説明

支持体付水素分離膜、それを備える燃料電池および水素分離装置ならびにそれらの製造方法

【課題】 水素分離膜の破損を防止することができるとともに水素分離膜と支持体との密着性が高い支持体付水素分離膜、それを備える燃料電池およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 支持体付水素分離膜の製造方法は、水素分離膜(10)と支持体(30)との間に水素分離膜(10)の硬度よりも低い硬度を有する低硬度金属膜(20)を設ける第1の工程と、水素分離膜(10)、低硬度金属膜(20)および支持体(30)を冷間接合法により接合する第2の工程とを含むことを特徴とする。この場合、水素分離膜(10)、低硬度金属膜(20)および支持体(30)の変形を抑制することができる。その結果、水素分離膜(10)の破損を防止することができる。また水素分離膜(10)と支持体(30)との密着性が向上する。それにより、冷間接合条件を高める必要がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体付水素分離膜、それを備える燃料電池および水素分離装置ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、一般的には水素及び酸素を燃料として電気エネルギーを得る装置である。この燃料電池は、環境面において優れかつ高いエネルギー効率が実現できることから、今後のエネルギー供給システムとして広く開発が進められてきている。
【0003】
燃料電池のうち固体の電解質を用いたものには、固体高分子型燃料電池、固体酸化物型燃料電池、水素分離膜電池等がある。ここで、水素分離膜電池とは、緻密な水素分離膜を備えた燃料電池である。緻密な水素分離膜は水素透過性を有する金属によって形成される層であり、アノードとしても機能する。水素分離膜電池は、この水素分離膜上にプロトン導電性を有する電解質が積層された構造をとっている。水素分離膜に供給された水素はプロトンに変換され、プロトン導電性の電解質中を移動し、カソードにおいて酸素と結合して発電が行われる。
【0004】
この水素分離膜電池に用いられる水素分離膜には、パラジウム等の貴金属が用いられる。そのため、コスト低減のためには水素分離膜をできるだけ薄くする必要がある。この場合、水素分離膜をステンレス等の支持基板によって補強するとともに、水素分離膜の硬度を高くする必要がある。そこで、水素分離膜と支持基板とを拡散接合する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、水素分離膜と支持基板とが接合によって固定される。また、母材の溶融が伴わないため、装置全体を薄型化することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−95617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を用いると拡散接合の際に水素分離膜と支持基板とを加熱する必要がある。この場合、水素分離膜および支持基板の熱膨張率差によって、水素分離膜が破損するおそれがある。そこで、クラッド法等の冷間接合法により水素分離膜と支持基板とを接合する技術が考えられる。しかしながら、硬度の高い水素分離膜は変形しにくい。その結果、水素分離膜と支持基板との密着性が低下する。
【0007】
本発明は、水素分離膜の破損を防止することができるとともに水素分離膜と支持体との密着性が高い支持体付水素分離膜、それを備える燃料電池およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る支持体付水素分離膜の製造方法は、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する低硬度金属膜を設ける第1の工程と、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体を冷間接合法により接合する第2の工程とを含むことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る支持体付水素分離膜の製造方法においては、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する低硬度金属膜が設けられ、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体が冷間接合法により接合される。この場合、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体の温度は、熱間接合法を用いる場合に比較して低温である。それにより、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体にかかる熱負荷が小さくなる。すなわち、各膜の熱膨張率差に起因する影響がほとんどなくなる。したがって、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体の変形を抑制することができ、さらに接合界面における金属拡散を抑制することができる。その結果、水素分離膜の破損を防止することができる。
【0010】
また、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜が挟まれていることから、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。それにより、冷間接合条件を高める必要がなくなる。すなわち、接合温度を低く設定することができるとともに、接合荷重を低く設定することができる。
【0011】
第1の工程は、接合の際の水素分離膜および支持体の対向面の少なくとも一方の面に低硬度金属膜を成膜する工程であってもよい。また、第2の工程は、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体を接合する際の接合面に活性化処理を施した後に、冷間接合法により水素分離膜、低硬度金属膜および支持体を接合する工程であってもよい。この場合、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。
