説明

放射線検出装置及びシンチレータパネル

【課題】膜厚を減じることなく発光量が最大となるような最適な付活剤の厚さ方向の濃度分布を提案し、同時にMTF特性を向上させる。
【解決手段】基板上に光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する光検出器と、該光検出器上に形成されたシンチレータ層2とを有し、該シンチレータ層2の前記光検出器とは反対の面側から放射線が入射され、光検出器側から光が出射される放射線検出装置であって、前記シンチレータ層2は、柱状結晶体の集合体からなり、付活剤の濃度が放射線の入射側で高く、光検出器側で低い。シンチレータ層2は、付活剤の濃度が段階的又は漸進的に放射線の入射側で高く、光検出器側で低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療画像診断装置、非破壊検査装置、分析装置等に応用されているシンチレータパネル、放射線検出装置、放射線検出システム及び放射線検出装置の製造方法に関する。そして、特に、X線撮影等に用いられるシンチレータパネル、放射線検出装置、放射線検出システム及び放射線検出装置の製造方法に関する。なお、本明細書においては、放射線の範疇に、X線、α線、β線、γ線等の粒子線も含むものとする。放射線を検出する検出器として平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと略記)が知られている。これは、非晶質シリコン(以下、a−Siと略記)を用いた光電変換素子とTFT素子を2次元上に配列して構成した光検出器と、放射線を光電変換素子が感知可能な波長帯域の光に変換するシンチレータとを組み合わせている。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶ディスプレイ用TFT技術の進歩、情報インフラの整備が充実した現在では、さまざまなFPDが提案され、医療画像分野においても大面積、かつ、デジタル化が達成されている。
【0003】
このFPDは、放射線画像を瞬時に読み取り、瞬時にディスプレイ上に表示できるものであり、また、画像は、デジタル情報として直接取り出すことが可能であるため、データの保管、或いは、加工、転送等取り扱いが便利であると言った特徴がある。また、感度等の諸特性は、撮影条件に依存するが、従来のスクリーンフィルム系撮影法、コンピューティッドラジオグラフィ撮影法に比較して、同等又はそれ以上であることが確認されている。
【0004】
FPDに利用されるデジタル放射線検出装置として、放射線を可視光等に変換する蛍光体を結晶が柱状に成長するヨウ化セシウム(以下、CsI)から成る蛍光体層(シンチレータ層)とし、光検出器を組み合わせたものがある。このような放射線検出装置の感度を上げるために、蛍光体層のCsI中にタリウム(Tl)やナトリウム(Na)等の付活剤を添加することが行われる。従来の粒子状結晶の蛍光体を集合させた蛍光体層に比べ、感度と鮮鋭度を飛躍的に改善している。
【0005】
下記特許文献1には、このようなFPDに利用される放射線検出装置が開示されている。
【0006】
図19は、特許文献1に開示される放射線検出装置を示す図である。
【0007】
図19において、受光素子アレイ406は、ガラス基板上401に、a−Siを用いたフォトセンサ(光電変換素子)とTFTから成る受光素子402と配線部403を形成したものであり、絶縁性のパッシベーション膜405で覆われる。407はTlの添加量は不明であるが、柱状結晶のシンチレータであるTlドープのCsI層である。有機膜から成る第1の防湿保護膜408、光を反射するための無機膜409、有機膜から成る第2の防湿保護膜410とが積層されて保護膜411を形成している。412は有機膜の端面切断部のはがれを防止するための被覆樹脂、404は受光素子402からの電気信号を外部に取り出すためのパッド部である。
【0008】
下記非特許文献1の図5(b)には、付活剤Tlの濃度が増すと発光量が大きくなり、ある濃度以上は発光量が飽和することが開示されている。
【0009】
一方、放射線を直接光に変換するシンチレータ層を用いるものではないが、下記特許文献2には、蓄積性蛍光体を利用した放射線像変換パネルが記載されている。
【0010】
図20は、下記特許文献2に開示される蓄積性蛍光体を利用した放射線像変換パネルを示す図である。
【0011】
放射線像変換パネル510は、支持体511上に蛍光体層512、保護層513があり、反射層514は、設けなくてもよい。蛍光体層512は、支持体511側の蛍光体母体成分から成る層512a、表面側の蛍光体成分(母体成分と付活剤成分)から成る層512bとから成り、それぞれの柱状結晶構造を気相堆積法により形成する。支持体側からレーザー照射し、蓄積記録されている放射線画像情報に応じた強度の発光光を支持体側のラインセンサにより受光する。
【0012】
全体として柱状結晶性の優れた蛍光体層を形成することができ、また、柱状結晶の結晶面を制御することが可能となる。この放射線像変換パネルにより、鮮鋭度、粒状性など画質の優れた放射線画像を与えることができる。
【0013】
下記特許文献3には、X線イメージ管の基板面上にシンチレータ層を形成し、その上に光電極を形成した構造となっている。シンチレータは基板上に二層構成で形成され、X線入射側のシンチレータ層の柱状径がより細いシンチレータで形成されている。
【0014】
下記特許文献4には、シンチレータ層がフォトセンサ部とTFT部との間上で、フォトセンサ部上とは形状の異なる柱状結晶が示されている。
【特許文献1】WO98/36290号公報(第2図)
【特許文献2】特開2003−50298号公報
【特許文献3】特開平10−223163号公報
【特許文献4】特開2002−31687号公報
【非特許文献1】IEEE TRANSACTION ON NUCLEAR SCIENCE Vol.37,No.2 April 1990 p.177-182
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、従来の放射線検出装置のシンチレータにおいては、発光量を向上させようとして付活剤の濃度を増加すると、鮮鋭度が低下するという課題があった。
【0016】
そこで、放射線を直接光に変換するシンチレータ層にCsIを用いた放射線検出装置において、TlドープCsI(以下、CsI:Tl)は、その濃度を上げていくと発光した光を吸収するという課題を見出した。特に、発光量を上げるため、膜厚を厚くすると以下のような理由で発光量が低下する。
【0017】
1.撮影に使用されるエネルギーのX線は、X線入射側のCsI:Tlで多く吸収される。
例えば、60KeVの時のCsI質量減弱係数よりX線の吸収率を計算すると、厚さ200μmで約43%のX線が吸収される。FPDで使用されるCsIの膜厚は、通常約400〜60μmである。例えば厚さ600μmの場合、最初の200μmで約43%、次の200μmで約24.55%、次の200μmで約12.8%のX線が吸収される。
【0018】
2.発光した光は、柱状CsI中を導波路とて通り抜けるが、Tl濃度が高いと光がCsI中で吸収される。特に、X線入射側で多く発光するため、吸収による光の減衰が大きい。
【0019】
例えば、CsI:Tlの発光中心波長550nmでは、透過率はTl濃度2.51mol%の時を1とすると、0.35mol%の時5.8倍、0.7mol%の時4.6倍、1.49mol%の時3.5倍となる。すなわち、Tl濃度の高い方が透過率は低くなる。
【0020】
