説明

放射線検出素子

【課題】フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保した放射線検出素子を提供する。
【解決手段】走査配線101及び信号配線3を、TFTスイッチ4との接続箇所において、当該接続箇所周辺よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れる方向にシフトさせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出素子に係り、照射された放射線の放射線画像を検出する放射線検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリックス基板上にX線感応層を配置し、X線情報を直接デジタルデータに変換できるFPD(flat panel detector)等の放射線検出素子を用いた放射線画像撮影装置が実用化されている。このFPDは、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがあり、急速に普及が進んでいる。
【0003】
この種の放射線検出素子は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式や、放射線を一度CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光を半導体層で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。
【0004】
ところで、この種の放射線検出素子では、製造時の異物やプロセス不具合によりTFT部分の配線に短絡や断線等の欠陥が発生する場合がある。したがって、このような欠陥箇所を修理するリペア技術が製造得率向上のために重要である。
【0005】
配線間の短絡をリペアする場合、欠陥ラインにレーザーを照射・溶解することで、欠陥ラインを電気的に切断するレーザリペアが一般的である。しかしこの技術では、レーザー照射部に他の金属膜が存在すると、溶解時にそれぞれの金属が短絡する懸念があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、リペア箇所上部の電極の一部を除くことで、リペア可能なリペア用領域を形成し、確実にリペア可能な構造とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−179645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に技術では、リペア箇所上部の電極を除く必要があるために、放射線または放射線が変換された光を検出するセンサ部のサイズを小さく形成する必要があり、フィルファクターが低下する。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保した放射線検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の放射線検出素子は、放射線または放射線が変換された光が照射されることにより電荷を発生するセンサ部及び発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子をそれぞれ備え、放射線を検出する検出領域に設けられた複数の画素と、前記複数の画素に備えられたスイッチング素子に接続され、当該スイッチング素子をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線と、前記複数の画素に備えられた各スイッチ素子に接続され、当該スイッチ素子のスイッチング状態に応じて前記画素に発生した電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線と、を有し、前記複数の走査配線及び前記複数の信号配線の少なくとも一方は、前記スイッチング素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたスイッチング素子から離れるように形状変化、及び当該配線に対して接続されたスイッチング素子側の反対側に並列に当該接続箇所を迂回する迂回配線の配設の少なくとも一方が行われた。
【0011】
本発明の放射線検出素子は、放射線または放射線が変換された光が照射されることにより電荷を発生するセンサ部及び発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子をそれぞれ備えた複数の画素が、放射線を検出する検出領域に設けられている。また、複数の画素に備えられたスイッチング素子に走査配線及び信号配線が接続され、走査配線にスイッチング素子をスイッチングする制御信号が流れ、スイッチ素子のスイッチング状態に応じて画素に発生した電荷に応じた電気信号が信号配線に流れる。
【0012】
そして、複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方は、スイッチング素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたスイッチング素子から離れるように形状変化、及び当該配線に対して接続されたスイッチング素子側の反対側に並列に当該接続箇所を迂回する迂回配線の配設の少なくとも一方が行われている。
【0013】
このように、請求項1に記載の発明によれば、複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方を、スイッチング素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたスイッチング素子から離れるように形状変化、及び接続されたスイッチング素子側の反対側に並列に当該接続箇所を迂回する迂回配線の配設の少なくとも一方を行っているので、リペア用領域を確保するためにセンサ部のサイズを小さくする必要がないため、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保することができる。
【0014】
なお、本発明は、請求項2記載の発明のように、前記複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方を、前記スイッチング素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたスイッチング素子から離れる方向にシフトして設けてもよい。
【0015】
また、本発明は、請求項3記載の発明のように、前記複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方を、前記スイッチング素子との接続箇所において、接続されたスイッチング素子との接続側を凹状に形成してもよい。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項4記載の発明のように、前記複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方を、前記スイッチング素子との接続箇所において、接続されたスイッチング素子と反対側に脹らむように形成されてもよい。
【0017】
