかも、反応容器7は、内面の液面接触領域AMがメニスカスMにおいて水平方向に湾曲する曲面FCと鉛直面FPからなり、曲面FCと鉛直面FPが交互に接している。このとき、メニスカスMが、液体試料Lsが気体に接触する気液界面である。このため、液体試料Lsは、図4に示すように、曲面FPの部分で接するメニスカスMの急峻な立ち上がりが抑えられ、実線で示すように平坦に近くなるので、均一に攪拌される。
【0040】
従って、反応容器7は、攪拌効率に優れ、非接触にも拘わらず、保持した液体試料Lsが短時間で均一に攪拌される。ここで、図4において、破線は従来の反応容器におけるメニスカスを示しており、以下の説明においても同様とする。また、反応容器7は、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納して使用されるので、従来の自動分析装置にもそのまま使用することができる。
【0041】
一方、反応容器7は、底壁7aと側壁7bの内面が音波Waによって液体試料Ls中に発生する音響流の流線と略並行に形成されていれば、図6に示すように、測光部ALが形成された側壁7bと隣り合う側壁7b内面に、底壁7aの内底面Fbに対して鈍角となる角度θで接する傾斜面7eを設けても、音響流を傾斜面7eと内底面Fbとによって案内し、攪拌効率を向上させることができる。また、図7に示す反応容器7のように、液面接触領域AMを構成する各曲面FCと各鉛直面FPを下方へ延長すると共に、内底面Fbを測光部ALを透過する分析用の光ビームの断面の半径と略同じ球面からなる湾曲面としても、同様の効果が得られる。従って、図8に示す反応容器28のように、液面接触領域AMを鉛直面FPと反応容器7の曲面FCよりも大きい曲面FBCとによって構成してもよい。このとき、反応容器28は、内底面Fbが測光部ALが形成された側壁28bに隣接する側壁28c側から対向する側壁28cに向かって下に凸の湾曲面に成形されている。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る攪拌容器を図9及び図10を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の反応容器は、液面接触領域が水平方向に湾曲する曲面と鉛直面からなっていたのに対し、実施の形態2の反応容器は、液面接触領域が水平方向に湾曲する曲面からなる。図9は、実施の形態2に係る反応容器を示す斜視図である。図10は、図9に示す反応容器の縦断面図である。
【0043】
反応容器30は、反応容器7と同様の素材から成形され、図9に示すように、底壁30aと側壁30bとによって水平断面の外形が円形からなり、上部に液体注入用の開口30cを有する円柱状に成形されている。反応容器30は、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納して使用され、底壁30aと側壁30bとによって囲まれる液体保持部PLの内面上部には所定量の液体試料によって下に凸のメニスカスが接する液面接触領域AMを有している。底壁30aは、図9及び図10に示すように、内底面Fbの中央が音波によって液体試料Ls中に生ずる音響流の流線と略並行する下に凸の球面状に窪んでいる。このため、底壁30aは、肉厚の異なる部分が存在する。また、底壁30aは、外側の平面部分に表面弾性波素子21が取り付けられている。一方、側壁30bは、図9に示すように、内面の液面接触領域AMが水平方向に湾曲する曲面である。
【0044】
このとき、反応容器30は、底壁30aの内底面Fbの中央が下に凸の球面状に窪んでいるので、鉛直方向の音響流は内底面Fに案内されて円滑に流れ、内底面が平坦な従来の反応容器に比べると滞留部の発生が抑えられる。また、反応容器30は、水平方向の断面積が鉛直方向に大きく変化することがないように、液体保持部PLの水平面への投影像が、気液界面より底壁30a側における液体保持部PLの水平方向の総ての断面を含むように成形されている。このため、液体保持部PLは、気液界面が形成される部分よりも底壁30a側の部分が占める空間が、この空間に含まれる任意の2点を結ぶ総ての線分を含む凸形状となる。そして、液面接触領域AMは、内面が水平方向に湾曲しているので、側壁が90°で接する従来の四角柱形状の反応容器に比べ、図10に示すように、液体試料のメニスカスの急峻な立ち上がりが抑えられる。
【0045】
そして、反応容器30は、攪拌装置20によって表面弾性波素子21を駆動すると、図5に示す振動子21bに誘起された音波が圧電基板21a内部及び音響整合層24を通って反応容器30の底壁30aへと伝搬し、図10に示すように、音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ矢印で示す音波Waが底壁30aの内底面Fbから斜め上方に漏れ出してゆく。