したがって、CsI:Tlの膜厚を厚くすると、X線の吸収と発光は主にX線の入射側のCsI:Tl中で行われる。X線の入射側のCsI:Tl内部で発光した光は、CsI:Tl中を通り抜ける間に吸収され減衰する。CsI:Tl中での光吸収量を減らすために、Tl濃度を薄くすると発光量が減少する。CsI:Tlの膜厚を減ずると発光量が低下するというトレードオフの関係にある。
【0021】
更に、発光量を上げるために、蒸着後にアニールをする。しかしながら、アニールすると発光量はアップするが、鮮鋭度の指標であるMTF(Modulation Transfer Function)特性が低下するというトレードオフの関係にある。
【0022】
そこで、本発明の目的は、膜厚を減じることなく発光量が最大となるような最適な付活剤の厚さ方向の濃度分布を提案し、同時にMTF特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の課題を解決するため、本発明の放射線検出装置は、基板上に光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する光検出器と、該光検出器上に配置されたシンチレータ層とを有し、該シンチレータ層の前記光検出器とは反対の面側から放射線が入射され、光検出器側から光が出射される放射線検出装置において、前記シンチレータ層は、柱状結晶体の集合体からなり、付活剤の濃度が放射線の入射側で高く、光検出器側で低いことを特徴とする。
【0024】
本発明のシンチレータパネルは、基板と、該基板上に配置されたシンチレータ層とを有し、該シンチレータ層の一方の面側から放射線が入射され、反対面から光が出射されるシンチレータパネルであって、前記シンチレータ層は、柱状結晶体の集合体からなり、付活剤の濃度が放射線の入射側で高く、光出射側で低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シンチレータ層の付活剤の濃度が放射線の入射側で高く、光出射側で低いことにより、発光量とMTF特性を同時に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態1から7について図面を参照して説明する。なお、基板上に光を電気信号に変換する複数の光電変換素子及び及びTFT素子が2次元に配置されている光検出器をセンサ基板(センサパネル)として記述している。また、本発明の放射線検出装置においては、センサ基板1の電極取り出し部(不図示)には、駆動用若しくは検出用集積回路ICが実装されたフレキシブル回路基板(不図示)の端子部が異方導電性接着剤(不図示)を介して貼り合わされる。
【0027】
本実施形態において、センサ基板として、ガラス基板上にアモルファスシリコンを用いたフォトセンサとTFTから成る光電変換素子部を形成した場合について説明する。他方、CCDやCMOSセンサ等を2次元状に配置した撮像素子を形成した半導体単結晶基板を用い、その上に下地層、シンチレータ層を配置することで放射線検出装置を構成することも適宜可能である。
【0028】
またセンサ基板として、ガラス基板上にTFTと光電変換素子を同一面上に並ぶように形成されたものを説明したが、ガラス基板上にTFT等のスイッチ素子を形成し、その上に絶縁層を介して光線変換素子を形成した構成のセンサ基板も用いることができる。そして、かかる構成のセンサパネルにおいても、TFT上には光電変換素子の光電変換層(半導体層)を積層させず、レーザ光を用いてTFT等に生じた欠陥箇所をリペア可能とする構成にしてもよい。また、TFT上にも光電変換素子の光電変換層(半導体層)を積層させて開口率を向上させた構成がある。
【0029】
[実施形態1]
本発明の実施形態1の放射線検出装置について述べる。
【0030】
図1は、実施形態1における放射線検出装置の模式的断面図である。
【0031】
本実施形態は、センサ基板1上のシンチレータ層2を直接蒸着する直接タイプについての例である。
【0032】
センサ基板1には、2次元上に配列された光電変換素子とTFT等のスイッチ素子が形成されている。センサ基板1に、シンチレータ層2(2,2)、接着剤(エポキシ樹脂等)・粘着剤・ホットメルト等から成る接着層6、金属(Al、ステンレス、酸化チタン、銅合金等)の保護層4が形成される。シンチレータ層2は、CsI:Tl、CsI:Na等の付活剤が添加されたアルカリハライド結晶である。保護層4は、シンチレータ層2からの光を反射する反射層を兼ねる。放射線は、シンチレータ層2のセンサ基板1とは反対の面側から入射される。すなわち、放射線は、保護層4の上部より入射し、シンチレータ層2内で吸収され可視光に変換される。
【0033】
シンチレータ層2は、2層で構成されている。シンチレータ層2は主にMTFを決定する層であり、シンチレータ層2は主に発光量を決定する層である。
【0034】
付活剤としてタリウム(Tl)が用いられ、その濃度が異なる。シンチレータ層2の付活剤濃度が段階的に放射線の入射側で高く、光検出器側で低い。シンチレータ層2、シンチレータ層2の各々において付活剤濃度は一定であるが、
(シンチレータ層2)>(シンチレータ層2
である。
【0035】
図2は、実施形態1における放射線検出装置の他の例の模式的断面図である。
【0036】
シンチレータ層2は、3層以上の多層で構成してもよく、例えば、図2に示すように3層構成の場合は、その付活剤濃度は、
(シンチレータ層2)>(シンチレータ層2)>(シンチレータ層2
となる。
【0037】
次に、本発明の実施形態1で示した放射線検出装置のシンチレータ層の製造方法について説明する。
【0038】
図3は、実施形態1における放射線検出装置のシンチレータ層の製造装置を示す模式的断面図である。
【0039】
シンチレータ層の製造方法は以下のとおりである。
【0040】
シンチレータ層(CsI:Tl)の蒸着は主剤(CsI)とドープ剤(TlI)の、共蒸着により行う。センサ基板1は、受光面を下向きの状態で基板ホルダ21にセットされる。蒸着装置の真空チャンバ20内を真空排気した後、センサ基板1の中心を軸として回転軸22にて基板を回転させながら蒸着する。
【0041】
原材料であるCsIとTlIは、それぞれ別々のボートに入れ、蒸着開始まで蒸着加熱源23により所定の温度まで予備加熱する。予備加熱中は、蒸着材料が基板に到達しないように図示しないシャッタ等を用いる。蒸着開始と同時にシャッタを開け、蒸着中にCsIボート24に加えるパワーを一定とし、TlIボート25に加えるパワーを変化させることによりTl濃度を制御する。すなわち、Tl濃度を上げる時はTlIボートに加えるパワーを高くし、濃度を下げる時はパワーを下げることにより、CsI膜中のTl濃度をコントロールすることができる。
【0042】
Tl高濃度の領域(シンチレータ層2)は、0.7mol%以上がよい。生産上のばらつきを考慮すると、Tl濃度は0.8mol%以上が好ましい。Tl濃度0.7mol%未満では、Tl濃度の減少と伴に発光量が低下してしまう領域である。
【0043】
各ボートの加熱パワーを個別に制御する方法以外に、Tl濃度を変えるもう一つの方法として、アルゴン(Ar)ガスを真空チャンバ内に導入して、蒸着時の真空チャンバ内の圧力を調整する方法がある。本実験では、Arを用いたがヘリウム(He)、ネオン(Ne)などの不活性ガスや不活性ガスの混合ガスが利用可能である。蒸着時の真空チャンバ内の圧力を調整は、蒸着圧力が低い程原料のTlIが昇華しやすいため、Tl濃度を高くするときは蒸着圧力を低くし、Tl濃度を低くするときは蒸着圧力を高くする。Tl濃度が高い(Tl濃度0.7mol%以上、好ましくは0.8mol%以上)時の圧力条件としては0.01Pa以上1.0Pa以下、好ましくは0.05Pa以上0.25Pa以下がよい。Tl濃度が低い(Tl濃度1.5mol%以下)時の圧力条件としては0.1Pa以上2.0Pa以下、好ましくは0.15Pa以上1.2Pa以下がよい。