また、本発明は、請求項5記載の発明のように、前記走査配線及び前記信号配線の少なくとも一方と前記スイッチ素子が、少なくとも絶縁層を介して別な配線層に形成され、当該絶縁層の前記走査配線及び前記信号配線の少なくとも一方の配線に対応する部分に当該配線の幅方向の中央よりも、接続されたスイッチング素子から離れる方向にシフトして設けられたコンタクトを介して電気的に接続されてもよい。
【0018】
また、本発明は、請求項6記載の発明のように、前記複数の走査配線と複数の信号配線が、互いに交差するように設けられ、少なくとも一方が交差箇所において当該接続箇所周辺よりも配線の幅が細く形成されてもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項7記載の発明のように、前記センサ部が、前記走査配線及び前記信号配線の少なくとも一方と前記スイッチ素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該センサ部よりも、接続された配線から離れる方向に形状変化してもよい。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の構成を示す平面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の線断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係るTFTスイッチに短絡が発生した放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【図5】第2の実施の形態に係る放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【図6】第3の実施の形態に係る放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【図7】第4の実施の形態に係る放射線検出素子の構成を示す平面図である。
【図8】第4の実施の形態に係る放射線検出素子の線断面図である。
【図9】第4の実施の形態に係るTFTスイッチに短絡が発生した放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【図10】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図11】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図12】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図13】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図14】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図15】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【図16】実施の形態に係る放射線検出素子の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
本実施の形態では、X線などの放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出素子10に本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
[第1の実施の形態]
図1には、第1の実施の形態に係る放射線検出素子10を用いた放射線画像撮影装置100の全体構成が示されている。
【0025】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出素子10を備えている。なお、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0026】
放射線検出素子10には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が一方向及び一方向に対する交差方向にマトリクス状に複数配置されている。本実施の形態では、センサ部103が、シンチレータによって変換された光が照射されることにより、電荷が発生する。なお、TFTスイッチ4は、本発明のスイッチ素子に対応する。
【0027】
また、放射線検出素子10には、基板1(図3参照)上に、TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向(図1の列方向)の各画素列に信号配線3が1本ずつ設けられ、交差方向(図1の行方向)の各画素列に走査配線101が1本ずつ設けられている。
【0028】
各走査配線101は、それぞれ一方向の画素列の各画素20のTFTスイッチ4のゲートにそれぞれ接続され、各信号配線3は、それぞれ交差方向の画素列の各画素20のTFTスイッチ4のソースに接続されている。
【0029】
また、本実施の形態に係る放射線検出素子10は、走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所において、走査配線101を曲げて当該接続箇所周辺よりも、当該TFTスイッチ4から離れる方向に全体をシフトさせて設けており、また、信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所において、信号配線3を曲げて接続箇所周辺よりも、当該TFTスイッチ4から離れるようにシフトさせて設けている。
【0030】
さらに、放射線検出素子10には、各信号配線3と並列に共通電極配線25が設けられている。共通電極配線25は、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給する電源110に接続されている。センサ部103は共通電極配線25に接続されており、共通電極配線25を介してバイアス電圧が印加されている。
【0031】
走査配線101には、各TFTスイッチ4をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各走査配線101に流れることによって、各TFTスイッチ4がスイッチングされる。
【0032】
信号配線3には、各画素20のTFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて、各画素20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線3には、当該信号配線3に接続された画素20の何れかのTFTスイッチ4がONされることにより蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。
【0033】
各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されている。また、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御回路104が接続されている。
【0034】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅してデジタルデータへ変換する。