【0046】
この結果、液体試料Lsには、図10に示すように、音波WaによってメニスカスMまで到達する反時計方向の音響流Fccと時計方向の音響流Fcwとが生じる。このとき、反応容器30は、図10に示すように、内底面Fbの中央が音響流Fcc,Fcwの流線と略並行する下に凸の球面状に窪んでいるうえ、液面接触領域AMにおけるメニスカスMの急峻な立ち上がりが抑えられ、実線で示すように平坦に近くなっている。
【0047】
従って、反応容器30及び攪拌装置20を用いた自動分析装置1は、図10に示すように、内底面Fbが音響流Fcc,Fcwに起因する流れを円滑に案内すると共に、メニスカスMが平坦に近くなっているため、音響流Fcc,Fcwが液面接触領域AMとメニスカスMとが接する部分に入り込み易くなるので、液体試料Lsを底部からメニスカスMに至る広範囲に亘って非接触で均一に攪拌することができる。また、反応容器30は、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納できるので、従来の自動分析装置のキュベットを収納する収納室にも配置してそのまま使用することができる。
【0048】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る反応容器を図11及び図12を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の反応容器は、液面接触領域が水平方向に湾曲する曲面と鉛直面からなっていたのに対し、実施の形態3の反応容器は、液面接触領域が上方に向かって外方に開く一組の傾斜側壁を有している。図11は、実施の形態3に係る反応容器を示す斜視図である。図12は、図11に示す反応容器の縦断面図である。
【0049】
反応容器34は、反応容器7と同様の素材から成形され、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納して使用される。反応容器34は、図11に示すように、底壁34aと、互いに平行な一組の平行側壁34bと、平行側壁34bに隣り合う一組の傾斜側壁34cとを備えており、上部に液体注入用の開口34dを有している。反応容器34は、底壁34a、一組の平行側壁34b及び一組の傾斜側壁34cによって囲まれる液体保持部PLの内面上部には所定量の液体試料によって下に凸のメニスカスMが接する液面接触領域AMを有している。
【0050】
底壁34aは、外側の平面部分に表面弾性波素子21が取り付けられている。互いに平行な一組の平行側壁34bは、液面接触領域AM下部の互いに対向する1点鎖線で示す部分が、光源8から出射された分析用の光ビームが透過し、液体試料を光学測定する測光部ALとして利用される。一組の傾斜側壁34cは、一組の開き側壁であり、図12に示すように、底壁34aの内面に対して鈍角となる角度θ傾斜させて平行側壁34bに隣り合う側壁であり、鉛直面に対して傾斜することにより内面の液面接触領域AMが上方に向かって外方に開いている。このため、反応容器34は、底壁34aと傾斜側壁34cの内面が音響流Fcc,Fcwの流線と略並行すると共に、傾斜側壁34cと接する液体試料LsのメニスカスMが、側壁が鉛直である従来の反応容器に比べて平坦になる。ここで、表面弾性波素子21は、図12に点線で示すように、傾斜側壁34c外側の平面部分に取り付けてもよい。
【0051】
このとき、反応容器34は、水平方向の断面積が鉛直方向に大きく変化することがないように、開口34cの水平面への投影像は、液体保持部PLの任意の水平断面における水平面への投影像を含むように成形されている。このため、液体保持部PLは、気液界面が形成される部分よりも底壁34a側の部分が占める空間が、この空間に含まれる任意の2点を結ぶ総ての線分を含む凸形状となる。また、反応容器34は、メニスカスMが形成される部分より少なくとも底壁34a側が底壁34aに向かって水平方向における液体保持部PLの断面積が単調減少するように構成されている傾斜側壁34cを有している。
【0052】
従って、反応容器34は、攪拌装置20によって表面弾性波素子21を駆動すると、振動子21bに誘起された音波が圧電基板21a内部及び音響整合層24を通って反応容器34の底壁34aへと伝搬し、図12に示すように、音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ矢印で示す音波Waが底壁34aの内底面から斜め上方に漏れ出してゆく。