【0044】
この時、同時に蒸着されるCsIの蒸発レートも変化するが、蒸着圧力を変えてもシンチレータ層2とシンチレータ層2成膜時のCsI蒸発レートが一定となるようにCsIボートに加えるパワーを調整すればよい。
【0045】
Tl濃度を変える場合、ここで示した2つの方法を組み合わせてもよい。すなわち、シンチレータ層2とシンチレータ層2成膜時の圧力とTlIボートに加えるパワーを両方変える方法である。
【0046】
次いで、蒸着後に発光量を上げるためにオーブン等にてアニール処理をする。アニール条件としては、温度100℃〜400℃、時間1〜8時間、アニール雰囲気は窒素、真空中又は空気中である。この時、100℃以上でアニールすると吸熱反応が起き、CsI:Tlが融解し、CsI柱間の隙間が減少する。すなわち、MTF特性が悪くなる。しかしながら、Tl濃度が1.5mol%以下ではこの吸熱反応が抑制され、Tl濃度1.0mol%以下では吸熱反応が起こらないことをDSC(Differential Scanning Calorimeter:示差走査熱量測定、 ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製 Q-1000)分析により我々は見出した。
【0047】
すなわち、シンチレータ層2のTl濃度を1.5mol%以下、好ましくは1.0mol%以下とすることで、発光量をアップさせながら、MTF特性を同時に向上させることができる。
【0048】
好ましい濃度は、シンチレータ層2のTl濃度は0.3mol%以上で、シンチレータ層2より低い濃度、シンチレータ層2のTl濃度は0.7mol%以上である。
【0049】
より好ましい濃度は、シンチレータ層2のTl濃度は0.3mol%以上1.0mol%以下でシンチレータ層2より低い濃度、シンチレータ層2のTl濃度は0.7mol%以上1.5mol%以下である。
【0050】
更に好ましい濃度は、シンチレータ層2のTl濃度は0.3mol%以上0.7mol%より小さく、シンチレータ層2のTl濃度は0.7mol%以上1.0mol%以下である。
【0051】
次に、付活剤濃度の測定方法について説明する。付活剤の濃度は、ICP発光分光分析法(ICP-OES : Inductively-Coupled-Plasma Optical Emission Spectrometry,セイコーインスツルメンツ株式会社製 SPS3100)にて測定する。シンチレータ層2が3層の場合について説明する。
【0052】
最初に、蒸着膜の粒子化方法について説明する。真空蒸着により基板上にCsI:Tl膜を約600μm形成する。CsI:Tlの膜をカッタにより蒸着終了面より約100μm程削り粒子化する。粒子化されたCsI:Tlを薬包紙上に取り出す。この操作を6回繰り返す。蒸着終了面より、1回目と2回目の粒子化されたCsI膜を上部濃度測定用とする。同様に、蒸着終了面より、3回目と4回目の粒子化されたCsI膜を中部濃度測定用とする。同様に、蒸着終了面より、5回目と6回目の粒子化されたCsI膜を下部濃度測定用とする。ここでは、便宜上蒸着開始面を下部、蒸着終了面を上部と表現している。この時、粒子化されたCsI:Tl膜の重量が約0.1〜0.2gとなるようにする。天秤により少数点以下4桁まで質量測定する。
【0053】
本実施形態においては、精度良くTl濃度を測定するために、100μmの厚み毎の平均のTl濃度を測定した。したがって、放射線の入射側からのTl濃度の変化は、100μm毎の平均値の変化である。粒子化する膜厚は必ずしも100μmである必要はなく、50μmとして削り取る面積を増やしてもよく、測定器の能力によっては、10μm程度の薄い膜厚でも可能であり、所定の膜厚を選択可能である。
【0054】
次に、粒子化されたCsI:Tl膜を溶液化する方法について説明する。粒子化されたCsI:Tl膜の重量測定後、100mlビーカに入れる。次いで、メスピペットを用い、市販硝酸(特級、69%)を30mlのビーカに入れる。100mlビーカをホットプレート上に載せ溶液の加熱を行う。沃素(I2)を蒸発させ、無色透明になるまで加熱する。
【0055】
沃素は、以下の化学変化により蒸発気化する。
【0056】
2CsI + 3HNO → 2CsNO+ I+ HO + NO
2TlI + 3HNO → 2TlNO+ I+ HO +NO
透明になった溶液を50mlのメスフラスコ内に移す。この時、加熱に使用した100mlのビーカは蒸留水で2回以上とも洗いする。この時発熱により温度が上昇するが、蒸留水を加え室温にて全量を50mlとする。
【0057】
次に、検量線作成用の標準液の作成方法について説明する。市販の原子吸光用のタリウム標準液(濃度1000ppm、例えば関東化学株式会社より入手可)を1ml、10mlをそれぞれ100mlのメスフラスコに入れる。蒸留水を加え全量を100mlとする。これを、それぞれ濃度10ppm、及び100ppmの標準液とする。濃度0ppmの標準液として蒸留水をそのまま用いる。
【0058】
その後、作成した試料を用いて分析器で測定を行う。
【0059】
CsI以外の他のシンチレータ層の材料としては、NaI等も含まれる。また、付活剤としては、ナトリウム(Na)等を用いることも可能である。
【0060】
[実施形態2]
本発明の実施形態2の放射線検出装置について述べる。
【0061】
図4は、実施形態2における放射線検出装置の模式的断面図である。
【0062】
本実施形態は、基板5上にシンチレータ層2を蒸着した後、センサ基板1に接着層6を介して貼り合わせる間接タイプについての例である。基板5上にシンチレータ層2を形成したものをシンチレータパネルとして捉えることができる。
【0063】
アモルファスカーボン(a-C)等から成る基板5に、金属(Al、ステンレス、酸化チタン、銅合金等)の反射層3、CsI等から成るシンチレータ層2、ポリパラキシリレンやホットメルト等から成る保護層4を形成する。これらを接着剤(エポキシ樹脂等)・粘着剤・ホットメルト等から成る接着層6を介して、実施形態1と同様の構成のセンサ基板1に貼り合わせる。放射線は、基板5の上部より入射し、シンチレータ層2内で吸収され可視光に変換される。シンチレータ層2には、付活剤としてタリウム(Tl)が用いられ、その濃度に分布が付けられている。
【0064】
シンチレータ層2は、2層で構成されている。シンチレータ層2は主にMTFを決定する層であり、シンチレータ層2は主に発光量を決定する層である。
【0065】
付活剤としてタリウム(Tl)が用いられ、その濃度が異なる。シンチレータ層2の付活剤濃度が段階的に放射線の入射側で高く、光出射側で低い。シンチレータ層2、シンチレータ層2の各々において付活剤濃度は一定であるが、付活剤濃度は、
(シンチレータ層2)>(シンチレータ層2
である。
【0066】
図5は、実施形態2における放射線検出装置の他の例の模式的断面図である。
【0067】
シンチレータ層2は、3層以上の多層で構成してもよく、例えば、図5に示した3層構成の場合は、その付活剤濃度は、
(シンチレータ層2)>(シンチレータ層2)>(シンチレータ層2
となる。
【0068】
次に、本発明の実施形態2で示した放射線検出装置のシンチレータ層の製造方法について説明する。本実施形態の放射線検出装置の製造方法は、実施形態1と同様に図3に示すような真空蒸着装置を用いる。
【0069】
基板5は、CsI:Tl蒸着面を下向きにされ基板ホルダ21にセットされる。蒸着装置の真空チャンバ20内を真空排気した後、基板5の中心を軸として回転軸22にて基板を回転させながら蒸着する。