【0035】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御回路104には、信号検出回路105において変換されたデジタルデータに対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御部106が接続されている。
【0036】
図2には、本実施形態に係る放射線検出素子10の画素20の構造を示す平面図が示されており、図3には、図2の画素20のA−A線断面図が示されている。
【0037】
図3に示すように、放射線検出素子10の画素20は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101(図2参照。)、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図2参照。)。この走査配線101、ゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。また、基板1は、放射線の吸収が少ないものであれば何れでもよく、例えば、ガラス基板の他、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いた基板を用いることができる。なお、これらの材料に限られるものではない。
【0038】
この第1配線層上には、一面に第1絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この第1絶縁膜15は、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0039】
第1絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0040】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13と共に、信号配線3が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている(図2参照。)。ソース電極9、ドレイン電極13、及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。このソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(不図示)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。
【0041】
本実施の形態に係る放射線検出素子10では、ゲート電極2や第1絶縁膜15、ソース電極9、ドレイン電極13によりTFTスイッチ4が構成されている。
【0042】
これら第2配線層を覆い、基板1上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFTスイッチ4や信号配線3を保護するために、TFT保護膜層30が形成されている。このTFT保護膜層30は、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0043】
このTFT保護膜層30上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率ε=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。
【0044】
本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層30のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17Aが形成されている。
【0045】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17Aを埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されており、この下部電極11は、コンタクトホール17Aを介してTFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極11は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITOなど導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0046】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光が吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0047】
下部電極11上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n層、i層、p層(nアモルファスシリコン、アモルファスシリコン、pアモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn層21A、i層21B、p層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(自由電子と自由正孔のペア)が発生する。n層21A及びp層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極11及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。なお、半導体層21は、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、アモルファスシリコンの他、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物などの有機光電変換材料などにより形成してもよい。
【0048】
本実施の形態では、下部電極11を半導体層21よりも大きくしており、また、TFTスイッチ4の光の照射側を半導体層21で覆っている。これにより、画素領域内での光を受光できる面積の割合(所謂、フィルファクタ)を大きくしており、また、TFTスイッチ4への光入射を抑制している。
【0049】
層間絶縁膜12、及び半導体層21上には、半導体層21に対応する一部で開口27(図3参照)を持ち、各半導体層21の端部を覆うように、絶縁膜23が形成されている。
【0050】
この絶縁膜23の開口27には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、上部電極22や半導体層21、下部電極11を含んでセンサ部103が構成されている。
【0051】
この絶縁膜23及び上部電極22上には、共通電極配線25(図2参照)がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。共通電極配線25は、上部電極22と電気的に接続される。
【0052】
このように形成された放射線検出素子10には、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜が形成されて、その表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてGOS等からなるシンチレータが貼り付けられる。
