説明

放射線検出素子

【課題】より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にする。
【解決手段】複数の画素、複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子4の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線101、及び複数の画素の各スイッチ素子4に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線200,202を介して接続され、かつ複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線3を上面に備えた基板1と、センサ部103の下側に設けられた層間絶縁膜12と、センサ部103の下側に設けられ、かつ配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口された層間絶縁膜23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出素子に係り、特に、マトリクス状に複数配置された画素に検出対象とする放射線が照射されることにより発生した電荷を蓄積し、蓄積した電荷量を画像を示す情報として検出する放射線検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリックス基板上にX線感応層を配置し、X線情報を直接デジタルデータに変換できるFPD(flat panel detector)等の放射線検出素子を用いた放射線画像撮影装置が実用化されている。このFPDは、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがあり、急速に普及が進んでいる。
【0003】
この種の放射線検出素子は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式や、放射線を一度CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光を半導体層で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。
【0004】
ここで、正常に動作しないセンサセルを、トランジスタをレーザ照射により蒸散させて削除することにより、センサセルと信号線間の断線を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、正常に動作しない画素のトランジスタのソース電極またはドレイン電極と、信号配線とを接続する配線の所定のレーザ照射部位をレーザ照射することによって、信号配線にセンサ部に発生した電荷に応じた電気信号が流れないようにすると共に、ゲート電極と、走査配線とを接続する配線の所定のレーザ照射部位をレーザ照射することによって、走査配線に流れる制御信号が当該トランジスタのゲート電極に流れないようにして、正常に動作しない画素を分離する技術が一般的に知られている。
【0006】
例えば、従来、TFTのアレイ検査において、図10(A)及び図10(B)に示すように配線間のリーク不良を検出した場合、そのリーク不良が検出された画素をレーザカットで分離することにより、この配線間のリーク不良を、点欠陥に変換していた。なお、図Aに示すようなリーク不良としては、例えば、ゲート配線材料であるAlのヒロック等に起因する配線間リークが考えられる。そして、レーザカットによる修正(レーザリペア)後、再度アレイ検査が実施されて、配線間リーク不良が点欠陥に変換されていることが確認された後、次工程に出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4311693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、フォトダイオードを第1の層間絶縁膜(平坦化膜)を介してTFTの上層に配置した間接用DR用のTFTアレイにおいては、例えば、図11及び図12に示すように、フォトダイオードの端部のリーク不良等を防止するために、フォトダイオード形成後に第2の層間絶縁膜を配置することが好ましい。なお、図11には、このような放射線検出素子の1画素単位の構造を示す平面図が示されており、図12には、図11のA−A線断面図が示されている。
【0009】
しかしながら、このような構造により、フォトダイオードの端部のリーク不良等を防止することができ、ひいてはフォトダイオードTFTアレイの製造歩留まりを改善することが可能となるが、一方、上記のレーザリペアを行った場合、図13に示すように、レーザが2層の層間絶縁膜により吸収され、レーザが照射される対象となる配線層まで届かないような状況が発生する場合があり、レーザ照射によって配線を非導通状態にすることが困難となる状況が発生する場合がある、という問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、従来技術と比較して、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる放射線検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の放射線検出素子は、マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、前記センサ部の下側に設けられた第1の平坦化膜と、前記センサ部の上側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、または前記レーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第2の平坦化膜と、を備えている。
【0012】
本発明の放射線検出素子によれば、第2の平坦化膜の配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、またはレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さがレーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄いため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、請求項2記載の発明の放射線検出素子は、マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、前記センサ部の下側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第1の平坦化膜と、前記センサ部の上側に設けられた第2の平坦化膜と、を備えている。
【0014】
本発明の放射線検出素子によれば、配線のレーザ照射部位上の対応する箇所の第1の平坦化膜の厚さがレーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄いため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0015】