【0012】
低硬度金属膜は、水素透過性を有していてもよい。また、水素分離膜はパラジウムまたはパラジウム合金を含み、低硬度金属膜は水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する金属またはパラジウム合金を含んでいてもよい。さらに、水素分離膜は実質的に純粋なパラジウムの硬度よりも高い硬度を有するパラジウム合金を含み、低硬度金属膜は実質的に純粋なパラジウムからなっていてもよい。この場合、水素分離膜の水素透過能の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明に係る燃料電池の製造方法は、請求項1〜6のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の水素分離膜上に、プロトン導電性電解質膜およびカソードを形成する工程を含むことを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池の製造方法においては、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する低硬度金属膜が設けられ、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体が冷間接合法により接合され、水素分離膜上にプロトン導電性電解質膜およびカソードが形成される。
【0014】
この場合、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体の温度は、熱間接合法を用いる場合に比較して低温である。それにより、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体にかかる熱負荷が小さくなる。すなわち、各膜の熱膨張率差に起因する影響がほとんどなくなる。したがって、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体の変形を抑制することができる。その結果、水素分離膜の破損を防止することができる。また、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜が挟まれていることから、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。それにより、冷間接合条件を高める必要がなくなる。すなわち、接合温度を低く設定することができるとともに、接合荷重を低く設定することができる。
【0015】
本発明に係る水素分離装置の製造方法は、請求項1〜6のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の水素分離膜上および支持体下に、ガス流路を設ける工程を含むことを特徴とするものである。本発明に係る水素分離装置の製造方法においては、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する低硬度金属膜が設けられ、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体が冷間接合法により接合され、水素分離膜上および支持体下にガス流路が設けられる。
【0016】
この場合、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体の温度は、熱間接合法を用いる場合に比較して低温である。それにより、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体にかかる熱負荷が小さくなる。すなわち、各膜の熱膨張率差に起因する影響がほとんどなくなる。したがって、水素分離膜、低硬度金属膜および支持体の変形を抑制することができる。その結果、水素分離膜の破損を防止することができる。また、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜が挟まれていることから、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。それにより、冷間接合条件を高める必要がなくなる。すなわち、接合温度を低く設定することができるとともに、接合荷重を低く設定することができる。
【0017】
本発明に係る支持体付水素分離膜は、支持体と、支持体上に積層された低硬度金属膜と、低硬度金属膜上に積層され低硬度金属膜の硬度よりも高い硬度を有する水素分離膜とを備え、支持体、低硬度金属膜および水素分離膜は冷間接合されていることを特徴とするものである。本発明に係る支持体付水素分離膜においては、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜が挟まれている。それにより、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。
【0018】
低硬度金属膜は、水素透過性を有していてもよい。また、水素分離膜はパラジウムまたはパラジウム合金を含み、低硬度金属膜は水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する金属またはパラジウム合金を含んでいてもよい。さらに、水素分離膜は、実質的に純粋なパラジウムよりも高硬度であるパラジウム合金を含み、低硬度金属膜は、実質的に純粋なパラジウムからなっていてもよい。この場合、水素分離膜の水素透過能の低下を抑制することができる。
【0019】
本発明に係る燃料電池は、請求項9〜請求項12のいずれかに記載の支持体付水素分離膜と、支持体付水素分離膜の水素分離膜上に形成されたプロトン導電性電解質膜と、プロトン導電性電解質膜上に形成されたカソードとを備えることを特徴とするものである。本発明に係る燃料電池においては、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜が挟まれている。それにより、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。