【0053】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0054】
放射線検出素子10では、製造時の異物やプロセス不具合により、TFTスイッチ4部分の配線に短絡や断線等の欠陥が発生する場合がある。
【0055】
図4には、一部の画素20のTFTスイッチ4に短絡50が発生した場合が示されている。このようにTFTスイッチ4に短絡50が発生した場合、短絡50が発生した画素20ではセンサ部103に発生した電荷を蓄積しておけず、センサ部103に発生した電荷が信号配線3に流れ出し、線欠陥となる。
【0056】
このように短絡50が発生した場合、放射線検出素子10では、短絡50が発生した画素20の走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所52、及び信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所54にレーザを照射して配線を溶解させることで短絡50が発生した画素20のTFTスイッチ4を電気的に切断するレーザリペアが行われ、線欠陥を点欠陥にする。
【0057】
ここで、本実施の形態に係る放射線検出素子10は、上述のように、走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所において、走査配線101を曲げて当該接続箇所周辺よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れる方向に全体をシフトさせて設けており、また、信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所において、信号配線3を曲げて接続箇所周辺よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れるようにシフトさせて設けている。
【0058】
このように、信号配線3及び走査配線101とソース・ドレイン電極(or ゲート電極)の接続箇所をTFTスイッチ4と反対側にシフトさせているので、画素電極の間にレーザリペアを行うためのリペア用領域を確保することができる。このようにリペア用領域を確保することにより、レーザーリペアを簡単に行うことができる。
【0059】
なお、第1の実施の形態に係る放射線検出素子では、リペアした画素20で電荷が読み出せず、点欠陥となるが、例えば、制御部106に点欠陥となる画素20の位置を示す位置情報を予め記憶させておき、制御部106において位置情報に基づいて点欠陥の画素20の位置を求め、点欠陥となる画素20のデータを、点欠陥となる画素20に隣接する正常な画素20のデータから補間処理を行うことにより生成できる。
【0060】
以上のように、本実施の形態によれば、走査配線101及び信号配線3を、TFTスイッチ4との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れる方向にシフトさせて設けているので、リペア用領域を確保するためにセンサ部103の電極のサイズを小さくする必要がないため、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保することができる。
【0061】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0062】
図5には、第2の実施の形態に係る放射線検出素子10の構成が示されている。
【0063】
同図に示すように、放射線検出素子10では、走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所において、走査配線101のTFTスイッチ4との接続側を凹状に形成して当該接続箇所周辺よりも走査配線101の幅を細くしており、また、信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所において、信号配線3のTFTスイッチ4との接続側を凹状に形成して当該接続箇所周辺よりも信号配線3の幅を細くしている。
【0064】
放射線検出素子10では、短絡50が発生した場合、短絡50が発生した画素20の走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所52、及び信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所54にレーザを照射して配線を溶解させることで短絡50が発生した画素20のTFTスイッチ4を電気的に切断するレーザリペアが行われる。
【0065】
本実施の形態に係る放射線検出素子10は、信号配線3及び走査配線101のTFTスイッチ4との接続箇所を凹状に形成して、信号配線3を、接続されたTFTスイッチ4から離れる方向にシフトさせているので、画素電極の間にレーザリペアを行うためのリペア領域を確保することができる。このようにリペア領域を確保することにより、レーザーリペアを簡単に行うことができる。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、走査配線101及び信号配線3は、TFTスイッチ4との接続箇所において、TFTスイッチ4との接続側が凹状に形成されているので、リペア用領域を確保するためにセンサ部103の電極のサイズを小さくする必要がないため、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保することができる。
【0067】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0068】
図6には、第3の実施の形態に係る放射線検出素子10の構成が示されている。
【0069】
同図に示すように、放射線検出素子10では、走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所において、走査配線101の、接続されたTFTスイッチ4と反対側に当該接続箇所を迂回するように走査配線101と並列に第1迂回配線70を設けており、また、信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所において、信号配線3の、接続されたTFTスイッチ4と反対側に当該接続箇所を迂回するように信号配線3と並列に第2迂回配線72を設けている。
【0070】
放射線検出素子10では、短絡50が発生した場合、短絡50が発生した画素20の走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所52、及び信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所54にレーザを照射して配線を溶解させることで短絡50が発生した画素20のTFTスイッチ4を電気的に切断するレーザリペアが行われる。走査配線101及び信号配線3は、短絡50が発生した画素20のTFTスイッチ4との接続箇所で切断されるが、第1迂回配線70及び第2迂回配線72により電気的に接続され導通可能に維持される。
【0071】