また、上記目的を達成するために、請求項3記載の発明の放射線検出素子は、マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、前記センサ部の下側に設けられた第1の平坦化膜と、前記センサ部の上側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、または前記レーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第2の平坦化膜と、を備えている。
【0016】
本発明の放射線検出素子によれば、第2の平坦化膜の配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、またはレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さがレーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄いため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、請求項4記載の発明の放射線検出素子は、マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、前記センサ部の下側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第1の平坦化膜と、前記第1の絶縁膜の前記基板が位置する側に対して逆側に設けられた第2の平坦化膜と、を備えている。
【0018】
本発明の放射線検出素子によれば、配線のレーザ照射部位上の対応する箇所の第1の平坦化膜の厚さがレーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄いため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0019】
また、請求項5記載の発明のように、請求項2または請求項4記載の発明において、前記第2の平坦化膜を、前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されるようにするか、または前記レーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄くなるようにしてもよい。これにより、平坦化膜によるレーザの吸収がより抑えられ、更に容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0020】
また、請求項6記載の発明のように、本発明において、前記センサ部を、それぞれ前記レーザ照射部位に対応する箇所を露出させつつ、画素が設けられた画素領域を覆うように形状してもよい。これにより、フィルファクタを向上させることができる。また、レーザ照射部位へのレーザ照射によって配線を容易に非導通状態にすることができる。
【0021】
また、請求項7記載の発明のように、請求項6記載の発明において、前記センサ部が、前記レーザ照射部位に対応する箇所を凹状に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明によれば、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】本実施の形態に係る放射線検出素子の構成を示す平面図である。
【図3】本実施の形態に係る放射線検出素子の線断面図である。
【図4】本実施の形態に係る放射線検出素子にリーク不良が発生した場合の線断面図である。
【図5】本実施の形態に係る放射線検出素子にレーザを照射した結果を説明するための図である。
【図6】本実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図7】本実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図8】本実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図9】本実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図10】従来技術を説明するための図である。
【図11】従来技術を説明するための図である。
【図12】従来技術を説明するための図である。
【図13】従来技術を説明するための図である。
【図14】本実施の形態に係る放射線検出素子の変形例の構成を示す平面図である。
【図15】本実施の形態に係る放射線検出素子の変形例の線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0025】
本実施の形態では、第1の波長の放射線を一旦第2の波長の放射線に変換し、変換した第2の波長の放射線を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出器10に本発明を適用した場合について説明する。なお、以下の説明では、第1の波長の放射線を単に「放射線(例えばX線)」と称し、第1の波長とは異なる第2の波長の放射線が「光」である場合を例に挙げて説明するが、第1の波長の放射線及び第2の波長の放射線はこれに限られるものではない。
【0026】
図1には、第1の実施の形態に係る放射線検出装置(放射線検出素子)10を用いた放射線画像撮影装置(放射線画像検出装置)100の全体構成が示されている。なお、放射線(例えばX線)を光に変換して光を出射するシンチレータは、省略されている。
【0027】
本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出器10を備えている。
【0028】
放射線検出器10は、後述する上部電極と半導体層と下部電極を備え、照射された放射線をシンチレータで変換した光を受けて電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素が2次元状に多数設けられている。
【0029】
また、放射線検出器10には、上記TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。なお、複数の走査配線101とTFTスイッチ4(より詳しくは、TFTスイッチ4のゲート電極)とは配線200を介して接続され、また、複数の信号配線3とTFTスイッチ4(より詳しくは、TFTスイッチのソース電極またはドレイン電極)とは配線202を介して接続されている。
【0030】
各信号配線3には、当該信号配線3に接続された何れかのTFTスイッチ4がONされることによりセンサ部103に蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されており、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御装置104が接続されている。
【0031】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することにより、画像を構成する各画素の情報として、各センサ部103に蓄積された電荷量を検出する。