【0020】
本発明に係る水素分離装置は、請求項9〜請求項12のいずれかに記載の支持体付水素分離膜と、支持体付水素分離膜の水素分離膜上および支持体下に設けられたガス流路とを備えることを特徴とするものである。本発明に係る水素分離装置においては、水素分離膜と支持体との間に水素分離膜よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜が挟まれている。それにより、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水素分離膜の破損を防止することができる。また、水素分離膜と支持体との密着性が向上する。このように、耐久性に優れた支持体付水素分離膜を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、第1実施例に係る支持体付水素分離膜40の製造方法を説明するための製造フロー図である。図1(a)に示すように、まず、水素分離膜10を準備する。水素分離膜10は、水素透過性金属から構成される。水素透過性金属としては、例えば、パラジウム合金等を用いることができる。水素分離膜10の膜厚は、例えば、10μm〜200μmであり、より望ましくは50μm〜100μmである。
【0024】
次に、図1(b)に示すように、水素分離膜10の一面に水素透過性を有する低硬度金属膜20をメッキ、蒸着等の方法により成膜する。また、水素分離膜10の一面に水素透過性を有する低硬度金属膜20を冷間接合法で積層してもよい。低硬度金属膜20の膜厚は、例えば、5μm〜30μmであり、より望ましくは10μm〜20μmである。低硬度金属膜20は、水素分離膜10よりも低い硬度(ビッカース硬さ。以下、同じ。)を有する。本実施例においては、低硬度金属膜20は、実質的に純粋なパラジウムから構成される。ここで、実質的に純粋なパラジウムとは、99.9%程度の純度を有するパラジウムのことを意味する。実質的に純粋なパラジウムおよび水素分離膜10として用いることができるパラジウム合金の硬度の例を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
次いで、図1(c)に示すように、支持体30を準備する。支持体30は、例えば、ステンレス等の金属から構成される。支持体30の膜厚は、例えば、50μm〜300μmである。本実施例においては、支持体30に水素分離膜10に水素を供給するための複数の貫通孔31が形成されている。
【0027】
次に、図1(d)に示すように、支持体30の接合面32(支持体30の一面)および低硬度金属膜20の接合面21(低硬度金属膜20の水素分離膜10と反対側の面)に対して、活性化処理を施す。活性化処理は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で不活性ガスのイオン照射処理により行われる。この場合、接合面32および接合面21の表面部分が削られ、主に表面に存在する酸化物が除去される。不活性ガスとして、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスを適用することができ、特に経済面でアルゴンガスを使うことが望ましい。その結果、支持体30および低硬度金属膜20に酸化物がほとんどない活性面が露出する。なお、水素分離膜10、低硬度金属膜20および支持体30の温度は、活性化処理において、アルゴンイオン照射による活性化処理の際のアルゴンイオンの衝突によって200℃程度になっている。
【0028】
次いで、図1(e)に示すように、接合面21と接合面32とが対向するように支持体30上に水素分離膜10および低硬度金属膜20を載せ、冷間接合法により水素分離膜10、低硬度金属膜20および支持体30を接合する。それにより、図1(f)に示すように、支持体付水素分離膜40が完成する。
【0029】
本実施例においては、水素分離膜10、低硬度金属膜20および支持体30の温度は、熱間接合法を用いる場合に比較して低温である。この場合、水素分離膜10、低硬度金属膜20および支持体30にかかる熱負荷が小さくなる。すなわち、各膜の熱膨張率差の影響がほとんどなくなる。それにより、水素分離膜10、低硬度金属膜20および支持体30の変形を抑制することができる。その結果、水素分離膜10の破損を防止することができる。
【0030】
また、水素分離膜10と支持体30との間に水素分離膜10よりも低硬度を有しかつ変形しやすい低硬度金属膜20が挟まれていることから、水素分離膜10と支持体30との密着性が向上する。それにより、冷間接合条件を高める必要がなくなる。すなわち、接合温度を低く設定することができるとともに、接合荷重を低く設定することができる。
【0031】
さらに、本実施例においては低硬度金属膜20が水素透過性を有することから、水素分離膜10の水素透過能の低下を抑制することができる。また、低硬度金属膜20は、支持体30の貫通孔31内にかけて形成されていてもよい。この場合、低硬度金属膜20の強度が向上する。それにより、水素分離膜10の膜厚をさらに低減させることができる。
【0032】
なお、本実施例においては低硬度金属膜20として純パラジウムが用いられ水素分離膜10としてパラジウム合金が用いられているが、特に限定されるものではない。水素透過性を有しかつ水素分離膜10の硬度よりも低い硬度を有している金属であれば、低硬度金属膜20として用いることができる。例えば、水素分離膜に用いられるパラジウム合金よりも低い硬度を有するパラジウム合金を適用することができる。また、水素透過性を有する金属であれば、水素分離膜10として用いることができる。
【実施例2】
【0033】