【0053】
この結果、液体試料Lsには、図12に示すように、音波WaによってメニスカスMまで到達する反時計方向の音響流Fccと時計方向の音響流Fcwとが生じる。このとき、反応容器34は、図12に示すように、傾斜側壁34cが底壁34aの内面に対して鈍角となる角度θ傾斜し、底壁34aと傾斜側壁34cの内面が音響流Fcc,Fcwの流線と略並行に形成されている。このため、反応容器34は、生じた音響流Fcc,Fcwが底壁34aと傾斜側壁34cとがなす鈍角の内面に案内されて流れるので滞留部を生ずることがない。また、液体試料Lsは、図12に示すように、傾斜側壁34cと接する液体試料LsのメニスカスMが実線で示すように平坦に近くなり、液面接触領域AMとメニスカスMとが接する部分に音響流Fcc,Fcwが入り込み易くなる。
【0054】
従って、図12に示すように、反応容器34及び攪拌装置20を用いた自動分析装置1は、これら2つの音響流Fcc,Fcwによって液体試料Lsを底部からメニスカスMに至る広範囲に亘って非接触で均一に攪拌することができる。また、反応容器34は、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納できるので、従来の自動分析装置のキュベットを収納する収納室にも配置してそのまま使用することができる。
【0055】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4に係る反応容器を図13〜図15を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態3の反応容器は、音波発生手段として表面弾性波素子を使用していたのに対し、実施の形態4の反応容器は、厚み縦振動子を音波発生手段として使用している。図13は、音波発生手段として厚み縦振動子を用いた攪拌装置を反応容器と共に示す断面図である。
【0056】
反応容器34は、図13に示すように、底壁34aの外面に音響整合層45を介して取り付けられる攪拌装置40によって液体保持部PLに保持した液体試料が攪拌される。攪拌装置40は、図15に示すように、厚み縦振動子41、電源42、コントローラ43及び音響整合層45を有している。
【0057】
厚み縦振動子41は、板面に垂直に音波を発生する音波発生部材であり、図13に示すように、底壁34a外側の平面部分に取り付けられる。厚み縦振動子41は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電基板41aの両面に電極41bを設けたもので、各電極41bには、引出し電極41cが接続されている。このとき、反応容器34は、厚み縦振動子41を側壁34c外側の平面部分(点線参照)に取り付けてもよい。電源42は、厚み縦振動子41を駆動する交流電源であり、図15に示す配線44を介して電極41bに数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電圧を印加する。
【0058】
コントローラ43は、電源42を制御して電極41bが発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。音響整合層45は、反応容器34と厚み縦振動子41との間の音響インピーダンスを最適化する手段で、エポキシ樹脂等の接着剤やシェラック等の他、ジェルや液体等を使用することができる。音響整合層45は、音波の伝達効率を上げるため、厚み縦振動子41が発する周波数の波長λに対して厚みがλ/4となるように調整する。または、音響整合層45は、できるだけ薄くなるように調整する。
【0059】
従って、反応容器34は、攪拌装置40によって保持した液体試料が以下のように攪拌される。先ず、攪拌装置40は、コントローラ43による制御の下に電源42から供給する電力によって厚み縦振動子41を駆動する。これにより、厚み縦振動子41は、図13〜図15に示す電極41bが音波を誘起する。誘起された音波は、音響整合層45を通って反応容器34の底壁34aへと伝搬し、図13に示すように、音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ矢印で示す音波Waが底壁34aの中央から上方に漏れ出してゆく。
【0060】