【0032】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御装置104には、信号検出回路105において検出された電気信号に所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御装置104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する信号処理装置106が接続されている。
【0033】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態に係る放射線検出器10についてより詳細に説明する。なお、図2には、本実施形態に係る放射線検出器10上の放射線検出素子の1画素単位の構造を示す平面図が示されており、図3には、図2のA−A線断面図が示されている。
【0034】
図2及び図3に示すように、本実施の形態の放射線検出素子は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図2参照。)。なお、走査配線101とゲート電極2は配線200を介して接続されている。この配線200は、レーザ照射により蒸散して非導通状態となる。すなわち、配線200にレーザ照射を行うことにより、走査配線101とゲート電極2とを電気的に断線することができる。走査配線101及びゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0035】
この走査配線101、ゲート電極2、及び配線200上には、走査配線101、ゲート電極2、及び配線200を覆い一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0036】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0037】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3、配線202が形成されている。ソース電極9は信号配線3に配線202を介して接続されている。この配線202は、レーザ照射により蒸散して非導通状態となる。すなわち、配線202にレーザ照射を行うことにより、信号配線3とソース電極9とを電気的に断線することができる。ソース電極9、ドレイン電極13、配線202及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。このソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(不図示)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。この逆の場合には、配線202にレーザ照射を行うことにより、信号配線3とドレイン電極13とを電気的に断線することができる。
【0038】
これら第2信号配線層を覆い、基板1上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、塗布型の層間絶縁膜(平坦化膜)12が形成されている。なお、図3に示すように、層間絶縁膜12は、基板1の上面側に設けられている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率ε=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1μm以上(例えば1〜4μm)の膜厚で形成されている。また、層間絶縁膜12に、無機材料を主成分として1μm以上(例えば1〜4μm)の膜厚で形成されたものを用いても良い。なお、層間絶縁膜12は、本発明の第1の平坦化膜に対応する。
【0039】
本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出器10では、この層間絶縁膜12のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0040】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されており、この下部電極11は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極11は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITOなど導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0041】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光が吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0042】
下部電極11上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n層、i層、p層(nアモルファスシリコン、アモルファスシリコン、pアモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn層21A、i層21B、p層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(自由電子と自由正孔のペア)が発生する。n層21A及びp層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極11及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。
【0043】
また、本実施の形態では、下部電極11を半導体層21よりも大きくしており、また、TFTスイッチ4の光の照射側を半導体層21で覆っている。これにより、画素領域内での光を受光できる面積の割合(所謂、フィルファクタ)を大きくしており、また、TFTスイッチ4への光入射を抑制している。
【0044】
各半導体層21上には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出器10では、上部電極22や半導体層21、下部電極11を含んでセンサ部103が構成されている。
【0045】
層間絶縁膜12、半導体層21及び上部電極22上には、上部電極22に対応する一部で開口27A、配線202のレーザ照射部位上の対応する箇所(位置)で開口27B、及び配線200のレーザ照射部位上の対応する箇所で開口27C(図2参照。)を持つ各半導体層21を覆うように、塗布型の層間絶縁膜(平坦化膜)23が形成されている。この層間絶縁膜23は、低誘電率(比誘電率ε=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1μm以上(例えば1〜4μm)の膜厚で形成されている。また、層間絶縁膜23に、無機材料を主成分として1μm以上(例えば1〜4μm)の膜厚で形成されたものを用いても良い。なお、層間絶縁膜12は、本発明の第2の平坦化膜に対応する。一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。
【0046】