続いて、本発明の第2実施例に係る支持体付水素分離膜40aの製造方法について説明する。図2は、支持体付水素分離膜40aの製造方法を説明するための製造フロー図である。なお、前述した第1実施例と同一符号を付した構成要素は、第1実施例の材料と同様の材料から構成される。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、まず、水素分離膜10を準備する。次に、図2(b)に示すように、水素分離膜10の一面に水素透過性を有さない低硬度金属膜20aをメッキ、蒸着等の方法により成膜する。低硬度金属膜20aは、水素分離膜10よりも低い硬度を有する。低硬度金属膜20aとして、例えば、銅、ニッケル、錫、亜鉛あるいはアルミニウムを適用することができる。本実施例においては、低硬度金属膜20aは、例えば、銅から構成される。低硬度金属膜20aの膜厚は、例えば、10μm程度である。
【0035】
次いで、図2(c)に示すように、支持体30を準備する。次に、図2(d)に示すように、支持体30の接合面32および低硬度金属膜20aの接合面21a(低硬度金属膜20aの水素分離膜10と反対側の面)に対して、活性化処理を施す。活性化処理は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で不活性ガスのイオン照射処理により行われる。この場合、接合面32および接合面21aの表面部分が削られ、主に表面に存在する酸化物が除去される。不活性ガスとして、ヘリウム、ネオン、アルゴン等のガスを適用することができ、特に経済面でアルゴンガスを使うことが望ましい。次いで、図2(e)に示すように、表面が活性化された接合面32と表面が活性化された接合面21aとが対向するように支持体30上に水素分離膜10および低硬度金属膜20aを載せ、冷間接合法により水素分離膜10、低硬度金属膜20aおよび支持体30を接合する。
【0036】
次に、図2(f)に示すように、貫通孔31を介して露出している低硬度金属膜20aの露出部分に対してエッチング処理を施す。それにより、低硬度金属膜20aに水素分離膜10に水素を供給するための複数の貫通孔22が形成される。以上の工程により、図2(g)に示すように、支持体付水素分離膜40aが完成する。本実施例においては、低硬度金属膜20aとして高価な水素透過性金属を用いる必要がない。したがって、支持体付水素分離膜40aのコストを低減させることができる。なお、水素分離膜10の硬度よりも低い硬度を有する金属であれば、どのような金属でも低硬度金属膜20aとして用いることができる。
【0037】
なお、上記第1実施例および第2実施例に係る低硬度金属膜20,20aは、水素分離膜10に成膜された後に支持体30と接合されているが、支持体30に成膜された後に水素分離膜10と接合されてもよい。さらに、低硬度金属膜20,20aは、水素分離膜10および支持体30の両方に成膜されてもよい。この場合においても、水素分離膜10と支持体30との密着性は向上する。
【実施例3】
【0038】
続いて、本発明の第3実施例に係る燃料電池100について説明する。図3は、燃料電池100について説明するための図である。図3(a)は燃料電池100の模式的断面図であり、図3(b)は燃料電池100の製造方法を説明するための図である。なお、前述した第1および第2実施例と同一符号を付した構成要素は、第1および第2実施例の材料と同様の材料から構成される。
【0039】
図3(a)に示すように、第1実施例に係る製造方法により製造した支持体付水素分離膜40の水素分離膜10上にプロトン導電性電解質膜50およびカソード60が順に形成されている。図3(b)に示すように、水素分離膜10上に、スパッタリング等によりプロトン導電性電解質膜50およびカソード60を順に形成することによって、燃料電池100を製造することができる。
【0040】
続いて、燃料電池100の動作について説明する。まず、水素を含有する燃料ガスが支持体30の複数の貫通孔31を介して低硬度金属膜20に供給される。燃料ガス中の水素は、低硬度金属膜20および水素分離膜10を透過してプロトン導電性電解質膜50に到達する。プロトン導電性電解質膜50に到達した水素は、プロトンと電子とに分離する。プロトンは、プロトン導電性電解質膜50を伝導し、カソード60に到達する。
【0041】
一方、カソード60には酸素を含有する酸化剤ガスが供給される。カソード60においては、酸化剤ガス中の酸素とカソード60に到達したプロトンとから水が発生するとともに電力が発生する。発生した電力は、図示しないセパレータを介して回収される。以上の動作により、燃料電池100による発電が行われる。なお、支持体付水素分離膜40の代わりに第2実施例に係る製造方法により製造した支持体付水素分離膜40aが用いられてもよい。この場合、燃料ガスは、複数の貫通孔31および低硬度金属膜20aの複数の貫通孔22を介して水素分離膜10に供給される。
【実施例4】
【0042】
続いて、本発明の第4実施例に係る水素分離装置200について説明する。図4は、水素分離装置200について説明するための図である。図4(a)は水素分離装置200の模式的断面図であり、図4(b)は水素分離装置200の製造方法を説明するための図である。なお、前述した第1および第2実施例と同一符号を付した構成要素は、第1および第2実施例の材料と同様の材料から構成される。
【0043】
図4(a)に示すように、第1実施例に係る製造方法により製造した支持体付水素分離膜40の水素分離膜10側に流路プレート80が形成され、支持体付水素分離膜10の支持体30側に流路プレート70が形成されている。流路プレート70は、支持体付水素分離膜40に水素含有ガスを供給するための流路が形成されたプレートである。流路プレート80は、支持体付水素分離膜40によって分離された水素を回収するための流路が形成されたプレートである。
【0044】
図4(b)に示すように、支持体30の低硬度金属膜20と反対側の面に流路プレート70を接合し、水素分離膜10の低硬度金属膜20と反対側の面に流路プレート80を接合することによって水素分離装置200を製造することができる。
【0045】