このように、リペアエリアの周囲に第1迂回配線70及び第2迂回配線72を形成することにより、走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所、及び信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所をリペア用領域として用いることができる。このようにリペア領域を確保することにより、レーザーリペアを簡単に行うことができる。また、リペアを実施した際の配線抵抗の増加も少なく抑えることができる。
【0072】
以上のように、本実施の形態によれば、走査配線101及び信号配線3は、TFTスイッチ4との接続箇所において、接続されたTFTスイッチ4側の反対側に並列に当該接続箇所を迂回する第1迂回配線70、第2迂回配線72が配設されているので、走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所、及び信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所をリペア用領域として用いることにより、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保することができる。
【0073】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0074】
図7には、第4の実施の形態に係る放射線検出素子10の画素20の構造を示す平面図が示されており、図8には、図7の画素20のA−A線断面図が示されている。なお、第1の実施の形態(図2及び図3)と同一部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
第4の実施の形態に係る放射線検出素子10では、第2配線層として、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。
【0076】
この第2配線層上には、一面にTFT保護膜層30が形成されている。
【0077】
これらの上層には、信号配線3、及びコンタクト36が形成されている。信号配線3、及びコンタクト36が形成された配線層(以下、この配線層を「第3配線層」ともいう。)は、例えば、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成される。
【0078】
TFT保護膜層30には、信号配線3とソース電極9と対向する位置にコンタクトホール17Bが形成され、コンタクト36とドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17Cが形成されている。信号配線3はコンタクトホール17Bの位置にコンタクト38が形成され、コンタクトホール17Cを介してソース電極9に接続され、コンタクト36はコンタクトホール17Cを介してドレイン電極13に接続されている。
【0079】
この第3配線層上には、一面に第2絶縁膜16が形成され、さらに塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。
【0080】
すなわち、第4の実施の形態に係る放射線検出素子10は、信号配線3とTFTスイッチ4のドレイン電極13とが異なる配線層に形成されている。
【0081】
このように、信号配線3とドレイン電極13が同一層でない場合、図7に示すように信号配線3とドレイン電極13を接続するコンタクト38を形成するために信号配線3の幅より大きいサイズのコンタクトエリアを必要とすることが一般的である。
【0082】
本実施の形態に係る放射線検出素子10では、リペア用の隙間を確保するため、コンタクト38を画素20の間の中央に設けるのではなく、接続されたTFTスイッチ4から離れるようにシフトさせて設けている。
【0083】
放射線検出素子10では、図9に示すように、短絡50が発生した場合、短絡50が発生した画素20の走査配線101とTFTスイッチ4との接続箇所52、及び信号配線3とTFTスイッチ4との接続箇所54にレーザを照射して配線を溶解させることで短絡50が発生した画素20のTFTスイッチ4を電気的に切断するレーザリペアが行われる。
【0084】
本実施の形態に係る放射線検出素子10は、コンタクト38を、接続されたTFTスイッチ4から離れるようにシフトさせて設けているので、リペア用領域を確保することができる。このようにリペア領域を確保することにより、レーザーリペアを簡単に行うことができる。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、信号配線3とTFTスイッチ4を、TFT保護膜層30を介して別な配線層に形成し、TFT保護膜層30の信号配線3に対応する部分に信号配線3の幅方向の中央よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れる方向にシフトしてコンタクト38を形成し、コンタクト38を介して信号配線3とTFTスイッチ4を電気的に接続しているので、リペア用領域を確保するためにセンサ部103の電極のサイズを小さくする必要がないため、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保することができる。また、本実施の形態では、TFTスイッチ4の上方に信号配線3を形成したが、TFTスイッチ4の下方に信号配線4を形成してもよい。
【0086】
以上、本発明を第1〜第4の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
例えば、上記第1、2、4の実施の形態では、信号配線3及び走査配線101をTFTスイッチ4との接続箇所において、当該接続箇所周辺よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れるように形状変化させ、上記第3の実施の形態では、信号配線3及び走査配線101のTFTスイッチ4との接続箇所において、接続されたTFTスイッチ4側の反対側に並列に当該接続箇所を迂回する第1迂回配線70、第2迂回配線72を設けた場合について説明したが、信号配線3又は走査配線101の一方のみ形状変化又は迂回配線を設けるものとしてもよい。
【0088】
また、走査配線101と信号配線3の交差箇所において当該接続箇所周辺よりも走査配線101と信号配線3の幅が細く形成してもよい。図10には、信号配線3をTFTスイッチ4との接続箇所において、信号配線3を曲げて接続箇所周辺よりも、接続されたTFTスイッチ4から離れるようにシフトさせた場合において、走査配線101と信号配線3の交差箇所で走査配線101と信号配線3の幅を細く形成した場合が示されている。このような形態とすることで、配線の寄生容量の増大を抑えることができる。
【0089】
また、第2の実施の形態では、走査配線101及び信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、接続されたTFTスイッチ4側を凹状に形成した場合について説明したが、信号配線3及び走査配線101の幅を細く形成すると断線等が発生しやすくなる場合、信号配線3及び走査配線101のTFTスイッチ4との接続箇所において、TFTスイッチ4と反対側に配線を一部膨らますようにしてもよい。図11には、信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、接続されたTFTスイッチ4側を凹状に形成した場合が示されており、図12には、信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、接続されたTFTスイッチ4側を凹状に形成すると共に、TFTスイッチ4と反対側に信号配線3を膨らました場合が示されている。