この結果、液体試料Lsには、音波WaによってメニスカスMまで到達する反時計方向の音響流Fccと時計方向の音響流Fcwとが生じる。このとき、反応容器34は、図13に示すように、傾斜側壁34cが底壁34aの内面に対して鈍角となる角度θ傾斜し、底壁34aと傾斜側壁34cの内面が音響流Fcc,Fcwの流線と略並行に形成されている。このため、反応容器34は、生じた音響流Fcc,Fcwが底壁34aと傾斜側壁34cとがなす鈍角の内面に案内されて流れるので滞留部を生ずることがない。また、液体試料Lsは、図13に示すように、傾斜側壁34cと接する液体試料LsのメニスカスMが実線で示すように平坦に近くなり、液面接触領域AMとメニスカスMとが接する部分に音響流Fcc,Fcwが入り込み易くなる。
【0061】
従って、図13に示すように、音波発生手段として厚み縦振動子を用いた反応容器34及び攪拌装置40を用いた自動分析装置1は、音響流Fcc,Fcwによって液体試料Lsを底部からメニスカスMに至る広範囲に亘って非接触で均一に攪拌することができる。
【0062】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5に係る反応容器を図16及び図17を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1〜4の反応容器は、保持した液体試料を攪拌する音波発生手段を反応容器に接して設けていたのに対し、実施の形態5の反応容器は、音波発生手段が離れた位置に設けられている。図16は、実施の形態5に係る反応容器を示す断面図である。図17は、実施の形態5に係る反応容器の他の例を示す断面図である。
【0063】
実施の形態5の反応容器は、実施の形態1の反応容器7を使用したものであり、反応容器7は、ホルダ37に収容されている。ホルダ37は、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納され、内側壁37aには厚み縦振動子41が設けられている。また、ホルダ37は、水や恒温液等の音響整合材38を介して反応容器7を収容している。従って、反応容器7は、厚み縦振動子41が接触することなく離れた位置に設けられている。
【0064】
従って、実施の形態5の反応容器7は、コントローラ43による制御の下に攪拌装置40によって厚み縦振動子41を駆動すると、厚み縦振動子41に誘起された音波は、音響整合材38を伝搬して反応容器7の外面から側壁7bに入射する。側壁7bに入射した音波は、側壁7b内を伝搬した後、図16に示すように、側壁7bから音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ矢印で示す音波Waが水平方向に漏れ出す。
【0065】
この結果、反応容器7は、音波WaによってメニスカスMまで到達する時計方向に流れる音響流Fcwと、内底面7dの湾曲に沿って流れる反時計方向の音響流Fccとが液体試料Ls中に生じる。このとき、反応容器7は、図16に示すように、底壁7aと側壁7bの内面が音波によって液体中に発生する音響流Fccの流線と略並行に形成されている。このため、反時計方向の音響流Fccは、内底面7dに案内されて円滑に流れ、滞留部の発生が抑えられる。従って、反応容器7は、攪拌効率に優れ、非接触にも拘わらず、保持した液体試料Lsが短時間で均一に攪拌される。
【0066】
しかも、反応容器7は、図16に示すように、図4,図10及び図12等と同様に、液体試料LsのメニスカスMが平坦になるので、音響流Fcc,Fcwが液面接触領域AMとメニスカスMとが接する部分に入り込み易い。このため、実施の形態5の反応容器7及び攪拌装置40を用いた自動分析装置1は、これらの音響流Fcc,Fcwによって液体試料Lsを底部からメニスカスMに至る広範囲に亘って非接触で均一に攪拌することができる。
【0067】
このように、実施の形態5の反応容器は、厚み縦振動子41を反応容器7から離れた位置に設けるので、図17に示すように、実施の形態3の反応容器34を用いることもできる。このとき、ホルダ37は、図17に示すように、内底壁37bに厚み縦振動子41を設ける。
【0068】
実施の形態5の反応容器を図17に示す構成にすると、反応容器34は、攪拌装置40によってコントローラ43による制御の下に厚み縦振動子41を駆動した場合、厚み縦振動子41に誘起された音波は、音響整合材38を伝搬して反応容器34の外面から底壁34aに入射する。底壁34aに入射した音波は、底壁34a内を伝搬した後、図17に示すように、底壁34aから音響インピーダンスが近い液体試料Ls中へ矢印で示す音波Waが上方に漏れ出す。
【0069】