【0070】
本実施形態では、蒸着開始時のシンチレータ層2のTl濃度が最も濃く、シンチレータ層2のTl濃度が薄くなるように、TlIボートに加えるパワーを調整する。すなわち、Tl濃度を上げる時はTlIボートに加えるパワーを高くし、濃度を下げる時はパワーを下げることにより、CsI膜中のTl濃度をコントロールすることができる。
【0071】
その他のシンチレータ層の製造方法については、実施形態1と同様である。
【0072】
CsI以外の他のシンチレータ層の材料としては、NaI等も含まれる。また、付活剤としては、ナトリウム(Na)等を用いることも可能である。
【0073】
次に、従来例と比較して実施形態1,2に共通の本発明の効果を説明する。
【0074】
図6は、従来例と本発明において発光量/MTFの関係を説明するための図である。
【0075】
従来例は、Tl濃度が全層で一定のCsI:Tlの膜厚を変化させた場合の発光量とMTFの関係を示している。変化させた膜厚の中央値のサンプルの発光量及びMTFを基準とした。図6のとおり、発光量をアップするためには膜厚を厚く、MTFをアップするには膜厚を薄くするトレードオフの関係にある。本発明は、従来例に比べてセンサ側のTl濃度を薄くしたサンプルであり、発光量及びMTFの両方の特性が向上した。
【0076】
[実施形態3]
図7は、実施形態3における放射線検出装置の模式的断面図である。
【0077】
本実施形態は、センサ基板1上のシンチレータ層2を直接蒸着する直接タイプについての例である。センサ基板1、接着層6、保護層4については、実施形態1と同様である。
【0078】
本実施形態においては、シンチレータ層2には、付活剤としてタリウム(Tl)が用いられ、その濃度が漸進的に変化するように分布している。すなわち、付活剤濃度は、放射線入射側から光検出器側に向けて徐々に薄くなる様に分布が付けられ、放射線入射側で高く、光出射側で低い。
【0079】
次に、本実施形態で示した放射線検出装置のシンチレータ層の製造方法について説明する。
【0080】
本実施形態の放射線検出装置の製造方法は、実施形態1と同様に図3に示すような真空蒸着装置を用いる。
【0081】
シンチレータ層(CsI:Tl)の蒸着は主剤(CsI)とドープ剤(TlI)の、共蒸着により行う。センサ基板1は、受光面を下向きの状態で基板ホルダ21にセットされる。蒸着装置の真空チャンバ20内を真空排気した後、センサ基板1の中心を軸として回転軸22にて基板を回転させながら蒸着する。
【0082】
原材料であるCsIとTlIは、それぞれ別々のボートに用意し、蒸着開始まで蒸着加熱源23により所定の温度まで予備加熱する。予備加熱中は、蒸着材料が基板に到達しないように図示しないシャッタ等を用いる。蒸着開始と同時にシャッタを開け、蒸着中にCsIボート24に加えるパワーを一定とし、TlIボート25に加えるパワーを変化させることによりTl濃度を制御する。すなわち、Tl濃度を上げる時はTlIボートに加えるパワーを高くし、濃度を下げる時はパワーを下げることにより、CsI膜中のTl濃度をコントロールすることができる。ここまでは、実施形態1の製造方法と同様である。
【0083】
本実施形態では、蒸着開始時のTl濃度が最も薄く、Tl濃度が一様に濃くなるようにTlIボートに加えるパワーを徐々に上げていく。
【0084】
また、付活剤濃度の測定方法についても実施形態1と同様である。
【0085】
CsI以外の他のシンチレータとしては、NaI等も含まれる。また、付活剤としては、ナトリウム(Na)等を用いることも可能である。
【0086】
[実施形態4]
図8は、実施形態4における放射線検出装置の模式的断面図である。
【0087】
本実施形態は、基板5上にシンチレータ層2を蒸着した後、センサ基板1に接着層6を介して貼り合わせる間接タイプについての例である。センサ基板1、接着層6、保護層4、反射層3、基板5については実施形態2と同様である。基板5上にシンチレータ層2を形成したものをシンチレータパネルとして捉えることができる。
【0088】
本実施形態においては、シンチレータ層2には、付活剤としてタリウム(Tl)が用いられ、その濃度が漸進的に変化するように分布している。付活剤濃度は、放射線入射側から光出射側に向けて徐々に薄くなるように分布が付けられている。すなわち、放射線入射側で高く、光出射側で低い。
【0089】
本実施形態の放射線検出装置の製造方法は、実施形態1と同様に図3に示すような真空蒸着装置を用いる。
【0090】
シンチレータ層(CsI:Tl)の蒸着は主剤(CsI)とドープ剤(TlI)の、共蒸着により行う。基板5は、受光面を下向きにされ基板ホルダ21にセットされる。蒸着装置の真空チャンバ20内を真空にした後、基板5の中心を軸として回転軸22にて基板を回転させながら蒸着する。
【0091】
本実施形態では、蒸着開始時のTl濃度が最も濃く、Tl濃度が一様に薄くなるようにTlIボートに加えるパワーを徐々に下げていく。
【0092】
その他の放射線検出装置のシンチレータ層の製造方法は、実施形態3と同様であり、付活剤濃度の測定方法については、実施形態1と同様である。
【0093】
シンチレータ層の材料としては、センサパネルに蒸着によって形成されるものであって、特に高い鮮鋭度が得られることから柱状結晶構造を有する柱状結晶体が好適である。柱状結晶構造は、蒸着面に対して垂直方向に成長する。この場合、シンチレータ層は柱状結晶体が集合した集合体から構成されることになる。具体的には、柱状結晶構造を有するアルカリハライド:付活剤が好適に用いられ、CsI:Tlの他に、CsI:Na,NaI:Tl,LiI:Eu,KI:Tl等を用いることができる。
【0094】
図9は、従来例と本発明において発光量/付活剤濃度の関係を説明するための図である。
【0095】
実施形態3での発明の効果を示す。従来例は厚さ方向のTl濃度は一定である。実施形態3の横軸のTl濃度は、本明細書で開示したTl濃度測定方法で、上部・中部・下部の濃度をそれぞれ測定し、その算術平均した濃度である。
【0096】
以上、実施形態3,4においては、シンチレータ層は、放射線の入射側から光検出器側(光出射側)へ付活剤の濃度が漸進的に減少(光検出器側から放射線の入射側へ付活剤の濃度が漸進的に増加)する例を示した。更に、シンチレータ層は、放射線の入射側から光検出器側へ付活剤における一定の厚さ毎の平均値の濃度が減少(光検出器側から放射線の入射側へ付活剤における一定の厚さ毎の平均値の濃度が増加)する層で形成してもよい。一様に減少する場合の他にゆらぎを伴って減少する(一様に増加する場合の他にゆらぎを伴って増加する)場合も含むものである。
【0097】
[実施形態5]
本実施形態では、発光量とMTF特性を向上できる更なる構成を説明する。以下、シンチレータに入射される放射線がX線の場合を説明するが、α線、β線、γ線も同様な効果が得られる。
【0098】
図10は、本発明の実施形態5に係る放射線検出装置を示す断面図である。
【0099】
図10に示すように、絶縁基板であるガラス基板201上には、アモルファスシリコンを用いたフォトセンサとTFTからなる画素が2次元状に形成された光電変換素子部203が形成される。また、ガラス基板201上には、光電変換素子部203に接続される配線部202、配線部202に接続される電極取り出し部(電極パッド部)204が形成される。さらに光電変換素子部203及び配線部202上は、窒化シリコン等よりなる保護層(第1の保護層)205で覆われる。かかる構成によってセンサパネル(「2次元光検出器」、「光電変換パネル」等とも呼ぶ)100が構成される。保護層205上には必要に応じて有機樹脂層からなる第2の保護層206がさらに設けられてもよい。