すなわち、本実施の形態の層間絶縁膜23は、層間絶縁膜12の基板1が位置する側とは逆側に設けられており、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されている。ここで、レーザ照射部位とは、例えば、リーク不良等の欠陥が検出された画素20に対して、配線200,202にレーザを照射して、各配線200,202を非導通状態にすることにより点欠陥の画素にする場合における配線200,202の当該レーザの照射位置を指す。このように本実施の形態の放射線検出素子(放射線検出器)10によれば、層間絶縁膜23の配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0047】
この層間絶縁膜23上には、共通電極配線25がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。共通電極配線25は、開口27A付近にコンタクトパッド27が形成され、層間絶縁膜23の開口27Aを介して上部電極22と電気的に接続される。
【0048】
このように形成された放射線検出器10には、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜が形成されて、その表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてGOS等からなるシンチレータが貼り付けられる。
【0049】
次に、上記構造の放射線画像検出装置100の動作原理について説明する。
【0050】
図3の上方からX線が照射されると、照射されたX線(第1の波長の放射線)は、シンチレータに吸収され、可視光(第2の波長の放射線)に変換される。なお、図3の下方からX線が照射されてもよく、この場合においても照射されたX線は、シンチレータに吸収され、可視光に変換される。シンチレータから発生する光量は、通常の医療診断用のX線撮影では0.5〜2μW/cmである。この発生した光は、アレイ状に配置されたセンサ部103の半導体層21に照射される。
【0051】
放射線検出器10には、半導体層21が各画素単位に分離して備えられている。半導体層21は、共通電極配線25を介して上部電極22から所定のバイアス電圧が印加されており、光が照射されると内部に電荷が発生する。例えば、半導体層21が下層からn−i−p(nアモルファスシリコン、アモルファスシリコン、pアモルファスシリコン)の順に積層したPIN構造の場合は、上部電極22に負のバイアス電圧が印加されるものとされており、I層の膜厚が1μm程度の場合、印加されるバイアス電圧が−5〜−10V程度である。半導体層21には、このような状態で光が未照射の場合、数〜数+pA/mm以下の電流しか流れない。一方、半導体層21には、このような状態で光が照射(100μW/cm)されると、0.3μA/mm程度の明電流が発生する。この発生した電荷は下部電極11により収集される。下部電極11は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されており、TFTスイッチ4のソース電極9は、信号配線3に接続されている。画像検出時には、TFTスイッチ4のゲート電極2に負バイアスが印加されてオフ状態に保持されており、下部電極11に収集された電荷が蓄積される。
【0052】
画像読出時には、TFTスイッチ4のゲート電極2に走査配線101を介して順次ON信号(+10〜20V)が印加される。これにより、TFTスイッチ4が順次ONされることにより下部電極11に蓄積された電荷量に応じた電気信号が信号配線3に流れ出す。信号検出回路105は、信号配線3に流れ出した電気信号に基づいて各センサ部103に蓄積された電荷量を、画像を構成する各画素の情報として検出する。これにより、放射線検出器10に照射されたX線により示される画像を示す画像情報を得ることができる。
【0053】
ところで、放射線検出器10の検査の結果、図4に示すように、リーク不良が検出された場合には、図5に示すようにそのリーク不良が検出された画素20のレーザ照射部位に対してレーザが照射され、配線200,202が非導通状態となる。このとき、本実施の形態の放射線検出素子(放射線検出器)10によれば、層間絶縁膜23の配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0054】
以上、本実施の形態の放射線検出素子10について説明した。本実施の形態によれば、上記で説明したように、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0055】
なお、上記では、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所に開口部が設けられたことにより、当該箇所が開口されている層間絶縁膜23を用いた例について説明したが、図6に示すように、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ27Dを、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ27Eより薄くした層間絶縁膜(平坦化膜)23´を用いるようにしてもよい。これによっても、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ27Dが、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ27Eより薄いため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0056】
また、図7に示すように、層間絶縁膜12(第1の平坦化膜に対応)の配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ12Aを、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ12Bより薄くしてもよい。これによっても、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ12Aが、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ12Bより薄いため、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0057】
また、図8に示すように、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ27Dを、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ27Eより薄くした層間絶縁膜23´を用いると共に、層間絶縁膜12(第1の平坦化膜に対応)の配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ12Aを、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ12Bより薄くしてもよい。これによっても、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0058】