続いて、水素分離装置200の動作について説明する。まず、水素を含有する燃料ガスが流路プレート70内の流路から支持体30の複数の貫通孔31を介して低硬度金属膜20に供給される。燃料ガス中の水素は、低硬度金属膜20および水素分離膜10を透過して流路プレート80に到達する。流路プレート80に到達した水素は、流路プレート80の流路から回収される。以上の動作により、燃料ガス中の水素を分離することができる。なお、支持体付水素分離膜40の代わりに第2実施例に係る製造方法により製造した支持体付水素分離膜40aが用いられてもよい。この場合、燃料ガスは、複数の貫通孔31および低硬度金属膜20aの複数の貫通孔22を介して水素分離膜10に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の支持体付水素分離膜の製造方法においては、低圧下率での冷間接合法を適用するため、水素分離膜の破損を防止でき、また、水素分離膜と支持体との密着性が向上するため、耐久性に優れた支持体付水素分離膜を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施例に係る支持体付水素分離膜の製造方法を説明するための製造フロー図である。
【図2】第2実施例に係る支持体付水素分離膜の製造方法を説明するための製造フロー図である。
【図3】第3実施例に係る燃料電池について説明するための図である。
【図4】第4実施例に係る水素分離装置について説明するための図である。
【符号の説明】
【0048】
10 水素分離膜
20,20a 低硬度金属膜
21,32 接合面
22,31 貫通孔
30 支持体
40,40a 支持体付水素分離膜
50 プロトン導電性電解質膜
60 カソード
70,80 流路プレート
100 燃料電池
200 水素分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素分離膜と支持体との間に、前記水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する低硬度金属膜を設ける第1の工程と、
前記水素分離膜、前記低硬度金属膜および前記支持体を冷間接合法により接合する第2の工程とを含むことを特徴とする支持体付水素分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記接合の際の前記水素分離膜および前記支持体の対向面の少なくとも一方の面に前記低硬度金属膜を成膜する工程であることを特徴とする請求項1記載の支持体付水素分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程は、前記水素分離膜、前記低硬度金属膜および前記支持体を接合する際の接合面に活性化処理を施した後に、冷間接合法により前記水素分離膜、前記低硬度金属膜および前記支持体を接合する工程であることを特徴とする請求項1または2記載の支持体付水素分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記低硬度金属膜は、水素透過性を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記水素分離膜は、パラジウムまたはパラジウム合金を含み、
前記低硬度金属膜は、前記水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する金属またはパラジウム合金を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記水素分離膜は、実質的に純粋なパラジウムの硬度よりも高い硬度を有するパラジウム合金を含み、
前記低硬度金属膜は、実質的に純粋なパラジウムからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の前記水素分離膜上に、プロトン導電性電解質膜およびカソードを形成する工程を含むことを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の支持体付水素分離膜の前記水素分離膜上および前記支持体下に、ガス流路を設ける工程を含むことを特徴とする水素分離装置の製造方法。
【請求項9】
支持体と、
前記支持体上に積層された低硬度金属膜と、
前記低硬度金属膜上に積層され、前記低硬度金属膜の硬度よりも高い硬度を有する水素分離膜とを備え、
前記支持体、前記低硬度金属膜および前記水素分離膜は、冷間接合されていることを特徴とする支持体付水素分離膜。
【請求項10】
前記低硬度金属膜は、水素透過性を有することを特徴とする請求項9記載の支持体付水素分離膜。
【請求項11】
前記水素分離膜は、パラジウムまたはパラジウム合金を含み、
前記低硬度金属膜は、前記水素分離膜の硬度よりも低い硬度を有する金属またはパラジウム合金を含むことを特徴とする請求項9または10記載の支持体付水素分離膜。
【請求項12】
前記水素分離膜は、実質的に純粋なパラジウムよりも高硬度であるパラジウム合金を含み、
前記低硬度金属膜は、実質的に純粋なパラジウムからなることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の支持体付水素分離膜。
【請求項13】
請求項9〜請求項12のいずれかに記載の支持体付水素分離膜と、
前記支持体付水素分離膜の前記水素分離膜上に形成されたプロトン導電性電解質膜と、
前記プロトン導電性電解質膜上に形成されたカソードとを備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項14】
請求項9〜請求項12のいずれかに記載の支持体付水素分離膜と、
前記支持体付水素分離膜の前記水素分離膜上および前記支持体下に設けられたガス流路とを備えることを特徴とする水素分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−117905(P2007−117905A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314300(P2005−314300)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】