【0100】
第1の保護層205(若しくは第2の保護層206)上にシンチレータ層101が形成されている。シンチレータ層101は、直接、センサパネル100上に蒸着等の手法によって形成することができる。また、シンチレータ層101が形成される保護層205又は保護層206の表面は、シンチレータ層101との密着向上させるための所謂表面処理を施すことが望ましい。表面処理方法は一般的に知られている処理方法を用いることができ、コロナ処理、プラズマ処理、UV照射処理等の表面改質があげられる。
【0101】
図11は、厚さとX線透過率との関係を示す特性図である。
【0102】
X線は、X線入射側からシンチレータ(CsI;ヨウ化セシウム)に吸収されて進行し、図11の厚さとX線透過率との特性図に示すように、照射エネルギーに依存するが約深さ250μmまでに30〜50%減衰する。よって、シンチレータ層のX線入射側から約深さ250μm程度が発光に大きく寄与することになる。本実施形態では、より多くのX線を吸収するX線入射側の柱状結晶の面方向の断面積が、蒸着開始面側の柱状結晶の断面積よりも大きくなるように形成されている。その結果、発光機能が高い層を形成できるので、高発光な特性を有するシンチレータを得ることができる。
【0103】
X線を吸収するX線入射側の柱状結晶の断面積が大きい領域の深さは、センサパネルの光電変換素子の感度との関係で決まるので、光電変換素子の感度が高ければ、小さくてもよい。柱状結晶の断面積が大きい領域の深さは、100μm以上であることが好ましく、発光への寄与を考慮すると250μm以上であることがより好ましい。
【0104】
上述したように、X線はシンチレータのX線入射側より吸収されながら進行するので、センサパネルに近い領域では、もともとX線が減衰しているため高い発光量は望めない。したがって、シンチレータ層におけるセンサパネルに近い領域は、X線入射側に近い領域からの発光を、センサパネルに伝播させる特性に特化するほうが、最終的なセンサパネルの取り出し効率を向上させることができる。柱状結晶は柱が隣接して層を形成しているが柱界面の接触面積が大きいほどその接触界面からの光が漏れて伝播するため、取り出し光量が減衰しやすく、また鮮鋭度が低下しやすい。よって、センサパネルに近いシンチレータ層の領域は、柱状結晶間の界面の接触面積が小さくなるように断面積を小さくした方がよい。以上の理由により、センサパネル側のシンチレータの柱状結晶の断面積は、X線入射側より小さくなるように形成されている。
【0105】
図12は、膜厚とMTFとの関係を示す特性図である。
【0106】
本発明者等の実験によれば、図12に示すように、柱状結晶体の断面積の小さい領域について、センサパネル側からの距離(膜厚)が増えていくとMTF(Modulation Transfer Function)も向上していくことが分かった。センサパネル側からの距離(膜厚)が100μm近傍で、柱状結晶体をすべて断面積の小さい領域で形成した場合のMTFとの比MTFの比が0.95を超える。そして、200μm近傍では、柱状結晶体をすべて断面積の小さい領域で形成した場合のMTFとの比がほぼ1に達することが分かった。シンチレータ層の柱状結晶体(CsI)を蒸着で形成する場合の実験は、容器内の圧力を変えて柱状結晶の断面積を制御するために、Arを容器内に導入して容器内の圧力を調整して行った。本実験では、Arを用いたがHe、Neなどの不活性ガスや不活性ガスの混合ガスが利用可能である。実験の結果、低圧領域(0.01Pa以上0.25Pa以下)では高圧領域(0.25Pa以上2.0Pa以下)よりも、柱状結晶の断面積がそれより大きくなった。シンチレータ層の厚さは480μmとし、柱状結晶体の断面積の小さい領域を変えていくことで(0〜480μm)実験を行った。
【0107】
したがって、シンチレータ層の断面積の大きい領域の厚さは、発光量を考慮した場合、照射エネルギーに依存するが、50μm以上(図11のミニマム値)あることが好ましい。さらに、10〜30%減衰するX線入射面から100μm以上であることが好ましく、30〜50%減衰するX線入射面から250μm以上であることがより好ましい。シンチレータ層の断面積の小さい領域の厚さは、MTFを考慮した場合、50μm以上設けることでMTFを向上させる効果は生ずるが、MTFの比が0.95を超える100μm以上、さらにはMTFの比がほぼ1となる200μm以上が好ましい。
【0108】
シンチレータ層の厚さは250−650μm、望ましくは300−450μmであることがよい。
【0109】
本実施形態において、X線入射側の柱状結晶の断面積を大きく、センサパネル側の柱状結晶の断面積を小さく形成する手法としては、
1).蒸着の前半は温度、圧力を一定に保持し、蒸着後半、基板若しくは/及び槽内を加熱し槽内の温度を上昇し、圧力を一定に保って蒸着する。
2).センサパネル側のシンチレータの蒸着圧力をX線入射面側のシンチレータの蒸着圧力よりも大きくする。
3).センサパネル側のシンチレータの蒸着圧力が中間層シンチレータの蒸着圧力よりも大きくなるようにし、中間層シンチレータの蒸着圧力がX線入射面側のシンチレータの蒸着圧力よりも大きくなるようにする。
【0110】
つまり、温度制御と蒸着圧力制御との組み合わせが考えられる。シンチレータは蒸着中の温度が高い程柱径は太くなる。また蒸着の圧力が低いと結晶内の充填密度が高く柱径の太い結晶により高発光な層を得ることができる。
【0111】
本実施形態においては、シンチレータ層作成条件は、X線入射面側から光取り出し面側にむけて徐々に変化するものであってもよいし、また条件を断続的に切り替えてもよい。
【0112】
図13は、柱状結晶体108の深さと断面積との関係を示す図である。
【0113】
図13(a)は、X線入射面から見て柱状結晶体の断面積が減少率一定で減少していくように形成した例を示している。図13(b)は、シンチレータ層の層方向の境界において断面積の減少率が変化する例、すなわち、柱状結晶体の断面積の減少率が3つの領域で異なる例を示している。図10に示す放射線検出装置は、図13(a)のような形状の柱状結晶を用いた。
【0114】
なお、図13(b)に示すように3つの領域でなく、2つの領域で断面積の減少率が変わるようにしてもよい。勿論、4つ以上の領域において断面積の減少率が異なるようにしてもよい。柱状結晶の先頭部は尖った形状等であって、平坦でない場合が多く、図13(a),(b)に示すようにX線入射面近傍で断面積は低下する。また、センサパネルから成長させるときに、柱状結晶の断面積が大きくなるにつれ、隣接する柱状結晶と接触して断面積の増加率が減少したり、断面積がほぼ一定となって成長する場合もある。また、隣接する柱状結晶と接触しない場合においても、断面積がほぼ一定となる領域を設けてもよい。例えば、図13(b)において、領域11,13の断面積がほぼ一定となっていてもよい。また各柱状結晶体の断面積は、放射線入射側から光出射側へと小さくなる領域の一部で、断面積を増加させてもよい。
【0115】
図13(b)に示すような、3つの領域の構成においては、領域13が発光に寄与する割合が高い領域となり、領域11は主として鮮鋭度向上領域として機能する。領域12は中間層であり、領域13より発光に寄与する割合が低下し、鮮鋭度向上領域としても機能する。領域11は、領域12を設けるため、厚さは薄くてよく、例えば、5〜15μm程度とすることができる。