また、図9に示すように、配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口された層間絶縁膜23を用いると共に、層間絶縁膜12(第1の平坦化膜に対応)の配線200,202のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さ12Aを、当該レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さ12Bより薄くしてもよい。これによっても、従来技術と比較して、平坦化膜によるレーザの吸収が抑えられ、より容易にレーザ照射によって配線を非導通状態にすることができる。
【0059】
なお、上記では、リーク不良が検出された場合に、配線200のレーザ照射部位及び配線202のレーザ照射部位の両方にレーザを照射する例について説明したが、リーク不良が検出された場合に、配線200のレーザ照射部位または配線202のレーザ照射部位のいずれか一方のみのレーザ照射部位にレーザを照射するようにしてもよい。このときレーザが照射されるほうのレーザ照射部位上の平坦化膜(層間絶縁膜12または層間絶縁膜23)の厚さが上記で説明したように、従来技術と比較して薄くなっていればよい。
【0060】
また、放射線検出器10は、各画素20のセンサ部103のフィルファクタを向上させるには、センサ部103の受光可能な領域の面積を広くすることが好ましく、画素領域を覆うように形成することが好ましいが、レーザ照射部位に対応する箇所がセンサ部103で覆われた場合、レーザカットによる修正が行えなくなる。そこで、センサ部103を、それぞれ画素20が設けられた画素領域を覆うと共に、レーザ照射部位に対応する箇所が露出するように形状変化させてもよい。
【0061】
図14には、センサ部103を、画素領域を覆うと共に、レーザ照射部位に対応する箇所が露出するように形状変化させた放射線検出素子の1画素単位の構造を示す平面図が示されており、図15には、図14のA−A線断面図が示されている。
【0062】
図14では、レーザ照射部位に対応する箇所が露出するように、センサ部103のレーザ照射部位に対応する箇所を凹状に形成している。層間絶縁膜23には、配線202のレーザ照射部位上の対応する箇所(位置)で開口28が形成されている。なお、開口28は、層間絶縁膜12側ほど幅が細くなるテーパ状に形成されている。
【0063】
このように、センサ部103を画素領域を覆うように形成することによりフィルファクタを向上させることができる。また、レーザ照射部位に対応する箇所をセンサ部103で覆わずに露出させているため、リーク不良が検出された場合は、レーザ照射部位に対してレーザが照射して配線を非導通状態とするレーザリペアを容易に行うことができる。
【0064】
その他、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100の構成、及び放射線検出器10の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0065】
例えば、センサ部103の下側に層間絶縁膜12が設けられ、センサ部の上側に層間絶縁膜23(または23´)が設けられている構成であればよい。
【符号の説明】
【0066】
3 信号配線
4 TFTスイッチ
10 放射線検出素子
20 画素
12 層間絶縁膜
23 層間絶縁膜
27B 開口
27C 開口
100 放射線画像撮影装置
101 走査配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、
前記センサ部の下側に設けられた第1の平坦化膜と、
前記センサ部の上側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、または前記レーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第2の平坦化膜と、
を備えた放射線検出素子。
【請求項2】
マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、
前記センサ部の下側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第1の平坦化膜と、
前記センサ部の上側に設けられた第2の平坦化膜と、
を備えた放射線検出素子。
【請求項3】
マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、
前記センサ部の下側に設けられた第1の平坦化膜と、
前記センサ部の上側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、または前記レーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第2の平坦化膜と、
を備えた放射線検出素子。
【請求項4】
マトリクス状に複数設けられたセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素、複数の画素の各スイッチ素子に、レーザが照射されることにより非導通状態となる配線を介して接続され、かつ複数の画素の各々に備えられたスイッチ素子の各々をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線、及び複数の画素の各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて、複数の画素の各々に発生された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線を上面に備えた基板と、
前記センサ部の下側に設けられ、かつ前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い第1の平坦化膜と、
前記第1の絶縁膜の前記基板が位置する側に対して逆側に設けられた第2の平坦化膜と、
を備えた放射線検出素子。
【請求項5】
前記第2の平坦化膜は、前記配線のレーザ照射部位上の対応する箇所が開口されているか、または前記レーザ照射部位上の対応する箇所の厚さが前記レーザ照射部位上の対応する箇所以外の箇所の厚さより薄い請求項2または請求項4記載の放射線検出素子。
【請求項6】
前記センサ部は、それぞれ前記レーザ照射部位に対応する箇所を露出させつつ、画素が設けられた画素領域を覆うように形状された
請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線検出素子。
【請求項7】
前記センサ部は、前記レーザ照射部位に対応する箇所が凹状に形成された
請求項6項記載の放射線検出素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−176274(P2011−176274A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212739(P2010−212739)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】