【0090】
また、上記第1〜4の実施の形態を適宜組み合わせて実施してもよい。図13には、第4の実施の形態のように、信号配線3とTFTスイッチ4がTFT保護膜層30を介して別な配線層に形成され、コンタクト38を介して接続される場合に信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、接続されたTFTスイッチ4側を凹状に形成した場合が示されている。なお、コンタクト38は、信号配線3の凹状部分に必ずしも形成する必要はない。図14には、信号配線3の凹状部分の上部にコンタクト38を設けた場合が示されている。また、図15には、信号配線3を、TFTスイッチ4との接続箇所において、信号配線3を曲げて接続箇所周辺よりも、当該TFTスイッチ4から離れるようにシフトさせた場合に、シフト部分の上部にコンタクト38を設けた場合が示されている。
【0091】
また、走査配線101及び信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、センサ部103が当該接続箇所周辺よりも、走査配線101及び信号配線3から離れるように形状変化させてもよい。図16には、信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、TFTスイッチ4側を凹状に形成すると共に、信号配線3のTFTスイッチ4との接続箇所において、センサ部103を凹状に形成して、信号配線3から離れる方向に形状変化させた場合が示されている。このように信号配線3及びセンサ部103を共に形状変化させることにより、センサ部103を共に形状変化させてリペア用領域を確保しようとした場合と比較して、フィルファクターの低下を抑えつつ、リペア用領域を確保できる。
【0092】
また、上記各実施の形態では、間接変換方式の放射線検出素子10に本発明を適用した場合について説明したが、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式の放射線検出素子に適用してもよい。この場合、直接変換方式におけるセンサ部は、放射線が照射されることにより電荷を発生する。
【0093】
また、上記各実施の形態では、X線を検出することにより画像を検出する放射線画像撮影装置100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出対象とする放射線は、X線や可視光、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0094】
その他、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100の構成、及び放射線検出素子10の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
3 信号配線
4 TFTスイッチ(スイッチング素子)
10 放射線検出素子
20 画素
30 保護膜層
38 コンタクト
70 迂回配線
72 迂回配線
101 走査配線
103 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線または放射線が変換された光が照射されることにより電荷を発生するセンサ部及び発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子をそれぞれ備え、放射線を検出する検出領域に設けられた複数の画素と、
前記複数の画素に備えられたスイッチング素子に接続され、当該スイッチング素子をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線と、
前記複数の画素に備えられた各スイッチ素子に接続され、当該スイッチ素子のスイッチング状態に応じて前記画素に発生した電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線と、
を有し、
前記複数の走査配線及び前記複数の信号配線の少なくとも一方は、前記スイッチング素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたスイッチング素子から離れるように形状変化、及び当該配線に対して接続されたスイッチング素子の反対側に並列に当該接続箇所を迂回する迂回配線の配設の少なくとも一方が行われた
放射線検出素子。
【請求項2】
前記複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方は、前記スイッチング素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該配線よりも、接続されたスイッチング素子から離れる方向にシフトして設けられた
請求項1記載の放射線検出素子。
【請求項3】
前記複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方は、前記スイッチング素子との接続箇所において、接続されたスイッチング素子との接続側が凹状に形成された
請求項1又は請求項2記載の放射線検出素子。
【請求項4】
前記複数の走査配線及び複数の信号配線の少なくとも一方は、前記スイッチング素子との接続箇所において、接続されたスイッチング素子と反対側に脹らむように形成された
請求項3記載の放射線検出素子。
【請求項5】
前記走査配線及び前記信号配線の少なくとも一方と前記スイッチ素子は、少なくとも絶縁層を介して別な配線層に形成され、当該絶縁層の前記走査配線及び前記信号配線の少なくとも一方の配線に対応する部分に当該配線の幅方向の中央よりも、接続されたスイッチング素子から離れる方向にシフトして設けられたコンタクトを介して電気的に接続された
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線検出素子。
【請求項6】
前記複数の走査配線と複数の信号配線は、互いに交差するように設けられ、少なくとも一方が交差箇所において当該接続箇所周辺よりも配線の幅が細く形成された
請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線検出素子。
【請求項7】
前記センサ部は、前記走査配線及び前記信号配線の少なくとも一方と前記スイッチ素子との接続箇所において、当該接続箇所周辺の当該センサ部よりも、接続された配線から離れる方向に形状変化した
請求項1〜請求項6の何れか1項記載の放射線検出素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−74625(P2012−74625A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219897(P2010−219897)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】