このような領域11は、柱状結晶の形成初期に高圧領域の圧力範囲内で形成することができる。また、柱状結晶の成長工程で、柱状構造でない層が柱状結晶の成長前にセンサパネル上に形成される場合がある(センサパネル上に薄い層が形成された構成)。しかし、このような層が形成初期に形成されていても、25μm以下であればMTFに悪影響を与えないことも確認されている。
【0116】
図14は、図13(b)に示した柱状結晶体の集合体でシンチレータ層を構成した場合を示している。図10と同一構成部材については同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態における放射線検出装置のシンチレータ層の製造方法は、図3の製造装置を用いて実施される。
【0117】
すなわち、原材料であるCsIとTlIは、それぞれ別々のボートに入れ、蒸着開始まで蒸着加熱源23により所定の温度まで予備加熱する。予備加熱中は、蒸着材料が基板に到達しないように図示しないシャッタ等を用いる。蒸着開始と同時にシャッタを開け、蒸着中にCsIボート24の蒸着速度が一定になるようにパワーを制御し、TlIボート25の蒸着速度を変化させるためにパワーを変化させることによりTl濃度を制御する。すなわち、Tl濃度を上げる時はTlIボートに加えるパワーを高くし、濃度を下げる時はパワーを下げることにより、CsI膜中のタリウム濃度をコントロールすることができる。
【0118】
そして、X線の吸収が大きく発光に寄与するX線入射側に近い領域の付活剤濃度を高くした場合、発光量を大きくすることができる。本発明においては、センサパネル側の柱状結晶の断面積を小さくしているため鮮鋭度を維持したまま発光量を向上することができる。
【0119】
【表1】

上記表1に得られた放射線検出装置の特性を示す。実施例1−5で示したように放射線検出装置は、X線入射側シンチレータの柱形状が、非X線入射側シンチレータ側のシンチレータよりも平均柱径が太いので(断面積が大きいので)X線の吸収が最も高いシンチレータ層領域で高発光である。また非X線入射側のシンチレータが細いことによってX線吸収によって発光した光が効率よく伝播しセンサ面に到達するので、高い取り出し効率が向上したことにより特性の高い放射線検出装置が得られた。なお、平均柱径とは、柱状結晶体の断面を円状に換算して径を算出し、さらに柱状結晶の長さ方向の平均を取ったものである。柱状結晶体の断面を円状に換算したのは、柱状結晶体の断面は多角形状を成す場合があるからである。ここでは、平均柱径(R)を示したが平均断面積はπ(R/2)で求めることができる。
【0120】
このような構成によって、発光率と解像度とを向上することができる。そして、実施形態1及び3に本実施形態を適用することでさらに発光率と解像度が向上する。
【0121】
[実施形態6]
本発明の実施形態6として、シンチレータパネル、及びセンサパネルにシンチレータパネルを貼り合わせた放射線検出装置について説明する。
【0122】
図15は、本発明の実施形態6におけるシンチレータパネル、放射線検出装置を示す断面図である。
【0123】
シンチレータパネルを示す図15(a)において、カーボン板等の支持基板104上に、反射層103、保護層102を形成する。そして保護層102上にシンチレータを第1の実施形態と同様にして形成する。ただし、本実施形態では、基板側がX線入射側となるので、柱状結晶は成長するに従って断面積が減少するように形成する。さらに、シンチレータパネルを示す図15(b)において、さらに耐湿保護層107を被覆してもよい。また、シンチレータ層を支持基板104とは別な基板に蒸着した後に、支持基板104の保護層側に転写、貼り合せて同様なシンチレータパネルを得ることができる。
【0124】
これを図10に示したセンサパネル100と接着剤で貼り合わせる。
【0125】
放射線検出装置を示す図15(c)において、シンチレータパネルとセンサパネル100を接着剤105を用いて貼り合わせる。そして封止樹脂106により封止を行う。このような構成は、センサパネルとシンチレータパネルが別工程で形成可能なため、両パネルを選別して貼り合わせることができ、製造工程上の歩留まりを向上させることができる。
【0126】
このような構成によって、発光率と解像度とを向上することができる。そして、実施形態2及び4に本実施形態を適用することでさらに発光率と解像度が向上する。
【0127】
[実施形態7]
本実施形態では、シンチレータ層の耐久性を向上できる更なる構成を説明する。
【0128】
柱状結晶のシンチレータ層であるCsIは溶解度が高く(水0℃ 44g/100g、61℃ 160g/100g)、空気中の水分の吸湿によって潮解して柱形状が損なわれる。シンチレータ層の柱形状は放射線検出装置の鮮鋭度特性に関連し、シンチレータ層の柱結晶各々の孤立性及び直立性が高い場合には、高い鮮鋭度特性が得られる。
【0129】
しかしながら、柱形状が潮解により損なわれれば鮮鋭度特性も劣化する。一方、ドープ剤として使用されるTlIは水に溶けにくい(溶解度 水20℃ 0.0064g/100g、100℃ 0.120g/100g)材料である。一般にシンチレータ層に含有されるドープ剤の量は0.1から2mol%程度であって、シンチレータ層主材料の潮解性がなくなるほどドープ剤が添加されるわけではない。
【0130】
したがって、従来のシンチレータ層は空気中の水分の吸湿によって柱形状が損なわれる問題があった。
【0131】
図16は、実施形態7における放射線検出装置の模式的断面図である。
【0132】
本発明においては、シンチレータ層の形成と同時にシンチレータ層310の上部にドープ剤層311を形成し、これによってシンチレータ層310の潮解・吸湿を防止するものである。
【0133】
シンチレータ層を形成する場合には、センサパネル300上に主剤及びドープ剤を所望の濃度に同時に蒸着する。この場合、主剤とドープ剤とを異なる蒸着源から同時に蒸着するのでもよいし、主剤とドープ剤を混合した材料を単源の蒸着源から蒸着してもよい。
【0134】
次いで、センサパネル300上にシンチレータ層を形成した後、ドープ剤のみを蒸着してドープ剤層311を形成する。その場合、主剤の蒸着源とは別にドープ剤のみが充填された蒸着源を加熱蒸着する。
【0135】
すなわち、本発明においてはシンチレータ層を主剤とドープ剤とを異なる蒸着源から同時に蒸着或いは主剤とドープ剤を混合した材料を単源の蒸着源から蒸着する。シンチレータ層310を所望の厚さに形成したら、引き続き蒸着源を切り替えてドープ剤のみを蒸着してドープ剤層311を形成する。
【0136】
このように主剤とドープ剤とを蒸着してシンチレータ層310を形成し、引き続いてドープ剤のみを蒸着してドープ剤層311を形成することにより、シンチレータ層310とドープ剤層311を同時に形成する。
【0137】
ここで、放射線検出装置に必要とされるシンチレータ層は200〜700μm、望ましくは400〜600μmである。また、シンチレータ層310を覆うドープ剤層11には膜に顕著なホールが存在しないことが好ましく、10nm以上、望ましくは50nm〜1μm形成するのがよい。
【0138】
このようにシンチレータ層形成と同時にシンチレータ層の潮解性をなくす防湿層としてのドープ剤層311を形成することによって、シンチレータ層310の形成後のシンチレータ保護層を形成するまでのシンチレータ層の劣化を飛躍的に低減することが可能となる。シンチレータ保護層としては、後述するように第1のシンチレータ保護層312、反射層313、シンチレータ防湿保護層(第2のシンチレータ保護層)、シンチレータ剛性保護層がある。
【0139】
図17は、本実施形態における放射線検出装置の他の例の模式的断面図である。
【0140】