この結果、反応容器34は、音波WaによってメニスカスMまで到達する時計方向に流れる音響流Fcwと反時計方向の音響流Fccとが液体試料Ls中に生じる。このとき、反応容器34は、図17に示すように、傾斜側壁34cが底壁34aの内面に対して鈍角となる角度θ傾斜し、底壁34aと傾斜側壁34cの内面が音響流Fcc,Fcwの流線と略並行に形成されている。このため、反応容器34は、生じた音響流Fcc,Fcwが底壁34aと傾斜側壁34cとがなす鈍角の内面に案内されて流れるので滞留部を生ずることがない。また、液体試料Lsは、図17に示すように、傾斜側壁34cと接する液体試料LsのメニスカスMが実線で示すように平坦に近くなり、液面接触領域AMとメニスカスMとが接する部分に音響流Fcc,Fcwが入り込み易くなる。
【0070】
このため、実施の形態5の反応容器34及び攪拌装置40を用いた自動分析装置1は、これらの音響流Fcc,Fcwによって液体試料Lsを底部からメニスカスMに至る広範囲に亘って非接触で均一に攪拌することができる。また、ホルダ37は、反応テーブル6に設けた収納室6aに収納できるので、実施の形態5の反応容器7,34は、従来の自動分析装置でも使用することができる。
【0071】
このように、実施の形態5の反応容器7,34及び攪拌装置40を用いた自動分析装置1は、厚み縦振動子41を反応容器7,34から離れた位置に設けるので、攪拌装置40や自動分析装置1の機械的な設計上の自由度が増すという利点がある。
【0072】
尚、実施の形態1〜5は、攪拌容器として反応容器について説明したが、保持したμLオーダーの微量な液体を攪拌する容器であれば、反応容器に限定されるものではなく、試薬容器その他の容器として使用することができる。
【0073】
また、実施の形態1〜5においては、容器外形(容器壁部外形)の水平断面は、製造し易く或いは列にして並べ易い正方形又は長方形になるような容器を例示して本発明の反応容器を説明した。しかし、本発明の反応容器は、前記容器外形の水平方向の断面が四角形に限らず、五以上の角を有する多角形(例えば、六角形)であってもよい。即ち、本発明の反応容器は、容器内部での滞留部の発生が抑制されるように、容器の壁部が構成されていれば、容器外形が直方体(四角柱)に限らず、適宜、六角柱や八角柱等、他の角柱形状を構成していても問題ない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の分析装置の実施の形態1を示す自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1の自動分析装置で用いる本発明の攪拌容器に係る反応容器の斜視図である。
【図3】図2に示す反応容器の平面図である。
【図4】反応容器が保持した液体を攪拌する攪拌装置と図3の反応容器の概略構成図である。
【図5】実施の形態1に係る反応容器に保持した液体を攪拌する攪拌装置で使用する音波発生手段を示す斜視図である。
【図6】実施の形態1に係る反応容器の第1の変形例を示す斜視図である。
【図7】実施の形態1に係る反応容器の第2の変形例を示す斜視図である。
【図8】実施の形態1に係る反応容器の第3の変形例を示す斜視図である。
【図9】実施の形態2に係る反応容器を示す斜視図である。
【図10】図9に示す反応容器の縦断面図である。
【図11】実施の形態3に係る反応容器を示す斜視図である。
【図12】図11に示す反応容器の縦断面図である。
【図13】実施の形態4に係る反応容器を示し、保持した液体を攪拌する攪拌装置を反応容器と共に示す断面図である。
【図14】図13の攪拌装置の音波発生手段を底面側から見た底面図である。
【図15】図13の攪拌装置の概略構成図である。
【図16】実施の形態5に係る反応容器を示す断面図である。
【図17】実施の形態5に係る反応容器の他の例を示す断面図である。
【図18】従来の攪拌容器として用いられている反応容器の断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
3a 収納室
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応テーブル
6a 収納室
7 反応容器
7a 底壁
7b 側壁
8 光源
9 受光素子
11 排出装置
13 試薬分注機構
15 試薬テーブル
16 試薬容器
17 読取装置
18 判断部
19 分析部
20 攪拌装置
21 表面弾性波素子
21a 圧電基板
21b 振動子
22 電源
23 コントローラ
24 音響整合層
28,30 反応容器
28a,30a 底壁
28b,30b 側壁
28c 側壁
34 反応容器
34a 底壁
34b 平行側壁
34c 傾斜側壁
37 ホルダ
38 音響整合材
40 攪拌装置
41 厚み縦振動子
41a 圧電基板
41b 電極
41c 引出し電極
42 電源
43 コントローラ
45 音響整合層
AL 測光部
AM 液面接触領域
FBC 曲面
Fb 内底面
FC 曲面