図17に示すようにドープ剤層11をシンチレータ層310の上面及び側面或いはシンチレータ層310が形成されたセンサパネル300に接するようにシンチレータ層表面全面を覆うように形成すると、更に耐久性が向上して望ましい。
【0141】
ここで、図17の例では、間隔を空けて柱状結晶のシンチレータ層310が配置され、個々のシンチレータ層310の表面(シンチレータ層310間の隙間を含む)にドープ剤層311が形成されている。ドープ剤層311の周囲には、図16と同様に複数の保護層からなるシンチレータ保護層が形成されている。図17においてもシンチレータ層とドープ剤層を製造するには先の説明と同様の製造方法を用いることが可能である。
【0142】
その際、シンチレータ層全体を覆うには、ドープ剤がより拡散して蒸着されるように蒸着圧力を高くする(0.1−2Pa)。蒸着源の位置に対して蒸着基板を回転、偏心回転させる等すると効率的に全体を覆うように蒸着することができる。
【0143】
以下、本実施形態の構成及び作成方法を説明する。
【0144】
まず、図16に示すセンサパネル300を作製した。具体的には、絶縁性基板301上に非晶質シリコンを用いてフォトセンサとTFTからなる光電変換素子部303及び配線部302を形成し、その上に窒化シリコンからなる第1の保護層305と電極取り出し部304を形成した。その後、第1の保護層305上にポリイミドからなる第2の保護層306を形成してセンサパネル300を作製した。
【0145】
次に、センサパネル300上の第2の保護層306の画素領域に対応する位置にCsI:Tl(タリウム活性化ヨウ化セシウム)を蒸着してシンチレータ層310を形成した。シンチレータ層は圧力0.1Pa、主剤CsIを5μm/min、ドープ剤TlIを50nm/minのレートで同時に蒸着し、500μm形成した。
【0146】
次に、ドープ剤TlIを同レートで10分間蒸着し、約500nmのドープ剤層311を形成した。
【0147】
次いで、Al40μm、PET50μmが積層されたAl/PETシートのAl面側に厚さ100μmのホットメル接着剤が積層されたシートをドープ剤層11にホットメルト層が対向するように重ね合わせた。その状態で、100℃、3kgf/cm加圧することでAl/PETシートをセンサパネルに貼り合わせた。
【0148】
ここで、ホットメルト層は第1のシンチレータ保護層312に対応し、Al/PETシートのうちAlは反射層313に対応し、PETは上述のような第2のシンチレータ保護層(図示せず)に対応する。これらシンチレータ保護層はセンサパネル300と端部外周囲3mm幅で貼り合わせた。
【0149】
更に、センサパネル300上の電極取り出し部304に、異方導電性接着剤(不図示)を介してフレキシブル回路基板(不図示)の端子部を熱圧着して、放射線検出装置を作製した。
【0150】
この放射線検出装置をサンプル1とした。更に、サンプル1とはドープ剤層311を約1μm形成した点が異なる放射線検出装置を作製し、サンプル2とした。更に、サンプル1とはドープ剤層311が無い点が異なる放射線検出装置を作製し、サンプル3とした。
【0151】
サンプル1,2及びサンプル3(比較例)は、各々シンチレータ層形成後、通常のクリーンルーム下/低湿度クリーンルーム下で検査を行った後、センサパネルやシンチレータ保護層等と貼り合わせて放射線検出装置を作製した。検査時間は各30分を要した。検査はそれぞれの放射線検出装置の鮮鋭度特性を測定した。測定結果を表2に示す。表2では低湿度下作成と常湿度下作成の作成条件と鮮鋭度を示す。
【0152】
【表2】

表2に示すようにサンプル1,2は、サンプル3に対して鮮鋭度が低湿度下作成と常湿度下作成のいずれにおいても良好な結果が得られた。すなわち、ドープ剤層311を設けることによって工程中の吸湿により柱形状が損なわれることがなく、作成条件に拘わらず良好な鮮鋭度が得られることを確認できた。
【0153】
このような構成によって、シンチレータ層の耐久性を向上することができる。そして、実施形態1乃至6に本実施形態を適用することでシンチレータ層の耐久性が向上する。
【0154】
[応用例]
図18は、本発明の放射線検出装置を放射線検出システムとして応用した例を示す図である。
【0155】
放射線検出装置は、上記の各実施形態の放射線検出装置である。
【0156】
X線チューブ6050で発生したX線6060は、患者或いは被験者6061の胸部6062を透過し、放射線画像を撮影する放射線検出装置6040に入射する。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応して放射線検出装置6040のシンチレータ(シンチレータ層)は発光し、これを光電変換して電気的情報を得る。この情報は、ディジタルに変換されイメージプロセッサ6070により画像処理されコントロールルームに有る表示手段としてのディスプレイ6080で観察できる。
【0157】
また、この情報は電話回線6090等の伝送手段により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールーム等でディスプレイ6081に表示するか又は光ディスク等の保存手段に保存することができる。これにより、遠隔地の医師が診断することも可能である。またフィルムプロセッサ6100によりフィルム6110に記録することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】実施形態1における放射線検出装置の模式的断面図
【図2】同放射線検出装置の他の例の模式的断面図
【図3】同放射線検出装置のシンチレータ層の製造装置を示す模式的断面図
【図4】実施形態2における放射線検出装置の模式的断面図
【図5】同放射線検出装置の他の例の模式的断面図
【図6】従来例と本発明において発光量/MTFの関係を説明するための図
【図7】実施形態3における放射線検出装置の模式的断面図
【図8】実施形態4における放射線検出装置の模式的断面図
【図9】従来例と本発明において発光量/付活剤濃度の関係を説明するための図
【図10】実施形態5における放射線検出装置を示す断面図
【図11】厚さとX線透過率との関係を示す特性図
【図12】膜厚とMTFとの関係を示す特性図
【図13】柱状結晶体の長さと断面積との関係を示す図、(a)は、X線入射面から見て柱状結晶体の断面積が減少率一定で減少していくように形成した例、(b)は、柱状結晶体の断面積の減少率が3つの領域で異なる例
【図14】図13(b)に示した柱状結晶体の集合体でシンチレータ層を構成した場合を示す図
【図15】実施形態6におけるシンチレータパネル、放射線検出装置を示す断面図、(a),(b)は、シンチレータパネル、(c)は、放射線検出装置
【図16】実施形態7における放射線検出装置の模式的断面図
【図17】同放射線検出装置の他の例の模式的断面図
【図18】本発明の放射線検出装置を放射線検出システムとして応用した例を示 す図
【図19】特許文献1に開示される放射線検出装置を示す図
【図20】特許文献2に開示される蓄積性シンチレータを利用した放射線像変換 パネルを示す図
【符号の説明】
【0159】
1…センサ基板
2(2,2,2)…シンチレータ層
3…反射層
4…保護層
5…基板
6…接着層
20…真空チャンバ
21…基板ホルダ
22…回転軸
23…蒸着加熱源
24…主剤(CsI)用のボート
25…ドープ剤(TlI)用のボート
100…センサパネル
101…シンチレータ層
102…シンチレータ保護層
103…反射層
201…ガラス基板
202…配線部
203…光電変換素子部
204…電極取り出し部
205…第1の保護層
206…パネル保護層
300…センサパネル
301…絶縁性基板(ガラス基板)
302…配線部
303…光電変換素子部
304…電極取り出し部(電極パッド部)
310…シンチレータ層
311…ドープ剤層
312…第1のシンチレータ防湿保護層
313…反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有する光検出器と、該光検出器上に配置されたシンチレータ層とを有し、該シンチレータ層の前記光検出器とは反対の面側から放射線が入射され、光検出器側から光が出射される放射線検出装置であって、前記シンチレータ層は、柱状結晶体の集合体からなり、付活剤の濃度が放射線の入射側で高く、光検出器側で低いことを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記シンチレータ層は、付活剤の濃度が段階的に放射線の入射側で高く、光検出器側で低いことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記シンチレータ層は、付活剤の濃度が漸進的に放射線の入射側で高く、光検出器側で低いことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記シンチレータ層は、一定の厚さ毎の付活剤の平均濃度が放射線の入射側で高く、光検出器側で低いことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記シンチレータ層は、アルカリハライド蛍光体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記アルカリハライド蛍光体は、CsI又はNaIであることを特徴とする請求項5に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記付活剤は、タリウム又はナトリウムであることを特徴とする請求項5又は6に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記シンチレータ層は、放射線の入射側の付活剤濃度が、0.7mol%以上であり、光検出器側の付活剤濃度が、0.3mol%以上で放射線の入射側の付活剤濃度より低いことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の放射線検出装置を真空蒸着により製造する方法であって、前記シンチレータ層の原材料の主剤と付活剤を蒸着装置の別々のボートに入れ、各ボートの加熱パワーを個別に制御するか又は蒸着装置のチャンバ内の圧力を制御することにより前記シンチレータ層を形成する工程を有することを特徴とする放射線検出装置の製造方法。
【請求項10】
更にアニール工程を有することを特徴とする請求項9に記載の放射線検出装置の製造方法。
【請求項11】
基板と、該基板上に形成されたシンチレータ層を有し、該シンチレータ層の一方の面側から放射線が入射され、反対面から光が出射されるシンチレータパネルであって、前記シンチレータ層は、柱状結晶体の集合体からなり、付活剤の濃度が放射線の入射側で高く、光出射側で低いことを特徴とするシンチレータパネル。
【請求項12】
前記シンチレータ層は、付活剤の濃度が段階的に放射線の入射側で高く光出射側で低いことを特徴とする請求項11に記載のシンチレータパネル。
【請求項13】
前記シンチレータ層は、付活剤の濃度が漸進的に放射線の入射側で高く、光出射側で低いことを特徴とする請求項11に記載のシンチレータパネル。
【請求項14】
前記シンチレータ層は、一定の厚さ毎の付活剤の平均濃度が放射線の入射側で高く、光出射側で低いことを特徴とする請求項11に記載のシンチレータパネル。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項に記載のシンチレータパネルを、基板上に前記シンチレータ層で変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換素子を有するセンサパネルに貼り合わされていることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項16】
前記シンチレータ層は、柱状結晶体の集合体からなり、前記シンチレータ層の面方向の各柱状結晶体の断面積は、放射線入射側で大きく、前記光電変換素子側で低いことを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項17】
前記シンチレータ層は、層方向の境界において前記断面積の減少率が変化する複数の領域からなり、該複数の領域内の隣接する二つの領域において、前記放射線入射側に近い方の一方の領域における前記柱状結晶体の集合体の平均断面積が、他方の領域における前記柱状結晶体の集合体の平均断面積よりも大きいことを特徴とする請求項16に記載の放射線検出装置。
【請求項18】
前記シンチレータ層上に配置されたドープ剤よりなる防湿層を有することを特徴とする請求項1又は16に記載の放射線検出装置。
【請求項19】
前記シンチレータ層表面を覆う、ドープ剤よりなる防湿層を有することを特徴とする請求項1又は16に記載の放射線検出装置。
【請求項20】
前記光電変換素子上に配置された保護膜と、前記保護膜上に配置された前記シンチレータ層とを有することを特徴とする請求項16又は17に記載の放射線検出装置。
【請求項21】
請求項16又は17に記載の放射線検出装置を真空蒸着により製造する方法であって、前記シンチレータ層の原材料の主剤とドープ剤を蒸着装置の別々のボートに用意され、前記蒸着装置のチャンバ内蒸着時の圧力を光出射面側よりも放射線入射面側を低く制御することにより前記シンチレータ層を形成する工程を有することを特徴とする放射線検出装置の製造方法。
【請求項22】
前記シンチレータ層は、柱状結晶体の集合体からなり、前記シンチレータ層の面方向の各柱状結晶体の断面積は、放射線入射側で大きく、光出射側で小さいことを特徴とする請求項11に記載のシンチレータパネル。
【請求項23】
前記シンチレータ層は、層方向の境界において前記断面積の減少率が変化する複数の領域からなり、該複数の領域内の隣接する二つの領域において、前記放射線入射側に近い方の一方の領域における前記柱状結晶体の集合体の平均断面積が、他方の領域における前記柱状結晶体の集合体の平均断面積よりも大きいことを特徴とする請求項22に記載のシンチレータパネル。
【請求項24】
前記シンチレータ層上に配置されたドープ剤よりなる防湿層を有することを特徴とする請求項11又は22に記載のシンチレータパネル。
【請求項25】
前記シンチレータ層表面を覆う、ドープ剤よりなる防湿層を有することを特徴とする請求項11又は22に記載のシンチレータパネル。
【請求項26】
請求項1〜8、又は15〜20のいずれか1項に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置からの信号を処理する信号処理手段と、
前記信号処理手段からの信号を記録するための記録手段と、
前記信号処理手段からの信号を表示するための表示手段と、
前記信号処理手段からの信号を伝送するための伝送処理手段と、
前記放射線を発生させるための放射線源とを具備することを特徴とする放射線検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−51793(P2008−51793A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46715(P2007−46715)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】