Fcc,Fcw 音響流
FP 鉛直面
M メニスカス
PL 液体保持部
Wa 音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持した微量の液体を音波を利用して攪拌すると共に、保持した前記液体の特性に関する測定を行う分析装置のための攪拌容器であって、
前記液体が気体に接触する気液界面を形成するように前記液体の形状を規制して保持する凹部と、
前記凹部を規定し、所定の肉厚を有する側壁及び底壁を含む壁部と、
前記壁部の外側に設けられ、前記凹部に保持される前記液体を攪拌する表面弾性波を発生させる音波発生手段と、を具備し、
前記音波発生手段が出射する前記表面弾性波によって発生させられる前記液体中の流れの方向において、前記液体に接触する前記凹部に対応する前記壁部は、隣り合う面が曲面で接続されている、または当該隣り合う面が鈍角を成して接している、もしくは曲面で構成されていることを特徴とする攪拌容器。
【請求項2】
前記音波発生手段は、前記壁部外側の平面部分に接触して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の攪拌容器。
【請求項3】
前記音波発生手段は、前記壁部外側の平面部分に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の攪拌容器。
【請求項4】
前記音波発生手段は、当該音波発生手段の音波を発生する部分に対応する前記壁部の肉厚が一定となる位置に配置されることを特徴とする請求項2に記載の攪拌容器。
【請求項5】
前記音波発生手段は、前記壁部の側壁または底壁に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の攪拌容器。
【請求項6】
前記音波発生手段は、圧電基板と、当該圧電基板上に形成される櫛歯電極とを有する表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌容器。
【請求項7】
前記凹部の水平面への投影像は、前記気液界面より前記底壁側における当該凹部の水平方向の総ての断面を含むことを特徴とする請求項1に記載の攪拌容器。
【請求項8】
前記気液界面が形成される部分より少なくとも前記底壁側の前記側壁は、前記底壁に向かって水平方向における前記凹部の断面積が単調減少するように構成されている部分を有することを特徴とする請求項7に記載の攪拌容器。
【請求項9】
前記凹部は、前記気液界面が形成される部分よりも前記底壁側の部分が占める空間が、当該空間に含まれる任意の2点を結ぶ総ての線分を含む凸形状であることを特徴とする請求項7に記載の攪拌容器。
【請求項10】
前記壁部は、その外形が直方体または角柱であることを特徴とする請求項1に記載の攪拌容器。
【請求項11】
前記壁部は、その外形が直方体または角柱になるように、その肉厚が異なる部分を有することを特徴とする請求項10に記載の攪拌容器。
【請求項12】
さらに、前記気液界面よりも前記底壁側に設けられ、互いに平行な一組の側壁と、
前記平行な一組の側壁の一部に設けられると共に、前記平行な一組の側壁に対して垂直な方向から前記凹部に保持された前記液体の特性を測定する所定波長の光が入射される測光部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の攪拌容器。
【請求項13】
前記測光部が設けられた前記平行な一組の側壁と、前記液体中に発生させられる流れの方向において前記隣り合う面が曲面で接続されている壁部または前記隣り合う面が鈍角で接続されている壁部もしくは前記曲面で構成される壁部とは、直交することを特徴とする請求項12に記載の攪拌容器。
【請求項14】
検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させ、反応させた反応液を分析する分析装置であって、請求項1〜13のいずれか一つに記載の攪拌容器を用いて検体と試薬とを含む液体試料を攪拌して反応させ、その反応させた反応液を分析することを特徴とする分析装置。
【請求項15】
前記攪拌容器を複数個並べて前記液体試料の分析を行うことを特徴とする請求項14に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−114022(P2007−114022A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304964(P2005−304964)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】